(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031124
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】魚釣用スピニングリール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/01 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
A01K89/01 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134472
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 諒
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108BD02
(57)【要約】
【課題】ドライブギャ軸とハンドル軸との芯出しを簡単な構成により実現でき、芯ずれに起因する不具合を好適に防止する。
【解決手段】魚釣用スピニングリール100は、リール本体1にハンドル3が着脱可能に構成されている。リール本体1に設けられ、ハンドル軸挿入穴23が形成された円筒状のドライブギャ軸2と、ハンドル3に設けられ、ハンドル軸挿入穴23に挿入されて螺合される挿入部34を有するハンドル軸31と、ハンドル軸挿入穴23内に設けられた係合受け部23cと、挿入部34に設けられ、係合受け部23cに係合する係合部34cと、を備えている。ドライブギャ軸2にハンドル軸31を螺合させるときに、係合受け部23cに対して係合部34cが係合することにより、ドライブギャ軸2とハンドル軸31との中心軸O1が合致する構成とした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体にハンドルが着脱可能に構成された魚釣用スピニングリールであって、
前記リール本体に設けられ、ハンドル軸挿入穴が形成された円筒状のドライブギャ軸と、
前記ハンドルに設けられ、前記ハンドル軸挿入穴に挿入されて螺合される挿入部を有するハンドル軸と、
前記ハンドル軸挿入穴内に設けられた係合受け部と、
前記挿入部に設けられ、前記係合受け部に係合する係合部と、を備え、
前記ドライブギャ軸に前記ハンドル軸を螺合させるときに、前記係合受け部に対して前記係合部が係合することにより、前記ドライブギャ軸と前記ハンドル軸との中心軸が合致することを特徴とする魚釣用スピニングリール。
【請求項2】
前記係合部は、前記挿入部の先端側及び後端側の少なくとも一方に設けられており、
前記係合受け部は、前記ハンドル軸挿入穴の奥側及び開口側において、前記係合部に対応する位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項3】
前記リール本体及び前記ハンドル軸のうちの一方に設けられ、他方に当接することにより前記リール本体と前記ハンドル軸との間をシールするシール部材を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用スピニングリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用スピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リール本体にハンドルを着脱可能に構成した魚釣用スピニングリールが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の魚釣用スピニングリールは、リール本体のドライブギャ軸にハンドル軸を螺合させることでハンドルが取り付けられるようになっており、ドライブギャ軸を回転自在に支持するボールベアリングと、ドライブギャ軸の端部に装着された筒状部材とを備えている。筒状部材の外周面には、リール本体側に接触するシール部材が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示されるような螺合によるハンドル軸の取付構造を用いた魚釣用スピニングリールでは、螺合時におけるねじのがたつきによってドライブギャ軸とハンドル軸とが芯ずれを生じた状態で固定されてしまうおそれがあった。このため、各部品を高精度に製造する必要があった。また、芯ずれを見込んだ設計が必要となり、クリアランスを大きく設定する必要もあった。また、例えば、特許文献1の魚釣用スピニングリールのように、筒状部材にシール部材が取り付けられた構造では、リール本体側に対するシール部材の当接量(ラップ量)が一定にならず、所望の防水性が得られないおそれもあった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために創作されたものであり、ドライブギャ軸とハンドル軸との芯出しを簡単な構成により実現でき、芯ずれに起因する不具合を好適に防止できる魚釣用スピニングリールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、リール本体にハンドルが着脱可能に構成された魚釣用スピニングリールであり、前記リール本体に設けられ、ハンドル軸挿入穴が形成された円筒状のドライブギャ軸と、前記ハンドルに設けられ、前記ハンドル軸挿入穴に挿入されて螺合される挿入部を有するハンドル軸と、前記ハンドル軸挿入穴内に設けられた係合受け部と、前記挿入部に設けられ、前記係合受け部に係合する係合部と、を備えている。そして、前記ドライブギャ軸に前記ハンドル軸を螺合させるときに、前記係合受け部に対して前記係合部が係合することにより、前記ドライブギャ軸と前記ハンドル軸との中心軸が合致することを特徴とする。
【0007】
この魚釣用スピニングリールでは、ドライブギャ軸にハンドル軸を螺合させると、ドライブギャ軸の係合受け部に対してハンドル軸の係合部が係合し、その結果、ドライブギャ軸に対してハンドル軸が芯出しされた状態で固定される。つまり、ドライブギャ軸にハンドル軸を螺合させる過程で両者の芯出しが自動的に行われる。したがって、ドライブギャ軸とハンドル軸との芯出しを簡単な構成により実現でき、芯ずれに起因する不具合を好適に防止できる。なお、ドライブギャ軸に対してハンドル軸が芯出しされているので、ドライブギャ軸を支持しているリール本体とハンドル軸との間も芯出しされた状態になる。これにより、設計時にリール本体において設定したハンドルの回動中心位置にハンドル軸の中心軸を好適に合致させることができる。
【0008】
また、前記係合部は、前記挿入部の先端側及び後端側の少なくとも一方に設けられていることが好ましい。この場合、前記係合受け部は、前記ハンドル軸挿入穴の奥側及び開口側において、前記係合部に対応する位置に設けられていることが好ましい。
【0009】
この構成では、係合部及び係合受け部の形成が容易であり、ドライブギャ軸とハンドル軸との芯出しを簡単な構成により実現できる。また、ドライブギャ軸及びハンドル軸の加工成形時に、係合部及び係合受け部を同時に形成することができるので、生産効率が高い。
【0010】
また、前記リール本体及び前記ハンドル軸のうちの一方に設けられ、他方に当接することにより前記リール本体と前記ハンドル軸との間をシールするシール部材を備えていることが好ましい。
【0011】
この構成では、ハンドル軸とリール本体との少なくとも一方にシール部材が設けられているので、他方に対するシール部材の当接量(ラップ量)を一定に保持できる。したがって、シール部材による防水性を好適に維持できる。
また、他方に対するシール部材の当接量(ラップ量)を一定に保持できるので、必要以上に当接圧力をかけてシール部材を他方に摺接させることを抑制でき、その結果、防水性を維持しつつハンドルの回転初動力を低減できる。したがって、魚釣操作性が向上する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ドライブギャ軸とハンドル軸との芯出しを簡単な構成により実現でき、芯ずれに起因する不具合を好適に防止できる魚釣用スピニングリールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る魚釣用スピニングリールの全体構成を示す側面図である。
【
図2】
図1のII-II線で切った断面を矢印方向から視た端面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る魚釣用スピニングリールの左ハンドル時のドライブギャ軸とハンドル軸との連結構造を示す部分拡大断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る魚釣用スピニングリールの右ハンドル時のドライブギャ軸とハンドル軸との連結構造を示す部分拡大断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る魚釣用スピニングリールの左ハンドル時のドライブギャ軸とハンドル軸との連結構造を示す部分拡大断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る魚釣用スピニングリールの右ハンドル時のドライブギャ軸とハンドル軸との連結構造を示す部分拡大断面図である。
【
図7】左ハンドル時のドライブギャ軸とハンドル軸との連結構造においてシール部材の他の取付形態を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
各実施形態に係る魚釣用スピニングリール100について図面を参照しながら説明する。以下の説明において、「前後」「上下」を言うときは
図1に示した方向を基準とし、「左右」を言うときは
図2に示す方向を基準とする。
【0015】
(第1実施形態)
はじめに魚釣用スピニングリール100の基本構造について説明する。
図1に示すように、魚釣用スピニングリール100は、ハンドル3が取り付けられたリール本体1と、リール本体1の前側に設けられ、ハンドル3の巻き取り操作により回転するロータ4と、ロータ4の前側に設けられ、ハンドル3の巻き取り操作により前後方向に往復運動するスプール5とを備える。
【0016】
リール本体1は、左側に向って開口する側部開口部11が形成されたボディ10と、ボディ10の上部から上方に延びて釣竿に装着される竿取付部12aを先端に有する脚部12と、側部開口部11を塞ぐ蓋部材13と、ボディ10の後部に取り付けられた保護カバー14とを備える。
【0017】
リール本体1には、ボディ10の前部から前方に突出するように、駆動軸筒(不図示)及びスプール軸8(
図2に一部図示)が組み付けられている。駆動軸筒の前端には、ロータ4が取り付けられている。スプール軸8の前端には、スプール5が取り付けられている。
【0018】
蓋部材13は、
図2に示すように、側部開口部11の内側に挿入される円筒状の挿入部13aを備えている。挿入部13aの外周面には、雄ねじ部が形成されている。雄ねじ部は、側部開口部11の内周面に形成された雌ねじ部と螺合している。この螺合により、ボディ10と蓋部材13とが一体になっている。
【0019】
ボディ10内には、ハンドル3の操作に連動して駆動軸筒及びスプール軸8を駆動させるための構成として、左右方向に延在するドライブギャ軸2と、スプール往復動装置60とが備わる。
ドライブギャ軸2は、
図2に示すように、ドライブギャ21及び歯車22を備えている。ドライブギャ軸2は、左右のボールベアリング15,16を介して蓋部材13及びボディ10に回転自在に支持されている。ドライブギャ軸2には、ハンドル3に備わるハンドル軸31が螺合により装着されている。これにより、ハンドル3とドライブギャ軸2とが一体に回転する。ドライブギャ軸2及びハンドル3の詳細は、後記する。
【0020】
スプール往復動装置60は、摺動子61と、連動歯車62とを備え、ボディ10の前後方向に延びるガイド軸(不図示)に沿って、摺動子61が前後方向に移動するように構成されている。摺動子61は、スプール軸8の後端に固定されており、右側に開口する案内溝61aを備えている。連動歯車62は、ボディ10の右側壁10aに設けられた支持部材63に支持され、ドライブギャ軸2の歯車22に噛合して回転する。連動歯車62は、摺動子61の案内溝61aに係合する偏芯突部62aを備えている。
【0021】
以上から、ハンドル3の巻き取り操作によってドライブギャ軸2及び歯車22が回転すると、連動歯車62が回転し、その回転運動が偏芯突部62a及び案内溝61aを介して摺動子61の前後運動に変換される。これにより、スプール軸8(スプール5)が前後方向に往復移動する。
【0022】
次にドライブギャ軸2、ハンドル3及びこれらの連結構造について詳細に説明する。
ドライブギャ軸2は、
図2に示すように、略円筒状を呈しており、中心軸O1に沿う段付き円形の外周面及び左右に開口するハンドル軸挿入穴23,23を有している。左側のハンドル軸挿入穴23によりハンドル3を左側に取り付けることができ、また、右側のハンドル軸挿入穴23によりハンドル3を右側に取り付けることができる(
図4参照)。左右のハンドル軸挿入穴23,23は、ドライブギャ軸2の軸方向の中央部で連通している。
【0023】
左右のハンドル軸挿入穴23は、開口側に形成された大径内周面23aと、大径内周面23aの奥側に形成され大径内周面23aよりも小径とされた小径内周面23bとをそれぞれ有している。このうち、左側の大径内周面23a及び右側の小径内周面23bには、ハンドル軸31を螺合するための雌ねじがそれぞれ形成されている。左側の大径内周面23aの雌ねじは、正ねじとは逆向きの逆ねじである。一方、右側の小径内周面23bの雌ねじは、正ねじである。
【0024】
ドライブギャ軸2の軸方向の中央部には、径方向内側に突出する壁部28が形成されている。壁部28は、中心軸O1を中心とする環状を呈している。壁部28の径方向の中央部には、円形の連通孔28aが形成されている。壁部28の左右側面28c,28cは、中心軸O1に直交する平坦面となっている。
【0025】
壁部28の左右両側には、
図3,
図4に示すように、小径内周面23b,23bに連続する先端部収容内周面23c,23cが形成されている。各先端部収容内周面23cは、ハンドル軸31を芯出しするための係合受け部として機能する。各先端部収容内周面23c,23cは、小径内周面23b,23bよりもさらに小径である。各先端部収容内周面23c,23cには、ドライブギャ軸2にハンドル軸31を螺合する過程で、ハンドル軸31の後記する先端部34cが差し込まれるようになっている。そして、壁部28の左右側面28c,28cは、ハンドル軸31の先端部34cの先端面34dが当接される当接面として機能するが、壁部28自体は必ずしも設けなくてもよい。
【0026】
ドライブギャ軸2の外周面には、左右方向の中心部から左側に偏倚した位置に、ドライブギャ21が一体的に形成されている。また、ドライブギャ軸2の左右方向の中心部から右側に偏倚した位置には、歯車22が一体に形成されている。ドライブギャ軸2は、アルミニウム合金で形成されている。なお、高い負荷が作用する状況下で釣糸を巻き取る高負荷巻き取り操作に対応した魚釣用スピニングリール(以下、「高負荷用の魚釣用スピニングリール」という)100においては、アルミニウム合金に代えてドライブギャ軸2を、例えば、ステンレス鋼や鉄鋼で形成してもよい。
【0027】
次に
図3を参照して、ドライブギャ軸2の左側における連結構造について詳細に説明する。
ドライブギャ軸2の左側外周面には、ドライブギャ21の左側に連続する第1外周部24と、第1外周部24の左側に連続し第1外周部24よりも小径とされた第2外周部25とが形成されている。第1外周部24と第2外周部25との間には、中心軸O1に直交するリング状の段差面25aが形成されている。第2外周部25の外周面は、左ボールベアリング15が外嵌される座面として機能している。また、段差面25aは、環状のワッシャ21aを介して左ボールベアリング15の内輪15aの右側面が位置決めされる位置決め面として機能している。
なお、左ボールベアリング15の外輪15bは、中心軸O1を中心とする蓋部材13の円形状の内周面に嵌入されている。
【0028】
第2外周部25の左端部25eは、左ボールベアリング15の内輪15aの左側面よりも左側方に突出する大きさに形成され、あるいは内輪15aの左側面と面一となる大きさに形成されている。第2外周部25の左端外周面には、第2外周部25よりも小径とされた小径面25bが形成されている。これにより、ドライブギャ軸2の左端部25eの外径は、左ボールベアリング15の内径よりも小さくなっており、隙間が形成されている。
なお、左右のボールベアリング15,16は、ステンレス鋼で形成されている。
【0029】
次に
図4を参照して、ドライブギャ軸2の右側における連結構造について詳細に説明する。
ドライブギャ軸2の右側外周面には、歯車22の右側に連続する第3外周部26が形成されている。第3外周部26の外周面には、径方向外側に突出する位置決め突起27が形成されている。位置決め突起27の右側において、第3外周部26の外周面は、右ボールベアリング16が外嵌される座面として機能している。また、位置決め突起27の右側面27aは、右ボールベアリング16の内輪16aの左側面が位置決めされる位置決め面として機能している。
なお、右ボールベアリング16の外輪16bは、リール本体1の右側壁10aの内面に、止め輪10cで抜け止め保持されている。また、右側壁10aには、カバー部材17が装着されている(
図2参照)。
【0030】
第3外周部26の右端部26eは、右ボールベアリング16の内輪16aの右側面よりも右側方に突出する大きさに形成され、あるいは内輪16aの右側面と面一となる大きさに形成されている。第3外周部26の右端外周面には、段差面26bが形成されている。これにより、右端部26eの外径は、右ボールベアリング16の内径よりも小さくなっている。
【0031】
次に、ハンドル3について説明する。ハンドル3は、
図2に示すように、アーム部32と、アーム部32に連結され中心軸О1に沿う段付き円形の外周面を備えたハンドル軸31とを備えている。アーム部32とハンドル軸31との連結部には、カバー部材3aが取り付けられている。
【0032】
ハンドル軸31は、アーム部32に連結される大径の基部33と、基部33に連続し基部33よりも小径に形成され、ドライブギャ軸2のハンドル軸挿入穴23に挿入される小径の挿入部34とを備えている。
【0033】
基部33は、アーム部32側に開口を有する略有底円筒状を呈しており、内側が中空とされている。基部33の外周面には、断面凹状の周溝33aが形成されている。周溝33aには、ゴム系の環状のシール部材40が嵌め込まれている。シール部材40は、径方向内側から径方向外側に向かうに従って拡径された環状のリップ部41を有している。リップ部41の外縁部42は、蓋部材13の開口部13bの内周縁部13cに当接している。このシール部材40により、基部33(ハンドル3)と蓋部材13(リール本体1側部材)との間がシールされている。
【0034】
挿入部34は、略円柱状を呈しており、基部33の底部に連続する第1挿入部34aと、第1挿入部34aに連続する第2挿入部34bと、第2挿入部34bに連続する先端部34cとを備えている。
【0035】
第1挿入部34aは、基部33よりも小径とされた外周面を備えている。第2挿入部34bは、第1挿入部34aよりも小径とされた外周面を備えている。第1挿入部34aの外周面には、ドライブギャ軸2の左側の大径内周面23aの雌ねじに螺合される雄ねじが形成されている。一方、第2挿入部34bの外周面には、ドライブギャ軸2の右側の小径内周面23bの雌ねじ螺合される雄ねじが形成されている。第1挿入部34aの雄ねじは、正ねじとは逆向きの逆ねじである。第2挿入部34bの雄ねじは、正ねじである。
【0036】
ハンドル軸31の基部33と第1挿入部34aとの境界部分には、当接部として機能する段差面36が一体に設けられている。段差面36は、
図3に示すように、基部33と第1挿入部34aとの外径差を利用して形成されており、中心軸O1に直交するリング状の平坦面である。段差面36は、第2外周部25の左端部25e(左端面)及び左ボールベアリング15の内輪15aの左側面に対向しており、ハンドル軸31をドライブギャ軸2に締め付ける過程で、これら第2外周部25の左端部25e及び内輪15aの左側面に当接するように構成されている。
【0037】
本実施形態では、第2外周部25の左端部25eに段差面36が当接するタイミングで、内輪15aの左側面に段差面36が同時に当接するように設定されている。
なお、段差面36の当接は、これに限られることはなく、第2外周部25の左端部25e及び内輪15aの左側面の一方に段差面36が当接した後に、他方に対して段差面36が当接するように構成してもよい。
【0038】
先端部34cは、第2挿入部34bよりも小径とされており、ドライブギャ軸2の先端部収容内周面23cの内側に差し込まれる外径を備えている。先端部34cは、ドライブギャ軸2に対してハンドル軸31を芯出しするための係合部として機能する。先端部34cは、ドライブギャ軸2に対してハンドル軸31を螺合する過程で、ドライブギャ軸2の先端部収容内周面23cの内側に差し込まれる。そして、この差し込みにより、ドライブギャ軸2とハンドル軸31との中心軸О1が合致される。
【0039】
先端部34cの先端面34dは、中心軸O1に直交する平坦面に形成されている。先端面34dは、ハンドル軸31の締め込みにより、壁部28の側面28cに当接する(当て付けられる)ようになっている。
【0040】
以上説明した本実施形態の魚釣用スピニングリール100によれば、ドライブギャ軸2にハンドル軸31を螺合させると、ドライブギャ軸2の係合受け部である先端部収容内周面23cに対してハンドル軸31の係合部である先端部34cが係合し、その結果、ドライブギャ軸2に対してハンドル軸31が芯出しされた状態で固定される。つまり、ドライブギャ軸2にハンドル軸31を螺合させる過程で両者の芯出しが自動的に行われる。したがって、ドライブギャ軸2とハンドル軸31との芯出しを簡単な構成により実現でき、芯ずれに起因する不具合を好適に防止できる。なお、ドライブギャ軸2に対してハンドル軸31が芯出しされているので、ドライブギャ軸2を支持しているリール本体1とハンドル軸31(ハンドル3)との間も芯出しされた状態になる。これにより、設計時にリール本体1において設定したハンドル3の回動中心位置にハンドル軸31の中心軸О1を好適に合致させることができる。
【0041】
また、ハンドル軸31の先端側に先端部34cが設けられ、これに対応する先端部収容内周面23cがドライブギャ軸2のハンドル軸挿入穴23の奥側に設けられている。したがって、係合部及び係合受け部の形成が容易であり、ドライブギャ軸2とハンドル軸31との芯出しを簡単な構成により実現できる。また、ドライブギャ軸2及びハンドル軸31の加工成形時に、係合部及び係合受け部を同時に形成することができるので、生産効率が高い。
【0042】
また、リール本体1に対して芯出しされたハンドル軸31に対してシール部材40が設けられているので、蓋部材13(リール本体1側の部材)に対するシール部材40のリップ部41の当接量(ラップ量)を一定に保持できる。したがって、シール部材40による防水性を好適に維持できる。
また、蓋部材13(リール本体1側の部材)に対するシール部材40の当接量(ラップ量)を一定に保持できるので、必要以上に当接圧力をかけてシール部材40を蓋部材13(リール本体1側の部材)に摺接させることを抑制でき、その結果、防水性を維持しつつハンドル3の回転初動力を低減できる。したがって、魚釣操作性が向上する。
【0043】
(第2実施形態)
図5、
図6を参照して本発明の第2実施形態の魚釣用スピニングリールについて説明する。本実施形態が前記第1実施形態と異なるところは、ドライブギャ軸2の左右開口部に係合受け部として機能する後端部収容内周面25f,26fを設け、ハンドル軸31の挿入部34の後端側に係合部として機能する後端部39を設けた点にある。
【0044】
ドライブギャ軸2の左開口部側の後端部収容内周面25fは、
図5に示すように、左端部25eの開口部の内側において、大径内周面23aに連続して形成されている。一方、ドライブギャ軸2の右開口部側の後端部収容内周面26fは、
図6に示すように、右端部26eの開口部の内側において、大径内周面23aに連続して形成されている。各後端部収容内周面25f,26fは、ハンドル軸31を芯出しするための係合受け部として機能する。各後端部収容内周面25f,26fは、
図5,
図6に示すように、大径内周面23a,23aよりもさらに大径である。各後端部収容内周面25f,26fには、ドライブギャ軸2にハンドル軸31を螺合する過程で、ハンドル軸31の挿入部34の後端部39が差し込まれるようになっている。
【0045】
後端部39は、ハンドル軸31の段差面36と第1挿入部34aとの隅部に設けられている。後端部39は、中心軸О1を中心とする環状を呈しており、ドライブギャ軸2の後端部収容内周面25f,26fの内側に差し込まれる外径を備えている。後端部39の外周面は、中心軸O1と平行である。また、後端部39の外周面に連続する側面は、中心軸O1に直交する平坦面となっている。このような後端部39は、ドライブギャ軸2に対してハンドル軸31を芯出しするための係合部として機能し、ドライブギャ軸2に対してハンドル軸31を螺合する過程で、ドライブギャ軸2の後端部収容内周面25f,26fの内側に差し込まれる。そして、この差し込みにより、ドライブギャ軸2とハンドル軸31との中心軸О1が合致される。
【0046】
以上説明した本実施形態の魚釣用スピニングリール100によれば、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
また、ハンドル軸31の後端側に係合部としての後端部39が設けられ、これに対応する係合受け部としての後端部収容内周面25f,26fがドライブギャ軸2のハンドル軸挿入穴23,23の開口側に設けられている。したがって、係合部及び係合受け部の形成が容易であり、ドライブギャ軸2とハンドル軸31との芯出しを簡単な構成により実現できる。また、ドライブギャ軸2及びハンドル軸31の加工成形時に、係合部及び係合受け部を同時に形成することができるので、生産効率が高い。
【0047】
また、本実施形態においても同様に、蓋部材13(リール本体1側部材)に対するシール部材40の当接量(ラップ量)を一定に保持できる。したがって、シール部材40による防水性を好適に維持できる。また、防水性を維持しつつハンドル3の回転初動力を低減でき、魚釣操作性が向上する。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は実施形態で示した例に限定されない。
例えば、
図7に示すように、蓋部材13の開口部13bにシール部材45を配置して、蓋部材13(リール本体1側の部材)と基部33(ハンドル3)との間をシールしてもよい。シール部材45は、蓋部材13の開口部13bの外周部に形成された断面凹状の周溝13eに嵌まり込む周部46と、周部46の端部から径方向外側に向かうに従って縮径された環状のリップ部47とを備えている。リップ部47の内縁部48は、ハンドル軸31の基部33の外周面に当接している。
【0049】
この構成においても、ハンドル軸31(基部33)に対するシール部材45のリップ部47の当接量(ラップ量)を一定に保持できる。したがって、シール部材45による防水性を好適に維持できる。
また、ハンドル軸31(基部33)に対するシール部材45の当接量(ラップ量)を一定に保持できるので、必要以上に当接圧力をかけてシール部材45をハンドル軸31(基部33)に摺接させることを抑制でき、その結果、防水性を維持しつつハンドル3の回転初動力を低減できる。したがって、魚釣操作性が向上する。
【0050】
また、前記第1実施形態において、ハンドル軸31の先端部34cは、略円柱形状のものを示したが、これに限られることはなく、先端部収容内周面23cの内側に差し込まれて芯出しを実現できる形状であればよく、例えば、先端部収容内周面23cに対して複数箇所で内接する形状等、種々の形状のものを採用し得る。
【0051】
また、前記第2実施形態において、ハンドル軸31の後端部39は、略円柱形状のものを示したが、これに限られることはなく、後端部収容内周面25f,26fの内側に差し込まれて芯出しを実現できる形状であればよく、例えば、後端部収容内周面25f,26fに対して複数箇所で内接する形状等、種々の形状のものを採用し得る。
【0052】
また、前記第1,第2実施形態では、挿入部34の先端側及び後端側の一方に係合部を設け、これに対応するハンドル軸挿入穴23の奥側及び開口側の一方に係合受け部を設けたものを示したが、これに限られることはなく、両方に設けてもよい。
【0053】
また、係合部及び係合受け部は、挿入部34の先端側及び後端側、ハンドル軸挿入穴23の奥側及び開口側に限られることはなく、その他の係合可能な位置に設けてもよい。
【0054】
また、前記各実施形態では、側部開口部11に蓋部材13が螺合される魚釣用スピニングリール100について説明したが、これに限られることはなく、リール本体に蓋部材がねじやその他の固定手段を利用して固定される魚釣用スピニングリールについても本発明を好適に適用できる。
【符号の説明】
【0055】
1 リール本体
2 ドライブギャ軸
3 ハンドル
23 ハンドル軸挿入穴
23c 先端部収容内周面(係合受け部)
25f 後端部収容内周面(係合受け部)
26f 後端部収容内周面(係合受け部)
31 ハンドル軸
34c 先端部(係合部)
39 後端部(係合部)
40 シール部材
45 シール部材
100 魚釣用スピニングリール
O1 中心軸