(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031072
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】監視装置、監視方法、及び監視プログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20240229BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01H17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134385
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朝野 誠介
(72)【発明者】
【氏名】竹下 勝治
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AD21
2G024BA27
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA01
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC02
2G064CC41
2G064CC42
2G064DD02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】監視対象物の異常の予兆を把握する技術を改善する。
【解決手段】本開示の監視装置10の処理部11は、取得部13を介して、監視対象物20から発せられる波形を示すデータを取得し、当該波形を示すデータから複数の特徴量を抽出し、当該複数の特徴量に基づいて、監視対象物20の異常の予兆の有無を判定する。監視方法は、監視装置が実行する監視方法であって、監視対象物から発せられる波形を示すデータを取得することと、前記波形を示すデータから複数の特徴量を抽出することと、前記複数の特徴量に基づいて、前記監視対象物の異常の予兆の有無を判定することと、を含む。監視プログラムは、コンピュータに、監視対象物から発せられる波形を示すデータを取得することと、前記波形を示すデータから複数の特徴量を抽出することと、前記複数の特徴量に基づいて、前記監視対象物の異常の予兆の有無を判定することと、を実行させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理部及び取得部を備える監視装置であって、
前記処理部は、
前記取得部を介して、監視対象物から発せられる波形を示すデータを取得し、
前記波形を示すデータから複数の特徴量を抽出し、
前記複数の特徴量に基づいて、前記監視対象物の異常の予兆の有無を判定する、監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の監視装置であって、
前記処理部は、前記複数の特徴量から更なる特徴量を抽出し、前記更なる特徴量に基づいて、前記監視対象物の異常の予兆の有無を判定する、監視装置。
【請求項3】
監視装置が実行する監視方法であって、
監視対象物から発せられる波形を示すデータを取得することと、
前記波形を示すデータから複数の特徴量を抽出することと、
前記複数の特徴量に基づいて、前記監視対象物の異常の予兆の有無を判定することと、を含む、監視方法。
【請求項4】
コンピュータに、
監視対象物から発せられる波形を示すデータを取得することと、
前記波形を示すデータから複数の特徴量を抽出することと、
前記複数の特徴量に基づいて、前記監視対象物の異常の予兆の有無を判定することと、を実行させる、監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、監視装置、監視方法、及び監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、検査対象物毎に検査対象物の駆動時に測定される波形データを取得し、検査対象物の異常を検査する検査装置において、検査対象物毎に、上記波形データから特徴量を抽出する特徴抽出手段と、検査対象物毎に抽出された上記特徴量が、複数の検査対象物で連続して所定の閾値を超えると、検査環境の変化が発生していることを検出する環境変化検出手段と、を備えたことを特徴とする検査装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、監視対象物の異常の予兆を把握する点において改善の余地があった。
【0005】
本開示の目的は、監視対象物の異常の予兆を把握する技術を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る監視装置は、処理部及び取得部を備える監視装置であって、前記処理部は、前記取得部を介して、監視対象物から発せられる波形を示すデータを取得し、前記波形を示すデータから複数の特徴量を抽出し、前記複数の特徴量に基づいて、前記監視対象物の異常の予兆の有無を判定する。
【0007】
本開示に係る監視方法は、監視装置が実行する監視方法であって、監視対象物から発せられる波形を示すデータを取得することと、前記波形を示すデータから複数の特徴量を抽出することと、前記複数の特徴量に基づいて、前記監視対象物の異常の予兆の有無を判定することと、を含む。
【0008】
本開示に係る監視プログラムは、コンピュータに、監視対象物から発せられる波形を示すデータを取得することと、前記波形を示すデータから複数の特徴量を抽出することと、前記複数の特徴量に基づいて、前記監視対象物の異常の予兆の有無を判定することと、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、監視対象物の異常の予兆を把握する技術を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態に係る監視システムの構成を示す図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る監視装置の動作を示す図である。
【
図3】本開示における第1の特徴量及び第2の特徴量を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本開示の一実施形態を説明する。
【0012】
図1を参照して、本実施形態に係る監視システム1の構成を説明する。
【0013】
監視システム1は、少なくとも1つの、監視装置10と、監視対象物20と、波形測定器30と、を備える。
【0014】
監視装置10は、例えばクラウドコンピューティングシステム又はその他のコンピューティングシステムに属するサーバである。
【0015】
監視対象物20は、工場等に設置される任意の設備である。監視対象物20は、例えばマシニングセンタ等の工作機械、半導体製造設備等で使用されるポンプ、ベルトコンベア等で使用されるベアリング、又はカッター等の加工設備等であるが、これらに限られない。
図1では1つの監視対象物20が図示されているが、監視システム1が備える監視対象物20の数は複数であってもよい。例えば、複数の設備が物理的又は電気的に接触していたり、或いは近接していたりすることにより波形の影響を受け合う場合等には、これら複数の設備を監視対象物20としてよい。
【0016】
波形測定器30は、監視対象物20から発せられる波形を測定可能な任意の測定器である。波形測定器30は、任意の増幅器40を介して、監視装置10に適宜接続される。ここで、波形は、例えば振動波形、電圧波形、電流波形、又はAE(Acoustic Emission)波
形等であるが、これらに限られない。
図1では1つの波形測定器30が図示されているが、監視システム1が備える波形測定器30の数は複数であってもよい。例えば、上述したように監視対象物20が複数ある場合には各監視対象物20に波形測定器30がそれぞれ取り付けられてもよい。この場合、後述する複数の特徴量は、各波形測定器30からそれぞれ測定された波形を示すデータからそれぞれ抽出されたものであってもよい。また、1つの監視対象物20が備える各部材に波形測定器30がそれぞれ取り付けられてもよい。また、監視対象物20が備える複数の部材のうち波形の影響を及ぼし合う各部材に波形測定器30がそれぞれ取り付けられてもよい。さらに、
図1では1つの増幅器40が図示されているが、監視システム1が備える増幅器40の数は複数であってもよい。また、1つの増幅器40が複数の監視対象物20に接続されていてもよい。
【0017】
次に、本実施形態に係る監視装置10の構成を説明する。
【0018】
監視装置10は、処理部11と、記憶部12と、取得部13と、入力部14と、出力部15と、を備える。
【0019】
処理部11は、1つ以上のプロセッサ、1つ以上のプログラマブル回路、1つ以上の専用回路、又はこれらの組合せを含む。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing
Unit)若しくはGPU(Graphics Processing Unit)等の汎用プロセッサ、又は特定の
処理に特化した専用プロセッサである。プログラマブル回路は、例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)である。専用回路は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。処理部11は、監視装置10の各部を制御しながら、監視装置10の動作に関わる各種処理を実行する。
【0020】
記憶部12は、1つ以上の半導体メモリ、1つ以上の磁気メモリ、1つ以上の光メモリ、又はこれらの組合せを含む。半導体メモリは、例えばRAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)である。記憶部12は、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部12には、監視装置10の動作に用いられる情報と、監視装置10の動作によって得られた情報とが記憶される。
【0021】
取得部13は、波形測定器30からのデータ、又は任意のデータベース等の外部機器か
らのデータを取得可能な1つ以上の取得用インタフェースを含む。取得用インタフェースは、例えばアナログ入力インタフェース、デジタル入力インタフェース、又はLAN(Local Area Network)インタフェースであるが、これらに限られない。取得部13は、監視装置10の動作に用いられるデータを取得し、処理部11が読み取り可能なデータ形式に当該データを変換する。
【0022】
入力部14は、1つ以上の入力用インタフェースを含む。入力用インタフェースは、例えば物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、又はディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーンである。入力部14は、監視装置10の動作に用いられる情報を入力する操作を受け付ける。入力部14は、監視装置10に備えられる代わりに、例えばUSB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)、又はBluetooth(登録商標
)等の任意の方式により、タブレット端末等の外部の入力機器として監視装置10に接続されてもよい。
【0023】
出力部15は、1つ以上の出力用インタフェースを含む。出力用インタフェースは、例えばディスプレイである。ディスプレイは、例えばLCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイである。出力部15は、監視装置10の動作によって得られる情報を出力する。出力部15は、監視装置10に備えられる代わりに、例えばUSB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)、又はBluetooth
(登録商標)等の任意の方式により、タブレット端末等の外部の出力機器として監視装置10に接続されてもよい。
【0024】
図2を参照して、本実施形態に係る監視装置10の動作を説明する。本動作は、本実施形態に係る監視方法に相当する。
【0025】
ステップS1:監視装置10の処理部11は、波形測定器30によって測定された監視対象物20から発せられる波形を示すデータを、取得部13を介して取得する。
【0026】
監視対象物20から発せられる波形は、監視対象物20の動作時のものであってもよく、或いは静止時のものであってもよい。
【0027】
ステップS2:監視装置10の処理部11は、ステップS1で取得した波形を示すデータから複数の特徴量を抽出する。
【0028】
複数の特徴量は、波形の実効値(RMS値)、任意のバンドパスフィルタを用いて波形から抽出可能なピーク振幅若しくは衝撃度(波形の尖度)、又は任意のFFT(Fast Fourier Transformation)手法を用いて波形から抽出可能なパワースペクトル(例えば、パ
ワースペクトルからユーザによって指定された周波数帯域のパワーを数値化した指定帯域ピークパワー)を含んでもよいが、これらに限られない。なお、何れの特徴量を採用するかについては、ユーザ入力等に基づいて適宜選択可能であってもよい。ユーザ入力の場合、監視装置10の処理部11は、ユーザが入力部14を介して所望の種類の特徴量を選択する動作を受け付けることができる。
【0029】
ステップS3:監視装置10の処理部11は、ステップS2で抽出した複数の特徴量に基づいて、監視対象物20の異常の予兆の有無を判定する。
【0030】
ここで、監視装置10の処理部11は、ステップS2で抽出した複数の特徴量から更なる特徴量を抽出し、当該更なる特徴量に基づいて、監視対象物20の異常の予兆の有無を判定してもよい。以下、この場合を具体的に説明する。
【0031】
まず、監視装置10の処理部11は、ステップS1で取得した波形を示すデータから複数の特徴量に相当する第1の特徴量及び第2の特徴量を抽出する。そして、監視装置10の処理部11は、当該第1の特徴量及び当該第2の特徴量から更なる特徴量に相当する第3の特徴量を抽出する。そして、監視装置10の処理部11は、第3の特徴量の値が所定の閾値以上の場合に、監視対象物20に異常の予兆が存在すると判定する。
【0032】
第1の特徴量は、ステップS1で取得した波形を示すデータのうち第1の周波数帯域における波形を示すデータから抽出された特徴量であってもよい。第2の特徴量は、ステップS1で取得した波形を示すデータのうち第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域における波形を示すデータから抽出された特徴量であってもよい。ここで、第1の周波数帯域(例えば低周波域)及び第2の周波数帯域(例えば高周波域)は、監視対象物20から発せられる波形の特性に応じて、監視システム1を運用する上で適切な頻度且つ精度で異常の予兆が検出されるよう、ユーザ入力等に基づいて適宜選択可能であってもよい。例えば、単一の特徴量のみでは異常の予兆の検出頻度が高すぎて運用上問題になる場合がある。この場合、第1の周波数帯域に対応する第1の特徴量に加えて、第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域に対応する第2の特徴量を用いることによって、第1の特徴量に対応する異常状態と第2の特徴量に対応する異常状態との複合状態が監視システム1を運用する上で適切な頻度且つ精度で検出されるよう、第1の周波数帯域と第2の周波数帯域とが選択される。これは、以下の技術的知見に基づくものである。すなわち、
図3も参照して、第1の周波数帯域における第1の特徴量のみが異常の予兆の判定に用いられる場合、監視対象物20が実際には異常の予兆を示していない場合であっても、第1の特徴量が所定の閾値以上となると、異常の予兆とまでは言えない振動までもが異常の予兆として検出されることがあり、これがノイズとなって過検出といった問題が生じる。同様に、第2の周波数帯域における第2の特徴量のみが異常の予兆の判定に用いられる場合、監視対象物20が実際には異常の予兆を示していない場合であっても第2の特徴量が所定の閾値以上となると、異常の予兆とまでは言えない振動までもが異常の予兆として検出されることがあり、これがノイズとなって過検出といった問題が生じる。これに対して、2つの異なる周波数帯域における特徴量をそれぞれ掛け合わせる(AND演算する)ことにより、真
に異常の予兆に寄与する複合状態のみが高い確率で第3の特徴量として現れ、異常の予兆に寄与しないノイズが抑制されるのである。なお、第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域は、例えば分析対象の異常に対応する周波数成分を任意の手法で分析することによって特定されてもよい。また、低周波域と高周波域との境界は、監視対象物20に固有な特性(固有振動数等)を考慮して適宜設定可能であり、例えば500Hz若しくはその近傍であってもよく、又は1000Hz若しくはその近傍であってもよい。すなわち、低周波域は境界となる周波数以下であり、且つ高周波域は境界となる周波数超えであってもよい。一例として、低周波域に相当する第1の周波数帯域は装置自体の揺れに関連し、高周波域に相当する第2の周波数帯域は回転機構による振動又は摩擦で発生する振動に関連してもよい。ただし、本開示はこれらの例に限られず、ユーザが検出を望む予兆に関連する異なる周波数帯域を適宜組み合わせることが可能である。
【0033】
第3の特徴量は、第1の特徴量及び第2の特徴量に対して所定の演算を施すことによって算出された特徴量であってもよい。
【0034】
所定の演算は、第1の特徴量と第2の特徴量との加算、減算、積算、又は除算であってもよい。一例として、所定の演算は、各時刻において第1の特徴量に第2の特徴量を加える演算、各時刻において第1の特徴量から第2の特徴量を減ずる演算若しくは第2の特徴量から第1の特徴量を減ずる演算、各時刻において第1の特徴量に第2の特徴量を乗じる演算、又は各時刻において第1の特徴量を第2の特徴量で除する演算若しくは第2の特徴量を第1の特徴量で除する演算であってもよい。なお、四則演算のうち何れを採用するかについては、監視装置10の入力部14を介してユーザが適宜設定可能であってもよい。
ここで、監視装置10の処理部11が出力部15を介してユーザに向けて以下のメッセージを出力することによって、ユーザの利便性を向上させてもよい。すなわち、当該メッセージは、第1の特徴量に対応する異常状態と第2の特徴量に対応する異常状態との複合状態の検出又は異なるタイミングで発生した異常状態であってもこれらに起因して共通の設備に発生する異常状態の検出には、加算又は乗算が適している旨を含んでもよい。また、当該メッセージは、加算及び乗算のうち何れが適しているかについて、第1の特徴量及び第2の特徴量の各スケールと影響度合いに応じて適宜選択可能である旨を含んでもよい。また、当該メッセージは、第1の特徴量及び第2の特徴量のうち何れかに対応する異常状態の検出には、減算又は除算が適している旨を含んでもよい。ただし、本開示はこれらに限られない。
【0035】
また、所定の演算は、第1の特徴量の累乗値と第2の特徴量の累乗値との加算、減算、積算、又は除算であってもよい。一例として、所定の演算は、各時刻において第1の特徴量の二乗値に第2の特徴量の二乗値を加える演算、各時刻において第1の特徴量の二乗値から第2の特徴量の二乗値を減ずる演算若しくは第2の特徴量の二乗値から第1の特徴量の二乗値を減ずる演算、各時刻において第1の特徴量の二乗値に第2の特徴量の二乗値を乗じる演算、又は各時刻において第1の特徴量の二乗値を第2の特徴量の二乗値で除する演算若しくは第2の特徴量の二乗値を第1の特徴量の二乗値で除する演算であってもよい。
【0036】
さらに、監視装置10の処理部11は、上述した所定の演算を施すにあたって、第1の特徴量又は第1の特徴量の累乗値と第2の特徴量又は第2の特徴量の累乗値との少なくとも一方に所定の重み付けを行ってもよい。重み付けは、所定の演算が加算又は減算である場合には所定の値を乗じることによって為されてもよく、所定の演算が積算又は除算である場合には所定の値を除することによって為されてもよいが、これらに限られない。ここで、第1の特徴量又は第1の特徴量の累乗値に対する重みと、第2の特徴量又は第2の特徴量の累乗値に対する重みとは、ユーザが所望する異常の予兆の検出精度に応じて適宜設定可能であってもよい。例えば、第1の特徴量又は第1の特徴量の累乗値と第2の特徴量又は第2の特徴量の累乗値とのうち検出精度への影響がより大きいほうに対する重みのほうが大きく設定されてもよい。また、第1の特徴量又は第1の特徴量の累乗値に対する重みと第2の特徴量又は第2の特徴量の累乗値に対する重みとは、第1の特徴量のスケールと第2の特徴量のスケールとを合わせるために適宜設定可能であってもよい。なお、重みは、監視装置10の入力部14を介してユーザが適宜設定可能である。
【0037】
所定の閾値は、ユーザが所望する異常の予兆の検出精度に応じて適宜設定可能であり、波形を示すデータの実績値に基づいて決定されてもよい。例えば、実績値として、所定の期間にわたる第3の特徴量の値の平均値又は偏差値等を含む統計値が用いられてもよく、或いは任意の機械学習手法を用いて算出された値が用いられてもよいが、これらに限られない。なお、所定の閾値は、監視装置10の入力部14を介してユーザが適宜設定可能である。
【0038】
一例として、監視装置10の処理部11は、波形を示すデータに相当する振動波形を示すデータから第1の特徴量に相当するピーク振幅又は指定帯域ピークパワーに対して、通過帯域として第1の周波数帯域(低周波域)を有するバンドパスフィルタを用いることによって、異音(高周波域で観測される振動音に該当しない異常音)に対応する第1の特徴量を抽出する。また、監視装置10の処理部11は、波形を示すデータに相当する振動波形を示すデータから第2の特徴量に相当するピーク振幅又は指定帯域ピークパワーに対して、通過帯域として第2の周波数帯域(高周波域)を有するバンドパスフィルタを用いることによって、振動音に対応する第2の特徴量を抽出する。そして、監視装置10の処理部11は、第1の特徴量と第2の特徴量とを掛け合わせる(AND演算する)ことによって
、第3の特徴量を算出する。そして、監視装置10の処理部11は、第3の特徴量が所定の閾値異常の場合に、異常の予兆が存在すると判定する。ただし、本開示は本例に限られない。
【0039】
ステップS4:監視装置10の処理部11は、出力部15を介して、ステップS3の判定の結果をユーザに向けて出力する。なお、出力態様は、監視装置10の入力部14を介してユーザが適宜設定可能である。
【0040】
上述のように、本実施形態に係る監視装置10の処理部11は、取得部13を介して、監視対象物20から発せられる波形を示すデータを取得する。そして、監視装置10の処理部11は、波形を示すデータから複数の特徴量を抽出する。そして、監視装置10の処理部11は、複数の特徴量に基づいて、監視対象物20の異常の予兆の有無を判定する。
【0041】
かかる構成によれば、複数の特徴量を用いることによって、複数の特徴量のうちある特徴量に対応する異常状態と複数の特徴量のうち別の特徴量に対応する異常状態との複合状態が監視システム1を運用する上で適切な頻度且つ精度で検出され得る。より具体的には、
図3を参照しつつ上述したとおり、2つの異なる周波数帯域における特徴量をそれぞれ掛け合わせることにより、真に異常の予兆に寄与する複合状態のみが高い確率で残り、異常の予兆に寄与しないノイズが抑制される。これにより、単一の特徴量を用いる場合には異常の予兆の検出頻度が高すぎて運用上問題になるといった状況が回避され得る。したがって、監視対象物20の異常の予兆を把握する技術を改善することができる。
【0042】
以上、諸図面及び実施例に基づいて本開示を説明してきたが、当業者であれば本開示に基づいて種々の変形及び改変を行ってもよいことに注意されたい。したがって、これらの変形及び改変は、本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップ等に含まれる機能等は、論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0043】
例えば汎用のコンピュータを、上述した実施形態に係る監視装置10として機能させる実施形態も可能である。具体的には、上述した実施形態に係る監視装置10の各機能を実現する処理内容を記述した監視プログラムを、汎用のコンピュータのメモリに格納し、プロセッサによって当該監視プログラムを読み出して実行させる。したがって、本開示は、プロセッサが実行可能な監視プログラム、又は当該監視プログラムを記憶する非一時的なコンピュータ可読媒体としても実現可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 監視システム
10 監視装置
11 処理部
12 記憶部
13 取得部
14 入力部
15 出力部
20 監視対象物
30 波形測定器
40 増幅器