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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031169
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】看取り医師マッチングシステム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/00 20180101AFI20240229BHJP
【FI】
G16H10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134549
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】522340130
【氏名又は名称】▲浜▼中 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100132621
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 孝行
(74)【代理人】
【識別番号】100123364
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 徳子
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼中 潤
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】施設において、入所者の看取りを適切に行うことができる医師と施設とをマッチングし、医師によるスムーズな看取りを可能とする看取り医師マッチングシステムを提供する。
【解決手段】看取りマッチングサーバ20は、乖離値が、所定の閾値以上であった場合に、医師情報データベース22から所定の条件1を満たす複数の医師情報220を抽出し、その複数の医師情報に対応する複数の医師が保持する医師用端末に対して、入所者の入所者情報をそれぞれ送信する事前情報送信部25と、バイタル情報210がバイタル情報検出部の検出限界値以下となった場合に、医師情報データベース22から所定の条件2を満たす複数の医師情報220を抽出し、医師が保有する医師用端末から看取り承諾情報が送信されるまで、所定の順序に従って、複数の医師が保持する医師用端末に対して入所者が死亡した死亡情報を送信する死亡情報送信部26を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の検出タイミングで、施設に入所する入所者のバイタル情報を検出するバイタル情報検出部と、
医師に対して前記入所者に関する入所者情報を表示する複数の医師用端末と、
ネットワークを介して、前記バイタルサイン検出部および前記医師用端末に接続される看取りマッチングサーバと、を具備し、
前記入所者の死亡時に前記医師が早急に駆けつけることができるように、前記入所者の臨終が差し迫った際に、前記入所者の看取りが可能な医師をマッチングする看取り医師マッチングシステムであって、
前記バイタル情報は、前記入所者の呼吸頻度、血圧および体動状態の少なくとも1つであり、
前記バイタル情報検出部は、前記バイタル情報を前記看取りマッチングサーバに送信するバイタル情報送信部を有し、
前記看取りマッチングサーバは、
前記入所者のバイタル情報および前記入所者の入所者情報を格納する入所者バイタル情報データベースと、
前記医師用端末を保持する前記医師に関する医師情報を格納する医師情報データベースと、
前記入所者に関する前回の前記所定の検出タイミングで検出された前記バイタル情報から所定の回数まで遡った前記所定の検出タイミングで検出された前記バイタル情報までを前記入所者バイタル情報データベースからそれぞれ抽出し、それらを算術平均してバイタル情報平均値を算出する平均バイタル情報算出部と、
前記バイタル情報平均値と、前記バイタル情報検出部により送信された前記バイタル情報とに基づいて算出される乖離値を作成する乖離値算出部と、
前記乖離値が、所定の閾値以上であった場合に、前記医師情報データベースから所定の条件1を満たす前記複数の医師情報を抽出し、当該複数の医師情報に対応する複数の医師が保持する前記医師用端末に対して、前記入所者の入所者情報をそれぞれ送信する事前情報送信部と、
前記バイタル情報が前記バイタル情報検出部の検出限界値以下となった場合に、前記医師情報データベースから所定の条件2を満たす前記複数の医師情報を抽出し、前記医師が保有する前記医師用端末から看取り承諾情報が送信されるまで、所定の順序に従って、前記複数の医師が保持する前記医師用端末に対して前記入所者が死亡した死亡情報を送信する死亡情報送信部と、を有し、
前記医師用端末は、
前記看取りマッチングサーバから送信された前記入所者の前記入所者情報および前記死亡情報を表示する表示部と、
前記死亡情報に対して、前記看取り承諾情報を入力する入力部と、を有する
ことを特徴とする看取り医師マッチングシステム。
【請求項2】
前記医師情報に関連する医師が看取り可能な日時に関する看取り可能情報を格納した看取り可能情報格納部をさらに有し、
前記死亡情報送信部は、前記バイタル情報が前記バイタル情報検出部の検出限界値以下となった場合に、前記医師情報データベースから所定の条件2を満たす前記複数の医師情報を抽出すると共に、前記看取り可能情報格納部から当該複数の医師の看取り可能情報を抽出し、前記医師が保有する前記医師用端末から前記看取り承諾情報が送信されるまで、所定の順序に従って、前記看取り可能な日時に該当する、前記複数の医師が保持する前記医師用端末に対して前記入所者が死亡した死亡情報を送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の看取り医師マッチングシステム。
【請求項3】
前記所定の条件1と、前記所定の条件2とが同じであることを特徴とする請求項1に記載の看取り医師マッチングシステム。
【請求項4】
前記入所者情報には、少なくとも前記入所者の氏名、年齢、住所、性別および病歴が含まれていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の看取り医師マッチングシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者施設等に入所している入所者(高齢者等)の看取りに関し、適切な医師をマッチングするための看取り医師マッチングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高齢者施設等では、入所している入所者(高齢者等)が臨死期になると、その入所者の容態変化や苦痛に対して対応しきれなくなり、緊急入院を経て病院で亡くなるケースが多くみられる。このようなケースでは、救急要請時の救急隊対応や救急搬送に多くの費用がかかることから、今後大きな問題となることが予想される。
【0003】
このような問題に対し、一部の施設では、平日の昼間に勤務する医師による看取り(医師による施設看取り)が行われている。
【0004】
なお、対象者に関して死に際が近づいていることを検知する死に際検知手段と、前記対象者等の映像を取得する映像取得手段と、前記対象者の音声等を取得する対象音取得手段と、前記死に際事態に関する死に際情報を前記登録された看取り者側の端末に送信する死に際情報送信手段と、前記映像取得手段により取得された対象者映像を、前記登録された看取り者側にネットワーク経由で送信又は提供する対象者映像送信手段と、前記対象音取得手段により取得された対象音を、前記登録された看取り者側にネットワーク経由で送信又は提供する対象音送信手段とを備え、遠隔地に居る近親者(友人を含む)が親しい縁者(ペットを含む)の死に際に立ち会い看取ることを可能にする看取りシステムが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-33502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の医師による施設看取りは、平日の昼間は、その施設に勤務する医師によって行うことができるが、休日や夜間は、その施設に医師がいないため、入所者の看取りをすることができないという問題点があった。また、施設によっては、常勤医が勤務しておらず、施設内での看取りができないという問題点があった。そして、上記のように施設に医師が不在の際には、看取り目的に救急隊対応や救急搬送を行うことになるため、多額の医療費がかかってしまうという問題点があった。
【0007】
一方、特許文献1の看取りシステムでは、音声や画像を送信することによって、遠隔地(対象者がいる現場にはいない)に居る近親者等が親しい縁者の死に際に看取ることはできる。しかし、医師は入所者の死亡を現場で確認する必要があるため、医師はこの看取りシステムを利用できないという問題点があった。
【0008】
本発明は上述した事情に鑑み、施設において、入所者の看取りを適切に行うことができる医師と施設とをマッチングし、医師によるスムーズな看取りを可能とする看取り医師マッチングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者は、上述した問題点に関して鋭意研究を続けた結果、以下のような画期的な看取り医師マッチングシステムを見出した。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の第1の態様は、所定の検出タイミングで、施設に入所する入所者のバイタル情報を検出するバイタル情報検出部と、医師に対して入所者に関する入所者情報を表示する複数の医師用端末と、ネットワークを介して、バイタルサイン検出部および医師用端末に接続される看取りマッチングサーバと、を具備し、入所者の死亡時に医師が早急に駆けつけることができるように、入所者の臨終が差し迫った際に、入所者の看取りが可能な医師をマッチングする看取り医師マッチングシステムであって、バイタル情報は、入所者の呼吸頻度、血圧および体動状態の少なくとも1つであり、バイタル情報検出部は、バイタル情報を看取りマッチングサーバに送信するバイタル情報送信部を有し、看取りマッチングサーバは、入所者のバイタル情報および入所者の入所者情報を格納する入所者バイタル情報データベースと、医師用端末を保持する医師に関する医師情報を格納する医師情報データベースと、入所者に関する前回の所定の検出タイミングで検出されたバイタル情報から所定の回数まで遡った所定の検出タイミングで検出されたバイタル情報までを入所者バイタル情報データベースからそれぞれ抽出し、それらを算術平均してバイタル情報平均値を算出する平均バイタル情報算出部と、バイタル情報平均値と、バイタル情報検出部により送信されたバイタル情報とに基づいて算出される乖離値を作成する乖離値算出部と、乖離値が、所定の閾値以上であった場合に、医師情報データベースから所定の条件1を満たす複数の医師情報を抽出し、複数の医師情報に対応する複数の医師が保持する医師用端末に対して、入所者の入所者情報をそれぞれ送信する事前情報送信部と、バイタル情報がバイタル情報検出部の検出限界値以下となった場合に、医師情報データベースから所定の条件2を満たす複数の医師情報を抽出し、医師が保有する医師用端末から看取り承諾情報が送信されるまで、所定の順序に従って、複数の医師が保持する医師用端末に対して入所者が死亡した死亡情報を送信する死亡情報送信部と、を有し、医師用端末は、看取りマッチングサーバから送信された入所者の入所者情報および死亡情報を表示する表示部と、死亡情報に対して、看取り承諾情報を入力する入力部と、を有することを特徴とする看取り医師マッチングシステムにある。
【0011】
かかる第1の態様によれば、施設外にいる、看取りに適した医師をマッチングさせることができる。その結果、その施設において、医師によるスムーズな看取りを可能とすることができる。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、医師情報に関連する医師が看取り可能な日時に関する看取り可能情報を格納した看取り可能情報格納部をさらに有し、死亡情報送信部は、バイタル情報がバイタル情報検出部の検出限界値以下となった場合に、医師情報データベースから所定の条件2を満たす複数の医師情報を抽出すると共に、看取り可能情報格納部から複数の医師の看取り可能情報を抽出し、医師が保有する医師用端末から看取り承諾情報が送信されるまで、所定の順序に従って、看取り可能な日時に該当する、複数の医師が保持する医師用端末に対して入所者が死亡した死亡情報を送信することを特徴とする第1の態様に記載の看取り医師マッチングシステムにある。
【0013】
かかる第2の態様によれば、医師の看取り可能情報を考慮することができるので、施設外にいる、看取りに適した医師を施設外にいる、看取りに、より適した医師をマッチングさせることができる。
【0014】
本発明の第3の態様は、所定の条件1と、所定の条件2とが同じであることを特徴とする第1の態様に記載の看取り医師マッチングシステムにある。
【0015】
かかる第3の態様によれば、施設外にいる、看取りに、さらに適した医師をマッチングさせることができる。
【0016】
本発明の第4の態様は、入所者情報には、少なくとも入所者の氏名、年齢、住所、性別および病歴が含まれていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の看取り医師マッチングシステムにある。
【0017】
かかる第4の態様によれば、入所者を看取った後に作成される死亡診断書を医師が容易に作成することができる。
【0018】
なお、本発明において、「部」、「データベース」、「システム」とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その「部」、「データベース」、「システム」が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの「部」、「データベース」、「システム」が有する機能が2つ以上の物理的手段や装置により実現されても、2つ以上の「部」、「データベース」、「システム」の機能が1つの物理的手段や装置により実現されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は実施形態1に係る看取り医師マッチングシステムの概略概念図である。
図2図2は実施形態1に係る看取りマッチングサーバの概略概念図である。
図3図3は実施形態1に係る入所者情報の一例である。
図4図4は実施形態1に係る医師用端末の概略概念図である。
図5図5は実施形態1に係る看取り医師マッチングシステムの動作を示すフローチャートである。
図6図6は実施形態2に係る看取りマッチングサーバの概略概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る看取り医師マッチングシステムの実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
(実施形態1)
【0021】
図1を参照して、本実施形態に係る看取り医師マッチングシステムを説明する。図1は、本実施形態に係る看取り医師マッチングシステム1の概略概念図である。
【0022】
この図に示すように、看取り医師マッチングシステム1は、バイタル情報検出部10と、バイタル情報検出部10とネットワーク40を介して接続されている看取りマッチングサーバ20および医師用端末30とで構成されている。なお、本実施形態では、説明を簡単にするために、バイタル情報検出部10と、看取りマッチングサーバ20および医師用端末30をそれぞれ1つ示しているが、複数接続されていてもよいのは言うまでもない。
【0023】
なお、ネットワーク40は、バイタル情報検出部10と、看取りマッチングサーバ20および医師用端末30とを接続することができるものであれば、有線・無線にかかわらず特に限定されない。ネットワーク40としては、例えば、インターネットやイントラネット等が挙げられる。
【0024】
まず、バイタル情報検出部10について説明する。バイタル情報検出部10は、老人ホームやホスピス等の施設に入所している入所者のバイタル情報210を検出し、ネットワーク40を介して、そのバイタル情報210を看取りマッチングサーバ20に送信するバイタル情報送信部(図示しない)有するものであれば特に限定されない。
【0025】
ここで、バイタル情報210(バイタルサイン)は、入所者の血圧、呼吸頻度および体動(寝返り)に関する情報をいう。バイタル情報検出部10としては、例えば、血圧計、呼吸運動に関する情報(呼吸数等)の検出を行う呼吸検出装置、寝返りに関する情報(寝返り回数、体動の頻度等)を検出する体動検出装置等が挙げられる。
【0026】
次に、看取りマッチングサーバ20について説明する。図2は、看取りマッチングサーバ20の概略概念図である。この図に示すように、看取りマッチングサーバ20は、入所者バイタル情報データベース21、医師情報データベース22、平均バイタル情報算出部23、乖離値算出部24、事前情報送信部25および死亡情報送信部26を有している。
【0027】
入所者バイタル情報データベース21は、入所者のバイタル情報210と、入所者の入所者情報211を格納することができるものであれば特に限定されない。
【0028】
ここで、入所者情報211とは、入所者が入所している施設に関する情報(施設名または施設の住所)が含まれているものであれば特に限定されないが、さらに入所者の氏名、年齢、住所、性別、病歴、家族構成、家族への連絡先電話番号等や、入所者が入所している施設の電話番号等の情報が含まれているものが好ましい。入所者情報211に、入所者の氏名、年齢、性別、家族構成、家族への連絡先電話番号等が含まれていると、入所者を看取った後に作成される死亡診断書を医師が容易に作成することができる。入所者情報211としては、例えば図3に示すような情報が挙げられる。
【0029】
なお、入所者バイタル情報データベース21としては、例えば、市販のリレーショナルデータベースソフトウェア等が挙げられる。
【0030】
医師情報データベース22は、看取り医師マッチングシステム1に登録している医師に関する情報を格納することができるものであれば特に限定されない。ここで、医師情報220とは、医師の氏名、住居の住所、勤務場所、電話番号、メールアドレス、各施設ごとの施設から住居までの距離、各施設ごとの施設から勤務場所(勤務医療施設等)までの距離等の情報である。なお、医師情報データベース22としては、例えば、市販のリレーショナルデータベースソフトウェア等が挙げられる。
【0031】
平均バイタル情報算出部23は、入所者に関する前回の所定の検出タイミングで検出されたバイタル情報210から所定の回数まで遡った所定の検出タイミングで検出されたバイタル情報210までを入所者バイタル情報データベースからそれぞれ抽出し、それらを算術平均してバイタル情報平均値を算出することができるものであれば特に限定されない。
【0032】
ここで、所定の回数は特に限定されず、2、10、20等でもよいし、その入所者が施設に入所して初めての検出タイミングのバイタル情報210から、前回の検出タイミングのバイタル情報210までの総回数であってもよい。
【0033】
乖離値算出部24は、バイタル情報平均値と、バイタル情報検出部により送信されたバイタル情報210とから、乖離値を算出することができるものであれば特に限定されない。乖離値は、適宜設定することができる。乖離値としては、例えば、計算式〔(バイタル情報平均値-検出されたバイタル情報)/バイタル情報平均値〕で計算される値等が挙げられる。乖離値算出部24としては、例えば、バイタル情報平均値と、バイタル情報検出部10により送信されたバイタル情報210とに基づいて乖離値を算出するプログラム等が挙げられる。
【0034】
事前情報送信部25は、乖離値算出部24により算出された乖離値が、所定の閾値以上であった場合に、医師情報データベース22から所定の条件1を満たす複数の医師情報220を抽出し、その複数の医師情報220に基づいて、その複数の医師が保持する医師用端末30に対して、その入所者の入所者情報211をそれぞれ送信することができるものであれば特に限定されない。事前情報送信部25としては、例えば、このような機能を有するプログラム等が挙げられる。
【0035】
ここで、所定の閾値は、バイタル情報210に応じて設定される数値であり、その値は特に限定されない。例えば、バイタル情報210が呼吸数、血圧、寝返り回数であり、乖離値が上記の計算式で算出されるものである場合には、所定の閾値は、0.1~0.9の範囲が好ましく、0.15~0.25の範囲が特に好ましい。所定の閾値が0.1よりも小さいと、入所者の通常の状態(危険な状態ではない状態)を検出してしまう可能性がある。
【0036】
また、所定の条件1は、適宜設定することができる。所定の条件1としては、例えば、「施設から15キロ以内に居住していること」や「施設から勤務場所(勤務医療施設等)までの距離が15キロ以内」等が挙げられる。なお、医師情報220に、施設から住居までの距離に関する情報が含まれていない場合には、医師情報220に含まれる住居の情報と、入所者情報211に含まれる施設の住所の情報から、施設から住居までの距離を算出するようにしてもよい。
【0037】
死亡情報送信部26は、バイタル情報210がバイタル情報検出部10の検出限界値以下となった場合に、医師情報データベース22から所定の条件2を満たす複数の医師情報220を抽出し、医師が保有する医師用端末30から看取り承諾情報が送信されるまで、所定の順序に従って、その複数の医師が保持する医師用端末30に対して入所者の死亡に関する死亡情報を送信することができるものであれば特に限定されない。
【0038】
ここで、バイタル情報検出部10の検出限界値とは、そのバイタル情報検出部10によって検出できない数値を示し、バイタル情報検出部10ごとに予め決められている数値である。この検出限界値は、バイタル情報検出部10の仕様書やメーカーから入手することができる。
【0039】
また、所定の条件2は、適宜設定することができる。所定の条件2としては、例えば、「施設から10キロ以内に居住していること」や「施設から勤務場所(勤務医療施設等)までの距離が15キロ以内」等が挙げられる。このような条件の場合には、なお、医師情報220に、施設から住居までの距離に関する情報が含まれていない場合には、所定の条件1と同様に、医師情報220に含まれる住居の情報と、入所者情報211に含まれる施設の住所の情報から、施設から住居までの距離を算出するようにしてもよい。
【0040】
さらに、所定の順序は、死亡情報送信部26が死亡情報を送信する医師の順序であれば、その内容や決め方は特に限定されない。所定の順序としては、例えば、医師情報データベース22に格納される医師情報220のすべてに対して、死亡情報を送信する医師の順番を予め決めておき、所定の条件2を満たす医師のうち、この順番が早い医師から看取り承諾情報を送信するというものであってもよい。なお、このような所定の順序の場合には、最後の順番の医師にまで死亡情報が通知された場合には、再度この順番を繰り返せばよい。また、所定の順序は、施設からの距離が短い住所に住んでいる医師から看取り承諾情報を送信するというものであってもよいし、施設からの距離が短い勤務場所(勤務医療施設等)に勤務している医師から看取り承諾情報を送信するというものであってもよく、さらにはこれらを組み合わせたものであってもよい。
【0041】
なお、看取り承諾情報とは、その入所者の看取りを行う意思があることを示す情報であれば特に限定されない。看取り承諾情報は、後述するように、その入所者の看取りを行う意思がある医師により入力されることになる。
【0042】
また、死亡情報とは、入所者がいる施設(遺体が置かれている施設)に関する情報(施設名または施設の住所)が含まれているものであれば特に限定されないが、入所者の状態(呼吸停止や意識消失等)、入所者の氏名、年齢、性別、家族構成、家族への連絡先電話番号等や、入所者が入所している施設の電話番号等の情報が含まれているものが好ましい。死亡情報に、入所者の氏名、年齢、性別、家族構成、家族への連絡先電話番号等が含まれていると、入所者を看取った後に作成される死亡診断書を医師が容易に作成することができる。
【0043】
看取りマッチングサーバ20は、上述した機能を有するものであれば特に限定されず、市販のパーソナルコンピュータ等を用いることができる。
【0044】
続いて、医師用端末30について説明する。図4は、本実施形態に係る医師用端末30の概略図である。この図に示すように、医師用端末30は、表示部31と、入力部32とを有する。
【0045】
表示部31は、入所者情報211および死亡情報を表示できるものであれば特に限定されない。表示部31としては、例えば、液晶パネルや有機ELパネル等が挙げられる。
【0046】
入力部32は、看取り承諾情報を入力することができるものであれば特に限定されない。入力部32としては、タッチパネル、キーボード、マイク等が挙げられる。
【0047】
なお、医師用端末30としては、例えば、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピュータ(タブレット端末)等が挙げられる。
【0048】
次に、本実施形態に係る看取り医師マッチングシステムの動作について説明する。図5は、看取り医師マッチングシステム1の動作を示すフローチャートである。
【0049】
まず、看取り医師マッチングシステム1が起動すると(S1)、バイタル情報検出部10は所定のタイミングでバイタル情報210を検出し(S2)、ネットワーク40を介して、看取りマッチングサーバ20に送信する。
【0050】
バイタル情報210を受信した看取りマッチングサーバ20は、死亡情報送信部26により、そのバイタル情報210と、バイタル情報検出部10の検出限界値とを比較する(S3)。そして、バイタル情報210がバイタル情報検出部10の検出限界値よりも大きい場合には、平均バイタル情報算出部23により、バイタル情報平均値を算出する(S4)と共に、乖離値算出部24により乖離値を算出する(S5)。
【0051】
そして、算出された乖離値が所定の閾値よりも小さい場合には、バイタル情報210の検出を継続する。一方、算出された乖離値が、所定の閾値以上の場合には、事前情報送信部25により、所定の順序に従って、各医師が保持する医師用端末30に入所者情報211を送信する(S7)。この動作を看取り承諾情報を受信するまで継続し(S8)、看取り承諾情報を受信した場合には、バイタル情報210の検出を継続する。
【0052】
その後、バイタル情報検出部10により検出されたバイタル情報210が、検出限界値以下となった場合には、死亡情報送信部26により、死亡情報が看取り承諾情報を入力した医師が保持する医師用端末30に送信される(S9)と共に表示部に表示され、一連の動作が終了する(S10)。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る看取り医師マッチングシステム1を構成することによって、施設外にいる、看取りに適した医師をマッチングさせることができる。また、医師が施設で入所者を看取ることができるので、不要な救急隊対応(心臓マッサージ、挿管等)や救急搬送を行うことを防止することができる。その結果、医療費を削減することができる。さらに、医師が施設で入所者を看取ることができるので、入所者の家族は、入所者が不要な治療や蘇生行為(心臓マッサージ等)を施されることなく、安らかな看取りを行うことができる。
(実施形態2)
【0054】
実施形態1では、死亡情報送信部は、バイタル情報がバイタル情報検出部の検出限界値以下となった場合に、医師情報データベースから所定の条件2を満たす複数の医師情報220を抽出するようにしたが、本発明はこれに限定されない。
【0055】
例えば、図6に示すように、看取り可能情報格納部27をさらに有するように看取りマッチングサーバ20Aを構成してもよい。なお、看取り可能情報格納部27および死亡情報送信部26A以外は、実施形態1の看取りマッチングサーバと同様である。
【0056】
看取り可能情報格納部27は、看取り可能情報を格納することができるものであれば特に限定されない。ここで、看取り可能情報とは、医師情報データベースに格納された医師情報220に関連する医師が看取り可能な日時に関する情報をいう。看取り可能情報としては、例えば、月曜日から金曜日、水曜日および木曜日以外の曜日、勤務先での当直日、オンコール予定で看取り不可能な日時、他プライベートで看取り不可能な日時等が挙げられる。なお、看取り可能情報格納部27としては、市販のリレーショナルデータベースソフトウェアや一般的な記憶媒体等が挙げられる。
【0057】
加えて、本実施形態における死亡情報送信部26Aは、バイタル情報がバイタル情報検出部の検出限界値以下となった場合に、医師情報データベースから所定の条件2を満たす複数の医師情報220を抽出すると共に、看取り可能情報格納部から、その複数の医師の看取り可能情報を抽出し、医師が保有する医師用端末から看取り承諾情報が送信されるまで、所定の順序に従って、看取り可能な日時に該当する、複数の医師が保持する医師用端末に対して死亡情報を送信するものである。
【0058】
死亡情報送信部26Aとしては、例えば、実施形態1と同様に、医師情報データベース22から所定の条件2を満たす複数の医師情報220を抽出した後、その医師情報220に関連する医師の看取り可能情報(例えば、月曜日から金曜日)に基づいて、看取り可能であることを確認できる複数の医師が保持する医師用端末に対して死亡情報を送信するというプログラム等が挙げられる。
【0059】
このように看取り医師マッチングシステムを構成することにより、医師の看取り可能情報を考慮することができるので、施設外にいる、看取りに適した医師を施設外にいる、看取りに、より適した医師をマッチングさせることができる。
(他の実施形態)
【0060】
実施形態1では、所定の条件1と所定の条件2はそれぞれ異なる条件となっていたが、本発明はこれに限定されない。所定の条件1と所定の条件2とが同じものであってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 看取り医師マッチングシステム
10 バイタル情報検出部
20、20A 看取りマッチングサーバ
21 入所者バイタル情報データベース
210 バイタル情報
211 入所者情報
22 医師情報データベース
220 医師情報
23 平均バイタル情報算出部
24 乖離値算出部
25 事前情報送信部
26、26A 死亡情報送信部
27 看取り可能情報格納部
30 医師用端末
31 表示部
32 入力部
40 ネットワーク

図1
図2
図3
図4
図5
図6