(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031138
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】電子内視鏡用プロセッサ、電子内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/06 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
A61B1/06 613
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134492
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】下田代 真哉
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161CC06
4C161DD03
4C161LL02
4C161QQ02
4C161QQ07
4C161RR02
4C161RR03
4C161RR24
(57)【要約】
【課題】発光素子を有する光源を備えた電子内視鏡用プロセッサにおいて、発光素子に対してパルス幅変調による調光を行う場合にLEDを保護する。
【解決手段】本発明の一態様は、生体組織の撮像を行うように構成された撮像素子を備える電子内視鏡に用いられる電子内視鏡用プロセッサであって、複数の発光素子から出射する光を合成して生体組織に対する照明光を生成する光源部と、光源部の各発光素子に流す電流を制御する電流制御部と、を備える。電流制御部は、各発光素子に流す電流として、パルス幅変調の制御信号(PWM制御信号)に応じたデューティ比であって、第1制御信号、及び、PWM制御信号に対してフィルタ処理を施した第2制御信号のうち低い電圧の信号に応じた振幅の出力電流を生成する電流生成部と、各発光素子に流れる電流をフィードバックして電流生成部によって生成される出力電流を安定化させるフィードバック回路部と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織の撮像を行うように構成された撮像素子を備える電子内視鏡に用いられる電子内視鏡用プロセッサであって、
複数の発光素子から出射する光を合成して前記生体組織に対する照明光を生成する光源部と、
前記光源部の各発光素子に流す電流を制御する電流制御部と、を備え、
前記電流制御部は、
各発光素子に流す電流として、パルス幅変調の制御信号(PWM制御信号)に応じたデューティ比であって、第1制御信号、及び、前記PWM制御信号に対してフィルタ処理を施した第2制御信号のうち低い電圧の信号に応じた振幅の出力電流を生成する電流生成部と、
各発光素子に流れる電流をフィードバックして前記電流生成部によって生成される出力電流を安定化させるフィードバック回路部と、を備える、
電子内視鏡用プロセッサ。
【請求項2】
前記第1制御信号の信号レベルの最大値よりも、前記PWM制御信号のデューティ比100%のときの前記第2制御信号の信号レベルが高くなるように、前記第2制御信号の信号レベルが調整されている、
請求項1に記載された電子内視鏡用プロセッサ。
【請求項3】
前記第1制御信号の信号レベルが前記第2制御信号の信号レベルよりも低くなるように、前記第1制御信号の信号レベルに応じて前記PWM制御信号のデューティ比の使用範囲を制限する、
請求項2に記載された電子内視鏡用プロセッサ。
【請求項4】
前記電流制御部は、前記フィルタ処理を行う回路として、前記PWM制御信号の周波数に応じたカットオフ周波数のローパスフィルタ回路を有する、
請求項1に記載された電子内視鏡用プロセッサ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の電子内視鏡用プロセッサと、
前記電子内視鏡用プロセッサに接続され、前記生体組織の撮像画像を取得する撮像素子を備えた電子内視鏡と、
を備える電子内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織の撮像を行うように構成された撮像素子を備える電子内視鏡に用いられる電子内視鏡用プロセッサ、及び、電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器分野においては、体腔内の生体組織を照明し、照明された体腔内の生体組織を被写体として撮像することにより、体腔内に潜む病変部の診断を行うのに好適な画像を生成することが可能な内視鏡システムが知られている。従来、照明光として白色光を発するキセノンランプやハロゲンランプ等のランプ光源が使用されていたが、最近では、ランプ光源に代えて、特定の波長帯域の光を発する発光ダイオード(LED:Light emitting diode)やレーザダイオード(LD:Laser diode)等の発光素子を有する半導体光源が用いられている。
【0003】
例えば特許文献1には、光源からの光を被検体に照射する照明光学系、及び被検体を撮像する撮像素子を含む撮像光学系を有する内視鏡と、内視鏡が着脱自在に接続される制御装置とを備える内視鏡システムが記載されている。このシステムでは、光量指示値と光源への制御出力値との関係を表す制御パターンを複数種備え、光源制御部が撮像素子の種別の識別結果に基づいていずれかの制御パターンに切り替え、切り替えた制御パターンに基づいて光源の出射光強度を制御するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、LEDを駆動するドライバIC(Integrated Circuit)には、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)調光回路とアナログ調光回路の両方を搭載し、さらにLEDに流す出力電流を安定化させるためにフィードバック回路を含む場合がある。このようなドライバICは、PWM調光方式又はアナログ調光方式のいずれかの制御を選択的に実行するのではなく、両方式の制御が同時に働くように構成される。
【0006】
このようなLED用のドライバICを電子内視鏡システムに使用した場合、電子内視鏡システムで扱うPWM信号の周波数の高さに起因してLEDが破壊されることがある。例えば、PWM調光による照射光の下で、被写体の静止画のぶれが生じないような高いシャッタ速度(例えば1000分の1秒)で撮像するためには、その高いシャッタ速度の10~100倍でLEDをPWM駆動する(例えば、10~100kHzのPWM電流をLEDに流す)ことが要求される。しかし、そのような高い周波数のPWM電流は、フィードバック系の応答遅れによって安定的に制御することができず、出力電流のピークがLEDの定格値を超えてLEDが破壊されることがある。
【0007】
そこで、本発明は、発光素子を有する光源を備えた電子内視鏡用プロセッサにおいて、発光素子に対してパルス幅変調による調光を行う場合にLEDを保護することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、生体組織の撮像を行うように構成された撮像素子を備える電子内視鏡に用いられる電子内視鏡用プロセッサであって、
複数の発光素子から出射する光を合成して前記生体組織に対する照明光を生成する光源部と、
前記光源部の各発光素子に流す電流を制御する電流制御部と、を備える。
前記電流制御部は、
各発光素子に流す電流として、パルス幅変調の制御信号(PWM制御信号)に応じたデューティ比であって、第1制御信号、及び、前記PWM制御信号に対してフィルタ処理を施した第2制御信号のうち低い電圧の信号に応じた振幅の出力電流を生成する電流生成部と、
各発光素子に流れる電流をフィードバックして前記電流生成部によって生成される出力電流を安定化させるフィードバック回路部と、を備える。
【0009】
前記第1制御信号の信号レベルの最大値よりも、前記PWM制御信号のデューティ比100%のときの前記第2制御信号の信号レベルが高くなるように、前記第2制御信号の信号レベルが調整されてもよい。
【0010】
前記第1制御信号の信号レベルが前記第2制御信号の信号レベルよりも低くなるように、前記第1制御信号の信号レベルに応じて前記PWM制御信号のデューティ比の使用範囲を制限してもよい。
【0011】
前記電流制御部は、前記フィルタ処理を行う回路として、前記PWM制御信号の周波数に応じたカットオフ周波数のローパスフィルタ回路を有してもよい。
【0012】
本開示の別の態様は、前記電子内視鏡用プロセッサと、
前記電子内視鏡用プロセッサに接続され、前記生体組織の撮像画像を取得する撮像素子を備えた電子内視鏡と、を備える電子内視鏡システムである。
【発明の効果】
【0013】
上述の電子内視鏡用プロセッサ及び電子内視鏡システムによれば、発光素子を有する光源を備えた電子内視鏡用プロセッサにおいて、発光素子に対してパルス幅変調による調光を行う場合にLEDを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態の電子内視鏡システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】光源装置の参照例の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図2に示す光源装置の動作を示すタイミングチャートである。
【
図4】一実施形態の光源装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図4の光源装置に含まれるフィルタ回路の構成例を示す図である。
【
図6】
図4に示す光源装置の動作を示すタイミングチャートである。
【
図7】
図4に示す光源装置の実際の波形を示すタイミングチャートである。
【
図8】アナログ調光における制御信号の電圧レベルと、設定可能なPWM信号のデューティ比との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施形態の電子内視鏡システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の電子内視鏡システム1の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示されるように、電子内視鏡システム1は、医療用に特化されたシステムであり、電子スコープ(内視鏡)100、プロセッサ200及びモニタ300を備えている。
【0016】
プロセッサ200は、システムコントローラ21を備えている。システムコントローラ21は、メモリ23に記憶された各種プログラムを実行し、電子内視鏡システム1全体を統合的に制御する。また、システムコントローラ21は、操作パネル24に接続されている。システムコントローラ21は、操作パネル24に入力される術者からの指示に応じて、電子内視鏡システム1の各動作及び各動作のためのパラメータを変更する。システムコントローラ21は、各部の動作のタイミングを調整するクロックパルスを電子内視鏡システム1内の各回路に出力する。
【0017】
プロセッサ200は、光源装置30を備えている。光源装置30は、体腔内の生体組織等の被写体を照明するための照明光Lを出射する。照明光Lは、白色光、擬似白色光、あるいは特殊光を含む。一実施形態によれば、光源装置30は、白色光あるいは擬似白色光を照明光Lとして常時射出するモードと、白色光あるいは擬似白色光と、特殊光が交互に照明光Lとして射出するモードの一方を選択し、選択したモードに基づいて、白色光、擬似白色光、あるいは特殊光を射出することが好ましい。白色光は、可視光帯域においてフラットな分光強度分布を有する光であり、擬似白色光は、分光強度分布はフラットではなく、複数の波長帯域の光が混色された光である。特殊光は、可視光帯域の中の青色あるいは緑色等の狭い波長帯域の光である。青色あるいは緑色の波長帯域の光は、生体組織中の特定の部分を強調して観察する時に用いられる。光源装置30から出射した照明光Lは、集光レンズ25によりLCB(Light Carrying Bundle)11の入射端面に集光されてLCB11内に入射される。
【0018】
LCB11内に入射された照明光Lは、LCB11内を伝播する。LCB11内を伝播した照明光Lは、電子スコープ100の先端に配置されたLCB11の射出端面から射出され、配光レンズ12を介して被写体に照射される。配光レンズ12からの照明光Lによって照明された被写体からの戻り光は、対物レンズ13を介して固体撮像素子14の受光面上で光学像を結ぶ。
【0019】
固体撮像素子14は、ベイヤ型画素配置を有する単板式カラーCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。固体撮像素子14は、受光面上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積して、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の画像信号を生成して出力する。なお、固体撮像素子14は、CCDイメージセンサに限らず、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサやその他の種類の撮像装置に置き換えられてもよい。固体撮像素子14はまた、補色系フィルタを搭載したものであってもよい。
【0020】
電子スコープ100の接続部内には、ドライバ信号処理回路15が備えられている。ドライバ信号処理回路15には、固体撮像素子14から被写体の画像信号が所定のフレーム周期で入力される。フレーム周期は、例えば、1/30秒である。ドライバ信号処理回路15は、固体撮像素子14から入力される画像信号に対してA/D変換を含む所定の処理を施してプロセッサ200の画像処理部22に出力する。
画像処理部22は、後述する所定の画像処理を行ってビデオフォーマット信号を生成し、モニタ300に出力する。
【0021】
ドライバ信号処理回路15は、また、メモリ16にアクセスして電子スコープ100の固有情報を読み出す。メモリ16に記録される電子スコープ100の固有情報には、例えば、固体撮像素子14の画素数や感度、動作可能なフレームレート、型番等が含まれる。ドライバ信号処理回路15は、メモリ16から読み出された固有情報をシステムコントローラ21に出力する。この固有情報には、例えば、固体撮像素子14の画素数や解像度等の素子特有の情報、さらには、光学系に関する画角、焦点距離、被写界深度等の情報も含まれてもよい。
【0022】
システムコントローラ21は、電子スコープ100の固有情報に基づいて各種演算を行い、制御信号を生成する。システムコントローラ21は、生成された制御信号を用いて、プロセッサ200に接続されている電子スコープ100に適した処理がなされるようにプロセッサ200内の各種回路の動作やタイミングを制御する。
【0023】
システムコントローラ21は、ドライバ信号処理回路15にクロックパルスを供給する。ドライバ信号処理回路15は、システムコントローラ21から供給されるクロックパルスに従って、固体撮像素子14をプロセッサ200側で処理される映像のフレームレートに同期したタイミングで駆動制御する。
【0024】
次に、プロセッサ200に内蔵される光源装置30について説明する。
一般に光源装置では、白色の照明光を得るために光源として複数のLEDを使用し、その複数のLEDの出射光を合成することが行われている。例えば、光源として青色LED、緑色LED、及び、赤色LEDの3個のLEDを使用する場合があり、UV(Ultra Violet)LED、青色LED、緑色LED、アンバーLED、及び、赤色LEDの5個のLEDを使用する場合もある。
各LEDは、アナログ調光とPWM調光が可能である。アナログ調光とは、LEDに流す電流の大きさによってLEDの出射光の光強度を制御することである。他方、PWM調光とは、LEDに流す電流をPWM(Pulse Width Modulation)波形の電流とし、PWMのデューティ比によってLEDの出射光の光強度を制御することである。
光源装置30では、アナログ調光とPWM調光をそれぞれ独立して実行可能な構成となっている。
【0025】
以下、本実施形態の光源装置30の構成について説明する前に、本実施形態の光源装置30についての理解が容易となるように光源装置の参照例について、
図2及び
図3を参照して説明する。
図2は、光源装置の参照例を示すブロック図である。
図3は、光源装置の参照例の動作を示すタイミングチャートである。なお、上述したように光源装置は複数のLEDを有するが、
図2では、単一のLED32に対する光源装置の構成についてのみ示している。
図2を参照すると、光源装置の参照例は、LED32に流す電流を制御するLED制御部31Rを有する。LED制御部31Rは、LEDドライバ回路35と、センス抵抗Rsと、MOSトランジスタQ1とを有する。
【0026】
LEDドライバ回路35は、システムコントローラから供給される制御信号CTRL1とPWM信号(PWM)を入力し、MOSトランジスタQ1を制御するPWM出力PWM_OUTと、LED32に流す出力電流I_OUTとを出力する。LEDドライバ回路35は、例えばFPGA(Field-Programmable gate Array)で構成されたハードウェアモジュールで構成される。
LEDドライバ回路35は、アナログ調光用ドライバ41、PWMドライバ42、及び、電流制御回路43を備える。
アナログ調光用ドライバ41は、制御信号CTRL1の電圧レベルに応じて変化する電流を生成して電流制御回路43に出力する。
PWMドライバ42は、MOSトランジスタQ1を駆動可能な電圧までPWM信号を増幅したPWM出力PWM_OUTを生成し、生成したPWM出力PWM_OUTをMOSトランジスタQ1のゲートに与えるとともに電流制御回路43に出力する。
【0027】
電流制御回路43は、アナログ調光用ドライバ41から出力される電流を増幅するとともに、PWMドライバ42から供給されるPWM出力PWM_OUTのデューティ比に基づいて、出力電流I_OUTを生成する。電流制御回路43によって生成される出力電流I_OUTは、制御信号CTRL1の電圧レベルとPWM信号のデューティ比の両方に基づいている。したがって、出力電流I_OUTの波形は、PWM信号のデューティ比によって定まるパルス波形であって、かつパルス波形の振幅が制御信号CTRL1の電圧レベルに応じた値となる。
アナログ調光を行う場合には、PWM信号のデューティ比を100%とし、制御信号CTRL1の電圧レベルを可変にする。すなわち、PWM信号のデューティ比が100%である場合にはPWM出力PWM_OUTがHレベルとなってMOSトランジスタQ1がONし、LED32には、制御信号CTRL1の振幅に応じた出力電流I_OUTが流れる。
PWM調光を行う場合には、制御信号CTRL1の電圧レベルを一定とし、PWM信号のデューティ比を可変とする。その場合、出力電流I_OUTが一定値となり、PWM信号のデューティ比と同じデューティ比のPWM出力PWM_OUTのレベルに応じてMOSトランジスタQ1がON/OFFすることにより、LED32には、PWM信号のデューティ比に基づく出力電流I_OUTが流れる。
【0028】
電流制御回路43はまた、LED32を流れる電流(出力電流I_OUT)をセンス抵抗Rsにおける電圧降下により検出して、検出結果に基づいて出力電流I_OUTを安定化させるためのフィードバック制御を行う。このフィードバック制御では、所定時間の平均的な出力電流I_OUTを制御量として目標電流に収束させるように制御が行われる。
【0029】
図3において(a)は、電流制御回路43におけるフィードバック制御の応答特性に対して十分に低い周波数のPWM信号をLEDドライバ回路35に入力したときの出力電流I_OUT(LED電流)を示すタイミングチャートである。
図3において、T1,T2,…はそれぞれ1周期に相当し、CTは制御量を決定するときの所定時間である。
図3(a)に示すように、比較的低い周波数のPWM信号をLEDドライバ回路35に入力したとき、デューティ比が小さい場合であってもパルス幅が所定時間CTより長いため、平均的な出力電流I_OUTを目標電流に概ね一致させることが可能である。すなわち、周期T1,T2,…における所定時間CTの平均的な出力電流I_OUTの振幅レベルA1,A2,…が概ね目標電流に近く、出力電流I_OUTを適時に目標電流に収束させることができる。なお、出力電流I_OUTのパルスの立ち上がり直後には瞬間的にオーバーシュートするが、パルス幅が比較的長いため、パルス幅の中で目標電流に収束させることが可能である。
【0030】
図3において(b)は、電流制御回路43におけるフィードバック制御の応答特性に対して高い周波数のPWM信号をLEDドライバ回路35に入力したときの出力電流I_OUT(LED電流)を示すタイミングチャートである。
図3(b)に示すように、周波数が高く、かつデューティ比が小さいPWM信号をLEDドライバ回路35に入力した場合には、目標電流を設定するときの所定時間CTよりもパルス幅が短いため、制御量として設定される平均的な出力電流I_OUTは、パルスの振幅が反映されたものにならず、パルスの振幅よりも低い値となる。
図3(b)では、周期T1~T6において制御量として設定される平均的な出力電流I_OUTをそれぞれA1~A6としている。
【0031】
図3(b)の周期T1において出力電流I_OUTのパルスの振幅は概ね目標電流と一致しているにも関わらず、所定時間CT内の平均的な出力電流I_OUT(制御量)が低いため、LEDドライバ回路35は、周期T2では制御量を目標電流に近付けるべくパルスの振幅が大きくなるように出力電流I_OUTを生成する。同様にして、周期T3~T5においてパルスの振幅が漸増していく出力電流I_OUTが生成される。周期T5において所定時間CT内の平均的な出力電流I_OUTが目標電流と概ね一致するが、この時点では出力電流I_OUTのパルスの振幅がLEDの定格電流を超え、LED32が破壊される虞がある。
また、周波数が高く、かつデューティ比が小さいPWM信号をLEDドライバ回路35に入力した場合には、出力電流I_OUTのパルスの立ち上がり直後のオーバーシュートが短いパルス幅の中で収束できないという問題もある。
【0032】
次に、本実施形態の光源装置30の構成について、
図4を参照して説明する。
図4は、一実施形態の光源装置30の構成を示すブロック図である。
図2と
図4を比較してわかるように、光源装置30のLED制御部31は、光源装置の参照例と比較して、フィルタ回路37が追加された点で異なる。
フィルタ回路37は、PWM信号を入力し、アナログ調光用ドライバ41Aに対して制御信号CTRL2を出力する。アナログ調光用ドライバ41Aは、制御信号CTRL1,CTRL2のうち低い方の電圧の信号によって電流を生成して電流制御回路43に出力する。すなわち、LED制御部31では、制御信号CTRL1,CTRL2のうち電圧が低い方の制御信号に基づいてアナログ調光が行われる。
【0033】
フィルタ回路37の一例を
図5に示す。
図5に示す例では、フィルタ回路37は、積分回路371と分圧部372を含む。積分回路371は、抵抗R1,R2及びキャパシタC1,C2からなり、PWM制御信号の周波数に応じたカットオフ周波数(例えば、2~3kHz)のローパスフィルタ回路を構成する。分圧部372は、積分回路371の出力電圧を分圧するための抵抗R3,R4を有し、制御信号CTRL2のDCレベルを調整するための分圧回路を構成する。
図5に示す具体的な回路は一例に過ぎず、当業者であれば必要となるカットオフ周波数のローパスフィルタを適宜設定できる。
【0034】
LED制御部31において、フィルタ回路37及びアナログ調光用ドライバ41Aは、周波数が高く、かつデューティ比が小さいPWM信号をLEDドライバ回路35に入力したときに出力電流I_OUTのパルスの振幅がLED32の定格電流を超えることがないようにするLED保護機能を提供する。このLED保護機能について、
図6のタイミングチャートを参照して以下で説明する。
【0035】
図6のタイミングチャートにおいて、(a)は制御信号CTRL1、(b)はPWM信号、(c)は制御信号CTRL2、(d)は出力電流I_OUTをそれぞれ示す。
図6において、フィルタ回路37に設定されたカットオフ周波数よりも周波数が高く、かつデューティ比が小さいPWM信号がLEDドライバ回路35に入力された場合、フィルタ回路37は、
図6(c)に示すように、PWM信号の高い周波数成分を減衰させてDCに近い周波数成分の制御信号CTRL2をアナログ調光用ドライバ41Aに出力する。
DCに近い周波数成分の制御信号CTRL2の電圧レベルは、制御信号CTRL1よりも低くなる。すると、アナログ調光用ドライバ41Aは、制御信号CTRL1,CTRL2のうち低い方の電圧の信号によって電流を生成して電流制御回路43に出力するため、制御信号CTRL2に基づいてアナログ調光が行われる。その結果、
図6(d)に示すように、電流制御回路43によって生成される出力電流I_OUTのパルスの振幅が低く抑えられ、LED32の定格電流を超えることはなくLED32が保護される。なお、このときの出力電流I_OUTのパルスの振幅は目標電流に達しておらず調光ができないが、LED32を意図しない過電流から保護できる。
【0036】
図7は、
図4に示す光源装置30の実際の波形を示すタイミングチャートである。
図7において(a)は制御信号CTRL1,CTRL2の波形であり、(b)は出力電流I_OUTの波形である。
図7では、時刻t1以前には制御信号CTRL1のみによるアナログ調光(つまり、PWM信号のデューティ比は100%)を行い、時刻t1以降に、周波数が高く、かつデューティ比が小さいPWM信号がLEDドライバ回路35に入力された場合を想定する。その場合、時刻t1以降では、制御信号CTRL2は、PWM信号の高周波成分を減衰させ、制御信号CTRL1よりも低電圧で、かつ低周波数成分の信号となる。すると、時刻t1以降においてアナログ調光用ドライバ41Aは、制御信号CTRL2に基づいてアナログ調光が行われる。その結果、
図7(b)に示すように、出力電流I_OUTのパルス振幅は、制御信号CTRL2と同様に漸減していき、LED32が保護される。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の電子内視鏡システム1によれば、光源装置30の各LEDに対してアナログ調光及びPWM調光の両方を同時に実行可能に構成されるLED制御部31(電流制御部の一例)を備える。LED制御部31では、アナログ調光を行うための制御信号CTRL1(第1制御信号の一例)と、PWM信号と、当該PWM信号に対してフィルタ処理を施した制御信号CTRL2(第2制御信号の一例)とを入力する。LED制御部31は、制御信号CTRL11,CTRL2のうち低い電圧の信号に応じた振幅の出力電流を生成する。この出力電流のデューティ比は上記PWM信号のデューティ比によって決定される。LED制御部31(フィードバック回路部の一例)はまた、各LEDに流れる電流をフィードバックして出力電流を安定化させるフィードバック制御を行う。
以上のような構成において、周波数が高く、かつデューティ比が小さいPWM信号が入力された場合、制御信号CTRL2は、PWM信号の高い周波数成分を減衰させてDCに近い周波数成分の信号となり、その電圧レベルは、制御信号CTRL1よりも低くなる。そのため、低い方の制御信号CTRL2に基づいてアナログ調光が行われる。したがって、フィードバック制御が、所定時間の平均的な出力電流I_OUTを制御量として目標電流に収束させるように行われる場合であっても、出力電流I_OUTがLEDの定格電流を超えることはなくLEDが保護される。
【0038】
本実施形態の光源装置30において上述した保護機能は、周波数が極めて高く、かつデューティ比が小さいPWM信号が入力された場合にLED32を保護することであるが、そのような通常でないPWM信号が入力されない場合には、制御信号CTRL1にしたがってアナログ調光を行えるようにすることが好ましい。この観点から、
図7に示すように、時刻t1以前(つまり、保護機能が働く前)では、制御信号CTRL2は制御信号CTRL1よりも高くするのがよい。すなわち、アナログ調光を行っている場合には、制御信号CTRL2による影響を受けないように、制御信号CTRL2の電圧を制御信号CTRL1よりも高くすることが好ましい。限定しないが、例えば、制御信号CTRL2の電圧を、制御信号CTRL1よりも10~20%程度高くする。この制御信号CTRL2の電圧の値の調整は、
図5のフィルタ回路37の例では、分圧部372によって行われる。
要するに、一実施形態では、制御信号CTRL1の信号レベルの最大値よりも、PWM信号のデューティ比100%のときの制御信号CTRL2の信号レベルが高くなるように、制御信号CTRL2の信号レベルが調整される。
【0039】
上述したように、保護機能が働くときには出力電流I_OUTを目標電流に制御できず、制御信号CTRL1の調光ができなくなる。したがって、意図した調光動作を継続させたい場合には、制御信号CTRL1の電圧レベルが高い状態でPWM調光を行わないようにする必要がある。すなわち、LED32の出射光の光強度を低下させる場合には、先ず、制御信号CTRL1の電圧レベルを低下させて調光を行い、制御信号CTRL1の電圧が十分に低下したときにのみPWM信号のデューティ比を調整するようにすることが好ましい。
【0040】
図8に、アナログ調光における制御信号CTRL1の電圧レベル(CTRL1レベル)と、設定可能なPWM信号のデューティ比と、の関係の一例を示している。
なお、ここでは一例として、CTRL1レベルが最大値(100%)のときに、デューティ比100%の制御信号CTRL2の電圧が制御信号CTRL1より10%高い場合が想定されている。この場合、PWM信号のデューティ比が約90%~100%の範囲内であれば、CTRL2>CTRL1となるため、制御信号CTRL1によるアナログ調光が可能である。制御信号CTRL1の電圧レベルが低い場合には、CTRL2>CTRL1の関係を維持して制御信号CTRL1によるアナログ調光が可能とするためのPWM信号のデューティ比が緩和される。例えば、制御信号CTRL1の電圧レベルが約55%である場合には、CTRL2>CTRL1の関係を維持するために50%~100%の範囲内でデューティ比を可変とする(「実使用領域」とする)ことができる。
図8では、「実使用領域」とは、制御信号CTRL1によるアナログ調光が可能となる領域として定義される。CTRL2<CTRL1となる場合には、制御信号CTRL1によるアナログ調光ができないため「非調光領域」としている。
したがって、一実施形態では、制御信号CTRL1の信号レベルが制御信号CTRL2の信号レベルよりも低くなるように、制御信号CTRL1の信号レベルに応じてPWM信号のデューティ比の使用範囲が制限される。それによって、PWM信号のデューティ比によって制御信号CTRL1によるアナログ調光ができなくなることが防止される。
【0041】
以上、本発明の電子内視鏡用プロセッサ及び電子内視鏡システムについて詳細に説明したが、本発明の電子内視鏡用プロセッサ及び電子内視鏡システムは上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0042】
1…電子内視鏡システム
11…LCB
12…配光レンズ
13…対物レンズ
14…固体撮像素子
15…ドライバ信号処理回路
16…メモリ
21…システムコントローラ
22…画像処理部
23…メモリ
24…操作パネル
30…光源装置
31,31R…LED制御部
32…LED
35…LEDドライバ回路
37…フィルタ回路
371…積分回路
372…分圧部
41…アナログ調光用ドライバ
42…PWMドライバ
43…電流制御回路
Q1…MOSトランジスタ
100…電子スコープ
200…プロセッサ
300…モニタ