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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031080
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】医療用の液体検出装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
A61M1/36 145
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134396
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】山辺 康平
(72)【発明者】
【氏名】山口 健志
(72)【発明者】
【氏名】貞廣 衝
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077HH04
4C077HH21
4C077KK17
4C077KK25
(57)【要約】
【課題】光による液体検出において穿刺部位に近い位置での患者への固定作業を要することなく簡単に使用することができる、新規な構造の医療用の液体検知装置を提供する。
【解決手段】医療用の液体検出装置10であって、人体1の下方に配設されて血液等の医療検知対象液体5の通過を阻止するシート部材12を備えており、シート部材12には医療検知対象液体5を溜める液溜部18が設けられており、シート部材12上において液溜部18へ向けて照射された検出用光の受光レベルに基づいて液溜部18における医療検知対象液体5を検出する光学式検出部14を有しており、液溜部18を覆って配されて液溜部18に対して光学式検出部14を位置決めする位置決めシート38が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の下方に配設されて血液等の医療検知対象液体の通過を阻止するシート部材を備えており、
該シート部材には該医療検知対象液体を溜める液溜部が設けられており、
該シート部材上において該液溜部へ向けて照射された検出用光の受光レベルに基づいて該液溜部における該医療検知対象液体を検出する光学式検出部を有しており、
該液溜部を覆って配されて該液溜部に対して該光学式検出部を位置決めする位置決めシートが設けられている医療用の液体検出装置。
【請求項2】
前記位置決めシートが前記医療検知対象液体の通過を許容する透液性を有している請求項1に記載の医療用の液体検出装置。
【請求項3】
前記シート部材の前記液溜部には、前記医療検知対象液体を吸収保持する保液部材が配されている請求項1又は2に記載の医療用の液体検出装置。
【請求項4】
前記光学式検出部は、検出用光の照射用光路と検出用光の受光用光路とを備えた光ファイバーを有しており、
前記保液部材の厚さ寸法が該保液部材の厚さ方向における該光ファイバーの外寸以上とされている請求項3に記載の医療用の液体検出装置。
【請求項5】
前記光学式検出部は、検出用光の照射用光路と検出用光の受光用光路とを備えた光ファイバーを有するプローブによって構成されており、
前記保液部材には該プローブの該光ファイバーが差し入れられる位置決め凹部が設けられている請求項3に記載の医療用の液体検出装置。
【請求項6】
前記シート部材は人体が載置される載置部を備えており、
前記液溜部が該載置部から離れた領域に設けられている請求項1又は2に記載の医療用の液体検出装置。
【請求項7】
前記位置決めシートが不透明とされている請求項1又は2に記載の医療用の液体検出装置。
【請求項8】
血液等の医療検知対象液体を検出する医療用の液体検出装置に用いられる検出用具であって、
前記医療検知対象液体を吸収保持する保液部材と、
該保液部材に該医療検知対象液体の検出用の光ファイバーを取り付ける取付部材または該保液部材に形成された取付部と
を、含む検出用具。
【請求項9】
前記光ファイバーが前記保液部材の位置決め凹部に差し入れられており、
該光ファイバーが該位置決め凹部に差し入れられた状態で前記取付部材によって該保液部材に対して位置決めされている請求項8に記載の検出用具。
【請求項10】
前記保液部材の厚さ寸法が該保液部材の厚さ方向における前記光ファイバーの外寸以上とされている請求項8又は9に記載の検出用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野において血液等の漏出を検知する際に用いられる医療用の液体検出装置と、医療用の液体検出装置に用いられる検出用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療の現場では、長時間に亘って治療を行う必要がある施術において、液漏れが問題となる場合があり、このため、血液等の液体の漏れが発生した際に早期に検知することが必要となる場合がある。例えば透析に際して、患者から針が抜ける等して穿刺部位から血液や薬液が漏れてしまう液漏れ(漏液)が発生する場合があり、大きな問題となる前に漏液を検知して対処する必要がある。ところが、多忙な医療関係者が透析の処置に際して開始から完了まで継続的に監視することは現実的ではないことから、漏液を自動的に検知する液体検出装置の採用が検討されている。
【0003】
従来では、例えば、国際公開第2006/001759号公報(特許文献1)に記載されているように、光ファイバーを漏液が予測される穿刺部位の付近に配して、光ファイバーを通じて受光素子へ導かれる光の量(受光レベル)が、光ファイバーに対する液体の付着によって変化することに基づいて、液漏れを検出する液体検出装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/001759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の液体検出装置では、血液等の液体が光ファイバーに確実に付着するように、光ファイバーを穿刺部位の近くに配する必要がある。それゆえ、医療従事者は、穿刺による創傷の近くに光ファイバーを固定する作業を行う必要があり、固定作業に際して穿刺部位が引っ張られるなどして患者が痛みを感じるおそれがあり、固定作業にストレスがあった。
【0006】
また、特許文献1の液体検出装置では、パッチと光ファイバーとが単回使用の使い捨て機器を構成することから、予め相互に固定されており、光ファイバーに対して保液部材を含むパッチを簡単に取付け可能とすることや、光ファイバーからパッチを取り外すことは考慮されていなかった。
【0007】
本発明の解決課題は、光による液体検出において穿刺部位に近い位置での患者への固定作業を要することなく簡単に使用することができる新規な構造の医療用の液体検出装置と、検出用の光ファイバーに対して容易に着脱することができる新規な構造の検出用具との少なくとも一方を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0009】
第1の態様は、人体の下方に配設されて血液等の医療検知対象液体の通過を阻止するシート部材を備えており、該シート部材には該医療検知対象液体を溜める液溜部が設けられており、該シート部材上において該液溜部へ向けて照射された検出用光の受光レベルに基づいて該液溜部における該医療検知対象液体を検出する光学式検出部を有しており、該液溜部を覆って配されて該液溜部に対して該光学式検出部を位置決めする位置決めシートが設けられているものである。
【0010】
本態様に従う構造とされた医療用の液体検出装置によれば、医療検知対象液体の通過を阻止するシート部材により、例えば、透析中において漏血が生じた際に血液がベッドに吸収されたり、血液がベッドを通過してしまい検知できないといったことが防止される。血液はシート部材上に広がるため、液溜部に対して光学式検出部を位置決めする位置決めシートをシート部材上に取り付けておくことで、漏血を確実に検知できる。また、シート部材上の医療検知対象液体を検出用光の反射や透過等の変化などに基づいて検出することから、発光素子や受光素子等を備えた光学式検出部を、医療検知対象液体の漏出が想定される患者への穿刺部位等から離して配することができる。それゆえ、例えば光学式検出部を穿刺部位に近接して配する場合に比して、患者の痛みや医療従事者の作業負担等を軽減することができる。
【0011】
第2の態様は、第1の態様に記載された医療用の液体検出装置において、前記位置決めシートが前記医療検知対象液体の通過を許容する透液性を有しているものである。
【0012】
本態様に従う構造とされた医療用の液体検出装置によれば、液溜部の上方が位置決めシートによって覆われていても、医療検知対象液体が位置決めシートを透過して液溜部に到達する。それゆえ、例えば、シート部材と位置決めシートの重ね合わせ面間に隙間を設ける等して医療検知対象液体の通路を形成する必要がなく、位置決めシートを簡単に設けることができる。
【0013】
第3の態様は、第1又は2の態様に記載された医療用の液体検出装置において、前記シート部材の前記液溜部には、前記医療検知対象液体を吸収保持する保液部材が配されているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされた医療用の液体検出装置によれば、医療検知対象液体が保液部材に吸収されて液溜部により確実に保持されることにより、医療検知対象液体の検出精度の向上が図られ得る。また、人体の動きに対して医療検知対象液体の液溜部からの零れ出しが抑えられることから、患者の体動がある程度は許容されて、静止を強いられることによる患者の苦痛を軽減することができる。
【0015】
第4の態様は、第3の態様に記載された医療用の液体検出装置において、前記光学式検出部は、検出用光の照射用光路と検出用光の受光用光路とを備えた光ファイバーを有しており、前記保液部材の厚さ寸法が該保液部材の厚さ方向における該光ファイバーの外寸以上とされているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされた医療用の液体検出装置によれば、保液部材の厚さが光ファイバーの外寸以上とされていることによって、検出用光がより確実に光ファイバーから保液部材へ向けて照射されると共に、外部から入射される検出用光以外の光が光ファイバーに入り難くされて、検出精度の向上が図られる。なお、例えば、保液部材の厚さが光ファイバーに対して過度に大きくなり過ぎないようにすれば、保液部材が医療検知対象液体を吸収保持する際に、医療検知対象液体が保液部材の全体に行きわたり易くなって、検出用光が保液部材における医療検知対象液体の吸収部分へより確実に照射される。
【0017】
第5の態様は、第3又は第4の態様に記載された医療用の液体検出装置において、前記光学式検出部は、検出用光の照射用光路と検出用光の受光用光路とを備えた光ファイバーを有するプローブによって構成されており、前記保液部材には該プローブの該光ファイバーが差し入れられる位置決め凹部が設けられているものである。
【0018】
本態様に従う構造とされた医療用の液体検出装置によれば、プローブの光ファイバーが位置決め凹部に差し入れられて保液部材に対して位置決めされることにより、照射用光路から保液部材へ向けて検出用光が照射されると共に、保液部材によって反射した検出用光の反射光が受光用光路によって受光される。従って、検出用光の受光レベルに基づいて、保液部材によって吸収保持された医療検知対象液体をより確実に検出することができる。
【0019】
第6の態様は、第1~第5の何れか1つの態様に記載された医療用の液体検出装置において、前記シート部材における前記液溜部が上方に向かって開口する凹状の形態とされており、該液溜部に前記保液部材が配されているものである。
【0020】
本態様に従う構造とされた医療用の液体検出装置によれば、医療検知対象液体が上方に向かって開口する凹状の形態を有する液溜部に溜まることから、液溜部に向けて検出用光を照射することによって、医療検知対象液体を容易に且つより正確に検出することができる。医療検知対象液体が溜まり易い凹状とされた液溜部に保液部材を配することにより、医療検知対象液体が保液部材により確実に吸収保持される。
【0021】
第7の態様は、第1~第6の何れか1つの態様に記載された医療用の液体検出装置において、前記シート部材は人体が載置される載置部を備えており、前記液溜部が該載置部から離れた位置に設けられているものである。
【0022】
本態様に従う構造とされた医療用の液体検出装置によれば、例えば、人体への穿刺部位から漏出して流れ落ちる血液や輸液等の医療検知対象液体が、載置部から離れた液溜部へ導かれることから、血液等が載置部に留まる場合よりも人体へ付着し難い。また、患者の体動による血液等の飛散も抑えられる。
【0023】
第8の態様は、第1~第7の何れか1つの態様に記載された医療用の液体検出装置において、前記光学式検出部は、検出用光の照射用光路と検出用光の受光用光路とを備えた光ファイバーを有するプローブによって構成されており、該プローブが前記シート部材から取り外し可能とされているものである。
【0024】
本態様に従う構造とされた医療用の液体検出装置によれば、例えば、プローブは繰り返し使用して使用コストの低減を図りながら、シート部材を単回使用で使い捨てにして、医療検知対象液体と直接に接するシート部材の清潔さを確保することができる。
【0025】
第9の態様は、第1~第8の何れか1つの態様に記載された医療用の液体検出装置において、前記位置決めシートが不透明とされているものである。
【0026】
本態様に従う構造とされた医療用の液体検出装置によれば、液溜部を覆う位置決めシートが不透明とされていることによって、液溜部へ向けて照射される検出用光が位置決めシートを透過して外部へ逃げ難く、液溜部へ向けて照射された検出用光の反射光や透過光の受光レベルに基づく医療検知対象液体の検出精度を向上させることができる。また、外部から検出用光以外の光が液溜部へ照射され難くなることにより、検出用光以外の光が液体検出時のノイズになるのを抑えることができて、検出精度の向上が図られる。
【0027】
第10の態様は、血液等の医療検知対象液体を検出する医療用の液体検出装置に用いられる検出用具であって、前記医療検知対象液体を吸収保持する保液部材と、該保液部材に該医療検知対象液体の検出用の光ファイバーを取り付ける取付部材または保液部材に形成された取付部とを、含むものである。
【0028】
本態様に従う構造とされた医療用の液体検出装置に用いられる検出用具によれば、保液部材を取付部材又は取付部によって光ファイバーに取り付けて保持させることができることから、光ファイバーの検出用光が保液部材へ向けてより確実に照射される。また、本態様の検出用具は、光ファイバーとは別に設けられて、取付部材又は取付部によって光ファイバーに取り付けられることから、光ファイバーと検出用具との着脱が容易であり、例えば、光ファイバーを頻回使用としながら、検出用具を単回使用とすることもできる。
【0029】
第11の態様は、第10の態様に記載された医療用の液体検出装置に用いられる検出用具であって、前記光ファイバーが前記保液部材の位置決め凹部に差し入れられており、該光ファイバーが該位置決め凹部に差し入れられた状態で前記取付部材または前記取付部によって該保液部材に対して位置決めされているものである。
【0030】
本態様に従う構造とされた医療用の液体検出装置に用いられる検出用具によれば、光ファイバーが位置決め凹部に差し入れられて保液部材に対して位置決めされることにより、照射用光路から保液部材へ向けて検出用光がより確実に照射されると共に、保液部材によって反射した検出用光の反射光が受光用光路によってより確実に受光される。従って、検出用光の受光レベルに基づいて、保液部材によって吸収保持された医療検知対象液体をより確実に検出することができる。
【0031】
第12の態様は、第10又は第11の態様に記載された医療用の液体検出装置に用いられる検出用具であって、前記保液部材の厚さ寸法が該保液部材の厚さ方向における前記光ファイバーの外寸以上とされているものである。
【0032】
本態様に従う構造とされた医療用の液体検出装置に用いられる検出用具によれば、保液部材の厚さが光ファイバーの外寸以上とされていることによって、検出用光がより確実に光ファイバーから保液部材へ向けて照射されると共に、外部から入射される検出用光以外の光が光ファイバーに入り難くされて、検出精度の向上が図られる。なお、例えば、保液部材の厚さが光ファイバーに対して過度に大きくなり過ぎないようにすれば、保液部材が医療検知対象液体を吸収保持する際に、医療検知対象液体が保液部材の全体に行きわたり易くなって、検出用光が保液部材における医療検知対象液体の吸収部分へより確実に照射される。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、光による液体検出において穿刺部位に近い位置での患者への固定作業を要することなく簡単に使用することができる医療用の液体検出装置と、検出用の光ファイバーに対して容易に着脱することができる検出用具との少なくとも一方を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の第1実施形態としての医療用の液体検出装置を使用状態で示す斜視図であって、液漏れが発生していない状態を示す図
図2図1に示す医療用の液体検出装置の断面図
図3図1に示す医療用の液体検出装置を構成するプローブのブロック図
図4図1に示す医療用の液体検出装置を使用状態で示す斜視図であって、液漏れの発生状態を示す図
図5】本発明の第2実施形態としての医療用の液体検出装置を使用状態で示す斜視図
図6】本発明の第3実施形態としての医療用の液体検出装置を使用状態で示す断面図
図7】本発明の第4実施形態としての医療用の液体検出装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0036】
図1図2には、本発明の第1実施形態としての医療用の液体検出装置10が示されている。液体検出装置10は、患者の腕部1の下方に配設されるシート部材12と、光学式検出部としてのプローブ14とを、備えている。以下の説明において、上下方向とは、原則として、液体検出装置10を使用する際の鉛直上下方向である図2の上下方向を言う。
【0037】
シート部材12は、例えば、樹脂製のフィルム、シート、平板等で構成されており、後述する血液5の通過を阻止し得る材質とされている。シート部材12は、例えばベッド等の支持台の上面に敷かれている。シート部材12は、載置部16と、載置部16の側方に位置する液溜部18とを、備えている。
【0038】
載置部16は、シート部材12において人体としての腕部1が載置される部分であって、本実施形態では、液溜部18から離れた位置に設定されている。載置部16は、例えば、上面に示された文字や図形等によって、腕部1を置く位置や腕部1の長さ方向等が患者に容易に把握されるようにしてもよい。
【0039】
液溜部18は、腕部1から流れ出した血液5(後述)が流れ込んで貯留される部分とされており、保液部材20が配されている。保液部材20は、例えば、スポンジや不織布等の多孔質体によって構成されており、血液5を吸収して保持するようになっている。なお、液溜部18が載置部16から離れた領域に設けられていることから、例えば、腕部1が載置されて血液5の漏出の発生位置となる載置部16から液溜部18まで血液5を案内する案内溝を、シート部材12の上面に設けてもよい。
【0040】
シート部材12の液溜部18には、プローブ14の先端が位置決めされている。プローブ14は、プローブ本体22と、プローブ本体22から先端側へ延び出す照射用光路としての照射用ファイバー24及び受光用光路としての受光用ファイバー26とを、備えている。
【0041】
プローブ本体22は、図3にも示すように、発光素子28と受光素子30とを備えている。発光素子28は、例えば、発光ダイオード(LED)、電球、蛍光灯等、給電によって検出用光を発する光源であって、特に本実施形態では、白色LEDとされている。発光素子28の発光は、プローブ本体22に設けられた制御装置32によって制御されている。発光素子28の発光は、連続的に検出用光を発する連続発光であってもよいし、断続的に検出用光を発する不連続発光であってもよい。受光素子30は、検出用光の受光レベルに基づいて電気を発生する光電素子とされており、例えば、フォトダイオード、CCD(charge coupled device)、イメージセンサ、カラーセンサ等とされている。
【0042】
発光素子28の先端側には、照射用ファイバー24が配されている。照射用ファイバー24は、発光素子28が発する検出用光を長さ方向で先端側へ導く光ファイバーであって、発光素子28から先端側へ向けて延びている。
【0043】
受光素子30の先端側には、受光用ファイバー26が配されている。受光用ファイバー26は、外部(先端側)から入射した検出用光の反射光等を長さ方向で受光素子30まで基端側へ導く光ファイバーであって、受光素子30から先端側へ向けて延びている。本実施形態では、図1に示すように、照射用ファイバー24と受光用ファイバー26が何れも先端側へ向けて直線的に延びており、相互に略平行に並んで配されている。照射用ファイバー24と受光用ファイバー26は、相互に近接して配されていることが望ましく、本実施形態では相互に接触状態で寄り添うように並んで配されている。
【0044】
プローブ本体22は、中空のハウジング34を備えている。ハウジング34は、略円形断面を有しており、内部空間に発光素子28と受光素子30と制御装置32とが収容されている。ハウジング34は、例えば硬質の樹脂によって形成されている。
【0045】
照射用ファイバー24と受光用ファイバー26は、基端部分がハウジング34に収容されていると共に、先端部分がハウジング34から先端側へ延び出している。なお、ハウジング34の先端側の壁部には、照射用ファイバー24と受光用ファイバー26が挿通される挿通孔が貫通状態で形成されている。
【0046】
制御装置32は、ハウジング34の外側に設けられた処理装置36に対して、配線37を通じて電気的に接続されている。処理装置36は、制御装置32と発光素子28に電源を供給する。処理装置36は、検出用光の受光によって受光素子30が発する電力を制御装置32から受信するようになっており、受信した電力の大きさに基づいて後述する血液5の有無の判定を実行する。なお、本実施形態の処理装置36は、プローブ14に配線37を介して外部接続されるコンピュータ等で構成されており、プローブ14とは別に設けられている。
【0047】
プローブ14は、図1図2に示すように、照射用ファイバー24と受光用ファイバー26の各先端が液溜部18に向けられている。本実施形態では、照射用ファイバー24と受光用ファイバー26が先端側へ向けて下傾しており、照射用ファイバー24と受光用ファイバー26の各先端が液溜部18に配された保液部材20の上面に重ね合わされている。これにより、発光素子28から発せられた検出用光が照射用ファイバー24の先端から液溜部18(保液部材20)に向けて照射されると共に、液溜部18(保液部材20)において反射した検出用光の反射光が受光用ファイバー26によって受光素子30まで導かれる。
【0048】
照射用ファイバー24と受光用ファイバー26の各先端部分は、位置決めシートとしての取付シート38によってシート部材12に対して位置決め保持されている。取付シート38は、可撓性を有する柔軟なシートであって、血液5が透過可能とされた液透過性(透液性)を有している。取付シート38は、血液5を吸収保持可能であるが、充分に薄肉とされていることから、血液5の吸収保持可能量が少なく、吸収保持可能量を超えた血液5が取付シート38を速やかに通過する。取付シート38は、好適には不透明とされており、照射用ファイバー24から照射される検出用光の透過と外部からの光の透過とが抑えられている。取付シート38は、例えば下面が粘着層で構成されており、照射用ファイバー24及び受光用ファイバー26の各先端部分とシート部材12の上面とに貼着されることで、それら照射用ファイバー24及び受光用ファイバー26をシート部材12(液溜部18)に対して位置決めする。取付シート38は、シート部材12の液溜部18の上方を覆っており、取付シート38とシート部材12との間に保液部材20が配されている。取付シート38によってシート部材12に対して位置決めされたプローブ14は、先端側へ向けて下傾しており、照射用ファイバー24と受光用ファイバー26の各先端が液溜部18(保液部材20)に向けられている。取付シート38は、照射用ファイバー24及び受光用ファイバー26の各先端部分とシート部材12の上面との何れからも剥がすことでき、取付シート38を剥がすことによって、プローブ14をシート部材12から取り外すことが可能とされている。
【0049】
プローブ14は、プローブ本体22のハウジング34がシート部材12の上面に当接していることによっても、シート部材12に対して位置決め保持されている。このように、プローブ14の先端部分である光ファイバー24,26の先端部分と、プローブ14の基端部分であるプローブ本体22とが、それぞれシート部材12に対して位置決めされていることにより、プローブ14がシート部材12に対して傾斜状態に保持されている。
【0050】
このような構造とされた液体検出装置10は、例えば、人工透析に際して、医療検知対象液体としての血液5が透析回路2の患者に対する穿刺部位から漏れ出した場合に、当該漏出した血液5を検出することができる。即ち、図1図4に示すように、液体検出装置10を構成するシート部材12の載置部16には、患者の腕部1が載置される。本実施形態では、載置部16上の腕部1の側方に、シート部材12の液溜部18が位置しており、液溜部18に対して腕部1と反対側にプローブ14が配されている。なお、図4において血液5は薄墨で着色されて示されている。
【0051】
また、腕部1には、透析回路2の患者側の末端である採血口3と返血口4が穿刺されている。採血口3と返血口4は、液溜部18と近接するように、腕部1の長さ方向(図1中の左右方向)での位置が設定されている。
【0052】
シート部材12は、腕部1に対して位置決めするための位置決め部を備えていてもよい。位置決め部は、例えば、シート部材12の載置部16の上面を構成する粘着層とすることができて、載置部16が腕部1に貼着されることにより、シート部材12が腕部1に対して位置決めされる。また、例えば、腕部1に巻き付けられるバンドをシート部材12の上側に設けて、腕部1に巻き付けられるバンドによって位置決め部を構成することもできる。また、例えば、シート部材12の上面に設けられた面ファスナが患者の被覆に対して係止されることにより、シート部材12が腕部1に対して位置決めされるようにしてもよい。
【0053】
図4に示すように、採血口3から漏れ出した血液5は、シート部材12上を流れて、液溜部18へ導かれる。液溜部18における血液5の流入側(載置部16側)は、取付シート38がシート部材12の上面に貼着されているが、血液5は、透液性の取付シート38を透過し、取付シート38で覆われた液溜部18に達して、液溜部18に配された保液部材20に吸収保持される。このように、取付シート38が透液性を有していることによって、取付シート38とシート部材12との重ね合わせ面間に血液5の通路を特別に形成する必要がなく、取付シート38をシート部材12上に簡単に設けることができる。
【0054】
そして、発光素子28から発せられた検出用光が、照射用ファイバー24の先端から液溜部18へ向けて照射される。液溜部18に配された保液部材20に検出用光が反射して、検出用光の反射光が受光用ファイバー26を通じて受光素子30に伝達されると、受光素子30は、光電効果によって当該反射光の受光レベルに応じた大きさの起電力を生じる。図1に示すように保液部材20が血液(5)を吸収していない場合と、図4に示すように、保液部材20が採血口3から漏出した血液5を吸収している場合とでは、検出用光の反射率が相互に異なることから、受光素子30における検出用光の反射光の受光レベルが相互に異なる。そこで、処理装置36は、受光素子30が出力した起電力の大きさ等に基づいて、保液部材20が血液5を吸収しているか否か、即ち血液5の漏出の有無を判定する。従って、受光素子30の受光レベルを処理装置36によって連続的に或いは断続的に演算処理することにより、図4に示すような血液5の漏出を光学的に検出することができる。
【0055】
医療用の液体検出装置10は、検出用光がシート部材12の上側に配されたプローブ14から照射されることから、検出用光がシート部材12を透過することなく、液溜部18に対して斜め上方から直接に照射される。従って、検出用光が下方からシート部材12を透過するように照射される場合に比して、検出用光が液溜部18に到達するまでに減衰され難く、比較的に低出力の検出用光によって血液5の有無を精度よく検出することができると共に、装置構造の簡略化や検出精度の向上等が実現され得る。
【0056】
また、シート部材12の材質や厚さ寸法は必ずしも検出用光が透過するものに限定されず、シート部材12の材質や厚さの選択自由度を大きく得ることができる。具体的には、例えば、光を透過させない材料でシート部材12を形成したり、シート部材12の下方に液不透過性シートを追加で敷設したりすることも可能となるし、シート部材12を厚肉の板状としてシート部材12の形状安定性を高めること等も可能となって、シート部材12をより大きな自由度で設計することができる。
【0057】
プローブ14がシート部材12の上側に配されることから、プローブ14の配設領域として、シート部材12の上側に広がる広い自由空間を活用することができる。また、シート部材12の下側にはプローブ14の配設領域を確保する必要がないことから、シート部材12の下方に他の部材等を設置することも可能となって、例えば、シート部材12の下方に液体不透過性のシートを追加で配して血液5の漏れを防いだり、シート部材12をベッド等の支持台に敷いて配設すること等も可能になる。また、プローブ14がシート部材12の上側に配されることから、シート部材12の上側に配されたプローブ14の先端を液溜部18に対して目視で位置合わせしたり確認したりすることが容易であり、精度よく位置決めすることができて、血液5の検出精度の向上が図られる。
【0058】
また、プローブ14をシート部材12の下方に設置する場合には、設置スペースの確保が難しく、腕部1の重量がかかることから耐荷重性能を確保して設置することも難しいが、プローブ14がシート部材12上に配されることにより、シート部材12上の広い自由空間を利用し易く、腕部1の重量がプローブ14に直接に作用するのを防ぐこともできる。
【0059】
シート部材12上に配されたプローブ14は、取付シート38でシート部材12に固定されることによって、液溜部18に対して位置決めされている。これにより、検出用光を液溜部18へ向けて適切な方向へ照射することができて、検出精度の向上と安定化が図られる。しかも、取付シート38が液溜部18を覆うように設けられることにより、プローブ14が液溜部18に近い位置でより精度よく位置決めされる。
【0060】
プローブ14とシート部材12は、取付シート38で相互に固定されていることから、取付シート38を剥がすことによって、別々に独立させることができる。それゆえ、患者の腕部1や血液5に直接に接触するシート部材12を単回使用のディスポーザブルタイプとして、頻回使用による感染症等のリスクを避けながら、比較的に高価なプローブ14を頻回使用することによって、使用コストの低減を図ることができる。また、取付シート38によるプローブ14のシート部材12への取付位置は、載置部16から側方へ離れており、採血口3から下方へも離れていることから、取付シート38の貼着時等に穿刺部位に力が作用し難く、患者が痛みを感じるのを回避することができて、プローブ14とシート部材12の固定作業をストレスなく容易に行うことができる。
【0061】
液溜部18上に配置された照射用ファイバー24の先端を覆う取付シート38が、検出用光の透過を制限する不透明な部材とされていることにより、検出用光が外部へ逃げ難く、検出用光の血液5に対する透過光や反射光が受光素子30へ効率的に導かれる。これにより、受光レベルに基づく血液5の検出精度の向上が図られて、血液5を精度よく且つ安定して検出することができる。また、液溜部18が不透明な取付シート38で覆われていることによって、検出用光以外の周囲の光が受光用ファイバー26に入り難く、検出用光以外の光の排除による検出精度の向上も期待できる。
【0062】
なお、血液5の漏出が液体検出装置10によって検出された場合に、検出を報知するための報知装置が設けられていてもよい。報知装置は、例えば、警告音の発音、警告灯の発光、報知メールの送信、ナースコール等、1つの報知手段又は複数の報知手段の組み合わせによって、血液5の検出を周囲の人や医療関係者に報知する。
【0063】
図5には、本発明の第2実施形態としての医療用の液体検出装置40が示されている。液体検出装置40は、プローブ42を備えている。以下の説明において、第1実施形態と実質的に同一の部材及び部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
【0064】
プローブ42は、照射用光路としての照射用ファイバー44と、受光用光路としての受光用ファイバー46とを、備えている。
【0065】
照射用ファイバー44は、受光用ファイバー46と並んでプローブ本体22のハウジング34から先端側へ向けて延び出している。照射用ファイバー44の先端部分は、受光用ファイバー46と反対側へ向けて延び出していると共に、略半円弧状に湾曲して折り返す湾曲部48を有しており、先端が受光用ファイバー46側へ向けられている。
【0066】
受光用ファイバー46は、照射用ファイバー44と並んでプローブ本体22のハウジング34から先端側へ向けて延び出している。受光用ファイバー46の先端部分は、照射用ファイバー44と反対側へ向けて延び出していると共に、略半円弧状に湾曲して折り返す湾曲部50を有しており、先端が照射用ファイバー44側へ向けられている。
【0067】
照射用ファイバー44の先端と受光用ファイバー46の先端は、相互に所定の距離を隔てて対向している。これにより、照射用ファイバー44の先端から照射される検出用光が、受光用ファイバー46を通じてプローブ本体22の図示しない受光素子に受光される。
【0068】
照射用ファイバー44の先端と受光用ファイバー46の先端は、液溜部18に位置しており、液溜部18に配された保液部材20がそれら光ファイバー44,46の先端間に位置している。これにより、検出用光は、照射用ファイバー44の先端から保液部材20に向けて照射されて、保液部材20を透過した透過光が受光用ファイバー46を通じて受光素子に照射される。
【0069】
保液部材20が血液を保持していない状態と、保液部材20が血液を保持している状態とにおいて、保液部材20を透過して照射用ファイバー44から受光用ファイバー46へ向かう検出用光の透過率が変化することから、受光素子における受光レベルが血液の有無によって変化する。それゆえ、受光素子の受光レベルに基づいて、保液部材20が血液を吸収保持しているか否か、換言すれば、液溜部18に血液が存在するか否かを判定することができて、血液の漏出を受光素子の受光レベルに基づいて検出することができる。
【0070】
このように、受光素子が受ける光は、検出用光の反射光に限定されず、検出用光の透過光であってもよい。即ち、本発明に係る医療用の液体検出装置による液体検出は、第1実施形態に示した液溜部18に血液が溜まることによる検出用光の反射率の変化に基づいた検出に限定されず、本実施形態に示すような液溜部18に血液が溜まることによる検出用光の透過率の変化に基づいた検出も可能である。
【0071】
図6には、本発明の第3実施形態としての医療用の液体検出装置60が示されている。液体検出装置60は、シート部材62を備えている。なお、図6において、血液5は、図4と同様に薄墨で着色されている。
【0072】
シート部材62は、血液5を溜める液溜部64が、腕部1が載置される載置部16に位置して設けられている。液溜部64は、可撓性を有するシート部材62の載置部16が載置された腕部1の重さで凹状に変形することで構成されており、上方に向かって開口する凹状の形態とされている。シート部材62は、載置部16が腕部1の表面に沿った凹状の形態となることで腕部1に対して位置決めされており、位置決め部が凹形状の載置部16によって構成されている。
【0073】
シート部材62は、載置部16(液溜部64)において腕部1の重さによる凹状の撓み変形を許容するために、柔軟に変形可能とされた支持面上に敷設されており、例えば、ベッドに敷かれた布団やクッションの上に配設される。検出用光を照射するプローブ14がシート部材62の上側に配されて、検出用光が液溜部64に向けて上側から直接に照射されることから、シート部材62の下側にプローブ14の配設スペースを設ける必要がなく、シート部材62の全体を布団やクッション等で構成された支持面に重ねることができる。
【0074】
また、ベッドに敷かれた布団やクッション等の上にシート部材62を配する場合に、血液5がシート部材62を透過すると、布団やクッション等が血液5で汚れてしまうことから、シート部材62が液不透過性とされている。また、シート部材62の下方に液不透過性シートを敷設する等して、血液5の布団やクッション等への付着をより効果的に阻止することもできる。このように、シート部材62自体を液不透過性の材質としたり、シート部材62の下方に液不透過性シートを追加で敷設したとしても、血液5を検出するプローブ14がシート部材62の上側に配されて、検出用光が液溜部64に上側から直接に照射されることから、血液5の検出性能等への影響が防止される。
【0075】
液溜部64には、保液部材66が配されている。保液部材66は、腕部1の下方に敷かれた状態で配されて、腕部1と直接に接することから、肌触りの良好な柔らかい材質であることが望ましく、例えば不織布によって構成される。保液部材66は、腕部1の幅方向両外側へ延び出す大きさとされていることが望ましく、それによって血液5が腕部1に対して何れの側方へ流れたとしても保液部材66によって吸収保持される。なお、保液部材66は、腕部1の重さが作用していない初期形状において、上面が平坦面であってもよいが、例えば、上面に腕部1に沿う湾曲内面の溝状部を設けることにより、腕部1の載置位置を容易に把握可能としたり、腕部1とシート部材62の位置決め作用をより効果的に得ることもできる。
【0076】
プローブ14は、腕部1の側方に配されており、照射用ファイバー24と受光用ファイバー26の各先端が液溜部64(保液部材66)に向けられて、照射用ファイバー24から液溜部64(保液部材66)へ向けて検出用光が照射されると共に、保液部材66に反射された検出用光の反射光が受光用ファイバー26に受光される。
【0077】
このような本実施形態の医療用の液体検出装置60は、保液部材66に検出用光が照射され、保液部材66に反射された検出用光が受光用ファイバー26を通じてプローブ本体22の図示しない受光素子に達することで、液溜部64における血液5の有無、換言すれば穿刺部位からの血液5の漏出の有無が、第1実施形態と同様に受光素子における受光レベルの変化に基づいて検出される。
【0078】
例えば、採血口3の抜け等によって穿刺部位から血液5が漏れると、腕部1の表面に沿って流れ落ちた血液5が、腕部1の下方に位置する液溜部64へ導かれる。このように、液溜部64が載置部16に位置していることで、腕部1から漏れ出した血液5をより確実に液溜部64へ導くことができる。
【0079】
採血口3の腕部1への穿刺部位は、腕部1の上部とされており、プローブ14がシート部材62の上面に重ね合わされて配されていることから、液溜部64が載置部16に位置していても、プローブ14が採血口3の穿刺部位から十分に離れている。これにより、プローブ14をシート部材62に対して位置決めする際に、採血口3へのプローブ14の干渉による患者の苦痛の回避や、プローブ14をシート部材62に位置決めする作業の容易化等が図られる。
【0080】
液溜部64は腕部1の重さによって凹状となっていることから、流れ込んだ血液5が液溜部64から側方へ流出し難く、血液5が液溜部64に効率的に溜まる。更に、液溜部64には、血液5を吸収して保持する保液部材66が配されていることから、血液5がより効率的に液溜部64に保持される。このように、血液5が液溜部64に効率的に貯留されることによって、血液5の漏出をより正確に検出することができる。
【0081】
液溜部64が載置部16に位置していることから、血液5が保液部材66で吸収されることなく液溜部64に溜まると、患者が腕部1を動かした場合に血液5が液溜部64から零れ出したり、飛散するおそれがある。本実施形態では、液溜部64に保液部材66が配されており、血液5が保液部材66によって吸収保持された状態で液溜部64に溜まることから、患者が腕部1を多少動かしたとしても、血液5の液溜部64からの零れ出しや飛散が防止される。それゆえ、患者に静止状態を過度に強いることがなく、例えば長時間の人工透析に用いられる場合でも患者に苦痛を与え難い。
【0082】
なお、本実施形態のシート部材62と第2実施形態のプローブ42とを組み合わせて採用することもできる。
【0083】
図7には、本発明の第4実施形態としての医療用の液体検出装置70が示されている。液体検出装置70は、光学式検出部を構成する受光用ファイバー26と図示しない照射用ファイバー(24)がシート部材12の上面に対して略平行に延びていると共に、受光用ファイバー26と照射用ファイバー(24)の各先端が保液部材72に向けて配されている。
【0084】
保液部材72は、例えば不織布や樹脂製のスポンジ等で形成されて、血液(5)を吸収保持可能とされている。使用状態で光ファイバー(24)からの光を受ける部分における保液部材72の上下方向の厚さ寸法は、光ファイバー(24),26の上下外寸以上とされており、好適には、光ファイバー(24),26の上下外寸以上、且つ光ファイバー(24),26の上下外寸の5倍以下とされている。具体的には、保液部材72の上下方向の厚さ寸法は、0.8mm~4.0mmの範囲内とされていることが望ましい。
【0085】
保液部材72は、側面に開口する位置決め凹部としての切欠き74を備えている。切欠き74は、保液部材72を上下に貫通して設けられており、側面に開口しながら上下方向に直線的に延びる凹溝状とされている。そして、受光用ファイバー26と照射用ファイバー(24)の各先端部が、保液部材72の切欠き74に側方から挿し入れられており、それらファイバー(24),26の先端面が切欠き74の奥方において保液部材72に向けられている。切欠き74の幅寸法(図7における紙面直交方向の内寸)は、光ファイバー(24),26の同方向の外寸よりも僅かに小さくされており、切欠き74によって光ファイバー(24),26の先端部分が挟み込まれて位置決め状態で保持されている。
【0086】
保液部材72の上面は、取付部材としての取付シート38によって覆われている。取付シート38は、保液部材72の上面とシート部材12の上面とにそれぞれ貼着されており、保液部材72をシート部材12の液溜部18に位置決めしている。
【0087】
取付シート38は、保液部材72の切欠き74の上開口を覆っており、これによって、受光用ファイバー26と照射用ファイバー(24)とが、切欠き74の上開口を通じて保液部材72から上方へ離脱するのが防止されている。また、切欠き74の下開口は、シート部材12によって覆われている。従って、受光用ファイバー26と照射用ファイバー(24)は、取付シート38とシート部材12の間に保持されており、取付シート38とシート部材12によって液溜部18に対して上下方向で位置決めされている。なお、取付シート38は、受光用ファイバー26と照射用ファイバー(24)に対して、直接貼り付けられていてもよいし、上方へ離れた位置に配されて上方への移動量を制限するようにしてもよい。
【0088】
このような本実施形態に従う構造とされた液体検出装置70によっても、前記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、受光用ファイバー26と照射用ファイバー(24)を斜めに保持する必要がなく、それら光ファイバー(24),26の位置決めやシート部材12に対する保持などが容易になる。
【0089】
保液部材72と受光用ファイバー26及び照射用ファイバー(24)とが取付シート38によって相互に位置決めされていることから、検出用光が照射用ファイバー(24)から保液部材72へ向けてより確実に照射されると共に、保液部材72によって反射した検出用光が受光用ファイバー26によってより確実に受光される。また、受光用ファイバー26及び照射用ファイバー(24)の各先端部分は、保液部材72の切欠き74に挿し入れられており、切欠き74の壁内面で挟持されていることから、保液部材72に対する検出用光の照射方向及び受光方向がより安定して、医療検知対象液体の安定した検出が図られる。保液部材72が受光用ファイバー26及び照射用ファイバー(24)を挟持可能な程度に切欠き74が幅狭とされていることによって、検出用光の外部への漏れが抑えられると共に、検出用光以外の外部からの光の入射が低減されて、検出精度の向上が図られ得る。
【0090】
また、保液部材72の上下厚さ寸法は、受光用ファイバー26及び照射用ファイバー(24)の上下外寸よりも大きくされており、受光用ファイバー26及び照射用ファイバー(24)の先端部分が保液部材72から上下にはみ出すことなく切欠き74に収容されている。それゆえ、検出用光が保液部材72により効率的に照射されて、検出用光の受光レベルによる液体検知の精度向上が図られる。
【0091】
本実施形態の位置決め凹部は、側方に開口しながら上下方向の全長に亘って延びる溝状の切欠き74とされていることから、例えば側方に開口するスポット状等に比して、製造が容易になる。また、保液部材72をシート部材12に固定する取付シート38が保液部材72の上面を覆って設けられることにより、取付シート38を保液部材72と光ファイバー(24),26の位置決めに利用することもできる。
【0092】
なお、受光用ファイバー26と照射用ファイバー(24)は、取付シート38によって、保液部材72に対して固定状態で取り付けられていてもよい。具体的には、例えば、取付シート38が粘着層を有する粘着テープとされており、取付シート38の粘着層が保液部材72と受光用ファイバー26及び照射用ファイバー(24)に跨って貼着されることにより、保液部材72と受光用ファイバー26及び照射用ファイバー(24)とが取付シート38によって相互に固定される。
【0093】
このように、受光用ファイバー26と照射用ファイバー(24)が取付シート38によって保液部材72に固定されている場合に、受光用ファイバー26と照射用ファイバー(24)をプローブ本体22に対して着脱可能とすることも可能であり、例えば、受光用ファイバー26と照射用ファイバー(24)を保液部材72及び取付シート38と共に使い捨てとすることもできる。受光用ファイバー26と照射用ファイバー(24)が取付シート38によって保液部材72に固定されたものを交換用として提供することもできる。更に、保液部材72に取付シート38を貼着した検出用具76を提供することも可能であり、その場合には、別に準備されたプローブ14の受光用ファイバー26と照射用ファイバー(24)を保液部材72の切欠き74に差し入れて使用する。
【0094】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、保液部材は必須ではなく、凹状の液溜部に血液が吸収保持されることなく溜まるようにしてもよい。保液部材は、不織布によるものに限定されず、例えばスポンジや吸水ポリマー等で形成されていてもよい。また、例えば保液部材を構成する繊維体や発泡体などの構造体の中に、照射用の発光部と受光用の受光部との少なくとも一方を差し入れて配置することも可能であり、それによって検出精度や安定性の向上などを図ることも可能である。
【0095】
前記実施形態では、発光素子が発する検出用光が照射用光路によって導かれて液溜部へ向けて照射される例を示したが、例えば、発光素子が発する検出用光が照射用光路を通ることなく液溜部へ照射されるようにしてもよい。また、検出用光の反射光や透過光が受光用光路を介することなく直接に受光素子へ照射されるようにしてもよい。要するに、光ファイバーによる照射用光路と受光用光路は、必須ではない。
【0096】
照射用光路と受光用光路は、必ずしも独立した別々の光ファイバーで構成される必要はなく、例えば、1つの光ファイバー内に複数の光路を設けて、それら光路によって1つの光ファイバー内に照射用光路と受光用光路とを設けることもできる。
【0097】
前記実施形態では、1つのプローブ14が、検出用光の照射部分である発光素子28及び照射用ファイバー24と、検出用光の受光部分である受光素子30及び受光用ファイバー26とを一体的に備えていたが、例えば、光学式検出部において検出用光を照射する照射部分と検出用光を受光する受光部分は相互に独立していてもよい。これによれば、照射部分と受光部分の配置の自由度が大きくなって、例えば、シート部材に載置される人体の部位に応じて照射部分と受光部分の配置を適切に設定し易くなる。
【0098】
例えば、赤色を強く反射する血液を検出する場合に、液溜部に向けて照射された検出用光の反射光における赤色スペクトルの受光レベルの変化に基づいて、血液を検出することもできる。要するに、受光レベルに基づく液体検出とは、明るさの変化による液体検出に限定されない。
【0099】
医療検知対象液体は、血液に限定されず、例えば、薬液や輸液などであってもよい。また、医療検知対象液体は、血液のような有色の液体に限定されず、無色透明の液体であってもよい。また、液体検出装置は、必ずしも人体への穿刺部位からの液漏れを検出する場合にのみ用いられるものではなく、例えば、透析回路を構成するチューブの継ぎ目からの液漏れを検出する場合などにも用いることができる。
【0100】
光学式検出部をシート部材の液溜部に対して位置決めする位置決めシートは、前記実施形態に示すような医療検知対象液体が通過可能とされた透液性を有する部材であることが望ましいが、位置決めシートは医療用の検知対象液体の通過を阻止する液不透過性の部材とされていてもよい。この場合には、例えば、シート部材と位置決めシートの重ね合わせ部分を全体にわたって固着するのではなく部分的に固着することにより、固着されていない部分においてシート部材と位置決めシートの重ね合わせ面間を医療検知対象液体が通過可能とするなど、シート部材と位置決めシートの重ね合わせ面間に医療検知対象液体の通路を設けることで、医療検知対象液体が液溜部へ達するようにできる。
【0101】
位置決めシートは、液溜部を全体にわたって覆うことが望ましいが、例えば、液溜部を部分的に覆うように設けられていてもよい。
【0102】
光学式検出部は、前記実施形態のプローブ14のようにシート部材とは独立して着脱可能に設けられていることが望ましいが、例えば、シート部材に一体的に設けられていてもよい。これによれば、光学式検出部がシート部材に対して予め適切な位置に位置決めされていることから、位置決め作業が不要になると共に、より高精度な位置決めによる検出性能の向上も図られ得る。
【0103】
前記実施形態では、照射用光路から照射された検出用光が液溜部へ直接的に照射される態様を例示したが、例えば、血液との接触が想定される照射用光路(光ファイバー)の先端部分を透明のカバーで覆うなどして、血液が照射用光路に直接接触しないようにしてもよく、この場合には、透明カバーを透過した検出用光の透過光が液溜部へ照射される。これによれば、透明カバーを交換することによって、光学式検出部を簡単に頻回使用することができる。
【0104】
シート部材に載置される人体は、腕部に限定されず、人体のどの部位であってもよい。具体的には、例えば、シート部材に載置される人体は、脚部や胴部、更には人体全体などであってもよい。
【0105】
前記第4実施形態では、保液部材72に上下方向で貫通して側方へ開口する溝状の切欠き74が位置決め凹部の例として示されていたが、位置決め凹部は、例えば、側方へ向けて開口するスポット状の凹部であってもよい。位置決め凹部をスポット状の凹部とすることにより、外部への検出用光の漏れや外部からの入光が低減されて、液体検出精度の向上が図られる。
【0106】
光ファイバー24,26は、粘着層が剥離フィルムで覆われた粘着シート(取付シート)によって、シート部材12に固定することもでき、その場合には、シート部材12に貼り付けられる粘着層を覆う剥離フィルムと、光ファイバー24,26に貼り付けられる粘着層を覆う剥離フィルムとを、順に剥がして貼着することにより、光ファイバー24,26のシート部材12への固定作業が容易になり得る。即ち、先ず、剥離フィルムを剥がしてシート部材12に貼り付けられる粘着層を露出させて、粘着シートをシート部材12に貼り付けた後、別の剥離フィルムを剥がして光ファイバー24,26に貼り付けられる粘着層を露出させて、光ファイバー24,26を粘着シートに貼り付けるようにもできる。これによれば、粘着シートを光ファイバー24,26とシート部材12の両方に同時に貼り付ける場合よりも、光ファイバー24,26のシート部材12に対する位置決め作業が容易になる。
【0107】
前記実施形態では、保液部材と光ファイバーとを位置決めする取付部材としての取付シート38を例示したが、例えば、光ファイバーを挟んで保持する挟持部材を設けて、当該挟持部材によって保液部材を保持すれば、挟持部材によって取付部材を構成することもできる。また、保液部材に一体的に設けられた取付部によって、保液部材と光ファイバーとを位置決めすることもできる。具体的には、例えば、保液部材を光ファイバーに引っ掛けて取り付けるためのフックを取付部として保液部材に設けてもよい。また、保液部材に形成した切欠状部に対してより太い光ファイバーを差し入れることで保液部材の弾性復元力で光ファイバーを保持させてもよい。
【符号の説明】
【0108】
10 医療用の液体検出装置(第1実施形態)
12 シート部材
14 プローブ(光学式検出部)
16 載置部
18 液溜部
20 保液部材
22 プローブ本体
24 照射用ファイバー(照射用光路)
26 受光用ファイバー(受光用光路)
28 発光素子
30 受光素子
32 制御装置
34 ハウジング
36 処理装置
37 配線
38 取付シート(位置決めシート、取付部材)
40 医療用の液体検出装置(第2実施形態)
42 プローブ(光学式検出部)
44 照射用ファイバー(照射用光路)
46 受光用ファイバー(受光用光路)
48 湾曲部
50 湾曲部
60 医療用の液体検出装置(第3実施形態)
62 シート部材
64 液溜部
66 保液部材
70 医療用の液体検出装置(第4実施形態)
72 保液部材
74 切欠き(位置決め凹部)
76 検出用具
1 腕部(人体)
2 透析回路
3 採血口
4 返血口
5 血液(医療検知対象液体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7