(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031078
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】生体情報測定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/256 20210101AFI20240229BHJP
A61B 5/282 20210101ALI20240229BHJP
A61B 5/308 20210101ALI20240229BHJP
A61B 5/332 20210101ALI20240229BHJP
A61B 5/276 20210101ALI20240229BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20240229BHJP
A61B 5/022 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
A61B5/256 220
A61B5/282
A61B5/308
A61B5/332
A61B5/276 100
A61B5/33 200
A61B5/022 E
A61B5/022 400N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134394
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 大
(72)【発明者】
【氏名】森 健太郎
【テーマコード(参考)】
4C017
4C127
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA08
4C017AA09
4C017AA19
4C017AB02
4C017AC03
4C017AD01
4C017AD15
4C017BD04
4C017DD14
4C017FF05
4C127AA02
4C127BB03
4C127BB05
4C127CC10
4C127FF01
4C127LL13
(57)【要約】
【課題】心電波形を測定可能な携帯型の生体情報測定装置において、ユーザーが心電波形の測定を所望した場合に即座に測定を開始することを可能とする技術を提供する。
【解決手段】人体の手首に装着して用いられる生体情報測定装置であって、第1電極及び第2電極を備え、前記第1電極と前記第2電極の電位差を検出する第1センサ部と、前記第1センサ部が検出した前記電位差をデジタル信号に変換して出力するアナログ/デジタル変換手段と、前記アナログ/デジタル変換部から出力されたデジタル信号を記憶する記憶手段と、電源部と、を有しており、前記電源部から電力が供給されている場合には、前記第1センサ部は常時前記第1電極と前記第2電極の電位差を検出し、前記アナログ/デジタル変換手段は常時前記第1センサ部が検出した電位差をデジタル信号に変換して出力する生体情報測定装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の手首に装着して用いられる生体情報測定装置であって、
前記装置の装着時において該装着した前記手首に当接する位置に配置される第1電極及び前記装置の装着時において該装着した前記手首に当接しない位置に配置される第2電極を備え、前記第1電極と前記第2電極の電位差を検出する第1センサ部と、
前記第1センサ部が検出した前記電位差をデジタル信号に変換して出力するアナログ/デジタル変換手段と、
前記アナログ/デジタル変換部から出力された前記デジタル信号を記憶する記憶手段と、
電源部と、を有しており、
前記電源部から電力が供給されている場合には、前記第1センサ部は常時前記第1電極と前記第2電極の前記電位差を検出し、前記アナログ/デジタル変換手段は常時前記第1センサ部が検出した前記電位差を前記デジタル信号に変換して出力する、
ことを特徴とする、生体情報測定装置。
【請求項2】
前記デジタル信号が前記人体の心電波形の測定に適した信号であるか否かの当否を判定する第1判定手段をさらに有しており、
前記記憶手段は、前記第1判定手段の判定結果が当である場合にのみ、前記デジタル信号を記憶する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項3】
前記第1電極及び前記第2電極への前記人体の接触状態を検出する電極接触状態検出手段をさらに有しており、
前記第1判定手段は、前記第1電極及び前記第2電極のいずれもが前記人体に安定して接触している状態で前記第1センサ部が検出した前記電位差に係る前記デジタル信号を、前記人体の前記心電波形の測定に適した信号であると判定する、
ことを特徴とする、請求項2に記載の生体情報測定装置。
【請求項4】
腕時計型のウェアラブル装置である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項5】
前記人体の血圧を測定するための血圧測定手段をさらに有している、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の生体情報測定装置。
【請求項6】
前記装置の位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段の出力に基づいて、前記装置を装着した前記人体の前記手首が所定の範囲内の高さに位置しているか否かの当否を判定する第2判定手段と、をさらに有しており、
前記血圧測定手段は、前記第2判定手段の出力結果が当である場合に、前記人体の血圧測定を実行する、
ことを特徴とする、請求項5に記載の生体情報測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルスケア関連の技術分野に属し、特に、人体に装着して用いる生体情報測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血圧値、心電波形などの個人の身体・健康に関する情報(以下、生体情報ともいう)を、個人が自ら日常的に測定機器によって測定し、当該測定結果を健康管理に活用することが一般的に行われるようになってきている。このことから、携帯性を重視した機器の需要が高まっており、様々な携帯型測定装置が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2など)。
【0003】
特許文献1には、電極を備えるベルトを用いて人体の手首に装着する心電波形計測装置に血圧測定を行うための手段を有する携帯型心電計測装置が開示されている。また、特許文献2には、腕時計型の生体情報測定装置において、心電図、脈波などの生体情報が測定可能なことが開示されている。これらのような装置によれば、装置を装着して携帯することにより、ユーザーは例えば胸部の痛みを感じた際などの任意のタイミングで、心臓の電気活動を表す心電波形の情報を得ることができる。
【0004】
ところで、上記のような装置は、心電波形を測定する際には測定開始の操作を行った後に心電測定用の電極に皮膚表面を適切に接触させて測定を開始することになる。このような「測定開始操作」をトリガーとすることで、例えば血圧(脈波)などの他の生体情報と同時に心電波形を測定することを容易に行うことができる。これにより、心電波形と測定タイミングが同期した他の生体情報を得ることができ、複数の生体情報に基づいてユーザーの心機能の分析(異常の検出など)を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-195693号公報
【特許文献2】特開2017-6230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、心疾患を患っていたり心臓の手術後であったりなど、心機能に関して不安を抱えているユーザーにとっては、何かしらの不調を感じたときに、即座にその時の心電図を記録したいという要望がある。しかしながら、上記の装置のように、心電波形の測定のために所定の開始操作を行った後に適切な測定姿勢を取る、といった段階を経るのでは、(より短期的な意味での)即時性に欠け、ユーザーが不調(自覚症状)を感じている間の肝心な心電波形の測定に間に合わないという虞がある。
【0007】
上記のような問題に鑑みて、本発明は、心電波形を測定可能な携帯型の生体情報測定装置において、ユーザーが心電波形の測定を所望した場合に即座に測定を開始することを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
人体の手首に装着して用いられる生体情報測定装置であって、
前記装置の装着時において該装着した前記手首に当接する位置に配置される第1電極及び前記装置の装着時において該装着した前記手首に当接しない位置に配置される第2電極
を備え、前記第1電極と前記第2電極の電位差を検出する第1センサ部と、
前記第1センサ部が検出した前記電位差をデジタル信号に変換して出力するアナログ/デジタル変換手段と、
前記アナログ/デジタル変換部から出力されたデジタル信号を記憶する記憶手段と、
電源部と、を有しており、
前記電源部から電力が供給されている場合には、前記第1センサ部は常時前記第1電極と前記第2電極の電位差を検出し、前記アナログ/デジタル変換手段は常時前記第1センサ部が検出した電位差をデジタル信号に変換して出力する、
ことを特徴とする、生体情報測定装置である。
【0009】
また、「一括して」とは、同時的に並行して行うことを含む。また、上記の血圧測定手段としては、オシロメトリック法により血圧を測定するためのカフ、圧力センサ、ポンプなどを例示することができるが、これに限られない。また、位置検出手段としては、例えば3軸加速度センサを採用することができるが、少なくとも装置の鉛直軸上の位置(即ち、装置の位置する高さ)を検出可能であれば、他の手段を用いてもよい。
【0010】
このような構成によれば、常時第1電極と第2電極の電位差に係る信号が出力(及び保存)されるため、ユーザーは何らの事前操作も必要とせずに、生体情報測定装置を装着したのとは異なる側の手指で第2電極に触れるだけで、即座に心電波形の測定を行うことができる。なお、本明細書において、「心電波形の測定」とは、心電信号の波形データを記録することをいう。
【0011】
また、前記生体情報測定装置は、前記デジタル信号が前記人体の心電波形の測定に適した信号であるか否かの当否を判定する第1判定手段をさらに有しており、前記記憶手段は、前記第1判定手段の判定結果が当である場合にのみ、前記デジタル信号を記憶するのであってもよい。このような構成であれば、心電波形とはいえないノイズの信号を保存せずに、ユーザーが心電波形測定を所望した場合の出力信号のみ保存することができるため、記憶容量を大幅に節約することができる。
【0012】
また、前記生体情報測定装置は、前記第1電極及び前記第2電極への前記人体の接触状態を検出する電極接触状態検出手段をさらに有しており、前記第1判定手段は、前記第1電極及び前記第2電極のいずれもが前記人体に安定して接触している状態で前記第1センサ部が検出した前記電位差に係る前記デジタル信号を、前記人体の心電波形の測定に適した信号であると判定するのであってもよい。このような構成であれば、別段のセンサなどを設けずとも心電波形測定に適した信号か否かの判定を行うことができ、好適である。
【0013】
また、前記生体情報測定装置は腕時計型のウェアラブル装置であってもよい。このような形態の装置は本発明に好適である。
【0014】
また、前記生体情報測定装置は、前記人体の血圧を測定するための血圧測定手段をさらに有していてもよい。このような構成であれば、心電波形と同期して測定した血圧値を取得することができ、これらの生体情報を併せて用いることで効果的な分析を行うことが可能になる。
【0015】
また、前記生体情報測定装置は、前記装置の位置を検出する位置検出手段と、前記位置検出手段の出力に基づいて、前記装置を装着した前記人体の手首が所定の範囲内の高さに位置しているか否かの当否を判定する第2判定手段と、をさらに有しており、前記血圧測定手段は、前記第2判定手段の出力結果が当である場合に、前記人体の血圧測定を実行するものであってもよい。
【0016】
即ち、装置を装着した状態において血圧測定に適した体勢になることを血圧測定開始のトリガーとすることで、(何らの事前の操作なく)即座に血圧測定を開始することができる。また、このような構成によれば、第2電極に触れた状態で血圧測定姿勢を取ることで、容易に心電波形と測定タイミングを同期させた血圧測定を行うことができる。
【0017】
なお、上記構成の各々は技術的な矛盾が生じない限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、心電波形を測定可能な携帯型の生体情報測定装置において、ユーザーが心電波形の測定を所望した場合に即座に測定を開始することを可能とする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1Aは、実施形態1の生体情報測定装置の外観を示す概略図である。
図1Bは、実施形態1の生体情報測定装置を装着した際の状態を示す説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る生体情報測定装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態1の生体情報測定装置による心電信号の計測と心電波形の保存、及び血圧測定の実行と保存に係る処理の関係を示す説明図である。
【
図4】
図4は、実施形態2に係る生体情報測定装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態2の生体情報測定装置による心電信号の計測と心電波形の保存、及び血圧測定の実行と保存に係る処理の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0021】
(装置の全体構成)
図1Aは、本実施形態に係る生体情報測定装置10の外観構成を示す概略図である。
図1Bは、本実施形態に係る生体情報測定装置10を手首Tに装着した際の状態を示す説明図である。
図2は、本実施形態に係る生体情報測定装置10の機能構成を示す機能ブロック図である。
【0022】
図1A、
図1B、
図2に示すように、生体情報測定装置10は概略、本体部11と、ベルト部15を有する腕時計型のウェアラブル装置であり、人体の手首Tに装着した状態で心電波形及び血圧値の測定を行うことができる。
【0023】
本体部11は、表示部133(例えば、液晶ディスプレイなどを採用することができる)、操作ボタン134a、134b、第2電極112として機能するベゼル、加速度センサ131などを含んで構成されている。加速度センサ131は、本発明に係る位置検出手段に相当し、生体情報測定装置10の位置・姿勢を検出する。また、
図2に示すように、本体部11はその機能構成として、制御部100、心電信号計測部110、血圧測定部120、電源部132、表示部133、操作部134、通信部135、記憶部136、を備えている。これらの各機能構成については後述する。
【0024】
また、ベルト部15は、手首Tにある動脈を圧迫するためのカフ121、カフ121を
支持するカーラ152、第1電極111、及び生体情報測定装置10を手首Tに固定するためのベルト151を備えている。ベルト151は、例えば、親側バンドと剣先側バンドとからなり、親側バンドのバックルによって剣先側バンドを固定するタイプの形状を採用することができるが、生体情報測定装置10が手首Tに適切に固定できればどのような構成であっても構わない。例えば、面ファスナーによって固定するような構成を採用することもできる。
【0025】
なお、
図1Bに示すように、第1電極111はカーラ152の内側、即ち生体情報測定装置10を装着した際に、ユーザーの手首Tに当接する位置に配置されている。一方、第2電極112は、本体部11のベゼルとして本体部外側に設けられている。即ち、第2電極112は生体情報測定装置10を装着した際に、装着した側の手首には当接し得ない位置に配置されている。これにより、生体情報測定装置10を装着した際には、第1電極111はユーザーの体表面に常時接触することになる一方、第2電極112は通常はユーザーの体表面には接触しない。ただし、生体情報測定装置10を装着していない側の手で第2電極112に触れるなどすることにより、容易に第1電極111及び第2電極112のいずれにもユーザーの体表面が接触した体勢を取ることができる。
【0026】
(本体部の機能構成)
次に、本体部11の機能構成について説明する。制御部100は、心電信号計測部110、血圧測定部120などを含む生体情報測定装置10全体の制御を司る。また、制御部100は、心電波形記録制御部101、血圧測定姿勢判定部103、血圧測定実行部104、表示・通信制御部105、の各機能部を備えており、後述の記憶部136からプログラムを読み出して実行することによって、生体情報測定装置10の各構成を制御してこれらの所定の目的を果たす機能部を実現する。なお、制御部100は、ハードウェアの観点ではCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを含んで構成される。
【0027】
心電信号計測部110は、第1電極111、第2電極112、心電信号計測回路113、A/D変換回路114を含んで構成され、第1電極111及び第2電極112の電位差に基づいて心電信号を計測する。具体的には、生体情報測定装置10を装着した側の手首Tに接触した第1電極111と、生体情報測定装置10を装着していない側の手指などを接触させた第2電極112の電位差を心電信号計測回路113で計測する(いわゆるI誘導)。そして、心電信号計測回路113から出力されたアナログ信号をA/D変換回路114によってデジタル変換し、デジタル信号を出力することによって、ユーザーの心電信号を計測する。即ち、本実施形態においては第1電極111、第2電極112、心電信号計測回路113が、第1センサ部に相当する。なお、心電信号計測部110は、この他にも図示しないアンプ、フィルタなどを含んでいるが、これらは既知の技術で構成されるため、説明は省略する。
【0028】
本実施形態において、心電信号計測部110は後述する電源部132から電力の供給を受けている限りは、第1電極111と第2電極112の電位差(心電信号)を計測し、A/D変換回路114から当該電位差に係るデジタル信号が常に出力される。
【0029】
血圧測定部120は、カフ121、圧力センサ122、ポンプ123を含んで構成され、いわゆるオシロメトリック法によりユーザーの血圧を測定する。オシロメトリック法による血圧測定については周知の技術であるため詳細な説明は省略する。
【0030】
電源部132は、装置の稼働に必要な電力を供給するバッテリー(図示せず)を含んで構成される。バッテリーは、例えばリチウムイオンバッテリーなどの二次電池であっても良いし、一次電池としても良い。
【0031】
表示部133は、液晶ディスプレイなどの表示装置を含んで構成され、当該表示装置に測定結果や時刻などの情報を含む各種の情報を表示する。また、表示部133に装置の動作などについてのガイド情報を表示するようにしてもよい。表示部133は、その他にLEDインジケータなどを備えていてもよい。
【0032】
また、操作部134は、操作ボタン134a、134bを含んで構成され、これらを介してユーザーの入力操作を受け付ける。なお、操作部134は、後述の通信部135を介して他の電子機器からの入力信号を受信することによっても、ユーザー操作の入力を受け付けることができる。
【0033】
通信部135は、無線通信用のアンテナ(図示せず)を含み、例えばBLE通信により、情報処理端末などの他の電子機器と情報通信を行う。なお、有線通信のための端子を備えていてもよい。
【0034】
記憶部136は、RAM(Random Access Memory)などの主記憶装置(図示せず)を含んで構成され、アプリケーションプログラムガイド情報などの各種の情報を記憶する。また、RAMに加えて、例えばフラッシュメモリなどの長期記憶媒体を備えていてもよい。また、記憶部136は、A/D変換回路114から出力されたデジタル信号(以下、心電デジタル信号ともいう)を記憶する心電信号記憶部137と、測定された血圧値を記憶する血圧値記憶部138をそれぞれ備えている。心電信号記憶部137及び血圧値記憶部138は、一の記憶媒体内の独立した領域として設けられていてもよいし、それぞれ異なる記憶媒体としてもよい。
【0035】
続けて、制御部100が備える各機能部について説明する。心電波形記録制御部101は、A/D変換回路114から出力されたデジタル信号を心電信号記憶部137に保存する処理を行う。なお、本実施形態において心電波形の測定とは、心電信号計測部110が計測した心電信号を波形データとして記録することをいう。即ち、本実施形態においては、心電波形測定手段として心電信号計測部110及び心電信号記憶部137が含まれる。
【0036】
血圧測定姿勢判定部103は、加速度センサ131の出力に基づいて、装置を装着した状態のユーザーの手首が血圧の測定に適した所定の範囲内の高さに位置しているか否か、より具体的には心臓の高さと同程度の高さに位置しているかの当否を判定する。また、当該高さが継続して維持されているか否かについても判定するようにしてもよい。後述のように、血圧測定姿勢判定部103の判定結果が当であることを条件として、血圧測定の処理が実行される。即ち、本実施形態においては、血圧測定姿勢判定部103が第2判定手段に相当する。
【0037】
血圧測定実行部104は、血圧測定姿勢判定部103の判定結果が当であること(即ち、ユーザーが血圧測定に適した体勢になっていること)をトリガーとして、血圧測定部120を制御してユーザーの血圧測定を実行し、測定結果(血圧値など)を血圧値記憶部138に保存する処理を行う。
【0038】
表示・通信制御部105は、表示部133による画像表示(例えば、心電波形や血圧値などの測定結果の表示など)、通信部135による通信(例えば、測定結果の外部機器への送信、外部機器からの信号受信など)に係る処理を実行する。
【0039】
(生体情報測定の処理)
次に、
図3に基づいて、生体情報測定装置10による生体情報の測定(及び保存)について説明する。
図3は、タイミングチャートの態様で、生体情報測定装置10による心電
信号の計測と心電波形の保存、及び血圧測定の実行と保存に係る処理の関係を示す説明図である。
【0040】
上述のように、心電信号計測部110は電源部132から電力の供給を受けている限り、第1電極111と第2電極112の電位差(心電信号)を計測して該電位差に係るデジタル信号を常時出力する。このため、ユーザーが心電波形の測定のための姿勢を取っていない状態(具体的には第2電極112にユーザーの手指が適切に接触していない状態)であっても、常に第1電極111と第2電極112の電位差に係る信号が出力されることになる。
図3の最上段の「心電信号」の欄においても、左右の両端の部分は心電波形といえるような波形ではなく、いわゆるノイズに該当する信号も出力されていることが示されている。
【0041】
そして、本実施形態において、心電波形記録制御部101はA/D変換回路114から出力されたデジタル信号を、そのまま全て心電信号記憶部137に保存する処理を行う。
図3の「心電信号記録」の欄はノイズ部分の波形も含めて全て保存することを示している。
【0042】
上述のように、本実施形態において、血圧測定実行部104は、血圧測定姿勢判定部103がユーザーの手首が血圧測定に適した高さに位置すると判定した場合に、血圧測定の処理を実行し、測定終了後に少なくとも測定血圧値を血圧値記憶部138に保存する。
図3の「血圧測定開始判定」、「血圧測定」、「血圧値記録」の欄は、そのような処理のタイミングをそれぞれ示している。
【0043】
以上のような本実施形態に係る生体情報測定装置10によれば、ユーザーは何らの事前操作も必要とせずに、生体情報測定装置10を装着したのとは異なる側の手指で第2電極112(即ち、腕時計のベゼル部分)に触れるだけで、心電波形の測定を行うことができる。このため、何か自覚症状を感じるなどしてユーザーが心電波形の測定を所望するタイミングにおいて、即座に心電波形の測定を行うことができ、自覚症状のある時の心電波形を測定し損なう可能性を大幅に抑止することができる。また、ユーザーは可能な限り装着した生体情報測定装置10の第2電極112に触れておくことで、その際の心電波形の測定を継続して行うことができるため、多くの測定データ取得することができる。これにより、心電波形における異常を検出できる可能性を高くすることができる。
【0044】
また、本実施形態に係る生体情報測定装置10においては、血圧測定のための構成も備えている。そして、上述のように装置を装着した状態において血圧測定に適した体勢になることを血圧測定開始のトリガーとしているため、(何らの事前の操作なく)第2電極112に触れた状態で血圧測定姿勢を取ることで、容易に心電波形と測定タイミングを同期させた血圧測定を行うことができる。そして、上述のように心電波形を(可能な限り)常時測定しておくことにより、例えば、血圧測定を行い、通常とは異なる血圧値が測定された場合に、当該血圧測定の前後の時間帯における心電波形を参照(分析)することが可能になる。
【0045】
<実施形態2>
次に、
図4及び
図5に基づいて、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態に係る生体情報測定装置20は、ほとんどの構成が実施形態1の生体情報測定装置10と同様である。このため、実施形態1と同一の構成、処理については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0046】
図4は、本実施形態に係る生体情報測定装置20の機能構成を示す機能ブロック図である。
図4に示すように、本実施形態に係る生体情報測定装置20は、制御部200及び心
電信号計測部210の備える機能部が一部、生体情報測定装置10とは異なっている。具体的には、心電信号計測部210が電極接触検知部215を備え、制御部200の心電波形記録制御部201が心電記録判定部202を備える構成となっている。
【0047】
電極接触検知部215は、第1電極111及び第2電極112へのユーザー(の体表面)の接触状態を検出する機能部である。具体的には、心電信号計測回路113の出力に基づいて、ユーザーが第1電極111、第2電極112に接触しているか否かを検出することができる。
【0048】
心電記録判定部202は、A/D変換回路114から出力されるデジタル信号が心電波形の測定に適した信号であるか否かの当否を判定する機能部である。本実施形態においては、電極接触検知部215が検出した第1電極111及び第2電極112へのユーザーの接触状態に基づいて、第1電極111及び第2電極112のいずれもがユーザーに安定して接触していると評価できる場合に取得したデジタル信号を、心電波形の測定に適した信号であると判定する。
【0049】
そして、本実施形態に係る心電波形記録制御部201は、心電記録判定部202が心電波形の測定に適した信号であると判定したデジタル信号のみを、心電信号記憶部137に保存する処理を行う。
【0050】
図5に、本実施形態に係る生体情報測定装置20による心電信号の計測と心電波形の保存、及び血圧測定の実行と保存に係る処理の関係を示す。
図5に示すように、本実施形態に係る生体情報測定装置20においても、心電信号計測部210は電源部132から電力の供給を受けている限り、第1電極111と第2電極112の電位差(心電信号)を計測して該電位差に係るデジタル信号を常時出力する。このため、ノイズに該当する信号も常時A/D変換回路から出力される。
【0051】
しかしながら、
図5の「電極接触検知」の欄及び「心電信号記録」の欄に示すように、本実施形態においては電極接触検知の判定がONの間のみ、心電波形の保存が行われる。そして、電極接触検知の判定は、上述のように第1電極111及び第2電極112のいずれもがユーザーに安定して接触している場合(即ち、ユーザーが心電波形測定の姿勢を取っている間)のみONとなるため、ノイズ部分を除いた心電波形のみが心電信号記憶部137に保存されることになる。
【0052】
以上のように、本実施形態に係る生体情報測定装置20によれば、心電波形とはいえないノイズの信号を保存せずに、ユーザーが心電波形測定を所望した場合の出力信号のみ保存することができるため、記憶容量を大幅に削減することができる。また、後に心電波形の確認(分析)を行う際にも、ノイズが含まれないデータを用いることができるため、効率的である。
【0053】
<その他>
上記実施形態の説明は、本発明を例示的に説明するものに過ぎず、本発明は上記の具体的な形態には限定されない。本発明は、その技術的思想の範囲内で種々の変形及び組み合わせが可能である。例えば、上記実施形態では、血圧測定姿勢判定部103の判定結果が当であること(即ち、ユーザーが血圧測定に適した体勢になっていること)をトリガーとしていたが、血圧測定開始のトリガーは必ずしもこれに限られない。例えば、操作ボタンのいずれかを血圧測定開始ボタンとして、ボタン操作を血圧測定開始のトリガーとしてもよい。この場合には、操作ボタンは第2電極112に接触した状態を維持したまま操作できるように配置・構成されることが望ましい。
【0054】
また、上記実施形態2では、心電記録判定部202は電極接触状態に基づいて、A/D変換回路114から出力される信号が心電波形の測定に適した信号か否かを判定していたが、必ずしもこれに限られない。例えば、電極接触状態に替えて(或いはこれに加えて)心電波形の基線変動、加速度センサ131の出力に基づく装置の姿勢変動などの情報を用いて判定を行うようにしてもよい。
【0055】
また、上記各実施形態に係る生体情報測定装置は、いずれも血圧測定に係る構成、機能を備えるものであったが、血圧測定の機能が無い装置にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
10、20・・・生体情報測定装置
11・・・本体部
15・・・ベルト部
100、200・・・制御部
101、201・・・心電波形記録制御部
103・・・血圧測定姿勢判定部
104・・・血圧測定実行部
105・・・表示・通信制御部
110、210・・・心電信号計測部
111・・・第1電極
112・・・第2電極
113・・・心電信号計測回路
114・・・A/D変換回路
120・・・血圧測定部
121・・・カフ
122・・・圧力センサ
123・・・ポンプ
131・・・加速度センサ
132・・・電源部
133・・・表示部
134・・・操作部
134a、135b・・・操作ボタン
135・・・通信部
136・・・記憶部
137・・・心電信号記憶部
138・・・血圧値記憶部
151・・・ベルト
152・・・カーラ
215・・・電極接触検知部
202・・・心電記録判定部
T・・・手首