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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031149
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】搬送用ノズル
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20240229BHJP
   H01L 21/67 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H01L21/68 B
H01L21/68 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134513
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】592129486
【氏名又は名称】株式会社長峰製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】有村 聡
(72)【発明者】
【氏名】窪田 平安
(72)【発明者】
【氏名】甄 理
(72)【発明者】
【氏名】中村 力
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA04
5F131CA09
5F131CA38
5F131CA53
5F131DA03
5F131DA33
5F131DA42
5F131DB22
5F131DB32
5F131DB52
(57)【要約】
【課題】小型化できしかも搬送物を吸着する性能を高く維持できる搬送用ノズルを提供する。
【解決手段】金属粒子を焼結して形成された多孔質の本体部を有し、本体部11は、通気性を有する第一面12aと、第一面12aと連続し第一面12aを囲むように設けられた第二面12bと、を備えており、第二面12bにおいて第一面12aと連続する低通気領域には、第一面12aよりも通気性が低い低通気層12fが形成されている。第一面12aから空気を吸引すれば、第一面12aに搬送物Mを吸着することができる。しかも、第一面12aを囲むように低通気層12fを有する低通気領域が設けられているので、第一面12aから空気を吸引する力を強くすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子を焼結して形成された多孔質の本体部を有し、
該本体部は、
通気性を有する第一面と、
該第一面と連続し該第一面を囲むように設けられた第二面と、を備えており、
該第二面において前記第一面と連続する低通気領域には、
前記第一面よりも通気性が低い低通気層が形成されている
ことを特徴とする搬送用ノズル。
【請求項2】
前記第二面の低通気層は、
該第二面の表面の気孔を塞ぐ非通気性処理により形成されたものである
ことを特徴とする請求項1記載の搬送用ノズル。
【請求項3】
前記非通気性処理が、
表面研磨加工処理、プラスチックコート処理、工業メッキ処理、強酸液浸漬加工処理またはこれらの処理を組み合わせた処理である
ことを特徴とする請求項2記載の搬送用ノズル。
【請求項4】
前記第二面の低通気層は、
その通気性が前記本体部の第一面の通気性の50%以下である
ことを特徴とする請求項1記載の搬送用ノズル。
【請求項5】
前記本体部は、
前記第一面の反対側に位置する第三面から前記第一面に向かって凹んだ中空部を有している
ことを特徴とする請求項1記載の搬送用ノズル。
【請求項6】
前記本体部の第一面には、
該第一面から凹んだ凹み部が設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の搬送用ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送用ノズルに関する。さらに詳しくは、ICチップなどの搬送に使用される搬送用ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ICチップの搬送には、半導体ICチップを吸着して保持するノズル(以下、搬送用ノズルという場合がある)が使用されている。かかる搬送用ノズルには、その先端に開口を有する貫通孔が形成されたものが使用されており、以下の方法により搬送用ノズルによって半導体ICチップが搬送されている(図4参照)。
【0003】
まず、トレーT1等に並べられている半導体ICチップMの位置に搬送用ノズルNを配置し(図4(A)参照)、搬送用ノズルNの先端を半導体ICチップMに接近(または接触)させると、貫通孔hを通して先端の開口aから空気を吸引する。すると、半導体ICチップMを搬送用ノズルNに吸着することができる(図4(B)参照)。搬送用ノズル1が半導体ICチップMを吸着すると、次工程において半導体ICチップMを配置するトレーT2等まで搬送用ノズルNが移動される(図4(C)参照)。そして、トレーT2等における半導体ICチップMを配置する位置に搬送用ノズルNの先端(つまり半導体ICチップM)が配置されると空気の吸引を停止する。すると、半導体ICチップMは搬送用ノズルNから離脱して、トレーT2等における所定の位置に半導体ICチップMが配置される(図4(D)参照)。
【0004】
上述した搬送用ノズルNの場合、半導体ICチップMを適切に保持するためには、搬送用ノズル1の先端の開口aを半導体ICチップMの所望の位置に配置して空気の吸引を行う必要がある。
【0005】
半導体ICチップMがある程度大きいもの(例えば1.0mm×0.5mm角程度)であれば、搬送用ノズル1の先端の開口aの位置が所定の位置から若干ズレていても(例えば、0.25mm程度ズレていても)、搬送用ノズル1によって半導体ICチップMを適切に保持することができる。
【0006】
近年、半導体ICチップMの小型化が進んでおり、搬送用ノズルNの先端の開口aの位置のズレの許容量が小さくなっている。例えば、0.2mm×0.1mm角の半導体ICチップMであれば、搬送用ノズル1の先端を半導体ICチップMに接近等させた際における先端の開口aの所定の位置からのズレは0.05mm以下にしなければ、搬送用ノズルNの先端に半導体ICチップMを適切に保持することができない。そして、搬送用ノズルNの先端の開口aが所定の位置からズレると、半導体ICチップMが傾いて吸着されたりする可能性があり、次工程における半導体ICチップMの搬送不良が発生する可能性がある。
【0007】
かかる問題を解決する方法として、特許文献1、2に開示された技術が開発されている。特許文献1、2には、搬送用ノズルにおいて部品などを吸着する面を多孔質材料によって形成し、空気を吸引する面を大きくする技術が開示されている。かかる構成とすれば、搬送用ノズルの先端面において多孔質部分全体から空気を吸引できるので、搬送用ノズルの先端の位置が若干ズレていても、搬送用ノズルの先端に半導体ICチップを適切に吸着して保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-111639号公報
【特許文献2】特開2007-283445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、半導体ICチップが小型化にするとともに半導体ICチップを搬送する場所や空間も狭くなっている。かかる狭い場所や空間に半導体ICチップを搬送するためには、吸着性能を維持しつつ、搬送用ノズル自体を小型化する必要がある。このため、搬送用ノズルには、その先端が細いもの、例えば、先端の外径が100μm以下であって、吸着面の面積が大きいもの、例えば、吸着面の面積が7850μm以上のものが求められている。
【0010】
特許文献1、2の搬送用ノズルでは、多孔質材料を通して空気を吸引する際に物体を吸着する吸着面以外からは空気を吸引しないように、多孔質材料を搬送用ノズルの貫通孔に配置している。具体的には、搬送用ノズルを通気性の低い材料で形成し、この搬送用ノズルの貫通孔に、吸着面以外が覆われた状態(露出しない状態)となるように多孔質材料を配置している。このような構造の場合、搬送用ノズル自体を細くしつつ吸着面を大きくするためには、搬送用ノズルの厚さ(吸着面以外を覆う部分の厚さ)をできる限り薄くしなければならない。
【0011】
しかし、特許文献2の技術のように、他の材料で形成された搬送用ノズルの貫通孔に多孔質材料を挿入する方法では、搬送用ノズルの壁面の厚さを薄くすると強度が低下するし、壁面の厚さが薄い搬送用ノズル(例えば壁面の厚さが0.025mm以下)は製造することも困難である。したがって、特許文献2の技術では、先端の外径が100μm以下の搬送用ノズルを製造することは困難である。
【0012】
一方、特許文献1の技術のように、搬送用ノズルも多孔質材料で形成した場合には、壁面の厚さがある程度薄い搬送用ノズル(例えば壁面の厚さが10μm程度)のものを製造できる可能性はある。しかし、特許文献1の技術のように、搬送用ノズルがセラミックス製の多孔質材料の場合には、厚さを薄くすればするほど壁面の通気性が高くなるので、壁面をある程度厚くする必要がある。すると、搬送用ノズルを細くすればするほど、搬送用ノズルの断面積に占める壁面の厚さの割合を大きくしなければならなくなる。したがって、特許文献1の技術では、先端の外径が100μm以下の搬送用ノズルは製造することができても、吸着面の面積が7850μm以上のものは製造することが困難である。
【0013】
本発明は上記事情に鑑み、小型化できしかも搬送物を吸着する性能を高く維持できる搬送用ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1発明の搬送用ノズルは、金属粒子を焼結して形成された多孔質の本体部を有し、該本体部は、通気性を有する第一面と、該第一面と連続し該第一面を囲むように設けられた第二面と、を備えており、該第二面において前記第一面と連続する低通気領域には、前記第一面よりも通気性が低い低通気層が形成されていることを特徴とする。
第2発明の搬送用ノズルは、第1発明において、前記第二面の低通気層は、該第二面の表面の気孔を塞ぐ非通気性処理により形成されたものであることを特徴とする。
第3発明の搬送用ノズルは、第2発明において、前記非通気性処理が、表面研磨加工処理、プラスチックコート処理、工業メッキ処理、強酸液浸漬加工処理またはこれらの処理を組み合わせた処理であることを特徴とする。
第4発明の搬送用ノズルは、第1発明において、前記第二面の低通気層は、その通気性が前記本体部の第一面の通気性の50%以下であることを特徴とする。
第5発明の搬送用ノズルは、第1発明において、前記本体部は、前記第一面の反対側に位置する第三面から前記第一面に向かって凹んだ中空部を有していることを特徴とする。
第6発明の搬送用ノズルは、第1発明において、前記本体部の第一面には、該第一面から凹んだ凹み部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1発明によれば、第一面から空気を吸引すれば、第一面に物体を吸着することができる。しかも、第一面を囲むように低通気層を有する低通気領域が設けられているので、第一面から空気を吸引する力を強くすることができる。
第2発明によれば、低通気層を薄くできるので、搬送用ノズルを小型化し易くなる。
第3発明によれば、低通気層の形成が容易になるので、搬送用ノズル自体の製造も容易になる。
第4発明によれば、第一面から空気を吸引する力を強くすることができる。
第5発明によれば、第一面に吸着した物体を安定して保持しやすくなる。
第6発明によれば、第一面に物体を安定して保持し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(A)は本実施形態の搬送用ノズル10の概略斜視図であり、(B)は本実施形態の搬送用ノズル10の概略斜視断面図である。
図2】(A)は本実施形態の搬送用ノズル10をノズル取付部Pに取り付けた状態の概略斜視図であり、(B)は本実施形態の搬送用ノズル10をノズル取付部Pに取り付けた状態の概略斜視断面図である。
図3】本実施形態の搬送用ノズル10をノズル取付部Pに取り付けた状態の概略縦断面図である。
図4】従来の搬送ノズルNによって搬送物Mを搬送している作業の概略説明図である。
図5】(A)は中空部12hを有しない本実施形態の搬送用ノズル10の概略斜視断面図であり、(B)は第一面12aに凹み部12dを有する搬送用ノズル10の概略説明図である。
図6】(A)は他の実施形態の搬送用ノズル10Bの概略斜視図であり、(B)は本実施形態の搬送用ノズル10Bの概略斜視断面図である。
図7】(A)は他の実施形態の搬送用ノズル10Bをノズル取付部Pに取り付けた状態の概略斜視図であり、(B)は他の実施形態の搬送用ノズル10Bをノズル取付部Pに取り付けた状態の概略斜視断面図である。
図8】他の実施形態の搬送用ノズル10Bをノズル取付部Pに取り付けた状態の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態の搬送用ノズルは、ICチップなどの小型の部品を搬送する際に使用するものであり、小型の部品であっても安定して保持できるようにしたことに特徴を有している。
【0018】
本実施形態の搬送用ノズルが採用される設備はとくに限定さない。本実施形態の搬送用ノズルによって搬送する搬送物の大きさや種類はとくに限定されないが、例えば、大きさが1000μm×500μm以下の搬送物を搬送する際に使用する搬送用ノズルや、1000μm×500μm以下のコンタミ物質や異物の除去に使用する搬送用ノズルとして適している。
【0019】
<本実施形態の搬送用ノズル10>
本実施形態の搬送用ノズル10は、図2に示すように、搬送物を保持して搬送する装置(以下、搬送装置という)のノズル取付部Pに取り付けて使用されるものである。搬送装置のノズル取付部Pは、例えば、中空なパイプ状であり、空気を吸引する吸引する装置(例えば真空ポンプなど)に連通されており、その先端から空気を吸引できるように設けられている。なお、ノズル取付部Pは、その壁面を空気が通過しないように形成されている。
【0020】
本実施形態の搬送用ノズル10は、搬送装置のノズル取付部Pに取り付けて使用されるものである。この搬送用ノズル10は、ノズル取付部Pに取り付けた状態で(図2参照)、搬送装置のノズル取付部Pの先端から空気が吸引されると、搬送用ノズル10の本体部11内を通して、搬送用ノズル10の本体部11の先端、つまり、第一面12aから空気を吸引することができるものである。
【0021】
図1図3に示すように、本実施形態の搬送用ノズル10の本体部11は、先端部12と取付部15とを有しており、先端部12と取付部15とが一体で形成されている。
【0022】
本体部11の取付部15は、搬送装置のノズル取付部Pに取り付けられる部分である。具体的には、取付部15は、その外面15aとノズル取付部Pの内面との間が気密になるように、ノズル取付部Pに取り付けられる部分である。取付部15の外面15aとノズル取付部Pの内面との間が気密になるとは、取付部15の外面15aとノズル取付部Pの内面との間を通して空気がノズル取付部P内に吸引されない状況を意味している。また、取付部15の外面15aとノズル取付部Pの内面との間を通して空気がノズル取付部P内に吸引されない状況には、両者の間が完全に気密が保たれる場合(両者の間の通気性が全くない場合)と、搬送用ノズル10の本体部11の第一面12aからの空気の吸引を阻害しない(言い換えれば本体部11の第一面12aに安定して搬送物Mを吸着できる)程度に気密性が維持されている場合(つまり若干の通気性がある場合)と、の両方を含んでいる。
【0023】
本体部11は、取付部15の先端側、つまり、取付部15においてノズル取付部Pに取り付けられる端部の反対側の端部から連続する先端部12を備えている。先端部12は、取付部15と連続する端部(基端部)から先端部に向かってその外径が短くなるように形成されている。つまり、先端部12は、基端部から先端部に向かってその断面積が小さくなるように形成されている。例えば、取付部15が円筒状の場合であれば、先端部12は先端に頂点を有する円錐状に形成されている。なお、先端部12は、一定の範囲は取付部15と同じ断面形状および同じ断面積を維持しその後先端部に向かって断面積が小さくなるようになっていてもよい。
【0024】
この本体部11(つまり先端部12および取付部15)は、金属粒子を焼結して形成された多孔質構造体である。具体的には、本体部11は、1~150μm程度の粒径を有する金属粒子mを焼結して形成されており、焼結した金属粒子mの間に連続する気孔sが形成された多孔質構造体である(図1(B)参照)。
【0025】
この本体部11における先端部12の先端面および取付部15の基端面(つまり本体部11の第一面12aおよび第三面15c)は、その多孔質構造を維持した状態でほぼ平面に加工されている。つまり、本体部11の第一面12aおよび第三面15cは、多孔質構造体が本来有する通気性を維持した状態でほぼ平面となるように加工されている。一方、本体部11の側面(つまり本体部11の第二面12b)、詳しくいえば、第一面12aと連続し第一面12aの周囲を囲むように設けられた第二面12bには、低通気層12fが形成されている(図3参照)。この低通気層12fは、第一面12aよりも通気性が低い層であり、その厚さが1~150μm程度となるように形成されている。例えば、低通気層12fは、本体部11が金属粒子によって形成されているので、表面研磨加工処理やプラスチックコート処理、工業メッキ処理、強酸液浸漬加工処理またはこれらの処理を組み合わせた処理によって形成することができる。つまり、低通気層12fは、気孔の一部または全てを閉塞する処理を行うことによって第一面12aよりも低通気性となるように形成されている。かかる処理を行うことによって、上記厚さかつ通気性が低い層である低通気層12fを形成することができる。
【0026】
また、本体部11には、取付部15の第三面15cから先端部12の第一面12aに向かって凹んだ中空部12hが形成されている。この中空部12hは、その中心軸が本体部11の中心軸CS(図3参照)と同軸となるように形成された穴であり、その開口が第三面15cに形成されその内底面が第一面12aの近傍に位置するように形成されている。この中空部12hは、その中心軸が本体部11の中心軸CSとほぼ同軸になるように形成されているが、両者の中心軸は若干ズレていてもよい。
【0027】
本実施形態の搬送用ノズル10は上記のごとき構造と有するので、取付部15をノズル取付部Pに取り付けて、搬送装置のノズル取付部Pの先端から空気を吸引すると、第一面12aから空気を吸引することができる。つまり、搬送用ノズル10の本体部11の先端部12および取付部15が連続する気孔sを有する多孔質構造を有しているので、本体部11内の気孔sを通して、第一面12aから空気を吸引することができる。すると、本体部11の第一面12aを搬送物Mの近傍に配置すれば、搬送物Mを第一面12aに吸着することができる。
【0028】
しかも、本体部11の第二面12bには低通気層12fが形成されているので、本体部11の第一面12aのみから空気が吸引される。すると、搬送物Mを第一面12aに吸着する吸着力を強くすることができるから、搬送用ノズル10によって搬送物Mを保持することができる。しかも、低通気層12fの厚さが薄く、本体部11内に中空部12hが形成されているので、第一面12aに空気を吸い込む力を強くでき、より安定した状態で搬送物Mを第一面12aに吸着しておくことができる。
【0029】
さらに、本体部11の第一面12aは、多孔質構造体が本来有する通気性を維持した状態でほぼ平面となるように加工されている。しかも、第二面12bの低通気層12fの厚さが薄いので、第一面12aのほぼ全体を搬送物Mを吸着する吸着面とすることができる。すると、搬送用ノズル10と搬送物Mの位置に若干のズレがあっても、第一面12aに搬送物Mを安定して吸着させることができる。
【0030】
<本体部11の金属粒子mについて>
本体部11を形成する金属粒子mは、例えば、ステンレスやチタン、超硬金属、銅、銀等の粒子であるが、金属によって形成された粒子であればよく、粒子の素材となる金属はとくに限定されない。
また、金属粒子mの粒子径はもとくに限定されず、多孔質構造体となったときに、第一面12aが吸着性能を発揮できる気孔sを形成できる大きさであればよい。例えば、金属粒子mの平均粒子径は、1~150μmが望ましいが、5~30μmがより望ましい。
【0031】
<本体部11の気孔率について>
本体部11の気孔率はとくに限定されない。搬送用ノズル10を搬送装置のノズル取付部Pの先端に取り付けた状態でノズル取付部Pの先端から空気が吸引されると、本体部11の第一面12aに搬送物Mを吸着できる吸引力を生じさせることができるように形成されていればよい。例えば、本体部11の気孔率(上述した低通気層12fは除く)は、98%以下が望ましく、50%以下がより望ましく、40%以下がさらに望ましい。
【0032】
<本体部11の気孔sの気孔径について>
本体部11の気孔sの気孔径、具体的には、第一面12aにおける気孔sの気孔径はとくに限定されない。吸着する搬送物Mを安定した姿勢で吸着できる大きさであればよい。例えば、吸着する搬送物Mの大きさが、1.0mm×0.5mm角程度であれば、本体部11の第一面12aの平均気孔径は、100μm以下がより望ましく、50μmがさら望ましく、25μm以下がさら望ましい。また、本体部11の第一面12aの平均気孔径が上記範囲であっても、一部に気孔径の非常に大きいものがあると、吸着性能が低下したり搬送物Mを安定した姿勢で保持できなかったりする可能性がある。したがって、本体部11の第一面12aにおける気孔径は、最大気孔径が1.0mm以下であることが望ましく、100μm以下がより望ましく、50μmがさら望ましく、25μm以下がさら望ましい。
【0033】
<第二面12bの低通気層12fについて>
本体部11の第二面12bの低通気層12fは、第一面12aよりも通気性が低い層であればよく、低通気層12fの通気性はとくに限定されない。低通気層12fは、空気をほぼ通過させない構造となっていてもよいし、第一面12aの吸着性能が低下しない程度に通気性を有していてもよい。例えば、低通気層12fの通気性は、本体部11の第一面12aの通気性の50%以下であればよく、25%以下がより望ましく、10%以下がさらに望ましい。
【0034】
なお、本発明でいう低通気層の通気性とは、例えば閉塞処理によって表面の気孔が閉塞した部分と閉塞してない部分を拡大鏡などで観察し、両者の割合で通気性を求めたものである。例えば、表面研磨加工処理によって低通気層12fを形成した場合には、低通気層12fのうち95%の領域は気孔が閉塞される。つまり、表面研磨加工処理によって低通気層12fを形成した場合には、第一面12aで全て(100%)の気孔が存在するとした場合に比べて、低通気層12fでは95%の気孔が閉塞された状態となる。この状態における低通気層12fの通気性は、第一面12aの通気性の5%となる。
【0035】
低通気層12fの厚さはとくに限定されないが、低通気層12fの厚さを薄くすれば、本体部11の先端を細くできるし、本体部11の第一面12a近傍の気流の影響によって第一面12aに搬送物Mを吸着する効果を高めることができる。したがって、低通気層12fの厚さは薄い方が好ましい。本実施形態の本体部11は素材が金属粒子mであるので、表面研磨加工処理やプラスチックコート処理、工業メッキ処理、強酸液浸漬加工処理またはこれらの処理を組み合わせた処理によって薄い低通気層12fを形成することが可能になる。とくに、表面研磨加工処理や強酸液浸漬加工処理、同材質の粉末による閉塞処理等によって低通気層12fの気孔を塞ぐ処理を行えば、低通気層12fと本体部11とを一体構造で形成することができるので、薄い低通気層12fをより簡単な方法で形成することができる。すると、第一面12aの面積が大きく第二面12bの通気性が低くしかも吸着性能の高い小型の搬送用ノズル10を製造し易くなる。なお、同材質の粉末による閉塞処理とは、例えば、製造された多孔体表面に粉末を積層または塗り込んで熱処理することによって、気孔を小さくしたり閉塞したりする処理を意味している。
【0036】
低通気層は本体部11の第二面12bだけに形成されていてもよいが、図3に示すように、取付部15の外面15aにも低通気層を形成してもよい。例えば、図2および図3に示すように、取付部15の外面15a全体がノズル取付部P内に挿入されない場合には、取付部15の外面15aのうちのノズル取付部P内に挿入されていない部分から空気が吸引される可能性がある。したがって、この場合には、取付部15の外面15aに低通気層を設ける必要がある。取付部15の外面15aに低通気層を設ければ、取付部15の外面15aのうち、ノズル取付部P内に挿入されていない部分から空気が吸引されることを防止できる。もちろん、ノズル取付部P内に取付部15の外面15a全体が挿入されて取付部15の外面15a全体が外部から気密に維持されるのであれば、取付部15の外面15aには低通気層を設けなくてもよい。
【0037】
<本体部11の断面形状について>
図1図3では、本体部11の先端部12および取付部15がいずれも断面円形の場合を示しているが、先端部12および取付部15の断面は断面円形に限られず、三角形や矩形、正多角形などでもよい。また、先端部12と取付部15の断面は相似形でなくてもよく、異なる断面形状となっていてもよい。例えば、先端部12は断面円形であるが取付部15は断面が矩形や正多角形となっていてもよいし、取付部15は断面円形であるが先端部12は断面が矩形や正多角形となっていてもよい。
【0038】
さらに、図1図3では、本体部11の先端部12は基端から先端に向かってその断面積が連続的に小さくなる場合を示しているが、先端部12はその断面積が基端から先端まで同じ大きさとなっていてもよいし、階段状に断面積が変化するようになっていてもよい。
【0039】
<本体部11の先端加工について>
本体部11の先端部12の先端、つまり、第一面12aや第二面12bにおける第一面12a近傍の部分は、その強度を高くするために、ダイヤモンド蒸着加工を行ってもよい。なお、ダイヤモンド蒸着加工を行う場合には、ダイヤモンド蒸着加工後において、第一面12aは上述したような気孔径(最大気孔径および平均気孔径)を有する状態に維持されるようにダイヤモンド蒸着加工が行われる。
【0040】
<本体部11の中空部12hについて>
本体部11に中空部12hは、本体部11の中心軸CSとほぼ同軸となるように、第三面12bから第一面12aに向かって凹むように形成されていればよく、その深さや断面形状はとくに限定されない。しかし、図1図3に示すように、第三面12bから第一面12aに近づくにしたがって断面積が小さくなるように本体部11の中空部12hが形成されていれば、搬送物Mを第一面12aに吸い寄せる効果を高めることができる。
【0041】
なお、本体部11に中空部12hを設ければ、上述した効果を得ることができるが、中空部12hは必ずしも設けなくてもよい(図5(A)参照)。この場合には、本体部11の製造が容易になる。
【0042】
<凹み部12dについて>
本体部11の第一面12aは平坦面としてもよいが、第一面12aから凹んだ凹み部12dを設けてもよい(図5(B)参照)。例えば、吸着する搬送物Mを収容できる大きさを有する凹み部12dを設ければ、吸着した搬送物Mを凹み部12d内に収容した状態で搬送できるので、搬送物Mを安定した状態で搬送できる。とくに、凹み部12の断面形状を搬送物Mの断面形状とほぼ同じ形状(略相似形)とすれば、搬送物Mを所定の姿勢で保持できるので、適切な姿勢で搬送物Mを次工程に供給し易くなる。
【0043】
<他の実施形態の搬送用ノズル10B>
図6図7に示すように、搬送用ノズル10Bの取付部15Bは、先端部12Bとの間にフランジ部15fを有していてもよい。例えば、金属粒子mを焼結して取付部15Bや先端部12Bと一体でフランジ部15fを形成してもよいし、搬送用ノズル10の取付部15の外面15aに金属プレート等を取り付けてフランジ部15fを形成してもよい
【0044】
かかるフランジ部15fを設ける場合、搬送用ノズル10Bをノズル取付部Pに取り付けた場合において、フランジ部15fの上面とノズル取付部Pの先端面が面接触するようにフランジ部15fを形成することが望ましい(図7および図8参照)。すると、搬送用ノズル10Bの取付部15Bをノズル取付部Pに取り付けると、ノズル取付部Pの先端開口がフランジ部15fの上面によって塞がれる状態とすることができる。この場合、フランジ部15fの上面が通気性を有しなければ、ノズル取付部Pの先端開口と外部との間をフランジ部15fによって気密に塞ぐことが可能になる。すると、取付部15Bの外面15aとノズル取付部Pの内面とを面接触させて両者間を気密に連結する場合に比べて、取付部15Bの加工精度を低くすることができるので、搬送用ノズル10Bの製造が容易になる。
【0045】
フランジ部15fの上面が通気性を有しない状態とは、例えば、金属プレート等の通気性を有しない材料によってフランジ部15fを形成した場合を挙げることができる。
また、金属粒子mを焼結して取付部15Bや先端部12Bと一体でフランジ部15fを形成した場合には、フランジ部15fの上面に低通気層を設ければ、フランジ部15fの上面が通気性を有しない状態とすることができる。なお、この場合には、フランジ部15fの下面や側面から空気を吸引しないように、フランジ部15fの上面、下面、側面の全てに低通気層を設けることが必要である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の搬送用ノズルは、ICチップやコンデンサに代表されるような小型の電子部品を搬送する際に使用するノズルに適している。その他にも、本発明の搬送用ノズルは、例えば、カーボン粉末やセラミック粉末、金属粉末、薬の原材料粉末などといった粉末材料などを搬送する設備、また、粉末材料に含まれる異物、コンタミ物質などを除去する作業を行う設備において、搬送物を保持して搬送する搬送装置などにも採用することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 搬送用ノズル
11 本体
12 先端部
12a 第一面
12b 第二面
12c 第三面
12d 凹み部
12h 中空部
12p 開口
12f 低通気層
15 取り付け部
15f フランジ部
M 搬送物
P ノズル取付部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8