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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031075
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】建材、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27N 3/02 20060101AFI20240229BHJP
   E04F 15/02 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B27N3/02 B
E04F15/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134390
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大竹 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】枷場 康平
(72)【発明者】
【氏名】戸川 厚
【テーマコード(参考)】
2B260
2E220
【Fターム(参考)】
2B260BA05
2B260BA15
2B260BA18
2B260CD02
2B260DA18
2B260EA12
2B260EA13
2B260EB15
2E220AA33
2E220AB04
2E220BA01
2E220BA26
2E220BB03
2E220BB13
2E220BB16
2E220BC03
2E220EA02
2E220FA02
2E220FA03
2E220GA26X
2E220GA30X
2E220GB32X
2E220GB33X
(57)【要約】
【課題】一層自然な印象の木目柄を有する建材、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】建材10の表層材14は、多数の凸条20がX方向に延在するように形成された木目柄面を備える。凸条20は、両側面の傾斜角度が、Y方向を基準として閾値角度以上である急傾斜凸条20aと、閾値角度より小さい緩傾斜凸条20bとを含み、急傾斜凸条20aはY方向に沿って複数本が連続して設けられる急傾斜凸条群24aを形成し、緩傾斜凸条20bはY方向に沿って複数本が連続して設けられる緩傾斜凸条群24bを形成している。急傾斜凸条群24aおよび緩傾斜凸条群24bは、それぞれ凸条20の数が5~10本の範囲で連続して設けられ、群によって凸条20の本数に変化がある。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸または凹の多数の条部が第1方向に延在するように形成された木目柄面を備える建材であって、
前記条部には、両側面の傾斜角度が、前記第1方向に直交する第2方向を基準として閾値角度以上である急傾斜条部と、前記閾値角度より小さい緩傾斜条部とが含まれており、
前記急傾斜条部は前記第2方向に沿って複数本が連続して設けられる急傾斜条部群を形成し、
前記緩傾斜条部は前記第2方向に沿って複数本が連続して設けられる緩傾斜条部群を形成している
ことを特徴とする建材。
【請求項2】
前記急傾斜条部群および前記緩傾斜条部群は、それぞれ前記条部が5~10本の範囲で連続して設けられ、
群によって前記条部の本数に変化がある
ことを特徴とする請求項1に記載の建材。
【請求項3】
前記閾値角度は、67~77度の範囲で設定されており、
前記急傾斜条部の傾斜角度は85度以下、
前記緩傾斜条部の傾斜角度は60度以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の建材。
【請求項4】
前記条部は凸条であり、隣接する前記凸条の間には相対的に凹条が形成されており、
前記凹条は、前記第1方向に沿って狭幅になって途切れる中断部を形成している
ことを特徴とする請求項1に記載の建材。
【請求項5】
前記条部は凸条であり、隣接する前記凸条の間には相対的に凹条が形成されており、
前記凹条は、前記第1方向に沿って延在しながら斜めにずれる段差部を形成している
ことを特徴とする請求項1に記載の建材。
【請求項6】
多数の前記条部により形成される凹凸形状における凸の部分の頂部は、幅寸法に変化がある
ことを特徴とする請求項1に記載の建材。
【請求項7】
多数の前記条部により形成される凹凸形状における凹の部分の底部は、幅寸法に変化がある
ことを特徴とする請求項1に記載の建材。
【請求項8】
少なくとも前記木目柄面が樹脂材と木粉とを含む材質である
ことを特徴とする請求項1に記載の建材。
【請求項9】
前記条部は、素材を押出形成した後に表面に凹凸のあるローラーによって転写することで形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の建材。
【請求項10】
多数の前記条部により形成される凹凸形状における凸の部分の頂部は、他の部分よりも表面が粗である
ことを特徴とする請求項1に記載の建材。
【請求項11】
反対側を臨む2面に前記木目柄面が色違いで形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の建材。
【請求項12】
前記第2方向に関しての両側面のうち少なくとも一方に、色違いの2つの前記木目柄面を区別するための目印が設けられている
ことを特徴とする請求項11に記載の建材。
【請求項13】
凸または凹の多数の条部が第1方向に延在するように形成された木目柄面を備える建材の製造方法であって、
素材を押出機から押し出す押出工程と、
押し出された前記素材に対して表面に凹凸のあるローラーによって転写することで前記条部を形成する転写工程と、
を有し、
前記条部には、両側面の傾斜角度が、前記第1方向に直交する第2方向を基準として閾値角度以上である急傾斜条部と、前記閾値角度より小さい緩傾斜条部とが含まれており、
前記急傾斜条部は前記第2方向に沿って複数本が連続して設けられる急傾斜条部群を形成し、
前記緩傾斜条部は前記第2方向に沿って複数本が連続して設けられる緩傾斜条部群を形成するように転写される
ことを特徴とする建材の製造方法。
【請求項14】
前記条部が転写された素材に対して、前記第1方向に沿ってサンディングを行うことで多数の前記条部により形成される凹凸形状における凸の部分の頂部が、他の部分よりも表面が粗となるように加工する表面粗化工程を有する
ことを特徴とする建材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木目柄面を備える建材、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建材には様々な材質が用いられるが、意匠上の観点からは木材が好まれる傾向がある。しかしながら木材はデッキなどのエクステリアに用いると雨などの影響による腐食の懸念がある。そのため表面に木目柄を有する樹脂建材が開発されている。実際の木材の質感を表現するためには、単に表面に木目柄模様をプリントするだけでなく、微細な凹凸条のある木肌を実現することが望ましい(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5524818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実際の木材の質感を表現するためには凹凸条を不均一に形成することが望ましい。特許文献1に記載の建材では、凸条の左右の形状を非対称的とし、それぞれの傾斜角度について複数の角度値を設定している。しかしながら、このようにそれぞれの凸条の形態を不均一としても、遠目では多数の凸条はほぼ均一に見えてしまい人工的な印象になってしまう。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、一層自然な印象の木目柄を有する建材、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる建材は、凸または凹の多数の条部が第1方向に延在するように形成された木目柄面を備える建材であって、前記条部には、両側面の傾斜角度が、前記第1方向に直交する第2方向を基準として閾値角度以上である急傾斜条部と、前記閾値角度より小さい緩傾斜条部とが含まれており、前記急傾斜条部は前記第2方向に沿って複数本が連続して設けられる急傾斜条部群を形成し、前記緩傾斜条部は前記第2方向に沿って複数本が連続して設けられる緩傾斜条部群を形成していることを特徴とする。
【0007】
また、本発明にかかる建材の製造方法は、凸または凹の多数の条部が第1方向に延在するように形成された木目柄面を備える建材の製造方法であって、素材を押出機から押し出す押出工程と、押し出された前記素材に対して表面に凹凸のあるローラーによって転写することで前記条部を形成する転写工程と、を有し、前記条部には、両側面の傾斜角度が、前記第1方向に直交する第2方向を基準として閾値角度以上である急傾斜条部と、前記閾値角度より小さい緩傾斜条部とが含まれており、前記急傾斜条部は前記第2方向に沿って複数本が連続して設けられる急傾斜条部群を形成し、前記緩傾斜条部は前記第2方向に沿って複数本が連続して設けられる緩傾斜条部群を形成するように転写されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、急傾斜条部は第2方向に沿って複数本が連続して設けられる急傾斜条部群を形成し、緩傾斜条部は第2方向に沿って複数本が連続して設けられる緩傾斜条部群を形成している。したがって、第2方向についてあるまとまった幅で組織が密である印象の部分と組織が粗である印象の部分とが交互に存在しており、光の当たり方によって僅かな強弱感や縞状感があり、遠目で均一な印象にならず天然木のように一層自然で美しい木目柄が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態にかかる建材を示す側面斜視図である。
図2】建材の模式側面図である。
図3】表層材の一部を示す模式断面側面図である。
図4】変形例にかかる表層材の一部を示す模式断面側面図である。
図5】急傾斜凸条の模式断面図である。
図6】緩傾斜凸条の模式断面図である。
図7】急傾斜凹条の模式断面図である。
図8】緩傾斜凹条の模式断面図である。
図9】表層材の一部拡大模式斜視図である。
図10】具体例にかかる表層材の一部拡大斜視図である。
図11】建材の製造方法における押出工程、転写工程および切断工程を示す模式図である。
図12】建材の製造方法における表面粗化工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる建材およびその製造方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
図1は、本発明の実施形態にかかる建材10を示す側面斜視図である。図2は、建材10の模式側面図である。建材10はコア材12がベースとなっている。コア材12は、X方向(第1方向)に長く、Y方向(第2方向)には比較的短く、Z方向に適度な厚みを有するブロック形状となっている。条件によってはX方向よりY方向を長くしてもよい。X方向、Y方向、Z方向は互いに直交する。コア材12には複数の隔壁12aで区画されてX方向に延在する複数の空洞部12bが形成されている。
【0012】
建材10は複数をX方向、Y方向に配列してデッキ、テラス、ベランダなどのエクステリア材として用いられるものであるが、インテリア材として用いることも可能である。また、適用箇所によっては建材10の構成要素のうち後述する表層材14だけを用いてもよい。
【0013】
コア材12におけるX-Z面(Y方向に関しての両側面)には、2つの端面12c,12dがあり、これらの端面12cと端面12dとの間には溝12eが形成されている。端面12cは端面12dよりやや突出している。端面12cには小さい溝12caが形成されている。
【0014】
コア材12におけるX-Y面で形成される表面と裏面(互いに反対側を臨む2面)には木目柄の表層材14,14が設けられている。建材10は押出材から構成されており、後述するようにコア材12と表裏の表層材14とは製造時の押出工程で同時に棒状に押出されて一体的に成型される。表裏の表層材14は木目柄となっている。表裏の表層材14の木目柄は同じ模様であるが、色違いで形成されておりいわゆるリバーシブル式である。建材10は、少なくとも表層材14が主原料としての樹脂材(例えば、ポリプロピレン)に木粉が混合された材質であり木材の質感が得られる。表層材14にはさらに他の副原料が含まれていてもよい。コア材12は、設計条件および製造条件などにより樹脂材で形成し、または表層材14と同じ材質で形成してもよい。
【0015】
2つのX-Z面のうち一方における端面12dにはX方向に延在する筋12fが形成されている。筋12fは溝12e,12caより十分小さく、例えば断面V字の切欠状となっている。筋12fは建材10の表裏を示す目印であり、ここでは裏面寄りの端面12dに形成されている。表裏の表層材14は色違いであるため、筋12fにより、色違いの2つの木目柄面を区別することができる。
【0016】
このような目印は2つのX-Z面のうち他方における裏面寄りの端面12cに形成してもよい。X-Z面はY-Z平面と比較して空洞部12bがなく、しかもX方向に適度に長いため目印としての筋12fを設けるのに好適である。端面12dは端面12cよりも突出量が小さいため筋12fは目立たないが、施工前の段階では作業者が容易に確認可能である。X-Z面は、複数の建材10がY方向に配列されることにより隠れてしまい筋12fは視認されなくなる。建材10の施工において作業指示書で色の区別をすることは難しい場合もあるが、筋12fに基づいて利用面を指示することができ色に関する施工ミスが発生しにくい。筋12fは後述する押出工程で形成されるが他の工程で設けてもよい。
【0017】
次に、表層材14の表面模様について説明する。表層材14は建材10の表裏で巨視的に平面を形成しているが、微視的には立体的な木目柄の模様が形成されている。このような立体的な木目柄は、後述するローラー46(図11参照)によって転写することで形成されている。
【0018】
図3は、表層材14の一部を示す模式断面側面図である。図3に示すように、表層材14の表面には多数の凸条(条部)20が形成されている。凸条20はX方向に延在するように形成されて木目柄をなしている(図1参照)。つまり、X方向は木目方向に相当する。凸条20はY方向に並んでおり、隣接する凸条20の間には相対的に凹条(条部)22が形成されている。また、換言すれば凸条20は多数の条部により形成される凹凸形状における凸の部分であり、凹条22は凹凸形状における凹の部分である。凹条22は概念的に木材の導管を模しており、凸条20はその他の組織部を模している。
【0019】
凸条20には、基本的に角度傾斜が急な急傾斜凸条(急傾斜条部)20aと、角度傾斜が緩やかな緩傾斜凸条(緩傾斜条部)20bとを含む。また、換言すれば凹条22は角度傾斜が急な急傾斜凹条(急傾斜条部)22aと、角度傾斜が緩やかな緩傾斜凹条(緩傾斜条部)22bとを含む。後述するが、急傾斜凸条20aおよび急傾斜凹条22aの両側面は閾値角度θ以上に設定され、緩傾斜凸条20bおよび緩傾斜凹条22bの両側面は閾値角度θより小さく設定されている。凹条22に関して、次に説明する急傾斜凸条群24aと緩傾斜凸条群24bとの境界にある境界凹条22cでは、角度傾斜が一方の面が急で他方の面が緩となっている。
【0020】
急傾斜凸条20aはY方向に沿って複数本が連続して設けられる急傾斜凸条群(急傾斜条部群)24aを形成し、緩傾斜凸条20bはY方向に沿って複数本が連続して設けられる緩傾斜凸条群(緩傾斜条部群)24bを形成している。図3の左端では緩傾斜凸条群24bのうち右端の1つの緩傾斜凸条20bが示されており、さらに右に向かって8つの急傾斜凸条20aからなる急傾斜凸条群24aがあり、6つの緩傾斜凸条20bからなる緩傾斜凸条群24bがあり、5つの急傾斜凸条20aからなる急傾斜凸条群24aがある。そして、図3の右端では緩傾斜凸条群24bのうち左端の2つの緩傾斜凸条20bが示されている。図3では、緩傾斜凸条群24bの全体が示されているのは1群だけであるが、他の緩傾斜凸条群24bでは、凸条20の数が6でないものがある。このように、急傾斜凸条群24aおよび緩傾斜凸条群24bでは、群によって凸条20の本数に変化がある。なお本願における「変化」とは、経時的に状態が変わることではなく、場所により本数や寸法などに異同があることを言うものとし、対象要素の全てが異なる場合と、一部に同じものが含まれている場合とがあり得る。
【0021】
急傾斜凸条群24aは構成要素の急傾斜凸条20aの傾斜角度が急であるため、比較的深い陰影が得られてイメージ的に組織が密である印象となる。緩傾斜凸条群24bは構成要素の緩傾斜凸条20bの傾斜角度が緩いため、比較的淡い陰影が得られてイメージ的に組織が粗である印象となる。そして、急傾斜凸条群24aおよび緩傾斜凸条群24bはそれぞれ複数本の凸条20が連続して設けられていることから、Y方向についてあるまとまった幅で組織が密である印象の部分と組織が粗である印象の部分とが交互に存在している。
【0022】
また、急傾斜凸条群24aおよび緩傾斜凸条群24bは、Y方向についてまとまった幅として認識され、且つ、過度に幅広とならないためには、それぞれ凸条20が5~10本の範囲で連続して設けられているとよい。さらに、急傾斜凸条群24aおよび緩傾斜凸条群24bでは、群によって凸条20の本数に変化があるように設定すると人工的でない不均一な印象が得られる。さらに、急傾斜凸条群24aおよび緩傾斜凸条群24bにおける連続する凸条20の数を群により不規則に変化をつけて設定すると、実際の木肌に近い一層自然な印象が得られる。もちろん、凸条20の本数が同数の群があってもよい。
【0023】
凸条20における両側面の間の頂面(頂部)26は、Y方向の幅寸法に変化がある。凹条22における両側面の間の底面(底部)28は、Y方向の幅寸法に変化がある。これにより、不均一かつ複雑となり、一層自然な印象が得られる。もちろん、頂面26、底面28には同じ幅寸法のものがあってもよい。なお、頂面26および底面28にはY方向の幅寸法が実質的にほぼ0であってほとんど「面」を形成していないものが含まれていてもよい。頂面26は基本的に全て同じ高さとなっている。
【0024】
図4は、変形例にかかる表層材14Aの一部を示す模式断面側面図である。表層材14Aは図3の表層材14と同様の急傾斜凸条20a、緩傾斜凸条20b、急傾斜凹条22aおよび緩傾斜凹条22bを有している。急傾斜凹条22aはY方向に沿って複数本が連続して設けられる急傾斜凹条群(急傾斜条部群)30aを形成し、緩傾斜凹条22bはY方向に沿って複数本が連続して設けられる緩傾斜凹条群(緩傾斜条部群)30bを形成している。凸条20に関して、急傾斜凹条群30aと緩傾斜凹条群30bとの境界にある境界凸条20cでは、角度傾斜が一方の面が急で他方の面が緩となっている。急傾斜凹条群30aおよび緩傾斜凹条群30bは、上記の急傾斜凸条群24aおよび緩傾斜凸条群24bと同様に5~10本であると好ましい。頂面26および底面28の幅寸法は上記と同様に変化をつけると好ましい。このような、表層材14Aは上記の表層材14と同様に自然な印象の木目柄を形成する。
【0025】
図5は、急傾斜凸条20aの模式断面図である。急傾斜凸条20aの一方の側面20aaおよび他方の側面20abの傾斜角度は、それぞれ閾値角度θ以上で、かつ上限角度θ以下に設定されている。
【0026】
図6は、緩傾斜凸条20bの模式断面図である。緩傾斜凸条20bの一方の側面20baおよび他方の側面20bbの傾斜角度は、それぞれ閾値角度θより小さく、かつ下限角度θ以上に設定されている。
【0027】
図7は、急傾斜凹条22aの模式断面図である。急傾斜凹条22aの一方の側面22aaおよび他方の側面22abの傾斜角度は、それぞれ閾値角度θ以上で、かつ上限角度θ以下に設定されている。
【0028】
図8は、緩傾斜凹条22bの模式断面図である。緩傾斜凹条22bの一方の側面22baおよび他方の側面22bbの傾斜角度は、それぞれ閾値角度θより小さく、かつ下限角度θ以上に設定されている。
【0029】
閾値角度θ、上限角度θ、および下限角度θは、それぞれY方向を基準としている。凸条20および凹条22の両側面の傾斜角度は同じでも良いし異なっていてもよいが、適度に変化をつけるとよい。
【0030】
上限角度θは、表層材14を成型する際抜き勾配を考慮すると85度程度が上限となる。下限角度θは、過度に小さく設定すると緩傾斜凸条20bおよび緩傾斜凹条22bの幅が広くなりすぎて木肌柄としては不自然になるため60度程度が下限となる。特に、凹条22については、傾斜角度を60度以下にすると導管のイメージにそぐわなくなる。
【0031】
閾値角度θは、概ね上限角度θと下限角度θとの中間値(たとえば72度程度)に設定すればよいが、厳密に中間値にする必要はなく諸条件により67~77度の範囲で設定するとよい。
【0032】
図9は、表層材14の一部拡大模式斜視図である。図9に示すように、凸条20の頂面26は、他の部分(つまり凸条20の両側面や凹条22の底面28)よりも表面が適度に粗となっており、人工的な光沢がなく光が適度に乱反射して実際の木肌に近い質感および手触り感が得られる。具体例としては、頂面26はX方向に沿う多数の微細な筋目を有する面となっていてもよい。このような筋目の面は、後述する表面粗化工程でサンディングすることにより得られ、木目に沿った組織による表面粗さを有する実際の木肌に一層近い質感が得られる。
【0033】
なお、表層材14における凹凸形状の傾斜面は基本的に60度以上の切立った傾斜となっているため光が人の視点方向に反射しにくく、粗面加工されていなくても表層材14の質感を損なうことがない。また、底面28は両脇が切立った傾斜面であることから陰になりやすく、粗面加工されていなくても表層材14の質感を損なうことがない。
【0034】
図10は、具体例にかかる表層材14の一部拡大斜視図である。図10では、識別が容易となるように頂面26の範囲をドット地で示しており、該頂面26における筋目は省略している。
【0035】
図10に示すように、凹条22は、一端または両端でX方向に沿って狭幅になって途切れる中断部32を形成している。中断部32は不規則な位置に形成される。上記のとおり凹条22は木材断面における導管を模している。導管は木材断面において長手方向の全長に亘って形成されているのではなく途中で中断される。したがって、凹条22にこのような中断部32を形成することにより、一層木材に近い印象が得られる。
【0036】
X方向で一直線上に並ぶ2つの凹条22における各中断部32の間は、Y方向に隣接している凸条20同士がつながって合流部34を形成している。本実施例では、全ての凹条22は一端または両端に中断部32を形成していることから、結局、全ての凸条20は合流部34を介してつながっている。そして、本実施例では凸条20の頂面26と凹条22の底面28とが比較的明確に区別されており、頂面26の方が底面28よりも面積が広くなっている。実際の木材も導管の面積よりそれ以外の組織部の面積の方が大きく、表層材14は一層木材に近い印象が得られる。
【0037】
凹条22には、X方向に沿って延在しながら斜めにずれる段差部36を形成しているものがある。段差部36は不規則な位置に形成される。凹条22には、段差部36のないもの、段差部36が1か所のもの、段差部36が2か所のものがある。段差部36が2か所の場合、凹条22はY方向に関して一方にずれ、その後X方向に延在し、さらにY方向に関して他方にずれて元のY方向位置に戻るようになっている。凹条22はY方向に隣接するもの同士で合流することはない。木材断面における導管は基本的に木目方向に沿っているが、多少曲がっている場合もあり、かつ導管同士が合流することはない。したがって、凹条22にこのような段差部36を形成することにより、一層木材に近い印象が得られる。また、中断部32および段差部36が形成されていることにより、人工的でなく変動のある複雑で自然な印象が得られる。
【0038】
このように構成される建材10では、急傾斜凸条20aはY方向に沿って複数本が連続して設けられる急傾斜凸条群24aを形成し、緩傾斜凸条20bはY方向に沿って複数本が連続して設けられる緩傾斜凸条群24bを形成している。したがって、Y方向についてあるまとまった幅で組織が密である印象の部分と組織が粗である印象の部分とが交互に存在しており、光の当たり方によって僅かな強弱感や濃淡の縞状感があり、遠目で均一な印象にならず天然木のように一層自然で美しい木目柄が得られる。
【0039】
ところで、木材はアカシアやマホガニーなどの硬木と、スギやヒノキなどの軟木とに分類される。軟木は主に針葉樹であり、年輪が明瞭で、柔らかく加工性が高いが傷が付きやすく腐りやすいなどの欠点もある。針葉樹は組織が単純で全組織のほとんどが細径の仮導管で構成されている。一方、硬木は主に広葉樹であり、年輪は針葉樹と比べて不明瞭であり、複雑な組織構造を持っており硬い。広葉樹では木の強さは木繊維、水の通路は導管がそれぞれ分担している。広葉樹は、導管が仮導管に比べて直径が太くて荒々しく、粗の肌目が多いことが特徴である。硬木は硬く丈夫であることからデッキ材などに用いられる。一般的に軟木は廉価材とされており、硬木は高級材とされている。
【0040】
本実施形態にかかる建材10では、凹条22の側面の傾斜角度は60度の下限角度θ以上となっていることから深く明確なイメージがあり硬木の導管に近い形状になっている。また、建材10では基本的に年輪を模している部分はなく、頂面26が粗面となっていることから一層硬木に近い印象があり、高級感が得られるとともに、意匠上の観点から特にデッキ材として好適に用いることができる。
【0041】
本実施形態における表層材14では、複数本の急傾斜条部20aが連続して設けられる急傾斜凸条群24aと、複数本の緩傾斜条部20bが連続して設けられる緩傾斜条部群24bとによって自然な印象の木目柄が得られ、上記のとおり遠目で濃淡のある縞状感があって自然な木目柄が得られるが、この効果が得られる範囲でさらに多少の変形を加えてもよい。
【0042】
次に、本実施形態にかかる製造方法について説明する。この製造方法は建材10を製造する方法である。
図11は、建材10の製造方法における押出工程、転写工程および切断工程を示す模式図である。図12は、建材10の製造方法における表面粗化工程を示す模式図である。図11に示す工程と図12に示す工程は別の製造ラインとしているが、同じ製造ラインとしてもよい。
【0043】
建材10の製造方法ではまず着色工程を行う。着色工程は表層材14の原料であるペレットを製造する段階で顔料を調合してペレットに着色する。着色工程では2つの表層材14となるペレットに対して個別に別の色を着色する。ペレットには樹脂材、木粉および副原料などが含まれているものとする。
【0044】
次いで押出工程において、溶融されたペレットを押出機40によって押出ダイ42から押し出して形材を形成する。図11では簡略化しているが、押出工程ではコア材12(図2参照)と両面の表層材14とを同時に棒状に押出した押出材(素材)44を形成する。実際には2台の押出機40を押出ダイ42に連結し、各種材料を押出ダイ42へ押出し、押出ダイ42の内部で貼り合せる。
【0045】
転写工程では、押出工程から押し出される押出材44の表裏を表面に凹凸のある一対のローラー46で適度に押圧・挟持しながら回転させて転写することで凸条20および凹条22を形成する。ローラー46により転写された凸条20および凹条22は急傾斜のものと緩傾斜のものとがあり、それぞれ複数本が連続して群を形成することは上記のとおりである。ローラー46の回転は押出材44に対して従動的としてもよいし、押出速度に合わせて能動的としてもよい。ローラー46による転写では凸条20および凹条22を緻密にかつ美しく形成することができる。転写工程を終えた押出材44は水槽48で冷却され、さらに引取機50によって引き取られる。
【0046】
この後、切断工程で押出材44は切断機52によって所定長さに切断され、完成前の中間材54として所定の搬送手段により搬送される。なお、図11では、押出機40による押出材44の押し出しに沿う方向、つまり左右方向が建材10およびその前段階の中間材54におけるX方向に相当する。したがって、切断機52では中間材54を製品のX方向寸法に合うように切断する。
【0047】
次いで表面粗化工程において、表裏の表層材14に凸条20、凹条22が転写された押出材44に対して、一対のサンダー56によりそれぞれサンディング加工を行う。本実施形態におけるサンダー56は砥面を有する環状ベルトが連続回転する形式となっている。環状ベルトは2本の軸によって直線部と半円部とを有する長円状に張られており、一方の軸に近い半円部がワークである押出材44に当接して加工する。サンディング加工は頂面26に対して行われ、該頂面26は他の部分よりも粗面となる。表面粗化工程では、押出材44は所定の搬送手段により図12の右方向に沿って搬送されるのに対し、サンダー56では左方向に向かって砥面を回転させながらサンディングを行うため大きな速度差が得られて効率的に加工が行われる。なお、一般的な木材加工では表面を滑らかにするためにサンディングを行うが、本実施形態におけるサンディングは頂面26を粗くするために行われ、サンダー56は適度に目の荒いものが用いられる。表面粗化工程は目の粗さの異なる複数のサンダー56によって複数工程に分けて行ってもよい。サンダー56には吸塵機などを併設してもよい。
【0048】
また、図12の左右方向は建材10およびその前段階の中間材54におけるX方向に相当している。サンダー56ではX方向に沿ったサンディング加工をするため、頂面26に木目方向に沿う多数の微細な筋目を形成することができる。サンダー56では頂面26に対して微細な筋目を形成するが、金属ブラシなどによるスクラッチ加工と比較して毛羽立ちを生じることがなく、高級材のような質感および好適な手触り感が得られる。サンダー56は中間材54に対して相対的にX方向に沿って移動させればよく、例えば中間材54を固定しておき、サンダー56を移動させてもよい。表面粗化加工がなされた押出材44は建材10として完成し搬出される。
【0049】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0050】
本発明にかかる建材は、凸または凹の多数の条部が第1方向に延在するように形成された木目柄面を備える建材であって、前記条部には、両側面の傾斜角度が、前記第1方向に直交する第2方向を基準として閾値角度以上である急傾斜条部と、前記閾値角度より小さい緩傾斜条部とが含まれており、前記急傾斜条部は前記第2方向に沿って複数本が連続して設けられる急傾斜条部群を形成し、前記緩傾斜条部は前記第2方向に沿って複数本が連続して設けられる緩傾斜条部群を形成していることを特徴とする。
【0051】
このように構成される建材では、急傾斜条部は第2方向に沿って複数本が連続して設けられる急傾斜条部群を形成し、緩傾斜条部は第2方向に沿って複数本が連続して設けられる緩傾斜条部群を形成している。したがって、第2方向についてあるまとまった幅で組織が密である印象の部分と組織が粗である印象の部分とが交互に存在しており、光の当たり方によって僅かな強弱感や濃淡の縞状感があり、遠目で均一な印象にならず天然木のように一層自然で美しい木目柄が得られる。
【0052】
本発明にかかる建材は、前記急傾斜条部群および前記緩傾斜条部群は、それぞれ前記条部が5~10本の範囲で連続して設けられ、群によって前記条部の本数に変換があってもよい。条部を5~10本で形成すると第2方向について適度にまとまった幅となる。条部の本数に変化があると不均一な縞状感が得られ人工的でない印象が得られる。
【0053】
本発明にかかる建材は、前記閾値角度は、67~77度の範囲で設定されており、前記急傾斜条部の傾斜角度は85度以下、前記緩傾斜条部の傾斜角度は60度以上であってもよい。閾値角度が67~77度の範囲で設定されると急傾斜条部と緩傾斜条部との分類が適切になる。傾斜角度を85度以下とすることで適切な抜き勾配が得られる。傾斜角度を60度以上とすることで条部の幅が不自然に広がることがない。
【0054】
本発明にかかる建材は、前記条部は凸条であり、隣接する前記凸条の間には相対的に凹条が形成されており、前記凹条は、前記第1方向に沿って狭幅になって途切れる中断部を形成していてもよい。導管は木材断面において長手方向の全長に亘って形成されているのではなく途中で中断される。したがって、凹条にこのような中断部を形成することにより、一層木材に近い印象が得られる。
【0055】
本発明にかかる建材は、前記条部は凸条であり、隣接する前記凸条の間には相対的に凹条が形成されており、前記凹条は、前記第1方向に沿って延在しながら斜めにずれる段差部を形成していてもよい。木材断面における導管は基本的に木目方向に沿っているが、多少曲がっている場合もある。したがって、凹条にこのような段差部を形成することにより、一層木材に近い印象が得られる。
【0056】
本発明にかかる建材は、多数の前記条部により形成される凹凸形状における凸の部分の頂部は、幅寸法に変化があってもよい。本発明にかかる建材は、多数の前記条部により形成される凹凸形状における凹の部分の底部は、幅寸法に変化があってもよい。頂部、底部の幅に変化をもたせると、人工的でない不均一な印象が得られる。
【0057】
本発明にかかる建材は、少なくとも前記木目柄面が樹脂材と木粉とを含む材質であってもよい。これにより一層木材の質感に近くなる。
【0058】
本発明にかかる建材は、前記条部は、素材を押出形成した後に表面に凹凸のあるローラーによって転写することで形成されていてもよい。ローラーの転写により条部を緻密に形成することができる。
【0059】
本発明にかかる建材は、多数の前記条部により形成される凹凸形状における凸の部分の頂部は、他の部分よりも表面が粗であってもよい。これにより人工的な光沢がなく光が適度に乱反射して実際の木肌に近い質感および手触り感が得られる。
【0060】
本発明にかかる建材は、反対側を臨む2面に前記木目柄面が色違いで形成されていてもよい。これにより、建材がリバーシブル式として利用可能になる。
【0061】
本発明にかかる建材は、前記第2方向に関しての両側面のうち少なくとも一方に、色違いの2つの前記木目柄面を区別するための目印が設けられていてもよい。これにより施工ミスを防止できる。
【0062】
また、本発明にかかる建材の製造方法は、凸または凹の多数の条部が第1方向に延在するように形成された木目柄面を備える建材の製造方法であって、素材を押出機から押し出す押出工程と、押し出された前記素材に対して表面に凹凸のあるローラーによって転写することで前記条部を形成する転写工程と、を有し、前記条部には、両側面の傾斜角度が、前記第1方向に直交する第2方向を基準として閾値角度以上である急傾斜条部と、前記閾値角度より小さい緩傾斜条部とが含まれており、前記急傾斜条部は前記第2方向に沿って複数本が連続して設けられる急傾斜条部群を形成し、前記緩傾斜条部は前記第2方向に沿って複数本が連続して設けられる緩傾斜条部群を形成するように転写されることを特徴とする。この製造方法では、上記の一層自然で美しい木目柄の建材が得られる。また、ローラーの転写により条部を緻密に形成することができる。
【0063】
本発明にかかる建材の製造方法は、前記条部が転写された素材に対して、前記第1方向に沿ってサンディングを行うことで多数の前記条部により形成される凹凸形状における凸の部分の頂部が、他の部分よりも表面が粗となるように加工する表面粗化工程を有してもよい。この製造方法では頂部が粗で一層自然で美しい木目柄の建材が得られる。
【符号の説明】
【0064】
10 建材、12 コア材、12f 筋(目印)、14 表層材、20 凸条(条部)、20a 急傾斜凸条(急傾斜条部)、20aa,20ab 側面、20b 緩傾斜凸条(急傾斜条部)、20ba,20bb 側面、22 凹条(条部)、22a 急傾斜凹条(急傾斜条部)、22aa,22ab 側面、22b 緩傾斜凹条(緩傾斜条部)、22ba,22bb 側面、24a 急傾斜凸条群(急傾斜条部群)、24b 緩傾斜凸条群(緩傾斜条部群)、26 頂面(頂部)、28 底面(底部)、30a 急傾斜凹条群(急傾斜条部群)、30b 緩傾斜凹条群(緩傾斜条部群)、32 中断部、34 合流部、36 段差部、44 押出材(素材)、46 ローラー、56 サンダー
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
図11
図12