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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031101
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】魚釣用スピニングリール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/01 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
A01K89/01 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134428
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 諒
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108BD02
(57)【要約】
【課題】座屈の進行を好適に抑制しつつドライブギャ軸とハンドル軸との連結構造を簡単化できるとともに、コスト低減を図る。
【解決手段】魚釣用スピニングリール100は、リール本体1にハンドル3が着脱可能に構成されている。リール本体1に設けられたドライブギャ軸2と、ハンドル3に設けられドライブギャ軸2に螺合されるハンドル軸31と、を備えている。ハンドル軸31には、ドライブギャ軸2への螺合によりドライブギャ軸2の端部25e,26eに当接する当接部36が一体に設けられており、ドライブギャ軸2には、ハンドル軸31の螺合によりハンドル軸31の先端部34cが当接する壁部28が設けられている構成とした。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体にハンドルが着脱可能に構成された魚釣用スピニングリールであって、
前記リール本体に設けられたドライブギャ軸と、
前記ハンドルに設けられ前記ドライブギャ軸に螺合されるハンドル軸と、を備え、
前記ハンドル軸には、前記ドライブギャ軸への螺合により前記ドライブギャ軸の端部に当接する当接部が一体に設けられており、
前記ドライブギャ軸には、前記ハンドル軸の螺合により前記ハンドル軸の先端部が当接する壁部が設けられていることを特徴とする魚釣用スピニングリール。
【請求項2】
前記ハンドル軸は前記先端部に向けて先細り形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項3】
前記ドライブギャ軸に前記ハンドル軸を螺合する際に、
前記ハンドル軸の前記当接部及び前記先端部が、前記ドライブギャ軸の前記端部及び前記壁部に対してそれぞれ同時に当接することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項4】
前記ドライブギャ軸に前記ハンドル軸を螺合する際に、
前記ハンドル軸の前記当接部が前記ドライブギャ軸の前記端部に対して当接した後に、前記ハンドル軸の前記先端部が前記ドライブギャ軸の前記壁部に対して当接し、
あるいは、前記ハンドル軸の前記先端部が前記ドライブギャ軸の前記壁部に対して当接した後に、前記ハンドル軸の前記当接部が前記ドライブギャ軸の前記端部に対して当接することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項5】
前記ドライブギャ軸の前記壁部は、前記ドライブギャ軸に一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用スピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リール本体にハンドルを着脱可能に構成した魚釣用スピニングリールが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の魚釣用スピニングリールは、リール本体のドライブギャ軸にハンドル軸を螺合させることでハンドルが取り付けられるようになっており、ドライブギャ軸を回転自在に支持するボールベアリングと、ドライブギャ軸の端部に装着された環状部材とを備えている。ドライブギャ軸は、ドライブギャを備え、ボールベアリングを介して回転自在に支持されている。
【0003】
特許文献1の環状部材は、ドライブギャ軸のボールベアリングよりも外側の端部の外周に装着されており、ドライブギャ軸よりも高強度のステンレス合金材により形成されている。これにより、特許文献1は、高負荷のハンドル巻き上げ等により、ハンドル軸の端部が座屈して膨らむのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6144590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の魚釣用スピニングリールは、ドライブギャ軸の端部に装着する環状部材によりドライブギャ軸に作用する負荷を抑制する構造であるため、部品点数が多くなるとともに、ドライブギャ軸や環状部材を高い寸法精度で製造する必要があり、コストアップに繋がるという課題があった。また、ドライブギャ軸の端部に環状部材を圧入や接着剤等により固定する必要があるため、製造工程が増えるとともに、高精度の圧入や接着による製造管理が難しく生産性に劣るという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するために創作されたものであり、座屈の進行を好適に抑制しつつドライブギャ軸とハンドル軸との連結構造を簡単化できるとともに、コスト低減を図ることができる魚釣用スピニングリールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、リール本体にハンドルが着脱可能に構成された魚釣用スピニングリールである。前記リール本体に設けられたドライブギャ軸と、前記ハンドルに設けられ前記ドライブギャ軸に螺合されるハンドル軸と、を備えている。前記ハンドル軸には、前記ドライブギャ軸への螺合により前記ドライブギャ軸の端部に当接する当接部が一体に設けられている。そして、前記ドライブギャ軸には、前記ハンドル軸の螺合により前記ハンドル軸の先端部が当接する壁部が設けられている。
【0008】
この魚釣用スピニングリールでは、ドライブギャ軸にハンドル軸を螺合すると、ハンドル軸の当接部がドライブギャ軸の端部に近づいて当接されるとともに、ハンドル軸の先端部がドライブギャ軸の壁部に近づいて当接され、ハンドル軸がドライブギャ軸に固定される。つまり、ハンドル軸の螺合による圧着力が、ドライブギャ軸の端部に対する当接部の度当て、及びドライブギャ軸の壁部に対するハンドル軸の先端部の度当てによる2箇所の度当てによって抑制される状態で、ハンドル軸をドライブギャ軸に固定できる。これにより、ドライブギャ軸にハンドル軸を螺合することにより生じる可能性のある座屈の進行を好適に抑制できる。したがって、従来のような環状部材を別途装着してドライブギャ軸に作用する負荷を抑制するものに比べて、座屈の進行を好適に抑制しつつドライブギャ軸とハンドル軸との連結構造を簡単化できる。また、ドライブギャ軸と環状部材を高い寸法精度で製造する必要がなくなり、コスト低減を図ることができる。
さらに、従来のような環状部材を別途装着するものに比べて、ハンドル軸をドライブギャ軸に固定する際に、圧入や接着剤等による固定が不要となるので生産性が向上する。また、従来のような環状部材を排除できるので軽量化も達成できる。
【0009】
また、前記ハンドル軸は前記先端部に向けて先細り形状に形成されていることが好ましい。
この構成では、ハンドル軸の先端部が壁部に当接することにより、先端部が座屈変形した場合に、その座屈変形した部分をドライブギャ軸との間に形成される隙間に逃がすことができる。
【0010】
また、前記ドライブギャ軸に前記ハンドル軸を螺合する際に、前記ハンドル軸の前記当接部及び前記先端部が、前記ドライブギャ軸の前記端部及び前記壁部に対してそれぞれ同時に当接することが好ましい。
【0011】
この構成では、ドライブギャ軸にハンドル軸を螺合する際に、ハンドル軸の螺合による圧着力をドライブギャ軸の端部及び壁部に対して分散できる。これにより、ドライブギャ軸にハンドル軸を螺合することにより生じる可能性のある座屈の進行を好適に抑制できる。
【0012】
また、前記ドライブギャ軸に前記ハンドル軸を螺合する際に、前記ハンドル軸の前記当接部が前記ドライブギャ軸の前記端部に対して当接した後に、前記ハンドル軸の前記先端部が前記ドライブギャ軸の前記壁部に対して当接することが好ましい。あるいは、これとは逆に、前記ハンドル軸の前記先端部が前記ドライブギャ軸の前記壁部に対して当接した後に、前記ハンドル軸の前記当接部が前記ドライブギャ軸の前記端部に対して当接することが好ましい。
【0013】
この構成では、ドライブギャ軸にハンドル軸を螺合する際に、ドライブギャ軸の端部及び壁部に対してハンドル軸の当接部及び先端部が段階的に当接するので、座屈の進行を効果的に抑制できる。
【0014】
また、前記ドライブギャ軸の前記壁部は、前記ドライブギャ軸に一体に形成されていることが好ましい。
【0015】
この構成では、ドライブギャ軸の加工成形時に、壁部を同時に形成することができるので、寸法精度及び生産効率が高い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、座屈の進行を好適に抑制しつつドライブギャ軸とハンドル軸との連結構造を簡単化できるとともに、コスト低減を図ることができる魚釣用スピニングリールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールの全体構成を示す側面図である。
図2図1のII-II線で切った断面を矢印方向から視た端面図である。
図3】左ハンドル時のドライブギャ軸とハンドル軸との連結構造を示す部分拡大断面図である。
図4】右ハンドル時のドライブギャ軸とハンドル軸との連結構造を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施形態に係る魚釣用スピニングリール100について図面を参照しながら説明する。以下の説明において、「前後」「上下」を言うときは図1に示した方向を基準とし、「左右」を言うときは図2に示す方向を基準とする。
【0019】
はじめに魚釣用スピニングリール100の基本構造について説明する。
図1に示すように、魚釣用スピニングリール100は、ハンドル3が取り付けられたリール本体1と、リール本体1の前側に設けられ、ハンドル3の巻き取り操作により回転するロータ4と、ロータ4の前側に設けられ、ハンドル3の巻き取り操作により前後方向に往復運動するスプール5とを備える。
【0020】
リール本体1は、左側に向って開口する側部開口部11が形成されたボディ10と、ボディ10の上部から上方に延びて釣竿に装着される竿取付部12aを先端に有する脚部12と、側部開口部11を塞ぐ蓋部材13と、ボディ10の後部に取り付けられた保護カバー14とを備える。
【0021】
リール本体1には、ボディ10の前部から前方に突出するように、駆動軸筒(不図示)及びスプール軸8(図2に一部図示)が組み付けられている。駆動軸筒の前端には、ロータ4が取り付けられている。スプール軸8の前端には、スプール5が取り付けられている。
【0022】
蓋部材13は、図2に示すように、側部開口部11の内側に挿入される円筒状の挿入部13aを備えている。挿入部13aの外周面には、雄ねじ部が形成されている。雄ねじ部は、側部開口部11の内周面に形成された雌ねじ部と螺合している。この螺合により、ボディ10と蓋部材13とが一体になっている。
【0023】
ボディ10内には、ハンドル3の操作に連動して駆動軸筒及びスプール軸8を駆動させるための構成として、左右方向に延在するドライブギャ軸2と、スプール往復動装置60とが備わる。
ドライブギャ軸2は、図2に示すように、ドライブギャ21及び歯車22を備えている。ドライブギャ軸2は、左右のボールベアリング15,16を介して蓋部材13及びボディ10に回転自在に支持されている。ドライブギャ軸2には、ハンドル3に備わるハンドル軸31が螺合により装着されている。これにより、ハンドル3とドライブギャ軸2とが一体に回転する。ドライブギャ軸2及びハンドル3の詳細は、後記する。
【0024】
スプール往復動装置60は、摺動子61と、連動歯車62とを備え、ボディ10の前後方向に延びるガイド軸(不図示)に沿って、摺動子61が前後方向に移動するように構成されている。摺動子61は、スプール軸8の後端に固定されており、右側に開口する案内溝61aを備えている。連動歯車62は、ボディ10の右側壁10aに設けられた支持部材63に支持され、ドライブギャ軸2の歯車22に噛合して回転する。連動歯車62は、摺動子61の案内溝61aに係合する偏芯突部62aを備えている。
【0025】
以上から、ハンドル3の巻き取り操作によってドライブギャ軸2及び歯車22が回転すると、連動歯車62が回転し、その回転運動が偏芯突部62a及び案内溝61aを介して摺動子61の前後運動に変換される。これにより、スプール軸8(スプール5)が前後方向に往復移動する。
【0026】
次にドライブギャ軸2、ハンドル3及びこれらの連結構造について詳細に説明する。
ドライブギャ軸2は、図2に示すように、略円筒状を呈しており、中心軸O1に沿う段付き円形の外周面及び左右に開口する螺合穴23,23を有している。左側の螺合穴23によりハンドル3を左側に取り付けることができ、また、右側の螺合穴23によりハンドル3を右側に取り付けることができる(図4参照)。左右の螺合穴23,23は、ドライブギャ軸2の軸方向の中央部で連通している。
【0027】
左右の螺合穴23は、開口側に形成された大径内周面23aと、大径内周面23aの奥側に形成され大径内周面23aよりも小径とされた小径内周面23bとをそれぞれ有している。このうち、左側の大径内周面23a及び右側の小径内周面23bには、ハンドル軸31を螺合するための雌ねじがそれぞれ形成されている。左側の大径内周面23aの雌ねじは、正ねじとは逆向きの逆ねじである。一方、右側の小径内周面23bの雌ねじは、正ねじである。
【0028】
図3にも示すように、ドライブギャ軸2の軸方向の中央部には、径方向内側に突出する壁部28が形成されている。壁部28は、中心軸O1を中心とする環状を呈している。壁部28の径方向の中央部には、円形の連通孔28aが形成されている。壁部28の左右側面28c,28cは、中心軸O1に直交する平坦面となっている。
【0029】
壁部28の左右両側には、図3図4に示すように、小径内周面23b,23bに連続する先端部収容内周面23c,23cが形成されている。各先端部収容内周面23cは、小径内周面23b,23bよりもさらに小径である。各先端部収容内周面23cには、ドライブギャ軸2にハンドル軸31を螺合する過程で、ハンドル軸31の後記する先端部34cが差し込まれるようになっている。そして、壁部28の左右側面28c,28cは、ハンドル軸31の先端部34cの先端面34dが当接される当接面として機能する。
【0030】
なお、先端部収容内周面23c,23cは、ハンドル軸31の後記する先端部34cの外周面との間に隙間が形成されるように、さらに小径に形成してもよい。
【0031】
ドライブギャ軸2の外周面には、左右方向の中心部から左側に偏倚した位置に、ドライブギャ21が一体的に形成されている。また、ドライブギャ軸2の左右方向の中心部から右側に偏倚した位置には、歯車22が一体に形成されている。ドライブギャ軸2は、アルミニウム合金で形成されている。なお、高い負荷が作用する状況下で釣糸を巻き取る高負荷巻き取り操作に対応した魚釣用スピニングリール(以下、「高負荷用の魚釣用スピニングリール」という)100においては、アルミニウム合金に代えてドライブギャ軸2を、例えば、ステンレス鋼や鉄鋼で形成してもよい。
【0032】
次に図3を参照して、ドライブギャ軸2の左側における連結構造について詳細に説明する。
ドライブギャ軸2の左側外周面には、ドライブギャ21の左側に連続する第1外周部24と、第1外周部24の左側に連続し第1外周部24よりも小径とされた第2外周部25とが形成されている。第1外周部24と第2外周部25との間には、中心軸O1に直交するリング状の段差面25aが形成されている。第2外周部25の外周面は、左ボールベアリング15が外嵌される座面として機能している。また、段差面25aは、環状のワッシャ21aを介して左ボールベアリング15の内輪15aの右側面が位置決めされる位置決め面として機能している。
なお、左ボールベアリング15の外輪15bは、中心軸O1を中心とする蓋部材13の円形状の内周面に嵌入されている。
【0033】
第2外周部25の左端部25eは、左ボールベアリング15の内輪15aの左側面よりも左側方に突出する大きさに形成され、あるいは内輪15aの左側面と面一となる大きさに形成されている。第2外周部25の左端外周面には、第2外周部25よりも小径とされた小径面25bが形成されている。これにより、ドライブギャ軸2の左端部25eの外径は、左ボールベアリング15の内径よりも小さくなっており、隙間が形成されている。
なお、左右のボールベアリング15,16は、ステンレス鋼で形成されている。
【0034】
次に図4を参照して、ドライブギャ軸2の右側における連結構造について詳細に説明する。
ドライブギャ軸2の右側外周面には、歯車22の右側に連続する第3外周部26が形成されている。第3外周部26の外周面には、径方向外側に突出する位置決め突起27が形成されている。位置決め突起27の右側において、第3外周部26の外周面は、右ボールベアリング16が外嵌される座面として機能している。また、位置決め突起27の右側面27aは、右ボールベアリング16の内輪16aの左側面が位置決めされる位置決め面として機能している。
なお、右ボールベアリング16の外輪16bは、リール本体1の右側壁10aの内面に、止め輪10cで抜け止め保持されている。また、右側壁10aには、カバー部材17が装着されている(図2参照)。
【0035】
第3外周部26の右端部26eは、右ボールベアリング16の内輪16aの右側面よりも右側方に突出する大きさに形成され、あるいは内輪16aの右側面と面一となる大きさに形成されている。第3外周部26の右端外周面には、段差面26bが形成されている。これにより、右端部26eの外径は、右ボールベアリング16の内径よりも小さくなっている。
【0036】
次に、ハンドル3について説明する。ハンドル3は、図2に示すように、アーム部32と、アーム部32に連結され中心軸О1に沿う段付き円形の外周面を備えたハンドル軸31とを備えている。アーム部32とハンドル軸31との連結部には、カバー部材3aが取り付けられている。
【0037】
ハンドル軸31は、アーム部32に連結される大径の基部33と、基部33に連続し基部33よりも小径に形成され、ドライブギャ軸2の螺合穴23に挿入される小径の挿入部34とを備えている。
【0038】
基部33は、アーム部32側に開口を有する略有底円筒状を呈しており、内側が中空とされている。挿入部34は、略円柱状を呈しており、基部33の底部に連続する第1挿入部34aと、第1挿入部34aに連続する第2挿入部34bと、第2挿入部34bに連続する先端部34cとを備えている。つまり、挿入部34は、先端に向けて外周面が段階的に窄まる(小径とされた)先細り形状となっている。
【0039】
第1挿入部34aは、基部33よりも小径とされた外周面を備えている。第2挿入部34bは、第1挿入部34aよりも小径とされた外周面を備えている。第1挿入部34aの外周面には、ドライブギャ軸2の左側の大径内周面23aの雌ねじに螺合される雄ねじが形成されている。一方、第2挿入部34bの外周面には、ドライブギャ軸2の右側の小径内周面23bの雌ねじに螺合される雄ねじが形成されている。第1挿入部34aの雄ねじは、正ねじとは逆向きの逆ねじである。第2挿入部34bの雄ねじは、正ねじである。
【0040】
ハンドル軸31の基部33と第1挿入部34aとの境界部分には、当接部として機能する段差面36が一体に設けられている。段差面36は、図3に示すように、基部33と第1挿入部34aとの外径差を利用して形成されており、中心軸O1に直交するリング状の平坦面である。段差面36は、第2外周部25の左端部25e(左端面)及び左ボールベアリング15の内輪15aの左側面に対向しており、ハンドル軸31をドライブギャ軸2に締め付ける過程で、これら第2外周部25の左端部25e及び内輪15aの左側面に当接するように構成されている。
【0041】
本実施形態では、第2外周部25の左端部25eに段差面36が当接するタイミングで、内輪15aの左側面に段差面36が同時に当接するように設定されている。
なお、段差面36の当接は、これに限られることはなく、第2外周部25の左端部25e及び内輪15aの左側面の一方に段差面36が当接した後に、他方に対して段差面36が当接するように構成してもよい。
【0042】
先端部34cは、第2挿入部34bよりも小径とされた外周面を備えている。先端部34cの先端面34dは、中心軸O1に直交する平坦面に形成されている。先端部34cは、ドライブギャ軸2の先端部収容内周面23cの内側に差し込まれる外径を有している。先端部34cは、ドライブギャ軸2にハンドル軸31を螺合する過程で、先端部収容内周面23cの内側に差し込まれる。そして、先端部34cの先端面34dは、ハンドル軸31の締め込みにより、壁部28の側面28cに当接する(当て付けられる)ようになっている。
【0043】
本実施形態では、図3に示すように、ドライブギャ軸2の左側におけるハンドル軸31の連結時に、第2外周部25の左端部25e及び内輪15aの左側面に段差面36が当接するタイミングで、ハンドル軸31の先端部34cが壁部28の左側面28cに同時に当接するように設定されている。また、ドライブギャ軸2の右側におけるハンドル軸31の連結においては、第3外周部26の右端部26e及び内輪16aの右側面に段差面36が当接するタイミングで、ハンドル軸31の先端部34cが壁部28の右側面28cに同時に当接するように設定されている。これにより、左右連結のいずれの場合においても、ハンドル軸31の螺合による圧着力をドライブギャ軸2の端部及び壁部28(中央部)に対して分散できる。
【0044】
なお、段差面36及び先端部34cによる当接は、これに限られることはなく、第2外周部25の左端部25e(第3外周部26の右端部26e)に段差面36が当接した後に、先端部34cの先端面34dが壁部28の左側面28c(右側面28c)に当接するように構成してもよい。また、これとは逆に、先端部34cの先端面34dが壁部28の左側面28c(右側面28c)に当接した後に、第2外周部25の左端部25e(第3外周部26の右端部26e)に段差面36が当接するように構成してもよい。
【0045】
また、先端部34cは、先端部収容内周面23c,23cとの間に隙間が形成されるように、さらに小径に形成してもよい。また、先端部34cは、先端面34dに向けてテーパー状に窄まるように先細り形状に形成してもよい。
【0046】
以上説明した本実施形態の魚釣用スピニングリール100によれば、ドライブギャ軸2の左側にハンドル軸31を螺合すると、ハンドル軸31の段差面(当接部)36がドライブギャ軸2の左端部25eに近づいて当接されるとともに、ハンドル軸31の先端部34cがドライブギャ軸2の壁部28に近づいて当接され、ハンドル軸31がドライブギャ軸2に固定される。つまり、ハンドル軸31の螺合による圧着力が、ドライブギャ軸2の左端部25eに対する段差面(当接部)36の度当て、及びドライブギャ軸2の壁部28に対するハンドル軸31の先端部34cの度当てによる2箇所の度当てによって抑制される状態で、ハンドル軸31をドライブギャ軸2に固定できる。これにより、ドライブギャ軸2にハンドル軸31を螺合することにより生じる可能性のある座屈の進行を好適に抑制できる。したがって、従来のような環状部材を別途装着してドライブギャ軸に作用する負荷を抑制するものに比べて、座屈の進行を好適に抑制しつつドライブギャ軸2とハンドル軸31との連結構造を簡単化できる。また、ドライブギャ軸2と環状部材を高い寸法精度で製造する必要がなくなり、コスト低減を図ることができる。
また、従来のような環状部材を別途装着するものに比べて、ドライブギャ軸2にハンドル軸31を固定する際に、圧入や接着剤等による固定が不要となるので生産性が向上する。また、従来のような環状部材を排除できるので軽量化も達成できる。これらの作用効果は、ドライブギャ軸2の右側にハンドル軸31を螺合する場合も同様に得られる。
【0047】
また、ハンドル軸31の先端部34cと先端部収容内周面23c,23cとの間に隙間を形成した場合には、その隙間を利用して、座屈変形が生じた部分を逃がすことができる。また、先端面34dに向けて先端部34cをテーパー状に窄まるように先細り形状に形成した場合にも、先端部収容内周面23c,23cとの間に隙間が形成されるので、同様に隙間を利用して、座屈変形が生じた部分を逃がすことができる。
【0048】
また、ドライブギャ軸2の左側にハンドル軸31を螺合する際に、ハンドル軸31の段差面(当接部)36及び先端部34cが、ドライブギャ軸2の左端部25e及び壁部28に対してそれぞれ同時に当接するので、ハンドル軸31の螺合による圧着力をドライブギャ軸2の左端部25e及び壁部28に対して分散できる。これにより、ドライブギャ軸2にハンドル軸31を螺合することにより生じる可能性のある座屈の進行を好適に抑制できる。この作用効果は、ドライブギャ軸2の右側にハンドル軸31を螺合する場合も同様に得られる。
【0049】
また、ドライブギャ軸2の左側にハンドル軸31を螺合する際に、ドライブギャ軸2の左端部25e及び壁部28に対してハンドル軸31の段差面(当接部)36及び先端部34cが段階的に当接するように構成した場合には、座屈の進行を効果的に抑制できる。この作用効果は、ドライブギャ軸2の右側にハンドル軸31を螺合する場合も同様に得られる。
【0050】
例えば、ハンドル軸31の当接部36がドライブギャ軸2の左端部25eに対して当接した後に、ハンドル軸31の先端部34cがドライブギャ軸2の壁部28に対して当接する場合には、先に当接面積の大きい左端部25eに当接させてハンドル軸31の螺合による圧着力を軽減させながら、先端部34cの壁部28に対する当接により、圧着力を補完的に軽減できる。
また、これとは逆に、ハンドル軸31の先端部34cがドライブギャ軸2の壁部28に対して当接した後に、ハンドル軸31の当接部36がドライブギャ軸2の左端部25eに対して当接する場合には、周囲に部品が存在しない壁部28に当接させてハンドル軸31の螺合による圧着力を効果的に軽減できる。したがって、ハンドル軸31の先端部34cの座屈変形を促しながら、ドライブギャ軸2の左端部25eへの圧着力の好適に抑制できる。
なお、左端部25e(右端部26e)及び壁部28の両方に対して必ずしも当接する必要はなく、いずれか一方に当接するものであってもよい。この場合には、巻き上げ時に強い負荷が作用した際に、当接していない方に対して補完的に当接するように構成することも可能である。
【0051】
また、壁部28が、ドライブギャ軸2に一体に形成されているので、ドライブギャ軸2の加工成形時に、壁部28を同時に形成することができるので、寸法精度及び生産効率が高い。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は実施形態で示した例に限定されない。
例えば、前記実施形態において、ハンドル軸31の段差面(当接部)36は、中心軸O1に直交する平坦面形状のものを示したが、これに限られることはなく、ドライブギャ軸2の左端部25e及び右端部26eに当接する形状であれば、種々の形状のものを採用し得る。
【0053】
また、壁部28は、ハンドル軸31の先端部34cの先端面34dが当接する側面28cを備えていればよく、円形の連通孔28aは必ずしも設けなくてもよい。連通孔28aを形成しない場合には、ハンドル軸31の先端部34cの先端面34dとの当接面積を大きくすることができ、圧着力を効果的に軽減できる。
また、側面28cは、ハンドル軸31の先端部34cの当接により座屈の進行を抑制できる形状であれば、平坦面形状に限られることはなく、種々の形状のものを採用し得る。この場合、側面28cの形状に対応するように、ハンドル軸31の先端部34cの先端面34dの形状を変更してもよい。
【0054】
また、前記実施形態では、前記ハンドル軸31がアーム部32に連結されるものを示したが、これに限られることはなく、ハンドル軸31がアーム部32に一体に設けられるものであってもよい。
【0055】
また、前記各実施形態では、側部開口部11に蓋部材13が螺合される魚釣用スピニングリール100について説明したが、これに限られることはなく、リール本体に蓋部材がねじやその他の固定手段を利用して固定される魚釣用スピニングリールについても本発明を好適に適用できる。
【符号の説明】
【0056】
1 リール本体
2 ドライブギャ軸
3 ハンドル
25e 左端部(端部)
26e 右端部(端部)
28 壁部
31 ハンドル軸
34c 先端部
36 当接部
100 魚釣用スピニングリール
図1
図2
図3
図4