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特開2024-31103縦軸型曝気装置及びオキシデーションディッチの運転装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031103
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】縦軸型曝気装置及びオキシデーションディッチの運転装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/16 20230101AFI20240229BHJP
   C02F 3/12 20230101ALI20240229BHJP
   B01F 23/234 20220101ALI20240229BHJP
   B01F 35/213 20220101ALI20240229BHJP
   B01F 35/222 20220101ALI20240229BHJP
   B01F 35/33 20220101ALI20240229BHJP
   B01F 27/112 20220101ALI20240229BHJP
   B01F 27/2122 20220101ALI20240229BHJP
   B01F 27/2124 20220101ALI20240229BHJP
   B01F 27/806 20220101ALI20240229BHJP
   B01F 27/90 20220101ALI20240229BHJP
【FI】
C02F3/16
C02F3/12 A
C02F3/12 J
B01F23/234
B01F35/213
B01F35/222
B01F35/33
B01F27/112
B01F27/2122
B01F27/2124
B01F27/806
B01F27/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134433
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】高井 善幸
(72)【発明者】
【氏名】岡野 文之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英二
【テーマコード(参考)】
4D028
4D029
4G035
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4D028BB03
4D028BC24
4D028BD06
4D028CA09
4D028CC07
4D029AA05
4D029BB01
4G035AB24
4G037DA23
4G037EA04
4G078BA05
4G078DB08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明の課題は、昇降用駆動源及び昇降機構を小型化、かつ低コスト化することに加え、安定した装置駆動が図られる縦軸型曝気装置、及び、この縦軸型曝気装置を備え、高度な硝化、脱窒を安定して行い得るオキシデーションディッチの運転装置を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、インペラを備える縦軸のみを支持して昇降させる機能を有する昇降装置を具備し、この昇降装置において、縦軸の回転駆動によって生じる負荷を低減する機構として組合せアンギュラ玉軸受を備えた縦軸型曝気装置を提供する。これにより、昇降用駆動源及び昇降機構の小型化及び低コスト化に加え、安定した装置駆動が図られる。また、被処理水の好気/嫌気に関する情報に基づき、上記縦軸型曝気装置のインペラの昇降を制御するオキシデーションディッチの運転装置を提供する。これにより、高度な硝化、脱窒を安定して行い得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦軸の下部にインペラを備え、前記インペラが気液界面付近に位置する標準位置で回転駆動することで、被処理水を曝気撹拌する縦軸型曝気装置において、
回転駆動力を生じるインペラ回転用駆動源と、
前記インペラ回転用駆動源の回転駆動力が伝達されて回転するインペラ回転用中空縦型伝達軸を有するインペラ回転駆動力伝達装置と、を具備し、
前記縦軸は、前記インペラ回転用中空縦型伝達軸に内挿されるとともに、上下方向に移動可能に係合され、
さらに、前記縦軸のうち、前記インペラ回転用中空縦型伝達軸から上方に延出する部分について、組合せアンギュラ玉軸受を介して回転自在に支持する支持部と、
前記支持部を昇降する縦軸昇降用駆動源と、を有する昇降装置を具備して成ることを特徴とする、縦軸型曝気装置。
【請求項2】
前記支持部は、前記組合せアンギュラ玉軸受を内部に配設した軸受ハウジングを具備し、
前記軸受ハウジングに対し、着脱可能なガイドバーを取り付けることを特徴とする、請求項1に記載の縦軸型曝気装置。
【請求項3】
縦軸型曝気装置により循環水路内の被処理水に循環水流を与え、前記循環水路内に好気状態と嫌気状態とを別々に形成するオキシデーションディッチの運転装置であって、
請求項1又は2に記載の縦軸型曝気装置と、
前記被処理水の好気/嫌気に関する情報を取得する好気/嫌気情報取得手段と、
前記好気/嫌気情報取得手段で取得する情報に基づき、前記インペラが水没又は前記標準位置に位置するように、前記昇降装置の前記縦軸昇降用駆動源を制御する制御手段と、を具備して成ることを特徴とする、オキシデーションディッチの運転装置。
【請求項4】
前記オキシデーションディッチは、前記縦軸型曝気装置により前記循環水路内全体を交互に好気状態と嫌気状態にするものであり、
前記好気/嫌気情報取得手段は、前記循環水路内全体を好気状態と嫌気状態とに切り換える時間情報を取得し、
前記制御手段は、前記時間情報に基づく嫌気状態形成時には前記インペラが水没し、前記時間情報に基づく好気状態形成時には前記インペラが前記標準位置に位置するように、前記縦軸昇降用駆動源を制御することを特徴とする、請求項3に記載のオキシデーションディッチの運転装置。
【請求項5】
前記好気/嫌気情報取得手段は、前記時間情報に加えて、前記被処理水の好気/嫌気の指標となる溶存酸素濃度情報を取得し、
前記制御手段は、前記時間情報に基づいて前記縦軸昇降用駆動源を制御するとともに、前記時間情報に基づく好気状態形成時において、前記溶存酸素濃度情報が設定範囲又は設定値を越える場合には前記インペラの回転数を下げ、前記溶存酸素濃度情報が前記設定範囲又は前記設定値を下回る場合には前記インペラの回転数を上げるように、前記インペラ回転用駆動源を制御することを特徴とする、請求項4に記載のオキシデーションディッチの運転装置。
【請求項6】
前記オキシデーションディッチは、前記縦軸型曝気装置により1サイクルの循環水路内に好気領域と嫌気領域とを分けて形成するものであり、
前記好気/嫌気情報取得手段は、前記被処理水の好気/嫌気の指標となる溶存酸素濃度情報を取得し、
前記制御手段は、前記溶存酸素濃度情報が設定範囲又は設定値を越える場合には前記インペラが水没し、前記溶存酸素濃度情報が前記設定範囲又は前記設定値を下回る場合には前記インペラが前記標準位置に位置するように、前記縦軸昇降用駆動源を制御することを特徴とする、請求項3に記載のオキシデーションディッチの運転装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦軸型曝気装置及びオキシデーションディッチの運転装置に関する。特に、本発明のオキシデーションディッチの運転装置は、本発明の縦軸型曝気装置を備えるオキシデーションディッチに係るオキシデーションディッチの運転装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば汚水等の被処理水を循環水路で硝化、脱窒するオキシデーションディッチにあっては、縦軸型曝気装置が採用されている。この縦軸型曝気装置は、上下方向に延在する縦軸と、この縦軸の下端に取り付けられるインペラと、その出力軸が縦軸の上端を吊着するインペラ回転駆動力伝達装置と、を備え、インペラがインペラ回転用電動機の駆動により気液界面付近の標準位置で回転することで、被処理水を曝気撹拌して、硝化、脱窒を行うものが知られている。
【0003】
ここで、上記縦軸型曝気装置にあっては、インペラを昇降する要求があり、これに応え、インペラを昇降させる機能(昇降装置)を備えた縦軸型曝気装置が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、縦軸型曝気装置として、撹拌翼を上下する撹拌翼上下移動手段(昇降装置)を備えるものが記載されており、この昇降装置として、インペラ回転用電動機を載置固定する架台に連結されたボールナットと、上下方向に延在しボールナットと螺合して架台を上下方向に支持するボール螺子と、その出力軸がボール螺子に連結されるボール螺子回転用電動機と、上下方向に延在し架台を上下方向に案内するガイド軸と、を備え、ボール螺子回転用電動機の駆動により、ボールナットが上下動し、これにより架台とともにインペラ回転用電動機及びインペラを備える縦軸が昇降するというものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-290885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された縦軸型曝気装置における昇降装置は、架台、インペラ回転用電動機及びインペラを備える縦軸を昇降するものであるから、昇降用駆動源としてのボール螺子回転用電動機及びその昇降に必要な昇降機構の負荷が大きく、従って、昇降用駆動源及び昇降機構が大型化し、高コスト化してしまう。
【0007】
ここで、本発明者らは、昇降装置を備える縦軸型曝気装置に係る検討を重ね、昇降装置が、インペラを備える縦軸のみを支持して昇降させる機能を有することで、昇降用駆動源及び昇降機構の小型化、かつ低コスト化が可能となるという知見を既に得ている。
そして、縦軸型曝気装置にあっては、メンテナンス作業に係る人的・時間的コストの削減や、連続稼働を可能とするため、より一層安定した装置駆動が望まれている。
【0008】
また、縦軸型曝気装置を備えるオキシデーションディッチにあっては、高度な硝化、脱窒を行うことと併せて、硝化及び脱窒に係る操作を安定、かつ連続で実施可能とすることが望まれている。
【0009】
したがって、本発明の課題は、昇降用駆動源及び昇降機構を小型化、かつ低コスト化することに加え、安定した装置駆動が図られる縦軸型曝気装置、及び、この縦軸型曝気装置を備え、高度な硝化、脱窒を安定して行い得るオキシデーションディッチの運転装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、昇降装置を備える縦軸型曝気装置において、インペラを備える縦軸のみを支持して昇降させる機能を有する昇降装置に対し、縦軸の回転駆動によって生じる負荷を低減する機構を具備することで、昇降用駆動源及び昇降機構を小型化、かつ低コスト化することに加え、安定した装置駆動が図られること、及び、オキシデーションディッチの運転装置として、被処理水の好気/嫌気に関する情報に基づき、上述した縦軸型曝気装置のインペラの昇降を制御することで、高度な硝化、脱窒を安定して行い得ることを見出して、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の縦軸型曝気装置及びオキシデーションディッチの運転装置である。
【0011】
上記課題を解決するための本発明の縦軸型曝気装置は、縦軸の下部にインペラを備え、インペラが気液界面付近に位置する標準位置で回転駆動することで、被処理水を曝気撹拌する縦軸型曝気装置において、回転駆動力を生じるインペラ回転用駆動源と、インペラ回転用駆動源の回転駆動力が伝達されて回転するインペラ回転用中空縦型伝達軸を有するインペラ回転駆動力伝達装置と、を具備し、縦軸は、インペラ回転用中空縦型伝達軸に内挿されるとともに、上下方向に移動可能に係合され、さらに、縦軸のうち、インペラ回転用中空縦型伝達軸から上方に延出する部分について、組合せアンギュラ玉軸受を介して回転自在に支持する支持部と、支持部を昇降する縦軸昇降用駆動源と、を有する昇降装置を具備して成ることを特徴とする。
この縦軸型曝気装置によれば、インペラ回転用駆動源の回転駆動力が、インペラ回転駆動力伝達装置のインペラ回転用中空縦型伝達軸に伝達されて当該インペラ回転用中空縦型伝達軸が回転し、このインペラ回転用中空縦型伝達軸に、下部にインペラを備える縦軸が内挿されて、インペラ回転用中空縦型伝達軸とともに回転可能かつインペラ回転用中空縦型伝達軸に対して上下方向に移動可能に係合され、この縦軸が、昇降装置の支持部に回転自在に支持されて、当該支持部が昇降装置の縦軸昇降用駆動源の駆動に従って昇降される。このため、昇降装置は、インペラを備える縦軸のみを支持し、これを昇降させることができ、昇降装置における昇降用駆動源及び昇降機構の小型化、かつ低コスト化が可能となる。
また、この縦軸型曝気装置によれば、昇降装置において縦軸を支持するために、ラジアル荷重及びアキシアル荷重(スラスト荷重)の両方を同時に支え、かつ高荷重に対する負荷能力を有する組合せアンギュラ玉軸受を用いることで、縦軸の回転駆動によって生じる負荷による影響を低減することができ、安定した装置駆動が可能となる。
【0012】
また、本発明の縦軸型曝気装置の一実施態様としては、支持部は、組合せアンギュラ玉軸受を内部に配設した軸受ハウジングを具備し、軸受ハウジングに対し、着脱可能なガイドバーを取り付けるという特徴を有する。
この特徴によれば、軸受に係る機構の供回りを防止し、安定した装置駆動が可能となるとともに、軸受交換に係るメンテナンス作業を容易とし、ランニングコスト低減を図ることが可能となる。
【0013】
また、上記課題を解決するための本発明のオキシデーションディッチの運転装置は、縦軸型曝気装置により循環水路内の被処理水に循環水流を与え、循環水路内に好気状態と嫌気状態とを別々に形成するオキシデーションディッチの運転装置であって、上記縦軸型曝気装置と、被処理水の好気/嫌気に関する情報を取得する好気/嫌気情報取得手段と、好気/嫌気情報取得手段で取得する情報に基づき、インペラが水没又は標準位置に位置するように、昇降装置の縦軸昇降用駆動源を制御する制御手段と、を具備して成ることを特徴とする。
このオキシデーションディッチの運転装置によれば、被処理水の好気/嫌気に関する情報に基づいて、上述した縦軸型曝気装置のインペラの昇降位置が制御されてインペラが水没又は標準位置に位置し、インペラが水没することで酸素供給が抑止される撹拌のみが行われる一方で、インペラが標準位置に位置することで曝気撹拌が最適に行われ、脱窒に必要な撹拌と、硝化に必要な曝気撹拌とが分けて行われる。また、上記縦軸型曝気装置を用いることで、オキシデーションディッチの運転において、曝気撹拌に係る省スペース化、低コスト化、安定稼働が可能となる。これにより、高度な硝化、脱窒を安定して行い得ることができる。
【0014】
また、本発明のオキシデーションディッチの運転装置の一実施態様としては、オキシデーションディッチは、縦軸型曝気装置により循環水路内全体を交互に好気状態と嫌気状態にするものであり、好気/嫌気情報取得手段は、循環水路内全体を好気状態と嫌気状態とに切り換える時間情報を取得し、制御手段は、時間情報に基づく嫌気状態形成時にはインペラが水没し、時間情報に基づく好気状態形成時にはインペラが標準位置に位置するように、縦軸昇降用駆動源を制御するという特徴を有する。
この特徴によれば、縦軸型曝気装置により循環水路内全体を交互に好気状態と嫌気状態にするオキシデーションディッチにおいて、循環水路内全体を好気状態と嫌気状態とに切り換える時間情報を取得し、この時間情報に基づく嫌気状態形成時にはインペラが水没し、時間情報に基づく好気状態形成時にはインペラが標準位置に位置するように、縦軸昇降用駆動源を制御することができる。これにより、嫌気状態形成時には脱窒に必要な撹拌のみが行われる一方で、好気状態形成時には硝化に必要な曝気撹拌を最適に行うことが可能となる。
【0015】
また、本発明のオキシデーションディッチの運転装置の一実施態様としては、好気/嫌気情報取得手段は、時間情報に加えて、被処理水の好気/嫌気の指標となる溶存酸素濃度情報を取得し、制御手段は、時間情報に基づいて縦軸昇降用駆動源を制御するとともに、時間情報に基づく好気状態形成時において、溶存酸素濃度情報が設定範囲又は設定値を越える場合にはインペラの回転数を下げ、溶存酸素濃度情報が設定範囲又は設定値を下回る場合にはインペラの回転数を上げるように、インペラ回転用駆動源を制御するという特徴を有する。
この特徴によれば、時間情報に加えて、被処理水の好気/嫌気の指標となる溶存酸素濃度情報を取得し、時間情報に基づいて縦軸昇降用駆動源を制御するとともに、好気状態形成時において、溶存酸素濃度情報が設定範囲又は設定値を上回る場合にはインペラの回転数を下げ、溶存酸素濃度情報が設定範囲又は設定値を下回る場合にはインペラの回転数を上げるように、インペラ回転用駆動源を制御することができる。これにより、好気状態形成時には硝化に必要な曝気撹拌が最適に行われるとともに、インペラ回転数が制御されて容易に溶存酸素濃度が所望の設定範囲又は設定値に維持されるため、硝化をより一層最適に行うことが可能となる。
【0016】
また、本発明のオキシデーションディッチの運転装置の一実施態様としては、オキシデーションディッチは、縦軸型曝気装置により1サイクルの循環水路内に好気領域と嫌気領域とを分けて形成するものであり、好気/嫌気情報取得手段は、被処理水の好気/嫌気の指標となる溶存酸素濃度情報を取得し、制御手段は、溶存酸素濃度情報が設定範囲又は設定値を越える場合にはインペラが水没し、溶存酸素濃度情報が設定範囲又は設定値を下回る場合にはインペラが標準位置に位置するように、縦軸昇降用駆動源を制御するという特徴を有する。
この特徴によれば、縦軸型曝気装置により1サイクルの循環水路内に好気領域と嫌気領域とを分けて形成するオキシデーションディッチにおいて、被処理水の好気/嫌気の指標となる溶存酸素濃度情報を取得し、この溶存酸素濃度情報が設定範囲又は設定値を上回る場合にはインペラが水没し、溶存酸素濃度情報が設定範囲又は設定値を下回る場合にはインペラが標準位置に位置するように、縦軸昇降用駆動源を制御することができる。これにより、酸素供給を抑止する撹拌のみと酸素供給を促進する曝気撹拌とが分けて行われ、容易に溶存酸素濃度を所望の設定範囲又は設定値に維持することができ、好気領域での最適な硝化及び嫌気領域での最適な脱窒を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、昇降用駆動源及び昇降機構を小型化、かつ低コスト化することに加え、安定した装置駆動が図られる縦軸型曝気装置、及び、この縦軸型曝気装置を備え、高度な硝化、脱窒を安定して行い得るオキシデーションディッチの運転装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の縦軸型曝気装置の構造を示す概略説明図である。
図2】本発明の縦軸型曝気装置の別態様を示す概略説明図である。
図3】本発明の縦軸型曝気装置を備えるオキシデーションディッチ及びその運転装置を示す概略説明図である。
図4】本発明のオキシデーションディッチの運転装置に係る制御手段による第一処理手順を示すフロー図である。
図5】本発明のオキシデーションディッチの運転装置に係る制御手段による第二処理手順を示すフロー図である。
図6】本発明のオキシデーションディッチの運転装置に係る制御手段による第三処理手順を示すフロー図である。
図7】本発明の縦軸型曝気装置を備えるオキシデーションディッチ及びその運転装置の別態様を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る縦軸型曝気装置及びオキシデーションディッチの運転装置の好適な実施態様について、添付図面を参照しながら説明する。
【0020】
(縦軸型曝気装置)
まず、本発明に係る縦軸型曝気装置の好適な実施態様を説明する。
図1は、本発明の実施態様における縦軸型曝気装置の構造を示す概略説明図である。
【0021】
図1に示すように、縦軸型曝気装置1は、インペラ回転用駆動源としてのインペラ回転用電動機2と、インペラ回転用電動機2の回転駆動力を減速して伝達するインペラ回転駆動力伝達装置3と、上下方向に延在して下部にインペラ4を備え、インペラ回転駆動力伝達装置3の回転駆動力が伝達されるとともに、上下方向に移動可能とされる縦軸5と、この縦軸5を回転自在に支持して昇降可能とする昇降装置6と、を備えている。
【0022】
図1に示すように、インペラ回転用電動機2は、縦型を成してインペラ回転駆動力伝達装置3上に設置され、所定の高速、低速での運転が可能とされている。
【0023】
インペラ回転駆動力伝達装置3は、架台(不図示)上に設置され、図示は省略するが、筐体3a内に、複数の減速用歯車及びインペラ回転用中空縦型伝達軸を備えていて、インペラ回転用電動機2の回転駆動力を、減速用歯車を介して出力軸としてのインペラ回転用中空縦型伝達軸に伝達し、このインペラ回転用中空縦型伝達軸を回転させるものである。
【0024】
縦軸5は、図1に示すように、下側の第一縦軸5aと上側の第二縦軸5bとを同軸に連結して成るものであり、第二縦軸5bは、その上部がインペラ回転駆動力伝達装置3から上方へ、その下部がインペラ回転駆動力伝達装置3から下方へと各々延出するようにしてインペラ回転用中空縦型伝達軸に内挿されるとともに、上下方向に移動可能となるように係合されている。
このとき、第二縦軸5bとインペラ回転用中空縦型伝達軸とを係合するための構造については特に限定されないが、例えばスプライン構造又はキー構造等が挙げられる。これにより、第二縦軸5bは、インペラ回転用中空縦型伝達軸とともに回転可能となり、かつインペラ回転用中空縦型伝達軸に対して上下方向に移動可能とすることができる。
【0025】
ここで、本実施態様の縦軸型曝気装置1において、インペラ回転用中空縦型伝達軸を備えるインペラ回転駆動力伝達装置3としては、減速機を採用することが挙げられる。このとき、減速機としては公知の構造を有するものを用いることができるが、特にホローシャフト型減速機を用いることが好ましい。インペラ回転駆動力伝達装置3としてホローシャフト型減速機を採用することで、簡易かつ安価に、インペラ回転用電動機2の回転駆動力が第二縦軸5bに伝達されるとともに、この第二縦軸5bの上下方向の移動を可能とすることができる。
【0026】
第一縦軸5aの下部の周囲には、図1に示すように、複数の羽根状のインペラ4が放射状に取り付けられている。各インペラ4は、側面としてのインペラ対向面にコーン状板4aを備えるとともに、その上部に折曲部4bを備え、回転時において、例えば汚水等の被処理水を容易に撹拌し得る構造とされている。そして、このインペラ4にあっては、コーン状板4aの上端部が被処理水の水位WL(気液界面に相当)と一致する位置が、インペラ4の被処理水に対する標準位置Sとされる。
【0027】
図1に示すように、昇降装置6は、第二縦軸5bのインペラ回転駆動力伝達装置3から上方へ延出する部分を回転自在に支持する支持部6aと、この支持部6aを昇降する縦軸昇降用駆動源としての縦軸昇降用シリンダ6bと、を備えている。この縦軸昇降用シリンダ6bとしては、電動や油圧等が適宜選ばれる。
【0028】
本実施態様の支持部6aでは、縦軸5の回転駆動により生じるモーメントに加え、縦軸5に取り付けられたインペラ4の回転により、縦軸5を押し上げる方向に向かって働く負荷が掛かることになる。すなわち、支持部6aにおいては、ラジアル荷重及びアキシアル荷重(スラスト荷重)の両方を同時に支え、かつ高荷重に対する負荷能力を有する機構を備えることが好ましい。
【0029】
支持部6aとしては、図1に示すように、有底円筒体を逆さに配置して成る軸受ハウジング6cと、この軸受ハウジング6c内に配設される組合せアンギュラ玉軸受6dと、を備えるものが挙げられる。
【0030】
ここで、アンギュラ玉軸受(単列アンギュラ玉軸受)とは、ボールと、軌道輪(内輪及び外輪)と、保持器とを備え、軌道輪とボールとの間にかかる荷重方向と、軸に対する直角方向との角度(接触角)に応じて、高速回転への対応や負荷能力向上が可能となるものとして知られている。そして、単列アンギュラ玉軸受を複数組み合わせて、組合せアンギュラ玉軸受とすることで、さらに負荷能力を高めることが可能となる。
【0031】
本実施態様における組合せアンギュラ玉軸受6dとしては、縦軸5の回転駆動によって生じる負荷による影響を低減することができるものであればよく、背面、正面、並列のいずれの組合せからなるものであってもよい。特に、本実施態様における組合せアンギュラ玉軸受6dとしては、背面又は正面のいずれかの組合せからなるものが好ましい。これにより、支持部6aにおいてラジアル荷重及び両方向のアキシアル荷重を同時に支えることが可能となるため、縦軸5の回転駆動によって生じる負荷による影響がより一層低減され、更に安定した装置駆動が可能となる。
この組合せアンギュラ玉軸受6dは、その内輪が第二縦軸5bに嵌着されるとともに、その外輪が軸受ハウジング6cの円筒内周面に嵌着され、これにより、縦軸5が支持部6aに回転自在に支持されるものとなる。
【0032】
縦軸昇降用シリンダ6bは、インペラ回転駆動力伝達装置3上に設置され、その進退ロッド6eの先端部(図示下端部)が支持部6aの上部に連結されて上下に延在するように配設されている。
【0033】
なお、図1に示すように、インペラ回転駆動力伝達装置3の上部側には、インペラ回転駆動力伝達装置3内及び組合せアンギュラ玉軸受6dへの塵等の侵入を防止すべく、その下端が、インペラ回転駆動力伝達装置3の上面におけるインペラ回転用中空縦型伝達軸の周囲に接続されるとともに、その上端が、支持部6aの軸受ハウジング6cの下面における組合せアンギュラ玉軸受6dの周囲に接続される伸縮可能な蛇腹7を採用するとともに、インペラ回転駆動力伝達装置3の下部側には、インペラ回転駆動力伝達装置3内への塵等の侵入を防止すべく、インペラ回転駆動力伝達装置3の下面に、第二縦軸5bを囲繞するように垂設される外管8aと、第二縦軸5bの下端に設けられる第一縦軸5aの連結用フランジ5cの上面に、第二縦軸5bを囲繞するとともに、外管8aに内挿されるように立設されて外管8aに対して摺動する内管8bと、を備える二重管構造を採用するものとしてもよい。
また、図1に示すように、インペラ回転駆動力伝達装置3の上部側には、第二縦軸5b、昇降装置6及び蛇腹7を収容するケーシング9を設けるものとしてもよい。
【0034】
このように構成された縦軸型曝気装置1にあって、インペラ4を回転する場合には、インペラ回転用電動機2が駆動される。このインペラ回転用電動機2の回転駆動力は、インペラ回転駆動力伝達装置3のインペラ回転用中空縦型伝達軸に伝達されて、インペラ回転用中空縦型伝達軸が回転し、このインペラ回転用中空縦型伝達軸に係合される縦軸5が回転することでインペラ4が回転する。
【0035】
ここで、インペラ4の上下方向の位置を変える場合には、昇降装置6の縦軸昇降用シリンダ6bが駆動される。この縦軸昇降用シリンダ6bの駆動に従い進退ロッド6eが進退するとともに、第二縦軸5bがインペラ回転用中空縦型伝達軸に対して上下方向に摺動し、縦軸5が昇降することでインペラ4が昇降する。この縦軸昇降用シリンダ6bの駆動により、縦軸5は、図1において実線で示す最高位置と破線で示す最低位置との間を移動し、縦軸昇降用シリンダ6bの停止に従って所望の位置で停止される。
【0036】
上述したように、本実施態様の縦軸型曝気装置1においては、昇降装置6により、インペラ4を備える縦軸5のみが支持され、これが昇降される構成のため、昇降用駆動源及び昇降機構が従来に比して小型化され、低コスト化が図られる。また、本実施態様の縦軸型曝気装置1によれば、昇降装置6において縦軸5を支持するために、ラジアル荷重及びアキシアル荷重(スラスト荷重)の両方を同時に支え、かつ高荷重に対する負荷能力を有する組合せアンギュラ玉軸受6dを用いることで、縦軸5の回転駆動によって生じる負荷による影響を低減することができ、安定した装置駆動が可能となる。
【0037】
また、本実施態様の縦軸型曝気装置1には、安定した装置駆動のための構造を更に設けるものとしてもよい。
図2は、本実施態様の縦軸型曝気装置1の別態様を示す概略説明図である。
図2に示すように、本実施態様の縦軸型曝気装置1の別態様としては、支持部6aにおける軸受ハウジング6cに対し、軸受ハウジング6cの昇降を案内し、かつ、供回りを防止するためのガイドバー6fを着脱可能となるように取り付けるものが挙げられる。なお、図2において、図1に示したものと同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図2においては、インペラ4に係る部分は図示を省略しており、破線枠内は、ガイドバー6fを上方から見たときの平面図である。
【0038】
ガイドバー6fの構造及び軸受ハウジング6cに対するガイドバー6fの取付構造については、特に限定されない。例えば、図2に示すように、ガイドバー6fとして複数の平板を用い、軸受ハウジング6cの上端側にボルト・ナットを介して取り付けるものが挙げられる。なお、このとき、ガイドバー6fは、ケーシング9内で回転不能となるものであればよく、例えば、ガイドバー6fをケーシング9側にも着脱可能となるように固定するものであってもよく、ガイドバー6fの形状・大きさにより、ケーシング9内での回転を不能とするものであってもよい。
これにより、縦軸5の回転駆動時に軸受に係る各機構(組合せアンギュラ玉軸受6d及び軸受ハウジング6c)が供回りを生じることを抑制し、支持部6aに掛かる負荷をより低減させることができ、安定した装置駆動が可能となる。さらに、ガイドバー6fを着脱可能に取り付けることで、必要に応じて昇降装置6とケーシング9を分離することが容易となる。具体的には、軸受交換に係るメンテナンス作業において、昇降装置6全体をケーシング9から取り外す必要がなく、支持部6a(軸受に係る機構)のみの交換が容易となるため、ランニングコスト低減を図ることが可能となる。
【0039】
(オキシデーションディッチの運転装置)
図3は、本実施態様の縦軸型曝気装置1(図1又は図2に示した縦軸型曝気装置1)を備えるオキシデーションディッチ及びその運転装置を示す概略説明図であり、本実施態様のオキシデーションディッチ11は、例えば小規模下水処理場等の水処理設備として採用されているものである。なお、図3中の一点鎖線の矢印は、制御又は入出力可能に接続されていることを示すものである。
【0040】
図3に示すように、オキシデーションディッチ11は、平面視長円形状を成す槽12を備え、この槽12の中央部に長手方向に延在する隔壁13が配設され、この隔壁13周囲の領域が無終端状の循環水路14とされている。この循環水路14には導入口12aを通して汚水等の被処理水が導入されているとともに、循環水路14で浄化された(詳しくは後述)浄化水が導出口12bを通して導出されている。
【0041】
槽12の隔壁13の一端(図示右端)付近には、図1又は図2に示した縦軸型曝気装置1が配設されている。この縦軸型曝気装置1は、槽12上に設けられたコンクリート上にインペラ回転駆動力伝達装置3を載置・固定することで設置されていて、縦軸5がコンクリートに形成されている貫通孔を挿通するように設置されている。この槽12内の被処理水は、インペラ4が浸漬するように水量が調整され、インペラ回転用電動機2の駆動によるインペラ4の回転に従って循環水路14を図示反時計回りに循環し、循環水路14内に好気状態と嫌気状態とを別々に形成する(詳しくは後述)。
【0042】
また、本実施態様においては、オキシデーションディッチ11の運転を制御するオキシデーションディッチの運転装置30(以下、単に「運転装置30」とも呼ぶ)を具備している。
【0043】
この運転装置30は、被処理水に浸漬するように配設され、被処理水中の溶存酸素濃度を計測する溶存酸素濃度計(DO計;好気/嫌気情報取得手段)15と、時間を計測するタイマ(好気/嫌気情報取得手段)16と、これらに接続されて、縦軸昇降用シリンダ6b及びインペラ回転用電動機2に制御信号を出力する制御手段17と、を備えている。
【0044】
制御手段17はCPUで構成され、好気/嫌気情報取得手段による各計測情報に基づいて、インペラ4が撹拌のみを行う水没位置、若しくは、インペラ4が曝気撹拌を最適に行う標準位置Sに位置するように縦軸昇降用シリンダ6bを制御するとともに、インペラ4が硝化又は脱窒に最適な回転数となるようにインペラ回転用電動機2を制御する。
【0045】
さらに、運転装置30は、制御手段17に接続される記憶手段18を備えている。記憶手段18は、好気/嫌気状態を形成する時間、DO設定範囲、インペラ4の水没位置、標準位置S、高速運転、低速運転等に関して予め設定されている情報、比較演算式等を固定情報として記憶するとともに、制御手段17による処理手順をプログラムの形で格納する。
【0046】
ここで、縦軸型曝気装置1により循環水路14内の被処理水に循環水流を与え、循環水路14内に好気状態と嫌気状態とを別々に形成するオキシデーションディッチとしては、循環水路14内全体を交互に好気状態と嫌気状態とするものと、1サイクルの循環水路14内に好気領域と嫌気領域とを分けて形成するものとに大別される。
【0047】
まず、循環水路14内全体を交互に好気状態(好気領域)と嫌気状態(嫌気領域)とするオキシデーションディッチに適用され、予め設定される好気状態形成時間、嫌気状態形成時間に基づいて運転を行う第一処理手順について説明する。
【0048】
この第一処理手順は記憶手段18にプログラムの形で書き込まれ、制御手段17はこのプログラムに従い、第一処理手順を実行する。
図4は、本実施態様の運転装置30に係る制御手段17による第一処理手順を示すフロー図である。
以下、図4に基づき、第一処理手順の詳細について説明する。
【0049】
この第一処理手順は、まず、ステップ501(S501)において、タイマ16による計時を開始し、ステップ502(S502)において、好気状態を形成するのか、嫌気状態を形成するのかを判定する。ここで、好気/嫌気状態の何れを形成するかは予め設定及び記憶されていて、好気状態を形成する場合にはステップ503(S503)へ進む。
【0050】
ステップ503(S503)では、インペラ4が気液界面(水位WL)付近の標準位置Sに位置するように縦軸昇降用シリンダ6bを制御し、ステップ504において、インペラ4が所定の高速運転となるようにインペラ回転用電動機2を制御する。
【0051】
このステップ503(S503)、ステップ504(S504)により、インペラ4が標準位置Sに位置して高速回転し、曝気撹拌が最適に行われる。
【0052】
具体的には、被処理水が撹拌され、図3に示す反時計回りの循環螺旋流が形成されるとともに上下撹拌され、この撹拌に従って活性汚泥の沈降が抑制される一方で、上下撹拌による気液界面の増大で気液接触が促されて、被処理水に対し大量の酸素供給が促進される曝気が成され、循環水路14全体の被処理水が最適に硝化処理される。
【0053】
ステップ505(S505)では、タイマ16による計時(時間情報)が、予め設定及び記憶されている好気状態形成時間に達し、嫌気状態に切り換えるか否かを判定し、好気状態形成時間に達していない場合には、ステップ506(S506)へ進み、ステップ506(S506)において、例えば外部スイッチ等の入力で運転を終了するか否かを判定し、運転継続の場合には、ステップ505(S505)へ戻り、好気状態形成時間に達するのを待ち、運転終了の場合には、この第一処理を終了する。
【0054】
一方、ステップ505(S505)において、タイマ16による計時が好気状態形成時間に達したと判定した場合には、ステップ507(S507)で、運転終了か否かを判定し、運転終了の場合には、この第一処理を終了し、運転継続の場合には、ステップ508(S508)へ進む。また、ステップ502(S502)において、嫌気状態を形成すると判定した場合も、ステップ508(S508)へ進む。
【0055】
ステップ508(S508)では、循環水路14内全体を嫌気状態とすべく、インペラ4が水没するように縦軸昇降用シリンダ6bを制御し、ステップ509(S509)において、インペラ4が所定の低速運転となるようにインペラ回転用電動機2を制御する。
【0056】
このステップ508(S508)、ステップ509(S509)により、インペラ4が水没して低速回転し、撹拌のみが行われる。
【0057】
具体的には、インペラ4を、水没高さLが100mm~300mm程度となるよう水没させる(図1参照)。これにより、被処理水に対しては酸素供給が抑止された状態での撹拌のみが成され、循環水路14全体の被処理水は最適に脱窒処理される。
【0058】
ステップ510(S510)では、タイマ16による計時が、予め設定及び記憶されている嫌気状態形成時間に達し、好気状態に切り換えるか否かを判定し、嫌気状態形成時間に達していない場合には、ステップ511(S511)へ進み、ステップ511(S511)において、運転終了か否かを判定し、運転継続の場合には、ステップ510(S510)へ戻り、嫌気状態形成時間に達するのを待ち、運転終了の場合には、この第一処理を終了する。
【0059】
一方、ステップ510(S510)において、タイマ16による計時が嫌気状態形成時間に達したと判定した場合には、ステップ512(S512)で、運転終了か否かを判定し、運転終了の場合には、この第一処理を終了し、運転継続の場合には、ステップ503(S503)の好気状態形成時のインペラ4の制御へ戻り、同様な処理を繰り返す。
【0060】
このように、第一処理手順を実行する運転装置30によれば、縦軸型曝気装置1により循環水路14内全体を交互に好気状態と嫌気状態にするオキシデーションディッチにおいて、タイマ16により循環水路14内全体を好気状態と嫌気状態とに切り換える時間情報を取得し、時間情報に基づく嫌気状態形成時にはインペラ4が水没し、時間情報に基づく好気状態形成時にはインペラ4が標準位置Sに位置するように、縦軸昇降用シリンダ6bを制御しているため、嫌気状態形成時には脱窒に必要な撹拌のみが行われる一方で、好気状態形成時には硝化に必要な曝気撹拌が最適に行われる。従って、上述した縦軸型曝気装置1の作用・効果に加えて、縦軸型曝気装置1により循環水路14内全体を交互に好気状態と嫌気状態にするオキシデーションディッチにおいて、高度な硝化、脱窒を安定して行うことが可能となる。
【0061】
なお、第一処理手順では、硝化、脱窒に効果的であるとして、インペラ4を好気状態形成時には高速で、嫌気状態形成時には低速で運転するようにしているが、常時定速で運転するものであってもよい。
【0062】
次に、循環水路14内全体を交互に好気状態と嫌気状態とするオキシデーションディッチに適用され、予め設定される好気状態形成時間、嫌気状態形成時間に加えて、計測される溶存酸素濃度値(溶存酸素濃度情報)に基づいて運転を行う第二処理手順について説明する。
【0063】
この第二処理手順は、上述した第一処理手順に代えて、記憶手段18にプログラムの形で書き込まれ、制御手段17はこのプログラムに従い、第二処理手順を実行する。
図5は、本実施態様の運転装置30に係る制御手段17による第二処理手順を示すフロー図である。
以下、図5に基づき、第二処理手順の詳細について説明する。
【0064】
第二処理手順のうち、第一処理手順と相違する点は、ステップ504(S504)~ステップ505(S505)の間に、ステップ601(S601)~ステップ604(S604)を設けた点である。
【0065】
すなわち、このときのオキシデーションディッチ11は、好気状態形成時にあってインペラ4が標準位置Sに位置して高速回転し、曝気撹拌が成されている状態にあり、この状態で、ステップ601(S601)において、溶存酸素濃度計15により計測される溶存酸素濃度値が、予め設定及び記憶されている溶存酸素濃度値設定範囲を越えている(上限値を超えている)か否かを判定する。なお、この溶存酸素濃度値は、被処理水に溶け込んでいる酸素濃度を示し、被処理水の好気/嫌気に関する指標値の一つである。
【0066】
そして、第二処理手順では、溶存酸素濃度値設定範囲が、1.0~3.0mg/Lの範囲に設定され、ステップ601(S601)で、溶存酸素濃度値がこの溶存酸素濃度値設定範囲を越えていると判定した場合には、ステップ602(S602)において、インペラ4の回転数を下げるようにインペラ回転用電動機2を制御する。これにより、インペラ4が標準位置Sに位置し曝気撹拌を実行している状態で、インペラ4の回転数が下げられ、被処理水への酸素供給が低減される。そして、この状態でステップ601(S601)へ戻り、溶存酸素濃度値が溶存酸素濃度値設定範囲に入るのを待つ。
【0067】
一方、ステップ601(S601)において、溶存酸素濃度計15による溶存酸素濃度値が溶存酸素濃度値設定範囲を越えていないと判定した場合には、ステップ603(S603)において、溶存酸素濃度計15による溶存酸素濃度値が溶存酸素濃度値設定範囲を下回る(下限値を下回る)か否かを判定し、溶存酸素濃度値が溶存酸素濃度値設定範囲を下回ると判定した場合には、ステップ604(S604)において、インペラ4の回転数を上げるようにインペラ回転用電動機2を制御する。
【0068】
これにより、インペラ4が標準位置Sに位置し曝気撹拌を実行している状態で、インペラ4の回転数が上げられ、被処理水への酸素供給が促進される。そして、この状態でステップ603(S603)へ戻り、溶存酸素濃度値が溶存酸素濃度値設定範囲に入るのを待つ。
【0069】
一方、ステップ601(S601)において、溶存酸素濃度値が溶存酸素濃度値設定範囲を越えていないと判定し、ステップ603(S603)において、溶存酸素濃度値が溶存酸素濃度値設定範囲を下回らないと判定した場合、すなわち、溶存酸素濃度値が溶存酸素濃度値設定範囲の値を維持している場合には、上述したステップ505(S505)へ進み、ステップ505(S505)において、上述したように、タイマ16による計時(時間情報)が、予め設定及び記憶されている好気状態形成時間に達し、嫌気状態に切り換えるか否かの判定を行い、以降は第一処理手順と同様な処理を行う。
【0070】
なお、第二処理手順では、上述したステップ601(S601)~ステップ604(S604)の処理手順の追加に伴って、ステップ506(S506)において運転継続と判定した場合の処理が、ステップ505(S505)ではなく、ステップ601(S601)へ戻る処理に変更されている。
【0071】
このように、第二処理手順を実行する運転装置30によれば、縦軸型曝気装置1により循環水路14内全体を交互に好気状態と嫌気状態にするオキシデーションディッチにおいて、上述した第一処理手順に加えて、溶存酸素濃度計15により被処理水の好気/嫌気の指標となる溶存酸素濃度値を取得し、好気状態形成時に溶存酸素濃度値が設定範囲を上回る場合にはインペラの回転数を下げ、溶存酸素濃度情報が設定範囲を下回る場合にはインペラの回転数を上げるように、インペラ回転用電動機2を制御しているため、好気状態形成時に容易に溶存酸素濃度値が所望の設定範囲に維持され、硝化が一層最適に行われる。従って、上述した第一処理手順による運転装置の作用・効果に加えて、縦軸型曝気装置1により循環水路14内全体を交互に好気状態と嫌気状態にするオキシデーションディッチの硝化、脱窒を一層高度に行うことが可能である。なお、この好気状態形成時において、上述の回転数制御に代えて、溶存酸素濃度値を1.0~3.0mg/Lの所定値としたPID制御を行ってもよい。
【0072】
次に、1サイクルの循環水路14内に好気領域と嫌気領域とを分けて形成するオキシデーションディッチに適用され、計測される溶存酸素濃度値に基づいて運転を行う第三処理手順について説明する。
【0073】
この第三処理手順は、上述した第一、第二処理手順に代えて、記憶手段18にプログラムの形で書き込まれ、制御手段17はこのプログラムに従い、第三処理手順を実行する。
図6は、本実施態様の運転装置30に係る制御手段17による第三処理手順を示すフロー図である。
以下、図6に基づき、第三処理手順の詳細について説明する。
【0074】
第三処理手順は、まず、ステップ701(S701)において、インペラ4が標準位置Sに位置するように縦軸昇降用シリンダ6bを制御するとともに、インペラ4が所定の回転数での運転となるようにインペラ回転用電動機2を制御する。
【0075】
これにより、インペラ4が標準位置Sに位置して回転し、曝気撹拌が行われ、このインペラ4から下流側の所定範囲の領域までが好気領域とされ、この領域から下流側のインペラ4までの領域が嫌気領域とされて、1サイクルの循環水路14内で硝化、脱窒が行われる。
【0076】
この状態で、ステップ702(S702)において、溶存酸素濃度計15により計測される溶存酸素濃度値が、予め設定及び記憶されている溶存酸素濃度値設定範囲を越えているか否かを判定する。
【0077】
第三処理手順では、溶存酸素濃度値設定範囲が、例えば0.5~1.0mg/Lの範囲に設定され、ステップ702(S702)で、溶存酸素濃度値がこの溶存酸素濃度値設定範囲を越えていると判定した場合には、ステップ703(S703)において、インペラ4が水没するように縦軸昇降用シリンダ6bを制御する。
【0078】
このステップ703(S703)により、インペラ4が水没し、撹拌のみが行われる。
【0079】
具体的には、インペラ4を、水没高さLが100mm程度となるまで水没させる(図1参照)。これにより、被処理水に対しては酸素供給が抑止された状態での撹拌のみが成され、溶存酸素濃度値が低減していく。
【0080】
そして、ステップ704(S704)において、運転終了か否かを判定し、運転継続の場合には、ステップ702(S702)へ戻り、溶存酸素濃度値が溶存酸素濃度値設定範囲に入るのを待ち、運転終了の場合には、この第三処理を終了する。
【0081】
一方、ステップ702(S702)において、溶存酸素濃度計15による溶存酸素濃度値が溶存酸素濃度値設定範囲を越えていないと判定した場合には、ステップ705(S705)において、溶存酸素濃度計15による溶存酸素濃度値が溶存酸素濃度値設定範囲を下回るか否かを判定し、溶存酸素濃度値が溶存酸素濃設定範囲を下回ると判定した場合には、ステップ706(S706)において、インペラ4が標準位置Sに位置するように縦軸昇降用シリンダ6bを制御する。
【0082】
このステップ706(S706)により、インペラ4が標準位置Sに位置して回転し、曝気撹拌が行われ、酸素供給が促進されて溶存酸素濃度値が上昇していく。
【0083】
そして、ステップ707(S707)において、運転終了か否かを判定し、運転継続の場合には、ステップ702(S702)へ戻り、同様な判定を繰り返し、運転終了の場合には、この第三処理を終了する。
【0084】
一方、ステップ702(S702)において、溶存酸素濃度値が溶存酸素濃度設定範囲を越えていないと判定し、ステップ705(S705)において、溶存酸素濃度値が溶存酸素濃度値設定範囲を下回らないと判定した場合には、溶存酸素濃度値が溶存酸素濃度値設定範囲の値を維持し、好気領域では最適に硝化処理が行われているとともに、嫌気領域では最適に脱窒処理が行われているから、ステップ708(S708)において、運転終了か否かを判定し、運転終了の場合には、この第三処理を終了し、一方、運転継続の場合には、ステップ702(S702)に戻り、以降は同様な処理を繰り返す。
【0085】
このように、第三処理手順を実行する運転装置30によれば、縦軸型曝気装置1により1サイクルの循環水路14内に好気領域と嫌気領域とを分けて形成するオキシデーションディッチにおいて、溶存酸素濃度計15により溶存酸素濃度値を取得し、溶存酸素濃度値が設定範囲を上回る場合にはインペラ4が水没し、溶存酸素濃度値が設定範囲を下回る場合にはインペラ4が標準位置に位置するように、縦軸昇降用シリンダ6bを制御しているため、酸素供給を抑止する撹拌のみと酸素供給を促進する曝気撹拌とが分けて行われ、容易に溶存酸素濃度値が所望の設定範囲に維持され、好気領域での最適な硝化及び嫌気領域での最適な脱窒が行われる。従って、縦軸型曝気装置1により1サイクルの循環水路14内に好気領域と嫌気領域とを分けて形成するオキシデーションディッチにおいても、高度な硝化、脱窒を安定して行うことが可能である。
【0086】
なお、制御手段17は、上述した第二、第三処理手順中に用いられる溶存酸素濃度値設定範囲を、設定値として制御することも可能である。
【0087】
図7は、本実施態様の縦軸型曝気装置を備えるオキシデーションディッチ及びその運転装置の別態様を示す概略説明図である。なお、図7において、図1図3に示したものと同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0088】
図7に示すように、このオキシデーションディッチ21は、平面視馬蹄形状を成す槽22を備え、この槽22の外形に沿い平面視U字状を成す隔壁23が槽22内に配設され、この隔壁23周囲の領域が無終端状の循環水路24とされている。
【0089】
このオキシデーションディッチ21にあっては、槽22に上述した縦軸型曝気装置1が二台設置されている。この二台の縦軸型曝気装置は同一構成であり、一方の縦軸型曝気装置を1Aとし、他方の縦軸型曝気装置を1Bとする。
【0090】
縦軸型曝気装置1Aは、槽22の隔壁23の一端(図示上右端)付近に、縦軸型曝気装置1Bは、槽22の隔壁23の他端(図示下右端)付近に、各々配設されている。そして、槽22内の被処理水は、縦軸型曝気装置1A及び1Bの駆動に従って、循環水路24の外周側が図示反時計回りに流れるように循環水路24を循環し、循環水路24内に好気状態と嫌気状態とを別々に形成する。
【0091】
このようなオキシデーションディッチ21に対しても、上述した運転装置30の適用が可能であり、この場合には、制御手段17が、縦軸型曝気装置1A及び縦軸型曝気装置1Bを、上述した第一処理手順又は第二処理手順で運転する。また、第三処理手順で運転する場合には、縦軸型曝気装置1Aを第三処理手順で運転し、縦軸型曝気装置1Bは、常時水没した状態で運転する。なお、この第三手順では、1サイクルの循環水路24内において、流れ方向における縦軸型曝気装置1Aから縦軸型曝気装置1Bまでの領域が好気領域とされ、流れ方向における縦軸型曝気装置1Bから縦軸型曝気装置1Aまでの領域が嫌気領域とされる。
【0092】
このような馬蹄形状の槽22を有するオキシデーションディッチ21にあっても、適用される運転装置30による運転によって、上述した長円形状の槽12を有するオキシデーションディッチ11に対する場合と同様な効果が得られることは言うまでもない。
【0093】
なお、オキシデーションディッチ11、21に、被処理水の水位を計測する水位計を設置し、運転装置30は、この水位計からの水位情報に基づいて、インペラ4が常時水位の変動に追従して標準位置Sに位置し、最適に曝気撹拌を行うように、制御手段17により縦軸昇降用シリンダ6bを制御することも可能である。
【0094】
なお、上述した実施態様は縦軸型曝気装置及びオキシデーションディッチの運転装置の一例を示すものである。本発明に係る縦軸型曝気装置及びオキシデーションディッチの運転装置は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る縦軸型曝気装置及びオキシデーションディッチの運転装置を変形してもよい。
【0095】
例えば、本実施態様の縦軸型曝気装置においては、縦軸昇降用駆動源をシリンダとし、インペラ回転用駆動源を電動機としているが、他のアクチュエータ等であってもよい。
【0096】
また、本実施態様のオキシデーションディッチにおいては、槽の形状を、長円形状や馬蹄形状としているが、これらに限定されるものではなく、他の形状であってもよい。
【0097】
また、本実施態様においては、縦軸型曝気装置をオキシデーションディッチに適用したものを示しているが、これに限定されるものではない。本発明の縦軸型曝気装置は、被処理水を曝気撹拌する他の水処理設備に対しても適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の縦軸型曝気装置は、曝気撹拌操作を伴う処理に好適に用いられる。例えば、オキシデーションディッチや水処理設備の反応槽における曝気撹拌装置として適用することが可能である。
また、本発明のオキシデーションディッチの運転装置は、オキシデーションディッチによる水処理に係る運転装置として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0099】
1,1A,1B…縦軸型曝気装置、2…インペラ回転用電動機(インペラ回転用駆動源)、3…インペラ回転駆動力伝達装置、3a…筐体、4…インペラ、4a…コーン状板、4b…折曲部、5…縦軸、5a…第一縦軸、5b…第二縦軸、5c…連結フランジ、6…昇降装置、6a…支持部、6b…縦軸昇降用シリンダ(縦軸昇降用駆動源)、6c…軸受ハウジング、6d…組合せアンギュラ玉軸受、6e…進退ロッド、6f…ガイドバー、7…蛇腹、8a…外筒、8b…中筒、9…ケーシング、11,21…オキシデーションディッチ、12,22…槽、12a…導入口、12b…導出口、13,23…隔壁、14,24…循環水路、15…溶存酸素濃度計(好気/嫌気情報取得手段)、16…タイマ(好気/嫌気情報取得手段)、17…制御手段、30…運転装置、L…水没高さ、S…標準位置、WL…水位(気液界面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7