(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031150
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】測定用治具
(51)【国際特許分類】
G01B 5/00 20060101AFI20240229BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G01B5/00 L
G01N1/28 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134521
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】富田 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 晃
(72)【発明者】
【氏名】深野木 邦彦
【テーマコード(参考)】
2F062
2G052
【Fターム(参考)】
2F062AA51
2F062BC71
2F062CC26
2F062EE01
2F062EE62
2F062MM07
2G052DA33
2G052GA01
2G052JA03
2G052JA05
2G052JA08
(57)【要約】
【課題】歯車の形状をより簡便に測定する。
【解決手段】歯車の外周の形状を計測子で測定する際に用いられる測定用治具であって、前記歯車の中心孔を貫通して、前記歯車と同芯に配置されるマンドレルと、前記マンドレルにおいて、前記歯車と同芯に配置される円板部材と、前記マンドレルを支持する一対の支持部と、前記歯車の外周に係合子を弾発的に係合させて、前記歯車の回転を規制する回転規制機構と、を有し、前記円板部材の外周は、前記歯車の中心を特定するために前記計測子が摺動する摺動面であり、前記マンドレルの中心軸方向から見て、前記円板部材の外周は、前記中心軸を所定間隔で囲む仮想円上に位置している、測定用治具。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車の外周の形状を計測子で測定する際に用いられる測定用治具であって、
前記歯車の中心孔を貫通して、前記歯車と同芯に配置されるマンドレルと、
前記マンドレルにおいて、前記歯車と同芯に配置される円板部材と、
前記マンドレルを支持する一対の支持部と、
前記歯車の外周に係合子を弾発的に係合させて、前記歯車の回転を規制する回転規制機構と、を有し、
前記円板部材の外周は、前記歯車の中心を特定するために前記計測子が摺動する摺動面であり、前記マンドレルの中心軸方向から見て、前記円板部材の外周は、前記中心軸を所定間隔で囲む仮想円上に位置している、測定用治具。
【請求項2】
請求項1において、
前記一対の支持部は、前記マンドレルの中心軸を水平線に沿わせた向きで前記マンドレルを支持しており、
前記一対の支持部は、前記中心軸方向に移動可能な可動基台上に設置されている、測定用治具。
【請求項3】
請求項2において、
前記マンドレルは、
軸部と、
前記軸部において前記中心軸方向に間隔をあけて配置された一対の被支持部と、を有しており、
前記一対の被支持部は、同一の外径で形成されている、測定用治具。
【請求項4】
請求項3において、
前記軸部では、
前記一対の被支持部の間に、前記円板部材と、前記中心孔に内嵌する嵌合機構が、設けられている、測定用治具。
【請求項5】
請求項3において、
前記マンドレルは、検査対象の歯車の種類毎に用意されており、
前記マンドレルの各々では、前記一対の被支持部が、共通に設けられている、測定用治具。
【請求項6】
請求項5において、
前記可動基台と前記回転規制機構が設置される基台を有し、
前記基台は、計測装置の定盤に載置される、測定用治具。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか一項において、
前記回転規制機構は、
前記係合子と、
前記係合子を前記中心軸の直交方向に移動可能に保持するホルダと、
前記ホルダに、前記係合子を前記歯車の外周に係合させる方向の付勢力を作用させるスプリングと、
前記ホルダを支持する支持部材と、
前記ホルダの上下方向の位置を調節する調節機構と、を有する、測定用治具。
【請求項8】
請求項7において、
前記支持部材は、前記中心軸の直交方向に位置節可能に設けられている、測定用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、歯車の振れ測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
通常、歯車の外周の形状測定は、三次元形状測定機(CMM測定機)や、歯車専用の測定機を用いて行われる。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、CMM測定機は、大型で高額である。そこで、歯車の形状をより簡便に測定できるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、
歯車の外周の形状を計測子で測定する際に用いられる測定用治具であって、
前記歯車の中心孔を貫通して、前記歯車と同芯に配置されるマンドレルと、
前記マンドレルにおいて、前記歯車と同芯に配置される円板部材と、
前記マンドレルを支持する一対の支持部と、
前記歯車の外周に係合子を弾発的に係合させて、前記歯車の回転を規制する回転規制機構と、を有し、
前記円板部材の外周は、前記歯車の中心を特定するために前記計測子が摺動する摺動面であり、前記マンドレルの中心軸方向から見て、前記円板部材の外周は、前記中心軸を所定間隔で囲む仮想円上に位置している構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明のある態様によれば、歯車の形状をより簡便に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図2は、定盤に測定用治具が載置された計測装置を正面から見た模式図である。
【
図3】
図3は、測定用治具を、
図2におけるA-A線に沿って切断した断面を模式的に示した図である。
【
図4】
図4は、測定用治具を、
図2におけるB-B線に沿って切断した断面を模式的に示した図である。
【
図5】
図5は、測定用治具を、
図3におけるA-A線に沿って、切断した断面を模式的に示した図である。
【
図6】
図6は、測定用治具を、
図3におけるB-B線に沿って、切断した断面を模式的に示した図である。
【
図7】
図7は、測定用治具を、
図5におけるA-A線に沿って、切断した断面を模式的に示した図である。
【
図8】
図8は、測定用治具を、
図3におけるC-C線に沿って、切断した断面を模式的に示した図である。
【
図9】
図9は、測定用治具を、
図3におけるD-D線に沿って、切断した断面を模式的に示した図である。
【
図10】
図10は、測定用治具を、
図3におけるD-D線に沿って、切断した断面であって、マンドレルに支持された円板部材が、中心測定位置に配置されたときの状態を模式的に示した図である。
【
図11】
図11は、マンドレルに支持された歯車が、形状測定位置に配置されたときの歯車の断面を模式的に示した図である。
【
図12】
図12は、形状測定位置に配置された歯車を、上方から見た状態を模式的に示した図である。
【
図13】
図13は、マンドレルに支持された円板部材が、中心測定位置に配置されたときの歯車の断面を模式的に示した図である。
【
図14】
図14は、中心測定位置に配置された円板部材を、上方から見た状態を模式的に示した図である。
【
図15】
図15は、歯車中心と歯溝中心との関係を説明する図である。
【
図16】
図16は、マンドレルの他の態様を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、測定用治具1の概略構成図である。
図2は、定盤55に測定用治具1が載置された計測装置5を正面から見た模式図である。
図3は、測定用治具1を、
図2におけるA-A線に沿って切断した断面を模式的に示した図である。
図4は、測定用治具1を、
図2におけるB-B線に沿って切断した断面を模式的に示した図である。
図4では、測定用治具1が載置される計測装置5側の定盤55も示している。
【0010】
図1および
図2に示すように、測定用治具1は、歯車2の外周の形状を測定する際に使用される。歯車2の外周の形状は、後記する計測装置5の計測子54を用いて測定される。測定用治具1は、歯車2の外周の形状を測定する際に、計測装置5の定盤55に載置される(
図2参照)。
【0011】
測定用治具1は、上面視において矩形形状を成す基台10を有する。基台10では、長手方向の一方側に、回転規制機構3が設けられている。他方側に、歯車支持機構4が設けられている。
【0012】
回転規制機構3は、支持部材31と、支持部材31で支持されたホルダ32と、ホルダ32で支持された係合子35と、を有する。
図3に示すように、上面視においてホルダ32は、軸線Yに沿う向きで配置されている。ここで、軸線Yは、後記する軸線X(中心軸)に直交している。
図2に示すように、支持部材31は、板状の取付部310と、板状のホルダ支持部312と、を有する。取付部310とホルダ支持部312は、互いに直交する向きで設けられた一体部品である。側面視において支持部材31は、L字形状を成している(
図4参照)。
【0013】
取付部310は、台座部11に取り付けられている。
取付部310は、ホルダ支持部312から離れる方向に直線状に延びている。
図3に示すように取付部310には、長孔310a、310aが設けられている。長孔310a、310aは、取付部310を厚み方向に貫通している。長孔310a、310aは、取付部310の延出方向(後記する軸線X方向)に沿う向きで設けられている。取付部310は、長孔310a、310aを貫通した取付ネジNにより、台座部11の上面に固定されている。
支持部材31は、長孔310a、310aの分だけ、軸線X方向(図中、上下方向)に変位可能である。支持部材31は、長孔310a、310aの分だけ、軸線X方向の位置調整が可能である。
【0014】
台座部11は、基台10に設けたガイドレール12に載置されている。
図3に示すように、ガイドレール12は、軸線Y1に沿う向きで設けられている。軸線Y1は、前記した軸線Yに対して平行な直線である。
図4に示すように、ガイドレール12の下部側は、基台10に設けた凹溝10bに収容されている。台座部11は、連結部111を介して、ガイドレール12に支持されている。台座部11は、ガイドレール12の長手方向に沿う軸線Y1方向に移動可能である。
【0015】
基台10では、ガイドレール12に隣接する位置に、ガイド13が設けられている。ガイド13の下部側は、基台10に設けた凹溝10c(
図4参照)に収容されている。
ガイド13は、開口を上方に向けた凹状の部材である。溝131を上方に向けた状態で、凹溝10cに収容されている。
溝131には、台座部11を貫通した、位置決めボルト112の下端112aが挿入されている。
【0016】
図3に示すように、ガイド13は、軸線Y2に沿う向きで設けられている。軸線Y2は、前記した軸線Y、Y1に対して平行な直線である。
台座部11は、ガイドレール12に沿って軸線Y1方向に移動可能である。そのため、位置決めボルト112の位置も、台座部11の移動に連動して、軸線Y2方向に移動可能である。
本実施形態では、台座部11を軸線Y1方向に移動させたのち、位置決めボルト112を締め込むことで、位置決めボルト112の下端112aを、溝131に圧接させるようになっている。これにより、位置決めボルト112が、台座部11の軸線Y2方向への移動を規制するストッパとして機能する。
【0017】
図4に示すように、ホルダ支持部312は、基台10の上面10aに直交する向きで設けられている。
図3に示すように、ホルダ支持部312は、取付部310とは反対側の面に、凹部313が設けられている。凹部313には、ネジ送り機構360の可動板361が位置している。可動板361には、ホルダ32を移動可能に支持するガイド部材33が、図示しないボルトで固定されている。
図3に示すように、可動板361では、当該可動板361の中央部を、送りねじ363が上下方向に貫通している。送りねじ363の両側を、ガイドレール362、362が上下方向に貫通している。可動板361は、凹部313内に設置されたガイドレール362、362で、上下方向に移動可能に支持されている。
【0018】
図4に示すように、送りねじ363の一端は、ホルダ支持部312の上壁部314を上方に貫通している。送りねじ363の一端には、ハンドル部363aが設けられている。送りねじ363の他端363bは、ホルダ支持部312に螺入している。
ネジ送り機構360では、ホルダ支持部312の上部に突出するハンドル部363aをZ軸回りに回転させると、可動板361と、この可動板361に固定されたガイド部材33が上下方向に変位するようになっている。
【0019】
断面視において、ガイド部材33は、略矩形形状を成している。ガイド部材33の中央部には、ホルダ32の挿通孔330が形成されている。
図3に示すようにホルダ32は、把手部321と、軸部322と、支持部323と、を有する一体部品である。ホルダ32は、金属材料で形成されている。
ホルダ32では、把手部321と、軸部322と、支持部323とが、軸線Y方向に、この順番で並んでいる。把手部321と、軸部322と、支持部323は、同芯に配置されている。
【0020】
把手部321は、軸部322の基端に接続する円柱形状の部位である。把手部321は、軸部322よりも小さい外径で形成されている。把手部321の外周には、滑り止めのためのローレット加工が施されている。
【0021】
軸部322は、ガイド部材33の挿通孔330の内径と整合する外径で形成されている。軸部322の外周には、係止溝324が設けられている。
係止溝324は、軸線Y方向に沿って直線状に延びる第1溝部324aと、軸線Y回りの周方向に延びる第2溝部324bと、を有する。
係止溝324には、ガイド部材33を貫通したネジNxの先端Nx1が、軸線Yの径方向から係合している。軸部322を軸線Y回りに回転させると、ネジNxの先端Nx1の係合先を、第1溝部324aと、第2溝部324bとの間で変更できる。
先端Nx1が第1溝部324aに係合すると、ホルダ32の軸線Y方向(図中、左右方向)の移動が、第1溝部324aの範囲内で許容される。先端Nx1が第2溝部324bに係合すると、ホルダ32の軸線Y方向の移動が規制される。
【0022】
図3に示すように、支持部323は、軸部322の先端に接続する有底筒状の部位である。支持部323の開口は、軸部322とは、反対側を向いている。支持部323は、軸部322よりも大きい外径で形成されている。
【0023】
支持部323には、軸線Y方向から係合子35が挿入されている。
係合子35は、挿入部351と、フランジ部352と、係合部353と、を有する一体部品であり、金属材料で形成されている。
係合子35では、挿入部351と、フランジ部352と、係合部353とが、軸線Y方向に、この順番で並んでいる。挿入部351と、フランジ部352と、係合部353は、同芯に配置されている。
【0024】
挿入部351は、支持部323の開口325と整合する外径で形成されている。軸線Y方向における挿入部351の途中位置には、溝351aが設けられている。溝351aは、軸線Y回りの周方向の全周に亘って設けられている。
フランジ部352は、開口325よりも大きい外径で形成されている。
係合部353は、フランジ部352から離れるにつれて、外径が小さくなる先細り形状で形成されている。係合部353の先端には、球状の当接部353aが設けられている。
【0025】
係合子35は、フランジ部352が支持部323の開口端に当接する位置まで、挿入部351を開口325内に挿入して位置決めされる。この状態において挿入部351の溝351aには、支持部323を貫通したネジNyの軸部が係合している。係合子35は、支持部323からの脱落が、ネジNyにより規制されている。
【0026】
ホルダ32は、軸部322にスプリングSpを外挿したのち、把手部321側から、ガイド部材33の挿通孔330に挿入される。
軸部322は、軸部322の外周の係止溝324に、ネジNxの先端Nx1を係合できる位置まで、挿通孔330に挿入される。
この状態において軸部322は、挿通孔330を軸線Y方向に貫通している。軸部322に外挿されたスプリングSpは、支持部323とガイド部材33との間で圧縮された状態で保持される。
【0027】
ホルダ32は、スプリングSpにより、係合子35を歯車2に近づける方向(図中、右方向)に付勢されている。ネジNxの先端Nx1が、前記した第1溝部324aに係合しているときには、ホルダ32は、第1溝部324aの軸線Y方向の長さ分だけ、軸線Y方向に変位可能である。ネジNxの先端Nx1が、前記した第2溝部324bに係合しているときには、ホルダ32は、軸線Y方向の変位が規制される。ネジNxは、ガイド部材33からのホルダ32の脱落を規制している。
図2に示すように、係合子35は、歯車支持機構4で支持された歯車2の外周に、軸線Y方向から対向している。歯車2の形状を測定する際には、係合子35は、スプリングSpの付勢力で、歯車2の外周に弾発的に係合して、歯車2の回転を規制する。
ここで、
図2では、軸線Yは、軸線Xを通る水平線に相当する。係合子35は、軸線Y(水平線)方向における歯車2の外径が最も大きい位置で、歯車2の外周に係合する。
【0028】
図3に示すように、歯車支持機構4は、一対の支持部41(41A、41B)と、可動基台42と、を有している。支持部41(41A、41B)は、可動基台42の上面に有頭ネジN4で位置決めされている。
可動基台42は、軸線Xに沿う向きで設けられた板状部材である。可動基台42の一端42aには、支持部41Bが固定されている。可動基台42の他端42b側には、支持部41Aが設けられている。
なお、以下の説明においては、支持部41A、41Bを特に区別しない場合には、単純に支持部41と標記する。
【0029】
図5は、測定用治具1を、
図3におけるA-A線に沿って切断した断面を模式的に示した図である。
図6は、測定用治具1を、
図3におけるB-B線に沿って切断した断面を模式的に示した図である。
図7は、測定用治具1を、
図5におけるA-A線に沿って、切断した断面を模式的に示した図である。
図5から
図7では、支持部41(41A、41B)に載置されたマンドレル7も示されている。
図8は、測定用治具1を、
図3におけるC-C線に沿って切断した断面を模式的に示した図である。この
図8では、第2位置決め機構46の部分の断面が示されている。
図9は、測定用治具1を、
図3におけるD-D線に沿って、歯車支持機構4を切断した断面を模式的に示した図である。この
図9では、第1位置決め機構45の部分の断面が示されている。
図10は、測定用治具1を、
図3におけるD-D線に沿って、歯車支持機構4を切断した断面であって、マンドレル7の円板部材74が、中心測定位置に配置されたときの状態を模式的に示した図である。
なお、
図5から
図10では、測定用治具1が載置される計測装置5側の定盤55も示している。
【0030】
図5および
図7に示すように、可動基台42は、基台10に設けたガイドレール14に載置されている。
図3に示すように、ガイドレール14は、軸線Xに沿う向きで設けられている。軸線Xは、前記した軸線Yに対して直交する直線である。
図5および
図7に示すように、ガイドレール14の下部側は、基台10に設けた凹溝10dに収容されている。可動基台42は、連結部421を介して、ガイドレール14に支持されている。可動基台42は、ガイドレール14の長手方向に沿う軸線X方向に移動可能である。
具体的には、可動基台42は、上方から見たときに、後記する歯車2を軸線Y上に位置させる第1位置(形状測定位置:
図12参照)と、後記するマンドレル7の円板部材74を軸線Y上に位置させる第2位置(中心測定位置:
図14参照)との間で変位可能である。
【0031】
図3に示すように、歯車支持機構4は、位置決め機構(第1位置決め機構45、第2位置決め機構46)を有している。第1位置決め機構45は、可動基台42を第1位置(形状測定位置)で位置決めするために設けられている。第2位置決め機構46は、可動基台42を第2位置(中心測定位置)で位置決めするために設けられている。
【0032】
以下、位置決め機構(第1位置決め機構45、第2位置決め機構46)の構成を説明する。
図2に示すように、第1位置決め機構45は、可動基台42から見て回転規制機構3側(図中、左側)に位置している。第2位置決め機構46は、可動基台42から見て回転規制機構3とは反対側(図中、右側)に位置している。
軸線Y方向(図中、左右方向)において、可動基台42は、第1位置決め機構45と、第2位置決め機構46との間に位置している。
【0033】
図3に示すように、軸線X方向において第1位置決め機構45は、可動基台42の一端42a側に位置している。軸線X方向において第2位置決め機構46は、可動基台42の他端42b側に位置している。第1位置決め機構45は、軸線Yの一方側(図中、上側)に位置している。第2位置決め機構46は、軸線Yの他方側(図中、下側)に位置している。
【0034】
上面視において第1位置決め機構45は、支持部41Bの側方に位置している。
第1位置決め機構45は、連結部451と、延出部452と、支持部453と、を有している。
図9に示すように連結部451は、軸線X方向に長さL451を持つ板状部材である。連結部451の厚みW451は、可動基台42の厚みW42より小さい。連結部451は、可動基台42の下辺寄りの位置に設けられている。
【0035】
延出部452は、連結部451の長さ方向(図中、左右方向)の略中央部から、連結部451から離れる方向(紙面手前側)に延出している。
延出部452の厚みW452は、連結部451の厚みW451よりも薄くなっており、延出部452の上面452aが、支持部453の載置面となっている。支持部453は、延出部452の上面にネジN6、N6で固定されている。
【0036】
第1位置決め機構45では、支持部453と延出部452を貫通して貫通孔454が設けられている。貫通孔454は、鉛直線VL(図中、上下方向)に沿う向きで設けられている。円柱形状の位置決めピン455が、貫通孔454を基台10側の下方に貫通している。
【0037】
第1位置決め機構45の連結部451は、可動基台42の側面にネジN5、N5で固定されている。そのため、貫通孔454を貫通した位置決めピン455は、可動基台42の軸線X方向の移動に連動して、軸線X方向に移動する。
【0038】
基台10の上面には、位置決め穴101が開口している。位置決め穴101は、基台10の上面10aに開口する有底穴である。位置決め穴101は、位置決めピン455を挿入可能な内径で形成されている。
【0039】
本実施形態では、可動基台42が前記した第1位置(形状測定位置)に到達した際に、位置決めピン455が、自重により位置決め穴101に挿入されるように、位置決め穴101の位置が設定されている。
そのため、位置決めピン455が位置決め穴101に自重で挿入されるまで、可動基台42を第1位置に向けて移動させるだけで、可動基台42の第1位置への移動と、第1位置での位置決めを、容易に行えるようになっている。
【0040】
図8に示すように、第2位置決め機構46は、可動基台42の側方に配置されるガイド部47と、操作部48と、操作部48およびガイド部47を軸線Y3方向に貫通するボルト49と、を有している。
図3に示すようにガイド部47は、軸線Xに沿う向きで設けられた板状部材である。
図6に示すようにガイド部47は、基台10に固定される取付部471と、取付部471から上方に突出する突出部472と、を有する。
取付部471は、軸線X方向に長さL471を有している。取付部471の下部側は、基台10に設けた凹溝10dに収容されている。
【0041】
取付部471は、長手方向の一端と他端が、ネジN7、N7で、基台10に固定されている。ガイド部47におけるネジN7、N7の間の領域が、突出部472となっている。
突出部472の上端472aは、可動基台42の上面42cよりも僅かに上方に位置している。
突出部472では、可動基台42の側面に対向する領域に、長孔473が設けられている。長孔473は、軸線Xに沿う方向(図中、左右方向)に直線状に延びている。
【0042】
図8に示すように、本実施形態では、操作部48を貫通したボルト49の軸部492が、長孔743を軸線Y3方向に貫通している。軸線Y3は、軸線Xに直交すると共に、基台10の上面10aに対して平行な直線である。
軸部492の先端は、可動基台42の側面に螺入している。そのため、操作部48とボルト49は、可動基台42の軸線X方向の移動に連動して、軸線X方向に移動する。長孔473は、操作部48とボルト49の軸線X方向への移動を阻害しないようにするために、軸線X方向に長さL473(
図6参照)で形成されている。
【0043】
操作部48は、大径部481と、小径部482と、レバー部483と、を有する。
大径部481と小径部482は、軸線Y3上で同軸に配置されている。大径部481から見て小径部482は、ガイド部47側(図中、左側)に位置している。
大径部481では、小径部482とは反対側に開口481aを有している。開口481a内には、ボルト49が軸線Y3方向から挿入されている。
ボルト49の軸部492は、大径部481と小径部482を軸線Y3方向に貫通している。この状態においてボルト49の頭部491は、開口481a内に収容されている。
【0044】
レバー部483は、大径部481の外周から、軸線Y3の径方向に延出している。
ボルト49と操作部48は、相対回転不能に連結されている。ボルト49と操作部48は、軸線Y3回りに回転可能である。
レバー部483を操作して、操作部48を軸線Y3回りの一方側に回転させると、軸部492の先端が、可動基台42にねじ込まれて、操作部48が可動基台42に近づく方向に変位する。そうすると、小径部482が、ガイド部47(突出部472)に圧接して、操作部48とガイド部47との軸線X方向での相対移動が規制される。その結果、ボルト49が螺入する可動基台42の軸線X方向の移動が規制される。
【0045】
一方、操作部48を軸線Y3回りの他方側に回転させると、軸部492の先端が、可動基台42から離れる方向に変位して、操作部48が可動基台42から離れる方向に変位する。そうすると、小径部482がガイド部47から離れることで、操作部48とガイド部47(突出部472)との圧接が解消される。その結果、操作部48とガイド部47との軸線X方向での相対移動が許容される。これにより、ボルト49が螺入する可動基台42の軸線X方向の移動が許容される。
【0046】
本実施形態では、可動基台42を、前記した第2位置(中心測定位置)に配置したのちに、レバー部483を操作することで、可動基台42の軸線X方向の移動を規制できる。
そのため、可動基台42の第2位置での位置決めを、容易に行えるようになっている。
【0047】
以下、可動基台42上に設置された支持部41A、41Bの構成を説明する。
支持部41A、41Bは、同一形状を有している。
図5に示すように、支持部41は、板状の取付部411と、板状の支持板部412と、を有する。取付部411と支持板部412は、互いに直交する向きで設けられた一体部品である。
軸線Xに沿う断面視において、支持板部412は、支持部41の長手方向(
図5における左右方向)の途中位置に設けられている。支持板部412は、取付部411から離れる方向に直線状に延びている。断面視において支持部41は、略T字形状を成している。
支持板部412は、基台10の上面10aに対して直交している。
【0048】
支持部41では、取付部411に挿通孔411aが設けられている。支持部41は、挿通孔411aを貫通させた有頭ネジN4を、可動基台42側の取付穴420に螺入することで、可動基台42の上面に固定される。
【0049】
図7に示すように、支持板部412は、軸線Y方向に幅W412を有している。この幅W412は、後記するマンドレル7の被支持部72の外径D72よりも大きい(W412>D72)。
基台10の上面10aから支持板部412の上端412aまでの高さh41は、支持部41Aと支持部41Bの何れにおいても同じである。
支持板部412の上端412aでは、幅方向の中央部に、凹部43が設けられている。凹部43は、支持板部412の幅方向の中心を通る鉛直線VLを間に挟んで対称となる形状を有している。
凹部43は、鉛直線VLから見て一方側に、鉛直線VLに対して所定の角度(交差角θ)傾斜した傾斜面431と、鉛直線VLに対して平行な側面432と、鉛直線VLに直交する底面433と、が位置している。他方側にも、傾斜面431と、側面432と、底面433が位置している。
【0050】
本実施形態では、マンドレル7の被支持部72が、傾斜面431、431に載置されるようになっている。この状態において被支持部72は、一方の傾斜面431と他方の傾斜面431で、線接触した状態で支持される。
傾斜面431の鉛直線VLとの交差角θは、被支持部72が凹部43で支持された際に、マンドレル7(被支持部72)の中心(軸線X)を、鉛直線VLと軸線Yとの交差点に位置させる角度に設定されている。この交差角θは、被支持部72の外径D72を考慮して決定される。
【0051】
図3に示すようにマンドレル7は、測定対象の歯車2を支持するための支持具である。測定用治具1における測定対象の歯車2は、異なる外径を持つ複数種類の歯車である。
そのため、マンドレル7は、測定対象の歯車2の種類に応じて、複数用意されている。歯車2の測定を行う際には、測定対象の歯車2に応じて決まる1つのマンドレル7が選択されて、使用される。各マンドレル7は、後記する円板部材74の厚みおよび外径が測定対象の歯車2に応じて異なるものの、基本形状は同じである。各マンドレル7は、同じ外径D72(直径)の被支持部72、72を共通して利用している。
【0052】
図11は、歯車支持機構4が、マンドレル7に支持された歯車2を形状測定位置(第1位置)に配置したときの断面を模式的に示した図である。この
図11は、
図5におけるB-B断面に相当する。
図12は、形状測定位置に配置された歯車2を上方から見た状態を模式的に示した図である。
図13は、歯車支持機構4が、マンドレル7の円板部材74を中心測定位置(第2位置)に配置したときの断面を模式的に示した図である。
図14は、中心測定位置に配置された歯車2を上方から見た状態を模式的に示した図である。
【0053】
以下、マンドレル7の基本構成を説明する。
図3に示すようにマンドレル7は、円柱形状の軸部71を有している。軸部71の基端71b側は、把持部710となっている。把持部710の外周には、滑り止めのためのローレット加工が施されている。
【0054】
軸部71では、軸線X方向に間隔を開けて、一対の被支持部72、72が設けられている。
一方の被支持部72は、軸部71の一端71aに設けられている。他方の被支持部72は、一端71aから基端71b側にオフセットした位置に設けられている。
被支持部72、72は、同一の外径D72を持つ円柱形状の部位である。外径D72は、マンドレル7で支持する歯車2の中心孔20を通過可能な外径に設定されている。
【0055】
被支持部72、72の間には、コレット73と、円板部材74と、ストッパ部75と、が設けられている。
コレット73は、軸線X回りに回転可能な操作部731と、操作部731の回転操作に連動して軸線X方向に変位する可動部732と、可動部732の軸線X方向の変位に連動して外径が拡縮する係合部733と、を有する。
コレット73では、操作部731を軸線X回りの一方に回転させると、可動部732が係合部733の内側に挿入されて、係合部733の外径が拡大する。操作部731を軸線X回りの他方に回転させると、可動部732が係合部733から離れる方向に変位して、係合部733の外径が縮小する。
【0056】
マンドレル7では、軸部71を、歯車2の中心孔20に挿入して、円板部材74を歯車2に当接させた位置に配置する。この状態でコレット73の操作部731を回転させることで、係合部733が歯車2の中心孔20に内嵌する。これにより、測定対象の歯車2がマンドレル7上の円板部材74に隣接する位置に配置される。
この状態において、歯車2は、マンドレル7(軸部71)の中心軸(軸線X)上で、円板部材74と同芯に配置される。
【0057】
円板部材74は、マンドレル7の軸部71に外挿された歯車2の位置決めと、歯車2の中心(回転軸)の検出に用いられる。
図13に示すように、軸線X方向から見て円板部材74は、円形を成している。円板部材74は、歯車2の歯溝部23(歯底部210)を通る仮想円Im2よりも小さい外径D74で形成されている。具体的には、円板部材74の外径D74は、軸部71に外挿される歯車2の外径との差が、予め決められた範囲の値となるように設定されている。
本実施形態では、円板部材74の外周74aは、歯車2の外周を通る仮想円Im1と、歯車2の歯溝部23を通る仮想円Im2よりも内径側に位置している。円板部材74の外周を通る仮想円Im74と、仮想円Im1、Im2は、軸線X上に中心を持つ同芯の円である。
【0058】
図6に示すようにストッパ部75は、被支持部72よりも僅かに大きい外径で形成されている。
本実施形態では、マンドレル7の被支持部72、72を支持部41A、41Bに載置した際に、以下の条件を満たすようになっている。
(a)ストッパ部75が、支持部41Bの側面410に軸線X方向から当接する。
(b)円板部材74が、支持部41Aの側面400に軸線X方向から当接する。
これにより、マンドレル7と支持部41A、41Bとの軸線X方向の相対移動が規制される。
なお、側面410は、支持部41Bにおける支持部41A側(図中、左側)の側面である。側面400は、支持部41Aにおける支持部41B側(図中、右側)の側面である。
【0059】
本実施形態では、円板部材74の厚みW74を、マンドレル7で支持する歯車2の厚みW2に応じて変更することで、マンドレル7で支持された歯車2の軸線X方向(図中、左右方向)の中央が、軸線Yに直交する鉛直線VL上に位置決めされるようにしている。そのため、歯車2の種類毎にマンドレル7が用意されている。
【0060】
図11に示すように、歯車2は、中心孔20を囲む基部21の外周に、歯部22を有している。基部21の外周において歯部22は、回転軸(軸線X)周りの周方向の全周に亘って設けられている。歯部22は、軸線X周りの周方向に設定された間隔で設けられている。周方向で隣接する歯部22、22の間は、相手側歯車の歯部が係合可能な歯溝部23となっている。
【0061】
軸線X方向から見て歯部22の各々は、基部21の外周から外径側に突出している。歯部22の各々は、外径側に向かうにつれて周方向の幅Wが狭くなる断面形状を有している。
軸線X周りの周方向における歯部22(歯先部220)の一方側の第1側面221と、他方側の第2側面222は湾曲した表面を有している。
第1側面221は、歯先部220に隣接する領域が第1歯面221aであり、この第1歯面221aに隣接する領域が第1歯元221bである。
【0062】
第1歯面221aは、湾曲した断面形状を有している。断面視において第1歯面221aは、歯溝部23を間に挟んで隣接する他の歯部22側に膨出した曲線状に形成されている。第1歯元221bは、湾曲した断面形状を有している。断面視において第1歯元221bは、隣接する他の歯部22から離れる方向に窪んだ曲線状に形成されている。
第1歯面221aと第1歯元221bは、連続的に接続している。第1歯元221bの内径側は、歯底部210に連続的に接続している。
【0063】
歯底部210は、円弧状の断面形状を有している。断面視において歯底部210は、歯車2の外径側に膨出した曲線状に形成されている。歯底部210は、軸線Xを中心とした仮想円Im2に沿う円弧状を成している。
第2側面222は、歯先部220に隣接する領域が、第2歯面222aであり、この第2歯面222aに隣接する領域が、第2歯元222bである。第2歯元222bの内径側は、歯底部210に連続的に接続している。
【0064】
第2歯面222aは、湾曲した断面形状を有している。断面視において第2歯面222aは、歯溝部23を間に挟んで隣接する他の歯部22側に膨出した曲線状に形成されている。第2歯元222bは、湾曲した断面形状を有している。断面視において第2歯元222bは、隣接する他の歯部22から離れる方向に窪んだ曲線状に形成されている。
第2歯面222aと第2歯元222bは、連続的に接続している。
【0065】
第1歯面221aと第2歯面222aは、歯溝部23の中心を通る直径線Lcを間に挟んで対称となる湾曲形状で形成されている。第1歯元221b、第2歯元222bは、直径線Lcを間に挟んで非対称となる湾曲形状で形成されている。
歯車2では、第1歯面221a、第2歯面222aの形状(湾曲形状)が同じであるものの、第1歯元221b、第2歯元222bの形状(湾曲形状)が異なる。
【0066】
図3および
図5に示すように、測定用治具1では、マンドレル7の被支持部72、72を、前記した支持部41A、41Bの凹部43、43に載置することで、基台10上の所定位置に測定対象の歯車2を配置する。この状態において、マンドレル7の中心軸(軸線X)は、基台10の上面10aに対して水平、かつ前記した軸線Yおよび鉛直線VLに直交する位置関係で配置される。なお、測定用治具1は、計測装置5の定盤55に載置されるので、マンドレル7の中心軸(軸線X)は、定盤55の上面55aに対して水平である(
図5参照)。
【0067】
歯車形状の計測装置5は、基台10上で位置決めされた歯車2の外周に沿って計測子54を移動させつつ、計測子54の先端の座標を連続的に取得することで、歯車2の外周の表面形状データを生成する(
図11、
図12参照)。
ここで、歯部22と歯溝部23は、軸線X回りの周方向で交互に連続しているので、歯車2の外周の表面形状データとは、歯部22と歯溝部23の表面形状データともいえる。
【0068】
図2に示すように計測装置5は、計測子54を支持する支持梁53と、ガイド柱51に昇降自在に設けられた本体部52と、を有する。本体部52の内部には、支持梁53の駆動機構(図示せず)と、本体部52の昇降機構(図示せず)が設けられている。
そして、本体部52は、計測装置5が備える演算装置(処理装置:図示せず)に接続されている。計測装置5では、演算装置からの指示に基づいて、昇降機構(図示せず)による本体部52の昇降と、駆動機構による計測子54での走査が実施されて、歯車2の外周の表面形状データの取得と、歯車2(円板部材74)の中心の特定が実施される。
【0069】
支持梁53は、長手方向の基端が本体部52で片持ち支持されている。支持梁53は、計測子54が設けられた先端側が、上下方向に変位可能である。
本実施形態では、歯車2の外周の表面形状データの生成と、歯車2の中心の位置の検出を可能にするために、少なくとも仮想円Im1から仮想円Im74までの範囲R2を計測子54が変位できるようになっている(
図13参照)。
なお、仮想円Im1は、軸線X方向から見て歯部22(歯先部220)の外周を通る仮想円であり、仮想円Im74は、軸線X方向から見て円板部材74の外周74aを通る仮想円である。
なお、計測装置5では、この範囲R2内で計測子54を変位させるにあたり、本体部52(
図2参照)の位置を変更することなく、表面形状データの生成と歯車2の中心の位置を行えるようになっている。
【0070】
歯車2の外周の表面形状データを取得する際には、支持梁53は、計測子54を歯車2の外周に向けて付勢しつつ、歯車2の周方向に変位する(
図11参照)。
これにより、
図11において矢印で示す軌跡に沿って計測子54が、歯車2の外周を摺動する。そして、この際の計測子54の先端の座標の遷移を示す生データが、演算装置(処理装置:図示せず)に出力される。演算装置では、入力された生データの処理により、歯車2の外周の表面形状データが生成される。
【0071】
また、本実施形態では、歯車2の外周の表面形状データの生成に先立って、歯車2の中心の位置を検出する。歯車2の中心の位置を検出する際には、支持梁53は、計測子54を円板部材74の外周74aに向けて付勢しつつ、円板部材74の周方向に変位する(図
13参照)。
これにより、
図13において矢印で示す軌跡に沿って計測子54が、円板部材74の外周74aを摺動する。そして、この際の計測子54の先端の座標の遷移から、円板部材74の中心の位置を規定する中心座標を取得する。マンドレル7では、円板部材74と歯車2とが、マンドレル7の中心軸(軸線X)と同芯に配置されている。そのため、取得された円板部材74の中心座標は、そのまま、歯車2の中心座標となる。
【0072】
以下、歯車2の外周の形状測定の過程を説明する。
歯車2の外周の形状測定は、以下の手順にて行われる。
(A)測定対象の歯車2を、マンドレル7に装着する。
具体的には、測定対象の歯車2を、マンドレル7の軸部71に外挿して、円板部材74に当接させる(
図3参照)。コレット73の操作部731の操作により、測定対象の歯車2を、マンドレル7上の円板部材74に隣接する位置で位置決めする。
【0073】
(B)歯車2を装着したマンドレル7を、基台10上の所定位置に配置する。
具体的には、マンドレル7の被支持部72、72を、支持部41A、41Bの凹部43、43に載置して、マンドレル7のストッパ部75と円板部材74を、支持部41Bの側面410と、支持部41Aの側面400に、それぞれ当接させる(
図6参照)。
これにより、マンドレル7が、基台10上の所定位置に配置される。
【0074】
(C)マンドレル7の円板部材74を、中心測定位置(
図10、
図14参照)に配置して、円板部材74の中心位置から、歯車2の中心位置を特定する。
具体的には、可動基台42を軸線X方向に移動させて、円板部材74を、計測子54の直下の位置に配置する(中心測定位置:
図10、
図14参照)。
この状態で、第2位置決め機構46のレバー部483を、
図10における反時計回り方向CCWに操作して、可動基台42の軸線X方向の移動を規制する。
続いて、計測子54を、円板部材74の外周74aに沿って移動させる(
図13、
図14参照)。この際の計測子54の先端の座標の遷移から、円板部材74の中心座標(軸線X)を取得する。マンドレル7では、円板部材74と歯車2とが、マンドレル7の中心軸(軸線X)と同芯に配置されている。そのため、取得された円板部材74の中心座標は、そのまま、歯車2の中心座標となる。
【0075】
(D)マンドレル7に装着された歯車2を、形状測定位置(
図3、
図9参照)に配置して、歯車2の外周の形状を測定する。
具体的には、第2位置決め機構46のレバー部483を、
図10における時計回り方向CWに操作して、可動基台42の軸線X方向の移動を許容する。
この状態で可動基台42を軸線X方向に移動させて、歯車2を、計測子54の直下の位置に配置する(形状測定位置:
図9、
図12参照)。
第2位置決め機構46による可動基台42の移動規制を解除した直後は、可動基台42は、
図10に示す中心測定位置(第2位置)に配置されている。この状態では、位置決めピン455は、基台10の位置決め穴101から外れた位置に配置されていると共に、軸線Yを通る鉛直線VLと交差する位置に円板部材74が位置している。
【0076】
図10に示す中心測定位置(第2位置)から、可動基台42を、
図9に示す形状測定位置(第1位置)に向けて移動させると、可動基台42が前記した第1位置(形状測定位置)に到達した時点で、位置決めピン455が、自重により位置決め穴101に挿入される。これにより、位置決め穴101に挿入された位置決めピン455により、可動基台42の軸線X方向への移動が規制されて、可動基台42が状測定位置(第1位置)に位置決めされる。この状態では、軸線Yを通る鉛直線VLと交差する位置に歯車2が位置している。
【0077】
続いて、回転規制機構3の台座部11を、ガイドレール12に沿って歯車2に近づける方向(
図3における右方向)に移動させて、ホルダ32に支持された係合子35を歯車2の外周に係合させる。この状態で、位置決めボルト112により、台座部11を位置決めする。
さらに、ホルダ32を軸線Y回りに回転させて、ネジNxの先端Nx1を、第2溝部324bに係合させる。これによりホルダ32の軸線Y方向の移動が規制されて、係合子35が歯車2の外周に係合した位置に保持される。よって、歯車2の回転が、係合子35により規制された状態となる。
この状態において歯車2は、形状測定を行う歯溝部23を、軸線Xを通る鉛直線VL上に位置させる(
図11参照)。さらに、回転規制機構3の係合子35は、鉛直線VLに直交する軸線Y方向から、歯車2の外周に係合している(
図11参照)。
【0078】
(E)歯車2の回転を規制した状態で、計測子54を、歯車2の外周に沿って移動させる(
図11参照)。この際の計測子54の先端の座標の遷移から、隣接する歯部22、22の一方の歯部22の第1側面221から歯底部210を経て、他方の歯部22の第2側面222、歯先部220までの形状データ(以下、歯溝部の形状データともいう)を取得する。
【0079】
図15は、歯車中心と歯溝位置との関係を説明する模式図である。この
図15は、一回の測定で得られる歯車の外周の形状データと、得られた形状データのその後の処理を説明する図である。なお、
図15では、一回の測定で得られる範囲を太線で示している。
ここで、取得された形状データの処理では、プログラム上の処理において、仮想円ImCを、第1側面221の第1歯面221aと、第2側面222の第2歯面222aとに接触する位置に配置し、このときの仮想円ImCの中心を、歯溝部23の中心とする。
前記したように、第1歯面221aと第2歯面222aは、歯溝部23の中心を通る直径線Lcを間に挟んで対称となる形状を有している。
そのため、第1歯面221aと第2歯面222aとに接触する仮想円ImCの中心座標は、軸線X周りの周方向における歯溝部23の中心の位置に相当する。
【0080】
歯溝部23の中心の座標(歯溝中心)を基準として、歯部22の一方の第1側面221から、歯底部210を経て、隣接する他の歯部22の他方の第2側面222、歯先部220までの形状データが取得される。
なお、取得された形状データは、前記した中心座標と関連付けて取得される。
【0081】
(F)取得した歯溝部23の形状データと、CADデータで規定される歯溝部23の形状データとを比較して、歯溝部23の形状における不良の有無を確認する。
具体的には、取得した歯溝部23の形状データと、CADデータで規定される歯溝部23の形状データは、それぞれ中心座標を基準として比較対照できる。そのため、取得された歯溝部23の形状データと、CADデータで規定される歯溝部23の形状データが、中心座標を基準として比較する。そして、一例として、取得した歯溝部23の形状データと、CADデータで規定される歯溝部23の形状データとの差異と、判定用の閾値との比較により、形状の不良の有無が判断される。
【0082】
ここで、単純に取得した歯溝部23の形状データ(生データ)では、仮想円ImCにより歯溝部の中心Cの位置を特定できるものの、中心Cと歯車2の中心とを結ぶ直径線Lcは、歯車2の中心を通る鉛直線VLに対して傾きを持っている場合が多い。
そのため、本実施形態では、CADデータとの比較に先立って、取得した歯溝部23の形状データの回転処理を実施する。
【0083】
図15の場合には、直径線Lcが、鉛直線VLに対して反時計回り方向側(図中、左側)に位置している。そのため、取得した形状データを時計回り方向(図中、右方向)に回転させて、直径線Lcが鉛直線VLに倣う位置に来るようにしている(
図15、下側参照)。
これにより、取得した形状データの歯車2の中心回りの位相を揃えた状態で、CADでデータと比較できる。
(G)形状を測定した歯溝部23に隣接する他の歯溝部23の形状を測定する。
具体的には、係合子35による歯車2の回転規制を解消したのち、歯車2を軸線X回りに回転させて、形状を測定した歯溝部23に隣接する歯溝部23を、計測子54の直下の位置に配置する。
係合子35により歯車2の回転を規制したのち、この状態で、計測子54を、歯車2の外周に沿って移動させる(
図11参照)。この際の計測子54の先端の座標の遷移から、隣接する他の歯溝部23の形状データを取得する。なお、取得された形状データは、前記した中心座標と関連付けて取得される。
(H)隣接する他の歯溝部23の形状データと、CADデータで規定される歯溝部23の形状データとを比較して、歯溝部23の形状における不良の有無を確認する。
【0084】
(I)軸線X回りの周方向で隣接する所定数の歯溝部23(例えば、4個の歯溝部23)の形状測定を実施して、CADデータとの比較による各歯溝部23の形状における不良の有無を確認する。
(J)歯車2の軸線X回りの位相を180°ずらした位置にある所定数の歯溝部23の形状測定を実施して、CADデータとの比較による各歯溝部23の形状における不良の有無を確認する。
【0085】
このように、本実施形態では、歯車形状の計測が一歯ずつ行われる。そして、計測により得られた生データ(計測子54の先端の座標の遷移データ)に対して回転処理を施したのち、歯車の外周の形状データが生成される。
ここで、歯車の外周の形状を計測する際の計測子54の先端の座標は、2次元空間(
図15におけるY-VL空間)に、取得した順番でプロットされる。そして、2次元空間において、計測子54の先端の座標がプロットされた範囲を指定して、計測子54の先端の座標の取得と、取得した座標を繋いだ形状データの生成が実施される。
【0086】
回転処理を行わない場合には、歯車形状の計測が行われる度に、形状データの生成に用いる範囲を2次元空間上で指定する必要がある。
一方、生データを回転処理することで、歯溝部23毎に得られる生データの位置関係が揃うことになる。そのため、形状データの生成に用いる範囲を、その都度指定する必要が無い。これにより定量的な解析をそれぞれの歯溝部に対して実施できる。
【0087】
さらに、マンドレル7において円板部材74と歯車2が同心に配置されるので、最初に測定した円板部材74の中心座標を、回転処理を実施する際の基準となる歯車2の中心座標としてそのまま用いることができる。これにより、歯溝部23の形状を測定する度に、円板部材74の中心座標を特定する走査を実施する必要が無い。
【0088】
(K)各歯溝部23の形状における不良の有無の確認結果から、歯車2の外周の形状における不良の有無を確認する。
取得される歯溝部23の形状データは、円板部材74の中心座標と関連付けられている。マンドレル7では、歯車2と円板部材74が、マンドレル7(軸部71)の中心軸(軸線X)と同芯に配置されている。そのため、円板部材74の中心座標は、歯車2の中心座標に相当する。
よって、円板部材74の中心座標を基準として、各歯溝部の形状データを、CADデータで規定される歯溝部23の形状データと比較できる。これにより、歯車形状における不良の有無を確認できるようになっている。
【0089】
図16は、他の歯車2Aに用いられるマンドレル7Aを説明する断面図である。
マンドレル7は、測定対象の歯車2の種類毎に用意されている。
マンドレル7の各々では、一対の被支持部72、72が、共通に設けられている。複数あるマンドレル7の各々が、同一外径の被支持部72、72を共通して有している。
【0090】
円板部材74は、マンドレル7が支持する歯車毎に異なる。具体的には、マンドレル7の各々では、支持する歯車2に応じて異なる厚みの円板部材74が設けられている。
【0091】
図16に示す歯車2Aの場合、歯車2Aの外径D2Aは、前記した歯車2の外径D2(
図5参照)よりも小さい(D2>D2A)。さらに、歯車2Aの厚みW2Aは、歯車2の厚みW2よりも厚い(W2<W2A)。
そのため、マンドレル7Aの円板部材74Aは、厚くなった厚みの分だけ、前記した円板部材74よりも薄い厚みW74’となっている。
マンドレル7Aの被支持部72、72を、一対の支持部41(41A、41B)で支持させた際に、マンドレル7Aで支持された歯車2Aを鉛直線VL上に位置させるためである。本実施形態では、円板部材74Aの厚みを変更することにより、歯車2Aの外周の軸線X方向の中心が、鉛直線VLと略重なる位置に配置されるようにしている。
【0092】
さらに、円板部材74Aは、歯車2の外径が小さくなった分だけ、前記した円板部材74の外径D74よりも小さい外径D74’となっている。
前記したように、計測装置5の計測子54は、径方向に変位可能であり、計測子54は、前記した所定の範囲R2(
図13参照)を越えて変位可能である。
そのため、円板部材74Aは、計測子54の変位可能な範囲内で、マンドレル7Aで支持する歯車の外径よりも小さい外径で形成されている。
そのため、歯車2Aが鉛直線VL上に位置するように、円板部材74の外径D74を設定することで、中心座標の取得から歯車2、2Aの外周の形状を取得するまでの間に、計測子54を支持する計測装置5側の本体部52を移動させる必要が無い。
【0093】
中心座標の取得から歯車2、2Aの外周の形状を取得するまでの間に本体部52を移動させると、円板部材74の中心座標を、歯車の中心座標とすることができなくなる。
かかる場合、計測子54による円板部材74の外周74aの形状測定、すなわち、中心座標の取得のための形状測定が、計測子54による歯車2の外周の形状測定に影響を及ぼすことになる。
上記の通り、中心座標の取得から歯車2、2Aの外周の形状を取得するまでの間に、計測子54を支持する計測装置5側の本体部52を移動させる必要が無いので、中心座標の取得のための形状測定が、計測子54による歯車2の外周の形状測定に影響を及ぼすことを好適に防止できる。
【0094】
本実施形態では、歯車毎に用意されたマンドレル7の各々が、同一外径の被支持部72、72を共通して有している。そのため、被支持部72、72を、一対の支持部41(41A、41B)で支持させると、マンドレル7で支持された歯車2の中心(軸線X)は、基台10上の同じ高さ位置に常に配置される。
これにより、歯車2の種類が変わる度に、回転規制機構3の高さ位置を、歯車2の外径に合わせて調整する必要が無い。これにより、歯車2の外周の形状を測定する作業における効率の低下を好適に防ぐことができる。これにより、歯車2の外周の形状を測定する作業における作業コストの低減が期待できる。
【0095】
なお、計測装置5の計測子54は、歯車の外径に応じて上下方向で位置調整をする必要がある。この場合、支持梁53を支持する本体部52を、ガイド柱51に沿って上下方向に変位させることになる。計測子54の位置を調整したのちは、マンドレル7を軸線X方向に移動させて、計測子54の直下に、測定対象の歯車や円板部材を配置させることになる。よって、測定対象の歯車が変更された場合、計測子54は一度の位置調整を行うだけで良いので、計測作業における負担が低減できる。
【0096】
前記した実施形態では、円板部材74が、マンドレル7の軸部71に外挿されて、歯車2と同芯に配置されている場合、すなわち、円板部材74が軸部71と別体に設けられている場合を例示した。
ここで、円板部材74は、軸部71と一体に設けられた構成としても良い。かかる場合には、円板部材74の中心が、軸部71の中心軸(軸線X)と同芯となるようにすることで、前記した実施形態の同様の作用と効果が奏される。
【0097】
前記した実施形態では、回転規制機構3の位置決めを、ガイド13の溝131に、位置決めボルト112を圧接させることにより行う場合を例示した(
図4参照)。
ここで、位置決めボルト112を挿入可能な有底穴を溝131に設けて、位置決めボルト112の圧接による位置決めに代えて、有底穴への位置決めボルトの挿入により、回転規制機構3の軸線Y方向の位置決めを行うようにしても良い。
この場合には、複数の有底穴が、ガイド13の長手方向に間隔を空けて配置されることになる。
【0098】
前記した実施形態では、第1位置決め機構45の位置決めピン455が、可動基台42に連結された支持部453で、鉛直線VL方向に移動可能に支持されている場合を例示した(
図9,
図10参照)。
【0099】
第1位置決め機構45に、位置決めピン455の移動を規制するための規制機構60を設けた構成としても良い(
図17参照)。
規制機構60は、位置決めピン455の外周に設けた係止溝61と、係止溝61に係脱可能なネジNzと、を有する。
係止溝61は、位置決めピン455の長手方向に沿う第1溝部61aと、第1溝部61aの基台10側の端部から周方向に延びる第2溝部61bとから構成される。
位置決めピン455は、支持部453に設けた円筒状の支持筒455aで移動可能に支持されている。
係止溝61には、支持筒455aを貫通したネジNzの先端Nz1が、係合している。
ネジNzは、位置決めピン455の移動方向の直交方向から係止溝61に係合している。位置決めピン455を回転させて、ネジNzの先端Nz1を、第2溝部61bに係合させると、位置決めピン455が、基台10の上面10aから離間した位置で保持される。
ネジNzの先端Nz1を、第1溝部61aに係合させると、位置決めピン455は、第1溝部61aの範囲内で移動可能となる。
【0100】
かかる構成の規制機構60を設けると、位置決めピン455を基台10の上面10aを摺動させずに、可動基台42を軸線方向に移動させることができる。
【0101】
以上の通り、本実施形態にかかる測定用治具1は、以下の構成を有する。
(1)測定用治具1は、歯車2の外周(歯部22、歯溝部23)の形状を計測子54で測定する際に用いられる。
測定用治具1は、
歯車2の中心孔20を貫通して、歯車2と同芯に配置されるマンドレル7と、
マンドレル7において、歯車2と同芯に配置される円板部材74と、
マンドレル7を、回転可能に支持する一対の支持部41(41A、41B)と、
歯車2の外周の歯溝部23に係合子35を弾発的に係合させて、歯車2の回転を規制する回転規制機構3と、
歯車2の外周の形状を測定する計測子54を有する計測装置5と、を有する。
【0102】
計測子54を、円板部材74の外周74aに沿って移動させながら外周74aの位置情報を取得すると、取得した位置情報から、円板部材74の中心座標(軸線Xの位置)を特定できる。
円板部材74と歯車2がマンドレル7上で同芯に配置されるので、特定した円板部材74の中心座標は、歯車2の中心座標となる。
その後、歯車2の外周に沿って計測子54を移動させながら位置情報を取得すると、取得した位置情報から、歯車2の外周(歯部22、歯溝部23)の形状データが生成される。ここで、歯車2の外周の形状データは、一歯ずつ測定されて生成される。
歯車2の中心座標を予め取得しておくことで、一歯ずつ生成された形状データを、歯車の中心座標を基準として、CADデータで規定される歯車2の形状データと比較できる。これにより、一歯ずつ生成された形状データから、歯車の外周の歯部各々の形状の適否を判定できる。
【0103】
このように、測定用治具1は、マンドレル7を軸線X方向に変位させるだけで、計測子54を支持する本体部52の上下方向の位置を変更することなく、歯車2の中心座標の特定と、特定した中心座標を基準とした歯車2の歯溝部23の形状データの取得を行える。
さらに、各歯溝部23の形状を規定する形状データ(座標データ)を、歯車2の中心座標を基準として、CADデータで規定される各歯溝部の形状データと比較できる。これにより、歯車の外周の歯部各々の形状の適否を適切に判定できるので、CMM測定装置のような高性能な専用の装置を必要すること無く、簡便な構成の測定用治具1を利用して歯車形状を測定できる。
【0104】
(2)一対の支持部41(41A、41B)は、マンドレル7を、基台10の上面10aに対して平行な水平線に沿わせた向きで支持する。
一対の支持部41(41A、41B)は、軸線X方向に移動可能な可動基台42上に設置されている。
【0105】
マンドレル7では、円板部材74と歯車2とが軸線X方向に位置をずらして配置されている。支持部41が載置された可動基台42を軸線X方向に移動可能にすることで、マンドレル7の姿勢を保持したままで、マンドレル7を軸線X方向に変位させることができる。
これにより、計測子54の軸線X方向の位置を変更することなく、計測子54の直下の位置に、円板部材74と歯車2を配置できる。
計測子54を支持する支持梁53は、表面形状の測定のための計測子54の鉛直線VL方向を許容しつつ、本体部52で支持された基端側の軸線X方向の位置が固定されている。そのため、取得される円板部材74の中心位置を、歯車2の中心位置を示す情報として流用できる。これにより、中心位置を基準とした歯車2の外周の形状データを、取得できる。よって、取得した形状データを、CADデータで規定される形状データと比較できるので、歯車が持つ歯部や歯溝部の形状を適切に測定できる。
【0106】
(3)マンドレル7は、
軸部71と、
軸部71において、中心軸方向(軸線X方向)に間隔をあけて配置された一対の被支持部72、72と、を有する。
一対の被支持部72、72は、同一の外径D72で形成されている。
【0107】
このように構成すると、マンドレル7を、一対の支持部41(41A、41B)で支持させるにあたり、同じ外径D72の被支持部72、72が、支持部41(41A、41B)で支持される。
これにより、マンドレル7を、基台10の上面10aに対して平行な軸線Yおよび軸線Xに沿わせた向きで安定的に保持できる。
【0108】
(4)軸部71では、
一対の被支持部72、72の間に、円板部材74と、中心孔20に内嵌するコレット73(嵌合機構)が、設けられている。
【0109】
このように構成すると、2箇所の支持点(被支持部72、72)の間に、測定対象の歯車2と、歯車2の中心座標の特定に用いる円板部材74が、中心軸(軸線X)に対して同芯に配置される。
2箇所の支持点の間では、マンドレル7が支持する歯車2と円板部材74が、水平線HLに沿う向きで安定的に支持される。
これにより、歯車2の外周の形状測定と、円板部材74の中心(歯車2の中心)の検出における精度の向上が期待できる。
【0110】
(5)マンドレル7は、測定対象の歯車2の種類毎に用意されている。
マンドレル7の各々では、一対の被支持部72、72が、共通に設けられている。
【0111】
複数あるマンドレル7の各々が、同一外径の被支持部72、72を共通して有している。そのため、被支持部72、72を、一対の支持部41(41A、41B)で支持させると、マンドレル7で支持された歯車2の中心(軸線X)は、基台10上の同じ高さ位置に常に配置される。
これにより、歯車2の種類が変わる度に、回転規制機構3の高さ位置を、歯車2の外径に合わせて調整する必要が無い。これにより、歯車2の外周の形状を測定する作業における効率の低下を好適に防ぐことができる。これにより、歯車2の外周の形状を測定する作業における作業コストの低減が期待できる。
【0112】
(6)測定用治具1は、回転規制機構3と歯車支持機構4が設置される基台10を有する。
基台10は、計測装置5の定盤55に載置されている。
【0113】
測定用治具1の基台10が、計測装置5の定盤55に載置されているので、中心座標の取得から歯車2、2Aの外周の形状を取得するまでの間、基台10上の回転規制機構3および歯車支持機構4と、計測装置5側の計測子54との位置関係が、確実に固定される。
これにより、歯車支持機構4の支持部41(41A、41B)に、マンドレル7の被支持部72、72を支持させると、歯車2と計測子54とのの位置関係もまた固定される。
そのため、歯車2の外周(歯部22、歯溝部23)の形状を計測子54で順番に測定して得られる形状データを、共通の中心座標と関連付けて取得できる。
そうすると、取得した形状データの各々を、中心座標を基準として、CADデータで規定される形状データと比較できるので、一歯ずつ生成された形状データから、歯車の外周の歯部各々の形状の適否をより適切に判定できる。
【0114】
(7)回転規制機構3は、
係合子35と、
係合子35を中心軸の直交方向(軸線Y方向)に移動可能に保持するホルダ32と、
ホルダ32に、係合子35を歯車2の外周に係合する方向の付勢力を作用させるスプリングSpと、
ホルダ32を支持する支持部材31と、
支持部材31に支持されたホルダ32の上下方向の位置を調節するネジ送り機構360(調節機構)と、を有する。
【0115】
歯車2の外周の歯部22の総数が、偶数である場合と奇数である場合とで、歯溝部23の配置が異なる。そのため、軸線Xを通る水平線HL上に、係合子35を配置しても、係合子35と歯溝部23とが対向配置されない場合もある。
かかる場合には、ホルダ32の位置を上下方向に調節可能にすることで、係合子35の位置を、歯溝部23に対向する位置に調節できる。
これにより、歯車2の外周の形状を測定する際の歯車の位置ずれを好適に防止できる。
【0116】
(8)回転規制機構3は、軸線Xに直交する軸線Y方向に変位可能に設けられている。
【0117】
測定用治具1は、複数種類の歯車2を測定対象としている。歯車2の外径は、歯車の種類毎に異なる。回転規制機構3を、軸線Y方向に変位可能に設けると、測定対象の歯車に応じて決まる適切な位置に、係合子35を配置して、歯車2の外周に弾発的に係合させることができる。これにより、外径が異なる歯車であっても、歯車の軸線X回りの回転を規制できるので、歯車2の外周の形状測定を適切に行うことができる。
【0118】
(I)回転規制機構3は、
支持部材31と、
支持部材31で支持されたホルダ32と、
ホルダ32で支持された係合子35と、
係合子35を歯車2に近づける方向に付勢する付勢力を、ホルダ32に作用させるスプリングSpと、を有する。
ホルダ32は、軸線Yに沿わせた向きで配置されて、係合子35を歯車2の外周に係合させる。
支持部材31は、ガイドレール12に沿って移動可能な台座部11に支持されている。
ガイドレール12は、軸線Yに平行な軸線Y1方向に移動可能である。
【0119】
このように構成すると、測定対象の歯車2が変更されて、変更後の測定対象の歯車2Aの外径が小さくなった場合に、台座部11をガイドレール12に沿って歯車2に近づける方向に変位させることができる。
一対の支持部41(41A、41B)で支持されたマンドレル7では、歯車2の外径に関係なく歯車2の中心が常に同じ高さ位置に配置される。よって、台座部11を歯車2に近づける方向に変位させると、台座部11に取り付けられたホルダ32もまた、歯車2に近づけることができる。ホルダ32で支持された係合子35は、軸線X方向から見たときに、軸線Xと交差する水平線HLに沿う軸線Y上に位置している。そのため、係合子35の上下方向の位置関係を大きく変更することなく、係合子35を歯車2の外周に水平線HL方向から弾発的に係合させることができる。
【0120】
(II)マンドレル7が備える円板部材74は、歯車2の歯溝部23を通る仮想円Im2よりも小さい外径D74で形成されている。
計測装置5側の計測子54は、少なくとも仮想円Im1から仮想円Im74までの範囲R2を変位可能である。
【0121】
このように構成すると、中心座標の取得から歯車2の外周の形状を取得するまでの間に、計測子54を支持する計測装置5側の本体部52を移動させる必要が無い。
よって、計測子54による円板部材74の外周74aの形状測定、すなわち、中心座標の取得のための形状測定が、計測子54による歯車2の外周の形状測定に影響を及ぼすことを好適に防止できる。
【0122】
(III)一対の支持部41(41A、41B)は、被支持部72が載置される凹部43を有する。
軸線X方向から見て凹部43は、凹部43の中央を通る鉛直線VL方向における上側に向かうにつれて互いの離間距離が広がる向きで傾斜した傾斜面431、431を有する。
傾斜面431、431は、鉛直線VLを間に挟んで対象となる位置関係で設けられている。
傾斜面431、431の鉛直線VLに対する交差角θは、傾斜面431、431に載置された被支持部72の中心(軸線X)を通る水平線HL上に、係合子35が位置するように設定されている。
【0123】
このように構成すると、係合子35の鉛直線VL方向の高さを調整する頻度を抑えつつ、一対の支持部41(41A、41B)で支持された歯車2の回転を、係合子35で規制できる。よって、歯車2の外周の形状を測定する作業における効率の低下を好適に防ぐことができる。
【0124】
(IV)歯車支持機構4は、可動基台42を第1位置(形状測定位置)で位置決めする第1位置決め機構45と、可動基台42を第2位置(中心測定位置)で位置決めする第2位置決め機構46を、有する。
【0125】
これにより、円板部材74の外周74aに沿って計測子54を変位させる際と、歯車2の外周(歯部22、歯溝部23)に沿って計測子54を変位させる際に、マンドレル7(歯車2、円板部材74)が軸線X方向に移動することを好適に防止できる。
これにより、中心座標の取得と、歯車2の外周の形状の取得を安定的に行える。
【0126】
(V)第1位置決め機構45は、可動基台42に連結された支持部453と、支持部453に設けた貫通孔454を基台10側の下方に貫通した位置決めピン455と、基台10の上面に開口する位置決め穴101と、を有する。
基台10では、可動基台42が第1位置(形状測定位置)に達したときに、位置決めピン455が自重で位置決め穴101に挿入される位置に、位置決め穴101が設けられている。
【0127】
このように構成すると、第2位置(中心測定位置)での中心座標の取得が完了したのち、可動基台42を、位置決めピン455が位置決め穴101に自重で挿入されるまで、第1位置(形状測定位置)に向けて移動させるだけで、可動基台42の第1位置(形状測定位置)への移動と、第1位置(形状測定位置)での可動基台42の位置決めを、容易に行える。
【0128】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではない。本願発明は、発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0129】
1 測定装置
2、 2A 歯車
20 中心孔
3 回転規制機構
31 支持部材
32 ホルダ
35 係合子
360 ネジ送り機構(調節機構)
4 歯車支持機構
41(41A、41B) 支持部(一対の支持部)
42 可動基台
5 計測装置
54 計測子
7、7A マンドレル
71 軸部
72 被支持部(一対の被支持部)
73 コレット(嵌合機構)
74、74A 円板部材
74a 外周
Im74 仮想円
Sp スプリング
X 軸線(中心軸)
Y 軸線(中心軸の直交方法)