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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031073
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/72 20060101AFI20240229BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
A47C7/72
A47C7/62 A
A47C7/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134386
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(72)【発明者】
【氏名】榎原 邦晃
(72)【発明者】
【氏名】西本 昌悟
【テーマコード(参考)】
3B084
【Fターム(参考)】
3B084JA01
3B084JA02
3B084JA05
3B084JA08
3B084JB06
3B084JC03
3B084JD00
(57)【要約】
【課題】メタバースシステムに好適な椅子を提供する。
【解決手段】椅子は、必須の要素として座1と脚装置2と背もたれ3とを備えており、背もたれ3にはヘッドレスト10が設けられている。椅子は、更に、オプション品としての肘掛け13も備えている。椅子のユーザーは、メタバースシステムのアイテムとして、身体装着式の映像機器19及びコントローラ20を使用する。背もたれ3や肘掛け13やブラケット7に、映像機器19やコントローラ20に電源又は通信データを供給する電源用又は通信用の付属器具31,32,33を設けている。ケーブル28~30は床に散乱させることなく美麗に取り回しできる。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャスタを有する脚部と、
前記脚部よりも上に配置された身体支持要素と、
着座した人が使用する電子機器のケーブルが接続される給電用又は通信用の付属器具と、
を有し、
前記身体支持要素は、座と背もたれとヘッドレストと肘掛けとのうち少なくとも1つを含み、
前記身体支持要素に前記付属器具を配置している、
椅子。
【請求項2】
鉛直姿勢の脚支柱を有する脚部と、
背もたれとヘッドレストとのうち少なくとも1つと、
着座した人が使用する電子機器のケーブルが接続される給電用又は通信用の付属器具と、
を有し、
前記付属器具は、前記背もたれ又はヘッドレストのいずれかに配置されている、
椅子。
【請求項3】
座及び背もたれと、オプション品としてのヘッドレストとを含み、
前記座及び背もたれを左右両側及び後ろから囲うパネル装置と、
着座した人が使用する電子機器のケーブルが接続される給電用又は通信用の付属器具と、
を有し、
前記付属器具は、前記背もたれ又はヘッドレスト若しくはパネル装置に配置されている、
椅子。
【請求項4】
前記電子機器は、着座した人が頭又は顔に装着する映像装置であり、
前記付属器具は、前記背もたれ又はヘッドレストに配置されている、
請求項1~3のうちのいずれかに記載した椅子。
【請求項5】
前記付属器具は、前記電子機器との間に介在する給電用のケーブルを接続する電源供給用接続端子を含む電源部と、前記電子機器との間に介在する通信用のケーブルを接続する通信用接続端子を含む通信中継器と、のうちのいずれか一方又は両方である、
請求項1~3のうちのいずれかに記載した椅子。
【請求項6】
前記電子機器を使用しないときに当該前記電子機器を保持する電子機器保持部が設けられている、
請求項1~3のうちのいずれかに記載した椅子。
【請求項7】
前記電子機器は、着座した人の頭または顔に装着する本体部と、着座した人が片手又は両手で操作するコントローラとを有しており、
前記背もたれ又はヘッドレストに、前記本体部の保持部が設けられて、
前記肘掛けに、前記コントローラの保持部が設けられている、
請求項6に記載した椅子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ユーザーが着座した状態でバーチャル機器(VR機器)を使用するのに好適な椅子に関するものである。ここに、バーチャル機器には、人が仮想空間(メタバース)を利用するめの映像機器やゲーム機器などが含まれる。
【0002】
仮想空間の態様は様々であり、ユーザーの仮想分身が仮想空間に入り込んで行う会議類、仮想教室において行われる双方向参加型の授業、単独又は複数人で仮想旅行地を訪ねる仮想旅行、仮想商店で仮想店員と仮想客とが商品を見ながら行う仮想買い物、複数人で行うゲームなどの多種多様なものが含まれる。直接民主主義の発展形として、多くの市民が仮想の分身を通じて参加できる仮想議会も想定される。
【背景技術】
【0003】
近年、インターネットを介した映像付き双方向対話システムが進展してる。この代表はパソコンやスマートフォン、タブレット端末を使用したWEB会議であり、WEB会議では、カメラによって参加者のリアルの状態が撮影されており、参加者の映像や資料が参加者の機器のモニターに表示される。友人間や知人間で行われるWEB飲み会やWEB会合も同様である。
【0004】
WEB会議はパソコン等の機器のモニターに現実の参加者の映し出すものであり、参加者が遠隔的に参加している会議である。従って、各参加者は、資料や音声を通じた意見の表明しかできず、参加者同士が互いに動く人として空間を共有することはできない。
【0005】
他方、各参加者を仮想分身化して、CG(コンピュータ・グラフィックス)で作られた三次元の仮想空間で、各参加者が仮想人物として動きまわることができるメタバース(Metaverse)のシステムがあり、例えばゲームの分野では相当に進展している。特に、大容量高速伝送技術の発達によってメタバースの広がりが期待されている。
【0006】
ここでWEB会議やメタバースシステムを人が使用する環境について見ると、いずれにおいても人は椅子に腰掛けて参加しているのが普通であり、WEB会議の場合はテーブルが椅子とセットで使用されている。すなわち、参加者はパソコンをテーブルに置いて、パソコンのモニターを見ながらWEB会議を遂行しているのが普通である。従って、椅子は単に腰掛けるだけのものとして認識されている。
【0007】
これに対して、ゲームについては、長時間継続して行うことが多いため、ユーザーの身体の負担を軽減するように配慮された専用椅子が提供されているが、ゲーム用椅子は専らユーザーの身体の安楽性を追求していて、ゴーグルやコントローラのような機器について電源や通信線についての配慮はなされていない。
【0008】
他方、椅子に電気機器や電子機器を設けることが行われており、この場合は、機器の電源に対する電源を椅子に設けている。例えば特許文献1には、電動式の揺動機構を備えた椅子に給電部を設けることが開示されて、特許文献2,3には、ヘッドレストにスピーカを備えた椅子において、椅子にスピーカ用の給電部を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005-287784号公報
【特許文献2】特開2021-095037号公報
【特許文献3】特開2022-029419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1~3のように椅子自体に電気機器・電子機器を内部機器として設けている場合には、それら内部機器のための給電手段が必要である。
【0011】
他方、ゲームを初めとしたメタバースシステムでは、映像機器やコントローラのようにユーザーが身体に装着したり手で持ったりする電子機器が必須のアイテムとして使用されており、これらのアイテムは椅子の機能とは関係ないため、椅子から見ると外部機器として把握できるが、ゲーム用椅子に関して説明したように、映像機器やコントローラ等の外部機器に対する給電環境や通信環境についての配慮はなされていない。
【0012】
従って、メタバースシステムを利用するユーザーは、外部機器の電源ケーブルや通信ケーブルは、室の壁等に設けたコンセントやルータから引き出すことになるが、この場合はケーブルが床に散乱して環境が悪化するおそれがある。
【0013】
ここで通信線について述べると、通信方式として無線送信も多用されているが、メタバースのシステム向上のための大容量化・高速化やセキュリティを考慮すると有線方式が好適であると云える。しかし、椅子から離れた箇所に設けたルータ等からケーブルを引き出すと、見た目が悪化したり人の足が引っ掛かりやすくなったりする問題が顕著に顕れると思料される。
【0014】
本願発明はこのような現状に鑑み成されたものであり、メタバースシステムに対応したユーザーフレンドリーな椅子を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明は様々な構成を含んでおり、その典型を各請求項で特定している。
このうち請求項1の発明の椅子は、
「キャスタを有する脚部と、
前記脚部よりも上に配置された身体支持要素と、
着座した人が使用する電子機器のケーブルが接続される給電用又は通信用の付属器具と、を有し、
前記身体支持要素は、座と背もたれとヘッドレストと肘掛けとのうち少なくとも1つを含み、
前記身体支持要素に前記付属器具を配置している」
という構成になっている。
【0016】
付属器具は1つの身体支持要素のみに設けてもよいし、複数の身体支持要素に設けてもよい。また、1つの付属器具に電源や通信等の1つの機能を持たせてもよいし、1つの付属器具に複数の機能を持たせてもよい。単機能付属器具(例えばコンセント)と複合機能付属器具とを異なる部位に配置することも可能である。
【0017】
請求項2の発明の椅子は請求項1と並立して上位概念を成すもので、
「鉛直姿勢の脚支柱を有する脚部と、
背もたれとヘッドレストとのうち少なくとも1つと、
着座した人が使用する電子機器のケーブルが接続される給電用又は通信用の付属器具と、
を有し、
前記付属器具は、前記背もたれ又はヘッドレストのいずれかに配置されている」
という構成になっている。
【0018】
請求項3の発明も上位概念を成すもので、
「座及び背もたれと、オプション品としてのヘッドレストとを含み、
前記座及び背もたれを左右両側及び後ろから囲うパネル装置と、
着座した人が使用する電子機器のケーブルが接続される給電用又は通信用の付属器具と、
を有し、
前記付属器具は、前記背もたれ又はヘッドレスト若しくはパネル装置に配置されている、」
という構成になっている。
【0019】
請求項4の発明は請求項1~3のうちのいずれかの展開例であり、
「前記電子機器は、着座した人が頭又は顔に装着する映像装置であり、
前記付属器具は、前記背もたれ又はヘッドレストに配置されている」
という構成になっている。
【0020】
請求項5の発明は請求項1~3のうちのいずれかの展開例であり、
「前記付属器具は、前記電子機器との間に介在する給電用のケーブルを接続する電源供給用接続端子を含む電源部と、前記電子機器との間に介在する通信用のケーブルを接続する通信用接続端子を含む通信中継器と、のうちのいずれか一方又は両方である」
という構成になっている。電源部には、交流100Vの商用電源(コンセント)やバッテリ、USBポートなどが含まれる。通信中継機としてはコネクタ類やルータなどが含まれる。
【0021】
請求項6の発明は請求項1~3のうちのいずれかの展開例であり、
「前記電子機器を使用しないときに当該前記電子機器を保持する電子機器保持部が設けられている」
という構成になっている。電子機器保持部としては、箱状やポケット状、フック方式などの各種の形態が含まれる。
【0022】
請求項7の発明は請求項6を具体化したもので、
「前記電子機器は、着座した人の頭または顔に装着する本体部と、着座した人が片手又は両手で操作するコントローラとを有しており、
前記背もたれ又はヘッドレストに、前記本体部の保持部が設けられて、
前記肘掛けに、前記コントローラの保持部が設けられている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0023】
請求項1~3の発明では、着座者が使用する外部機器の電源ケーブルや通信ケーブルは椅子に付設された付属器具に接続したらよいため、ケーブルが床に散乱することを防止して、美麗に処理できる。ケーブルの垂れ下がりも極力抑制して、環境を改善できる。
【0024】
外部機器の電源が当該外部機器に装着した電池であると、電池が消耗して使用不能になることがあり得るが、本願発明では、椅子に設けた付属器具から電源を供給できるため、電池の消耗を気にすることなく外部機器を長時間に亙って継続使用できる。また、通信の有線化も容易であるため、データの大容量化・高速化に容易に対応できる。従って、メタバースシステムに使用する椅子として好適である。
【0025】
請求項1のように椅子がキャスタを備えていると、椅子は自由に移動させることができるため、テーブル(机)とセットで使用してオフィス勤務や在宅勤務に供することができるが、椅子は通常の執務とメタバースシステムとの両方に使用できるため、汎用性に優れている。
【0026】
請求項3の発明はパネル装置を含んだ椅子で定置式であるが、付属器具は背もたれ又はヘッドレストに配置されているため、付属器具と外部機器との間隔を狭めてケーブルの接続を容易に行える利点がある。
【0027】
メタバースシステムでは、外部機器として着座した人が頭又は顔に装着する映像装置が使用されるが、請求項4のように付属器具を背もたれ又はヘッドレストに配置すると、請求項3で述べたように、付属器具は背もたれ又はヘッドレストに配置されているため、付属器具と外部機器との間隔を狭めてケーブルの接続を容易に行える利点がある。
【0028】
外部機器を機能させるには一般に電源と通信とが必要であるため、請求項5のように付属器具として電源部又は通信中継器を設けると、殆どの電子機器(外部機器)に対応できて汎用性に優れている。
【0029】
請求項6のように椅子に電子機器保持部を設けると、電子機器を使用しないときに置き場所に困らない。メタバースシステムではユーザーの頭又は顔に装着するゴーゴル状等の映像機器と、着座者が手で操作するコントローラとが使用されることが多いが、請求項7の発明では、電子機器の本体部とコントローラとは使用位置に近い部位に保持できるため、使い勝手がよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第1実施形態の正面図である。
図2】第1実施形態の側面図である。
図3】第2実施形態を示す図で、(A)は前方から見た斜視図、(B)は後ろから見た斜視図である。
図4】第3実施形態を示す図で、(A)は前方から見た斜視図、(B)は後ろから見た斜視図である。
図5】第4実施形態を示す図で、(A)は目隠しパネルを装着した状態での斜視図、(B)は目隠しパネルを取り外した状態での斜視図である。
図6】第5実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下では、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、これらの方向は、普通の状態で着座した人から見た方向として特定している。正面視方向は着座者と対向した方向である。
【0032】
(1).第1実施形態(図1,2)の基本構造
図1,2では、第1実施形態を示している。この実施形態の椅子はゲーム用として用意されているが、オフィスにおいてメタバースシステムを使用することにも利用できる。椅子は、必須の要素として座1と脚装置2と背もたれ3とを備えており、脚装置2は、ガスシリンダより成る脚支柱4と放射状に延びる5本の脚羽根5とを有しており、各脚羽根5の先端にはキャスタ6を取り付けている。従って、本実施形態の椅子は回転椅子の一例である。
【0033】
座1は、図示は省略するが、脚支柱4の上端に固定された座板(ベース板)にクッション体を張った構造であり、座板の後端部に、左右のブラケット7を介して背もたれ3が後傾動可能に連結されている。背もたれ3は座1の内部に配置したばねに抗して後傾動(リクライニング)するようになっており、後傾動に対するばねの抵抗の大きさは、座1の下面に設けたハンドル8によって調節できる。右ブラケット7には操作レバー9を設けており、操作レバー9の回動操作により、背もたれ3の回動角度を複数段階又は無段階に調節できる。
【0034】
背もたれ3の上端部はヘッドレスト10になっており、ヘッドレスト10の直下部には、図示しないベルトによって首当て11を取り付けている。なお、背もたれ3と、ヘッドレスト10は、必ずしも一体である必要はなく、別体に構成されてもよい(着脱式であってもよい。)。また、背もたれ3の下端には、バイブレータ付きの腰当て12(マッサージ具)を装着している。更に、背もたれ3の左右側部は前外向きに突出したサイド枠部3aを設けており、このサイド枠部3aによって着座者を左右から包み込んでいる。
【0035】
座1の左右側部には、肘掛け13を取り付けている。肘掛け13は、座1に固定された支柱14と、支柱14に昇降自在に嵌め込まれた筒状の昇降体15と、昇降体15の上端に設けた肘当て16とを有している。肘当て15の下面に、昇降ロックを解除するボタン17が設けられている。
【0036】
(2).第1実施形態の外部機器及び付属器具
椅子のユーザーは、仮想空間会議のようなメタバースシステムに参加できるが、実施形態では、メタバースシステムに参加するための電子機器(外部機器)として、ゴーグル状の映像機器19と、ユーザーが手で掴んで操作する左右一対のコントローラ20とが使用される。
【0037】
映像機器19の後端には、ユーザーの頭に左右両側と上方から巻き付くヘッドバンド21が接続されている。映像機器19にはモニターが内蔵されており、モニターに仮想空間が映し出されて、ユーザーは仮想化された分身がメンバーとして仮想空間に入り込むことができる。
【0038】
コントローラ20は、手首に掛けるリング状のバンド23を備えており、本体部にはボタン24を設けている。また、メタバースシステムでは、ヘッドホン25も使用できる。
実施形態では、ヘッドホン25にフレーム材26を介してマイク27が取付けられている。これら映像機器19、コントローラ20、ヘッドホン23の三者は、請求項に記載した電子機器(外部機器)を構成している。
【0039】
映像機器19には電源・通信兼用の第1ケーブル28が接続されて、コントローラ20には通信用の第2ケーブル29が接続されて、ヘッドホン23には通信線としての第3ケーブル30が接続されている。そして、背もたれ3を構成する左右サイド枠部3aの上端のうち片方又は両方と、左右のブラケット7のうち片方又は両方の側面と、左右の肘掛け12における昇降体15の外側面とに、給電用及び通信用の第1~第3付属器具31,32,33を設けている。なおブラケット7は座1の一部として観念できるので、第2付属器具32は、ブラケット7を介して座1に取付けられていると云える。
【0040】
付属器具31~33は、それぞれ、100V用の交流コンセント口34と、丸穴状の通信ジャック35と、角形のUSBポート36とを設けている。これらは、それぞれ接続端子を設けている。交流コンセント口34には、プラグやACアダプタを接続できる。他方、通信ジャック35にはピンタイプのソケットを差し込むことができる。USBポート36には、角形のUSB端子を差し込むことができる。
【0041】
図2に示すように、背もたれ3を構成する左右の座左右のサイド枠部3aには、上下に離れた第1及び第2のフック37,38を設けて、左右の肘掛け12における昇降体15の外側面には第3フック38を設けている。第1フック37と第2フック38とにはヘッドホン23と映像機器19とを係止することが可能であり、左右の第3フック39にはそれぞれ第3ケーブル30を係止できる。
【0042】
以上の構成において、映像機器19やコントローラ20、ヘッドホン25に接続されたケーブル28~30は、最も近くに位置した付属器具31,32,33に接続できる。従って、ケーブル28~30が床に散乱することを防止して、作業環境の悪化を防止できる。
【0043】
また、ケーブル28~30の過剰な垂れ下がりも防止できるし、通信の有線化によるデータの高速大容量化が可能になるため、動画の精彩化・精密化も実現できる。従って、仮想空間を使用した仮想WEB会議であってもスムースに遂行できるし、セキュリティ性にも優れている。
【0044】
実施形態のように、付属器具31,32,33を吊り懸けできるフック37~39を設けると、付属器具31,32,33を使用しないときに便利である。オフィスにおいて、主としてパソコンを使用して行う通常の執務と、参加者をカメラで撮影して各人のモニターに表示する双方対話式WEB会議と、参加者が仮想メンバーとして仮想空間を自由に往来できるメタバース会議とのいずれも容易に選択できる。従って、オフィス用椅子として好適である。
【0045】
付属器具31,32,33は背もたれ3等の身体支持要素に固定的に設けているが、身体支持要素に対して着脱可能に構成することも可能である。また、付属器具31,32,33は、背もたれ3等の表面から突出した状態に取り付けることも可能であるし、背もたれ3等の内部に入り込んだ状態(はみ出ない状態)に配置することも可能である。
【0046】
本実施形態のようにバイブレータ付きの腰当て12を設けた場合、バイブレータへの給電はいずれかの付属器具31,32,33から行ったらよい。腰当て30にモータで駆動される指圧体を内蔵させることが可能であるが、この場合のモータへの給電も同様である。
【0047】
(3).他の実施形態
次に、図3以下に示す他の実施形態を説明する。図3に示す第2実施形態では、脚支柱4の上端にベース1aを固定し、ベース1aを含む支持機構部に座1と背もたれ3とが取付けられている。背もたれ3は後傾動自在であり、座1は背もたれ3の後傾動に連動して後退しつつ後傾する。第2実施形態でもヘッドレスト10を備えているが、この実施形態では背もたれ3はオーソドックスな形態になっており、オフィス用回転椅子としてのイメージが強いデザインになっている。
【0048】
そして、この第2実施形態では、背もたれ3の左右両側面又は一方の側面に付属器具41を設け、背もたれ3の背面に、2つのフック42と1つのバッテリ格納部43とを設けている。第1実施形態と同様に映像機器19とヘッドホン25とを使用する場合は、映像機器19とヘッドホン25とは不使用時にフック42に吊り懸けできる。
【0049】
バッテリ格納部43は、バッテリ44を横から挿脱できるように左右方向の片側又は両側に開口した状態に形成されている。この実施形態では、電源線は不要であるため、キャスタ6を備えた移動自在な椅子であっても扱いやすい。
【0050】
この第2実施形態では、肘掛け12は高さ調節できない固定式になっており、背フレーム3aの外側面に固定されている。そして、肘支柱45の外側面に、第1実施形態で表示したコントローラ20を収納できる上向き開口のポケット部46が配置されている。給電及び通信用の付属器具41は、背もたれ3の側面部に設けることに代えて又はこれに加えて、(B)に一点鎖線で示すようにヘッドレスト10の後面に設けたり、背もたれ3の後面に設けたりすることも可能である。
【0051】
図4に示す第3実施形態は、左右のサイドパネル47,48及びバックパネル49で左右及び後ろから囲われたタイプの椅子に適用している。換言すると、椅子とパネル装置とを有するブース状家具に適用している。この実施形態では、背もたれ3の上端に、ヘッドレスト10がフレーム材50を介して取付けられている。
【0052】
サイドパネル47,48とバックパネル49とは一体に連続しており、全体として請求項に記載したパネル装置を構成している。右サイドパネル48は、着座者が肘を載せ得る程度の左右幅になっており、この右サイドパネル48の上面とヘッドレスト10の後面とに付属器具51を設けている。
【0053】
右側のサイドパネル47には、座面の上方の空間に向けて開口した物品収納部53が形成されており、映像機器19等の電子機器を物品収納部53に格納できる。ヘッドホン25や映像機器19は、バックパネル49や左のサイドパネル48に跨がった状態で掛けることも可能である。付属器具51は、第1実施形態の第1付属器具31と同じ構造になっている。
【0054】
第3実施形態において、右サイドパネル47にはフロントパネル54が接続又は当接されており、フロントパネル54には前幕板55が一体に設けられている。フロントパネル54の内側部に、リンク56を介してテーブル板57が前後回動自在に取付けられている。
【0055】
この実施形態では、テーブル板57(及びノートパソコン等)を使用した通常執務と、ゴーグル状等の映像機器19を使用した仮想会議とのいずれも行えるが、椅子はソファタイプになっていて安楽性が高いため、長時間の仮想会議であっても負担を抑制した状態で遂行できる。また、第1実施形態や第2実施形態に比べてユーザーのクローズド性が高くなるため、仮想空間に気兼ねなく入り込める利点もある。
【0056】
図5,6に第4実施形態も、椅子は第3実施形態と同様にサイドパネル47,48及びパックパネル49で左右及び後ろから囲われており、右サイドパネル47の前端にはフロントパネル54が連結又は重ね配置されている。この実施形態では、右サイドパネル48は薄い状態のままであり、左右サイドパネル47,48の内側面とバックパネル48の上部内面とに、付属器具51を設けている。
【0057】
第4実施形態では、バックパネル49の上端は着座者の頭と同じ程度の高さになっている。他方、サイドパネル37,38とフロントパネル54の高さは背もたれ3の上端よりも少し低くなっており、サイドパネル37,38とフロントパネル54に、バックパネル49の上端程度の高さの目隠しパネル56を装着できるようになっている。
【0058】
例えば、ノートパソコンを使用した通常の執務では目隠しパネル56は取り外して、ゴーグル状等の映像機器19を装着した仮想空間式会議では、目隠しパネル56を取付けてクローズド性を高める、といった切り換えを実行できる。
【0059】
この第4実施形態でも、付属器具はヘッドレスト10の後面に配置できる。この場合は、プラグは付属器具に対して上から挿脱する方式が好ましい。すなわち、付属器具の端子は上向きに露出させておくのが好ましい。
【0060】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、棒足方式の脚装置を備えた椅子や、脚をパイプで構成したパイプ椅子にも具体化できる。メタバースシステムに使用する映像機器やコントローラも様々に具体化できる。コントローラは、ゲーム用の場合、両手持ち方式で2本のレバーを備えたタイプであってもよい。映像機器については、視界が遮断されているゴーグル方式には限らず、フェイスシールドのようなオープン式スクリーン(或いは有機EL方式等の薄型モニター)を備えた形態であってもよい。
【0061】
メタバースシステムでは、コントローラを使用せずに、キーボードやマウスを使用することも可能である。すなわち、顔を上げるとバーチャル空間が現れてバーチャル分身に空間を共有させる一方、頭を下げると手元がリアルに見えてキーボードやマウスを使用できる態様も採用可能である。パソコンのモニターをバーチャル空間に表示することも可能である。
【0062】
コントローラ等の電子機器を不使用時に格納する保持部は、脚支柱の上端に設けたベースやこれで支持されたアウターシェル等の支持機構部に設けてもよい。更に、椅子が背フレームを備えている場合、バッテリ保持部や電子機器保持部を背フレームに配置してもよい。椅子がオプション品としてハンガーを備えている場合、ハンガーに付属器具を設けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本願発明は椅子に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 座
2 脚装置
3 背もたれ
4 脚支柱(ガスシリンダ)
6 キャスタ
7 ブラケット
10 ヘッドレスト
11 首当て
13 肘掛け
19 電子機器(外部機器)の一例としての映像機器
20 電子機器(外部機器)の一例としてのコントローラ
25 ヘッドホン
28~30 ケーブル
31~33,41,51 給電用・通信用の付属器具
37,38 電子機器保持部を構成するフック
47,48 サイドパネル
49 バックパネル

図1
図2
図3
図4
図5
図6