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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031069
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】無線受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/2575 20130101AFI20240229BHJP
   G02F 1/03 20060101ALI20240229BHJP
   G02F 1/065 20060101ALI20240229BHJP
   H04B 10/50 20130101ALI20240229BHJP
   H04B 1/18 20060101ALN20240229BHJP
【FI】
H04B10/2575
G02F1/03 502
G02F1/065
H04B10/50
H04B1/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134378
(22)【出願日】2022-08-25
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、総務省、『無線・光相互変換による超高周波数帯大容量通信技術に関する研究開発:光電気相互変換技術』委託研究(令和3年度から新たに実施する電波資源拡大のための研究開発)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 武史
(72)【発明者】
【氏名】久世 直也
(72)【発明者】
【氏名】時実 悠
(72)【発明者】
【氏名】長谷 栄治
(72)【発明者】
【氏名】岸川 博紀
(72)【発明者】
【氏名】岡村 康弘
(72)【発明者】
【氏名】梶 貴博
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 隼
(72)【発明者】
【氏名】諸橋 功
(72)【発明者】
【氏名】久武 信太郎
【テーマコード(参考)】
2K102
5K062
5K102
【Fターム(参考)】
2K102AA22
2K102BA02
2K102BA19
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA18
2K102DA05
2K102DB02
2K102DD01
2K102DD03
2K102DD05
2K102EA02
2K102EB06
2K102EB11
2K102EB16
2K102EB20
5K062AA09
5K062AB02
5K062AB06
5K062AC01
5K062BB14
5K062BC03
5K102AD01
5K102AD04
5K102AH02
5K102PB03
5K102PB15
5K102PC12
5K102PH03
5K102PH11
5K102PH31
(57)【要約】
【課題】高周波無線通信と光通信とのシームレス接続を可能にする。
【解決手段】情報信号で変調された無線信号を受信する無線受信装置であって、受信アンテナと、所定の波長のレーザー光を出力するレーザー発光素子と、前記レーザー光で励起され、前記無線信号のキャリアの周波数と差分周波数だけ異なる繰り返し周波数の光周波数コムを生成する微小光共振器と、前記受信アンテナの受信部に設けられ、さらに前記光周波数コムを構成する光周波数モードのうち任意の光周波数モードを前記無線信号に応じて光変調する電気/光変換素子と、前記光周波数モードの変調成分を分離し、併せて、前記光周波数モードと繰り返し周波数離れた隣接周波数モードであって前記光周波数モードの変調成分と最も近くに隣接する非変調成分を分離する光バンドパスフィルターとを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報信号で変調された無線信号を受信する無線受信装置であって、
受信アンテナと、
所定の波長のレーザー光を出力するレーザー発光素子と、
前記レーザー光で励起され、前記無線信号のキャリアの周波数と差分周波数だけ異なる繰り返し周波数の光周波数コムを生成する微小光共振器と、
前記受信アンテナの受信部に設けられ、さらに前記光周波数コムを構成する光周波数モードのうち任意の光周波数モードを前記無線信号に応じて光変調する電気/光変換素子と、
前記光周波数モードの変調成分を分離し、併せて、前記光周波数モードと繰り返し周波数離れた隣接周波数モードであって前記光周波数モードの変調成分と最も近くに隣接する非変調成分を分離する光バンドパスフィルターとを有する無線受信装置。
【請求項2】
前記差分周波数は10GHz以上100GHz以下であることを特徴とする請求項1に記載の無線受信装置。
【請求項3】
前記任意の光周波数モード変調成分と差分周波数離れて隣接する前記隣接光周波数モードの非変調成分を混合し、光ビート信号を電気信号に変換する復調装置をさらに備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線受信装置。
【請求項4】
前記電気/光変換素子は、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、テルル化亜鉛(ZnTe)、ガリウム・リン(GaP)、ガリウム砒素(GaAs)、DASTからなる群より選択される1種以上の電気光学結晶材料から構成されることを特徴とする請求項3に記載の無線伝送装置。
【請求項5】
前記電気/光変換素子は電気光学ポリマーによって構成されることを特徴とする請求項3に記載の無線伝送装置。
【請求項6】
前記微小光共振器は非線形光学効果を有する媒質であって、窒化ケイ素(Si)、ガリウム砒素アルミニウム(AlGaAs)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、五酸化タンタル(Ta)、および窒化ガリウム(GaN)からなる群より選択される1種以上の媒質から構成されることを特徴とする請求項3に記載の無線伝送装置。
【請求項7】
前記受信アンテナはパラボラアンテナ、カセグレンアンテナまたはホーンアンテナ等であり、アンテナ焦点付近に前記電気/光変換素子が設けられたことを特徴とする請求項3に記載の無線伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の基地局等から無線信号を受信する、無線受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動(無線)通信(2G/3G/4G/5G等)では、半導体技術の進歩に伴う技術革新が、世代進化(高速化、高周波化)を牽引してきた。しかし、次世代移動通信(Beyond 5G/6G)で扱う周波数はキャリア周波数300GHz以上のいわゆるテラヘルツ帯(以降、THz帯)に及ぶとされ、電気的手法の技術的限界(周波数上限)に達する可能性がある。つまり、無線キャリア波の低出力化と位相ノイズ増大、信号伝送損失の増大による高周波化と省電力化の両立困難、光通信と移動通信の信号変換に伴う時間遅延といった本質的問題が顕在化すると言われている。
【0003】
THz波の検出には、一般的には電気的手法が利用される。ショットキーバリアダイオード(SBD)のような高速THz検出素子を用いると、テラヘルツ波を電気信号として直接検出することが出来る(ホモダイン検出または自乗検出)。一方、THz波(RF信号)と局部発振器(LO信号)を高周波ミキサーでミキシングして、両者の差周波であるビート信号(IF信号)をマイクロ波帯やRF帯で計測することも出来る(ヘテロダイン検出)。
【0004】
一方、光ファイバー網を用いた光通信は最速の情報伝送速度を有し、最近ではデバイス内部の電子配線を光配線に置き換えて超高速・大容量・低遅延・低消費電力を実現するシリコン・フォトニクスの技術開発が進んでいる。このような背景から、無線通信においても、光学的に電波を検出する例が最近見受けられる。例えば、空間伝搬するTHz波を電気光学結晶に印加される電界信号として捉え、電気光学効果(例えば、ポッケルス効果)を用いることにより、THzの伝送情報を変調サイドバンド光として光信号に重畳することが出来る(非特許文献1)。また、THz波(無線キャリア)周波数程度だけ周波数が離間された2モード光を用い、一方のモード光の変調サイドバンド光と、それに隣接した他方のモード光の非変調キャリア光の光ビート信号を検出することにより、共通の位相ノイズを相殺すると共にヘテロダイン検出により、信号対雑音比(SN比)を向上する手法が開示されている(非特許文献2)。
【0005】
一方、微小光共振器から生成した光周波数コム(マイクロ光コム)を用いて、THz波(無線キャリア)周波数に等しい光周波数差で光位相も同期した2モード光を生成し、光学的なTHz波発生に用いられている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】T. Kaji, I. Morohashi, Y. Tominari, N. Sekine, T. Yamada, and A. Otomo, "W-band optical modulators using electro-optic polymer waveguides and patch antenna arrays," Optics Express,Vol. 29, Issue 19, pp. 29604-29614 (2021).
【非特許文献2】S. Hisatake, H. H. N. Pham, and T. Nagatsuma, "Visualization of the spatial-temporal evolution of continuous electromagnetic waves in the terahertz range based on photonics technology," Optica, Vol. 1, Issue 6, pp. 365-371 (2014).
【非特許文献3】N. Kuse, K. Nishimoto, Y. Tokizane, S. Okada, G. Navickaite, M. Geiselmann, K. Minoshima, and T. Yasui,"Low phase noise THz generation from a fiber-referenced Kerr microresonator soliton comb," arXiv:2204.02564 (2022).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、電気的THz検出法は、装置が中型・複雑・高価で、電磁誘導ノイズ等に弱いという問題点がある。また、無線通信と光通信の接続において、電気信号/光信号間での信号変換に伴う時間遅延が生じる。一方、光学的THz検出法は、THz波伝送情報を、電気光学効果を介して瞬時に光キャリア信号に重畳し、光信号として計測出来るので、小型・単純・安価で技術的に成熟した光通信プラットフォームをそのまま流用できる。その結果、光通信との親和性が良好で汎用性も高いが、次世代移動通信で利用されるTHz周波数帯では低い電気/光変換効率のため、高速無線通信に十分な検出感度を得ることが困難である。また、THz波(無線キャリア)周波数程度だけ周波数が離間され、かつ低位相ノイズな2モード光を得るのは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る無線受信装置は、情報信号で変調された無線信号を受信する無線受信装置であって、受信アンテナと、所定の波長のレーザー光を出力するレーザー発光素子と、前記レーザー光で励起され、前記無線信号のキャリアの周波数と差分周波数だけ異なる繰り返し周波数の光周波数コムを生成する微小光共振器と、前記受信アンテナの受信部に設けられ、さらに前記光周波数コムを構成する光周波数モードのうち任意の光周波数モードを前記無線信号に応じて光変調する電気/光変換素子と、前記光周波数モードの変調成分を分離し、併せて、前記光周波数モードと繰り返し周波数離れた隣接周波数モードであって前記光周波数モードの変調成分と最も近くに隣接する非変調成分を分離する光バンドパスフィルターとを有する。
【0009】
前記差分周波数は10GHz以上100GHz以下であってもよい。
【0010】
前記任意の光周波数モード変調成分と差分周波数離れて隣接する前記隣接光周波数モードの非変調成分を混合し、光ビート信号を電気信号に変換する復調装置をさらに備えたものであってもよい。
【0011】
前記電気/光変換素子は、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、テルル化亜鉛(ZnTe)、ガリウム・リン(GaP)、ガリウム砒素(GaAs)、DASTからなる群より選択される1種以上の電気光学結晶材料から構成されるものであってもよい。
【0012】
前記電気/光変換素子は電気光学ポリマー(以下、「EOポリマー」という場合がある)によって構成されるものであってもよい。
【0013】
前記微小光共振器は非線形光学効果を有する媒質であって、窒化ケイ素(Si)、ガリウム砒素アルミニウム(AlGaAs)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、五酸化タンタル(Ta)、および窒化ガリウム(GaN)からなる群より選択される1種以上の媒質から構成されるものであってもよい。
【0014】
前記受信アンテナはパラボラアンテナ、カセグレンアンテナ、またはホーアンテナ等であり、アンテナの焦点付近に前記電気/光変換素子が設けられたものであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、テラヘルツ帯の無線キャリアで送られてくる無線伝送信号をキャリア光に高効率・低位相ノイズ・低時間遅延で重畳することができ、通常の光通信プラットフォームで容易に情報信号を復調することができる。その結果、Beyond5G以降の通信規格の要望をも満たし、光通信とのシームレス接続を可能にする無線受信装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施の形態の無線受信装置のブロック図である。
図2】本発明の第1の実施の形態における電気/光変換素子および受信アンテナの具体例を示した模式図である。
図3】本発明の第1の実施の形態における電気/光変換素子の具体例を示す概念図である。
図4】本発明の第1実施の形態の電気/光変換素子の動作説明図である。
図5】本発明の第1実施の形態の動作説明図である。
図6】本発明の第2実施の形態の無線受信装置のブロック図である。
図7】本発明の第1の実施例のフローチャートである。
図8】本発明の第2の実施例の実験方法を示す説明図である。
図9】本発明の第2の実施例の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施の形態)
以下、第1の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態における無線受信装置2は、無線基地局1から送信される無線信号を受信し、無線信号に含まれる情報信号を、光キャリアに重畳して復調装置3に伝送するまでの処理を行う装置を想定したものである。
【0018】
図1に本実施の形態における無線受信装置2のブロック図を示す。図1において、無線受信装置2は受信アンテナ201を有し、無線信号S4を受信する。受信アンテナ201には受信アンテナ201が受信した無線信号を光変調信号に変換する電気/光変換素子202が設けられている。受信アンテナ201の具体例を図2に示す。
【0019】
受信アンテナ201は凹状の反射面を有するパラボラアンテナやカセグレンアンテナであってもよい。また、開口面に凸レンズを有したホーンアンテナであってもよい。いずれにおいても、アンテナ焦点付近に電気/光変換素子202が設けられている。なお、本実施の形態においては、無線基地局1のアンテナもハイゲインの指向性アンテナであるとし、伝送ロスが最小となるように受信アンテナ201との位置調整が十分にできているものとする。
【0020】
さらに図1において、203は単一周波数(波長)のレーザー光を発するレーザー発光部である。発光波長が1550nmまたはその周辺の波長に合わせこまれた光を発するDFBレーザーが好ましい。204は微小光共振器であり、前記レーザー光で励起され、光周波数コムを生成する。光周波数コムとは、多数の光周波数モード列が等周波数間隔で櫛の歯状に光位相が揃った状態で立ち並んだ超離散マルチスペクトル構造を有する光である。
【0021】
微小光共振器204は半導体基板上に環状に形成されたものであってもよい。直径は40μm~400μmであってもよい。また、非線形光学効果を有する媒質であって、窒化ケイ素(Si)、ガリウム砒素アルミニウム(AlGaAs)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、五酸化タンタル(Ta)、および窒化ガリウム(GaN)からなる群より選択される1種以上の媒質から構成されるものであってもよい。
【0022】
微小光共振器204により生成された光周波数コム(マイクロ光コム)は光学的共振器長が短いため、隣接する光周波数モード間の周波数をテラヘルツ帯まで高く設計することができる。隣接する光周波数モード間の周波数(frep)は50GHz~3THzに、好ましくは100GHz~1THzに、さらに好ましくは350GHz~600GHzに設定してもよい。
【0023】
本実施の形態においては、光周波数コムの繰り返し周波数(frep)は、無線信号のキャリア周波数(fTHz)より差分周波数Δfだけ異なる繰り返し周波数に設定されている。Δfは後段において中間周波数として扱われるものであり、電子回路で扱える周波数以下であることが好ましいが、情報信号の低域まで近づくと情報信号に歪等が生じる。例えば10GHz~100GHz程度が好ましい。
【0024】
ここで、無線信号S4に含まれるキャリアが別の光周波数コムから生成されたものであるとして、繰り返し周波数(すなわちキャリア周波数)をfTHzとした場合、受信側の光周波数コムの繰り返し周波数(frep)はfTHz-ΔfまたはfTHz+Δfであればよい。言い換えれば、レーザー発光部203によって励起される微小光共振器204は繰り返し周波数fTHz-ΔfまたはfTHz+Δfの光周波数コムを生成するものであればよい。
【0025】
205は光バンドパスフィルターであり、光周波数コムからそれぞれ隣接する任意の光周波数モードm3およびm4(それぞれ周波数はν3およびν4、光周波数差はfrep)を分離抽出する。本実施の形態においては、光周波数モードm3およびm4はいずれも電気/光変換素子202に供給される。
【0026】
電気/光変換素子202は電気光学(EO)材料中に、あるいは基板に設けられた光導波路にプローブ光を伝搬させ、その位相を外部からの電界に応じて変調させる機能を有するものである。電気光学材料として例えばニオブ酸リチウム(LiNbO)結晶を使った、いわゆるLN変調器でもよい。本実施の形態の場合、「外部からの電界」とはすなわち受信アンテナが受信した無線信号(S4)を意味する。ニオブ酸リチウム以外に、電気光学結晶材料としてテルル化亜鉛(ZnTe)、ガリウム・リン(GaP)、ガリウム砒素(GaAs)、DAST、EOポリマーを用いてもよい。
【0027】
本明細書において、電気光学ポリマー(EOポリマー)としては、例えば、特願2019-537669明細書に記載の電気光学ポリマーが挙げられる。
【0028】
EOポリマーを用いた電気/光変換素子202の構造および動作を、図3図5を用いてさらに詳しく説明する。まず無線伝送装置1から送られてきた無線信号S4は受信アンテナ201により電気/光変換素子202に外部電界として印加される。無線信号S4は周波数fTHz(例えば300GHz)のキャリア信号が情報信号で変調されたものであってもよい。電気/光変換素子202の構造は、図3(a)、(b)に示す構造であってもよいが、特に限定されない。同図(a)は斜視図を同図(b)は断面構造図をそれぞれ示す。
【0029】
両図において、電気/光変換素子202はCOP(シクロオレフィンポリマー)上に設けられたEOポリマーよりなる光導波路を有する。また、その両側にUV硬化性樹脂に埋め込まれるように金パッチアンテナが設けられている。無線信号の電界成分が光導波路を跨いで振動しているとき、光導波路を挟む金パッチアンテナの間に交流電界が生じる。この電界はEOポリマーに対してポッケルス効果を生じさせ、屈折率を変化させる(Δn)。これにより、EO材料の内部を伝搬する光周波数モードに位相変調が引き起こされる。この様子を図4に示す。
【0030】
後述のように、光周波数モードm3の変調成分と、光周波数モードm3から繰り返し周波数frep離れた隣接周波数モードm4の非変調成分を最終的に抽出できればよいので、電気/光変換素子202には光周波数モードm3のみを供給してもよいが、本実施の形態では光周波数モードm3、m4の両方を電気/光変換素子202に入力し、最後に光バンドパスフィルター207で2波を分離する構成について説明する。
【0031】
THz波によって誘起された電気光学的位相変調により、光周波数モード対(m3およびm4)の光周波数スペクトラムには、各光周波数モードの光(非変調成分)とfTHz離れた位置に変調信号成分が現れる(図5におけるS5)。
【0032】
バンドパスフィルター207は、光増幅素子206で増幅された電気/光変換素子202の出力光S5から光周波数モード光(m4)の非変調成分と光周波数モード光(m3)の変調成分を抽出する(S6)。ただし、このとき、最も近接している光周波数モード光の非変調成分と変調成分を抽出する。図5の例では、光周波数モードm3とm4とそれぞれにおける変調信号成分はfTHz(例えば300GHz)間隔で電気/光変換素子202から出力されるが、バンドパスフィルター207は光周波数モードm3の変調信号成分と光周波数モードm4の非変調信号成分とを抽出する。本実施の形態においては、無線信号S4は周波数fTHz(300GHz)のキャリア(無線信号に含まれていたキャリア)が情報信号で変調されたものであり、光周波数モード対(m3およびm4)の光周波数差はfTHz-Δfであるから、バンドパスフィルター207で抽光周波数モードm3の変調信号成分と光周波数モードm4の非変調信号成分との周波数間隔は(ν3+fTHz)-(ν3+fTHz-Δf)=Δfとなる。
【0033】
Δfはいわゆる中間周波数に相当する周波数であり、本実施の形態では30GHzとしている。そこで周波数差Δf=30GHzの両者を混合し、光ビート信号を電気信号に変換すれば、30GHzのキャリア信号(ベースバンド信号)で変調された伝送情報信号が得られる。30GHz程度であれば通常の電子回路を用いて復調処理は可能である。本実施の形態では、バンドパスフィルター207の出力光は光ファイバーを通して復調装置3に送られ(S6)、復調装置3内部で電気的に復調処理がなされ、最終的にベースバンドの情報信号が得られる。
【0034】
なお、本実施の形態において、EO材料としてEOポリマーを用いた。EOポリマーは、従来の電気光学結晶(ZnTeやLNなどの無機材料)と比較して大きなEO係数を有する一方で、THz領域での損失が比較的低く、数100GHz以上の超高速応答が可能である。また、THz波と光信号の群速度ミスマッチの調整も可能である。
【0035】
(第2の実施の形態)
図6に本発明の第2の実施の形態のブロック図を示す。図6において、受信アンテナ201、電気/光変換素子202、レーザー発光部203、微小光共振器204、光増幅素子206、光バンドパスフィルター207は図1で示されたものと同等の機能を有する。本実施の形態においては、バンドパスフィルター2051とバンドパスフィルター2052によって光周波数モードm3とこれと隣接する光周波数モードm4がそれぞれ独立に分離され、光周波数モードm3のみがキャリア光として電気/光変換素子202に供給される。
【0036】
以上のように構成したことにより、光周波数モードm4には変調信号が含まれない。このため、光バンドパスフィルター207によって隣接モードの変調信号からのクロストークを除去する必要がなくなり、光バンドパスフィルター207の仕様を緩和することができる。
【実施例0037】
以下本発明の実施例について説明する。
【0038】
(第1の実施例)
図7に第1の実施例のフローチャートを示す。同図は無線信号S4をアンテナ201で受信してから光バンドパスフィルター207で変調信号成分が抽出されるまでの各ステップでの利得と損失を見積もったものである。
【0039】
まず、マイクロ光コムの出力を光増幅した後に光バンドパスフィルターで抽出された、変調対象となる光周波数モード対(m3およびm4)のパワーはそれぞれ6mW(7.76dBm)であるとする。この光周波数モード対(m3およびm4)はキャリア光として電気/光変換素子に供給され、無線信号S4の周波数で変調成分が光サイドバンドして生成される。図7では、光周波数モード(m3)の変調側波帯(高周波側)のみを表示している。ここで、無線信号に含まれる情報信号(変調成分)は周波数4分割多重で送信されているとする。また、各周波数チャネルの情報信号(変調成分)の変換効率を-50dB(0.00001倍)程度とし、光増幅器のゲインを+40dB、光バンドパスフィルターの損失を-3dBとする。以上の条件下では、光バンドパスフィルターの出力に含まれる情報信号(変調成分)は1周波数チャネルあたり-5.24dBm(0.3mW)と見積もれる。
【0040】
(第2の実施例)
本実施例では、実際に無線信号S4(周波数100GHz)を電気/光変換素子202であるEOポリマー変調デバイスに照射し、キャリア光に対して光変調を行った実験について説明する。本実施例の実験方法を図8に示す。本実施例においては、キャリア光は波長1566nmのCWレーザーを用いて生成され、偏光制御の後、テーパー&レンズファイバーでカップリングしてEOポリマー変調デバイス上の光導波路に供給される。
【0041】
一方無線信号S4は周波数100GHzのキャリアのみとし、適当なパワーで一点に集められ、EOポリマー変調デバイス上に照射される。その結果、先述のように、無線信号S4の電界成分によってキャリア光が変調を受け、その変調光が光ファイバーを通って光スペクトラムアナライザーに送られる。
【0042】
光スペクトラムアナライザーによって測定された光スペクトラムの様子を図9に示す。光キャリア信号から波長で約1nm離れた両側の位置に変調サイドバンドが立っているのが確認される。これはキャリア光が100GHzの無線信号により変調を受けたことを意味する。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、移動端末や無線基地局からの無線信号を受信し、光伝送する交換局や中継局に用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 無線基地局
2 無線受信装置
3 復調装置
201 受信アンテナ
202 電気/光変換素子
203 レーザー発光部
204 微小光共振器
205,207 光バンドパスフィルター
206 光増幅器
2051,2052 光バンドパスフィルター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9