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特開2024-31079スライドシート用の給電装置及び給電構造
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  • 特開-スライドシート用の給電装置及び給電構造 図1
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  • 特開-スライドシート用の給電装置及び給電構造 図5A
  • 特開-スライドシート用の給電装置及び給電構造 図5B
  • 特開-スライドシート用の給電装置及び給電構造 図6
  • 特開-スライドシート用の給電装置及び給電構造 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031079
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】スライドシート用の給電装置及び給電構造
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20240229BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20240229BHJP
   H02G 11/00 20060101ALI20240229BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/06
H02G11/00
B60R16/02 620A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134395
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】521452902
【氏名又は名称】アディエント ユーエス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】乗越 理俊
(72)【発明者】
【氏名】鞠 子墨
(72)【発明者】
【氏名】船藤 達夫
【テーマコード(参考)】
3B087
5G371
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BA02
3B087BB02
3B087DE09
3B087DE10
5G371AA01
5G371BA01
5G371CA01
5G371CA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】設置作業が容易で、異物が侵入しにくいスライドシート用の給電装置を提供する。
【解決手段】スライドシート用の給電装置5は、乗り物の床に敷設された第1方向に延びるレールの脇に設置される本体部51と、レールに支持されて第1方向にスライドするスライドシートに給電するためハーネス55と、本体部51から上方に延出し先端側からハーネス55が引き出され、スライドシートのスライドに伴って第1方向の所定の距離を移動するハーネス誘導塔54と、ハーネス誘導塔54の一面側に設けられその移動領域の一部を覆いハーネス誘導塔54の通過を湾曲変形して許容する第1リップ53と、ハーネス誘導塔54の他面側に設けられその移動領域の残部を覆いハーネス誘導塔54の通過を湾曲変形して許容する第2リップと、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物の床に敷設された第1方向に延びるレールの脇に設置される本体部と、
前記レールに支持されて前記第1方向にスライドするスライドシートに給電するためハーネスと、
前記本体部から上方に延出し先端側から前記ハーネスが引き出され、前記スライドシートのスライドに伴って前記第1方向の所定の距離を移動するハーネス誘導塔と、
前記ハーネス誘導塔の一面側に設けられ前記ハーネス誘導塔の移動領域の一部を覆い前記ハーネス誘導塔の通過を湾曲変形して許容する第1リップと、
前記ハーネス誘導塔の他面側に設けられ前記ハーネス誘導塔の移動領域の残部を覆い前記ハーネス誘導塔の通過を湾曲変形して許容する第2リップと、
を備えたスライドシート用の給電装置。
【請求項2】
一端側を支点にして前記本体部に対し開閉するよう回動可能な開閉基部を備え、前記第2リップは、前記開閉基部に取り付けられている請求項1記載のスライドシート用の給電装置。
【請求項3】
前記第1リップ及び前記第2リップは、前記ハーネス誘導塔に対し湾曲変形した状態で先端の高さが揃っている請求項1又は請求項2記載のスライドシート用の給電装置。
【請求項4】
乗り物の床に敷設された第1方向に延びるスリットを有するレールと、前記スリットから上方に突出する延出部を有し前記レールに係合して前記第1方向にスライドするスライダと、前記レールの一方側の脇に設置された給電装置と、
前記スリットの前記一方側を覆うレールカバーと、を備え、
前記給電装置は、
本体部と、
前記スライダに連結されたスライドシートに給電するためハーネスと、
前記本体部から上方に延出し先端側から前記ハーネスが引き出され、前記スライドシートのスライドに伴って前記第1方向の所定の距離を移動するハーネス誘導塔と、
前記ハーネス誘導塔の一面側に設けられ前記ハーネス誘導塔の移動領域の一部を覆い前記ハーネス誘導塔の通過を湾曲変形して許容する第1リップと、
一端側を支点にして前記本体部に対し開閉するよう回動可能な開閉基部と、
前記ハーネス誘導塔の他面側に設けられ前記ハーネス誘導塔の移動領域の残部を覆い前記ハーネス誘導塔の通過を湾曲変形して許容する第2リップと、
を有する給電装置と、を備え、
前記開閉基部は、閉状態とされ前記レールカバーの下側に位置しているスライドシート用の給電構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスライドシート用の給電装置及び給電構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、スライドシートに給電するためのスライドシート用のワイヤハーネス配策装置が記載されている。特許文献1の図7(B)には、シートをスライドさせる一対のシートレールの内の一方の側方に、ワイヤハーネス用レールがシートレールと平行に敷設された構成が記載されている。シートレールには可動レールが上方に突出してスライド可能に支持され、ワイヤハーネス用レールには、スライダが上方に突出してスライド可能に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-174476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の図7(B)に示されるように、従来のスライドシート用の給電装置は、シートレール及びワイヤハーネス用レールに、それぞれ可動レール及びスライダとの隙間を塞ぐフラップ状の車室床材(カバー)が一対設置されている。
従って、従来のスライドシート用の給電装置は、一対のシートレールそれぞれの左右両側に2個ずつの4個と、ワイヤハーネス用レールの左右両側の2個と、の合計6個ものカバーを床面に並べて設置する必要がある。
そのため、カバーを床面に設置する作業で手間がかかる、隙間は1枚のフラップ状カバーで塞がれるので、フラップ状部分が変形するなどした場合に給電装置の内部に塵埃や落下物などの異物が侵入しやすい、という改善すべき点があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、設置作業が容易で、異物が侵入しにくいスライドシート用の給電装置及び給電構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は次の1)~4)の構成を有する。
1) 乗り物の床に敷設された第1方向に延びるレールの脇に設置される本体部と、
前記レールに支持されて前記第1方向にスライドするスライドシートに給電するためハーネスと、
前記本体部から上方に延出し先端側から前記ハーネスが引き出され、前記スライドシートのスライドに伴って前記第1方向の所定の距離を移動するハーネス誘導塔と、
前記ハーネス誘導塔の一面側に設けられ前記ハーネス誘導塔の移動領域の一部を覆い前記ハーネス誘導塔の通過を湾曲変形して許容する第1リップと、
前記ハーネス誘導塔の他面側に設けられ前記ハーネス誘導塔の移動領域の残部を覆い前記ハーネス誘導塔の通過を湾曲変形して許容する第2リップと、
を備えたスライドシート用の給電装置である。
2) 一端側を支点にして前記本体部に対し開閉するよう回動可能な開閉基部を備え、前記第2リップは、前記開閉基部に取り付けられている1)に記載のスライドシート用の給電装置である。
3) 前記第1リップ及び前記第2リップは、前記ハーネス誘導塔に対し湾曲変形した状態で先端の高さが揃っている1)又は2)に記載のスライドシート用の給電装置である。
4) 乗り物の床に敷設された第1方向に延びるスリットを有するレールと、前記スリットから上方に突出する延出部を有し前記レールに係合して前記第1方向にスライドするスライダと、前記レールの一方側の脇に設置された給電装置と、
前記スリットの前記一方側を覆うレールカバーと、を備え、
前記給電装置は、
本体部と、
前記スライダに連結されたスライドシートに給電するためハーネスと、
前記本体部から上方に延出し先端側から前記ハーネスが引き出され、前記スライドシートのスライドに伴って前記第1方向の所定の距離を移動するハーネス誘導塔と、
前記ハーネス誘導塔の一面側に設けられ前記ハーネス誘導塔の移動領域の一部を覆い前記ハーネス誘導塔の通過を湾曲変形して許容する第1リップと、
一端側を支点にして前記本体部に対し開閉するよう回動可能な開閉基部と、
前記ハーネス誘導塔の他面側に設けられ前記ハーネス誘導塔の移動領域の残部を覆い前記ハーネス誘導塔の通過を湾曲変形して許容する第2リップと、
を有する給電装置と、を備え、
前記開閉基部は、閉状態とされ前記レールカバーの下側に位置しているスライドシート用の給電構造である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、設置作業が容易で、異物が侵入しにくい、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係るスライドシート用の給電装置の実施例である給電装置5を備えたスライドシートシステムSTを示す斜視図である。
図2図2は、給電装置5の外観斜視図である。
図3図3は、給電装置5の本体部51を示す外観斜視図である。
図4図4は、給電装置5のカバー52を示す外観斜視図である。
図5A図5Aは、給電装置5におけるワイヤハーネス6の長さ調節機能を説明する第1の図である。
図5B図5Bは、給電装置5におけるワイヤハーネス6の長さ調節機能を説明する第2の図である。
図6図6は、図1におけるS6-S6位置での断面図である。
図7図7は、図1におけるS7-S7位置での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係るスライドシート用給電装置を、実施例の給電装置5と、それを備えたスライドシートシステムSTとによって説明する。説明における上下左右前後の各方向は、図1に矢印で規定する。
【0010】
図1は、スライドシートシステムSTの全体構成を示す右後斜め上方から見た斜視図である。
スライドシート用の給電構造である給電構造Eは、車両を含む乗り物に搭載されるスライドシートシステムSTに採用される。
スライドシートシステムSTは、スライドシート8と、ベース3と、スライダ2L及びスライダ2Rと、給電装置5と、第1案内ブラケット31及び第2案内ブラケット32と、レール1L及びレール1Rとを含んで構成されている。
以下、スライドシート8は単にシート8と称する。給電構造Eの構成は後述する。
【0011】
シート8は、シートベース81と、シートベース81の上部に固定されたシートクッション82と、シートクッション82の後部に背もたれとして連結されたシートバック83とを有する。
レール1L及びレール1Rは、乗り物の床FL(図7参照)の骨格となるフロアパネル85(図7も参照)に、第1方向である前後方向に延びる姿勢で左右に平行に離隔して敷設される。
【0012】
レール1Lには、前後方向に移動可能にスライダ2Lが支持され、レール1Rには、前後方向に移動可能にスライダ2Rが支持されている。
ベース3は、スライダ2Lとスライダ2Rとに跨るように取り付けられている。ベース3は、中央に開口部3aを有し上面視で矩形となる台状の金属部材である。
ベース3の上面には、シート8のシートベース81が固定される(矢印DR8参照)。
これにより、シート8は、レール1L,1Rに沿って前後方向に移動する。
スライドシートシステムSTは、例えば、乗り物の進行方向左側の座席(乗り物が例えば右ハンドル自動車であれば助手席)として搭載される。
【0013】
ベース3の後部には、第1案内ブラケット31が取り付けられており、ベース3の前部には、第2案内ブラケット32が取り付けられている。
レール1Rの下部には、フロントブラケット57とリアブラケット56とが、前後方向に離隔して左方へ張り出すように取り付けられている。
フロントブラケット57及びリアブラケット56は、給電装置5に連結されている。これにより、給電装置5は、レール1Rの内側(左側)に近接して配置されている。
【0014】
給電装置5には、一端が乗り物側の給電装置(不図示)に接続されたワイヤハーネス6(図5A参照)のケーブル61が引き込まれている。給電装置5におけるレール1R側の上縁部には、上方に突出し前後方向に移動可能なハーネス誘導塔54が備えられている。ハーネス誘導塔54の上部は左方に屈曲し、屈曲した先端からは、ケーブル61の他端側であるハーネス55が延出している。ハーネス55の先端には、ハーネスコネクタ55aが装着されている。
【0015】
シート8のシートベース81の下部からは、シートハーネス84が引き出されている。シートハーネス84の一端は、シート8に設けられた給電端子(不図示)などに接続されている。
シートハーネス84の他端には、ハーネスプラグ84aが取り付けられている。ハーネスプラグ84aは、ベース3の開口部3aを通してハーネスコネクタ55aに接続される(破線矢印DR参照)。
これにより、乗り物の乗員は、シート8の給電端子(不図示)などを利用して手持ちの電子機器に対し乗り物側からの電力供給が可能である。
【0016】
次に、給電装置5について図2図4を参照して説明する。図2は、給電装置5の外観斜視図であり、図3は、給電装置5が備える本体部51の外観斜視図であり、図4は、給電装置5が備えるカバー52の外観斜視図である。
【0017】
図2に示されるように、給電装置5は、外観上、本体部51,カバー52,ハーネス誘導塔54,及びハーネス55を有する。給電装置5の本体部51は、レール1Rの脇に設置される。
本体部51は、図3に示されるように、上下に分割された上カバー512と下カバー511とが組み合わされて箱状に構成されている。本体部51の右側面の上部と上面の右縁部とに跨り前後方向に延びる開口部51aが形成されている。ハーネス誘導塔54は、開口部51aから右方に延出してから上方に延び、先端が左方に屈曲した角筒状の部位である。内部には、本体部51の内部から引き込まれたハーネス55が通されている。ハーネス55は、ハーネス誘導塔54の先端から外部に延出している。
ハーネス誘導塔54は、概ね開口部51aの前後方向の開口範囲を、シート8のスライド動作に伴って従動的に移動可能となっている。具体的には、図1に示されるように、ベース3に取り付けられた第1案内ブラケット31及び第2案内ブラケット32はシート8のスライド動作と共に前後移動する。第1案内ブラケット31及び第2案内ブラケット32は、その前後移動においてハーネス誘導塔54と干渉する位置にある。そのため、ハーネス誘導塔54は、シート8が前方に移動する際に第1案内ブラケット31に押されて前方に移動し、シート8が後方に移動する際にハーネス誘導塔54は第2案内ブラケット32に押されて後方に移動する。
【0018】
図4に示されるカバー52は、本体部51の上部に取り付けられる矩形平板状の部材であり、例えば樹脂の射出成形によって形成される。カバー52は、本体部51に対し、スナップフィットなどの係合部(不図示)或いはねじなどの固定具を用いて取り付けられる。
【0019】
カバー52は、平板状の基部521と開閉リップ部58とを有する。基部521の右縁部における前後方向両端側を除く中央部には、前後方向がハーネス誘導塔54の移動範囲に対応した範囲とされて左方に抉られた抉り部52aを有する。
抉り部52aには、その奥側部分を塞ぐように、柔軟性を有する第1リップ53が形成されている。
【0020】
開閉リップ部58は、基部521の右端面における抉り部52aの前端近傍に形成されたヒンジ583を介して基部521に連結されている。
開閉リップ部58は、抉り部52aの長さに概ね対応した細長い開閉基部581と、開閉基部581に取り付けられた第2リップ582とを有する。
開閉基部581は、一端側(この例では前端側)が開閉基部581とヒンジ583で連結され、他端側(後端側)には、左方に突出し前後方向に可撓性を有する係止爪部584を有する。係止爪部584は、先端側部位に、前方に突出する突出部584aを有する。
【0021】
一方、基部521の下面における抉り部52aの後端近傍には、係止爪部584の突出部584aを係止可能なフック部522が形成されている。
開閉リップ部58は、ヒンジ583を支点として、第1リップ53に対し離接するよう矢印DRaの方向に人の手により回動可能である。
これにより、開閉リップ部58は、係止爪部584がフック部522から離隔した開状態(図4)と、係止爪部584がフック部522に係止された閉状態(図2)との間で選択的に状態遷移させることができる。
【0022】
基部521及び開閉基部581は、樹脂(例えばポリプロピレン)で形成され、第1リップ53及び第2リップ582は柔軟性を有する材料(例えば、エラストマ)で形成される。カバー52は、いわゆる射出成形における二色成形で形成してよい。
【0023】
カバー52を開状態で本体部51の上部に取り付け、開閉リップ部58を図2に示されるように閉状態にすると、ハーネス誘導塔54は、第1リップ53と第2リップ582との間に挟まれる。すなわち、ハーネス誘導塔54の一面側(左面側)に第1リップ53が設けられ、他面側(右面側)に第2リップ582が設けられている。
これにより、上方視でハーネス誘導塔54が移動する領域である移動領域AR(図6及び図7参照)は、一部(左側)が第1リップ53で覆われ、残部(右側)が第2リップ582で覆われる。
第1リップ53及び第2リップ582は柔軟性を有するので、閉状態において、ハーネス誘導塔54に干渉する部分及びその近傍領域のみが上方に持ち上がるように変形しハーネス誘導塔54を摺動可能に挟み込む。
給電装置5は、開閉リップ部58を閉状態にして、図1に示されるように乗り物の床FLに取り付けられる。
【0024】
図5A及び図5Bは、給電装置5における本体部51の内部の概略構造を示す図である。給電装置5は、電源供給のためのハーネス55を、シート8に対しそのスライド動作に追従して滞りなく繰り出し位置を調節する機能を有する。
図5Aは、ハーネス誘導塔54が移動範囲の最後方位置にある場合、図5Bは、ハーネス誘導塔54が移動範囲の最前方位置にある場合が示されている。
【0025】
図5A及び図5Bに示されるように、本体部51における下カバー511の中央部位には、下カバー511の側壁から離れて底部511bから長円柱状で上方に盛り上がった凸部511aが形成されている。乗り物側から引き回されてきたケーブル61は、本体部51の後面から内部に引き込まれ、湾曲可能な保護チューブ62の中に通され、ワイヤハーネス6を形成している。
【0026】
ハーネス誘導塔54が移動範囲の最後方位置にある図5Aに示される状態で、保護チューブ62に覆われたケーブル61は、凸部511aの左縁部及び前端の円弧状の部位に沿って向きを変え、凸部511aの右縁部に沿って後方に延び、ハーネス誘導塔54内に引き込まれている。
これに対し、図5Bに示されるように、ハーネス誘導塔54が所定の距離L55である移動範囲の最前方位置にある状態で、保護チューブ62は次のようになっている。すなわち、保護チューブ62に覆われたケーブル61は、凸部511aの左縁部から凸部511aの円弧状の部位には沿わず前方に真っ直ぐ延び、下カバー511の内部の凸部511aの前方の空間で湾曲して後ろ向きとなり、ハーネス誘導塔54内に引き込まれる。
このような構造により、給電装置5は、ハーネス誘導塔54の距離L55の移動で生じるケーブル61の弛みを吸収するようになっている。
【0027】
次に、給電構造Eについて、図6及び図7を参照して説明する。
図6は、図1におけるS6-S6位置での断面図であり、図7は、図1におけるS7-S7位置での断面図である。すなわち、図6は、車両の床FLにおける、第1リップ53及び第2リップ582がハーネス誘導塔54と干渉する位置、かつスライダ2Rを通る位置での横断面図であり、図7は、それぞれ干渉していない位置での横断面図である。
【0028】
図6及び図7において、給電構造Eは、レール1R,スライダ2R,レールカバー12,及び給電装置5を含んで構成されている。
給電装置5は、乗り物の床FLに取り付けられた状態で示されており、乗り物のフロアパネル85とフロアパネル85の上に敷かれたカーペット7とが併せて示されている。
【0029】
図6及び図7に示されるように、レール1Rは、上部の左右中央に、第1開口部SL1としてのスリット1aを有して横断面形状が略矩形の枠状に形成された押出部材である。
スライダ2Rは、レール1Rに沿って移動できる。スライダ2Rは、レール1Rに係合してその内部に位置する基部21と、基部21からスリット1aを通して上方に突出した延出部22とを有する。
スライダ2Rには、シート8のシートベース81に固定されたベース3取り付けられている。すなわち、シート8はスライダ2Rと一体化されている。
【0030】
レール1Rは、不図示のロック構造などに利用される側面孔1bが適宜設けられている。レール1Rは、側面孔1bなどから塵埃が内部に進入するのを防止するプロテクタ13を介してフロアパネル85に固定されている。
レール1Rの上面には、スリット1aに対する右側に第1レールカバーであるレールカバー11が取り付けられ、左側に第2レールカバーであるレールカバー12が取り付けられている。
レールカバー11,12は、それぞれ基部11b,12bと、基部11b,12bに接続してそれぞれスリット1aを塞ぐように延出したフラップ11a,12aと、を有する。基部11b,12bは樹脂で形成され、フラップ11a,12aは柔軟性を有する材料(例えばゴム、エラストマなど)で形成されている。
【0031】
レールカバー11の右縁部は、庇状に右方に張り出した庇部11cが形成されている。
庇部11cとフロアパネル85との間には、カーペット7が挟みこまれている。カーペット7は、フロアパネル85に取り付けられた板状の基材部71と、基材部71の上面に植毛形成されたパイル部72とを有する。
【0032】
フラップ11a,12aは、柔軟性を有する材料で薄く形成され、先端側が上下方向に湾曲するような変形が容易に可能である。
これにより、図6に示されるように、移動するスライダ2Rが位置していないところでは、フラップ11a,12aは概ね水平に延在し互いの先端が近接又は接触する位置にある。すなわち、レール1Rのスリット1aはフラップ11a,12aによって概ね塞がれる。
【0033】
一方、図7に示されるように、移動するスライダ2Rが位置したところでは、フラップ11a,12aは、スライダ2Rの延出部22に接触しこれに沿うように先端側が上方に湾曲するように変形する(湾曲変形する)。
すなわち、スライダ2Rが通過する際に、フラップ11a,12aは湾曲変形してスライダ2Rの延出部22の移動を許容する。
そのため、延出部22とフラップ11a,12aとの間の隙間は、延出部22の前後両端部分のわずかな範囲となる。
【0034】
図6及び図7に示されるように、レール1Rの左側に近接して給電装置5が配置されている。
給電装置5におけるカバー52の基部521における左方の縁部52cは、本体部51における上カバー512から張り出す庇状に形成されており、レールカバー11の庇部11cと同様に、フロアパネル85との間にカーペット7を挟んでいる。
【0035】
図6に示されるように、第1リップ53は、閉状態において右方に概ね水平に延びる第1リップ基部53aと、第1リップ基部53aの右方の縁部53cよりも内側(左側)の位置から下方に延びるリブ状の第1リップリブ53bとを有している。
一方、開閉リップ部58の開閉基部581は、レールカバー12の左方の縁部12cの下面に近接して位置し、第2リップ582は、縁部12cの左側を斜め左上方に延びて左方の縁部582cが第1リップ53の右方の縁部53cに近接又は接触するようになっている。
【0036】
これにより、給電装置5を用いることにより、ハーネス誘導塔54と干渉しない部分において、床FLにおけるスライダ2Rの左方側は、レールカバー12,第2リップ582,第1リップ53,及び基部521によって少ない凹凸で、実質的に隙間なく塞がれた状態で視認される。
【0037】
図7に示されるように、ハーネス誘導塔54が位置している部分の第1リップ53において、第1リップ基部53aは、先端側がハーネス誘導塔54の左側面に沿って上方に湾曲するように変形してその左側面に接触する。また、第1リップリブ53bも、第1リップ基部53aの変形に伴いハーネス誘導塔54の左側面に接触する。
すなわち、ハーネス誘導塔54の左側面側は、上下方向に離隔した第1リップ53と第1リップリブ53bとの2個のリップによって塞がれており、給電装置5の本体部51の内部への異物の侵入がより確実に防止される。
一方、開閉リップ部58の第2リップ582は、ハーネス誘導塔54の右側面に沿って上方に湾曲するように変形しその右側面に接触するので、ハーネス誘導塔54と第2リップ582とが干渉する部分も、ほぼ隙間なく塞がれた状態で視認される。
【0038】
これにより、ハーネス誘導塔54の右側面側の隙間は、レールカバー12と第2リップ582との二つの部材によって塞がれるので、給電装置5の本体部51の内部への異物の侵入が確実に防止される。
【0039】
図7に示されるように、ハーネス誘導塔54と干渉して上方に湾曲変形した第1リップ53の縁部53c及び第2リップ582の縁部582cの高さ位置は、同じとされて揃っており、レールカバー12の上面から上方に高さH5の位置にある。これにより、給電装置5の外観品位が向上する。
【0040】
ハーネス誘導塔54が移動して第1リップ53及び第2リップ582との干渉が解除されると、第1リップ53及び第2リップ582は図6に示される状態に速やかに復帰する。
【0041】
給電装置5は、ハーネル摺動等54に対応した2個のリップを備えている。そのため、乗り物の床FLに少なくとも2個のリップを取り付ける作業が不要になり、設置作業性が向上し、設置が容易である。
【0042】
このように、給電装置5は、ハーネス誘導塔54の一方側(左方側)に対応した第1リップ53と、他方側(右方側)に対応した第2リップ582とを備え、ハーネス誘導塔54は、第1リップ53と第2リップ582とによって両側(左右両側)から挟まれている。また、第2リップ582は、隣接するレール1Rのレールカバー12の縁部12cの下側に重なる位置から第1リップ53に向け延出している。そのため、ハーネス誘導塔54の位置によらず、床FLの隙間及びハーネス誘導塔54の左右の側面に生じる隙間を良好に塞ぐことができる。
【0043】
これにより、給電装置5は、床FLの見栄えをよくすることができ、2個のリップの床面への設置作業を不要とする。
また、給電装置5は、開閉リップ部58をレールカバー12の下方に潜り込ませるように配置できるので、ハーネス誘導塔54を、レール1Rにより接近して配置することができ、省スペース化が図れる。
【0044】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形可能である。
【0045】
乗り物は自動車に限定されない。乗り物は車両及び車両以外の乗り物を含み、例えば、鉄道車両、航空機、船舶などであってもよい。
上述における上下左右前後の各方向は、説明の便宜のために規定したものであり、乗り物用シート91の乗り物における設置方向などを限定するものではない。
【符号の説明】
【0046】
1L,1R レール
1a スリット
1b 側面孔
11,12 レールカバー
11a,12a フラップ
11b,12b 基部
11c 庇部
12c 縁部
13 プロテクタ
2L,2R スライダ
21 基部
22 延出部
3 ベース
3a 開口部
31 第1案内ブラケット
32 第2案内ブラケット
5 給電装置
51 本体部
51a 開口部
511 下カバー
511a 凸部
511b 底部
512 上カバー
52 カバー
521 基部
52a 抉り部
52c 縁部
522 フック部
53 第1リップ
53a 第1リップ基部
53b 第1リップリブ
53c 縁部
54 ハーネス誘導塔
55 ハーネス
55a ハーネスコネクタ
56 リアブラケット
57 フロントブラケット
58 開閉リップ部
581 開閉基部
582 第2リップ
582c 縁部
583 ヒンジ
584 係止爪部
584a 突出部
6 ワイヤハーネス
61 ケーブル
62 保護チューブ
7 カーペット
71 基材部
72 パイル部
8 シート(スライドシート)
81 シートベース
82 シートクッション
83 シートバック
84 シートハーネス
84a ハーネスプラグ
85 フロアパネル
AR 移動領域
E 給電構造
FL 床
H5 高さ
L55 距離
SL1 第1開口部
ST スライドシートシステム
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7