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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031112
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/195 20060101AFI20240229BHJP
   B41J 2/015 20060101ALI20240229BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B41J2/195
B41J2/015 101
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134455
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】加藤 巧
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EB07
2C056EB30
2C056EC07
2C056EC38
2C056EC42
2C056EC72
2C056FA04
2C056FA10
2C056HA15
2C057AF23
2C057AG44
2C057AK01
2C057AL24
2C057AM22
2C057AN01
2C057AR08
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】アクチュエータに駆動信号を供給し、インクを吐出するインクジェットプリンタにおいて、印刷物の品質を維持しつつ、印刷作業の高効率化を図る。
【解決手段】インクジェットプリンタ10は、インクKを吐出するインクヘッド50と、インクKを加熱するインクヒータ58と、インクを加圧し吐出するアクチュエータ56と、インクKの温度を測定するインク測温体71と、を備えている。インク測温体71で測定したインクKの温度がインク目標温度よりも高い場合には、インクKの温度に応じた、駆動信号をアクチュエータ56に供給する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するインクヘッドと、
前記インクを加熱するインクヒータと、
前記インクの温度を測定するインク測温体と、
前記インクヘッド内の前記インクを加圧することで吐出させるアクチュエータと、
前記インクヒータおよび前記アクチュエータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記インク測温体の測定値が所定の目標温度以下か否かを判定する判定部と、
前記インク測温体の測定値が前記目標温度以下の場合に、前記インク測温体の測定値が前記目標温度となるように前記インクヒータを制御するインクヒータ制御部と、
前記インク測温体の測定値が前記目標温度の場合に、前記アクチュエータに第1駆動信号を供給する第1駆動信号供給部と、
前記インク測温体の測定値が前記目標温度よりも高い場合に、前記アクチュエータに前記第1駆動信号と異なる第2駆動信号を供給する第2駆動信号供給部と、
を有するインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記第2駆動信号は、前記第1駆動信号よりも電位差が小さくなるように設定される、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記第2駆動信号は、電位差が前記インク測温体の測定値に基づいて設定される、請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記第2駆動信号は、前記インク測温体の測定値が高くなるほど、電位差が小さくなるように設定される請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記インクヒータ制御部は、前記インク測温体の測定値が前記目標温度よりも高い場合には、前記インクヒータの出力をOFFにする、請求項1から4のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記目標温度は、40℃以下の温度である請求項1から4のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記目標温度は、40℃以下の温度である請求項5に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記インク測温体は、前記インクヘッドに設けられている、請求項1から4および請求項7のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記インク測温体は、前記インクヘッドに設けられている、請求項5に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
前記インク測温体は、前記インクヘッドに設けられている、請求項6に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アクチュエータに駆動信号を供給することにより、ノズルからインクを吐出するインクジェットプリンタが知られている。係るインクジェットプリンタでは、インクの温度が変化すると、インクの粘度が変化する。インクの粘度が変化すると、アクチュエータに同一の駆動信号を供給しても、ノズルから吐出されるインクの量が相違する。そこで、吐出されるインクの量を一定にするため、インクをヒータで加熱し、インクの温度が一定の設定温度となるように制御するインクジェットプリンタが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
ところで、インクジェットプリンタの周囲温度がインクの温度よりも高くなる場合がある。インクの設定温度が低いと、周囲温度が設定温度を超えてしまう場合がある、その場合、周囲温度の影響によりインクの温度が上昇し、インク吐出量が設計値からずれてしまい、印刷の品質が低下する。そこで従来のインクジェットプリンタでは、インクの設定温度として、想定される周囲温度よりも高い温度を設定している。そのため、インクが比較的高い温度となるまで、ヒータでインクを加熱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-238287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のようなインクジェットプリンタでは、インクを比較的高い温度となるまで加熱するため、インクの成分が劣化する虞がある。インクの成分が劣化すると、印刷物の品質の低下につながる。また、インクを比較的高い温度となるまで加熱するため、インクを加熱する時間が長くなり、印刷時間が長くなるため印刷作業の効率が低下する問題もある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、アクチュエータに駆動信号を供給し、インクを吐出するインクジェットプリンタにおいて、印刷物の品質を維持しつつ、印刷作業の高効率化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るインクジェットプリンタは、インクを吐出するインクヘッドと、前記インクを加熱するインクヒータと、前記インクの温度を測定するインク測温体と、前記インクヘッド内の前記インクを加圧することで吐出させるアクチュエータと、前記インクヒータおよび前記アクチュエータを制御する制御装置と、を備える。前記インク測温体の測定値が所定の目標温度以下か否かを判定する判定部と、前記インク測温体の測定値が前記目標温度以下の場合に、前記インク測温体の測定値が前記目標温度となるように前記インクヒータを制御するインクヒータ制御部と、前記インク測温体の測定値が前記目標温度の場合に、前記アクチュエータに第1駆動信号を供給する第1駆動信号供給部と、前記インク測温体の測定値が前記目標温度よりも高い場合に、前記アクチュエータに前記第1駆動信号と異なる第2駆動信号を供給する第2駆動信号供給部と、を有している。
【0008】
前記インクジェットプリンタによれば、インクの温度が目標温度以下の場合には、インクがインクヒータによって加熱され、インクの温度は目標温度に保たれる。アクチュエータには、目標温度のインクに適した駆動信号(第1駆動信号)が供給される。一方、インクの温度が目標温度よりも高い場合には、アクチュエータに対して、インクの温度が目標温度のときに供給される駆動信号(第1駆動信号)とは異なる駆動信号(第2駆動信号)が供給される。そのため、インクの温度が目標温度よりも高い場合でも、インクの吐出量を一定にすることができる。したがって、印刷物の品質を維持することができる。また、前記インクジェットプリンタによれば、インクの目標温度を従来よりも低くすることができる。したがって、インクの劣化が防がれる。また、従来よりも、インクをヒータで加熱する時間が短くて済む。したがって、印刷作業の高効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アクチュエータに駆動信号を供給し、インクを吐出するインクジェットプリンタにおいて、印刷の品質を維持しつつ、印刷作業を高効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るインクジェットプリンタの正面図である。
図2】キャリッジ内部の構成を示す斜視図である。
図3】インクヘッドの一部の鉛直断面図である。
図4】一実施形態に係るプリンタの制御装置のブロック図である。
図5】一実施形態に係るインクヒータの制御信号の波形図である。
図6】一実施形態に係る駆動信号を示す図である。
図7】一実施形態に係る画像の印刷手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」という。)について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るプリンタ10の正面図である。プリンタ10は、所謂、Roll-to-Rollタイプのインクジェット式のプリンタである。プリンタ10は、記録媒体5に印刷を行う。以下の説明では、便宜上、プリンタ10の方向を下記のように定義することとする。プリンタ10を正面から見たときに、プリンタ10から遠ざかる方を前方、プリンタ10に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、プリンタ10を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。図面中の符号Yは主走査方向を示している。ここでは、主走査方向Yは左右方向である。符号Zは上下方向を示している。上下方向Zは、正面視において主走査方向Yと直交している。符号Xは副走査方向を示している。ここでは、副走査方向Xは前後方向であり、平面視において主走査方向Yと直交している。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0013】
図1に示すように、プリンタ10は、記録媒体5に印刷を行う。記録媒体5は、例えば、長尺に形成され、ロール状に巻かれて用いられる。なお、記録媒体5は、ロール状に巻かれたものが所定の長さに切断されたシート状のものであってもよい。記録媒体5は、例えば、記録紙である。ただし、記録媒体5は、記録紙に限定されない。例えば、記録媒体5には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステルなどの樹脂材料から形成されたシート、台紙と台紙上に積層されかつ接着剤が塗布された剥離紙とからなるシール材等が含まれる。
【0014】
図1に示すように、プリンタ10は、プラテン12と、キャリッジ移動機構20と、搬送装置30と、キャリッジ40と、インクヘッド50と、インク供給システム60と、を備えている。
【0015】
プラテン12は、記録媒体5への印刷の際、記録媒体5を支持する部材である。プラテン12は、主走査方向Yに延びている。プラテン12には、記録媒体5が載置される。プラテン12は、本体ケース6に設けられている。
【0016】
キャリッジ移動機構20は、キャリッジ40をプラテン12の上方で主走査方向Yに移動させる。図1に示すように、キャリッジ移動機構20は、ガイドレール21と、ベルト22と、一対のプーリ23a、23bと、キャリッジモータ24とを備えている。ガイドレール21は、主走査方向Yに延びている。ガイドレール21は、主走査方向Yに移動可能なようにキャリッジ40を支持している。キャリッジ40には無端状のベルト22が固定されている。ベルト22は、一対のプーリ23aおよび23bに巻き掛けられている。一方のプーリ23aにはキャリッジモータ24が取り付けられている。キャリッジモータ24が駆動するとプーリ23aが回転し、ベルト22が走行する。それにより、キャリッジ40がガイドレール21に沿って主走査方向Yに移動する。
【0017】
搬送装置30は、プラテン12上の記録媒体5を副走査方向Xに搬送する。搬送装置30は、ピンチローラ31と、グリットローラ32と、フィードモータ33とを備えている。ピンチローラ31は、プラテン12の上方に設けられ、記録媒体5を上方から押さえつける。グリットローラ32は、プラテン12に設けられている。グリットローラ32は、フィードモータ33に連結されている。ピンチローラ31とグリットローラ32との間に記録媒体5が挟まれた状態でフィードモータ33によりグリットローラ32が回転されると、記録媒体5は副走査方向Xに搬送される。
【0018】
キャリッジ40は、インク供給システム60の一部と、後述するキャリッジ測温体72と、を搭載している。図2は、キャリッジ40の内部の構成を示す斜視図である。キャリッジ40には、前面および上面を覆うカバーが設けられていてもよいが、図2ではそれらの図示を省略している(その他、配線・配管等の図示も省略)。キャリッジ40は、箱状に構成され、インクヘッド50の一部を収容している。詳しくは、キャリッジ40には、インクヘッド50の上部が収容されている。インクヘッド50の下面には、ノズル53(図3参照)が形成されており、インクヘッド50の下面は、キャリッジ40の外部に露出している。ただし、キャリッジ40は、インクヘッド50の全部を収容してもよい。
【0019】
図1に示すように、インク供給システム60は、複数のインクカートリッジ61と、複数のインク流路62と、複数のインク流路62にそれぞれ設けられた複数の送液ポンプ(図示せず)と、複数のインク流路62にそれぞれ設けられた複数のダンパ63(図2参照)と、を備えている。ダンパ63は、インク供給システム60内のインク圧の変動を緩和するための中間容器である。
【0020】
キャリッジ測温体72は、キャリッジ40の周囲温度を測定する部材である。キャリッジ測温体72は、図2に示すように、キャリッジ40の下面の板材の上側に配置されている。しかし、キャリッジ測温体72の配置は、これに限らない。ただし、インクヘッド50付近の空間の温度を測定するものであるため、キャリッジ40のうち、インクヘッド50に近い位置に配置されていることが望ましい。キャリッジ測温体72の種類は限定されないが、サーミスタや熱電対などである。本実施形態では、キャリッジ測温体72は、サーミスタである。
【0021】
図3は、インクヘッド50の一部の鉛直断面図であり、詳しくは、インクヘッド50の左右方向の中心を通る鉛直断面図である。図3に示すように、インクヘッド50は、インクKが充填された圧力室55と、圧力室55内のインクKを吐出するために駆動するアクチュエータ56と、圧力室55を加熱することによりインクKを加熱するインクヒータ58と、インクKの温度を測定するインク測温体71と、を有している。ノズル53は圧力室55と繋がっている。アクチュエータ56は、本実施形態では圧電素子からなり、圧力室55の一部を仕切る振動板57に接続されている。アクチュエータ56、インクヒータ58およびインク測温体71は、制御装置80に通電可能に接続されている。制御装置80がアクチュエータ56に電位を印加すると、アクチュエータ56が歪むことによって振動板57が撓み、圧力室55内のインクKが加圧または減圧される。振動板57が下方向に撓むと、インクKは、ノズル53から押し出される方向に加圧される。振動板57が上方向に撓むと、ノズル53に押し出されていたインクKの一部がノズル53から分離することで、インクが吐出される。制御装置80は、アクチュエータ56に対し、所定の駆動波形を有する駆動信号を送信するように構成されている。ただし、アクチュエータの方式は特に限定されない。例えば、インクヘッドは、サーマル式のインクヘッド等であってもよい。
【0022】
図3に示すように、各インクヘッド50の圧力室55には、同一種類のインクKが充填されている。一方、異なるインクヘッド50の圧力室55には、異なる種類のインクKが充填されている。図2に示すように、本実施形態に係るプリンタ10は、4つのインクヘッド50を備えている。4つのインクヘッド50の圧力室55には、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク、がそれぞれ充填されている。ただし、特に限定されない。なお、インクKは無色インクであってもよい。4つのインクヘッド50のうちの2つ以上のインクヘッド50の圧力室55に、同一種類のインクKが充填されていてもよい。
【0023】
インクKの材料は何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタ用のインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。インクKは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよい。あるいは、水性染料インクや、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インク等であってもよい。インクKは、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク等の画像形成用のプロセスカラーインクであってもよく、画像の下地または裏地を形成し得るホワイトインクやプライマーインクであってもよい。インクKは、光沢を付与するためのグロスインクであってもよく、メタリックインクであってもよい。インクKの種類は特に限定されない。
【0024】
図3に示すように、インクヒータ58は、ノズル53から吐出されるインクKを加熱するものである。インクヒータ58は、圧力室55を加熱することで圧力室55内のインクKを加熱する。本実施形態では、インクヒータ58は、インクヘッド50内部に搭載されている。なお、インクヒータ58の種類は特に限定されない。例えば、インクヒータ58は、ニクロム線によって構成されている。ただし、ニクロム線に限定されず、例えば、ラバーヒータ、シリコンゴムヒータ、カーボンヒータ、ポリイミドヒータなどであってもよい。
【0025】
図3に示すように、インク測温体71は、圧力室55内のインクKの温度を測定する部材である。インク測温体71は、インクヘッド50の前方かつアクチュエータ56の付近に配置されている。インク測温体71の配置はこれに限定されないが、圧力室55内のうちノズル53に近い位置に配置されていることが望ましい。インク測温体71の種類は限定されないが、サーミスタや熱電対などである。本実施形態では、インク測温体71は、サーミスタである。なお、インクKは、温度が低くなるとその粘度が増加する。よって、所定の目標温度よりもインクKの温度が低いと、インクヘッド50が所望の吐出ができず、印刷物の品質低下につながる、よって、インクKの温度が所定の目標温度に達したことを確認してから、プリンタ10は印刷を実行する。これにより、インクKが低温状態で吐出されることを防ぐ。
【0026】
図1に示すように、本体ケース6の右前カバー6Rには、操作パネル13が設けられている。操作パネル13は、プリンタの状態を表示する表示部と、ユーザによって操作される入力キーが設けられている。操作パネル13は、プリンタの各種の動作を制御する制御装置80(図4参照)に接続されている。
【0027】
図4に示すように、制御装置80は、記録媒体5への印刷を制御する装置である。制御装置80の構成は特に限定されない。制御装置80は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータなどの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置と、を備えている。図1に示すように、制御装置80は、右前カバー6Rの内部に設けられている。ただし、制御装置80は、右前カバー6Rの内部に設けられていなくてもよい。例えば、制御装置80は、右前カバー6Rの外部に設置されたコンピュータなどであってもよい。この場合、制御装置80は、有線または無線を介してプリンタ10と通信可能に接続されている。
【0028】
図4に示すように、制御装置80は、操作パネル13と、キャリッジ移動機構20のキャリッジモータ24と、搬送装置30のフィードモータ33と、インク測温体71と、キャリッジ測温体72と、インクヘッド50と、アクチュエータ56と、インクヒータ58と、に通信可能に接続している。制御装置80は、キャリッジモータ24と、フィードモータ33と、インクヘッド50と、アクチュエータ56と、インクヒータ58と、を制御する。
【0029】
制御装置80は、アクチュエータ56を駆動する駆動信号やインクヒータ58の出力等を制御する。前述の通り、インクKは、アクチュエータ56に電位が印加され、振動板57が撓み、圧力室55内のインクKが加圧および減圧されることにより、吐出される。このときの電位差の大きさにより、振動板57が撓む量が変わるため、インクKの吐出量が変わる。すなわち、制御装置80は、アクチュエータ56に印加する電位を制御することにより、インクの吐出量を決定する。制御装置80は、キャリッジモータ24を制御することによって、キャリッジ40の主走査方向Yの移動を制御する。制御装置80は、フィードモータ33を制御することで、記録媒体5の副走査方向Xの移動を制御する。制御装置80は、インク測温体71およびキャリッジ測温体72と電気的に接続され、インク測温体71およびキャリッジ測温体72が測定した測定値を受信している。
【0030】
図4は、制御装置80のブロック図である。制御装置80は、インク測温体71の測定値を受信する第1受信部81と、第1受信部81が受信した測定値が、印刷時のインクKの所定の目標温度(以下、「インク目標温度」という。)以下か否かを判定する判定部82と、キャリッジ測温体の測定値を受信する第2受信部83と、インクヒータ58を制御するインクヒータ制御部84と、インクKの温度がインク目標温度のとき、アクチュエータ56に第1駆動信号W1(図5(a)参照)を供給する第1駆動信号供給部85と、インクKの温度がインク目標温度より高いとき、アクチュエータ56に第2駆動信号W2(図5(b)参照)参照を供給する第2駆動信号供給部86と、印刷開始の指示を実行する印刷開始指示部87と、を備えている。これら各部は、プログラムによって実現されている。このプログラムは、例えばCDやDVDなどの記録媒体から読み込まれる。なお、このプログラムは、インターネットを通じてダウンロードされるものであってもよい。また、これら各部は、プロセッサおよび/または回路などによって実現可能なものであってもよい。
【0031】
本実施形態では、インク目標温度を、使用環境温度の最大値の環境下、かつインクヒータ58未使用の状態、かつ通常の印刷条件の範囲で印刷を実行し、インクKの温度が静定したときの温度としている。このときの温度をβ℃とする。印刷が実行されるとき、インクKと、インクKが通過するインク供給システム60の内部およびインクヘッド50の内部と、の間に発生する管摩擦により、インクKの温度が上昇する。その後インクKの温度は、ある一定値にて静定する。ここで、使用環境温度とは、プリンタ10が使用可能な周囲温度の範囲である。使用環境温度の最大値は、例えば真夏の室内温度を想定した32℃程度である。印刷条件とは、インクKの吐出量、使用するインクKの種類などの条件であり、印刷物により決まるものである。一般的に、インクKの吐出量が多い、および/または、使用するインクKの種類が多いほど、印刷中にインクKの温度が上昇する。通常の印刷条件の範囲とは、ユーザが所望する全印刷物のうち比較的多くの印刷物を印刷できる印刷条件の範囲とし、通常の印刷条件の範囲以外の条件で印刷する印刷物は比較的少ないものとする。本実施形態では、インクKの温度がインク目標温度のときと、インクKの温度がインク目標温度よりも高いときと、で異なる駆動信号がアクチュエータ56に供給される。詳細は後述するが、インクKの温度がインク目標温度よりも高いときは、インクKの温度に基づいて電位差が設定された駆動信号が供給される。したがって、駆動信号の電位と、インクKの温度と、の関係を表すデータを予め準備しておく必要がある。駆動信号の電位と、インクKの温度と、の関係を表すデータは、事前に行われる試験または過去のデータに基づいて決定される。そこで、インク目標温度をβ℃としておくことで、インク目標温度よりも高い温度で印刷が実行されることが少なくなるので、予め準備しておくデータの量を少なくすることができる。すなわち、事前に行われる試験または過去のデータを少なくすることができる。なお、β℃は、例えばβ℃=40℃である。
【0032】
判定部82は、第1受信部81が受信したインク測温体71の測定値が、インク目標温度以下か否かを判定する。インク測温体71の測定値がインク目標温度以下の場合、インクKの粘度は、インク目標温度のときにおけるインクKの粘度よりも高くなっている。インクKの粘度が高いと、インクヘッド50から吐出されるインクKの吐出量が変化する。そこで、インク測温体71の測定値が、インク目標温度以下のときは、インクKの温度がインク目標温度となるまでインクKが加熱される。詳細は後述するが、判定部82の判定により、インクヒータ制御部84、第1駆動信号供給部85、第2駆動信号供給部86および印刷開始指示部87がそれぞれ制御を行う。なお、インク測温体71およびキャリッジ測温体72の測定値は、キャリッジ40が主走査方向Yに対して1回往復運動する(パス)ごとに、第1受信部81および第2受信部83により受信される。第1受信部81および第2受信部83は、印刷中にキャリッジ40がデータ取得位置にあるときに、インク測温体71およびキャリッジ測温体72の測定値を受信する。データ取得位置とは、次のパスを開始する前に、キャリッジ30が存在する位置である。例えば、データ取得位置は、プラテン12よりも右側の位置である。
【0033】
インクヒータ制御部84は、第1受信部81が受信した測定値、判定部82の判定および第2受信部83が受信した測定値に基づいて、インクヒータ58の制御方法を決定する。本実施形態において、インクヒータ58は、PWM(Pulse Width Modulation)制御により制御される。図5(a)および図5(b)は、本実施形態に係るインクヒータのPWM制御の例である。図5(a)および(b)の縦軸Vは、電位を表し、横軸tは時間を表している。インクヒータ制御部84は、インク目標温度より大きい場合には、図5(a)に図示する制御(第1出力設定)を行う。インクヒータ制御部84が第1出力設定でインクヒータ58を制御することで、インクKは保温される。インクヒータ制御部84は、インクKの温度がインク目標温度以下の場合には、図5(b)に図示する制御(第2出力設定)を行う。第2出力設定は、第1出力設定に対し、電位を印加している時間の割合が長い(Duty比が高い)制御であり、インクヒータ58の出力は高くなる。すなわち、インクKの温度をインク目標温度まで上昇させたいときは、インクヒータ制御部84は、第2出力設定にてインクヒータ58を制御する。
【0034】
また、インクKの温度は、キャリッジ40の周囲温度の影響も受ける。例えば、キャリッジ40の周囲温度が、インクKの温度よりも低い場合、インクKは、インクヒータ58により熱を受け取りながら、キャリッジ40の周囲に熱を奪われる。したがって、インクヒータ58の出力が同じであっても、キャリッジ40の周囲温度によって、インクKの温度変化の挙動は異なるものとなる。よって、インクヒータ制御部84は、第1受信部81が受信した測定値と、第2受信部83が受信した測定値と、に基づいてインクヒータ58の出力の制御を実行する。パス中の場合、インクヒータ制御部84は、インクKの温度がパス中に変化しないようにするために、第2受信部83が受信した測定値に基づいてインクヒータ58の出力の制御を実行する。また、インクKの温度をインク目標温度まで上昇させる場合、インクヒータ制御部84は、第2受信部83が受信した測定値と、インクKを加熱する時間と、に基づいてDuty比の調整を行う。例えば、インクKを早く加熱したい場合は、第2出力設定のDuty比を高くする。
【0035】
第1駆動信号供給部85は、アクチュエータ56に第1駆動信号W1を供給する。本実施形態において、第1駆動信号W1は、インクKの温度がβ℃である場合に対応した駆動信号である。図6(a)は、第1駆動信号W1を示した図である。図6(a)の縦軸Vは、電位を表し、横軸tは時間を表している。図6(a)の縦軸Vにおいて、V0は基準電位であり、アクチュエータ56に印加される電位がV0のとき、アクチュエータ56は、駆動せずインクKは吐出されない。アクチュエータ56に印加する電位がV0よりも上の電位になると、圧電素子であるアクチュエータ56が膨張する。このとき、インクKは、図3に示すノズル53に押し出される方向に加圧される。一方、アクチュエータ56に印加する電位がV0よりも下の電位になると、圧電素子であるアクチュエータ56は収縮する。このとき、押し出されたインクKの一部が、図3に示すノズル53から分離することでインクKが吐出される。アクチュエータ56を駆動する電位差が大きいほど、押し出されるインクKの量が増加するため、インクKの吐出量は増加する。図6(a)において、アクチュエータ56は、電位±V1で駆動される。電位±V1は、ユーザによって予め設定されるものでよい。電位±V1は、事前に行われる試験または過去のデータに基づいて設定することができる。
【0036】
第2駆動信号供給部86は、アクチュエータ56に第2駆動信号W2を供給する。本実施形態において、第2駆動信号W2は、インクKの温度がインク目標温度β℃より高い温度のときに対応した駆動信号である。図6(b)は、第2駆動信号W2を示した図である。図6(b)の縦軸Vおよび横軸tは図6(a)と同様に、それぞれ電位と時間とを表す。図6(b)において、アクチュエータ56は、電位±V2で駆動される。本実施形態では、電位±V1と、電位±V2と、は│V1│>│V2│となっており、第2駆動波形W2の電位差V2-(-V2)=2V2は、第1駆動波形W1の電位差V1-(-V1)=2V1よりも小さい。インクKの温度がβ℃より高いため、インクKの粘度は、インクKの温度がβ℃のときよりも低くなっている。そこで、第1駆動信号W1よりも電位差の小さい第2駆動波形W2にてアクチュエータ56を駆動することにより、インクKの吐出量を、インクKの温度がβ℃のときと同一にすることができる。したがって、インクKの温度がβ℃より高くなっても、インクKの吐出量が一定に保たれる。電位±V2は、ユーザによって予め設定されるものでよい。電位±V2は、事前に行われる試験または過去のデータに基づいて設定することができる。
【0037】
アクチュエータ56に供給する駆動信号が第1駆動信号W1または第2駆動信号W2に定まると、印刷開始指示部87は、パスを実行する指示を出す。このとき、インクヒータ制御部84が決定した制御方法により、インクヒータ58が制御される。
【0038】
図7は、本実施形態に係るプリンタ10の印刷手順を示したフローチャートである。図7に示すように、制御装置80は、インク測温体71およびキャリッジ測温体72の測定値に基づいて、インクヒータ58の制御および駆動波形を制御しながら印刷を行う。
【0039】
ステップS10において、ユーザは、例えば、プリンタ10に接続された操作端末を操作して所定の画像の印刷を決定する。これにより、操作端末から印刷指示信号および印刷データが制御装置80に送信される。
【0040】
ステップS20において、第1受信部81、第2受信部83はそれぞれ、インク測温体71の測定値、キャリッジ測温体72の測定値をそれぞれ受信する。
【0041】
ステップS30において、判定部82は、第1受信部81の受信した測定値が、インク目標温度以下か否かを判定する。このとき、インク目標温度は、予め定められていてもよく、ユーザによって適宜設定されていてもよい。本実施形態では、インク目標温度は、β℃である。第1受信部81の受信した測定値が、インク目標温度以下であると判定部82が判定した場合には、ステップS40へ進む。第1受信部81の受信した測定値が、インク目標温度以上であると判定した場合には、ステップS60へ進む。
【0042】
ステップS40において、インクヒータ制御部84は、インクヒータ58の出力を図5(b)に示す第2出力設定に設定し、インクKを加熱する。このとき、インクヒータ制御部84は、キャリッジ測温体72の測定値に基づいて、第2出力設定のDuty比を調整する。インクヒータ58は、インクKの温度がβ℃になるまで、第2出力設定にてインクKを加熱する。インクKの温度がβ℃となったとき、インクヒータ制御部84は、インクヒータ58の出力を図5(a)に示す第1出力設定にする。このとき、インクヒータ制御部84は、キャリッジ測温体72の測定値に基づいて、第1出力設定のDuty比を調整する。
【0043】
ステップS50において、第1駆動信号供給部85は、アクチュエータ56に第1駆動信号W1を供給する。したがって、パスが開始されると、アクチュエータ56は、第1駆動信号W1にて駆動される。
【0044】
ステップS60において、インクヒータ制御部84は、インクヒータ58の出力を図5(a)に示す第1出力設定にする。このとき、インクヒータ制御部84は、キャリッジ測温体72の測定値に基づいて、第1出力設定のDuty比を調整する。
【0045】
ステップ70において、第2駆動信号供給部86は、アクチュエータ56に第2駆動信号W2を供給する。したがって、パスが開始されると、アクチュエータ56は、第2駆動信号W2にて駆動される。
【0046】
ステップS80において、印刷開始指示部87は、パスを実行する指示を出す。このとき、アクチュエータ56は、第1駆動信号W1または第2駆動信号W2で駆動されることで、所望の量だけインクKを吐出する。インクKを吐出しながらキャリッジ40が主走査方向に移動することで印刷が実行される。
【0047】
ステップS90において、制御装置80は、取得している印刷データに基づいて、画像の印刷が終了したか否かを判定する。画像の印刷が終了したと判定した場合には、印刷を終了する。画像の印刷が終了していないと判定した場合には、次のパスの制御を決定するために、ステップS20に戻る。
【0048】
以上のように、本実施形態のプリンタ10によると、インクKの温度がβ℃より大きいとき、アクチュエータ56に第2駆動信号W2が供給される。このことにより、インクKの吐出量は、インクKの温度がβ℃のときと同一に保たれる。また、従来に比べインク目標温度を低くすることができ、インクKの成分の劣化が防がれる。さらに、従来に比べ、インク目標温度が低いことで、インクKを加熱する時間が短くなるため、印刷作業の高効率化を図ることができる。
【0049】
従来技術では、インク目標温度を比較的高い温度まで上昇させていた。例えば、インク目標温度を、使用環境温度の最大値の環境下かつインクヒータ58未使用の状態かつインクKの温度が最も上昇する印刷条件で印刷を実行し、インクKの温度が静定したときの温度としていた。しかし、ユーザの使用状況にもよるが、インクKの温度が最も上昇する条件で印刷が実行されることは比較的少ない。したがって、本実施形態のように、インク目標温度をβ℃としても、ユーザが所望する印刷物の多くを印刷することができる。インクKの温度がインク目標温度より高い状態における第2駆動信号W2の電位の値の決定には、事前に行われる試験または過去のデータなどが必要である。インク目標温度をβ℃としておくことで、インク目標温度よりも高い温度で印刷が実行されることが少なくなるので、予め準備しておくデータの量を少なくすることができる。すなわち、事前に行われる試験または過去のデータを少なくすることができる。
【0050】
本実施形態によると、第2駆動信号W2は、第1駆動信号W1よりも電位差が小さくなるように設定されている。第2駆動信号W2は、インクKの温度がβ℃よりも高い場合に供給される。インクKの温度がβ℃より高い場合、インクKの粘度は、インクKの温度がβ℃のときよりも低くなっている。したがって、第2駆動信号W2の電位差を第1駆動信号W1の電位差よりも低くしておくことで、インクKの粘度が低くなってもインクKの吐出量は、インクKの温度がβ℃のときと同一に保たれる。
【0051】
本実施形態によると、第2駆動信号W2は、インク測温体71が測定した測定値に基づいて電位差を設定されている。このことにより、インクKの温度が変化しても、第2駆動信号W2の電位差は、その温度に基づいて設定される。したがって、インクKの温度が変化してもインクKの吐出量は、インクKの温度がβ℃のときと同一に保たれる。
【0052】
本実施形態によると、インク測温体71は、インクヘッド50に配置されている。インク測温体71は、インクカートリッジ61やインク流路62などに配置することも可能である。しかしながら、吐出されるインクKは、インクヘッド50のノズル53付近のインクKである。そこで、インクヘッド50にインク測温体71が配置されることで、吐出量に影響するインクKの温度をより正確に測定することができる。このことにより、アクチュエータ56を駆動する駆動信号の電位をより正確に決定することができる。
【0053】
従来技術では、インク目標温度が本実施形態よりも高温であったため、インクヒータ58の加熱による時間が本実施形態よりも長かった。したがって、インクヒータ58の加熱による消費電力も本実施形態よりも大きかった。本実施形態では、従来技術よりもインクヒータ58の加熱による時間が短くなったことで、ユーザは、プリンタ10の省電力化の効果も得ることができる。
【0054】
以上、本発明の好適な一実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0055】
上述した実施形態では、インクKの温度がβ℃より高いある温度にて第2駆動信号W2が供給されていた。この第2駆動信号W2は、インクKの温度が高くなるほど、電位差が小さくなるものでよい。一般にインクKは、温度が高くなるほど粘度が低くなる。したがって、インクKの温度がインク目標温度より高くなるにつれ、第2駆動信号W2の電位差を小さくすることにより、インクKの吐出量は、インクKの温度がβ℃のときと同一に保たれる。
【0056】
上述した実施形態では、第1出力設定は、第2出力設定よりもインクヒータ56のDuty比を低くするものであった。しかし、第1出力設定は、インクヒータ56の出力をOFFにし、インクKを加熱しないものであってもよい。従来の技術では、インク目標温度が比較的高い温度に設定されていたため、インクヒータ56でインクKを常時、または長時間加熱し続ける必要があった。しかしながら、ここに開示される技術によれば、インク目標温度が従来よりも低いため、印刷中にインクヒータ56の出力をOFFにすることができる。したがって、従来に比べプリンタ10の省電力化の効果を得ることができる。
【0057】
本実施形態のプリンタ10は、圧電素子からなるアクチュエータ56を有している、所謂ピエゾ駆動式であるがこれに限定されない。例えば、発熱体を急激に沸騰させ、発生した蒸気泡の圧力でインクを吐出するサーマル式など、様々なインクジェット方式のプリンタに適用可能である。
【0058】
ここで開示される技術は、様々なタイプのプリンタに適用することができる。上述した実施形態で示したRoll-to-Rollタイプのプリンタ10の他、例えば、記録媒体を台の上に固定し、台を副走査方向Xに搬送し印刷する、所謂、フラットベッドタイプのプリンタ10にも同様に適用することができる。また、記録媒体を台の上に載置し、台に対してキャリッジ40を主走査方向Y及び副走査方向Xに移動させて印刷する、所謂、ガントリータイプのプリンタ10にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 プリンタ
40 キャリッジ
50 インクヘッド
56 アクチュエータ
58 インクヒータ
71 インク測温体
72 キャリッジ測温体
80 制御装置
84 インクヒータ制御部
85 第1駆動信号供給部
86 第2駆動信号供給部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7