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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031066
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】風力・波力複合発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/16 20060101AFI20240229BHJP
   F03D 13/25 20160101ALI20240229BHJP
   F03D 7/04 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
F03B13/16
F03D13/25
F03D7/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134370
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 生太
(74)【代理人】
【識別番号】100133592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】朱 洪忠
【テーマコード(参考)】
3H074
3H178
【Fターム(参考)】
3H074AA02
3H074AA12
3H074BB10
3H074BB19
3H074CC03
3H074CC36
3H178AA03
3H178AA24
3H178AA43
3H178AA61
3H178BB01
3H178BB42
3H178DD61X
(57)【要約】      (修正有)
【課題】波浪エネルギーにより風力発電機の動揺を低減し、全体の発電量を平滑化できる風力・波力複合発電装置を提供する。
【解決手段】第1浮体2は風力発電ユニット20を備え、第2浮体3A~3Cは波力発電ユニット31を備え、第2浮体3A~3Cと、上下方向に延び、上端でそれぞれが第2浮体3A~3Cのいずれかと接続され、下端でそれぞれ第1浮体2の異なる箇所に連結されるワイヤ6A~6Cを備える。波力発電ユニット31は、外殻体30に対して上下方向に相対変位可能で第1浮体2とワイヤ6A~6Cを介して連結された内部構造体32と、外殻体30と内部構造体32とを上下方向に接続する減衰係数可変の減衰要素として動作するとともに外殻体30と内部構造体32との上下方向の相対運動により発電された電力を取り出すPTO33と、外殻体30と内部構造体32とを上下方向に接続する弾性要素を有する接続体34と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電を行う風力発電ユニットが設けられ、波面に浮かぶ第1浮体と、
波面に浮かぶ少なくとも3つの第2浮体と、
上下方向に延び、上端でそれぞれが前記第2浮体のいずれかと接続され、下端でそれぞれ前記第1浮体の異なる箇所に連結される3本のワイヤと、を備え、
前記第2浮体は、
波面に浮かぶ外殻体と、
波力発電を行う波力発電ユニットと、を備え、
前記波力発電ユニットは、
前記外殻体に対して上下方向に相対変位可能で前記第1浮体と前記ワイヤを介して連結された内部構造体と、
前記外殻体と前記内部構造体との上下方向の相対運動により発電された電力を取り出すとともに前記外殻体と前記内部構造体とを接続する減衰係数可変な減衰要素として機能するパワーテイクオフと、
前記外殻体と前記内部構造体とを上下方向に接続する弾性要素を有する接続体と、
を備える風力・波力複合発電装置。
【請求項2】
前記第1浮体の姿勢情報を検出する第1センサと、
前記外殻体と前記内部構造体との相対変位情報を検出する第2センサと、
前記第1センサの出力と、前記第2センサの出力とに基づいて、前記パワーテイクオフに発生する力を制御する制御部と、
を備える請求項1に記載の風力・波力複合発電装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1浮体の風向きに対するピッチ方向の回転角度及び回転速度が大きくなるにつれて大きくなる第1項と、
前記第1浮体の風向きに対するロール方向の回転角度及び回転速度が大きくなるにつれて大きくなる第2項と、
前記外殻体と前記内部構造体との相対変位及び相対速度が大きくなるにつれて大きくなる第3項と、が加算された目的関数を最小化するように、前記パワーテイクオフに発生する力を制御する、
請求項2に記載の風力・波力複合発電装置。
【請求項4】
前記目的関数の制約条件には、状態方程式が第1条件として含まれ、
前記状態方程式は、
前記第1浮体のピッチ方向の回転角度及び回転速度と、前記第1浮体のロール方向の回転角度及び回転速度と、前記外殻体と前記内部構造体との相対変位及び相対速度と、を状態ベクトルの要素とし、前記パワーテイクオフに発生する力を入力ベクトルの要素とするように線形近似された状態方程式である、
請求項3に記載の風力・波力複合発電装置。
【請求項5】
前記目的関数の制約条件には、
前記パワーテイクオフに発生する力の絶対値が、可能な大きさを超えないとする第2条件が含まれる、
請求項4に記載の風力・波力複合発電装置。
【請求項6】
前記第2条件には、
前記パワーテイクオフに発生する力の向きと、前記外殻体と前記内部構造体との相対速度の向きとが同じであることと、
前記パワーテイクオフに発生する力の絶対値が、前記外殻体と前記内部構造体との相対速度の絶対値と前記パワーテイクオフの減衰係数との積を超えないことと、
前記パワーテイクオフに発生する力の絶対値が、波力発電が可能な最大許容値を超えないことと、を全て満たすことが含まれる、
請求項5に記載の風力・波力複合発電装置。
【請求項7】
前記少なくとも3つの第2浮体は、鉛直方向に見て前記第1浮体の中心を基準としてn(nは、2以上の整数)回回転対称、前記中心を通る直線に対して線対称又は非対称に配置されている、
請求項1に記載の風力・波力複合発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力・波力複合発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
波の力で発電する波力発電を行う波力発電装置には、洋上に浮かぶ浮体式のものがある(例えば特許文献1、2参照)。浮体に設けられた波力発電装置を洋上風力発電機に組み込むことで、平準化エネルギーコストの削減を狙った浮体式風力・波力複合発電装置が開示されている(例えば特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-230969号公報
【特許文献2】特開2020-133460号公報
【特許文献3】特表2013-515903号公報
【特許文献4】特表2022-500582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
浮体式の風力・波力複合発電装置では、波が大きくなると、波力発電の発電量が大きくなる一方、風力発電機の姿勢が不安定となって風力発電の発電量及び疲労寿命が低下するという不都合がある。
【0005】
本発明は、上記実情の下になされたものであり、波の大きさに関わらず、波浪エネルギーを利用して、風力発電機の動揺を低減しつつ、全体の発電量を平滑化することができる風力・波力複合発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る風力・波力複合発電装置は、
風力発電を行う風力発電ユニットが設けられ、波面に浮かぶ第1浮体と、
波面に浮かぶ少なくとも3つの第2浮体と、
上下方向に延び、上端でそれぞれが前記第2浮体のいずれかと接続され、下端でそれぞれ前記第1浮体の異なる箇所に連結される3本のワイヤと、を備え、
前記第2浮体は、
波面に浮かぶ外殻体と、
波力発電を行う波力発電ユニットと、を備え、
前記波力発電ユニットは、
前記外殻体に対して上下方向に相対変位可能で前記第1浮体と前記ワイヤを介して連結された内部構造体と、
前記外殻体と前記内部構造体との上下方向の相対運動により発電された電力を取り出すとともに前記外殻体と前記内部構造体とを接続する減衰係数可変な減衰要素として機能するパワーテイクオフと、
前記外殻体と前記内部構造体とを上下方向に接続する弾性要素を有する接続体と、
を備える。
【0007】
この場合、前記第1浮体の姿勢情報を検出する第1センサと、
前記外殻体と前記内部構造体との相対変位情報を検出する第2センサと、
前記第1センサの出力と、前記第2センサの出力とに基づいて、前記パワーテイクオフに発生する力を制御する制御部と、
を備える、
こととしてもよい。
【0008】
また、前記制御部は、
前記第1浮体の風向きに対するピッチ方向の回転角度及び回転速度が大きくなるにつれて大きくなる第1項と、
前記第1浮体の風向きに対するロール方向の回転角度及び回転速度が大きくなるにつれて大きくなる第2項と、
前記外殻体と前記内部構造体との相対変位及び相対速度が大きくなるにつれて大きくなる第3項と、が加算された目的関数を最小化するように、前記パワーテイクオフに発生する力を制御する、
こととしてもよい。
【0009】
前記目的関数の制約条件には、状態方程式が第1条件として含まれ、
前記状態方程式は、
前記第1浮体のピッチ方向の回転角度及び回転速度と、前記第1浮体のロール方向の回転角度及び回転速度と、前記外殻体と前記内部構造体との相対変位及び相対速度と、を状態ベクトルの要素とし、前記パワーテイクオフに発生する力を入力ベクトルの要素とするように線形近似された状態方程式である、
こととしてもよい。
【0010】
前記目的関数の制約条件には、
前記パワーテイクオフに発生する力の絶対値が、可能な大きさを超えないとする第2条件が含まれる、
こととしてもよい。
【0011】
前記第2条件には、
前記パワーテイクオフに発生する力の向きと、前記外殻体と前記内部構造体との相対速度の向きとが同じであることと、
前記パワーテイクオフに発生する力の絶対値が、前記外殻体と前記内部構造体との相対速度の絶対値と前記パワーテイクオフの減衰係数との積を超えないことと、
前記パワーテイクオフに発生する力の絶対値が、波力発電が可能な最大許容値を超えないことと、を全て満たすことが含まれる、
こととしてもよい。
【0012】
前記少なくとも3つの第2浮体は、鉛直方向に見て前記第1浮体の中心を基準としてn(nは、2以上の整数)回回転対称、前記中心を通る直線に対して線対称又は非対称に配置されている、
こととしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、風力発電を行う第1浮体と、波力発電を行う第2浮体とが、ワイヤで連結された構成となっているので、第1浮体と第2浮体とを互いに独立した姿勢をとらせることができ、第2浮体により、第1浮体の姿勢制御を行うことができる。このため、波の大きさに関わらず、波浪エネルギーを利用して、風力発電機の動揺を低減しつつ、全体の発電量を平滑化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(A)は、本発明の実施の形態に係る風力・波力複合発電装置の全体構成を示す斜視図である。(B)は、風力・波力複合発電装置における第1浮体と第2浮体との連結部分の構成を示す模式図である。(C)は、第2浮体の内部構成を示す模式図である。
図2】(A)は、リニア式パワーテイクオフ(PTO)の構成を示す模式図である。(B)は、油圧式PTOの構成を示す模式図である。
図3図1の風力・波力複合発電装置の制御に適用される座標系を示す模式図である。
図4図1の風力・波力複合発電装置のフルモデルのピッチ自由度のパルス応答及びパワーテイクオフの相対変位のパルス応答と、状態方程式で表す線形モデルのピッチ自由度のパルス応答及びパワーテイクオフの相対変位のパルス応答とを比較して示すグラフである。
図5】(A)及び(B)は、風力・波力複合発電装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図6】制約条件の第2条件を示すグラフである。
図7】(A)は、様々な海象条件の下で様々なモデルで制御した場合のロール自由度の標準偏差を示すグラフである。(B)は、様々な海象条件の下で様々なモデルで制御した場合のピッチ自由度の標準偏差を示すグラフである。
図8】様々な海象条件の下での波力発電ユニットの発電電力を示すグラフである。
図9】(A)、(B)及び(C)は、図1の風力・波力複合発電装置の全体構成の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。各図面においては、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。
【0016】
[全体構成]
図1(A)に示すように、本実施の形態に係る風力・波力複合発電装置1は、全体として海面等の水面、すなわち波面に浮かぶ浮体であり、風力発電と波力発電とを両方行う。図1(A)及び図1(B)に示すように、風力・波力複合発電装置1は、波面に浮かぶ第1浮体2と、同じ波面に浮かぶ3つの第2浮体3A、3B、3Cと、を備える。
【0017】
上から見て、3つの第2浮体3A~3Cは、第1浮体2を中心に放射状の位置に配置されている。すなわち、上から見て、3つの第2浮体3A~3Cは、正三角形の頂点に配置され、その正三角形の重心の位置に第1浮体2が配置される。第1浮体2は、海底等に固定されたアンカー(不図示)が先端に接続された3本の係留ロープ4で連結されており、その漂流が防止されている。
【0018】
より詳細には、第1浮体2は、中央浮体10と、円柱浮体11A、11B、11Cと、を備える。中央浮体10及び円柱浮体11A~11Cは、それぞれカラム、すなわち柱状型の浮体である。中央浮体10と、円柱浮体11A~11Cとは、棒状の剛性部材12で連結されており、それらの位置関係が固定されている。円柱浮体11A~11Cは、上から見て、正三角形の頂点に配置されている。円柱浮体11A~11Cの底面には、中央浮体10の逆方向に向かって張り出す棒状の支持レバー13が形成されている。このように、第1浮体2は、中央浮体10、円柱浮体11A~11C、剛性部材12及び支持レバー13を備え、これらが一体となって波面に浮かぶ構造体である。
【0019】
図1(B)に示すように、第1浮体2と第2浮体3Aとは、ワイヤ6Aで連結され、第1浮体2と第2浮体3Bとは、ワイヤ6Bで連結され、第1浮体2と第2浮体3Cとは、ワイヤ6Cで連結されている。ワイヤ6A~6Cは、例えば金属製であり、切断されにくい素材で構成されているのが望ましい。
【0020】
ワイヤ6A~6Cは、それぞれ上下(ヒーブ)方向に延びている。ワイヤ6A~6Cの上端は、第2浮体3A~3Cのいずれかと接続される。すなわち、ワイヤ6Aの上端は、第2浮体3Aと接続され、ワイヤ6Bの上端は、第2浮体3Bと接続され、ワイヤ6Cの上端は、第2浮体3Cと接続される。また、ワイヤ6Aの下端は、波面下の円柱浮体11Aから延びる支持レバー13に接続され、ワイヤ6Bの下端は、波面下の円柱浮体11Bから延びる支持レバー13に接続され、ワイヤ6Cの下端は、波面下の円柱浮体11Cから延びる支持レバー13に接続される。すなわち、第2浮体3A~3Cの下端は、ワイヤ6A~6Cで第1浮体2のそれぞれ異なる箇所と連結されている。
【0021】
図1(A)に戻り、第1浮体2には、風力発電を行う風力発電ユニット20が設けられている。風力発電ユニット20は、中央浮体10の上端に設けられている。風力発電ユニット20は、中央浮体10に支持された柱部21と、柱部21の先端に設けられたナセル22と、ナセル22に対して回転可能に設けられた複数枚の回転翼(ブレード)23と、を備える。ナセル22内には、ブレード23の回転によって発電を行う風力発電機(不図示)が内蔵されている。ナセル22内には、風力発電機の発電電力を風力・波力複合発電装置1の外部に送電する送電ケーブル(不図示)が配設されている。なお、風力発電ユニット20は、図1(A)~図1(C)に示す構成のものには限られず、風力で発電可能な発電機であればどのような構成であってもよい。
【0022】
第2浮体3A~3Cは、それぞれ波面に浮かぶ外殻体30と、波力発電を行う波力発電ユニット31と、を備える。図1(C)に示すように、波力発電ユニット31は、内部構造体32と、PTO33と、接続体34と、を備える。内部構造体32は、外殻体30に内包され外殻体30に対してヒーブ方向に相対変位可能で第1浮体2とワイヤ6A~6Cを介して連結されている。PTO33は、外殻体30と内部構造体32との上下方向の相対運動により発電された電力を取り出すとともに外殻体30と内部構造体32との上下方向の相対速度と同じ向きの力を外殻体30と内部構造体32との間に発生させる減衰係数可変の減衰要素として機能する。接続体34は、外殻体30と内部構造体32とをヒーブ方向に接続する弾性要素34a及び減衰要素34bを備える。
【0023】
PTO33は、図2(A)に示すように、外殻体30に固定された固定子33aと、内部構造体32としての永久磁石で構成された可動子33bと、を有するリニア式PTOであってもよい。このリニア式PTOであれば、固定子33aと可動子33bとの上下方向の相対運動により発電された電力を取り出すとともに固定子33aと内部構造体32との上下方向の相対速度と同じ向きの力を固定子33aと内部構造体32との間に発生させる減衰要素として機能する。
【0024】
また、PTO33は、図2(B)に示すように、外殻体30に対し外側が固定され内部のピストンが内部構造体32となる油圧シリンダ33cと、油圧モータ33dと、ジェネレータ33eと、で構成される油圧式PTOであってもよい。この油圧式PTOであれば、油圧シリンダ33cの筐体とピストンとの上下方向の相対運動により発電された電力をジェネレータ33eから取り出すとともに、油圧モータ33dを用いた油圧シリンダ33cの筐体とピストンとの上下方向の相対速度と同じ向きの力を両者の間に発生させる減衰要素として機能する。
【0025】
第2浮体3A、3Bの構成も図1(C)に示す第2浮体3Cの構成と同じである。第2浮体3A~3Cには、PTO33で取り出された発電電力を風力・波力複合発電装置1の外部に送電する送電ケーブル(不図示)が配設されている。
【0026】
なお、接続体34は、弾性係数が固定の弾性要素34aと、減衰係数が固定の減衰要素34bと、を備える。
【0027】
上述のように、ワイヤ6A~6Cは、一端がそれぞれ第1浮体2の円柱浮体11A~11Cから延びる支持レバー13と接続され、他端が第2浮体3A~3Cの内部構造体32と接続されている。3つの第2浮体3A~3Cの内部構造体32がワイヤ6A~6Cを介して円柱浮体11A~11Cを引っ張る力を調整することにより、第1浮体2の姿勢を制御することが可能となる。
【0028】
[座標系]
風力・波力複合発電装置1の位置及び姿勢は、図3に示すx,y,z3軸の直交座標系に基づいて規定される。この座標系は右手座標系とし、静水位面(波がないときの海面)がxy平面として規定されている。x軸は、平均の風向きと一致する(+x方向が風上)。本実施の形態では、風向きがほぼ一定であるものとする。z軸は、円柱状の中央浮体10の軸心を通る中心線に沿って規定されている。すなわち、風力発電ユニット20を基準として、風上の方向を前方としたときにx軸方向がサージ方向となり、y軸方向がスウェイ方向となり、z軸方向がヒーブ方向となる。また、x軸周りのθxがロール方向となり、y軸回りのθyがピッチ方向となり、z軸回りθzがヨー方向となる。以下では、この6自由度の座標系で説明を行う。
【0029】
[風力・波力複合発電装置のフル数学モデル]
図1(A)及び図1(B)に示すように、風力・波力複合発電装置1は、第1浮体2と、3つの第2浮体3A~3Cと、を備え、第1浮体2と第2浮体3A~3Cとが、ワイヤ6A~6Cで連結されている。第1浮体2と、3つの第2浮体3A~3Cとが、それぞれ剛体であるとすると、風力・波力複合発電装置1を、4体構造とみなすことができる。第1浮体2と、3つの第2浮体3A~3Cとをそれぞれi=1~4の物体であるとすると、それぞれの剛体の運動を表すフルモデルである運動方程式(流体-記憶モデル)は、以下の式で表される。
【数1】

上記式(1a)、式(1b)を構成する行列及び関数は、以下の通りである。なお、添え字i,jは、j番目の物体の運動によるi番目の物体の特性を表す。
η;xyz座標系で表現されたi番目の剛体の上記6自由度の位置及び姿勢ベクトル
:xyz軸直交座標系で表されるi番目の剛体の6自由度の速度ベクトル
J:フレーム変換行列
RBi:i番目の物体の剛体イナーシャ行列
RBi、CAi:慣性質量と付加質量によるコリオリ・センチュペール(求心)行列
ij(∞):無限周波数付加質量行列
ij:メモリ関数又は遅延関数、Kijを含む畳み込み積分の項は、浮体が自由表面上に発生する波に関係した流体力であり、過去から現在までに運動の履歴の全てが現在の流体力に関与していることを表している。
、Dq|v|:減衰力
(η):復元力
τmi:係留力
τwi:波浪加振荷重(波浪強制力)
τai:空力荷重
【0030】
また、遅延関数Kij(t)は、以下の式で表される。
【数2】

ここで、Bijは、ポテンシャル減衰係数である。
【0031】
計算負荷を軽減するために、上述の遅延関数は、以下の線形システムで近似される。
【数3】

ここで、x(t)は状態ベクトルである。行列A、B、Cは、システム行列であり、システム同定により得ることができる。波浪強制力τwiは、以下のように計算される。
【数4】

ここで、|Γ(ω)|と∠Γ(ω)は、それぞれ波浪強制力τωiの周波数応答の振幅と位相である。S(ω)は波スペクトルを示す。ωは波の周波数を示す。κは波数を示す。εは、ランダム位相角、Δωは連続する周波数間の一定の差を示す。Nは、数値計算のために波スペクトルを分割するために適用する周波数の数を示す。
【0032】
一方、風力発電ユニット20において、発電機のロータにかかる推力Fと空力トルクTは、無次元推力係数Cと出力係数Cで次のように表される。
【数5】

ここで、vwxは風力発電ユニット20の発電機のロータに接続されるハブ軸方向の風速成分である。また、vhxはハブ軸方向のハブ速度成分である。ρは空気密度、Rは、風力発電ユニット20の発電機のロータの半径である。また、βは、複数のブレード23のピッチ角であり、λは翼端の接線速度と風速の比として定義される周速比である。
【0033】
係数C、Cはピッチ角βと周速比λの関数で、定常シミュレーションによるルックアップテーブルとして得られる。上記(1)式の空力荷重τは、ハブの高さを考慮して推力Fと空力トルクTから計算することができる。
【0034】
さらに、風力発電ユニット20と波力発電ユニット31とを連結するワイヤ6A~6Cに発生する力Fは、以下の式のように、ばねとダンパのハイブリッドの系としてモデル化される。
【数6】

ここで、m=1、2、3である。KとDはそれぞれワイヤ6A~6Cの弾性係数と減衰係数である。dは支持レバー13上の係留点P1と波力発電ユニット31のPTO33の位置P2との距離を示し、lは、すなわちワイヤ6A~6Cの自然長を示す。ワイヤ6A~6Cの自然長lが距離d以上であれば、ワイヤ6A~6Cに発生する力Fは0となり、ワイヤ6A~6Cの自然長lが距離d未満であれば、ワイヤ6A~6Cに、弾性係数Kと減衰係数Dによる力Fが発生する。
【0035】
ここで、第2浮体3A~3CのPTO33及び接続体34で発生する力fpiは、次式で表される。
【数7】

ここで,zpiは外殻体30と内部構造体32との相対変位である。zpiは、fpiが0となり、上記式(7)のF=0となる位置を原点0としている。kとcはそれぞれ接続体34の弾性要素34aの復元係数と減衰要素34bの減衰係数であり、fは、第1浮体2の姿勢を制御する駆動力であり、PTO33に発生させる力である。
【0036】
[制御器設計のための線形モデル]
後述する制御部40の設計の複雑さを軽減するために、風力・波力複合発電装置1の平衡状態付近の線形近似モデル(線形モデル)を定義する。この場合、第1浮体2のロール自由度θx、ピッチ自由度θyをφ,θで示す。第2浮体3A~3Cにおける外殻体30のヒーブ自由度z(i=1、2、3)の動きを考慮すると、全体の運動方程式は、以下のように表される。
【数8】

ここで、ξ=[φ,θ,z,z,zは、風力・波力複合発電装置1の状態ベクトルである。Mは、対角行列であり、その成分が、第2浮体3のロールおよびピッチ方向の慣性モーメント(IrおよびIp)と、3つの第2浮体3A~3Cの質量(m)となる。Aは、付加質量行列である。τextは式(1b)の左辺で考慮されていない流体力と空力を含む外力であり、f=[fp1,fp2,fp3は、3つの第2浮体3A~3CのPTO33及び接続体34に生じる力ベクトルである。ΛとGは、それぞれ減衰係数の行列と復元係数の行列であり、△は次式で表される力の変換行列である。
【数9】

ここで、Lは、図3に示すように、3つの第2浮体3A~3Cの間の距離である。
【0037】
第1浮体2の動揺を考慮して、第2浮体3の外殻体30のヒーブ方向の絶対座標の変位zi(i=1、2,3)を、外殻体30と内部構造体32との相対変位zpi(i=1、2,3)に変換することができる。
【数10】
【0038】
式(9)、式(10)より、風力・波力複合発電装置1全体の状態方程式は次のように書き直すことができる。
【数11】

ここで、状態ベクトルx(t)は、制御対象の状態を示すベクトルであり、その要素は、以下の通りになる。
x(t)=[φ,θ,zp1,zp2,zp3,φ’,θ’,zp1’,zp2’,zp3’]
φ’,θ’,zp1’,zp2’,zp3’は、それぞれの速度である。
【0039】
また、ベクトルf(t)は、第2浮体3A~3CのPTO33に発生する力を要素とする力ベクトルであり、以下の通りになる。
f(t)=[f,f,f
行列A,B1,B2は、状態方程式のシステム行列である。
【0040】
このように、式(11)の状態方程式は、第1浮体2のロール方向の回転角度φ及び回転速度φ’と、第1浮体2のピッチ方向の回転角度θ及び回転速度θ’と、外殻体30と内部構造体32との相対変位zp1,zp2,zp3及び相対速度zp1’,zp2’,zp3’と、を状態ベクトルの要素とし、PTO33に発生する力を入力ベクトルの要素とするように線形近似された状態方程式である。
【0041】
制御系が、サンプリング周期Tで離散化される場合、状態方程式(11)は、以下のように表現することができる。
【数12】

行列A、B1d、B2dは、上述の行列A,B1,B2及びTにより求められる。
【0042】
式(9)にある減衰係数の行列Λは、上述したフルモデルでのシステム同定アプローチによって求めることができる。なお,海洋環境は複雑であり、波浪強制力や空力などの推定が困難であるため、制御器設計には、外部負荷τextは無視される。
【0043】
上述のフルモデルと線形モデルにおいて、第2浮体3A~3CのPTO33に発生する力を要素とする力fとしてパルス入力(10秒にパルス入力し、15秒にパルス出力停止)を加えたときのピッチ自由度θと相対変位zp1の応答が図4に示されている。図4に示すように、フルモデルと線形モデルとでは、ピッチ自由度θの応答と相対変位zp1の応答は、ほぼ一致している。この結果は、線形モデルで系の入出力特性が再現でき、制御器設計には差し支えないことを示している。
【0044】
[混合整数計画問題を用いたモデル予測制御]
図5(A)に示すように、風力・波力複合発電装置1は、制御部40を備える。図5(A)では、上述の、第1浮体2及び3つの第2浮体3A~3Cを備える構成を、制御部40と制御対象41として1つにまとめている。制御部40は、混合整数計画問題を用いたモデル予測制御を行って制御対象41を制御する。
【0045】
第1浮体2のロール自由度φ、ピッチ自由度θと、3つの第2浮体3A~3Cにおける外殻体30と内部構造体32との相対変位zp1,zp2,zp3は、センサにより常時観測されている。図5(B)に示すように、ロール自由度φ、ピッチ自由度θは、第1浮体2に取り付けられその姿勢情報を検出する第1センサとしてのジャイロセンサ41Aで検出される。相対変位zp1,zp2,zp3は、第2浮体3A~3Cにそれぞれ取り付けられ外殻体30と内部構造体32との相対変位情報を検出する第2センサとしての変位センサ41B、41C、41Dで検出される。制御対象41からは、x(k)=[φ,θ,zp1,zp2,zp3,φ’,θ’,zp1’,zp2’,zp3’]が出力される。速度ベクトル[φ’,θ’,zp1’,zp2’,zp3’]の各要素については、制御部40において算出するようにしてもよい。制御部40は、状態ベクトルx(k)に基づいて、第2浮体3A~3CにおけるPTO33に発生する力fの指令値をPTO33に出力する。このように、制御部40は、式(12)の状態方程式を、制約条件のうち、第1条件として、制御を行う。
【0046】
制御部40では、外殻体30と内部構造体32との相対変位により生じる力、すなわち波力発電ユニット31での発電に用いられる力fがとり得る範囲内で、制御対象41を制御する。このため、例えば、以下の制約条件が設定される。
【数13】

この条件は、相対変位zpiの速度と力fの方向が同じであること、すなわちPTO33に発生させる力の向きと、外殻体30と内部構造体32との相対速度の向きとが同じであることを意味する。この制約条件は、図6の座標系における第1象限と第3象限の領域に対応する。式(13)の制約条件の範囲内で制御することにより、第2浮体3A~3CにおけるPTO33の受動性が維持され、第2浮体3A~3Cに、外殻体30と内部構造体32との相対変位zpiによりPTO33に発生する力以外の力を加える必要がなくなる。第2浮体3A~3Cに他の動力電源等を備える必要はない。
【0047】
また、制御系の制約上、PTO33に発生する力fは、その最大荷重以内に制限する必要があるため、制御部40による制御に、以下の制約条件が加えられる。
【数14】

ここで、dは制御系の制約を表すPTO33の定数である。fmaxは、PTO33に発生する最大の力である。式(14a)は、PTO33に発生する力fの絶対値が、外殻体30と内部構造体32との相対変位zpiの速度の絶対値と定数dとの積を超えないことを示している。また、式(14b)は、PTO33に発生する力fの絶対値が、波力発電が可能な最大許容値を超えないことを示している。式(13)、式(14a)、式(14b)で決定される力の適用領域が図6に示されている。第1条件に加え、図6に示す適用領域内とすることが第2条件となる。PTO33に発生する力がこの適用領域内にあれば、PTO33に発生する力の絶対値が、可能な大きさを超えない範囲内に維持することができる。
【0048】
制御部40は、風力発電ユニット20のロール自由度φおよびピッチ自由度θにおける動きを最小化するために、上述の制約条件(第1条件、第2条件)を満たすとともに、以下の式で表される目的関数Jを最小化するように、制御対象41を制御する。
【数15】

この目的関数Jは、第1浮体2の風向きに対するロール方向の回転角度φ及び回転速度φ’が大きくなるにつれて大きくなる第1項と、第1浮体2の風向きに対するピッチ方向の回転角度θ及び回転速度θ’が大きくなるにつれて大きくなる第2項と、外殻体30と内部構造体32との相対変位zp1,zp2,zp3及び相対速度zp1’,zp2’,zp3’が大きくなるにつれて大きくなる第3項と、が加算された関数となる。制御部40は、目的関数Jを最小化するように、PTO33に発生する力の指令値を制御する。離散時間系では、上述の目的関数Jは、以下のように表現される。
【数16】

ここで、x(k+j|k)は、制御対象41への入力系列f(k+i)(i=0,1,…,j-1)と初期状態x(k|k)=x(k)が与えられたときに、式(12)で示す状態方程式によって予測される状態を表す。NとNは、それぞれ予測範囲と制御範囲(N≦N)である。また、Q=Q,Q=Q ,R=Rは正定値行列である。入力f(k)、f(k+1)、・・・f(k+N-1)がこれの目的関数Jが最小となるように最適化手法により求められる。
【0049】
制御部40は、サンプリング周期の度に、以下の制約最適化問題を解いて、すなわち目的関数Jを最小とするf(k+j)を求めて、制御対象41に指令値として出力する。
【数17】
【0050】
(評価結果)
下の表Iに示すように、風力発電ユニット20の発電機のタービンの運転状況が異なる海象条件EC1~EC6を適用して、風力・波力複合発電装置1の制御性能をシミュレーションにより評価した。
【表1】

上述の表中、u(z)は、風力発電ユニット20のハブ高さでの平均風速である。Iは乱流強度を示し、Hsは有義波高を示し、Tzは波の平均ゼロクロス周期を示す。条件としては、定格以下、定格、定格以上の各運転モード(EC1~EC4)と、荒天時、極荒天時の駐機モード(EC5,EC6)とを設定した。なお、乱流強度IはIEC(International Electrotechnical Commission)第2版の規格に従って設定した。
【数18】

ここでは、Iref=0.14とした。u(z)は、ハブ高さでの平均風速で与えられる。風波のずれ角は60度とし、第1浮体2が6自由度で応答できるようにした。予測範囲と制御範囲はそれぞれN=15とN=3とした。式(14)におけるPTO33において、相対変位zpiと力fとの関係を示す定数dは10kN/(m/s)とした。上記式(8)のパラメータは、k=100kN/m、c=10kN/(m/s)とした。
【0051】
制御部40の性能を調べるために、シミュレーションを行った。以下の3つのモデルを設定して比較を行った。
モデルM1:波力発電ユニット31を含まない風力発電ユニット20及び第1浮体2のみの個別モデル
モデルM2:波力発電ユニット31を含んで、セミアクティブ制御を用いないフルモデル
モデルM3:波力発電ユニット31を含んで、セミアクティブ制御を適用したフルモデル
【0052】
図7(A)及び図7(B)には、海象条件EC1~EC6の下で、モデルM1~M3でシミュレーションを行った場合の第1浮体2のロール自由度φ、ピッチ自由度θの標準偏差が示されている。図7(A)及び図7(B)に示すように、中程度の海況(EC1,EC2など)において、モデルM2~M3はモデルM1よりもロール自由度φ、ピッチ自由度θの標準偏差が小さくなっている。また、海が荒れているとき(EC5)や非常に荒れているとき(EC6)、セミアクティブ制御を用いないモデルM2では、モデルM1よりも大きくなる。提案のセミアクティブ制御器を実装するモデルM3の場合、ロール自由度φ、ピッチ自由度θの標準偏差が小さくなり、制御の有効性が示された。海が非常に荒れている場合(EC6)、提案の制御器により、第1浮体2のロール自由度φおよびピッチ自由度θの標準偏差を16%低減することができた。
【0053】
図8には、波力発電ユニット31で発電された1次変換電力をプロットしたものが示されている。図8に示すように、波力発電ユニット31は、EC1~EC4における風力・波力複合発電装置1の電力変換量の7%程度になる。また、波力発電ユニット31では、荒天時の運転状態や非常に厳しい海象条件EC5、EC6下でも一定の発電量が確保され、ウインドファームの発電能力の安定化にも寄与できることがわかった。
【0054】
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る風力・波力複合発電装置1によれば、風力発電を行う第1浮体2と、波力発電を行う第2浮体3A~3Cとが、ワイヤ6A~6Cで連結された構成となっているので、第1浮体2と第2浮体3A~3Cとを互いに独立した姿勢をとらせることができ、第2浮体3A~3Cにより、第1浮体2の姿勢制御を行うことができる。このため、波の大きさに関わらず、波浪エネルギーを利用して、全体の発電量を平滑化することができる。
【0055】
また、本実施の形態によれば、第1浮体2と第2浮体3A~3Cとをヒーブ方向に延びるワイヤ6A~6Cで接続する。これにより、波が大きい場合には、ワイヤ6A~6Cを介して、複数の第2浮体3A~3Cからの力を及ぼして第1浮体2の姿勢をバランス良く保つことができる。これにより、風力発電ユニット20の発電電力が大きく損なわれるのを防止することができる。
【0056】
また、本実施の形態によれば、第1浮体2のロール自由度φ、ピッチ自由度θが大きくなるにつれて大きくなる項と、外殻体30と内部構造体32との相対変位zpi等が大きくなるにつれて大きくなる項の線形和である目的関数Jを最小化する最適制御を行う。これにより、第1浮体2の姿勢の変化と、第2浮体3A~3Cにおける外殻体30と内部構造体32との相対変位とのバランスをとった制御が可能となる。これにより、最適な力で第1浮体2の姿勢を制御することが可能となる。
【0057】
また、本実施の形態によれば、状態ベクトルx(k)の要素を、第1浮体2のロール自由度φ及びピッチ自由度θと、第2浮体3A~3Cにおける外殻体30と内部構造体32との上下方向の相対変位zp1,zp2,zp3とに、絞り込んでいる。これにより、制御に用いるセンサ出力を必要最小限とすることができるので、制御に必要な計算量を軽減することが可能となる。計算量を軽減することにより、制御のサンプリング時間を短くして、制御精度を向上することができる。
【0058】
また、本実施の形態によれば、第1浮体2の姿勢制御を行うのに、外殻体30と内部構造体32との相対変位によりPTO33に生じる力のみを用いる。これにより、外部からの電力供給を不要とすることができる。
【0059】
なお、第2浮体3A、3B、3Cをまとめて第2浮体3とする。上記実施の形態では、第2浮体3の数を3つとしている。しかしながら、これには限られない。第2浮体3の数は、4つ以上でもよい。すなわち風力・波力複合発電装置1は、第2浮体3を、少なくとも3つ備えていればよい。少なくとも3つの第2浮体3が、鉛直方向に見て第1浮体2の中心を基準としてn(nは、2以上の整数)回回転対称に配置されているのが望ましい。このようにすれば、第1浮体2の姿勢制御の計算が容易になる。風力・波力複合発電装置1を、図9(A)に示す構成を有するものとすることができる。この構成では、第1浮体2は上面視三角形の構造を有しており、その三角形の辺の下方に第2浮体3が配置されている。第2浮体3A、3B、3C、・・・は、第1浮体2の中心を基準として二重、三重、又は格子点上に配置されていてもよい。また、図9(B)に示すように、第1浮体2の中心を通る直線Lに対して線対称に第2浮体3を配置するようにしてもよい。もっとも、図9(C)に示すように、第1浮体2の中心Oに対して、第2浮体3を非対称に配置するようにしてもよい。このようにすれば、周辺に障害物がある場合にも第2浮体3を無理なく配置することができる。第2浮体3は、風力・波力複合発電装置1の設置場所の特徴に応じて決定されるのが望ましい。第2浮体3の配置に特に制限はなく、自由である。
【0060】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、風力発電及び波力発電を複合式に行う浮体式の発電装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 風力・波力複合発電装置、2 第1浮体、3、3A、3B、3C 第2浮体、4 係留ロープ、6A、6B、6C ワイヤ、10 中央浮体、11A、11B、11C 円柱浮体、12 剛性部材、13 支持レバー、20 風力発電ユニット、21 柱部、22 ナセル、23 回転翼(ブレード)、30 外殻体、31 波力発電ユニット、32 内部構造体、33 パワーテイクオフ(PTO)、33a 固定子、33b 可動子、33c 油圧シリンダ、33d 油圧モータ、33e ジェネレータ、34 接続体、34a 弾性要素、34b 減衰要素、40 制御部、41 制御対象、41A ジャイロセンサ(第1センサ)、41B、41C、41D 変位センサ(第2センサ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9