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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031028
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ダンパ装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/10 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
F24F13/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134318
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000164553
【氏名又は名称】空研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591219429
【氏名又は名称】空調技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 浩二
(72)【発明者】
【氏名】住吉 祐真
(72)【発明者】
【氏名】松田 光栄
【テーマコード(参考)】
3L081
【Fターム(参考)】
3L081AA03
3L081AA08
3L081AB02
(57)【要約】
【課題】 ダンパ羽根を傾動させてダンパ本体内の開口面積を小さく調整する場合に、流量の急変を防ぎ、ダンパ羽根とダンパ本体との間を空気調和対象気体が通過するのに伴って発生する音を抑制できる、ダンパ装置を提供する。
【解決手段】 ダンパ羽根20を、主羽根部21とこれに沿って移動する副羽根部22、さらに主羽根部21と副羽根部22との間に介在する中間シート23で形成し、調整機構部30で副羽根部22を主羽根部21に対しずらして孔の連通と非連通を切替可能とし、空気調和用の気体がダンパ羽根20の連通させた孔を通過可能とすることから、ダンパ羽根20を傾動させてダンパ本体内部の開口面積を調整するにあたって、空気調和用の気体の一部がダンパ羽根20の孔を通過するようにして、ダンパ羽根外周部とダンパ本体内周面との間を通過する気体流量の急変を防止でき、気流による渦の生成を抑えられ、渦に基づく音の発生を抑制できる。
【選択図】 図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和用の気体を流通させる所定のダクト経路内に配設される筒状のダンパ本体と、当該ダンパ本体に対しダンパ本体の内部で少なくとも傾動可能として配設されるダンパ羽根と、前記ダンパ本体の外部から前記ダンパ羽根を駆動して傾動可能とする駆動部とを少なくとも備え、前記ダンパ羽根を少なくとも傾動させてダンパ本体内部の開口面積を調整可能とする、風量調整用のダンパ装置において、
前記ダンパ本体の内部に支持され、前記駆動部からの駆動力に基づいて、前記ダンパ羽根にダンパ本体内部の開口面積調整に係る動きを生じさせる調整機構部を備え、
前記ダンパ羽根が、
前記調整機構部に取り付けられ、前記ダンパ本体に対し傾動可能とされる薄板状の主羽根部と、
当該主羽根部に沿って移動可能として主羽根部に重ねて配設される薄板状の副羽根部と、
可撓性を有するシート材からなり、前記主羽根部と副羽根部との間に介在する配置として設けられる中間シートとを有し、
前記ダンパ羽根をなす主羽根部、副羽根部、及び中間シートには、それぞれ大きさの異なる孔が所定の共通する配置パターンで複数穿設され、
前記中間シートの各孔が、前記主羽根部及び副羽根部の各孔より小さい孔とされ、前記主羽根部の各孔、又は、副羽根部の各孔と、互いに孔を常時通じさせる配置とされ、
前記主羽根部が、主羽根部の外周部がダンパ本体の内周面に接して、主羽根部でダンパ本体内部の流路を閉じる閉止位置から、ダンパ本体内部の開口面積を最大とする全開位置までの範囲で傾動可能とされ、
前記副羽根部が、副羽根部の各孔が主羽根部の各孔と重なって各孔同士が通じる連通位置から、副羽根部の各孔が主羽根部の各孔と重ならず各孔同士が通じない非連通位置までの範囲で、主羽根部に対し移動可能とされ、
前記調整機構部が、前記ダンパ羽根の主羽根部及び副羽根部を動かして、主羽根部を前記閉止位置に位置させ、且つ副羽根部を前記非連通位置に位置させる全閉状態と、主羽根部を前記閉止位置に位置させ、且つ副羽根部を前記非連通位置以外に位置させる孔開放状態と、主羽根部を前記閉止位置以外に位置させ、主羽根部の外周部をダンパ本体の内周面から離隔させる羽根開放状態とを、切替可能とすることを
特徴とするダンパ装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載のダンパ装置において、
前記ダンパ本体内部を横断し、且つ前記ダンパ羽根の動く範囲から外した配置として設けられ、流体抵抗の小さい滑らかな表面を有して、前記調整機構部を覆う内枠部を備え、
前記調整機構部及び内枠部が、前記ダンパ羽根に対し、前記全閉状態でダンパ羽根より空気調和用気体の流れ方向の下流側となる位置に配設されることを
特徴とするダンパ装置。
【請求項3】
前記請求項1に記載のダンパ装置において、
前記ダンパ羽根が、前記主羽根部の孔と副羽根部の孔のうち、前記全閉状態で空気調和用気体の流れ方向の上流側に位置する方の孔を、他方の孔より大きい孔とされることを
特徴とするダンパ装置。
【請求項4】
前記請求項1に記載のダンパ装置において、
前記ダンパ羽根における主羽根部及び副羽根部の孔のうち、主羽根部又は副羽根部の外周近傍に配置される孔が、外周以外の他位置における孔より小さい孔として設けられることを
特徴とするダンパ装置。
【請求項5】
前記請求項1に記載のダンパ装置において、
前記ダンパ羽根の主羽根部及び副羽根部の少なくとも一方における、前記中間シート寄りの表面とは反対側となる表面の外周側の角部が、面取り加工で角面又は丸面とされることを
特徴とするダンパ装置。
【請求項6】
前記請求項2に記載のダンパ装置において、
前記ダンパ本体が、外周面の所定箇所に貫通孔を設けられ、当該貫通孔を通じて前記内枠部と調整機構部をダンパ本体内部に配設可能とされ、
ダンパ本体の前記貫通孔及びダンパ本体内部に配設された内枠部の端部を外側から覆うカバー部が、ダンパ本体の外周面に取り付けられ、
前記内枠部が、前記調整機構部を内側に収容可能な細長い略箱状体として形成され、
前記調整機構部が、前記内枠部に取り付けられ、内枠部を介してダンパ本体に支持され、
前記内枠部が、前記ダンパ本体内部への配設状態で、長手方向の一端部をダンパ本体における前記貫通孔と対向する位置の内周面に連結されると共に、長手方向の他端部をダンパ本体に取り付けられたカバー部と連結されることを
特徴とするダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和用のダクト経路内に配設され、空気調和用気体の流通の制御や風量調整を行うダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和対象空間である室内に調和空気を送込む給気系統や、室内の換気や排煙等のために空気を室内から排出する排気系統などのダクトでは、経路の途中に流路の断続や風量調節等の目的でダンパ装置を配置することが多かった。特に、ビル内のオフィス空間等の比較的広い室内空間に対し空気調和を行う場合、ダクトを介して空気調和機と複数の吹出口とを接続した系統内に設けられた変風量調整装置(VAV)等のダンパ装置の制御を行い、吹出口から吹出す風量の調整を行うことで、室内空間の温度等を適温とする仕組みが採用されている。
このような空気調和等に用いられる従来のダンパ装置の一例として、特開平5-118636号公報に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-118636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のダンパ装置は前記特許文献に示されるように、ダンパ羽根をその支持軸を中心に傾動させて開放度合いを調整して、調和空気の気流が羽根とケーシングの内周面との間を通って下流側に向かう流量を制御するもの(バタフライタイプ)が多く採用されていた。
【0005】
こうした従来のダンパ装置では、流量を抑えるためにダンパ羽根を閉じ側に傾動させ、開口面積を小さくすると、羽根端部とケーシングの内周面との間の隙間が狭くなる。そのため、調和空気の気流が羽根端部とケーシングの内周面との間を通る際の流速が大きくなって、羽根外周端部で渦が発生し、こうした渦に起因する音も生じていた。
【0006】
こうした羽根で発生する音は、いわゆる風切り音としてダクトを通じて下流側に伝播することから、空気調和対象の室内側にも騒音が拡散するなど悪影響を与えてしまうという課題を有していた。
【0007】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、ダンパ羽根を傾動させてダンパ本体内の開口面積を小さく調整する場合に、流量の急変を防ぎ、ダンパ羽根とダンパ本体との間を空気調和対象気体が通過するのに伴って発生する音を抑制できる、ダンパ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の開示に係るダンパ装置は、空気調和用の気体を流通させる所定のダクト経路内に配設される筒状のダンパ本体と、当該ダンパ本体に対しダンパ本体の内部で少なくとも傾動可能として配設されるダンパ羽根と、前記ダンパ本体の外部から前記ダンパ羽根を駆動して傾動可能とする駆動部とを少なくとも備え、前記ダンパ羽根を少なくとも傾動させてダンパ本体内部の開口面積を調整可能とする、風量調整用のダンパ装置において、前記ダンパ本体の内部に支持され、前記駆動部からの駆動力に基づいて、前記ダンパ羽根にダンパ本体内部の開口面積調整に係る動きを生じさせる調整機構部を備え、前記ダンパ羽根が、前記調整機構部に取り付けられ、前記ダンパ本体に対し傾動可能とされる薄板状の主羽根部と、当該主羽根部に沿って移動可能として主羽根部に重ねて配設される薄板状の副羽根部と、可撓性を有するシート材からなり、前記主羽根部と副羽根部との間に介在する配置として設けられる中間シートとを有し、前記ダンパ羽根をなす主羽根部、副羽根部、及び中間シートには、それぞれ大きさの異なる孔が所定の共通する配置パターンで複数穿設され、前記中間シートの各孔が、前記主羽根部及び副羽根部の各孔より小さい孔とされ、前記主羽根部の各孔、又は、副羽根部の各孔と、互いに孔を常時通じさせる配置とされ、前記主羽根部が、主羽根部の外周部がダンパ本体の内周面に接して、主羽根部でダンパ本体内部の流路を閉じる閉止位置から、ダンパ本体内部の開口面積を最大とする全開位置までの範囲で傾動可能とされ、前記副羽根部が、副羽根部の各孔が主羽根部の各孔と重なって各孔同士が通じる連通位置から、副羽根部の各孔が主羽根部の各孔と重ならず各孔同士が通じない非連通位置までの範囲で、主羽根部に対し移動可能とされ、前記調整機構部が、前記ダンパ羽根の主羽根部及び副羽根部を動かして、主羽根部を前記閉止位置に位置させ、且つ副羽根部を前記非連通位置に位置させる全閉状態と、主羽根部を前記閉止位置に位置させ、且つ副羽根部を前記非連通位置以外に位置させる孔開放状態と、主羽根部を前記閉止位置以外に位置させ、主羽根部の外周部をダンパ本体の内周面から離隔させる羽根開放状態とを、切替可能とするものである。
【0009】
このように本発明の開示によれば、ダンパ本体に対し傾動可能なダンパ羽根を、主羽根部とこれに沿って移動する副羽根部、さらに主羽根部と副羽根部との間に介在する中間シートで形成し、調整機構部で副羽根部を主羽根部に対しずらして孔の連通と非連通を切替可能とし、ダンパ本体内部に空気調和用の気体を流通させる場合には、空気調和用の気体がダンパ羽根の連通させた孔を通過可能とすることにより、ダンパ羽根を傾動させてダンパ本体内部の開口面積を調整するにあたって、空気調和用の気体の一部がダンパ羽根の連通させた孔を通過するのに伴い、ダンパ羽根外周部とダンパ本体内周面との間を通過する気体流量の急変を防止でき、ダンパ羽根端部における気流による渦の生成を抑えられ、こうした渦に基づく音の発生を抑制して、ダクト経路の下流側に伝わる騒音を低減できる。
【0010】
また、ダンパ羽根の孔を空気調和用の気体が通過する場合に、孔縁の最内周に位置する中間シートは可撓性を有しており、孔を通過する気体の圧力で中間シートが変形しつつ、渦の発生に不規則性を与えて渦を乱れさせ、渦を複雑化、不安定化させて渦の消散を促すこととなり、渦が発生しても短い時間で消散させて、孔を通過する気体に起因する音の発生を抑えられる。
【0011】
また、本発明の開示に係るダンパ装置は必要に応じて、前記ダンパ本体内部を横断し、且つ前記ダンパ羽根の動く範囲から外した配置として設けられ、流体抵抗の小さい滑らかな表面を有して、前記調整機構部を覆う内枠部を備え、前記調整機構部及び内枠部が、前記ダンパ羽根に対し、前記全閉状態でダンパ羽根より空気調和用気体の流れ方向の下流側となる位置に配設されるものである。
【0012】
このように本発明の開示によれば、調整機構部を内枠部で覆うと共に、これら調整機構部と内枠部が、ダンパ羽根に対して全閉状態でより下流側となる位置に設けられることにより、内枠部がダンパ本体内を流通する空気調和用気体の調整機構部への接触を抑えると共に、ダンパ羽根が全開位置やその近くにある状態を除いて、調整機構部及び内枠部に対しより上流側に位置するダンパ羽根で、調整機構部及び内枠部への空気調和用気体の衝突を抑制できることとなり、特にダンパ装置より下流側への騒音の影響が大きくなる、ダンパ羽根でダンパ本体内部の開口面積を小さくして気体の流量を小さくした状況で、調整機構部に起因する風切り音等の騒音を低減できる。
【0013】
また、本発明の開示に係るダンパ装置は必要に応じて、前記ダンパ羽根が、前記主羽根部の孔と副羽根部の孔のうち、前記全閉状態で空気調和用気体の流れ方向の上流側に位置する方の孔を、他方の孔より大きい孔とされるものである。
【0014】
このように本発明の開示によれば、ダンパ羽根をなす主羽根部と副羽根部のうち、全閉状態でより上流側に位置する方の孔を大きくする、すなわち、より下流側に位置する方の孔がより小さくなるようにすることにより、ダンパ羽根の各孔同士が完全に重なると、上流側に位置する大きい孔の縁部は小さい孔の縁部より外側にあって、上流側の孔縁部の先に中間シートのみ存在する位置関係とはならず、孔が重なって連通した状態での、重なる各孔の縁部の直接又は中間シートを介して下流側に与える影響を最小限とすることができ、気体の孔通過の際に孔の縁部で発生する渦に起因する騒音を減らせる。
【0015】
また、本発明の開示に係るダンパ装置は必要に応じて、前記ダンパ羽根における主羽根部及び副羽根部の孔のうち、主羽根部又は副羽根部の外周近傍に配置される孔が、外周以外の他位置における孔より小さい孔として設けられるものである。
【0016】
このように本発明の開示によれば、ダンパ羽根をなす主羽根部及び副羽根部の外周部近傍位置に対し、配置パターンを変えずに他位置より小さな孔を穿設することにより、他位置と同じ大きさの孔では、羽根外周部に孔が重なったり、羽根外周部に孔が近すぎて強度を確保できないために、孔を設けられない状況であっても、適切な大きさに設定された孔を無理なく配置することができ、主羽根部と副羽根部の各孔を重ねて連通させる際に、上記の外周部に孔を設けられない状況の場合より羽根の開口率を向上させられ。騒音の抑制が図れる。
【0017】
また、本発明の開示に係るダンパ装置は必要に応じて、前記ダンパ羽根の主羽根部及び副羽根部の少なくとも一方における、前記中間シート寄りの表面とは反対側となる表面の外周側の角部が、面取り加工で角面又は丸面とされるものである。
【0018】
このように本発明の開示によれば、主羽根部及び副羽根部の少なくとも一方における、外周部のダンパ本体内部空間に面する角部に面取りを施し、羽根部外周部とダンパ本体内周面との間に空気調和用気体が流れる際の、羽根部の角部における渦発生を防止することにより、こうした角部での渦発生に起因する、羽根部下流位置で発生する渦の非定常運動を抑制して、騒音の発生を減らすことができる。
【0019】
また、本発明の開示に係るダンパ装置は必要に応じて、前記ダンパ本体が、外周面の所定箇所に貫通孔を設けられ、当該貫通孔を通じて前記内枠部と調整機構部をダンパ本体内部に配設可能とされ、ダンパ本体の前記貫通孔及びダンパ本体内部に配設された内枠部の端部を外側から覆うカバー部が、ダンパ本体の外周面に取り付けられ、前記内枠部が、前記調整機構部を内側に収容可能な細長い略箱状体として形成され、前記調整機構部が、前記内枠部に取り付けられ、内枠部を介してダンパ本体に支持され、前記内枠部が、前記ダンパ本体内部への配設状態で、長手方向の一端部をダンパ本体における前記貫通孔と対向する位置の内周面に連結されると共に、長手方向の他端部をダンパ本体に取り付けられたカバー部と連結されるものである。
【0020】
このように本発明の開示によれば、調整機構部を取り付けた略箱状の内枠部を、ダンパ本体に設けた貫通孔を通じてダンパ本体内部に配設し、内枠部の長手方向両端部をそれぞれ貫通孔を覆うカバー部とこれに対向する内周面の所定位置に連結して、ダンパ本体内部を内枠部が横断する状態を得ることにより、ダンパ本体の内部に設ける調整機構部及び内枠部を、ダンパ本体の筒体両端の開口部から導入してダンパ本体にこれらを組み付けたり、ダンパ本体内部で調整機構部と内枠部を組み合わせたりする作業が不要となり、ダンパ装置の組立工程を簡略にして省力化が図れる。
【0021】
加えて、ダンパ本体内部を横断するように設けられる内枠部の寸法を適切に設定すれば、製造工程の関係で内径が一様となる真円形状を実現するのが難しいダンパ本体を、適正形状の内枠部に合わせて断面形状を真円に近づけるように矯正できることとなり、ダンパ本体の真円度を所定の精度内に保って、ダンパ本体が真円から歪んだ形状のままとされた場合のように、傾動したダンパ羽根とダンパ本体との不要な接触が生じるおそれはなく、こうした接触に伴う異音発生や、接触が原因でダンパ羽根の傾動をそれ以上進行させられず、ダンパ羽根の異常停止を招く、といった事態を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施形態に係るダンパ装置の正面図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るダンパ装置の平面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るダンパ装置の左側面図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係るダンパ装置の右側面図である。
図5図2のA-A断面図である。
図6図2のB-B断面概略図である。
図7図6のC部拡大図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係るダンパ装置におけるダンパ羽根外周部の拡大断面図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係るダンパ装置における孔開放状態の左側面図である。
図10】本発明の第1の実施形態に係るダンパ装置の全閉状態におけるダンパ羽根の孔の拡大図である。
図11】本発明の第1の実施形態に係るダンパ装置の孔開放状態におけるダンパ羽根の孔の拡大図である。
図12】本発明の第1の実施形態に係るダンパ装置における副羽根部と主羽根部の各孔の非連通状態説明図である。
図13】本発明の第1の実施形態に係るダンパ装置における副羽根部と主羽根部の各孔の最大連通状態説明図である。
図14】本発明の第1の実施形態に係るダンパ装置の調整機構部による全閉状態への調整説明図である。
図15】本発明の第1の実施形態に係るダンパ装置の調整機構部による孔開放状態への調整説明図である。
図16】本発明の第1の実施形態に係るダンパ装置の調整機構部によるダンパ羽根を全開位置に到達させた羽根開放状態への調整説明図である。
図17】本発明の第1の実施形態に係るダンパ装置におけるダンパ羽根の全開位置到達状態の左側面図である。
図18】本発明の第1の実施形態に係るダンパ装置におけるダンパ羽根の全開位置到達状態の右側面図である。
図19】本発明の第2の実施形態に係るダンパ装置の正面図である。
図20】本発明の第2の実施形態に係るダンパ装置の平面図である。
図21】本発明の第2の実施形態に係るダンパ装置の左側面図である。
図22】本発明の第2の実施形態に係るダンパ装置の右側面図である。
図23図20のD-D断面図である。
図24】本発明の第2の実施形態に係るダンパ装置における孔開放状態の左側面図である。
図25】本発明の第2の実施形態に係るダンパ装置における孔開放状態の右側面図である。
図26】本発明の第2の実施形態に係るダンパ装置の全閉状態におけるダンパ羽根の孔の拡大図である。
図27】本発明の第2の実施形態に係るダンパ装置の孔開放状態におけるダンパ羽根の孔の拡大図である。
図28】本発明の第2の実施形態に係るダンパ装置における副羽根部と主羽根部の各孔の非連通状態説明図である。
図29】本発明の第2の実施形態に係るダンパ装置における副羽根部と主羽根部の各孔の最大連通状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係るダンパ装置を前記図1ないし図18に基づいて説明する。本実施形態では、空調機と室内空間に面して配設される吹出口との間のダクト経路に設けられる変風量調整装置(VAV)等として用いられる装置の例について説明する。
【0024】
前記各図において本実施形態に係るダンパ装置1は、空気調和用気体としての調和空気を流通させる所定のダクト経路内に配設される略円筒状のダンパ本体10と、このダンパ本体10に対しその内部に傾動可能として配設されるダンパ羽根20と、このダンパ羽根20にダンパ本体10内部の開口面積調整に係る動きを生じさせる調整機構部30と、ダンパ本体10内部を横断する配置として設けられ、調整機構部30を覆う内枠部40と、調整機構部30を介してダンパ本体10の外部からダンパ羽根20を駆動して動かす駆動部50とを備える構成である。
【0025】
本実施形態に係るダンパ装置1は、従来の変風量調整装置と同様に、調和空気を室内空間に送り込むためのダクト経路の一部として天井裏や壁裏等の空間に配設され、ダンパ本体10外側の駆動部50によりダンパ羽根20をダンパ本体10に対し動かし、ダンパ本体10内の開口面積を調整することで、ダンパ本体10を通過する調和空気の流量を調整する、すなわち下流側へ向う調和空気の風量調整を行うものである。ただし、このダンパ装置1は、ダンパ羽根20の傾動によりダンパ羽根20外周部とダンパ本体10内周面間に生じる隙間の大きさを変化させることに加え、ダンパ羽根20に設けられた複数の孔の連通度合いを変化させることでも、開口面積の調整を行える仕組みである。
【0026】
前記ダンパ本体10は、金属製の略円筒体であり、内部に風量調整のためのダンパ羽根20及び調整機構部30を配設される構成である。また、ダンパ本体10の内部には、調整機構部30を覆う内枠部40も配設される。一方、このダンパ本体10の外側には、調整機構部30を介してダンパ羽根20を駆動する駆動部50が固定配設される。このダンパ本体10は、両端をダクトやチャンバと接続可能な形状として形成され、こうしたダクトやチャンバと接続されて調和空気の給気用となるダクト経路内に配設され、調和空気を流通させることとなる。
【0027】
ダンパ本体10は、外周面の所定箇所に貫通孔11を設けられる。この貫通孔11を通じて、内枠部40とこれに取り付けられた調整機構部30を、ダンパ本体10の内部に配設可能とされる仕組みである。
【0028】
そして、この貫通孔11を外側から覆うカバー部12が、ダンパ本体10の外周面に取り付けられる。カバー部12は、貫通孔11と共に、ダンパ本体10の内部に配設された内枠部40の端部も覆うこととなる。ただし、カバー部12は、調整機構部30の一部を貫通させてダンパ本体10の外側に突出させており、この調整機構部30の突出部分が駆動部50と接続される。
【0029】
ダンパ本体10の内部におけるダンパ羽根20の上流側となる箇所には、公知の風速センサ13が設けられる。この風速センサ13で検出した風速から求められる単位時間あたりの風量が目標値と一致するように、ダンパ羽根20による風量調整が実行されることとなる。
【0030】
前記ダンパ羽根20は、調整機構部30に取り付けられ、ダンパ本体10に対し傾動可能とされる薄板状の主羽根部21と、この主羽根部21に沿って移動可能として主羽根部21に重ねて配設される薄板状の副羽根部22と、可撓性を有するシート材からなり、主羽根部21と副羽根部22との間に介在する配置として設けられる中間シート23とを有する構成である。
【0031】
ダンパ羽根20をなす主羽根部21、副羽根部22、及び中間シート23には、それぞれ大きさ(径)の異なる孔21a、22a、23aが所定の共通する配置パターン、例えば、千鳥状配置、で複数設けられる。
【0032】
前記主羽根部21は、複数の孔21aを穿設された金属製の薄い板状体で形成され、調整機構部30を介してダンパ本体10の内部に傾動可能に配設される構成である。この主羽根部21は、より具体的には、ダンパ本体10内に回転可能に設けられる調整機構部30の入力軸31に支持され、ダンパ本体10に対し所定角度範囲で傾動可能とされる構成である。
【0033】
この主羽根部21に重ねて副羽根部22と中間シート23が配設されることで、ダンパ羽根20全体でダンパ本体10に対し傾動し、ダンパ本体10内の開口面積を調整可能となる仕組みである。
【0034】
主羽根部21は、略長円形の板状体とされ、その長径は、ダンパ本体10の内径、すなわち、ダンパ本体10内の流路の横断面としてあらわれる円の直径より長くされる。このため、主羽根部21の外周部がダンパ本体10の内周面に接して、ダンパ本体10内の流路を主羽根部21で閉止する場合における、主羽根部21のダンパ本体10に対しなす角は、ダンパ本体10の長手方向に対し直角とはならす、直角から少し傾いた角度とされる。
【0035】
主羽根部21は、所定のスリーブ24を介して調整機構部30の入力軸31に取り付けられる。スリーブ24は、略円筒体として形成され、その中心部の孔に入力軸31を貫通させるようにして入力軸31上に配設され、入力軸31に対して相対回転可能に支持されるものである。主羽根部21はこのスリーブ24に固定され、スリーブ24と共に入力軸31に対して相対回転可能とされる。
【0036】
このような主羽根部21が、主羽根部21の外周部をダンパ本体10の内周面に接触させて、主羽根部21でダンパ本体10内の流路を閉じる閉止位置から、ダンパ本体10をなす筒体の連続方向(ダンパ本体10の長手方向)と平行となって、ダンパ本体10内部の開口面積を最大とする全開位置までの範囲で、ダンパ本体10に対し傾動可能とされることとなる。
【0037】
この主羽根部21における外周部のうち、中間シート23寄りの表面とは反対側となる表面の外周側に位置する角部、言い換えると、中間シート23から遠い側の、ダンパ本体10の内部空間に露出する角部、に対しては、面取り加工、すなわち、角部を削って角面とする加工が施される(図8参照)。こうして、主羽根部21がダンパ本体10内の流路を閉じる閉止位置やその近くにある場合に、外周部でより下流側に位置して流路に露出するはずの角部が、面取りでより角度の緩やかな縁形状とされることにより、ダンパ羽根20外周部とダンパ本体10内周面との間に調和空気が流れる際の、主羽根部21のこうした角部における渦発生を防止している。それに伴い、このような角部での渦発生に起因する、ダンパ羽根20の下流位置で発生する渦の非定常運動を抑制して、騒音の発生を減らすことができる。なお、この主羽根部21への面取り加工は、角部を削って角面とするC面取りとしているが、これに限らず、角部を滑らかな丸面とするR面取りとすることもできる。
【0038】
前記副羽根部22は、複数の孔22aを穿設された金属製の薄い板状体で形成され、主羽根部21に重ねて配設され、主羽根部21に沿って主羽根部21の傾動の中心軸と直交する向きに所定範囲移動可能とされる構成である。
【0039】
詳細には、副羽根部22は、主羽根部21の傾動の中心軸と直交する向きに連続する長孔22bを設けられる。これに対し、主羽根部21は、副羽根部22の長孔22bと重なる位置に副羽根部22の動きを規制する規制部29を有する。規制部29は、例えば、ボルトであり、主羽根部21から副羽根部22側に突出して副羽根部22の長孔22bを貫通する。この規制部29の、長孔22bを越えた末端部には、長孔22bより大きい規制片29a(例えば、ナット)を設けられてなり、規制部29は長孔22bから相対的に外れないようにされる構成である。この規制部29により、副羽根部22は主羽根部21に対し、規制部29が長孔22b内に位置する範囲で長孔22bの連続する方向に移動可能となる一方、この長孔22bの連続する方向以外の動きを規制される仕組みである。
【0040】
そして、副羽根部22の長孔22bの一端部に規制部29が位置する場合(図12参照)は、副羽根部22が主羽根部21に対し非連通位置にある、すなわち、副羽根部22の各孔22aが主羽根部21の各孔21aと重ならず各孔同士が通じない位置にある状況に対応している。一方、副羽根部22の長孔22bの他端部に規制部29が位置する場合(図13参照)は、副羽根部22が主羽根部21に対し最大の連通位置にある、すなわち、副羽根部22の各孔22aが主羽根部21の各孔21aと完全に重なって各孔同士が最大限通じる位置にある状況に対応している。
【0041】
こうして、副羽根部22は、この副羽根部22の各孔22aが主羽根部21の各孔21aと重なって各孔同士が通じる連通位置から、副羽根部22の各孔22aが主羽根部21の各孔21aと重ならず各孔同士が通じない非連通位置までの範囲で、調整機構部30により主羽根部21に対し移動させて位置調整され、孔同士の連通度合いを変化させることとなる。
【0042】
そして、副羽根部22は、主羽根部21が閉止位置に位置する状態で、調整機構部30により非連通位置に位置させられた場合、ダンパ本体10内部を全閉状態とする。一方、副羽根部22は、主羽根部21が閉止位置に位置する状態のまま、調整機構部30により非連通位置以外に位置させられた場合、連通する副羽根部22と主羽根部21の各孔を通じて調和空気がダンパ本体10内部で流通可能な孔開放状態とする。
【0043】
副羽根部22における外周部のうち、中間シート23寄りの表面とは反対側の表面の外周側に位置する角部、言い換えると、中間シート23から遠い側の、ダンパ本体10の内部空間に露出する角部、に対しては、面取り加工、すなわち、角部を削って角面とする加工が施される(図8参照)。こうして、主羽根部21がダンパ本体10内の流路を閉じる閉止位置やその近くにある場合に、副羽根部22においてより上流側に位置して流路に露出するはずの角部が、面取りでより角度の緩やかな縁形状とされることにより、ダンパ羽根20外周部とダンパ本体10内周面との間に調和空気が流れる際の、副羽根部22のこうした角部における渦発生を防止している。それに伴い、このような角部での渦発生に起因する、ダンパ羽根20下流位置で発生する渦の非定常運動を抑制して、騒音の発生を減らすことができる。なお、この副羽根部22への面取り加工は、角部を削って角面とするC面取りとしているが、これに限らず、角部を滑らかな丸面とするR面取りとすることもできる。
【0044】
これらダンパ羽根20をなす主羽根部21及び副羽根部22の各孔21a、22aの大きさについては、主羽根部21と副羽根部22のうち、ダンパ本体10内部の全閉状態で調和空気の流れ方向の上流側に位置する方の孔を、他方の孔より大きい孔とされる構成である。具体的には、図3図4図14、及び図15に示すように、全閉状態でより上流側に位置する副羽根部22の各孔22aが、主羽根部21の各孔21aより大きくされる構成である。
【0045】
なお、主羽根部と副羽根部の支持構造として上記と異なる仕組みを採用して、副羽根部より主羽根部が上流側に位置する構造とした場合には、より上流側に位置する主羽根部の各孔が、副羽根部の各孔より大きくされることとなる。
【0046】
前記中間シート23は、不織布等の可撓性を有し且つ多孔質であるシート材からなり、複数の孔23aを主羽根部21及び副羽根部22と共通する所定の配置で穿設され、主羽根部21に貼付等で一体に固定されて、主羽根部21と副羽根部22との間に一枚のみ介設される構成である。
【0047】
中間シート23は、金属である副羽根部22に対する表面の摩擦抵抗が小さくなる性質を有するものであり、こうした中間シート23を主羽根部21と副羽根部22の間に介在させることで、主羽根部21に対する副羽根部22の摺動の円滑化が図れる仕組みである。
【0048】
中間シート23に設けられる各孔23aは、主羽根部21及び副羽根部22の各孔21a、22aより小さくされる。また、この中間シート23の各孔23aは、中間シート23が固定される主羽根部21の各孔21aと、互いに孔中心を一致させ、孔同士を常時通じさせる配置とされる構成である。
【0049】
このため、副羽根部22が主羽根部21に対し、副羽根部22の各孔22aが主羽根部21の各孔21aと重ならず各孔同士が通じない非連通位置にある場合、中間シート23の各孔23aも副羽根部22の各孔22aとは通じていない。また、副羽根部22が主羽根部21に対し、副羽根部22の各孔22aが主羽根部21の各孔21aと重なって各孔同士が通じる連通位置にある場合は、中間シート23の各孔23aも副羽根部22の各孔22aと通じている。
【0050】
そして、主羽根部21と副羽根部22の孔21a、22aが重なって連通する際に、最も小さい中間シート23の孔23aが開放部分となることから、主羽根部21と副羽根部22の孔縁部での渦の発生を抑制でき、渦に起因する騒音の低減が図れる。
【0051】
中間シート23は、主羽根部21と副羽根部22との間に一枚のみ配設される構成としているが、これに限らず、主羽根部と副羽根部にそれぞれ中間シートを貼設するなどして、主羽根部と副羽根部との間に中間シートを二枚配設することもできる。ただし、中間シートを二枚配設する場合、中間シート同士の擦れが生じるおそれがある。また、主羽根部や副羽根部に対し中間シートを貼設する際に正しい位置からのずれが生じた場合、本来孔同士が完全に重なる状況であっても中間シート同士で各孔位置がずれてしまい、このずれに基づいて開口面積のばらつきが生じ、ダンパ装置ごとの騒音の個体差に繋がるおそれがある。
【0052】
このため、主羽根部と副羽根部との間に不織布等の中間シートを一枚配設する方が、不織布を二枚配設する場合に比べて、中間シート同士の擦れがなく、主羽根部に対する副羽根部の摺動に係る信頼性を確保しやすい点で好ましい。また、中間シートを一枚のみ配設すれば、シート貼設の際にずれが生じても、中間シート同士での孔位置のずれはそもそもなく、開口面積のばらつきとそれに伴う騒音の個体差を排除でき、好ましい。
【0053】
なお、中間シート23を主羽根部21と一体化し、主羽根部21の各孔21aと中間シート23の各孔23aとは、互いに孔を常時通じさせる構成としているが、これに限られるものではなく、中間シートを副羽根部に貼設などにより一体化して、副羽根部の各孔と、中間シートの各孔とが、互いに孔を常時通じさせる構成とすることもできる。
【0054】
前記調整機構部30は、内枠部40を介してダンパ本体10に回転可能に支持される入力軸31と、この入力軸31からその軸方向と直角をなす向きに突設される突出片32と、入力軸31の周りに取り付けられてダンパ羽根20の主羽根部21を所定の回転方向に付勢する付勢手段33とを有する構成である。
この調整機構部30は、ダンパ羽根20に対し、ダンパ本体10内部の全閉状態でダンパ羽根20より調和空気の流れ方向の下流側となる位置に配設される。
【0055】
調整機構部30は、ダンパ羽根20を傾動させてダンパ本体10の流路を開閉すると共に、ダンパ羽根20の副羽根部22を主羽根部21に対し動かしてダンパ羽根20の各孔を開閉するものである。詳細には、調整機構部30は、駆動部50で駆動される入力軸31の回転をダンパ羽根20の主羽根部21と副羽根部22に伝達し、ダンパ羽根20全体をダンパ本体10に対し傾動させる。また、調整機構部30は、入力軸31の回転をダンパ羽根20の副羽根部22のみに伝達し、副羽根部22を主羽根部21に対し移動可能とすることもできる。
【0056】
前記入力軸31は、ダンパ本体10内を横断する配置としてダンパ本体10内に回転可能に設けられ、軸方向に所定間隔で略円筒状のスリーブ24を回転可能に配設され、このスリーブ24にダンパ羽根20の主羽根部21を固定されることで、スリーブ24を介して主羽根部21を相対回転可能に支持するものである。この入力軸31は、ダンパ本体10の外側で駆動部50と接続される。
【0057】
前記突出片32は、細い棒状体として形成され、入力軸31の所定箇所にその軸方向と直角をなす向きに突出させて配設される構成である。
この突出片32は、主羽根部21に設けられた長孔21bを貫通すると共に、副羽根部22に設けられた係合孔22cに係合して、端部を副羽根部22表面に突出させる。
【0058】
突出片32が貫通する主羽根部21の長孔21bは、入力軸31の軸方向と直角をなす向きに連続し、この長孔21b内で突出片32を移動可能としている。この長孔21bにより、長孔21b内での突出片32の相対移動を伴う、主羽根部21に対する入力軸31の相対回転が許容される。逆にいえば、主羽根部21は、この突出片32によって、長孔21bを突出片32に対し相対移動させられる範囲内でのみ、入力軸31に対し相対的に回転できる状態に拘束される。
【0059】
一方、突出片32は、副羽根部22の係合孔22cに係合することで、ダンパ本体10に対し、回転する入力軸31と一体に副羽根部22を傾動させることができる。そして、突出片32が主羽根部21に対し長孔21bの範囲内で相対移動する場合には、副羽根部22も主羽根部21に対し相対移動し、突出片32に従って長孔21bの連続方向に相対的にずれる状態となる。
【0060】
前記付勢手段33は、例えば、ねじりコイルばね等の、回転方向に付勢力を生じさせるものであり、入力軸31の周りに配置され、一端を内枠部40に、他端を主羽根部21にそれぞれ当接させた状態として設けられる。この付勢手段33は、入力軸31を中心として主羽根部21を内枠部40に対し、図14ないし図16における反時計回りに相対回転させる向きに付勢する。この付勢により、主羽根部21は、入力軸31に対し、長孔21bの一端部が突出片32に相対的に近付く向きに回転しようとする。結果として、主羽根部21がダクト本体10に対し傾動する間は、付勢手段33の付勢力により、主羽根部21は入力軸31に対し、長孔21bの一端部に突出片32が位置する状態から動かないよう拘束される。
【0061】
そして、主羽根部21の外周部がダンパ本体10の内周面に接して、主羽根部21が付勢手段33の付勢力を受けてもそれ以上ダクト本体10に対し傾動できなくなった場合には、入力軸31が主羽根部21に対し相対回転し、長孔21bの一端部から突出片32を相対的に遠ざける向きに動くこととなる。この主羽根部21に対する入力軸31の相対回転で、副羽根部22を主羽根部21に対し移動させられる仕組みである。
【0062】
このような調整機構部30が、入力軸31をダンパ本体10に対し回転させ、突出片32と付勢手段33とで入力軸31に拘束される主羽根部21と、突出片32への係合により入力軸31に拘束される副羽根部32を動かす。
【0063】
調整機構部30は、ダンパ本体10に対し主羽根部21と副羽根部32を動かすことで、ダンパ本体10内の流路を完全に閉塞する全閉状態と、この全閉状態に対し主羽根部21と副羽根部22の各孔が互いに通じるようにした孔開放状態と、この孔開放状態にある主羽根部21と副羽根部22をダンパ本体10に対し傾動させてダンパ本体10内を所定の開口面積とする羽根開放状態とを、切替可能としている。
【0064】
調整機構部30は、前記全閉状態として、主羽根部21を、その外周部がダンパ本体10の内周面に接してダンパ本体10内の流路を閉じる閉止位置に位置させ、且つ副羽根部22を、その各孔22aが主羽根部21の各孔21aと重ならず各孔同士が通じない非連通位置に位置させることができる。
【0065】
この全閉状態で、調整機構部30は、突出片32を主羽根部21の長孔21bにおける他端部に位置させており、入力軸31には、主羽根部21に対する突出片32の相対位置を維持する力が、駆動部50により与えられる状態となっている。
【0066】
こうした入力軸31に対し、駆動部50で入力軸31を回転させず保持する仕組みとしては、駆動部に設けられる減速機構における減速比を大きくしたり、減速機構を出力側すなわち入力軸側からの入力による逆転が不可能な機構とするなどにより、入力軸の意図しない回転を駆動部側で許容しない公知の仕組みを採用することができる。
【0067】
また、調整機構部30は、前記孔開放状態として、主羽根部21を前記閉止位置に位置させ、且つ副羽根部22を、その各孔22aが主羽根部21の各孔21aと少なくとも一部重なって各孔同士が通じる所定位置に位置させることができる。
【0068】
この孔開放状態で、調整機構部30は、突出片32を主羽根部21の長孔21b内のいずれかに位置させており、入力軸31には、突出片32の相対位置を維持可能とする力が、駆動部50により加えられる状態となっている。
【0069】
こうした孔開放状態において、副羽根部22が主羽根部21に対し連通位置に達して、副羽根部22の各孔22aが主羽根部21の各孔21aと完全に重なって各孔同士が最大限連通した場合には、調整機構部30は、突出片32を主羽根部21の長孔21bにおける一端部に位置させることとなる。
【0070】
さらに、調整機構部30は、前記羽根開放状態として、主羽根部21を副羽根部22及び中間シート23と共に傾動させて、ダンパ本体10に対し、前記閉止位置からダンパ本体10をなす筒体の連続方向と平行となる全開位置までの角度範囲における所定の傾きとすることができる。
【0071】
この羽根開放状態で、調整機構部30は、突出片32を主羽根部21の長孔21bにおける一端部に位置させている。入力軸31には、主羽根部21の長孔21bにおける一端部の孔縁からこれと接する突出片32を通じて加わる付勢手段33の付勢力に抗って、ダンパ本体10に対する入力軸31及び突出片32の相対位置を維持可能とする力が、駆動部50により加えられる状態となっている。
【0072】
こうして、調整機構部30により、ダンパ羽根20をなす主羽根部21と副羽根部22とを動かして、ダンパ本体10内の流路における全閉状態と、孔開放状態と、羽根開放状態との、三つの状態を選択可能とし、特に、全閉状態と羽根開放状態との中間の状態となる孔開放状態を導入することによって、ダンパ羽根全体を傾動させて流路を開閉する際に急激な風量変化が生じず、従来の一枚のダンパ羽根のみで風量調整する場合のような、全閉状態からダンパ羽根を少し傾動させて開放する際や逆に閉止する際の急激な風量変化や、それに伴う風切り音の発生といった、風量制御における問題を解消でき、安定した風量制御が行える。
【0073】
前記内枠部40は、ダンパ本体10内を横断し、且つダンパ羽根20の動く範囲から外した配置として設けられ、空気抵抗の小さい滑らかな表面を有し、調整機構部30を覆うものである。
【0074】
内枠部40は、ダンパ本体10をなす筒体内径に近い長さとされる細長い矩形面と、この矩形面の各端辺から矩形面と直角をなす向きに突出する突出壁とを有する、容易に変形しない金属製の略箱状体とされる構成である。この略箱状の内枠部40は、内側に調整機構部30を収容可能とされる。
そして、調整機構部30は、この内枠部40の内側に収容される配置として、内枠部40に取り付けられ、内枠部40を介してダンパ本体10に支持されることとなる。
【0075】
内枠部40は、調整機構部30を取り付けられた状態で、ダンパ本体10の貫通孔11を通じて、ダンパ本体10の内部に配設される。
このダンパ本体10内部への配設状態で、内枠部40は、その長手方向の一端部を、ダンパ本体10における貫通孔11と対向する位置の内周面に連結される。また、内枠部40は、長手方向の他端部を、ダンパ本体10に取り付けられたカバー部12の内面に連結される。
【0076】
この状態で、内枠部40は、長手方向一端部に位置する一の角部を、ダンパ本体10の内周面に当接させ、一の角部とは対角の位置関係となる、他端部における他の角部を、カバー部12の内面に当接させる構成である。
【0077】
内枠部40において、その一端部における一の角部と、他端部における他の角部との間の距離は、ダンパ本体10の設計形状における、ダンパ本体横断面の中心位置から内周面までの径寸法と、同じ中心位置から外周面までの径寸法との合計寸法(理論値)、と等しくされる。
【0078】
さらに、内枠部40は、ダンパ本体10内部への配設状態では、ダンパ本体10内部の全閉状態でダンパ羽根20より調和空気流れ方向の下流側となる位置に配設される構成である。
詳細には、内枠部40は、その矩形面をダンパ本体10の横断面と平行な向きとされ、調整機構部30を調和空気流れ方向の下流側から覆う配置とされて設けられる。
【0079】
こうして、調整機構部30と内枠部40が、全閉状態でダンパ羽根20より下流側となる所定位置に設けられることで、ダンパ羽根20が全開位置やその近くにある状態を除いて、ダンパ本体10内を流れる調和空気は、より上流側に位置するダンパ羽根20に当たることとなり、調和空気が調整機構部30や内枠部40に直接接触する状態になりにくく、調和空気と調整機構部30や内枠部40との接触に伴う風切り音等の騒音の発生を抑制できる。
【0080】
また、内枠部40が、一端部における一の角部をダンパ本体10の内周面に当接させ、他端部における他の角部をダンパ本体10の外周面と同じ径となるカバー部12の内面に当接させるのに対応して、内枠部40における一の角部と他の角部との間の対角長さを、ダンパ本体10横断面の中心位置から内周面までの径寸法(設計寸法)と、同じ中心位置から外周面までの径寸法(設計寸法)との合計寸法と等しくしている。このため、ダンパ本体10に内枠部40を適切な配置で固定すると、ダンパ本体10が設計形状である真円から外れた歪みのある断面形状である場合、ダンパ本体10を固定に伴って内枠部40に合わせて本来の真円に近付くよう変形させられ、ダンパ本体10の真円度が改善することとなる。これにより、一般的に、金属平板をその両端同士が向かい合うように曲げ加工した上で、両端同士を溶接一体化して円筒体とする、筒体製造工程の関係で、断面形状を真円とするのが難しいダンパ本体を、真円でない状態のまま用いた場合のような、ダンパ羽根の傾動時におけるダンパ羽根とダンパ本体との接触等による異音発生や、接触に伴う摩擦抵抗増大により傾動が途中で停止し、風量調整が行えなくなる事態を回避することができる。
【0081】
なお、調整機構部30及び内枠部40が、ダンパ羽根20に対し、全閉状態でダンパ羽根20より調和空気流れ方向の下流側となる位置に配設される構成としているが、これに限らず、調整機構部と内枠部を、全閉状態でダンパ羽根より上流側となる位置に配設する構成とすることもできる。ただし、このような配置で調整機構部と内枠部を設けた場合、ダンパ羽根を傾動させて開口面積を調整する状況で、ダンパ羽根の傾きに関わりなく調和空気の気流が内枠部に直接当たる状態となり、ダンパ羽根の傾きが所定角度範囲にある場合に、調和空気の気流が内枠部の角部に衝突して発生する渦の影響が強まり、こうした渦に起因する騒音が大きくなるおそれがある。このため、調整機構部と内枠部をダンパ羽根より下流側となる位置に設ける方が、ダンパ羽根により気流から隠される機会が多い分、調和空気の気流が内枠部に衝突しにくくなり、渦の発生とその影響を少なくして、騒音を抑えられる点でより好ましい。
【0082】
前記駆動部50は、ダンパ本体10外側に固定されてダンパ本体10と一体に配設され、出力軸端を調整機構部30の入力軸31のダンパ本体10外部に位置する端部と連結され、回転駆動力を調整機構部30側へ伝達可能とされるものである。この駆動部50は、具体的には、駆動部50に内蔵又は外付けされる所定の制御部(図示を省略)の制御下で作動する電動機、又はこれと減速機構との組合せ、といった公知の機構であり、詳細な説明を省略する。この駆動部50が調整機構部30の入力軸31を回転駆動することで、この入力軸31を介してダンパ羽根20を動かせる仕組みである。
【0083】
詳細には、電動機等を有する駆動部50が、使用者の操作に基づく制御指令を受けて、この駆動部50と連結する調整機構部30の入力軸31を動かし、ダンパ羽根20全体を傾動させたり、ダンパ羽根20の副羽根部22を主羽根部21に対し移動させて、孔同士が重なり合って調和空気を通過させる連通位置と、孔同士が互いにずれて重なり合わない非連通位置との間で位置調整する仕組みである。
【0084】
次に、前記構成に基づくダンパ装置の使用状態について説明する。前提として、従来の変風量調整装置と同様に、風速センサ13で検出した風速から空気流量を取得し、制御指令に基づく風量に風速センサ13から取得した流量が一致するように、駆動部50でダンパ羽根20を動かして風量調整を行うものとする。
【0085】
ダンパ装置1は、通常は従来の変風量調整装置と同様に、ダンパ羽根20を傾動させて、調和空気を通過させるダンパ本体10内部の開口面積を変化させ、風量調整を行う。
この場合、調整機構部30は、ダンパ羽根20の主羽根部21と副羽根部22を羽根開放状態として傾動させる。
【0086】
この羽根開放状態において、調整機構部30に取り付けられたダンパ羽根20の主羽根部21は、付勢手段33による付勢で、入力軸31に対し主羽根部21における長孔21bの一端部に突出片32を存在させる位置関係を維持して、入力軸31の回転に追随して傾動する。そして、突出片32と係合孔22cで係合する副羽根部22は、その孔22aと主羽根部21の孔21aとを最大限連通させる連通位置にあって、規制部29により連結された主羽根部21と一体に傾動する。こうして、ダンパ羽根20全体が一体となってダンパ本体10に対し傾動することとなる。
【0087】
このようにダンパ羽根20を傾動させてダンパ本体10内流路の開口面積を変化させる場合、調和空気は主にダンパ羽根20外周部とダンパ本体10の内周面との間の隙間を通過して下流側に進行する。ただし、主羽根部21の各孔21aと副羽根部22の各孔22aが連通状態にあることから、調和空気の気流の一部は、ダンパ羽根20上の連通する孔を通じて下流側に向かう。
【0088】
調和空気の下流側へ向かう風量を減らす必要が生じた場合には、駆動部50で調整機構部30の入力軸31を回転させて、ダンパ本体10に対するダンパ羽根20の傾きを大きくする側にダンパ羽根20を傾動させ、ダンパ羽根20外周部とダンパ本体10の内周面との間の隙間を狭め、ダンパ本体10内部の開口面積を減少させる。
【0089】
ダンパ羽根20を傾動させてダンパ本体10内流路の開口面積を減少させた場合でも、ダンパ羽根20をなす主羽根部21の各孔21aと副羽根部22の各孔22aは依然連通状態にある。これら連通する各孔を通じて空気の一部が下流側に向かうものの、ダンパ本体10内流路全体としては開口面積を減少させているために、下流側へ向かう風量は減少することとなる。
【0090】
従来のダンパ羽根のように孔がないものと比較して、ダンパ羽根の傾動による開口面積の減少度合いが小さくなることで、従来のダンパ羽根で開口面積を小さくして風量を減らす際に生じていた風切り音等の騒音を抑えることができる。
【0091】
逆に、調和空気の下流側へ向かう風量を増やす必要が生じた場合には、駆動部50で調整機構部30の入力軸31を回転させて、ダンパ本体10に対するダンパ羽根20の傾きを小さくする側にダンパ羽根20を傾動させ、ダンパ羽根20外周部とダンパ本体10の内周面との間の隙間を広げて、ダンパ本体10内部の開口面積を増大させる。
【0092】
入力軸31の回転で、ダンパ本体10に対するダンパ羽根20の傾きを最小とする、すなわち、ダンパ羽根20をなす主羽根部21及び副羽根部22が、ダンパ本体10をなす筒体の連続方向と平行になる全開位置まで傾動すると、ダンパ本体10内の開口面積は最大となり、下流側へ向かう風量も最大となる。
【0093】
一方、調和空気の下流側へ向かう風量を著しく小さくしたり、風量を0にする場合には、調整機構部30は、ダンパ羽根20の主羽根部21と副羽根部22を傾動させる羽根開放状態から、孔開放状態、さらに全閉状態に移行することとなる。
【0094】
駆動部50で調整機構部30の入力軸31を回転させて、ダンパ本体10に対するダンパ羽根20の傾きを大きくする側にダンパ羽根20を傾動させ、ダンパ本体10内部の開口面積を減少させていくと、やがて主羽根部21は、その外周部をダンパ本体10の内周面に接触させて、主羽根部21でダンパ本体10内の流路を閉じる閉止位置に達することとなる。
【0095】
この主羽根部21が閉止位置にある状態から、入力軸31をさらに回転させると、調整機構部30は孔開放状態として主羽根部21に対し副羽根部22を移動させる。
詳細には、主羽根部21が閉止位置にある状態では、ダンパ本体10に接して拘束される主羽根部21は、入力軸31をさらに回転させても、この入力軸31と一体に傾動できない。このため、入力軸31が、主羽根部21に対し回転して、突出片32を長孔21b内で他端部側へ移動させることとなる。この孔開放状態では、入力軸31は、主羽根部21を通じて加えられていた付勢手段33の付勢力から解放されており、駆動部50から加わる力のみで位置決めされることとなる。
【0096】
そして、移動する突出片32により副羽根部22が押されることで、副羽根部22は主羽根部21に対し相対移動して、副羽根部22の孔22aと主羽根部21の孔21aとが重なった連通位置から孔同士の重なりを小さくするようにずれていく。こうして副羽根部22の孔22aと主羽根部21の孔21aとの重なりが小さくなり、ダンパ本体10内の開口面積がより一層小さくなると、調和空気の下流側へ向かう風量も極めて小さいものとなる。
【0097】
さらに、調和空気の下流側へ向かう風量を0にするために、入力軸31を回転させ続けると、突出片32が主羽根部21の長孔21bの他端部に達して、入力軸31は回転を停止する。この時、副羽根部22は、その孔22aを主羽根部21の孔21aに対し完全にずらした非連通位置まで主羽根部21に対して移動しており、ダンパ本体10内流路は完全に閉塞された全閉状態となって、風量0を実現する。
【0098】
こうしたダンパ本体10内の流路の全閉状態から、あらためて調和空気の下流側へ向かう風量を増やしていく場合は、全閉状態への移行の際とは逆向きに入力軸31を回転させる。入力軸31を回転させると、この入力軸31にスリーブ24を介して取り付けられた主羽根部21にも、これを入力軸31と同じ向きに回転させようとする力が加わる。しかしながら、主羽根部21には、付勢手段33から、入力軸31の回転方向とは逆向きに回転させようとする付勢力が加わっていることから、主羽根部21はそのまま閉止位置にある状態を維持する。このため、入力軸31が回転すると、動かない主羽根部21の長孔21b内をその一端部側へ突出片32が移動することとなる。そして、この突出片32を係合孔22cに係合させている副羽根部22が、突出片32の移動に従って、主羽根部21に対し、副羽根部22の孔22aと主羽根部21の孔21aとが重ならない非連通位置から、孔同士の重なりを徐々に大きくするように移動する。その結果、全閉状態から孔開放状態となって、調和空気が連通する孔を通じて下流側へ向かうようになる。
【0099】
風量を増やすために入力軸31をさらに回転させると、この入力軸31の回転に伴って突出片32が移動し、突出片32は主羽根部21の長孔21bの一端部に達する。この時、副羽根部22は、その孔22aを主羽根部21の孔21aに対し完全に重ねて孔同士を最大限連通させる連通位置まで、主羽根部21に対して移動しており、副羽根部22の主羽根部21に対する相対移動は終了となる。
【0100】
そして、さらに入力軸31をこれまでと同じ向きに回転させると、主羽根部21の長孔21bの一端部に位置する突出片32等を通じて、入力軸31から主羽根部21にこれを回転させようとする力が加わる。この力が付勢手段33から主羽根部21に加わる逆回転方向の付勢力を上回ると、突出片32により主羽根部21が押されて動く状態となり、合わせて突出片32と係合する副羽根部22も同様に押されて動く状態となる。これにより、閉止位置にあった主羽根部21が副羽根部22と共にダンパ本体10に対する傾きを小さくする側に傾動し、ダンパ羽根20外周とダンパ本体10内周面との間に隙間を生じさせる状態となる。こうして、前記同様にダンパ羽根20全体が一体となってダンパ本体10に対し傾動し、ダンパ本体10内流路の開口面積を変化させられる羽根開放状態が得られることとなる。
【0101】
上記した孔開放状態と羽根開放状態で、主羽根部21の各孔21aと副羽根部22の各孔22aは連通状態にあり、調和空気の気流の一部が、ダンパ羽根20上の連通する各孔を、副羽根部22の孔22a、中間シート23の孔23a、主羽根部21の孔21aの順で通過して、ダンパ羽根20の下流側へ進行する。
【0102】
ダンパ羽根20上の各孔を調和空気が通過する際、調和空気の気流に対し、重なる孔のうち最も小さい孔である中間シート23の孔23aの周縁部が、孔周りの構造部分の中で最も端の部分として気流に接し、この孔23aの周縁部の下流側で渦が発生しやすい状況にある。
【0103】
しかしながら、この孔縁の最内周に位置する中間シート23は、内部に隙間を有する多孔質材からなり、こうした隙間のある内部を音が伝搬することで音のエネルギーを減衰させることができる。また、中間シート23内部を通過した気流の中には、内部の隙間で生成された渦が含まれるため、気流は小さな擾乱を伴う流れとなる。擾乱の影響で、下流側で生成される渦は弱まるため、孔を通過する気流に起因する音の発生を抑えられる。
【0104】
さらに、ダンパ羽根20をなす主羽根部21と副羽根部22のうち、全閉状態でより上流側に位置する副羽根部22の孔22aを大きくする、すなわち、より下流側に位置する主羽根部21の孔21aがより小さくなるようにしている。これにより、気流が孔を通過する際の通過流速を高くすることができる。そして、多孔質材からなる中間シート23内部の隙間で生成された渦による擾乱の影響は、流速が高まった分強くなることから、その下流側の孔縁部で生成される渦をより一層弱められ、騒音を減らすことができる。
【0105】
加えて、可撓性を有する中間シート23は、調和空気の気流の圧力で変形可能であり、孔23aの周縁部の位置が定まりにくくなっていることで、ダンパ羽根20上の各孔において渦は乱れを内包し不安定なものとして生じることに加え、孔23aの周縁部は孔ごとにそれぞれ独立した変形状態となることから、各孔ごとの渦の発生は不規則性を有するものとなり、渦同士が互いに他の渦を打ち消すように作用し合う。これにより、渦が発生しても、渦ごとの不安定性で渦単独でも消散しやすい上に、渦の相互の作用で渦の消散が促されることとなる。こうして、渦を短い時間で消散させられることで、騒音の発生を抑えられ、下流側に伝わる騒音を低減できる。
【0106】
なお、ダンパ本体10内部の開口面積を大きくするよう、ダンパ羽根20をダンパ本体10に対し傾動させて、ダンパ羽根20がダンパ本体10の筒体連続方向と平行となる全開位置に近づけた場合、ダンパ羽根20とダンパ本体10の内周面との間の隙間が大きくなり、この部分を通過して下流側に進行する調和空気の流量が大きくなることで、ダンパ羽根20上の孔周囲での渦に基づいて発生する音の影響は相対的に小さくなる。
【0107】
このように、本実施形態に係るダンパ装置においては、ダンパ本体10に対し傾動可能なダンパ羽根20を、主羽根部21とこれに沿って移動する副羽根部22、さらに主羽根部21と副羽根部22との間に介在する中間シート23で形成し、調整機構部30で副羽根部22を主羽根部21に対しずらして孔の連通と非連通を切替可能とし、ダンパ本体10内部に調和空気を流通させる場合には、調和空気がダンパ羽根20の連通させた孔を通過可能とすることから、ダンパ羽根20を傾動させてダンパ本体10内部の開口面積を調整するにあたって、調和空気の一部がダンパ羽根20の連通させた孔を通過するのに伴い、ダンパ羽根20外周部とダンパ本体10内周面との間を通過する気体流量の急変を防止でき、ダンパ羽根10外周部における気流による渦の生成を抑えられ、渦に基づく音の発生を抑えられ、ダクト経路の下流側に伝わる騒音を低減できる。また、ダンパ羽根20の孔を調和空気が通過する場合に、孔縁の最内周に位置する中間シート23は可撓性を有しており、孔を通過する気体の圧力で中間シート23が変形しつつ、渦の発生に不規則性を与えて渦を乱れさせ、渦を複雑化、不安定化させて渦の消散を促すこととなり、渦が発生しても短い時間で消散させて、ダンパ羽根20の孔を通過する気体に起因する音の発生を抑えられる。
【0108】
なお、前記実施形態に係るダンパ装置においては、変風量調整装置(VAV)等に用いる例として、調和空気の給気用となるダクト経路内に配設する構成としているが、これに限られるものではなく、空気調和対象空間から排出された空気を送り出す排気用となるダクト経路内に配設され、排出空気の流量調整を行う構成とすることもできる。
【0109】
また、前記実施形態に係るダンパ装置においては、ダンパ本体10を円筒体とすると共に、内部のダンパ羽根20を長円形の板状とする構成としているが、これに限られるものではなく、開口枠体を角筒状とすると共に、羽根を開口枠体の開口形状に対応した矩形状又は方形状の板状体としてもかまわない。
【0110】
また、前記実施形態に係るダンパ装置において、ダンパ羽根20を動かすための駆動部50は、変風量調整装置(VAV)等に用いる例として、制御により作動する電動機や、電動機と減速機構とを組合せた機構を採用する構成としているが、これに限られるものではなく、自動制御を要しない用途に適用される装置の場合には、駆動機構として、操作者の手からの操作力を伝える手動のハンドルや、これと減速機構とを組合せたものを用いる構成とすることもできる。
【0111】
(本発明の第2の実施形態)
前記第1の実施形態に係るダンパ装置においては、ダンパ羽根20上の孔の大きさに対しダンパ本体10及びダンパ羽根20の大きさが十分大きく、ダンパ羽根20上に孔が多数設けられる構成としているが、この他、第2の実施形態として、例えば、図19ないし図29に示すように、ダンパ装置2において、ダンパ本体15の大きさが比較的小さく、これに対応する大きさとされたダンパ羽根25上の孔もより少なく配設される構成とすることもできる。
【0112】
ダンパ羽根において、仮に外周縁に孔が重なる場合、孔の用をなさなくなる関係上、そのような孔は設けられない。また、孔の配設予定位置が外周縁近傍となる場合も、孔の加工方法によっては孔周囲の強度が不足して、適切な孔開け加工ができず破損を招くことから、孔を設けられなかった。このため、ダンパ羽根上の孔を、仮に前記第1の実施形態のように、羽根全体で配置パターン及び大きさを同じくして設ける場合、ダンパ羽根の外周近くでは、上記の孔配設の制約もあって、羽根中央部など他の部位に比べ、孔の配置割合が小さくなってしまう。これに対し、本実施形態のダンパ装置2では、孔配置パターンはダンパ羽根25全体で同一としつつ、他位置より小さい孔をダンパ羽根25外周部に設けることで、孔を無理なく配置することができる。その結果、ダンパ羽根25が小さく、孔配置の制約が大きい場合であっても、ダンパ羽根25上の孔による開口率を十分に確保できる。
【0113】
この場合、ダンパ羽根25の傾動でダンパ羽根25とダンパ本体15内周面との隙間が小さい状態とされても、前記第1の実施形態同様、ダンパ羽根25上の孔を通じて適量の調和空気を流通させることができ、騒音の抑制が図れることとなる。
【0114】
なお、ダンパ羽根25において、主羽根部26における外周部の孔26b、及び、副羽根部27における外周部の孔27bは、主羽根部26における外周部以外の孔26a、及び、副羽根部27における外周部以外の孔27aに対し、それぞれ小さくなる。しかし、中間シート28における孔28aは、外周部であっても外周部以外であっても変わらない大きさとされ、この中間シート28の孔28aに対し、主羽根部26における外周部の孔26b、及び、副羽根部27における外周部の孔27bは、少なくとも大きくされる。
【0115】
そして、主羽根部26における外周部の孔26bに対し、副羽根部27における外周部の孔27bが大きくされる点は、主羽根部26における外周部以外の孔26aに対し、副羽根部27における外周部以外の孔27aが大きくされる前記第1の実施形態の場合と同様である。
【実施例0116】
本発明に係るダンパ装置を、実際にダクト経路内に配設して使用した場合に、下流側に伝わる騒音を従来のダンパ装置と比べて抑制可能か否かを検証するために、ダンパ装置に調和空気を流通させた状態で騒音の測定を行い、得られた測定結果に基づいて、ダンパ装置の騒音抑制性能について評価した。
【0117】
騒音の測定は、本発明に係るダンパ装置を測定試験用のダクト経路内に配設し、このダンパ装置の下流側に設けた騒音計(サウンドレベルメータ)を用いて、騒音レベル(A特性音圧レベル)を測定する手法で行った。また、騒音について、周波数分析(オクターブ分析)として、可聴周波数範囲における主要な八つの公称中心周波数(63Hz、125Hz、250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hz、8000Hz)で示される各周波数帯域ごとの音圧レベルを取得した。
【0118】
(実施例1)
まず、本発明に係るダンパ装置の実施例として、ダンパ本体の内径が350mmであるダンパ装置について、測定試験用のダクト経路内に配設し、調和空気を流通させて騒音の測定を行った。
本実施例に係るダンパ装置における各部の寸法は以下の通りである。
【0119】
まず、ダンパ本体の長さ(筒体連続方向の長さ)は、500mmである。そして、このダンパ本体内部に収められるダンパ羽根をなす、主羽根部、副羽根部、及び中間シートの厚さは、それぞれ1.0mm、0.6mm、0.3mmとされる。
また、主羽根部の孔の直径は、7.6mmとされ、副羽根部の孔の直径は、8.5mmとされる。そして、これらの孔より小さい、中間シートの孔の直径は、5.5mmとされる。
【0120】
これら主羽根部、副羽根部、及び中間シートで共通する孔の配置パターンは、千鳥状配置(図3図4参照)とされ、ダンパ羽根の傾動中心軸と平行な向きの孔配置ピッチが8.5mm、ダンパ羽根の傾動中心軸と直角をなす向きの孔配置ピッチが8.5mmとされ、配置される孔の数は486である。
【0121】
このような実施例1に係るダンパ装置について、ダンパ装置の実使用状態に近く、且つダンパ装置における発生騒音の下流側への影響が相対的に大きくなる、調和空気の風速3m/sの場合で、ダンパ装置における開口面積調整により差圧を複数通り変化させ、変化させた各状態における騒音について、上記のように騒音計で騒音レベルと各周波数帯域ごとの音圧レベルを測定した。この測定結果を表1に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
また、比較例1として、ダンパ羽根が孔を設けられず単純な一枚板状とされる従来同様の構成となるダンパ装置について、上記同様に騒音計で騒音レベルと各周波数帯域ごとの音圧レベルを測定した。なお、この比較例1のダンパ装置は、ダンパ本体の内径を350mm、長さを500mmとされるなど、ダンパ羽根を一枚の板状とされる点以外の構造を実施例1の装置と同じくされる。この比較例1についての測定結果を表2に、比較例1と実施例1との間での測定値の差を表3に、それぞれ示す。
【0124】
【表2】
【0125】
【表3】
【0126】
表1ないし表3より、実施例1のダンパ装置では、比較例1のダンパ羽根に孔がないタイプに比べて、騒音レベルが大幅に減少していることが確認できた。特に、周波数分析の結果から、風切り音として人の耳に付きやすい2000Hz以下の騒音のレベルが比較例1に対し大幅に減少しており、開口面積調整にあたりダンパ羽根の孔を調和空気が通過できることで、騒音の発生を効率よく抑制できることがわかる。
【0127】
(実施例2)
次に、本発明に係るダンパ装置の別の実施例として、ダンパ本体の内径が150mmであるダンパ装置について、前記実施例1と同様に騒音の測定を行った。
本実施例に係るダンパ装置における各部の寸法は以下の通りである。
【0128】
まず、ダンパ本体の長さ(筒体連続方向の長さ)は、450mmである。そして、このダンパ本体内部に収められるダンパ羽根をなす、主羽根部、副羽根部、及び中間シートの厚さは、それぞれ1.0mm、0.6mm、0.3mmとされる。
【0129】
また、主羽根部の孔の直径は、7.6mmとされ、副羽根部の孔の直径は、8.5mmとされる。そして、これらの孔より小さい、中間シートの孔の直径は、5.5mmとされる。ただし、外周部近くの一部の孔については、主羽根部の孔の直径が、7.0mmとされ、副羽根部の孔の直径が、7.6mmとされるなど、他の部位より小さくされる。なお、これらの小さい孔と重なる中間シートの孔の直径は、他と同じ5.5mmとされる。
【0130】
これら主羽根部、副羽根部、及び中間シートで共通する孔の配置パターンは、千鳥状配置(図21図22参照)とされ、ダンパ羽根の傾動中心軸と平行な向きの孔配置ピッチが8.5mm、ダンパ羽根の傾動中心軸と直角をなす向きの孔配置ピッチが8.5mmとされ、配置される孔の数は66である。
【0131】
このような実施例2に係るダンパ装置について、前記実施例1の場合と同様、調和空気の風速3m/sの場合で、ダンパ装置における開口面積調整により差圧を複数通り変化させ、変化させた各状態における騒音について、騒音計で騒音レベルと各周波数帯域ごとの音圧レベルを測定した。この測定結果を表4に示す。
【0132】
【表4】
【0133】
また、比較例2として、ダンパ羽根が孔を設けられず単純な一枚板状とされる従来同様の構成となるダンパ装置について、実施例2と同様に騒音計で騒音レベルと各周波数帯域ごとの音圧レベルを測定した。なお、この比較例2のダンパ装置は、ダンパ本体の内径を150mm、長さを450mmとされるなど、ダンパ羽根を一枚の板状とされる点以外の構造を実施例2の装置と同じくされる。この比較例2についての測定結果を表5に、比較例2と実施例2との間での測定値の差を表6に、それぞれ示す。
【0134】
【表5】
【0135】
【表6】
【0136】
表4ないし表6より、実施例2のダンパ装置でも、比較例2のダンパ羽根に孔がないタイプに比べて、騒音レベルが大幅に減少していることが確認できた。特に、周波数分析の結果から、風切り音として人の耳に付きやすい2000Hz以下の騒音のレベルが比較例2に対し大幅に減少しており、開口面積調整にあたりダンパ羽根の孔を調和空気が通過できることで、騒音の発生を効率よく抑制できることがわかる。
【0137】
上記各測定結果より、本発明に係るダンパ装置は、ダンパ羽根を傾動させてダンパ本体内部の開口面積を調整する際に、ダンパ羽根において連通させた孔を調和空気の一部が通過可能としていることで、従来のダンパ装置で生じたような、ダンパ羽根の傾動に伴うダンパ羽根外周部とダンパ本体内周面との間を通過する空気流量の急変を防ぎ、ダンパ本体の大きさに関わりなく、ダンパ羽根外周部における渦の生成を抑えて、こうした渦に基づく騒音を小さくできることは明らかである。
【符号の説明】
【0138】
1、2 ダンパ装置
10、15 ダンパ本体
11 貫通孔
12 カバー部
13 風速センサ
20、25 ダンパ羽根
21、26 主羽根部
21a 孔
21b 長孔
22、27 副羽根部
22a 孔
22b 長孔
22c 係合孔
23、28 中間シート
23a 孔
24 スリーブ
26a、26b 孔
27a、27b 孔
28a 孔
29 規制部
29a 規制片
30 調整機構部
31 入力軸
32 突出片
33 付勢手段
40 内枠部
50 駆動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29