(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031029
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】衛星測位用アンテナ取付構造および衛星測位用アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
B66C 13/46 20060101AFI20240229BHJP
B66C 23/52 20060101ALI20240229BHJP
G01S 19/14 20100101ALI20240229BHJP
H01Q 1/12 20060101ALI20240229BHJP
H01Q 1/18 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B66C13/46 D
B66C23/52
G01S19/14
H01Q1/12 A
H01Q1/18
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134319
(22)【出願日】2022-08-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】390001993
【氏名又は名称】みらい建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】泉 誠司郎
(72)【発明者】
【氏名】勝呂 和之
【テーマコード(参考)】
3F204
3F205
5J047
5J062
【Fターム(参考)】
3F204AA04
3F204BA02
3F204DB03
3F204DB04
3F204DC01
3F205AA10
5J047AA02
5J047AA04
5J047BA02
5J047BG02
5J047DA02
5J062BB02
5J062CC07
5J062GG02
(57)【要約】
【課題】吊荷の中心位置と衛星測位用アンテナの位置との間に生じるオフセットを無くして、吊荷の位置の測定精度を向上させる衛星測位用アンテナ取付構造および衛星測位用アンテナ装置を提供する。
【解決手段】クレーン本体1aに支持されたブーム2と、ブーム2の先端部2aに設けられたシーブ4と、測位衛星からの電波を受信するアンテナ本体9と、アンテナ本体9を天頂へ向けた状態で支持するスタビライザ11と、ブーム2に取り付けられた取付架台20と、を備える。取付架台20は、シーブ4の回転軸4aの延長線L上に、スタビライザ11の回動中心となる支点12を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンに支持されたブームと、
前記ブームの先端部に設けられたシーブと、
測位衛星からの電波を受信するアンテナ本体と、
前記アンテナ本体を天頂へ向けた状態で支持するスタビライザと、
前記ブームに取り付けられた取付架台と、を備え、
前記取付架台は、前記シーブの回転軸の延長線上に、前記スタビライザの回動中心となる支点を有する、ことを特徴とする衛星測位用アンテナ取付構造。
【請求項2】
前記スタビライザは、前記支点に支持された支持ロッドと、前記支点よりも下側において前記支持ロッドに設けられた錘体とを有し、
前記取付架台は、前記支点が形成された座面部材と、前記座面部材を前記回転軸から離間させた位置に保持する脚部材と、を有することを特徴とする請求項1に記載の衛星測位用アンテナ取付構造。
【請求項3】
前記脚部材は、前記回転軸の周囲に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の衛星測位用アンテナ取付構造。
【請求項4】
前記取付架台は、前記ブームの左右の側面に取り付けられており、
前記スタビライザは、それぞれの前記取付架台の前記支点に支持された支持ロッドと、前記ブームの上方において左右の前記支持ロッド同士を繋ぐ連結部材とを有し、
前記アンテナ本体は、前記連結部材の延在方向で中間部に設けられている、ことを特徴とする請求項2または3に記載の衛星測位用アンテナ取付構造。
【請求項5】
クレーンのブームに取り付けられる衛星測位用アンテナ装置であって、
測位衛星からの電波を受信するアンテナ本体と、
前記アンテナ本体を天頂へ向けた状態で支持するスタビライザと、
前記ブームに取り付けられる取付架台と、を備え
前記取付架台は、前記スタビライザの回動中心となる支点を有し、前記クレーンのシーブの回転軸の延長線上に前記支点を保持可能である、ことを特徴とする衛星測位用アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星測位用アンテナ取付構造および衛星測位用アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、捨石マウンド造成時の捨石投入などの作業にクレーン船が用いられている。クレーン船は、ベースマシンとしてのクレーン本体を搭載している。クレーン本体には先端側を上下へ移動させるブームが回動可能に支持されている。
ブーム先端には、吊荷の位置検出装置としてGPSアンテナ等の衛星測位用アンテナが設けられている。
衛星測位用アンテナは、測位衛星からの電波を受信して自己位置を特定する。そして、吊荷の中心位置(フック中心位置)と自己位置との間に生じるオフセット量を補正して吊荷の位置を算出している(たとえば特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吊荷の吊下げ作業を行う際には、ブームの角度が変化するため、オフセット量が変化する。このため、吊荷の位置を正確に求められない場合があり更なる改善が求められている。
そこで、本発明は、吊荷の中心位置と衛星測位用アンテナの位置との間に生じるオフセットを無くして、吊荷の位置の測定精度を向上させることができる衛星測位用アンテナ取付構造および衛星測位用アンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の衛星測位用アンテナ取付構造は、ベースマシンに支持されたブームと、ブームの先端部に設けられたシーブと、測位衛星からの電波を受信するアンテナ本体と、アンテナ本体を天頂へ向けた状態で支持するスタビライザと、ブームに取り付けられた取付架台と、を備える。取付架台は、シーブの回転軸の延長線上に、スタビライザの回動中心となる支点を有している。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、吊荷の中心位置と衛星測位用アンテナの位置との間に生じるオフセットを無くして、吊荷の位置の測定精度を向上させることができる衛星測位用アンテナ取付構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】クレーン船の全体の構成を説明する側面図である。
【
図2】実施形態1の衛星測位用アンテナ装置が取り付けられたブーム先端の構成を説明する斜視図である。
【
図3】ブーム先端に取り付けられた取付架台の構成を説明する斜視図である。
【
図5】ブーム先端に設けられたアンテナ本体の位置を説明する上面図である。
【
図6】クレーンのブーム先端側付近を示す側面図である。
【
図7】クレーンのブーム先端側付近を示し、
図6と比較的して高い位置にある場合を説明する側面図である。
【
図8】実施形態2のクレーンでブーム先端の一側面にアンテナ本体が設けられた構成を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態の衛星測位用アンテナ取付構造および衛星測位用アンテナ装置について、適宜図面を参照しながら説明する。なお、以下の各図面では、主に各部分間の配置関係を模式的に示している。このため、各部分が示す相対的な大きさは、実際と相違する場合がある。また、同一の構成要素には同一の符号を付し重複する説明を省略する。
【0009】
実施形態1:
図1~
図7は、本発明の実施形態1の衛星測位用アンテナ取付構造および衛星測位用アンテナ装置を示している。
図1に示すように実施形態1のクレーン1は、洋上に浚渫あるいは吊荷7の上げ下ろしに用いられるクレーン船10に設けられる。クレーン船10の上甲板10aには、ベースマシンとしてのクレーン本体1aが水平回動軸1cを回動中心として水平方向へ回動(旋回)可能に配置されている。
【0010】
クレーン本体1aからは、ブーム2が突設されている。ブーム2は、金属製のトラスからなる。ブーム2の後端部は、クレーン本体1aに水平に設けられたブーム支持軸1bに支持されている。そして、ブーム支持軸1bを傾動中心としてブーム2を傾動させると、先端部2aは上下方向へ弧を描いて移動することができる。
ブーム2の先端部2aには、シーブ4および補助シーブ5が回転自在に設けられている。シーブ4は、水平に設けられた回転軸4aに支持されている。また、シーブ4には、クレーン本体1aの巻取装置(図示せず)から延ばされたワイヤ3が掛けられている。ワイヤ3は、バケット等の吊荷7を吊り下げている。そして、巻取装置の駆動により吊荷7をシーブ4の下方で上下方向へ移動させることができる。
【0011】
図2に示すようにブーム2の先端部2aには、測位衛星からの電波を受信するアンテナ本体(例えばGPSアンテナ)9と、アンテナ本体9を天頂へ向けた状態で支持するスタビライザ11と、が設けられている。
【0012】
アンテナ本体9は、測位衛星からの電波を受信すると、受信されたデータ信号を無線または有線にて接続されている図示しない位置算定装置に送信する。
位置算定装置は、アンテナ本体9から送られてくるデータ信号から吊荷7の位置を算定して位置計測データを求める。そして、位置算定装置は、操縦室6(
図1参照)に設けられた表示部またはクレーン1の外部の他の機器(図示せず)にこれらの位置計測データを送信して表示させることができる。
【0013】
スタビライザ11は、ブーム2に取り付けられた取付架台20を介してブーム2に支持されている。シーブ4を挟んで設けられたブーム2の各側面部2bには、回転軸4aの端部がそれぞれ挿通されている。回転軸4aの端部は、ブーム2の側面部2bから突出している。そして取付架台20は、回転軸4aの端部を跨ぐようにブーム2の側面部2bに取り付けられている。
なお実施形態1では、スタビライザ11を支持する左右一対の取付架台20,20のうち、左側(運転席6から見て右側)の側面2bに設けられている取付架台20の構成を中心に説明する。右側の取付架台20は、左側の取付架台20と左右対称に構成されているので、詳細な説明を省略する。
【0014】
図3に示すように、取付架台20は、座面部材22と、座面部材22を支持する複数(実施形態1では4本)の脚部材24とを有している。座面部材22は、スタビライザ11の支点12が中央に形成された円盤状の部材である。座面部材22は、回転軸4aの側端面4bから延長線Lの延設方向へ寸法W1だけ離間した位置に配置されている。
脚部材24は、ブーム2の側面部2bから側方に向かって張り出している。実施形態1の脚部材24は、四角柱形状に形成されている。脚部材24の一端部は、側面部2bのうち、回転軸4aを支持する軸受け部分の周囲に接合されている。すなわち、脚部材24は、回転軸4aに干渉しない(回転軸4aの回転を阻害しない)位置に配置されている。
実施形態1では、4本の脚部材24が、それぞれ回転軸4aから等距離で、周方向へ90度おきに等間隔で配置されており、かつ、側面部2bに対し垂直に固定されている。
【0015】
また、脚部材24の他端部は、座面部材22の内側面(側面部2bに対向する側面)に接合されている。4本の脚部材24は、座面部材22の外周縁に沿って周方向へ90度おきに等間隔で接合されている。
各脚部材24は、同じ長さ方向寸法を有していて、回転軸4bの延長線Lと平行に配置されている。このような脚部材24の他端部に座面部材22を固定することで、側面部2bから寸法W1だけ離間された位置(回転軸4aの側端面4bから寸法W3だけ離間した位置)に座面部材22が保持される。すなわち、取付架台20は、延長線Lの周囲に形成される空間部8を確保した状態で、安定して側面部2bに固定されている。
ここで、寸法W1は、回転軸4aの側端面4bが側面2bから外方へ突設されている寸法W2と比較して大きくなるように設定されている。よって、座面部材22の対向面と回転軸4aの側端面4bとの間は、離間して非接触状態を常に維持することができる。
【0016】
また、取付架台20の座面部材22は、シーブ4の回転軸4aの延長線L上にスタビライザ11の回動中心となる支点12を有している。
図4に示すように、実施形態1のスタビライザ11は、左,右一対の支持ロッド14と、支点12よりも下側において支持ロッド14の下端に設けられた錘体18とを有している。
支持ロッド14は、上下方向の中間部が支点12に回転可能に支持されている。すなわち、支持ロッド14は、支点12を中心に前後に傾動可能である。
また、錘体18は、主に金属製で構成されていて支持ロッド14の下端が常に最下端位置となるように所定の重量を有している。すなわち、支持ロッド14は、ブーム2の傾斜角度が変化しても、支点12を中心としてブーム2に対して傾動することで、鉛直姿勢を維持する。
【0017】
さらに、実施形態1のスタビライザ11は、左右の支持ロッド14,14を繋ぐ連結部材16を有している。実施形態1の連結部材16は、ブーム2の先端部2aの上方において水平方向へ延在しており、支持ロッド14の上端部に対し、直交状態で接続されている。これにより支持ロッド14,14および連結部材16は正面視で門型となるように一体に連結される。そして、連結部材16および支持ロッド14は、先端部2aを上方から跨ぐように設けられてブーム2の上面および左右の側面と所定の間隔を置いて配置される。
【0018】
連結部材16の延在方向の中間部16aには、アンテナ本体9が設けられている。
アンテナ本体9は、測位衛星からの電波を受信する受信面を上方へ向けるように中間部16aの上側に装着されている(
図5参照)。
そして、錘体18の重量により支持ロッド14が支点12を中心として回動(傾動)する。これにより、支持ロッド14は、ブーム2の回動(傾動)で先端部2aの傾きが変化しても、
図1に示すように長手方向が鉛直方向に沿うように保持される。
連結部材16の中間部16aに設けられたアンテナ本体9は、ブーム2の先端部2aの真上で常に受信面を安定させて天頂に向ける。このためアンテナ本体9は、測位衛星からの電波を良好な状態で受信することができる。
【0019】
次に、
図6および
図7を用いて実施形態1の衛星測位用アンテナ取付構造および衛星測位用アンテナ装置の作用効果について説明する。
実施形態1の衛星測位用アンテナ取付構造および衛星測位用アンテナ装置は、シーブ4の回転軸4aの真上にアンテナ本体9が保持されるため、吊荷7の中心位置とアンテナ本体9の位置との間に生じるオフセットが無くなり、吊荷7の位置の測定精度を向上させることができる。
【0020】
詳しくは、
図6に示すようにスタビライザ11の支点12は、シーブ4の回転軸4aの延長線L上に位置して各支持ロッド14の回動中心となっている。
このため、スタビライザ11により受信面を天頂に向けたアンテナ本体9は、側面視で支点12を通過する鉛直線H1上に位置する。
また、
図7に示すようにブーム2の傾斜角度が変化してもアンテナ本体9は、側面視で支点12を通過する鉛直線H1上に位置する。
【0021】
そして、シーブ4から吊り下げられた吊荷7は、自重により鉛直線H1上に位置している。したがって、ブーム2の傾斜角度が変更されても、スタビライザ11はシーブ4から吊り下げられた吊荷7の真上にアンテナ本体9を常に安定して位置させることができる。さらに、アンテナ本体9は、
図4に示すように、連結部材16の中間部16aに設けられている。このため、ブーム2の幅方向でも、アンテナ本体9をシーブ4および吊荷7の中心位置の真上に保持できる。
よって、吊荷7の中心位置とアンテナ本体9の位置との間に生じるオフセットが無くなり(オフセット量=0)、吊荷7の位置の測定精度が向上する。
【0022】
たとえば従来との比較のため、
図6に示すブーム2の先端縁2cにスタビライザが支持するアンテナ本体を配置したと仮定する。この場合、吊荷7およびアンテナ本体との間に生じるオフセット量d1(鉛直線H1と先端縁2cを通る鉛直線H2との離間距離)と、
図7に示すように、ブーム2の傾斜角度を変更した場合の吊荷7およびアンテナ本体との間に生じるオフセット量d2(鉛直線H1と先端縁2cを通る鉛直線H3との離間距離)とは異なる(d1>d2)。
このため、従来は吊荷7の位置を算出する際、それぞれのオフセット量の違いまで考慮して補正しなければならない。これに対して実施形態1のクレーン1は、吊荷7の中心位置とアンテナ本体9の位置との間に生じるオフセットが無い(オフセット量=0)。よって、クレーン1は、ブーム2の傾斜角ごとに吊荷7の位置の補正を行う演算処理装置および処理方法が簡易化もしくは不要となる。したがって、従来に比して実施形態1のクレーン1では、衛星測位用アンテナ装置の製造コストの上昇が抑制される。
【0023】
また、実施形態1ではアンテナ本体9が測位衛星からの電波を受信してデータ信号を位置算定装置に送信すると、位置算定装置は、吊荷7の位置を算定して直ちに位置計測データとすることができる。
このため、従来のようにオフセット量が生じることにより必要とされる補正の演算が不要となり、位置算定装置の構成を簡易化しても吊荷7の正確な位置を算定できる。
【0024】
実施形態2:
図8は、本発明の実施形態2の衛星測位用アンテナ取付構造および衛星測位用アンテナ装置を示している。なお、実施形態1と同一乃至均等な部分については同一符号を付して説明を省略する。
実施形態2の衛星測位用アンテナ取付構造は、測位衛星からの電波を受信するアンテナ本体9が受信面を天頂へ向けた状態で支持する単数のスタビライザ21によって支持されている。一方、ブーム2の先端部2aでは右側の一方の側面2bのみに取付架台20が取り付けられている。
スタビライザ21の支持ロッド14の回動中心は、回転軸4aの延長線L上に位置している。すなわち、支持ロッド14は、取付架台20の座面部材22に設けられた支点12に支持されている。
【0025】
このように構成された実施形態2の衛星測位用アンテナ取付構造および衛星測位用アンテナ装置では、スタビライザ21により受信面が天頂に向けられたアンテナ本体9は、側面視で支点12を通過する鉛直線H1上に位置する。
また、例えば実施形態1と同様に、ブーム2の傾斜角度が変更されても、アンテナ本体9は、側面視で支点12を通過する鉛直線H1上に位置する。
【0026】
したがって、吊荷7の中心位置とアンテナ本体9の位置との間に生じる前後方向のオフセットが無くなり(オフセット量=0)、吊荷7の位置の測定精度を向上させることができる。
なお、実施形態2では、正面視(実施形態1の
図4参照)において、アンテナ本体9がシーブ4の回転軸延在方向の中央に対して左右の何れかに偏って配置されるものの、偏り寸法は常に一定であるため、補正は容易であり、したがって、吊荷7の正確な位置を容易に算定できる。
【0027】
また、実施形態2ではスタビライザ21が一つで構成出来、連結部材16および左側の支持ロッド14が不要となる。したがって、実施形態1よりもさらに衛星測位用アンテナ取付構造および衛星測位用アンテナ装置の製造コストを抑制できる。
他の構成および作用効果については実施形態1と同一乃至均等であるので説明を省略する。
【0028】
上述してきたように、本発明の衛星測位用アンテナ取付構造は、
図1に示すようにクレーン本体1aに支持されたブーム2と、ブーム2の先端部2aに設けられたシーブ4と、測位衛星からの電波を受信するアンテナ本体9とアンテナ本体9を天頂へ向けた状態で支持するスタビライザ11と、ブーム2に取り付けられた取付架台20と、を備える。取付架台20は、シーブ4の回転軸4aの延長線L上に、スタビライザ11の回動中心となる支点12を有している。
【0029】
このため、吊荷7の中心位置と衛星測位用アンテナのアンテナ本体9の位置との間に生じるオフセットを無くして、吊荷7の位置の測定精度を向上させることができる。
また、
図2に示すようにスタビライザ11は、支点12に支持された支持ロッド14と、支点12よりも下側において支持ロッド14に設けられた錘体18と、を有している。
図3に示すように取付架台20は、支点12が形成された座面部材22と、座面部材22を回転軸4aから離間させた位置に保持する脚部材24と、を有している。
このため、支点12は、シーブ4の回転軸4aの延長線L上に位置しながら、回転軸4aに干渉しない。
【0030】
さらに、複数の脚部材24は、回転軸4aの周囲に配置されている。このため、側面部2bから離間させた位置に配置される座面部材22を、安定させることができる。
また、実施形態1では、取付架台20は、ブーム2の左右の側面部2bにそれぞれ取り付けられている。そして、スタビライザ11は、それぞれの取付架台20の支点12に支持された支持ロッド14と、ブーム2の上方において左右の支持ロッド14同士を繋ぐ連結部材16と、を有している。アンテナ本体9は、連結部材16の延在方向で中間部16aに設けられている。
このため、アンテナ本体9をブーム2の真上でシーブ4の回転軸4aの中央位置に設けることができる。したがって、補正を行う演算処理が簡易化もしくは不要となり、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0031】
また、クレーン1のブーム2に取り付けられる衛星測位用アンテナ装置は、測位衛星からの電波を受信するアンテナ本体9と、アンテナ本体9を天頂へ向けた状態で支持するスタビライザ11と、ブーム2に取り付けられる取付架台20と、を備える。取付架台20は、スタビライザ11の回動中心となる支点12を有し、クレーン1のシーブ4の回転軸4aの延長線L上に支点12を保持可能としている。
このため、衛星測位用アンテナ装置は、吊荷7の中心位置とGPSアンテナのアンテナ本体9の位置との間に生じるオフセットを無くして、吊荷7の位置の測定精度が向上する、といった実用上有益な作用効果を発揮することができる。衛星測位用アンテナ装置は、溶接等によりブーム2の側面部2bに固定してもよいし、着脱可能に側面部2bに固定してもよい。なお、取付架台20の脚部材24の基端面に磁石を配置し、磁力により衛星測位用アンテナ装置をブーム2に固定してもよい。このようにすると、ブーム2に対する加工等が不要になるため、クレーン1を他者が保有する場合であっても、衛星測位用アンテナ構造を容易に構成することが可能となる。
【0032】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、もしくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。上記実施形態に対して可能な変形は、たとえば以下のようなものである。
【0033】
実施形態1または実施形態2では、支持ロッド14の下端部に錘体18を設けたスタビライザ11を示して説明してきたが特にこれに限らない。例えば、支持ロッド14の中間部であっても、支点12よりも下側において支持ロッド14に設けられていればよい。すなわち、錘体18の形状、数量、材質および取付位置が特に限定されるものではない。
【0034】
さらに、取付架台20は、支点12が形成された座面部材22を回転軸4aから離間させた位置に保持する四本の脚部材24が設けられているが、特にこれに限らない。例えば脚部材24は、一本または二本以上の複数や、回転軸4aの軸受部を囲むように円筒形状の壁面としてもよく、脚部材24の形状、数量、材質および取付位置が特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0035】
1 クレーン本体(ベースマシン)
2 ブーム
2a 先端部
4 シーブ
9 アンテナ本体
11 スタビライザ
20 取付架台