(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031087
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】走行補助装置及び走行補助制御方法
(51)【国際特許分類】
B61B 13/00 20060101AFI20240229BHJP
A61G 7/08 20060101ALI20240229BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B61B13/00 A
A61G7/08
B60L15/20 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134405
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】潘 思毅
(72)【発明者】
【氏名】勅使河原 誠一
【テーマコード(参考)】
3D101
4C040
5H125
【Fターム(参考)】
3D101BB17
3D101BB34
3D101BB43
4C040AA28
4C040GG17
5H125AA17
5H125AB01
5H125AC12
5H125BA00
5H125CA01
5H125EE41
5H125EE52
5H125EE57
5H125EE63
(57)【要約】
【課題】既存の走行器具と接続可能かつ離脱可能であって、専用の操作部を必要とせずに走行器具の走行を補助する。
【解決手段】走行補助装置は、装置本体に支持されて装置本体を走行させる駆動輪20と、走行速度及び角速度の情報を取得する速度取得部20aと、本体部及び本体部に支持される複数の従動輪とを備える走行器具に接続して走行器具からかかる荷重を受ける接続部と、荷重を検知する荷重センサ(センサ120)と、制御部22と、を備え、制御部22は、駆動輪20に駆動力を付与して走行し始めた時の荷重に基づいて従動輪の静止摩擦力を算出し、荷重を駆動力とみなし、走行速度及び角速度と駆動力と静止摩擦力とに基づいて走行器具にかかる外力の推定値を算出し、外力がゼロとなるような駆動力を算出し、当該駆動力で駆動輪が走行するよう制御する。
【選択図】
図21
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に支持されて前記装置本体を走行させる駆動輪と、
走行速度及び角速度の情報を取得する速度取得部と、
本体部と前記本体部に支持される複数の従動輪とを備える走行器具に接続して前記走行器具からかかる荷重を受ける接続部と、
前記接続部にかかる前記荷重を検知する荷重センサと、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記駆動輪に駆動力を付与して走行し始めた時の前記荷重に基づいて前記従動輪の静止摩擦力を算出し、
前記荷重を駆動力とみなし、前記走行速度及び前記角速度と前記駆動力と前記静止摩擦力とに基づいて前記走行器具にかかる外力の推定値を算出し、
前記外力がゼロとなるような駆動力を算出し、当該駆動力で前記駆動輪が走行するよう制御する、
走行補助装置。
【請求項2】
前記制御部は、
推定した前記外力が走行方向と反対の方向に作用していると判断すると、前記走行速度及び前記角速度に所定の粘性抵抗係数を乗算することで算出されるブレーキ力を駆動力とし、当該駆動力で前記駆動輪が走行するよう制御する、
請求項1に記載の走行補助装置。
【請求項3】
前記接続部は、平面視形状が正方形状である基部を含み、
前記荷重センサは、前記接続部の基部を収容する溝部を有するセンサ取付部材に取り付けられる複数の荷重センサを含み、
複数の前記荷重センサは、
軸方向に交差する平面のうち第1方向に、前記基部を挟んで配置され、前記基部に接して前記基部の変位に応じた第1測定値を測定する第1センサ群と、
前記平面のうち前記第1方向に交差する第2方向に、前記基部を挟んで配置され、前記基部に接して前記基部の変位に応じた第2測定値を測定する第2センサ群と、
前記基部に接して前記基部の前記軸方向に沿う第3方向の変位に応じた第3測定値を測定する第3センサ群と、
を含む、
請求項1又は2に記載の走行補助装置。
【請求項4】
前記第1センサ群は、前記基部の前記第1方向に対向する2つの側面に対して2つずつ設けられ、各々の前記第1センサ群が前記第1測定値を測定することで2つの前記第1測定値を測定し、
前記第2センサ群は、前記基部の前記第2方向に対向する2つの側面に対して2つずつ設けられ、各々の前記第2センサ群が前記第2測定値を測定することで2つの前記第2測定値を測定する、
請求項3に記載の走行補助装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第1測定値と、前記第2測定値と、前記第3測定値と、に基づいて、前記接続部にかかる3軸の荷重を算出し、
前記第1測定値と、前記第2測定値と、前記接続部の所定の原点から前記基部と前記荷重センサとの接点までの距離と、前記接続部の前記第3方向回りの回転角度と、に基づいて、前記接続部にかかる前記第3方向回りのモーメントを算出し、
算出した3軸の荷重のうち、前記第1方向及び前記第2方向にかかる荷重と、前記第3方向回りのモーメントとを、前記走行補助装置の駆動力とみなす、
請求項4に記載の走行補助装置。
【請求項6】
前記荷重センサは、
四角環形状の板体である外枠と、
前記外枠の内周縁の一辺に連結して前記外枠の内周側に設けられる四角形状の板体である舌片と、
前記舌片の一方の面から突出して前記基部に接する突起部と、
を有し、
前記基部の同一の側面を支持する2つの荷重センサは、互いに前記突起部の前記第3方向の位置がずれるように前記センサ取付部材に取り付けられる、
請求項4に記載の走行補助装置。
【請求項7】
前記接続部は、
平面視形状が正方形状である基部と前記基部の上面から突出して軸方向に延びる接続ピン部とを含む荷重受け部材と、
前記走行器具に取り付けられ、前記接続ピン部が挿入可能な嵌合孔を有する取り付け部材と、
を備える、
請求項1又は2に記載の走行補助装置。
【請求項8】
前記接続ピン部は、
前記軸方向に視た形状が真円以外の形状を有する第1柱部を上端部に含み、
前記嵌合孔は、第1孔部、第2孔部、第3孔部が順に連通し、
前記第1孔部は、前記第2孔部に向かって徐々に小さくなるようなテーパ状の内壁を有し、
前記第2孔部は、前記第3孔部に向かって徐々に小さくなり、かつ前記第1孔部のテーパ比より小さいテーパ比のテーパ状の内壁を有し、
前記第3孔部は、前記接続ピン部の前記第1柱部が嵌合可能である、
請求項7に記載の走行補助装置。
【請求項9】
前記装置本体に対して一方向に移動可能に設けられる摺動部材と、
前記装置本体と前記荷重受け部材とを接続し、かつ前記摺動部材の移動に伴って前記荷重受け部材を前記装置本体に対して昇降させる昇降機構と、
前記摺動部材を前記装置本体に対して前記一方向に移動させる直動アクチュエータと、
をさらに備え、
前記荷重受け部材は、前記本体部の下面側に固定した前記取り付け部材の下方から上昇することで、前記取り付け部材を介して前記走行器具を保持可能、かつ下降することで前記取り付け部材及び前記走行器具から離脱可能である、
請求項7に記載の走行補助装置。
【請求項10】
前記走行器具の前記従動輪は、自在輪である、
請求項1又は2に記載の走行補助装置。
【請求項11】
装置本体に支持されて前記装置本体を走行させる駆動輪と、
走行速度及び角速度の情報を取得する速度取得部と、
本体部と前記本体部に支持される複数の従動輪とを備える走行器具に接続して前記走行器具からかかる荷重を受ける接続部と、
前記接続部にかかる前記荷重を検知する荷重センサと、
を備える走行補助装置において前記走行器具の走行を補助する走行補助制御方法であって、
前記駆動輪に駆動力を付与して走行し始めた時の前記荷重に基づいて前記従動輪の静止摩擦力を算出するキャリブレーションプロセスと、
前記荷重を駆動力とみなし、前記走行速度及び前記角速度と前記駆動力と前記静止摩擦力とに基づいて、前記走行器具にかかる外力の推定値を算出する推定プロセスと、
前記推定プロセスで算出された前記外力がゼロとなるような駆動力を算出し、当該駆動力で前記駆動輪が走行するよう制御する比例微分制御プロセスと、
を含み、
前記推定プロセスと前記比例微分制御プロセスとを繰り返し実行する、
走行補助制御方法。
【請求項12】
走行方向と反対の方向に外力が作用した場合に前記比例微分制御プロセスの代わりに実行され、前記走行速度及び前記角速度に所定の粘性抵抗係数を乗算することで算出されるブレーキ力を駆動力とし、当該駆動力で前記駆動輪が走行するよう制御するD制御プロセスをさらに含む、
請求項11に記載の走行補助制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行補助装置及び走行補助制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自在輪を有する台車、搬送用カート、移動ベッド、ストレッチャー等、搬送対象を載せ、操作者による手押し操作によって床面上を走行する走行器具の走行を補助する走行補助装置が知られている。走行補助装置は、操作者がかける力に応じて走行のための駆動力を付与することによって、操作者が走行器具を操作するための力を軽減させる。
【0003】
例えば、特許文献1には、手術台に設けられた専用の手動操作要素の操作に従って、手術台を全方向に移動させるフロアプラットフォームが開示されている。また、特許文献2には、ハンドル及びハンドルによって操作される駆動部が既存のストレッチャーに装着可能であるパワーアシスト付き搬送装置が開示されている。また、特許文献3には、ストレッチャーの下部に装着され、ストレッチャーに装着した操作盤によって、車輪が接地した時にストレッチャーの走行を補助して走行するよう操作されるユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2017-536150号公報
【特許文献2】特開2006-001426号公報
【特許文献3】特開2000-107230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2、3に開示された走行補助装置は、専用の操作部によって操作されるため、多様な搬送器具や、複数人で搬送器具を走行させる場合には適用できない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、既存の走行器具と接続可能かつ離脱可能であって、専用の操作部を必要とせずに走行器具の走行を補助することができる走行補助装置及び走行補助制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る走行補助装置は、装置本体に支持されて前記装置本体を走行させる駆動輪と、走行速度及び角速度の情報を取得する速度取得部と、本体部と前記本体部に支持される複数の従動輪とを備える走行器具に接続して前記走行器具からかかる荷重を受ける接続部と、前記接続部にかかる前記荷重を検知する荷重センサと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記駆動輪に駆動力を付与して走行し始めた時の前記荷重に基づいて前記従動輪の静止摩擦力を算出し、前記荷重を駆動力とみなし、前記走行速度及び前記角速度と前記駆動力と前記静止摩擦力とに基づいて前記走行器具にかかる外力の推定値を算出し、前記外力がゼロとなるような駆動力を算出し、当該駆動力で前記駆動輪が走行するよう制御する。
【0008】
これによれば、専用の操作部を必要とせずに、操作者が外力をかける方向に走行器具が走行するよう補助して、操作者の負担を軽減させることができる。専用の操作部がなくても、操作者が走行器具の任意の部位を手で掴んで直接操作することができるため、走行補助装置を操作するための特別な練習が不要であり、狭い空間や混雑した環境においても、走行器具の細やかな動きが実現可能である。また、走行補助装置は、接続部において、既存の走行器具と接続可能かつ離脱可能であり、多様な走行器具に適用可能である。また、搬送対象を載せた走行器具にかかる静止摩擦力を算出するので、静止摩擦力と走行器具単体の静止摩擦係数及び寸法とに基づいて、搬送対象を含む走行器具の質量及び慣性モーメントを算出できる。また、搬送対象を含む走行器具の質量及び慣性モーメントを前提として、走行器具を操作する操作者による外力を推定し、この外力がゼロになるように制御するので、都度重量の異なる搬送対象を載せる場合でも、これに対応した走行補助制御が可能である。
【0009】
本発明の一態様に係る走行補助装置において、前記制御部は、推定した前記外力が走行方向と反対の方向に作用していると判断すると、前記走行速度及び前記角速度に所定の粘性抵抗係数を乗算することで算出されるブレーキ力を駆動力とし、当該駆動力で前記駆動輪が走行するよう制御する。
【0010】
これによれば、走行速度及び角速度が小さい場合には振動を抑制するとともに、高速時にはブレーキ力を大きくすることができる。したがって、例えば、走行器具が障害物に接触しそうになった時等、搬送対象への負担を低減しつつ、即座に減速、停止が可能である。
【0011】
本発明の一態様に係る走行補助装置において、前記接続部は、平面視形状が正方形状である基部を含み、前記荷重センサは、前記接続部の基部を収容する溝部を有するセンサ取付部材に取り付けられる複数の荷重センサを含み、複数の前記荷重センサは、軸方向に交差する平面のうち第1方向に、前記基部を挟んで配置され、前記基部に接して前記基部の変位に応じた第1測定値を測定する第1センサ群と、前記平面のうち前記第1方向に交差する第2方向に、前記基部を挟んで配置され、前記基部に接して前記基部の変位に応じた第2測定値を測定する第2センサ群と、前記基部に接して前記基部の前記軸方向に沿う第3方向の変位に応じた第3測定値を測定する第3センサ群と、を含む。
【0012】
走行器具から荷重を受ける接続部は、センサ取付部材に取り付けられた複数のセンサを介して4側面及び底面が支持され、複数の荷重センサによって、接続部の第1方向、第2方向、及び第3方向の変位に応じた第1測定値、第2測定値、及び第3測定値が測定される。これにより、例えば、制御部22が、荷重センサが測定した各測定値に基づいて3軸の荷重を算出可能である。したがって、走行補助装置は、走行器具からかかる荷重を3軸に分離して算出するための各測定値を測定することができる。また、走行補助装置は、荷重センサが取り付けられるセンサ取付部材の材質が限定されない。
【0013】
本発明の一態様に係る走行補助装置において、前記第1センサ群は、前記基部の前記第1方向に対向する2つの側面に対して2つずつ設けられ、各々の前記第1センサ群が前記第1測定値を測定することで2つの前記第1測定値を測定し、前記第2センサ群は、前記基部の前記第2方向に対向する2つの側面に対して2つずつ設けられ、各々の前記第2センサ群が前記第2測定値を測定することで2つの前記第2測定値を測定する。
【0014】
走行補助装置は、接続部に対して第3方向回りの回転方向にモーメントがかかった場合、基部の対向する側面に配置された4つの荷重センサのうち、対角状に位置する2つの荷重センサが押圧される。したがって、基部の各々の側面に2つずつの荷重センサを配置することで、例えば、制御部が、荷重センサが測定した各測定値、荷重センサまでの距離、第3方向回りの回転角度に基づいて、第3方向回りのモーメントを算出することが可能である。すなわち、走行補助装置は、走行器具からかかる荷重を4軸に分離して算出するための各測定値を測定することができる。
【0015】
本発明の一態様に係る走行補助装置において、前記制御部は、前記第1測定値と、前記第2測定値と、前記第3測定値と、に基づいて、前記接続部にかかる3軸の荷重を算出し、前記第1測定値と、前記第2測定値と、前記接続部の所定の原点から前記基部と前記センサとの接点までの距離と、前記接続部の前記第3方向回りの回転角度と、に基づいて、前記接続部にかかる前記第3方向回りのモーメントを算出し、算出した3軸の荷重のうち、前記第1方向及び前記第2方向にかかる荷重と、前記第3方向回りのモーメントとを、前記走行補助装置の駆動力とみなす。
【0016】
走行補助装置は、走行器具と接続している状態において、走行器具からかかる荷重が、接続部にかかることで、走行器具からかかる荷重によって変位する接続部の変位に応じた第1測定値、第2測定値、及び第3測定値を測定する。走行補助装置は、各測定値に基づいて、制御部によって、3軸の荷重を算出可能である。また、走行補助装置は、接続部に対して第3方向回りの回転方向にモーメントがかかった場合、基部の対向する側面に配置された4つの荷重センサのうち、対角状に位置する2つの荷重センサが押圧される。したがって、基部の各々の側面に2つずつの荷重センサを配置することで、走行補助装置は、各測定値、荷重センサまでの距離、第3方向回りの回転角度に基づいて、制御部によって、第3方向回りのモーメントを算出可能である。これにより、走行補助装置は、第1方向、第2方向、及び第3方向にかかる荷重に加え、第3方向回りのモーメントを算出することができる。そして、第1方向及び第2方向にかかる荷重を並進駆動力、第3方向回りのモーメントを旋回駆動力とみなし、これに基づいて、走行器具を操作する操作者による外力の推定値を算出することができる。
【0017】
本発明の一態様に係る走行補助装置において、前記荷重センサは、四角環形状の板体である外枠と、前記外枠の内周縁の一辺に連結して前記外枠の内周側に設けられる四角形状の板体である舌片と、前記舌片の一方の面から突出して前記基部に接する突起部と、を有し、前記基部の同一の側面を支持する2つのセンサは、互いに前記突起部の前記第3方向の位置がずれるように前記センサ取付部材に取り付けられる。
【0018】
これにより、基部の側面を支持する箇所が第3方向にバラつきができるので、センサ取付部材に対する基部を含む接続部の意図しない回転を抑制することができる。
【0019】
本発明の一態様に係る走行補助装置において、前記接続部は、平面視形状が正方形状である基部と前記基部の上面から突出して軸方向に延びる接続ピン部とを含む荷重受け部材と、前記走行器具に取り付けられ、前記接続ピン部が挿入可能な嵌合孔を有する取り付け部材と、を備える。
【0020】
走行補助装置は、荷重受け部材が、接続ピン部を有し、走行器具に取り付けられる取り付け部材が、接続ピン部が挿入可能な嵌合孔を有するので、走行器具との接続及び分離が容易に可能である。
【0021】
本発明の一態様に係る走行補助装置において、前記接続ピン部は、前記軸方向に視た形状が真円以外の形状を有する第1柱部を上端部に含み、前記嵌合孔は、第1孔部、第2孔部、第3孔部が順に連通し、前記第1孔部は、前記第2孔部に向かって徐々に小さくなるようなテーパ状の内壁を有し、前記第2孔部は、前記第3孔部に向かって徐々に小さくなり、かつ前記第1孔部のテーパ比より小さいテーパ比のテーパ状の内壁を有し、前記第3孔部は、前記接続ピン部の前記第1柱部が嵌合可能である。
【0022】
これにより、走行補助装置の接続部は、荷重受け部材と取り付け部材とを位置決めする際に、第1孔部で軸方向に交差する平面の2軸方向の位置決めをし、第2孔部で軸方向回りの回転方向の位置決めをし、第3孔部での嵌合で軸方向の1軸方向の位置決めをすることによって、一組の嵌合孔と接続ピン部との組み合わせのみで、4軸の位置決めが可能である。また、荷重受け部材は、第1孔部において取り付け部材に対して第2孔部の方向に移動すると、第1柱部の上端縁の1つの角状部が第1孔部の内壁に接触して内壁に案内されることで径中心方向に移動する。また、荷重受け部材は、第2孔部において取り付け部材に対して第3孔部の方向に移動すると、第1柱部の長径の両端部に位置する角状部が第2孔部の内壁に接触しながら第2孔部の角状部に向かって案内されることで軸中心回りに回転移動する。すなわち、接続部は、接続ピン部と嵌合孔とを対向させた状態から、接続ピン部を嵌合孔に挿通するだけで、軸方向に交差する平面の2軸方向、軸方向回りの回転方向、軸方向の1軸方向に順次位置決めされるので、容易に4軸の位置決めが可能である。
【0023】
本発明の一態様に係る走行補助装置は、前記装置本体に対して一方向に移動可能に設けられる摺動部材と、前記装置本体と前前記荷重受け部材とを接続し、かつ前記摺動部材の移動に伴って前記荷重受け部材を前記装置本体に対して昇降させる昇降機構と、前記摺動部材を前記装置本体に対して前記一方向に移動させる直動アクチュエータと、を備え、前記荷重受け部材は、前記本体部の下面側に固定した前記取り付け部材の下方から上昇することで、前記取り付け部材を介して前記走行器具を保持可能、かつ下降することで前記取り付け部材及び前記走行器具から離脱可能である。
【0024】
これにより、走行補助装置では、走行補助装置が走行器具の下に潜り込んで、荷重受け部材が下方から走行器具に取り付けられた取り付け部材に接続するので、右左折や旋回、前進と後進との切り換え等が容易であり、安定的な走行が可能である。また、走行器具への接続前に走行器具の下方に潜り込む際は、荷重受け部材を下降させることにより、走行補助装置の全高を小さくできるので、低床の走行器具にも対応が可能である。また、荷重受け部材を下降させることにより走行器具に取り付けられた取り付け部材との接続が容易に解除できるので、予め複数の取り付け部材を各々複数の走行器具に取り付けておけば、複数の走行器具を次々に搬送可能である。
【0025】
本発明の一態様に係る走行補助装置において、前記走行器具の前記従動輪は、自在輪である。
【0026】
自在輪は、発進時において、自在輪の軸方向に垂直な水平方向に押された場合に最も操作者への負荷が少なく、軸方向に押された場合に最も負荷が大きい。走行補助装置は、走行器具の静止状態において、荷重がかけられた方向に自動的に加速して、走り出しにおける操作者への負荷を軽減させるため、自在輪の軸方向に荷重がかけられた場合でも、走行器具を容易に発進させることができる。
【0027】
本発明の一態様に係る走行補助制御方法は、装置本体に支持されて前記装置本体を走行させる駆動輪と、走行速度及び角速度の情報を取得する速度取得部と、本体部と前記本体部に支持される複数の従動輪とを備える走行器具に接続して前記走行器具からかかる荷重を受ける接続部と、前記接続部にかかる前記荷重を検知する荷重センサと、を備える走行補助装置において前記走行器具の走行を補助する走行補助制御方法であって、前記駆動輪に駆動力を付与して走行し始めた時の前記荷重に基づいて前記従動輪の静止摩擦力を算出するキャリブレーションプロセスと、前記荷重を駆動力とみなし、前記走行速度及び前記角速度と前記駆動力と前記静止摩擦力とに基づいて、前記走行器具にかかる外力の推定値を算出する推定プロセスと、前記推定プロセスで算出された前記外力がゼロとなるような駆動力を算出し、当該駆動力で前記駆動輪が走行するよう制御する比例微分制御プロセスと、を含み、前記推定プロセスと前記比例微分制御プロセスとを繰り返し実行する。
【0028】
これによれば、専用の操作部を必要とせずに、操作者が外力をかける方向に走行器具が走行するよう補助して、操作者の負担を軽減させることができる。専用の操作部がなくても、操作者が走行器具の任意の部位を手で掴んで直接操作することができるため、走行補助装置を操作するための特別な練習が不要であり、狭い空間や混雑した環境においても、走行器具の細やかな動きが実現可能である。また、走行補助装置は、接続部において、既存の走行器具と接続可能かつ離脱可能であり、多様な走行器具に適用可能である。また、キャリブレーションプロセスでは、搬送対象を載せた走行器具にかかる静止摩擦力を算出するので、静止摩擦力と走行器具単体の静止摩擦係数及び寸法とに基づいて、搬送対象を含む走行器具の質量及び慣性モーメントを算出できる。推定プロセス及び比例微分制御プロセスでは、搬送対象を含む走行器具の質量及び慣性モーメントを前提として、走行器具を操作する操作者による外力を推定し、この外力がゼロになるように制御するので、都度重量の異なる搬送対象を載せる場合でも、これに対応した走行補助制御が可能である。
【0029】
本発明の一態様に係る走行補助制御方法は、走行方向と反対の方向に外力が作用した場合に前記比例微分制御プロセスの代わりに実行され、前記走行速度及び前記角速度に所定の粘性抵抗係数を乗算することで算出されるブレーキ力を駆動力とし、当該駆動力で前記駆動輪が走行するよう制御する粘性抵抗制御プロセスをさらに含む。
【0030】
これによれば、走行速度及び角速度が小さい場合には振動を抑制するとともに、高速時にはブレーキ力を大きくすることができる。したがって、例えば、走行器具が障害物に接触しそうになった時等、搬送対象への負担を低減しつつ、即座に減速、停止が可能である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、既存の走行器具と接続可能かつ離脱可能であって、専用の操作部を必要とせずに走行器具の走行を補助することができる走行補助装置及び走行補助制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、実施形態に係る走行補助装置の走行器具への接続前の状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る走行補助装置の構成例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に示す走行補助装置の昇降機構の構成例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4の昇降機構の上昇状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5の状態における摺動部材の構成例を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る接続モジュールの構成例を示す分解斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7に示す接続モジュールのセンサ取付部材の構成例を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、
図7に示す接続モジュールにセンサを取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、
図7に示す接続モジュールの荷重受け部材の構成例を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、
図9に示すセンサ取付部材及びセンサに
図10に示す荷重受け部材を取り付けた状態を示す断面図である。
【
図12】
図12は、
図7に示す接続モジュールのカバー部材の構成例を示す平面図である。
【
図13】
図13は、
図7に示す接続モジュールの取り付け部材の構成例を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、X軸方向又はY軸方向に対向して配置されるセンサの回路図の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、Z軸方向の上方に突起部を向けて配置されるセンサの回路図の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、
図2に示す走行補助装置の走行器具への接続前の状態を一部断面で示す側面図である。
【
図17】
図17は、
図2に示す走行補助装置の走行器具への接続後の状態を一部断面で示す側面図である。
【
図18】
図18は、実施形態に係る走行補助制御処理に用いる走行器具の力学モデルの一例を示す図である。
【
図19】
図19は、実施形態に係る走行補助装置による走行補助制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、
図19に示すキャリブレーションプロセスの流れの一例を示すフローチャートである。
【
図21】
図21は、実施形態に係る走行補助装置の制御ブロック図である。
【
図22】
図22は、変形例に係る走行補助装置の制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0034】
(実施形態)
[走行補助装置1の構成]
まず、実施形態に係る走行補助装置1の構成について、
図1から
図6までを参照して説明する。
図1は、実施形態に係る走行補助装置の走行器具への接続前の状態を示す斜視図である。
図2は、実施形態に係る走行補助装置1の構成例を示す斜視図である。
図3は、
図2に示す走行補助装置1の平面図である。
図4は、
図2に示す走行補助装置1の昇降機構40の構成例を示す斜視図である。
図5は、
図4の昇降機構40の上昇状態を示す斜視図である。
図6は、
図5の状態における摺動部材30の構成例を示す斜視図である。なお、これらの図において、発明に係る構成要素以外の構成要素は、適宜省略して図示される。また、以下の説明では、走行補助装置1の水平な長手方向(
図3の左右方向)を「前後方向」、短手方向(
図3の上下方向)を「幅方向」と言う。
【0035】
走行補助装置1は、走行器具200(
図16及び
図17参照)の下に潜り込んで下方から走行器具200に接続し、走行器具200の走行を補助する装置である。
図1に示すように、走行器具200は、搬送対象を載せる本体部210と、水平方向成分を含む外力が付与されることによって本体部210を水平姿勢に維持して水平方向に移動させることが可能な複数の従動輪220(自在輪)と、本体部210の中央部に固定した後述の取り付け部材150と、ガイド部材230と、ストッパー240と、操作者が走行器具200を操作するためのハンドル250と、を備え、走行補助装置1が本体部210の下に潜り込める隙間を有する。ガイド部材230は、第1アーム231と、第1アーム231に並設した第2アーム232と、を有する。走行器具200は、例えば、台車、搬送カート、移動ベッド、ストレッチャー等である。第2アーム232は、第1アーム231に交差せず、本体部210の外側の一方向に向かって延びている。
【0036】
第1アーム231及び第2アーム232は、取り付け部材150を挟んで向かい合って設置され、第1アーム231及び第2アーム232の後端側が走行器具200の進行方向に対して垂直の取り付け部材150の位置に固定されている。第1アーム231及び第2アーム232の先端側は、弓形状に外側に広がって延びている。第1アーム231と第2アーム232との間隔は、走行器具200の下方の接続位置が最も小さくなるような構造である。
【0037】
第1アーム231及び第2アーム232は、取り付け部材150よりも突出しているため、後述で説明するように、接続モジュール100が走行器具200への接続前に走行器具200の下方に潜り込む際に、接続モジュール100と取り付け部材150との間に空間が設けられることになる。接続モジュール100は、第1アーム231と第2アーム232との間に侵入し、第1アーム231及び第2アーム232は、走行器具200に対する走行補助装置1の相対位置を走行器具200の下方の接続位置に誘導する。
【0038】
ストッパー240は、第1アーム231及び第2アーム232が設置された位置と反対側の位置に、取り付け部材150の両端側に設置されている。ストッパー240同士間の幅は、接続モジュール100の横幅よりも狭く、接続モジュール100が取り付け部材150の真下にある状態で、接続モジュール100に当接し、走行補助装置1を停止させ、走行器具200への接続が可能となる。接続モジュール100が走行器具200への接続前に取り付け部材150の下方に潜り込む際に、走行器具200に対する走行補助装置1の相対位置が接続位置からずれた位置にあるときに、走行器具200の装置本体10の下面側中央部に配置したストッパー240は、接続モジュール100の前方側側面に当接し、走行補助装置1を停止させることができる。これにより、ストッパー240は、接続モジュール100が取り付け部材150の下を通り越さないようにすることができる。
【0039】
図2に示すように、実施形態の走行補助装置1は、装置本体10と、4つの駆動輪20と、摺動部材30と、昇降機構40と、直動アクチュエータ50と、接続モジュール100と、を備える。
【0040】
装置本体10は、水平姿勢の板状の基台11上に、駆動輪20、摺動部材30、昇降機構40、及び直動アクチュエータ50等の走行補助装置1の主な構成要素を支持する。基台11には、各々の駆動輪20の一部を基台11より下方に露出させるための駆動輪用開口11aが形成されている。また、基台11は、各々の駆動輪20の回転軸を支持する4組8つの駆動輪支持部12と、直動アクチュエータ50の固定部51(
図4等参照)を基台11に固定するアクチュエータ支持部13と、基台11に設けられる他の構成要素の各種支持部材と、を有する。
【0041】
また、装置本体10は、基台11に設けられる構成要素の側方及び上方を覆うカバー部材15を有する。カバー部材15は、昇降機構用開口15aを有する。昇降機構用開口15aは、カバー部材15の上面15bの中央部分に設けられる。昇降機構用開口15aからは、後述の接続モジュール100が昇降に伴って出没する。実施形態の走行補助装置1において、駆動輪20の走行面との接地面からカバー部材15の上面15bまでの高さは、125mmである。装置本体10は、基台11とカバー部材15とが略直方体形状の筐体をなす。
【0042】
駆動輪20は、実施形態において、装置本体10に対して前後左右に合計4つ設けられる。駆動輪20は、実施形態において、全方向移動が可能なメカナムホイールであるが、例えば、オムニホイールであってもよい。各々の駆動輪20は、基台11に固定された駆動輪支持部12によって、回転軸回りに回動可能に設けられる。1組の駆動輪支持部12は、実施形態において、1つの駆動輪20を挟み対向して配置される2つの支持部材を含む。支持部材は、1つの駆動輪20の回転軸の両端部を各々支持する。
【0043】
駆動輪20は、回転アクチュエータ21から回転駆動力が伝達される。回転アクチュエータ21は、各々の駆動輪20を駆動する4つの回転アクチュエータ21を含む。回転アクチュエータ21は、例えば、BLDC(Brush-Less Direct-Current)モータを含む。回転アクチュエータ21は、実施形態において、オドメトリによって速度推定を行うためのロータリエンコーダやホールセンサ等の位置検出器を備える。回転アクチュエータ21は、実施形態において、前後に配置される駆動輪20の間に空間において、出力軸が駆動輪20の回転軸と平行となるように駆動輪20に隣接して配置され、プーリ及びベルト等を介して駆動輪20にトルクを伝達する。
【0044】
回転アクチュエータ21は、モータドライバ21a(
図21参照)によって制御される。モータドライバ21aは、例えば、走行補助装置1の各構成を制御する制御部22に含まれる。モータドライバ21aは、回転アクチュエータ21から回転数の情報を取得する。実施形態のモータドライバ21aは、回転数の情報を、速度取得部20a(
図21参照)に出力する。速度取得部20aは、走行補助装置1全体の走行速度及び旋回角速度の情報を取得する。実施形態において、速度取得部20aは、各々の回転アクチュエータ21を制御する各々のモータドライバ21aから回転数の情報を取得するとともに、取得した回転数に基づいて、走行補助装置1全体の走行速度v及び角速度ωを算出する演算処理装置を含む。
【0045】
制御部22は、CPU(Central Processing Unit)等のマイクロプロセッサを有する演算処理部、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等のメモリ、記憶部、及び入出力インターフェース装置等のハードウェア資源を備える。制御部22の機能は、記憶部に格納された所定のプログラムを演算処理部が実行することで実現される。
【0046】
また、制御部22は、例えば、所定のプログラムが実行されることで、後述の直動アクチュエータ50の駆動源を駆動させる。また、制御部22は、例えば、所定のプログラムが実行されることで、後述の荷重受け部材130にかかる3軸の荷重Fx、Fy、Fz及びZ軸回りのモーメントMzを算出する。また、制御部22は、実施形態において、速度取得部20aが回転アクチュエータ21から取得した回転数に基づいて算出した走行補助装置1全体の走行速度v及び角速度ωを、速度取得部20aから取得する。制御部22は、演算処理部による演算結果に従って、各構成要素に各種機能を実行させる制御信号を出力し、演算結果を外部へ出力する。
【0047】
また、制御部22は、後述の
図19等に示す走行補助制御処理を実行する。また、装置本体10には、後述のキャリブレーションプロセスS300(
図19及び
図20参照)において、走行器具200の操作者及び周囲にキャリブレーションプロセスS300の開始及び終了を報知するための報知部を備えていてもよい。報知部は、制御部22による所定の演算結果に従って、所定の音声、アラーム音又は光等を出力するスピーカ又は発光装置等を含んでもよい。
【0048】
制御部22は、実施形態において、装置本体10の前後方向の一方の端部側であって、後述の直動アクチュエータ50の固定部51の上方に配置される。モータドライバ21a(
図21参照)は、例えば、4つ配置される。また、回転アクチュエータ21及びモータドライバ21aを含む制御部22は、バッテリ23から電力が供給されて駆動する。バッテリ23は、装置本体10の前後方向の他方の端部側に配置される。さらに、装置本体10には、非常停止ボタン24と、リレースイッチ25と、が設けられる。走行補助装置1は、非常停止ボタン24が操作者によって押されると、リレースイッチ25が主電源を切り、バッテリ23からの電力供給が停止される。
【0049】
摺動部材30は、装置本体10の基台11に対して前後方向に移動可能に設けられる。摺動部材30は、例えば、水平姿勢かつ前後方向に平行に設けられるガイドレールに沿って移動可能なように設けられてもよい。摺動部材30は、一対のガイド軸部31と、被固定部32と、を有する。
【0050】
ガイド軸部31は、装置本体10の幅方向に延びる軸部材である。ガイド軸部31は、後述の昇降機構40の一対のガイド孔41bに各々挿通する摺動軸部材44bと同芯かつ一体に設けられるか、摺動軸部材44bに固定されるか、あるいは摺動軸部材44bと共用で設けられる。摺動部材30は、ガイド軸部31及び摺動軸部材44bがガイド孔41b内を移動可能な範囲で、基台11に対して前後方向に移動可能である。
【0051】
被固定部32には、後述の直動アクチュエータ50の可動部52が固定される。摺動部材30は、直動アクチュエータ50が駆動して伸縮することによって、可動部52とともに基台11に対して前後方向に移動する。
【0052】
摺動部材30は、実施形態において、平面視形状が、直動アクチュエータ50に固定される被固定部32が凹状部33となるコ字形状に形成される。すなわち、被固定部32に対して、直動アクチュエータ50が収縮する方向の端部が二叉となる形状を有する。ガイド軸部31は、二叉の端部に各々設けられる。摺動部材30は、凹状部33がガイド軸部31に対して、直動アクチュエータ50の伸長する方向に設けられる。すなわち、摺動部材30は、昇降機構40との接続部に対して、直動アクチュエータ50の可動部52との接続部が、直動アクチュエータ50が伸長する方向に位置するように形成される。
【0053】
昇降機構40は、実施形態において、X状のリンクを含むシザースリンク機構を含む。昇降機構40は、装置本体10の基台11と後述の接続モジュール100とを接続し、かつ接続モジュール100の水平姿勢を維持した状態で上下動可能に支持する。昇降機構40は、摺動部材30の前後方向の移動に伴って、接続モジュール100を装置本体10に対して昇降させる。実施形態の昇降機構40は、基台固定部41と、接続機構固定部42と、第1リンクアーム43と、第2リンクアーム44と、中央軸部材45と、を含む。
【0054】
基台固定部41は、装置本体10の基台11に対して固定される。基台固定部41は、実施形態において、前後方向に延びる断面L字形状の一対の支持フレームを含む。基台固定部41は、L字の底面部分が、基台11に固定される。基台固定部41は、L字の底面部分の幅方向の一方の端辺から上方に折り曲げたフランジ部に、軸孔41aと、ガイド孔41bと、を有する。
【0055】
軸孔41aは、前後方向に延びる基台固定部41の直動アクチュエータ50が伸長する方向の端部に設けられる丸孔である。軸孔41aは、水平姿勢かつ装置本体10の幅方向に貫通して設けられる。軸孔41aには、第1リンクアーム43の下端側に設けられる回転軸部材43aが挿通する。
【0056】
ガイド孔41bは、前後方向に延びる基台固定部41の直動アクチュエータ50が収縮する側の端部から中央に亘って設けられる長孔である。ガイド孔41bは、水平姿勢かつ装置本体10の幅方向に貫通して設けられる。ガイド孔41bには、第2リンクアーム44の下端側に設けられる摺動軸部材44bが挿通する。
【0057】
接続機構固定部42は、後述の接続モジュール100の下端に位置するセンサ取付部材110に対して固定される。接続機構固定部42は、実施形態において、前後方向に延びる断面逆L字形状の一対の支持フレームを含む。接続機構固定部42は、倒L字の天面部分が、センサ取付部材110に固定される。接続機構固定部42は、倒L字の天面部分の幅方向の一方の端辺から下方に折り曲げたフランジ部に、軸孔42aと、ガイド孔42bと、を有する。
【0058】
軸孔42aは、前後方向に延びる接続機構固定部42の直動アクチュエータ50が伸長する方向の端部に設けられる丸孔である。軸孔42aは、水平姿勢かつ装置本体10の幅方向に貫通して設けられる。軸孔42aには、第2リンクアーム44の上端側に設けられる回転軸部材44aが挿通する。
【0059】
ガイド孔42bは、前後方向に延びる接続機構固定部42の直動アクチュエータ50が収縮する側の端部から中央に亘って設けられる長孔である。ガイド孔42bは、水平姿勢かつ装置本体10の幅方向に貫通して設けられる。ガイド孔42bには、第1リンクアーム43の上端側に設けられる摺動軸部材43bが挿通する。
【0060】
第1リンクアーム43は、基台固定部41と接続機構固定部42とを連結する。第1リンクアーム43は、長手方向の下端部に設けられた回転軸部材43aを介し、基台固定部41に対して、装置本体10の幅方向に平行な軸回りに回動可能に支持される。回転軸部材43aは、基台固定部41に設けられた軸孔41aに挿通する。回転軸部材43aは、例えば、ピン部材である。
【0061】
第1リンクアーム43は、長手方向の上端部に設けられた摺動軸部材43bを介し、接続機構固定部42に対して、装置本体10の前後方向に摺動可能かつ装置本体10の幅方向に平行な軸回りに回動可能に支持される。摺動軸部材43bは、接続機構固定部42に設けられたガイド孔42bに挿通する。摺動軸部材43bは、例えば、ピン部材である。
【0062】
第2リンクアーム44は、基台固定部41と接続機構固定部42とを連結する。第2リンクアーム44は、長手方向の上端部に設けられた回転軸部材44aを介し、接続機構固定部42に対して、装置本体10の幅方向に平行な軸回りに回動可能に支持される。回転軸部材44aは、接続機構固定部42に設けられた軸孔42aに挿通する。回転軸部材44aは、例えば、ピン部材である。
【0063】
第2リンクアーム44は、長手方向の下端部に設けられた摺動軸部材44bを介し、基台固定部41に対して、装置本体10の前後方向に摺動可能かつ装置本体10の幅方向に平行な軸回りに回動可能に支持される。摺動軸部材44bは、基台固定部41に設けられたガイド孔42bに挿通する。摺動軸部材44bは、摺動部材30のガイド軸部31と同芯であるように、ガイド軸部31に固定される。摺動軸部材44bは、例えば、ボルトである。
【0064】
中央軸部材45は、第1リンクアーム43及び第2リンクアーム44の各々の長手方向の中央部同士を、回動可能に連結する。中央軸部材45は、例えば、ピン部材である。
【0065】
直動アクチュエータ50は、装置本体10の前後方向に伸縮する一軸アクチュエータである。直動アクチュエータ50は、例えば、装置本体10に搭載される制御装置(制御部22)が駆動源を駆動させることによって、駆動源の駆動力により伸縮する。直動アクチュエータ50は、固定部51と、可動部52と、を含む。
【0066】
固定部51は、実施形態において、軸心が水平姿勢かつ装置本体10の前後方向に平行な筒形状のハウジングである。固定部51は、長手方向の一方の端部が開口し、可動部52の一部を内部に収容する。固定部51は、長手方向の他方の端部が、装置本体10の基台11に設けられたアクチュエータ支持部13に固定される。
【0067】
可動部52は、実施形態において、軸心が水平姿勢かつ装置本体10の前後方向に平行なシャフトである。可動部52は、長手方向の一方の端部側の一部が、固定部51の内部に収容される。可動部52は、長手方向の他方の端部が、摺動部材30の被固定部32に固定される。
【0068】
可動部52は、固定部51及び装置本体10に対して前後方向に直動移動可能である。可動部52は、直動アクチュエータ50が伸縮することによって、固定部51及び装置本体10に対して前後方向に直動移動する。直動アクチュエータ50は、可動部52が前後方向に直動移動することによって、摺動部材30を前後方向に直動移動させる。
【0069】
[接続モジュール100の構成]
次に、実施形態に係る接続モジュール100の構成について、
図7から
図13までを参照して説明する。
図7は、実施形態に係る接続モジュール100の構成例を示す分解斜視図である。なお、以下の説明では、水平な一方向をX軸方向といい、X軸方向に直交する水平な交差方向をY軸方向といい、X軸方向及びY軸方向に直交する垂直方向をZ軸方向という。また、Z軸回りの回転方向をθ回転方向という。
【0070】
接続モジュール100は、接続モジュール100にかかる荷重をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向、及びZ軸回りに分離して測定する。実施形態の接続モジュール100は、さらにZ軸回りのモーメントを測定する。また、実施形態の接続モジュール100は、走行補助装置1の装置本体10側と走行器具200(
図16及び
図17参照)とを接続する接続機構としての機能を備える。
【0071】
接続モジュール100は、実施形態において、センサ取付部材110と、複数のセンサ120と、荷重受け部材130と、カバー部材140と、取り付け部材150と、感圧センサ160と、緩衝材170と、を備える。接続モジュール100は、センサ取付部材110、複数のセンサ120、荷重受け部材130、カバー部材140、感圧センサ160、及び緩衝材170が、取り付け部材150と分離可能である。センサ取付部材110、複数のセンサ120、荷重受け部材130、及びカバー部材140は、摺動部材30の前後方向への移動に伴い昇降機構40によって昇降する。
【0072】
図8は、
図7に示す接続モジュール100のセンサ取付部材110の構成例を示す斜視図である。センサ取付部材110は、実施形態において、平面視形状が角丸の正方形状である略四角柱形状に形成されている。センサ取付部材110は、接続モジュール100の基部となる部分であって、昇降機構40の接続機構固定部42に固定される。センサ取付部材110は、例えば、底面及び側面を接続機構固定部42に支持された状態で取り付けられる。センサ取付部材110は、摺動部材30の前後方向の移動に伴って、昇降機構40を介し、装置本体10に対して昇降する。センサ取付部材110には、複数のカバー固定ねじ穴111と、ピン脚収容溝部112と、8つのセンサ取付スリット113と、2つのセンサ取付凹部114と、配線穴115と、が形成される。
【0073】
カバー固定ねじ穴111は、
図7及び後述の
図12に示すカバー部材140をセンサ取付部材110の上面110a側に固定するためのねじが挿通される穴である。カバー固定ねじ穴111は、センサ取付部材110の上面110a側から、Z軸方向の下方に向かって形成される。カバー固定ねじ穴111は、実施形態において、4つ設けられる。4つのカバー固定ねじ穴111は、平面視におけるセンサ取付部材110の4角近傍の位置に形成される。
【0074】
ピン脚収容溝部112は、後述の荷重受け部材130の脚部135を収容するための溝である。ピン脚収容溝部112は、センサ取付部材110の上面110aから下方に凹状かつ平面視が四角環形状に設けられる。センサ取付部材110は、平面視において、ピン脚収容溝部112の内周より内側の部分が、センサ取付部材110の上面110aにおけるZ軸方向の高さより低く形成される。
【0075】
8つのセンサ取付スリット113は、各々後述のセンサ120が挿通して取り付けられる穴である。各々のセンサ取付スリット113は、センサ取付部材110の上面110aに細長い開口部を有し、上面110a側からZ軸方向下方に向かって形成される。センサ取付スリット113は、平面視において、センサ取付部材110の外周とピン脚収容溝部112の外周との間であって、ピン脚収容溝部112の外周に細長い開口部の長手方向が沿うように形成される。各々のセンサ取付スリット113には、センサ120の検出部がピン脚収容溝部112側に向いた状態で露出するように、ピン脚収容溝部112側にセンサ用開口113aが形成されている。
【0076】
8つのセンサ取付スリット113は、ピン脚収容溝部112の外周近傍に取り付けられるセンサ120が均等に配置されるように形成される。すなわち、8つのセンサ取付スリット113は、センサ取付部材110の中心に対して、X軸方向に線対称、Y軸方向に線対称、Z軸回りに90°の点対称、かつZ軸方向の高さが同一であるように形成される。具体的には、センサ取付スリット113は、ピン脚収容溝部112の外周の4辺各々の近傍に2つずつ形成される。
【0077】
2つのセンサ取付凹部114は、後述のセンサ120が取り付けられる凹部である。各々のセンサ取付凹部114は、センサ取付部材110のピン脚収容溝部112の内周より内側の部分の上面110bから下方に向かって凹状に形成される。各々のセンサ取付凹部114には、センサ120の検出部が上方を向いた状態でセンサ取付凹部114に固定するための爪部114aが形成されている。爪部114aは、センサ取付凹部114の縁から、平面視で内側に向かって突出してセンサ120の上面側の一部を覆うように形成される。
【0078】
2つのセンサ取付凹部114は、取り付けられるセンサ120が均等に配置されるように形成される。すなわち、2つのセンサ取付凹部114は、センサ取付部材110の中心に対して、X軸方向に線対称、Y軸方向に線対称、かつZ軸方向の高さが同一であるように形成される。具体的には、センサ取付凹部114は、Y軸方向に並んで2つ形成される。
【0079】
配線穴115は、センサ120に接続する配線が通る溝及び孔である。センサ取付スリット113に取り付けられたセンサ120に接続する配線は、センサ取付スリット113からピン脚収容溝部112の外周側の内壁に沿って形成された溝を通ってピン脚収容溝部112の底面112aに延びる。
【0080】
また、センサ取付凹部114に取り付けられたセンサ120に接続する配線は、センサ取付凹部114からピン脚収容溝部112の内周より内側の部分の上面110b及びピン脚収容溝部112の内周側の内壁に沿って形成された溝を通ってピン脚収容溝部112の底面112aに延びる。各々の配線は、ピン脚収容溝部112の底面112aと荷重受け部材130の脚部135の下面131bとの間(後述の
図11参照)を這うように配線され、ピン脚収容溝部112の底面112aに形成された孔を経由して、接続モジュール100の外部の他素子に接続する。
【0081】
図9は、
図7に示す接続モジュール100にセンサ120を取り付けた状態を示す斜視図である。複数のセンサ120は、実施形態において、荷重を検出するひずみゲージ式のロードセルを含む。1つのセンサ120(ロードセル)は、2つのひずみゲージを有している。各々のセンサ120は、外枠120aと、舌片120bと、を有する(
図7参照)。
【0082】
外枠120aは、四角環形状の板体である。舌片120bは、外枠120aの内周側に設けられる四角形状の板体である。舌片120bは、一辺が、外枠120aの内周縁の一辺に連結して、外枠120aと一体で設けられる。舌片120bの両面には、各々ひずみゲージが1つずつ設けられる。また、舌片120bの一方の面の中心には、後述の荷重受け部材130と接する突起部120cが形成されている。舌片120bは、突起部120cを介して押圧されることで外枠120aとの連結部を中心に揺動する。この際のひずみに基づいて、センサ120は、面に垂直な方向に加わった荷重を検出する。
【0083】
複数のセンサ120は、第1センサ群と、第2センサ群と、第3センサ群と、を含む。第1センサ群は、荷重受け部材130の基部131を水平な一方向(例えば、Y軸方向)に挟んで支持する。第2センサ群は、荷重受け部材130の基部131を水平かつ一方向に直交する交差方向(例えば、X軸方向)に挟んで支持する。第3センサ群は、荷重受け部材130の基部131を一方向及び交差方向に直交する垂直方向(Z軸方向)の下方から支持する。
【0084】
第1センサ群は、実施形態において、第1正センサ121p及び第2正センサ122pと、第1負センサ121n及び第2負センサ122nと、の4個のロードセルを含む。第2センサ群は、実施形態において、第3正センサ123p及び第4正センサ124pと、第3負センサ123n及び第4負センサ124nと、の4個のロードセルを含む。第3センサ群は、実施形態において、第5センサ125及び第6センサ126の2個のロードセルを含む。すなわち、実施形態の複数のセンサ120は、合計10個のロードセルを含む。なお、以下の説明において、各々のセンサを特に区別しない場合は、単にセンサ120と称する。
【0085】
第1正センサ121p、第1負センサ121n、第2正センサ122p、第2負センサ122n、第3正センサ123p、第3負センサ123n、第4正センサ124p、及び第4負センサ124nは、突起部120cがセンサ用開口113aに向くように立たせ、センサ取付部材110のセンサ取付スリット113に挿通して取り付けられる。センサ取付スリット113に取り付けられたセンサ120は、上端部がセンサ取付部材110の上面110aより上方に突出している。センサ取付スリット113に取り付けられた8つのセンサ120は、センサ用開口113aから突起部120cがピン脚収容溝部112側に突出した位置で、外枠120aがセンサ取付部材110に支持される。
【0086】
第1正センサ121pと第1負センサ121nとは、センサ取付部材110の中心に対してY軸方向に対向する位置のセンサ取付スリット113に取り付けられる。第2正センサ122pと第2負センサ122nとは、センサ取付部材110の中心に対してY軸方向に対向する位置のセンサ取付スリット113に取り付けられる。第1正センサ121pと第2正センサ122pとは、X軸方向に隣接する位置のセンサ取付スリット113に取り付けられる。第1負センサ121nと第2負センサ122nとは、X軸方向に隣接する位置のセンサ取付スリット113に取り付けられる。
【0087】
第3正センサ123pと第3負センサ123nとは、センサ取付部材110の中心に対してX軸方向に対向する位置のセンサ取付スリット113に取り付けられる。第4正センサ124pと第4負センサ124nとは、センサ取付部材110の中心に対してX軸方向に対向する位置のセンサ取付スリット113に取り付けられる。第3正センサ123pと第4正センサ124pとは、Y軸方向に隣接する位置のセンサ取付スリット113に取り付けられる。第3負センサ123nと第4負センサ124nとは、Y軸方向に隣接する位置のセンサ取付スリット113に取り付けられる。
【0088】
また、センサ取付スリット113に取り付けられる8つのセンサ120は、隣接するセンサ120と上下が逆になるように取り付けられる(
図7参照)。具体的には、第1正センサ121p、第2負センサ122n、第3負センサ123n、及び第4正センサ124pは、外枠120aと舌片120bとの連結部が上方に位置するように取り付けられる。また、第1負センサ121n、第2正センサ122p、第3正センサ123p、及び第4負センサ124nは、外枠120aと舌片120bとの連結部が下方に位置するように取り付けられる。これにより、センサ120は、隣接するセンサ120の突起部120cのZ軸方向の位置がずれた状態で配置される。
【0089】
第5センサ125及び第6センサ126は、突起部120cが上方を向くように寝かせ、センサ取付凹部114に嵌め込んで取り付けられる。センサ取付凹部114に取り付けられた2つのセンサ120は、突起部120cがピン脚収容溝部112の内周より内側の部分の上面110bより上方に突出した位置で、外枠120aがセンサ取付部材110に支持される。
【0090】
また、センサ取付凹部114に取り付けられる2つのセンサ120は、外枠120aと舌片120bとの連結部の位置がY軸方向に逆になるように取り付けられる。具体的には、第5センサ125は、外枠120aと舌片120bとの連結部がY軸の負方向に位置するように取り付けられる。また、第6センサ126は、外枠120aと舌片120bとの連結部がY軸の正方向に位置するように取り付けられる。
【0091】
図10は、
図7に示す接続モジュール100の荷重受け部材130の構成例を示す斜視図である。
図11は、
図9に示すセンサ取付部材110及びセンサ120に
図10に示す荷重受け部材130を取り付けた状態を示す断面図である。荷重受け部材130は、走行器具200にかかる荷重を受け、センサ120に伝達する部材である。荷重受け部材130は、基部131と、接続ピン部132と、を有する。
【0092】
基部131は、センサ120を介してセンサ取付部材110に支持される部分であり、実施形態において、平面視形状が角に丸みを含む正方形状である略四角柱形状に形成されている。基部131は、荷重受け部材130がセンサ120を介してセンサ取付部材110に支持されている状態において、上面131aがセンサ取付部材110の上面110aより下方に位置する。基部131は、凹状部133、134と、脚部135と、を含む。
【0093】
凹状部133は、基部131の下面131b側から上方に向かって凹状に形成され、底面視形状が、角に丸みを含む正方形状の凹状部である。凹状部134は、凹状部133の天面からさらに上方に向かって凹状に形成され、底面視形状が、角に丸みを含む正方形状の凹状部である。凹状部133及び凹状部134は、平面視における中心が基部131の中心となるように形成される。すなわち、基部131の下面131b側には、2段階の四角環形状部分が形成される。脚部135は、凹状部133の外周より外側の四角環形状部分である。
【0094】
荷重受け部材130は、センサ取付部材110に対して、直接接触しないように設けられ、複数のセンサ120を介してセンサ取付部材110に支持される。すなわち、荷重受け部材130は、複数のセンサ120、センサ取付部材110、及び昇降機構40を介して、装置本体10と接続される。この際、基部131は、脚部135がピン脚収容溝部112に収容され、4方の側面がセンサ120に接触されて支持される。また、基部131は、凹状部133及び凹状部134がピン脚収容溝部112の内周より内側の部分の上面110bと対向する。
【0095】
荷重受け部材130は、凹状部134の天面が、第5センサ125及び第6センサ126の突起部120cに支持されることによって、下方から支持される。凹状部133及び凹状部134は、第5センサ125及び第6センサ126の外枠120aには接触しない。すなわち、第5センサ125と第6センサ126とは、隣接して配置され、いずれも荷重受け部材130の底面(凹状部134の天面)側からかかる荷重を受けるので、第5センサ125及び第6センサ126に荷重受け部材130から加わる力は、同方向となる。
【0096】
荷重受け部材130は、脚部135の外周側の側面が、第1正センサ121p、第1負センサ121n、第2正センサ122p、第2負センサ122n、第3正センサ123p、第3負センサ123n、第4正センサ124p、及び第4負センサ124nの突起部120cに支持されることによって、側方から支持される。脚部135は、ピン脚収容溝部112の内壁及び底面112aには接触しない。
【0097】
前述のとおり第1正センサ121pと第1負センサ121nとは、Y軸方向に荷重受け部材130を挟んで対向して配置されるので、第1正センサ121p及び第1負センサ121nに荷重受け部材130から加わる力は、逆方向となる。同様に、第2正センサ122pと第2負センサ122nとは、Y軸方向に荷重受け部材130を挟んで対向して配置されるので、第2正センサ122p及び第2負センサ122nに荷重受け部材130から加わる力は、逆方向となる。
【0098】
また、第3正センサ123pと第3負センサ123nとは、X軸方向に荷重受け部材130を挟んで対向して配置されるので、第3正センサ123p及び第3負センサ123nに荷重受け部材130から加わる力は、逆方向となる。同様に、第4正センサ124pと第4負センサ124nとは、X軸方向に荷重受け部材130を挟んで対向して配置されるので、第4正センサ124p及び第4負センサ124nに荷重受け部材130から加わる力は、逆方向となる。
【0099】
接続ピン部132は、基部131の上面131a側の中心部から突出して軸方向(Z軸方向)に延びて形成される。接続ピン部132は、後述の取り付け部材150の嵌合孔154に下方から挿通して嵌合孔154に挿入可能である。接続ピン部132は、第1柱部132aと、第2柱部132bと、を含む。
【0100】
第1柱部132aは、接続ピン部132の上端部に位置し、軸方向がZ軸方向に平行かつXY断面の形状が一定である柱形状である。
図10に示す実施形態の第1柱部132aは、軸方向と直交する平面で切った断面(以降の説明では、XY断面と称す)形状が角部に丸みを含む正方形状である四角柱形状であるが、本実施形態では真円柱を除く柱形状であればどのような形状でもよく、四角柱以外の角柱又は楕円柱でもよい。さらに、第1柱部132aは、XY断面形状が、ルーローの多角形やレモン型等、辺の部分が外側に膨出しているような形状でもよい。すなわち、第1柱部132aは、軸方向に視た形状が真円以外の形状を有する。第1柱部132aは、XY断面形状が、回転対称であることが好ましい。
【0101】
また、第1柱部132aの側辺に対応する角状部132cは、実施形態のように角丸や面取りされた形状であってもよい。なお、第1柱部132aが楕円柱である場合は、長軸の両端部分を角状部132cとみなす。また、第1柱部132aの上面132dは、実施形態において、XY平面に平行な平坦面に形成される。
【0102】
第2柱部132bは、第1柱部132aの下方に位置し、軸方向がZ軸方向に平行かつ指数関数テーパ又は放物線テーパ等の裾広がりである柱形状である。第2柱部132bは、上端部の側面が第1柱部132aの下端部の側面に連続し、下端部の側面が基部131の上面131aに連続する。
【0103】
図12は、
図7に示す接続モジュール100のカバー部材140の構成例を示す平面図である。カバー部材140は、センサ取付部材110に支持されたセンサ120の上方を覆う四角環形状の保護部材である。カバー部材140は、下面がセンサ取付部材110の上面110aに固定され、荷重受け部材130に対して直接接触しないように設けられる。すなわち、カバー部材140の下面は、センサ取付部材110に固定されている状態において、センサ120を介してセンサ取付部材110に支持される荷重受け部材130の基部131の上面131aとの間に間隙を有する。カバー部材140は、固定ねじ孔141と、センサ用穴142と、ピン用開口143と、押圧ピン貫通孔144と、配線孔145と、を有する。
【0104】
固定ねじ孔141は、カバー部材140をセンサ取付部材110(
図8等参照)の上面110a側に固定するためのねじが挿通される穴である。固定ねじ孔141は、Z軸方向に貫通して形成される。固定ねじ孔141は、平面視において、センサ取付部材110のカバー固定ねじ穴111に対応する位置に同数設けられ、実施形態では、平面視における4角近傍の位置に各々1つ、計4つ形成される。
【0105】
センサ用穴142は、8つのセンサ取付スリット113に取り付けられた各々のセンサ120の、センサ取付部材110の上面110aより上方に突出している上端部が挿入するための孔である。センサ用穴142は、カバー部材140の下面側から、Z軸方向の上方に向かって形成され、実施形態においては、Z軸方向に貫通して設けられる。センサ用穴142は、平面視において、センサ取付スリット113に対応する位置に同数設けられ、実施形態では、4辺近傍の位置に各々2つずつ、計8つ形成される。カバー部材140がセンサ取付部材110の上面110aに固定された状態において、8つのセンサ取付スリット113に取り付けられたセンサ120は、上端がセンサ取付部材110の上面110aより下方に位置する。
【0106】
ピン用開口143は、荷重受け部材130の接続ピン部132が挿通される開口である。すなわち、ピン用開口143は、四角環形状のカバー部材140の内周より内側の部分を示す。ピン用開口143は、平面視において、接続ピン部132より外側に内縁が離隔するように形成される。
【0107】
押圧ピン貫通孔144は、後述の取り付け部材150に形成される押圧ピン155が挿通するための貫通孔である。押圧ピン貫通孔144は、押圧ピン155の径より大径であるように、Z軸方向に貫通して設けられる。押圧ピン貫通孔144は、平面視において、押圧ピン155に対応する位置に同数設けられ、実施形態では、対角線上の2つの固定ねじ孔141近傍に1つずつ、計2つ形成される。
【0108】
配線孔145は、後述の感圧センサ160に接続する配線が通る孔である。配線は、配線孔145を経由して、例えば、センサ取付部材110の配線穴115を経由して、接続モジュール100の外部の他素子に接続する。
【0109】
図13は、
図7に示す接続モジュール100の取り付け部材150の構成例を示す斜視図である。取り付け部材150は、走行器具200(
図16及び
図17参照)の本体部210に取り付けられる部材である。取り付け部材150は、荷重受け部材130と接続可能かつ分離可能である。取り付け部材150を荷重受け部材130に接続することにより、走行補助装置1は、走行器具200に接続される。取り付け部材150は、基部151と、孔形成部152と、複数(実施形態では4つ)の固定孔153と、嵌合孔154と、押圧ピン155と、を有する。
【0110】
基部151は、走行器具200(
図16及び
図17参照)の本体部210に取り付けられる部分であり、実施形態において、平面視形状が角に丸みを含む正四角環形状の厚板状に形成されている。基部151の上面151a(
図7参照)側は、走行器具200の本体部210の下面側に対向する。
【0111】
孔形成部152は、平面視で基部151の下面151b側から下方に向かって凸状に形成され、平面視形状が、角に丸みを含む正方形状の凸状部である。孔形成部152は、平面視における中心が基部151の中心となるように形成される。すなわち、基部151は、孔形成部152の外周より外側に四角環形状の下面151bを有する。取り付け部材150は、孔形成部152の部分のZ軸方向の厚みが、孔形成部152の外周より外側の四角環形状の部分の厚みより大きく形成される。
【0112】
固定孔153は、取り付け部材150を走行器具200(
図16及び
図17参照)の本体部210の下面側に固定するためのねじが挿通される穴である。固定孔153は、取り付け部材150の基部151をZ軸方向に貫通して形成され、例えば、内周面に雌ねじを含む。固定孔153は、実施形態において、4つ設けられる。4つの固定孔153は、平面視における取り付け部材150の4角近傍の位置に形成される。取り付け部材150は、例えば、基部151の上面151aを走行器具200の本体部210の下面側に合わせた状態で、ねじ等を固定孔153の下方から螺合することによって、上面151aが走行器具200の本体部210の下面に固定される。
【0113】
嵌合孔154は、取り付け部材150の孔形成部152をZ軸方向に貫通する孔であって、荷重受け部材130の接続ピン部132が下方から挿入可能である。嵌合孔154は、平面視で取り付け部材150の中心部に形成される。嵌合孔154は、第1孔部154aと、第2孔部154bと、第3孔部154cと、が順に連通する。
【0114】
第1孔部154aは、実施形態において、第2孔部154b及び第3孔部154cより下方に位置する。第1孔部154aは、取り付け部材150の下面側に開口し、軸方向がZ軸方向に平行な孔である。第1孔部154aは、第2孔部154bに向かって徐々に小さくなるようなテーパ状の内壁を有する。実施形態の第1孔部154aは、XY断面形状が角部に丸みを含む正方形状である。第1孔部154aは、XY断面形状が、回転対称であることが好ましい。
【0115】
第2孔部154bは、第1孔部154aと第3孔部154cとの間に位置する。第2孔部154bは、第1孔部154aの上方に連通し、軸方向がZ軸方向に平行な孔である。第2孔部154bは、第3孔部154cに向かって徐々に小さくなり、かつ第1孔部154aのテーパ比より小さいテーパ比のテーパ状の内壁を有する。実施形態の第2孔部154bは、XY断面形状が角部に丸みを含む正方形状である。第2孔部154bは、XY断面形状が、回転対称であることが好ましい。
【0116】
第3孔部154cは、実施形態において、第1孔部154a及び第2孔部154bより上方に位置する。第3孔部154cは、第2孔部154bの上方に連通し、軸方向がZ軸方向に平行かつXY断面の形状が一定である孔である。第3孔部154cは、荷重受け部材130の接続ピン部132の第1柱部132aが嵌合可能な穴である。第3孔部154cは、第1柱部132aに嵌合している状態において、角状部154dが第1柱部132aの角状部132cに対向する。
【0117】
実施形態の第3孔部154cは、取り付け部材150の上面151a側に開口する。実施形態の第3孔部154cは、XY断面形状が角部に丸みを含む正方形状であるが、外周に凹状の角部及び凹状の曲面を含まず、嵌合時に第1柱部132aのθ回転方向の回転を規制可能であれば、どのような形状でもよい。第3孔部154cは、XY断面形状が、回転対称であることが好ましい。
【0118】
荷重受け部材130は、接続ピン部132を嵌合孔154の下方から挿通する際、第1柱部132aが嵌合孔154の第1孔部154a、第2孔部154bに順次ガイドされて、第3孔部154cに嵌合される。なお、嵌合孔154は、第1孔部154aと第2孔部154bとの境界面における短径をLとし、荷重受け部材130の第1柱部132aの上面132dにおける長径をDとした場合、L=1/Dの関係が成り立つように形成される。
【0119】
第3孔部154cに第1柱部132aが嵌合することによって、荷重受け部材130と取り付け部材150とは、XY平面方向及びθ回転方向に位置決めされる。また、第3孔部154cに第1柱部132aが嵌合して、取り付け部材150の孔形成部152の下縁152aが、荷重受け部材130の基部131の上面131aに接して支持されることによって、荷重受け部材130と取り付け部材150とは、Z軸方向に位置決めされる。すなわち、荷重受け部材130と取り付け部材150とは、4軸で位置決め可能である。
【0120】
嵌合孔154は、第1柱部132aが第3孔部154cに嵌合している状態において、平面視で第1孔部154aの下端部における外周縁が荷重受け部材130の基部131より内側に位置する。実施形態の荷重受け部材130は、第1柱部132aが第3孔部154cに嵌合し、基部131で取り付け部材150を下方から支持している状態において、第1柱部132aの上面132dが、取り付け部材150の上面151aと同一の高さ、又は上面151aより下方の位置に維持される。
【0121】
実施形態の第2孔部154bは、XY断面形状が角部に丸みを含む正方形状であるが、本実施形態では正方形状に限定されない。例えば、第1柱部132a及び第3孔部154cのXY断面形状が正多角形状である場合、第2孔部154bは、外周に凹状の角部及び凹状の曲面を含まず、XY断面形状が第1柱部132a及び第3孔部154cのXY断面の頂点数以下の正多角形状であればよい。
【0122】
実施形態の第1孔部154aは、XY断面形状が角部に丸みを含む正方形状であるが、本実施形態では正方形状に限定されない。例えば、第2孔部154bのXY断面形状が正多角形状である場合、第1孔部154aは、外周に凹状の角部及び凹状の曲面を含まず、XY断面形状が第2孔部154bのXY断面の頂点数以下の正多角形状、又は円形状であればよい。
【0123】
押圧ピン155は、後述の緩衝材170を介して感圧センサ160を押圧する突起である。押圧ピン155は、基部151の下面151b側から突出してZ軸方向に平行な方向に延びて形成される。押圧ピン155は、先端がドーム状に形成される。押圧ピン155は、実施形態において、平面視で対角状に配置される2つの押圧ピン155を含む。押圧ピン155は、取り付け部材150が荷重受け部材130に接続された状態において、カバー部材140の押圧ピン貫通孔144を挿通し、押圧ピン貫通孔144の下方に配置される感圧センサ160を、緩衝材170を介して押圧する。
【0124】
感圧センサ160は、例えば、電極を含む機能部と、機能部を挟むように設けられた保護フィルムと、を有する。感圧センサ160は、機能部に印加される外圧の位置及び大きさを測定可能なセンサである。感圧センサ160は、押圧ピン155及びカバー部材140の押圧ピン貫通孔144の位置及び数に対応して設けられる。平面視において、押圧ピン155及びカバー部材140の押圧ピン貫通孔144に対応する位置に同数設けられ、実施形態では、対角線上の2つの押圧ピン貫通孔144の下端側に1つずつ、計2つ形成される。感圧センサ160は、平面視において、押圧ピン貫通孔144が機能部に一致するように、例えば、カバー部材140の下面側に固定して設けられる。
【0125】
緩衝材170は、各々の感圧センサ160の機能部の上面側に配置される。押圧ピン155は、荷重受け部材130の接続ピン部132が取り付け部材150の嵌合孔154に挿通されて第1柱部132aと第3孔部154cとが嵌合すると、押圧ピン貫通孔144に挿通される。この際、感圧センサ160は、押圧ピン155の先端による緩衝材170を介した感圧センサ160の押圧を検出する。すなわち、感圧センサ160は、荷重受け部材130と取り付け部材150との接続状態を検出する。
【0126】
なお、走行補助装置1は、荷重受け部材130と接続可能な取り付け部材150を複数備えていてもよい。複数の走行器具200に各々取り付け部材150を取り付けておくことで、走行補助装置1が各々の走行器具200と順次接続し、走行を補助することができる。また、1台の走行補助装置1に対して、荷重受け部材130及び取り付け部材150は、複数備えられてもよい。例えば、平面視において走行補助装置1の4隅で走行器具200と接続する等、複数箇所で走行器具200を支持することが可能であれば、走行器具200が大型であったり重かったりする場合でも適応が可能である。
【0127】
[接続モジュール100による4軸荷重測定]
接続モジュール100は、走行補助装置1に走行器具200が接続し、走行器具200に搬送者の力がかけられたり、走行補助装置1が加速したりした際に、取り付け部材150を介して荷重受け部材130に荷重が加わる。荷重受け部材130に荷重がかかると、荷重受け部材130は、基部131を支持するセンサ120に、かかった荷重を伝達する。
【0128】
ここで、荷重受け部材130から伝達された荷重を、
図7、
図9及び
図11に示すセンサ120が測定する方法について説明する。センサ取付スリット113に取り付けられる8つのセンサ120では、各々2つずつのセンサ120を用いてホイーストンブリッジ回路とし、正負方向のひずみに対する差動出力電圧値を測定する。
【0129】
具体的には、X軸方向に対向する第3正センサ123p及び第3負センサ123nは、ホイーストンブリッジ回路を構成し、X軸方向へのひずみに対する差動出力電圧値VS3±を測定する。また、X軸方向に対向する第4正センサ124p及び第4負センサ124nは、ホイーストンブリッジ回路を構成し、X軸方向へのひずみに対する差動出力電圧値VS4±を測定する。
【0130】
また、Y軸方向に対向する第1正センサ121p及び第1負センサ121nは、ホイーストンブリッジ回路を構成し、Y軸方向へのひずみに対する差動出力電圧値VS1±を測定する。また、Y軸方向に対向する第2正センサ122p及び第2負センサ122nは、ホイーストンブリッジ回路を構成し、Y軸方向へのひずみに対する差動出力電圧値VS2±を測定する。
【0131】
差動出力電圧値V
S1±、V
S2±、V
S3±、V
S4±を測定するセンサ120(ひずみゲージ)の回路図について説明する。
図14は、X軸方向又はY軸方向に対向して配置されるセンサ120の回路図の一例を示す図である。なお、以下の説明では、一例として、第1正センサ121p及び第1負センサ121nの回路図として説明するが、第2正センサ122p及び第2負センサ122n、第3正センサ123p及び第3負センサ123n、第4正センサ124p及び第4負センサ124nも同様の回路構成を有する。
【0132】
図14に示す回路図では、ブリッジ回路の4辺に各々、ひずみゲージGp
1、Gp
2、Gn
1、Gn
2が接続される。ひずみゲージGp
1は、第1正センサ121pの突起部120c側の面に設けられ、ブリッジ回路において、1辺に設けられる。ひずみゲージGp
2は、第1正センサ121pのひずみゲージGp
1とは反対側の面に設けられ、ブリッジ回路において、ひずみゲージGp
1が設けられる辺に隣接する1辺に設けられる。ひずみゲージGn
1は、第1負センサ121nの突起部120c側の面に設けられ、ブリッジ回路において、ひずみゲージGp
1が設けられる辺の対辺に設けられる。ひずみゲージGn
2は、第1負センサ121nのひずみゲージGn
1とは反対側の面に設けられ、ブリッジ回路において、ひずみゲージGp
2が設けられる辺の対辺に設けられる。前述のとおり、第1正センサ121p及び第1負センサ121nに荷重受け部材130から加わる力は、逆方向なので、ひずみゲージGp
1及びひずみゲージGn
2が同方向にひずみ、ひずみゲージGp
3及びひずみゲージGn
1がその逆方向にひずむ。
【0133】
図14に示す回路図では、下方から印加電圧V
INをかけることで、右方に出力電圧V
OUTが出力される。ゲージ率をKとし、ひずみをεとすると、出力電圧V
OUTは、以下の数式(1)で示される。なお、出力電圧V
OUTは、回路に接続するセンサ120が第1正センサ121p及び第1負センサ121nである場合、V
S1±である。
【0134】
【0135】
また、センサ取付凹部114に取り付けられる2つのセンサ120では、各々正方向のひずみに対する出力電圧値を測定する。具体的には、Y軸方向に並ぶ第5センサ125及び第6センサ126は、各々Z軸の正方向へのひずみに対する出力電圧値VS5+、VS6+を測定する。
【0136】
出力電圧値V
S5+、V
S6+を測定するセンサ120(ひずみゲージ)の回路図について説明する。
図15は、Z軸方向の上方に突起部120cを向けて配置されるセンサ120の回路図の一例を示す図である。なお、以下の説明では、一例として、第5センサ125の回路図として説明するが、第6センサ126も同様の回路構成を有する。
【0137】
図15に示す回路図では、ブリッジ回路の隣接する4辺に各々、ひずみゲージG
1、G
2及び固定抵抗R
1、R
2が接続されている。ひずみゲージG
1は、第5センサ125の突起部120c側の面に設けられ、ブリッジ回路において、1辺に設けられる。ひずみゲージG
2は、第5センサ125のひずみゲージG
1とは反対側の面に設けられ、ブリッジ回路において、ひずみゲージG
1が設けられる辺に隣接する1辺に設けられる。固定抵抗R
1は、ブリッジ回路において、ひずみゲージG
1が設けられる辺の対辺に設けられる。固定抵抗R
2は、ブリッジ回路において、ひずみゲージG
2が設けられる辺の対辺に設けられる。前述のとおり、第5センサ125及び第6センサ126に荷重受け部材130から加わる力は、同方向なので、第5センサ125のひずみゲージG
1及び第6センサ126ひずみゲージG
1が同方向にひずみ、第5センサ125のひずみゲージG
2及び第6センサ126ひずみゲージG
2がその逆方向にひずむ。
【0138】
図15に示す回路図では、下方から印加電圧V
INをかけることで、右方に出力電圧V
OUTが出力される。出力電圧V
OUTは、以下の数式(2)で示される。なお、出力電圧V
OUTは、回路に接続するセンサ120が第5センサ125である場合、V
S5+であり、回路に接続するセンサ120が第6センサ126である場合、V
S6+である。
【0139】
【0140】
このように接続モジュール100によって測定された各測定値は、例えば、走行補助装置1の制御部22に出力される。制御部22は、各測定値に基づいて、荷重受け部材130にかかる3軸の荷重、及びZ軸回りのモーメントを算出する。1[N]をセンサ120に加えた時の出力電力値をVcalとする場合、X軸方向にかかる荷重Fx、Y軸方向にかかる荷重Fy、及びZ軸方向にかかる荷重Fzは、以下の数式(3)、(4)、(5)によって示される。
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
また、荷重受け部材130の原点からセンサ120の突起部120cとの接点までの距離をLとし、荷重受け部材130のZ軸回りの回転角度をφとする場合、Z軸回りのモーメントM
zは、以下の数式(6)によって示される。なお、荷重受け部材130の原点は、平面視で荷重受け部材130の中心に位置し、例えば、
図11に示す荷重受け部材130の上面132dに位置するように設定される。また、角度φは、X軸方向又はY軸方向に隣接する2つのセンサ120の突起部120cと荷重受け部材130との2つの接点のY軸方向又はX軸方向のひずみ量の差に基づいて算出される。
【0145】
【0146】
[走行補助装置1の走行器具200への接続動作]
次に、走行補助装置1の走行器具200への接続動作について、
図16及び
図17を参照して説明する。
図16は、
図1に示す走行補助装置1の走行器具200への接続前の状態を一部断面で示す側面図である。
図17は、
図2に示す走行補助装置1の走行器具200への接続後の状態を一部断面で示す側面図である。
【0147】
実施形態の走行補助装置1で走行器具200を搬送する場合、作業者は、走行器具200に予め取り付け部材150を取り付けておく。作業者は、例えば、ねじ(不図示)等で、取り付け部材150の基部151の上面151aを走行器具200の下面側に固定する。走行補助装置1が搬送する走行器具200が複数である場合は、全ての走行器具200に予め取り付け部材150を取り付けておく。また、作業者は、直動アクチュエータ50によって摺動部材30を介して昇降機構40を駆動させ、センサ取付部材110及び荷重受け部材130を下降させておく。
【0148】
接続時には、まず、駆動輪20を駆動して、
図16に示すように、取り付け部材150を取り付けた走行器具200の下方に潜り込ませるよう、走行補助装置1を走行させる。次に、取り付け部材150の嵌合孔154の直下に荷重受け部材130の接続ピン部132を対向させるように位置づける。
【0149】
なお、走行器具200の下方に走行補助装置1を潜り込ませる際には、例えば、走行補助装置1が自動走行してもよいし、操作者が端末装置から無線通信を介して走行補助装置1の走行を操作してもよいし、操作者が手や足を使って走行補助装置1を走行器具200の下方に押し入れてもよい。自動走行の方式は、例えば、ビーコン等の発信機によって導かれる方式、走行補助装置1の入口となるガイド部材230付近にマーカ(識別子)を貼り付けて走行補助装置1に搭載したカメラでマーカを認識する方式、走行補助装置1に搭載した3Dカメラで走行器具200との相対位置関係を識別する方式、又はこれらを適宜組み合わせた方式等を含む。
【0150】
次に、直動アクチュエータ50を伸長させる方向に駆動する。直動アクチュエータ50の伸長に伴って、可動部52が摺動部材30を前後方向における昇降機構40の回転軸部材43a側(
図16及び
図17に示す右方)に移動させる。すると、
図17に示すように、昇降機構40によって、センサ取付部材110及びセンサ120を介して荷重受け部材130を上昇させる。より詳しくは、可動部52が摺動部材30とともに、第2リンクアーム44の摺動軸部材44bが基台固定部41のガイド孔41b内で回転軸部材43a側に移動する。
【0151】
これとともに、第2リンクアーム44は、回転軸部材44aの軸心回りに回転し、中央軸部材45を介して連結される第1リンクアーム43は、回転軸部材43aの軸心回りに回転するとともに、摺動軸部材43bが接続機構固定部42のガイド孔42b内で回転軸部材44a側に移動する。これにより、接続機構固定部42とともにセンサ取付部材110及びセンサ120を介して荷重受け部材130が上昇する。
【0152】
上昇した荷重受け部材130は、取り付け部材150に下方から接近し、接続ピン部132が嵌合孔154に下方から挿通して嵌合する。これにより、荷重受け部材130が取り付け部材150の水平方向及び垂直軸回りの旋回方向への移動を制限しかつ下方から支持して走行器具200を保持するので、接続モジュール100を介して、走行補助装置1が走行器具200に接続される。
【0153】
荷重受け部材130と取り付け部材150とが正確に接続された場合、感圧センサ160が緩衝材170を介して押圧ピン155に押圧されて接続状態を検知する。走行補助装置1は、接続ピン部132と嵌合孔154とが嵌合することで、走行器具200に対して水平方向(XY平面方向)、垂直方向(Z軸方向)、及び垂直軸回りの旋回方向(θ回転方向)の4軸で位置決めされる。
【0154】
この際、走行補助装置1が走行すると、走行した方向に接続モジュール100が移動する。走行補助装置1は、接続モジュール100を介して走行器具200を走行方向に引っ張る。また、走行補助装置1は、接続モジュール100を介して走行器具200を右左折移動方向又は旋回移動方向に引っ張る。また、走行器具200が操作者によって走行すると、走行補助装置1は、接続モジュール100を介して走行器具200にかかる力の方向に引っ張られる。すなわち、走行補助装置1と走行器具200とは、接続状態において、互いに追従する。
【0155】
走行補助装置1を走行器具200から離脱させる際には、直動アクチュエータ50を収縮させる方向に駆動する。直動アクチュエータ50の収縮に伴って、可動部52が摺動部材30を前後方向の固定部51側(
図16及び
図17に示す左方)に移動させる。すると、摺動部材30とともに、第2リンクアーム44の摺動軸部材44bが基台固定部41のガイド孔41b内で固定部51側に移動する。
【0156】
これとともに、第2リンクアーム44は、回転軸部材44aの軸心回りに回転し、中央軸部材45を介して連結される第1リンクアーム43は、回転軸部材43aの軸心回りに回転するとともに、摺動軸部材43bが接続機構固定部42のガイド孔42b内で固定部51側に移動する。これにより、接続機構固定部42とともにセンサ取付部材110及び荷重受け部材130が下降する。
【0157】
下降した荷重受け部材130は、接続ピン部132が嵌合孔154から下方に抜けて、取り付け部材150の下方に離隔する。これにより、走行補助装置1が走行器具200から離脱される。
【0158】
[走行補助制御方法]
次に、実施形態に係る走行補助装置1が走行器具200の走行を補助するための走行補助制御方法について説明する。まず、走行補助制御処理に用いる走行器具200の力学モデルについて、説明する。
図18は、実施形態に係る走行補助制御処理に用いる走行器具200の力学モデルの一例を示す図である。力学モデルは、走行器具200に対して走行補助装置1が接続した状態における水平方向の力の釣り合いを示している。
【0159】
図18に示す力学モデルにおいて、点A、B、C、Dは、走行器具200の従動輪220を示し、点Sは、走行器具200の重心を示し、点Hは、走行器具200を操作する操作者が走行器具200を押したり引いたりするために把持する位置を示している。実施形態の力学モデルにおいて、X軸は、点Sを原点とする走行補助装置1及び走行器具200の前後方向(前方が正方向)、Y軸は、点Sを原点とする走行補助装置1及び走行器具200の幅方向(前方を視た状態で右方向)に設定される。
【0160】
実施形態の走行補助装置1では、点Sに接続モジュール100の中心が一致する。より詳しくは、実施形態では、走行器具200に走行補助装置1が接続した状態において、力学モデルと
図7から
図13までに示した接続モジュール100との座標系が同一である。なお、力学モデルの座標系は、
図18に示す例に限定されず、例えば、任意の原点を有するグローバル座標系を設定し、公知の変換方法によって変換してもよい。
【0161】
力学モデルにおいて、搬送対象を含む走行器具200の質量をM、慣性モーメントをIとし、走行速度をv、角速度をωとし、従動輪220の摩擦力をfA、fB、fC、fDとし、走行補助装置1による並進駆動力をFR、旋回駆動力をτRとし、操作者が走行器具200に加える並進外力をFH、旋回外力をτHとすると、以下の数式(7)、(8)が成り立つ。
【0162】
【0163】
【0164】
また、走行器具200単体の静止摩擦係数をμとし、走行器具200のX軸方向の長さをl、Y軸方向の幅をwとすると、搬送対象を含む走行器具200の質量M及び慣性モーメントIは、以下の数式(9)、(10)によって示される。
【0165】
【0166】
【0167】
次に、走行補助制御処理の全体の流れについて説明する。
図19は、実施形態に係る走行補助装置1による走行補助制御処理の流れを示すフローチャートである。
図19に示す走行補助制御処理は、
図18に示す力学モデルを前提として実行される。なお、走行補助装置1は、前述した動作により走行器具200に接続されているものとする。
【0168】
図19に示す処理は、走行補助装置1の制御部22が、予め定められる制御プログラム及びデータに基づいて実行する。制御部22は、例えば、走行補助装置1の感圧センサ160が荷重受け部材130と走行器具200に取り付けられた取り付け部材150との接続を検出する、又は走行補助動作を開始するための所定の操作を受け付けることによって、
図19に示すフローチャートの処理を開始する。
図19に示すように、実施形態の走行補助制御方法は、キャリブレーションプロセスS300と、推定プロセスS400と、比例微分(Proportional Derivative;PD)制御プロセスS500と、を含む。
【0169】
キャリブレーションプロセスS300では、走行器具200の従動輪220の静止摩擦力fA、fB、fC、fDを計算する。また、これに基づいて、走行器具200の質量M及び慣性モーメントIを算出する。なお、走行補助制御方法では、キャリブレーションプロセスS300を実行する前に、走行器具200単体の静止摩擦係数μと、走行器具200のX軸方向の長さl及びY軸方向の幅wとを、予め計測し、走行補助装置1の制御部22に記憶させておく。
【0170】
ここで、キャリブレーションプロセスS300について、より詳細に説明する。
図20は、
図19に示すキャリブレーションプロセスS300の流れの一例を示すフローチャートである。
図20に示すように、実施形態のキャリブレーションプロセスS300は、ステップS301からステップS312までの処理を含む。制御部22は、
図19に示すフローチャートの処理において、キャリブレーションプロセスS300に移行すると、ステップS301から順に処理を実行する。
【0171】
ステップS301において、制御部22は、走行補助装置1の速度検知を開始する。すなわち、制御部22は、速度取得部20a(
図21参照)から、走行補助装置1の走行速度を所定周期毎に取得する。なお、実施形態の速度取得部20aは、モータドライバ21aから出力される4つの回転アクチュエータ21の回転数の情報に基づいて、走行補助装置1全体の走行速度v及び角速度ωを所定周期毎に算出し、算出した走行速度v及び角速度ωの情報を制御部22に出力する。制御部22は、ステップS302に移行する。
【0172】
ステップS302において、制御部22は、キャリブレーションプロセスS300の開始を報知する。具体的には、制御部22は、例えば、装置本体10に設けられたスピーカを含む報知部に、キャリブレーションプロセスS300の開始を周囲に知らせるための所定の音声を出力するよう制御する。キャリブレーションプロセスS300では、並進外力FH及び旋回外力τHがゼロの状態における走行器具200の従動輪220の静止摩擦力fA、fB、fC、fDを計算する。したがって、ステップS302では、操作者や周囲に、走行器具200から離れ、触れないように促すため、キャリブレーションプロセスS300の開始を報知する。制御部22は、ステップS303に移行する。
【0173】
ステップS303において、制御部22は、走行補助装置1の速度がゼロか否かを判断する。制御部22は、ステップS301において速度検知が開始されて以降、所定周期毎に速度取得部20aから走行補助装置1の走行速度v及び角速度ωの情報を取得する。ステップS303では、取得した走行速度v及び角速度ωがいずれもゼロか、少なくともいずれかがゼロではないか、を制御部22が判断する。走行補助装置1及びこれに接続する走行器具200が停止している場合、走行速度v及び角速度ωは、いずれもゼロである。制御部22は、速度=0と判断した場合(ステップS303;Yes)、ステップS304に移行する。
【0174】
走行補助装置1及びこれに接続する走行器具200は、従動輪220の静止摩擦力fA、fB、fC、fDに抗して移動している場合、走行速度v及び角速度ωは、少なくともいずれかゼロではない。すなわち、走行器具200は、並進外力FH及び旋回外力τHの少なくともいずれかが掛けられている状態である。制御部22は、速度≠0と判断した場合(ステップS303;No)、ステップS302に戻る。キャリブレーションプロセスS300は、走行補助装置1が停止している状態で開始する必要があるため、ステップS303でYesと判断するまで、ステップS302からステップS303までを繰り返し実行する。
【0175】
ステップS304において、制御部22は、走行補助装置1の接続部にかかる荷重の検知を開始する。荷重の検知では、走行補助装置1と走行器具200との接続部において、走行器具200からかかる荷重の方向及び大きさを検知する。すなわち、実施形態において、制御部22は、走行器具200に取り付けられた取り付け部材150から、荷重受け部材130が受けた荷重によって、センサ120が測定したひずみに対する電圧の測定値を、所定周期毎に取得する。制御部22は、ステップS305に移行する。
【0176】
ステップS305において、制御部22は、走行補助装置1の前方(X軸方向)への駆動力(並進駆動力FR)を増加させる。前方への駆動力は、各々の駆動輪20の回転により走行補助装置1が全体として前方に走行する際に、走行補助装置1と走行器具200との接続部において、走行器具200からかかる荷重Fxに等しい。制御部22は、各々の駆動輪20の回転により走行補助装置1が全体として前方に走行する方向への駆動力が所定量増加するように、モータドライバ21aにより各々の回転アクチュエータ21を制御する。制御部22は、ステップS306に移行する。
【0177】
ステップS306において、制御部22は、走行補助装置1の速度がゼロか否かを判断する。制御部22は、ステップS303と同様に、ステップS301において開始された速度検知による測定値を取得し、これに基づいて走行補助装置1の走行速度v及び角速度ωを算出する。
【0178】
なお、ステップS303で走行補助装置1の速度がゼロであると判断した後、ステップS305でX軸方向への駆動力のみ付与しているので、ステップS306では、走行補助装置1がX軸方向の並進移動のみすると仮定して、走行速度vのY軸方向成分及び角速度ωの算出を省略し、走行速度vのX軸方向成分のみ算出してもよい。
【0179】
走行補助装置1及びこれに接続する走行器具200が、従動輪220の静止摩擦力fA、fB、fC、fDにより停止状態を維持している場合、速度はゼロである。制御部22は、速度=0と判断した場合(ステップS306;Yes)、ステップS305に戻って駆動力を所定量増加させ、ステップS306でNoと判断するまで、ステップS305からステップS306までを繰り返し実行する。
【0180】
ステップS305で走行補助装置1に付与した駆動力により、走行器具200の従動輪220の摩擦力が静止摩擦力を超えて動いた場合、速度はゼロでない。制御部22は、速度≠0と判断した場合(ステップS306;No)、ステップS307に移行する。
【0181】
ステップS307において、制御部22は、接続部にかかる荷重の測定値を取得する。具体的には、制御部22は、ステップS306で速度≠0と判断した瞬間のセンサ120の計測値を取得する。制御部22は、ステップS308に移行する。
【0182】
ステップS308において、制御部22は、取得した荷重の測定値に基づいて、従動輪220の静止摩擦力fA、fB、fC、fDを算出する。制御部22は、まず、センサ120から取得した測定値に基づいて、数式(3)を用いて、走行補助装置1が走行器具200との接続部において受ける荷重Fxを算出する。荷重Fxは、走行補助装置1の並進駆動力FRのX軸方向成分に相当する。ここで、ステップS303で走行補助装置1の速度がゼロ(外力がゼロ)であると判断した後、ステップS305でX軸方向への駆動力のみ付与しているので、ステップS307では、走行補助装置1にかかる荷重がX軸方向成分のみであると仮定している。
【0183】
次に、制御部22は、並進駆動力FRに基づいて、数式(7)を用いて従動輪220の静止摩擦力fA、fB、fC、fDを算出する。ここでは、前述の通り、X軸方向の一軸方向のみで数式(7)を整理できる。並進駆動力FRは、走行補助装置1及び走行器具200が動き始めた瞬間の値である。したがって、走行補助装置1及び走行器具200の走行速度vは、ゼロである。また、ステップS303で走行補助装置1の速度がゼロ(外力がゼロ)であると判断しているので、並進外力FHは、ゼロである。したがって、数式(7)は、0=fA+fB+fC+fD+FRと整理できる。
【0184】
また、この際、従動輪220にかかる静止摩擦力fA、fB、fC、fDは、最大摩擦力であるため、4つの従動輪220の静止摩擦力fA、fB、fC、fDは、全て同一である(fA=fB=fC=fD)。したがって、fA=fB=fC=fD=-FR/4である。制御部22は、ステップS309に移行する。
【0185】
ステップS309において、制御部22は、従動輪220の静止摩擦力fA、fB、fC、fD、及び走行器具200単体の静止摩擦係数μに基づいて、走行器具200の質量Mを算出する。質量Mは、走行器具200単体の質量と、走行器具200に載せられた搬送対象の質量との合計値である。制御部22は、ステップS308で算出した静止摩擦力fA(=fB=fC=fD)と、予め記憶している静止摩擦係数μと、重力加速度gと、に基づき、数式(9)を用いて、質量Mを算出する。制御部22は、ステップS310に移行する。
【0186】
ステップS310において、制御部22は、走行器具200の質量M、及び寸法に基づいて、走行器具200の慣性モーメントIを算出する。制御部22は、ステップS309で算出した質量Mと、予め記憶している走行器具200のX軸方向の長さl及びY軸方向の幅wと、に基づき、数式(10)を用いて、慣性モーメントIを算出する。制御部22は、ステップS311に移行する。
【0187】
ステップS311において、制御部22は、走行補助装置1を停止させる。具体的には、制御部22は、各々の駆動輪20の回転を停止するように、モータドライバ21aにより各々の回転アクチュエータ21を制御する。制御部22は、ステップS312に移行する。
【0188】
ステップS312において、制御部22は、キャリブレーションプロセスS300の終了を報知する。具体的には、制御部22は、例えば、装置本体10に設けられたスピーカを含む報知部に、キャリブレーションプロセスS300の終了を周囲に知らせるための所定の音声を出力するよう制御する。これにより、ステップS312では、走行器具200の操作を補助するための走行補助の準備が整ったことを操作者に報知し、走行器具200の操作を開始するように促す。制御部22は、ステップS312を実行すると、
図20に示すフローチャートの処理を終了する。
【0189】
キャリブレーションプロセスS300を完了すると、
図19に示すように、操作者による走行器具200の操作を補助するための走行補助制御を開始する。走行補助制御では、推定プロセスS400と比例微分制御プロセスS500とを繰り返し実行する。
【0190】
推定プロセスS400では、操作者の操作により走行器具200にかかる外力(並進外力FH及び旋回外力τH)を推定する。比例微分制御プロセスS500では、操作者の操作により走行器具200にかかる外力(並進外力FH及び旋回外力τH)を、走行補助装置1の駆動力(並進駆動力FR及び旋回駆動力τR)が代わりに負担することで、当該外力がゼロとなるよう、走行補助装置1による走行補助制御を実行する。そして、再び推定プロセスS400に戻り、走行補助制御が終了されるまで、推定プロセスS400と比例微分制御プロセスS500とが繰り返し実行される。
【0191】
推定プロセスS400及び比例微分制御プロセスS500について、より詳しく説明する。
図21は、実施形態に係る走行補助装置1の制御ブロック図である。
図21に示すように、制御部22は、モータドライバ21aにより、各駆動輪20に対応する回転アクチュエータ21を制御する。モータドライバ21aは、各々の駆動輪20に所定のトルクをかけるための電力を回転アクチュエータ21に供給する。
【0192】
モータドライバ21aは、回転アクチュエータ21から回転数の情報を取得し、取得した回転数の情報を速度取得部20aへ出力する。速度取得部20aは、各々の回転アクチュエータ21の回転数の情報に基づき、走行補助装置1全体の走行速度v及び角速度ωを算出する。また、制御部22は、速度取得部20aから走行補助装置1の走行速度v及び角速度ωの情報を取得し、センサ120から走行補助装置1による並進駆動力FR及び旋回駆動力τRの情報を取得する。
【0193】
推定プロセスS400において、まず、制御部22は、速度取得部20a(
図21参照)から走行補助装置1の走行速度v及び角速度ωの情報を取得する。また、制御部22は、接続モジュール100のセンサ120の計測値から、走行補助装置1が走行器具200との接続部において受ける荷重F
x、F
y、F
z及びZ軸回りのモーメントM
zを算出する。荷重F
xは、走行補助装置1の並進駆動力F
RのX軸方向成分に相当し、荷重F
yは、並進駆動力F
RのY軸方向成分に相当する。また、モーメントM
zは、旋回駆動力τ
Rに相当する。
【0194】
次に、制御部22は、走行速度v及び角速度ωと、並進駆動力FR及び旋回駆動力τRと、キャリブレーションプロセスS300で算出した静止摩擦力fA、fB、fC、fD、質量M及び慣性モーメントIと、に基づいて、数式(7)及び数式(8)により、並進外力FH及び旋回外力τHを算出する。並進外力FHは、すなわち、X軸方向成分の外力FHxの推定値F*
Hxと、Y軸方向成分の外力FHyの推定値F*
Hyと、を含む。また、旋回外力τHは、Z軸回り成分の外力τHzの外力τHzの推定値τ*
Hzである。制御部22は、推定プロセスS400において外力FHx、FHy、τHzの推定値F*
Hx、F*
Hy、τ*
Hzを出力し、比例微分制御プロセスS500に移行する。
【0195】
比例微分制御プロセスS500は、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸回りの回転方向の3軸に分け、平行処理で実行される。すなわち、比例微分制御プロセスS500は、平行処理されるX軸方向比例微分制御ステップS501と、Y軸方向比例微分制御ステップS502と、Z軸回り比例微分制御ステップS503と、を含む。
【0196】
X軸方向比例微分制御ステップS501において、制御部22は、推定プロセスS400で推定されたX軸方向成分の外力FHxの推定値F*
Hxに基づいて、外力FHxがゼロになるためのX軸駆動力FRxを算出する。Y軸方向比例微分制御ステップS502において、制御部22は、推定プロセスS400で推定されたY軸方向成分の外力FHyの推定値F*
Hyに基づいて、外力FHyがゼロになるためのY軸駆動力FRyを算出する。Z軸回り比例微分制御ステップS503において、制御部22は、推定プロセスS400で推定されたZ軸回り方向成分の外力τHzの推定値τ*
Hzに基づいて、外力τHzがゼロになるためのZ軸回り駆動力τRzを算出する。
【0197】
制御部22は、比例微分制御により、X軸駆動力FRx、Y軸駆動力FRyの、及びZ軸回り駆動力τRzが素早く目標値に追従するための制御量として出力する。X軸方向比例微分制御ステップS501、Y軸方向比例微分制御ステップS502、及びZ軸回り比例微分制御ステップS503の後、制御部22は、トルク変換ステップS530を実行する。トルク変換ステップS530において、制御部22は、X軸駆動力FRx、Y軸駆動力FRyの、及びZ軸回り駆動力τRzを走行補助装置1が実現するための各々の駆動輪20のトルク値τWHEELを算出する。制御部22は、算出したトルク値τWHEELにより各々の駆動輪20が回転するよう、モータドライバ21aにより各々の回転アクチュエータ21を制御する。
【0198】
以上説明した推定プロセスS400及び比例微分制御プロセスS500は、走行補助制御を終了するまで、所定周期で繰り返し実行される。制御部22は、例えば、走行補助動作を終了するための所定の操作を受け付ける、走行補助装置1の感圧センサ160が荷重受け部材130と走行器具200に取り付けられた取り付け部材150との接続解除を検出することによって、
図19に示すフローチャートの処理を終了する。制御部22は、走行補助動作を一時的に停止する場合、キャリブレーションプロセスS300による結果を保存し、再開時に、キャリブレーションプロセスS300を省略してもよい。
【0199】
以上説明したように、実施形態の走行補助装置1は、装置本体10に支持されて装置本体10を走行させる駆動輪20と、走行速度v及び角速度ωの情報を取得する速度取得部20aと、本体部210と本体部210に支持される複数の従動輪220とを備える走行器具200に接続して走行器具200からかかる荷重Fx、Fy、τzを受ける接続部(荷重受け部材130及び取り付け部材150)と、接続部にかかる荷重Fx、Fy、τzを検知するセンサ(荷重センサ)と、制御部22と、を備え、駆動輪20に駆動力を付与して走行し始めた時の荷重に基づいて従動輪220の静止摩擦力fA、fB、fC、fDを算出し、荷重Fx、Fy、τzを駆動力(並進駆動力FR、旋回駆動力τR)とみなし、走行速度v及び角速度ωと駆動力と静止摩擦力fA、fB、fC、fDとに基づいて走行器具200にかかる外力(並進外力FH、旋回外力τH)の推定値を算出し、外力がゼロとなるような駆動力を算出し、当該駆動力で駆動輪20が走行するよう制御する。
【0200】
また、実施形態の走行補助制御方法は、装置本体10に支持されて装置本体10を走行させる駆動輪20と、走行速度v及び角速度ωの情報を取得する速度取得部20aと、本体部210と本体部210に支持される複数の従動輪220とを備える走行器具200に接続して走行器具200からかかる荷重を受ける接続部(荷重受け部材130及び取り付け部材150)と、接続部にかかる荷重を検知するセンサ(荷重センサ)と、を備える走行補助装置1において走行器具200の走行を補助する走行補助制御方法であって、駆動輪20に駆動力を付与して走行し始めた時の荷重に基づいて、従動輪220の静止摩擦力fA、fB、fC、fDを算出するキャリブレーションプロセスS300と、荷重Fx、Fy、τzを駆動力(並進駆動力FR、旋回駆動力τR)とみなし、走行速度v及び角速度ωと駆動力と静止摩擦力fA、fB、fC、fDとに基づいて、走行器具200にかかる外力(並進外力FH、旋回外力τH)の推定値を算出する推定プロセスS400と、推定プロセスS400で算出された外力がゼロとなるような駆動力を算出し、当該駆動力で駆動輪20が走行するよう制御する比例微分制御プロセスと、を含み、推定プロセスS400と比例微分制御プロセスS500とを繰り返し実行する。
【0201】
これにより、専用の操作部を必要とせずに、操作者が外力(並進外力FH、旋回外力τH)をかける方向に走行器具200が走行するよう補助して、操作者の負担を軽減させることができる。専用の操作部がなくても、操作者が走行器具200の任意の部位を手で掴んで直接操作することができるため、走行補助装置1を操作するための特別な練習が不要であり、狭い空間や混雑した環境においても、走行器具200の細やかな動きが実現可能である。また、走行補助装置1は、接続部(荷重受け部材130及び取り付け部材150)において、既存の走行器具200と接続可能かつ離脱可能であり、多様な走行器具に適用可能である。また、キャリブレーションプロセスS300では、搬送対象を載せた走行器具200にかかる静止摩擦力fA、fB、fC、fDを算出するので、静止摩擦力fA、fB、fC、fDと走行器具200単体の静止摩擦係数μ及び寸法とに基づいて、搬送対象を含む走行器具200の質量M及び慣性モーメントIを算出できる。また、推定プロセスS400及び比例微分制御プロセスS500では、搬送対象を含む走行器具200の質量M及び慣性モーメントIを前提として、走行器具200を操作する操作者による外力を推定し、この外力がゼロになるように制御するので、都度重量の異なる搬送対象を載せる場合でも、これに対応した走行補助制御が可能である。
【0202】
また、実施形態の走行補助装置1は、平面視形状が正方形状である基部131を含み、センサ120(荷重センサ)は、接続部(荷重受け部材130)の基部131を収容する溝部(ピン脚収容溝部112)を有するセンサ取付部材110に取り付けられる複数のセンサ120を含み、複数のセンサ120は、軸方向に交差する平面(XY平面)のうち第1方向(Y軸方向)に、基部131を挟んで配置され、基部131に接して基部131の変位に応じた第1測定値(差動出力電圧値VS1±、VS2±)を測定する第1センサ群(第1正センサ121p及び第2正センサ122p、第1負センサ121n及び第2負センサ122n)と、平面のうち第1方向に交差する第2方向(X軸方向)に、基部131を挟んで配置され、基部131に接して基部131の変位に応じた第2測定値(差動出力電圧値VS3±、VS4±)を測定する第2センサ群(第3正センサ123p及び第4正センサ124p、第3負センサ123n及び第4負センサ124n)と、基部131に接して基部131の軸方向に沿う第3方向(Z軸方向)の変位に応じた第3測定値(出力電圧値VS5+、VS6+)を測定する第3センサ群(第5センサ125及び第6センサ126)と、を含む。
【0203】
走行器具200から荷重を受ける接続部(荷重受け部材130)は、センサ取付部材110に取り付けられた複数のセンサ120を介して4側面及び底面(凹状部134の天面)が支持され、複数のセンサ120によって、接続部の第1方向、第2方向、及び第3方向の変位に応じた第1測定値、第2測定値、及び第3測定値が測定される。これによれば、例えば、制御部22が、センサ120が測定した各測定値に基づいて3軸の荷重Fx、Fy、Fzを算出可能である。したがって、走行補助装置1は、走行器具200からかかる荷重を3軸に分離して算出するための各測定値を測定することができる。また、走行補助装置1は、センサ120が取り付けられるセンサ取付部材110の材質が限定されない。
【0204】
また、実施形態の走行補助装置1において、第1センサ群(第1正センサ121p及び第2正センサ122p、第1負センサ121n及び第2負センサ122n)は、基部131の第1向(Y軸方向)に対向する2つの側面に対して2つずつ設けられ、各々の第1センサ群が第1測定値(差動出力電圧値VS1±、VS2±)を測定することで2つの第1測定値を測定し、第2センサ群(第3正センサ123p及び第4正センサ124p、第3負センサ123n及び第4負センサ124n)は、基部131の第2方向(X軸方向)に対向する2つの側面に対して2つずつ設けられ、各々の第2センサ群が第2測定値(差動出力電圧値VS3±、VS4±)を測定することで2つの第2測定値を測定する。
【0205】
走行補助装置1は、接続部(荷重受け部材130)に対して第3方向(Z軸)回りの回転方向(θ回転方向)にモーメントがかかった場合、基部131の対向する側面に配置された4つのセンサ120のうち、対角状に位置する2つのセンサが押圧される。したがって、基部131の各々の側面に2つずつのセンサを配置することで、例えば、制御部22が、センサ120が測定した各測定値、センサ120までの距離、第3方向回りの回転角度に基づいて、第3方向回りのモーメントMzを算出することが可能である。すなわち、走行補助装置1は、走行器具200からかかる荷重を4軸に分離して算出するための各測定値を測定することができる。
【0206】
また、実施形態の走行補助装置1において、制御部22は、第1測定値(差動出力電圧値VS1±、VS2±)と、第2測定値(差動出力電圧値VS3±、VS4±)と、第3測定値(出力電圧値VS5+、VS6+)と、に基づいて、接続部(荷重受け部材130)にかかる3軸の荷重Fx、Fy、Fzを算出し、第1測定値と、第2測定値と、接続部(荷重受け部材130)の所定の原点から基部131とセンサ120との接点までの距離Lと、接続部の第3方向(Z軸方向)回りの回転角度φと、に基づいて、接続部にかかる第3方向回りのモーメントMzを算出し、算出した3軸の荷重のうち、第1方向(Y軸方向)及び第2方向(X軸方向)にかかる荷重Fy、Fxと、第3方向(Z軸方向)回りのモーメントMzとを、走行補助装置1の駆動力(並進駆動力FR、旋回駆動力τR)とみなす。
【0207】
走行補助装置1は、走行器具200が接続している状態において、走行器具200からかかる荷重が、接続部(取り付け部材150を介して荷重受け部材130)にかかることで、走行器具200からかかる荷重によって変位する接続部(荷重受け部材130)の変位に応じた第1測定値、第2測定値、及び第3測定値を測定する。走行補助装置1は、各測定値に基づいて、制御部22によって、3軸の荷重Fx、Fy、Fzを算出可能である。また、走行補助装置1は、接続部(荷重受け部材130)に対して第3方向回りの回転方向(θ回転方向)にモーメントがかかった場合、基部131の対向する側面に配置された4つのセンサ120のうち、対角状に位置する2つのセンサ120が押圧される。したがって、基部131の各々の側面に2つずつのセンサ120を配置することで、走行補助装置1は、各測定値、センサ120までの距離、第3方向回りの回転角度φに基づいて、制御部22によって、第3方向回りのモーメントMzを算出可能である。これにより、走行補助装置1は、第1方向、第2方向、及び第3方向にかかる荷重Fx、Fy、Fzに加え、第3方向回りのモーメントMzを算出することができる。そして、第1方向及び第2方向にかかる荷重Fy、Fxを並進駆動力FR、第3方向回りのモーメントMzを旋回駆動力τRとみなし、これに基づいて、走行器具200を操作する操作者による外力(並進外力FH、旋回外力τH)の推定値を算出することができる。
【0208】
また、実施形態の走行補助装置1において、センサ120は、四角環形状の板体である外枠120aと、外枠120aの内周縁の一辺に連結して外枠120aの内周側に設けられる四角形状の板体である舌片120bと、舌片120bの一方の面から突出して基部131に接する突起部120cと、を有し、基部131の同一の側面を支持する2つのセンサ120は、互いに突起部120cの第3方向(Z軸方向)の位置がずれるようにセンサ取付部材110に取り付けられる。
【0209】
これによれば、基部131の側面を支持する箇所が第3方向にバラつきができるので、センサ取付部材110に対する基部131を含む接続部(荷重受け部材130)の意図しない回転を抑制することができる。
【0210】
また、実施形態の走行補助装置1において、接続部は、平面視形状が正方形状である基部131と基部131の上面131aから突出して軸方向(Z軸方向)に延びる接続ピン部132とを含む荷重受け部材130と、走行器具200に取り付けられ、接続ピン部132が挿入可能な嵌合孔154を有する取り付け部材150と、を備える。
【0211】
走行補助装置1は、荷重受け部材130が、接続ピン部132を有し、走行器具200に取り付けられる取り付け部材150が、接続ピン部132が挿入可能な嵌合孔154を有するので、走行器具200との接続及び分離が容易に可能である。
【0212】
また、実施形態の走行補助装置1において、接続ピン部132は、軸方向(Z軸方向)に視た形状が真円以外の形状を有する第1柱部132aを上端部に含み、嵌合孔154は、第1孔部154a、第2孔部154b、第3孔部154cが順に連通し、第1孔部154aは、第2孔部154bに向かって徐々に小さくなるようなテーパ状の内壁を有し、第2孔部154bは、第3孔部154cに向かって徐々に小さくなり、第1孔部154aのテーパ比より小さいテーパ比のテーパ状の内壁を有し、第3孔部154cは、接続ピン部132の第1柱部132aが嵌合可能である。
【0213】
これによれば、走行補助装置1の接続部は、荷重受け部材130と取り付け部材150とを位置決めする際に、第1孔部154aで軸方向に交差する平面の2軸方向(X軸方向及びY軸方向)の位置決めをし、第2孔部154bで軸方向回りの回転方向(θ回転方向)の位置決めをし、第3孔部154cでの嵌合で軸方向の1軸方向(Z軸方向)の位置決めをすることによって、一組の嵌合孔154と接続ピン部132との組み合わせのみで、4軸の位置決めが可能である。また、荷重受け部材130は、第1孔部154aにおいて取り付け部材150に対して第2孔部154bの方向に移動すると、第1柱部132aの上端縁の1つの角状部132cが第1孔部154aの内壁に接触して内壁に案内されることで径中心方向に移動する。また、荷重受け部材130は、第2孔部154bにおいて取り付け部材150に対して第3孔部154cの方向に移動すると、第1柱部132aの長径の両端部に位置する角状部132cが第2孔部154bの内壁に接触しながら第2孔部154bの角状部に向かって案内されることで軸中心回りに回転移動する。すなわち、接続部は、接続ピン部132と嵌合孔154とを対向させた状態から、接続ピン部132を嵌合孔154に挿通するだけで、軸方向に交差する平面の2軸方向、軸方向回りの回転方向、軸方向の1軸方向に順次位置決めされるので、容易に4軸の位置決めが可能である。
【0214】
また、実施形態の走行補助装置1が、装置本体10に対して一方向(例えば、装置本体10の前後方向)に移動可能に設けられる摺動部材30と、装置本体10と荷重受け部材130とを接続し、かつ摺動部材30の移動に伴って荷重受け部材130を装置本体10に対して昇降させる昇降機構40と、摺動部材30を装置本体10に対して一方向に移動させる直動アクチュエータ50と、を備え、荷重受け部材130は、本体部210の下面側に固定した取り付け部材150の下方から上昇することで、取り付け部材150を介して走行器具200を保持可能、かつ下降することで取り付け部材150及び走行器具200から離脱可能である。
【0215】
これによれば、走行補助装置1では、走行補助装置1が走行器具200の下に潜り込んで、荷重受け部材130が下方から走行器具200に取り付けられた取り付け部材150に接続するので、右左折や旋回、前進と後進との切り換え等が容易であり、安定的な走行が可能である。また、走行器具200への接続前に走行器具200の下方に潜り込む際は、荷重受け部材130を下降させることにより、走行補助装置1の全高を小さくできるので、低床の走行器具200にも対応が可能である。また、荷重受け部材130を下降させることにより走行器具200に取り付けられた取り付け部材150との接続が容易に解除できるので、予め複数の取り付け部材150を各々複数の走行器具200に取り付けておけば、複数の走行器具200を次々に搬送可能である。
【0216】
また、実施形態の走行補助装置1において、走行器具200の従動輪220は、自在輪である。
【0217】
自在輪は、発進時において、自在輪の軸方向に垂直な水平方向に押された場合に最も操作者への負荷が少なく、軸方向に押された場合に最も負荷が大きい。走行補助装置1は、走行器具200の静止状態において、荷重がかけられた方向に自動的に加速して、走り出しにおける操作者への負荷を軽減させるため、自在輪の軸方向に荷重がかけられた場合でも、走行器具200を容易に発進させることができる。
【0218】
(変形例)
[走行補助制御方法]
次に、変形例に係る走行補助制御方法について説明する。
図22は、変形例に係る走行補助装置1の制御ブロック図である。変形例における走行補助制御処理は、実施形態と同様に、
図18に示す力学モデルを前提として実行される。また、走行補助装置1は、前述した動作により走行器具200に接続されているものとする。
【0219】
変形例の走行補助制御では、比例微分制御に加え、さらに、粘性抵抗(Drag;抗力)制御を実行する。すなわち、実施形態の
図19に示すフローチャートにおいて、比例微分制御プロセスS500の代わりに、比例微分抗力(Proportional Derivative and Drag;PDD)制御プロセスを実行する。比例微分抗力制御プロセスでは、操作者の操作により走行器具200にかかる外力(並進外力F
H及び旋回外力τ
H)がゼロとなるよう、走行補助装置1による走行補助制御を実行する(比例微分制御プロセスS500)際に、走行補助装置1に進行方向と反対の外力が加えられた際の制御が実施形態と異なる。
【0220】
粘性抵抗制御プロセスは、比例微分制御プロセスS500と同様に、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸回りの回転方向の3軸に分けられ、X軸方向粘性抵抗制御ステップS521と、Y軸方向粘性抵抗制御ステップS522と、Z軸回り粘性抵抗制御ステップS523と、を含む。推定プロセスS400で推定された外力FHx、FHy、τHzの推定値F*
Hx、F*
Hy、τ*
Hzを算出した後、制御部22は、判断ステップS511、S512,S513を並列処理で実行する。
【0221】
判断ステップS511において、制御部22は、外力FHxの推定値F*
Hxと速度Vxとの積の正負を判断する。X軸方向において、走行補助装置1及び走行器具200の進行方向と同一の方向に外力FHxが作用した場合、操作者によってX軸方向に加速する方向に外力FHxが付与されたとみなす。走行補助装置1及び走行器具200の進行方向と同一の方向に外力FHxが作用した場合、外力FHxの推定値F*
Hxと速度Vxとの積は正の値となる。制御部22は、F*
HxVx≧0と判断した場合(判断ステップS511;Yes)、X軸方向比例微分制御ステップS501に移行する。
【0222】
X軸方向において、走行補助装置1及び走行器具200の進行方向と反対の方向に外力FHxが作用した場合、操作者によってX軸方向にブレーキがかけられたとみなす。走行補助装置1及び走行器具200の進行方向と反対の方向に外力FHxが作用した場合、外力FHxの推定値F*
Hxと速度Vxとの積は負の値となる。制御部22は、F*
HxVx<0と判断した場合(判断ステップS511;No)、X軸方向粘性抵抗制御ステップS521に移行する。
【0223】
判断ステップS512において、制御部22は、外力FHyの推定値F*
Hyと速度Vyとの積の正負を判断する。Y軸方向において、走行補助装置1及び走行器具200の進行方向と同一の方向に外力FHyが作用した場合、操作者によってY軸方向に加速する方向に外力FHyが付与されたとみなす。走行補助装置1及び走行器具200の進行方向と同一の方向に外力FHyが作用した場合、外力FHyの推定値F*
Hyと速度Vyとの積は正の値となる。制御部22は、F*
HyVy≧0と判断した場合(判断ステップS512;Yes)、Y軸方向比例微分制御ステップS502に移行する。
【0224】
Y軸方向において、走行補助装置1及び走行器具200の進行方向と反対の方向に外力FHyが作用した場合、操作者によってY軸方向にブレーキがかけられたとみなす。走行補助装置1及び走行器具200の進行方向と反対の方向に外力FHyが作用した場合、外力FHyの推定値F*
Hyと速度Vyとの積は負の値となる。制御部22は、F*
HyVy<0と判断した場合(判断ステップS512;No)、Y軸方向粘性抵抗制御ステップS522に移行する。
【0225】
判断ステップS513において、制御部22は、外力τHzの推定値τ*
Hzと角速度ωzとの積の正負を判断する。Z軸回り方向において、走行補助装置1及び走行器具200の進行方向と同一の方向に外力τHzが作用した場合、操作者によってZ軸回り方向に加速する方向に外力τHzが付与されたとみなす。走行補助装置1及び走行器具200の進行方向と同一の方向に外力τHzが作用した場合、外力τHzの推定値τ*
Hzと角速度ωzとの積は正の値となる。制御部22は、τ*
Hzωz≧0と判断した場合(判断ステップS513;Yes)、Z軸回り比例微分制御ステップS503に移行する。
【0226】
Z軸回り方向において、走行補助装置1及び走行器具200の進行方向と反対の方向に外力τHzが作用した場合、操作者によってZ軸回り方向にブレーキがかけられたとみなす。走行補助装置1及び走行器具200の進行方向と反対の方向に外力τHzが作用した場合、外力τHzの推定値τ*
Hzと角速度ωzとの積は負の値となる。制御部22は、τ*
Hzωz<0と判断した場合(判断ステップS513;No)、Z軸回り粘性抵抗制御ステップS523に移行する。
【0227】
X軸方向比例微分制御ステップS501、Y軸方向比例微分制御ステップS502、及びZ軸回り比例微分制御ステップS503は、実施形態と同様の処理が実行されるため、説明を省略する。
【0228】
X軸方向粘性抵抗制御ステップS521において、制御部22は、推定プロセスS400で取得した走行速度vのX軸方向成分の速度Vxに応じて、X軸駆動力FRxを算出する。また、Y軸方向粘性抵抗制御ステップS522において、推定プロセスS400で取得した走行速度vのY軸方向成分の速度Vyに応じて、Y軸駆動力FRyを算出する。また、Z軸回り粘性抵抗制御ステップS523において、推定プロセスS400で取得した角速度ωzに応じて、Z軸回り駆動力τRzを算出する。
【0229】
実施形態において、ブレーキ力であるX軸駆動力FRx、Y軸駆動力FRy、及びZ軸回り駆動力τRzは、粘性抵抗を再現する。したがって、粘性抵抗係数をbとすると、X軸駆動力FRx、Y軸駆動力FRy、及びZ軸回り駆動力τRzは、以下の数式(11)、(12)、(13)によって示される。
【0230】
【0231】
【0232】
【0233】
ここで、粘性抵抗係数bは、所定の空間を通過する球体にかかる粘性抵抗を仮想的に再現するよう任意で設定可能であり、この球体の半径をrとし、空間の動粘性係数をμdとすると、以下の数式(14)によって示される。
【0234】
【0235】
X軸方向、Y軸方向、及びZ軸回り方向において、比例微分制御プロセスS500又は粘性抵抗制御プロセスを各々実行した後、制御部22は、実施形態と同様に、トルク変換ステップS530を実行する。トルク変換ステップS530において、制御部22は、X軸駆動力FRx、Y軸駆動力FRyの、及びZ軸回り駆動力τRzを走行補助装置1が実現するための各々の駆動輪20のトルク値τWHEELを算出する。制御部22は、算出したトルク値τWHEELにより各々の駆動輪20が回転するよう、モータドライバ21aにより各々の回転アクチュエータ21を制御する。
【0236】
以上説明したように、変形例の走行補助装置1において、制御部22は、推定した外力(並進外力FH、旋回外力τH)が走行方向と反対の方向に作用していると判断すると、走行速度v及び角速度ωに所定の粘性抵抗係数bを乗算することで算出されるブレーキ力を駆動力(並進駆動力FR、旋回駆動力τR)とし、当該駆動力で駆動輪20が走行するよう制御する。
【0237】
また、変形例の走行補助制御方法は、走行方向と反対の方向に外力(並進外力FH、旋回外力τH)が作用した場合に比例微分制御プロセスS500の代わりに実行され、走行速度v及び角速度ωに所定の粘性抵抗係数bを乗算することで算出されるブレーキ力を駆動力(並進駆動力FR、旋回駆動力τR)とし、当該駆動力で駆動輪20が走行するよう制御する粘性抵抗制御プロセスをさらに含む。
【0238】
これにより、走行速度v及び角速度ωが小さい場合には振動を抑制するとともに、高速時にはブレーキ力を大きくすることができる。したがって、例えば、走行器具200が障害物に接触しそうになった時等、搬送対象への負担を低減しつつ、即座に減速、停止が可能である。
【0239】
なお、本実施形態は、上記態様に限定されるものではない。即ち、本実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0240】
例えば、実施形態では、X軸方向及びY軸方向の荷重と、Z軸回り方向の慣性モーメントとに加えて、Z軸方向の荷重も検知可能であるが、少なくともX軸方向及びY軸方向の荷重と、Z軸回り方向の慣性モーメントとが検知可能であれば、力覚センサの種類、数、配置及び組み合わせは限定されない。
【0241】
また、実施形態及び変形例では、全方向移動可能な走行補助装置1として説明したが、例えば、走行補助装置1がレール上を一軸方向のみに走行する装置であっても、本実施形態は適用可能である。この場合、接続部の荷重検知は、当該一軸方向にかかる荷重の正負及び大きさを検知できればよく、速度検知は、当該一軸方向の速度を検知できればよい。
【0242】
また、センサ取付部材110、カバー部材140、及び取り付け部材150は、平面視における外形状が正方形状に限定されず、長方形状、三角形状、円形状等でもよい。また、センサ取付部材110とカバー部材140との固定や、取り付け部材150と走行器具200との固定は、実施形態において、既存製品への汎用性が高いねじ固定を例示しているが、新規のアタッチメント構造を設けて固定するようにしてもよい。また、センサ取付部材110は、センサ120の取り付け部分の材質が特に限定されず、PLA、アルミ、SUS等の様々な材料で実現し得る。
【0243】
また、接続モジュール100は、昇降可能な荷重受け部材130と、走行器具200に取り付ける取り付け部材150とが分離可能に設けられる実施形態の態様に限定されず、走行器具200の下方から上昇させることで、走行器具200の下面に吸着するマグネット又は吸盤を含んでもよいし、走行器具200にねじ等で固定することで接続するものであってもよい。センサ120は、装置本体10側に支持されているが、接続部にかかる荷重を取得できる構成であれば、走行器具200側に取り付けられる構成であってもよい。
【0244】
また、走行速度v及び角速度ωの取得方法は、速度取得部20aがモータドライバ21aが回転アクチュエータ21から取得した回転数の情報に基づいて、走行補助装置1全体の走行速度v及び角速度ωを算出するという実施形態の方法に限定されない。例えば、速度取得部20aは、装置本体10等に別途設けられる加速度センサやジャイロセンサ等を含んでもよい。
【0245】
また、速度取得部20aの演算処理装置が制御部22に含まれ、回転アクチュエータ21の回転数から走行補助装置1全体の走行速度v及び角速度ωへの換算を、制御部22が実行してもよい。すなわち、制御部22は、回転アクチュエータ21のロータリエンコーダによる回転数の測定結果に基づいて、走行補助装置1全体の走行速度v及び角速度ωを算出してもよい。また、速度取得部20aが加速度センサ及びジャイロセンサを含む場合、制御部22は、加速度センサ及びジャイロセンサが測定した加速度及び角加速度に基づいて、走行補助装置1の走行速度v及び角速度ωに換算してもよい。
【符号の説明】
【0246】
1 走行補助装置
10 装置本体
11 基台
11a 駆動輪用開口
12 駆動輪支持部
13 アクチュエータ支持部
15 カバー部材
15a 昇降機構用開口
15b 上面
20 駆動輪
20a 速度取得部
21 回転アクチュエータ
21a モータドライバ
22 制御部
23 バッテリ
24 非常停止ボタン
25 リレースイッチ
30 摺動部材
31 ガイド軸部
32 被固定部
33 凹状部
40 昇降機構
41 基台固定部
41a 軸孔
41b ガイド孔
42 接続機構固定部
42a 軸孔
42b ガイド孔
43 第1リンクアーム
43a 回転軸部材
43b 摺動軸部材
44 第2リンクアーム
44a 回転軸部材
44b 摺動軸部材
45 中央軸部材
50 直動アクチュエータ
51 固定部
52 可動部
100 接続モジュール
110 センサ取付部材
110a、110b 上面
111 カバー固定ねじ穴
112 ピン脚収容溝部
112a 底面
113 センサ取付スリット
113a センサ用開口
114 センサ取付凹部
114a 爪部
115 配線穴
120 センサ(荷重センサ)
120a 外枠
120b 舌片
120c 突起部
121p 第1正センサ
121n 第1負センサ
122p 第2正センサ
122n 第2負センサ
123p 第3正センサ
123n 第3負センサ
124p 第4正センサ
124n 第4負センサ
125 第5センサ
126 第6センサ
130 荷重受け部材(接続部)
131 基部
131a 上面
131b 下面
132 接続ピン部
132a 第1柱部
132b 第2柱部
132c 角状部
132d 上面
133、134 凹状部
135 脚部
140 カバー部材
141 固定ねじ孔
142 センサ用穴
143 ピン用開口
144 押圧ピン貫通孔
145 配線孔
150 取り付け部材(接続部)
151 基部
151a 上面
151b 下面
152 孔形成部
152a 下縁
153 固定孔
154 嵌合孔
154a 第1孔部
154b 第2孔部
154c 第3孔部
154d 角状部
155 押圧ピン
160 感圧センサ
170 緩衝材
200 走行器具
210 本体部
220 従動輪
230 ガイド部材
231 第1アーム
232 第2アーム
240 ストッパー
250 ハンドル