IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ みのる産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-トンネルハウス用杭打機 図1
  • 特開-トンネルハウス用杭打機 図2
  • 特開-トンネルハウス用杭打機 図3
  • 特開-トンネルハウス用杭打機 図4
  • 特開-トンネルハウス用杭打機 図5
  • 特開-トンネルハウス用杭打機 図6
  • 特開-トンネルハウス用杭打機 図7
  • 特開-トンネルハウス用杭打機 図8
  • 特開-トンネルハウス用杭打機 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031171
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】トンネルハウス用杭打機
(51)【国際特許分類】
   A01G 13/02 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
A01G13/02 L
A01G13/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134558
(22)【出願日】2022-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000100469
【氏名又は名称】みのる産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108958
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 英一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 明
【テーマコード(参考)】
2B024
【Fターム(参考)】
2B024EB02
(57)【要約】
【課題】 杭を畝に打ち込むための下方への力を、杭の上面に効果的に伝達することができるようにする。
【解決手段】 本発明のトンネルハウス用杭打機1は、畝Uの上方に、畝長方向が前後方向になるように支持された機体3と、該機体3に対して昇降自在に支持され、逆U字状の杭Pの両端を該機体3の左右方向に間隔をおいて畝に打ち込む杭打込部5とを備えている。杭打込部5は、杭Pの上面における杭長方向の複数箇所をそれぞれ前記左右方向に延びる下向きの凹溝27で下方に押す複数の押込部24、25、26を備えている。機体3の左右方向における中央以外の押込部25、26は、杭打込部5に設けられて機体3の前後方向に延びる軸28を介して左右に揺動自在に支持されることにより可動式に構成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
畝の上方に、畝長方向が前後方向になるように支持された機体と、該機体に対して昇降自在に支持され、逆U字状の杭の両端を該機体の左右方向に間隔をおいて畝に打ち込む杭打込部とを備え、
前記杭打込部は、前記杭の上面における杭長方向の複数箇所をそれぞれ前記左右方向に延びる下向きの凹溝で下方に押す複数の押込部を備え、
前記押込部のうちの少なくとも1つは、前記杭打込部に設けられて前記機体の前後方向に延びる軸を介して左右に揺動自在に支持されることにより可動式に構成されているトンネルハウス用杭打機。
【請求項2】
前記可動式の押込部は、その前記凹溝が前記杭の上面に当接する位置において想定される該杭の上面における杭長方向の傾斜に略沿って前記凹溝が傾斜しているように、前記軸に対する左右の重量バランスが設定されている請求項1記載のトンネルハウス用杭打機。
【請求項3】
前記押込部は、上下方向に位置調節可能に前記杭打込部に設けられている請求項1又は2記載のトンネルハウス用杭打機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜、花木等の植物を育成するために、畝を跨ぐ逆U字状の杭を畝長方向に間隔をおいて打ち込むように構成されたトンネルハウス用杭打機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルハウスを設置する場合、圃場の土中に逆U字状に杭を人手で差し込んでいる(大半がこの作業形態)。杭を人手で差し込む場合は、細い(直径が7~13mm位)杭を手で握って保持し土中へ差し込む作業を連続して行う必要があり、しかもそれが腰を屈めての作業となるため、大変な重労働作業となっている。例えば、淡路島のレタス栽培では一反に1200本の杭を打つときに、杭一本につき左右2カ所の差し込みを行うため、2400回もの差し込みが必要となる。
【0003】
この作業負荷を軽減するための従来の装置として、特許文献1に記載されたトンネルマルチ用支柱打込装置101を例示する。この装置101は、図9に示すように、杭(支柱)Pを保持可能な支柱保持部111、117及び杭Pを地面に打ち込む支柱打込部115を備えている。そして、支柱保持部111、117は、杭Pの長手方向一端側を受け止める受け部111と、該受け部111の上方に位置して、前記杭Pの長手方向他端部が前記一端側の斜め上方に位置するように杭Pの長手方向中途を支持する支持部117とからなる。支柱打込部115の下端には、杭Pの中央及び中央の両側方をそれぞれ押す押込部137が設けられ、前記三カ所で杭Pを押して杭Pを地面に押し込むように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-21764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、杭Pの中央及び中央の両側方をそれぞれ押す押込部137は、杭Pの所定の曲げ形状に沿うように、支柱打込部115の下端に固定されているので、杭Pの両端の打込み幅の変更や、杭Pの全長の変更や、再利用する杭P(特に年数が経った古いもの)の曲げ形状のばらつき等により、杭Pの曲げ形状(R形状)が所定のそれと変わってくると、各押込部137の位置が杭Pの曲げ形状に沿わなくなる。その状態で、支柱打込部115を油圧シリンダー等を介して押し下げて杭Pを土中に打ち込むと、杭Pに均等に力が加わらないので、左右均等に打ち込めなかったり、杭Pが変形又は破損したりすることがあるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明のトンネルハウス用杭打機は、
畝の上方に、畝長方向が前後方向になるように支持された機体と、該機体に対して昇降自在に支持され、逆U字状の杭の両端を該機体の左右方向に間隔をおいて畝に打ち込む杭打込部とを備え、
前記杭打込部は、前記杭の上面における杭長方向の複数箇所をそれぞれ前記左右方向に延びる下向きの凹溝で下方に押す複数の押込部を備え、
前記押込部のうちの少なくとも1つは、前記杭打込部に設けられて前記機体の前後方向に延びる軸を介して左右に揺動自在に支持されることにより可動式に構成されている。
【0007】
この構成によれば、前記可動式の押込部は、それが当接する位置において前記杭の上面における杭長方向の傾斜に略沿って前記凹溝が傾斜するので、杭を畝に打ち込むための下方への力を、杭の上面に効果的に伝達することができる。
【0008】
前記可動式の押込部は、その前記凹溝が前記杭の上面に当接する位置において想定される該杭の上面における杭長方向の傾斜に略沿って前記凹溝が傾斜しているように、前記軸に対する左右の重量バランスが設定されている態様を例示する。
【0009】
この構成によれば、前記可動式の押込部は、前記想定される前記傾斜に略沿って傾斜しているので、様々な湾曲形状の杭や変形した杭に対して少ない揺動動作で前記凹溝が前記杭にスムーズに当接する可能性を高めることができる。
【0010】
前記押込部は、上下方向に位置調節可能に前記杭打込部に設けられている態様を例示する。
【0011】
この構成によれば、前記杭の曲げ形状に応じた適切な位置に前記各押込部の位置を調節することができ、各押込部により該杭の各部に均等に力が加わるようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るトンネルハウス用杭打機によれば、杭を畝に打ち込むための下方への力を、杭の上面に効果的に伝達することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明を具体化した一実施形態に係るトンネルハウス用杭打機の背面図である。
図2】同トンネルハウス用杭打機の側面図である。
図3】同トンネルハウス用杭打機の平面図である。
図4】同トンネルハウス用杭打機の背面側の要部拡大図であって、杭打込部が杭に接触する前の状態を示す図である。
図5】同要部拡大図であって、杭打込部が杭に接触した状態を示す図である。
図6】同要部拡大図であって、杭打込部が下死点に達した状態を示す図である。
図7】同トンネルハウス用杭打機の打込部の要部を示す側面図であって、(a)は左右方向における中央の押込部を、(b)は同中央の隣の押込部を、(c)は左右方向における最外方の押込部を、それぞれ示す図である。
図8】同トンネルハウス用杭打機の打込部の要部を示す平面図である。
図9】従来のトンネルマルチ支柱打込装置の全体正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1図8は本発明を具体化した一実施形態のトンネルハウス用杭打機1を示している。本発明のトンネルハウス用杭打機1は、畝Uを跨ぐ逆U字状の杭Pを畝長方向に間隔をおいて打ち込むためのものであり、畝Uを跨いで畝長方向に走行するための走行手段2と、該走行手段2によって畝Uの上方に畝長方向が前後方向になるように支持された機体3と、該機体3の後方かつ畝Uの上方で杭Pを保持する杭保持部4と、該機体3に対して昇降自在に支持され、杭保持部4に保持された杭Pを地面に向けて押し下げ、該杭Pの両端を該機体3の左右方向に間隔をおいて畝Uを跨ぐように打ち込む杭打込部5と、該杭打込部5を昇降駆動する昇降駆動機構6とを備えている。なお、各図において、矢印Fは機体3の前側を指し示している。
【0015】
杭Pとしては、本例では、金属製のパイプが逆U字状に折曲形成されたものを用いている。杭Pの表面は、樹脂で覆われているようにしてもよい。
【0016】
走行手段2は、左右一対の前輪16と、左右一対の後輪17とにより圃場を走行可能に構成されている。左右の前輪16は、それぞれ上下方向に延びる軸16aを介して旋回可能に設けられている。左右の後輪17は、機体3に搭載された動力源としてのモータ11の駆動力が動力伝達手段(図示略)により伝達され、駆動されるようになっている。
【0017】
機体3は、左右一対の前輪16と、左右一対の後輪17とによって畝Uの上方に支持されており、左右一対の前輪16の間隔と、左右一対の後輪17の間隔が、畝Uの幅に応じて調節可能に構成されている。機体3には、発電機10が搭載されており、後輪を駆動するためのモータ11や、後述する昇降駆動機構6のモータ12に電力を供給するように構成されている。機体3の後方には門形に形成された後部フレーム20を備えている。後部フレーム20は、機体3の幅方向の両端部にそれぞれ設けられた上下方向に延びる縦フレーム片20aと、該両縦フレーム片20aの上端を連結する横フレーム片20bとにより形成されている。後部フレーム20には、予備の杭Pを複数保持するための予備杭保持部34が設けられている。
【0018】
予備杭保持部34は、杭Pの一端側を受け止める受け部34aと、該受け部34aの上方に位置して杭Pの杭長方向他端側が前記一旦側の斜め上方に位置するように杭Pの杭長方向途中部を支持する支持部34bとを備えている。
【0019】
杭保持部4は、図4図6及び図8に示すように、後部フレーム20における両縦フレーム片20aの下部にそれぞれ設けられた一対の係止部35により構成されている。各係止部35はそれが設けられている縦フレーム片20aに対して、上下方向の位置調節手段4aと、左右方向の位置調節手段4bを介して取り付けられている。一対の係止部35は、機体内方に向けて設けられた第一面35aと、機体後方に向けて設けられた第二面35bとを備えており、第一面35aと第二面35bとは平面視で直角に配置されている。一対の係止部35は、その第一面35a同士で逆U字状の杭Pの両側面を挟持し、各第二面35bで杭Pの前面を側面視で垂直にガイドするようになっている。
【0020】
杭打込部5は、図4図8に示すように、後部フレーム20の両縦フレーム片20aにそれぞれ設けられた、上下方向に延びるガイドレール21に沿って、上下に昇降移動自在に設けられた昇降フレーム22を備えている。昇降フレーム22の左右両側面には、ガイドレール21に沿って転動する複数のコロ23が設けられている。昇降フレーム22には、杭Pの上面における杭長方向の複数箇所をそれぞれ下方に押す複数の押込部24、25、26が設けられている。本例では、昇降フレーム22の左右方向の中央部に押込部24、その左右に互いに対称位置となる2箇所ずつに押込部25、26が設けられている。
【0021】
押込部24、25、26は、機体3の左右方向に延びる下向きの凹溝27を有する押込片24a、25a、26aをそれぞれ備えている。下向きの凹溝27は、断面ヘ字状に形成されており、様々な太さの杭Pの押込時に該杭Pが機体3の前後方向の所定位置になるようにガイドするようになっている。各押込部25、26は、昇降フレーム22に対する上下方向の位置調節手段30を介して、昇降フレーム22に取り付けられている。
【0022】
図7に示すように、昇降フレーム22の左右方向の中央部の押込部24は、左右に揺動しない固定式に構成されており、それ以外の4箇所の押込部25、26(それが当接する位置の杭Pの上面における杭長方向の湾曲の接線方向が水平に対して傾斜していると想定される箇所のもの)は、昇降フレーム22に設けられて機体3の前後方向に延びる軸28を介して左右に揺動自在に支持されることにより可動式に構成されている。図1及び図4図6に示すように、可動式の押込部25、26は、その凹溝27が杭Pの上面に当接する位置において想定される該杭Pの上面における杭長方向の傾斜に略沿って凹溝27が傾斜しているように、軸28に対する左右の重量バランスが設定されている。重量バランスの設定の態様としては、平面視で軸28の位置を重心から左右方向にずらす態様や、平面視で押込片24a、25a、26aの重心位置を軸28で支持するとともに、該重心位置から左右方向にずれた位置に錘を装着することによる態様を例示する。なお、図2図7(b)及び図7(c)は、それぞれ可動式の押込部25、26の構成を分かりやすくするために、各押込片25a、26bの凹溝27が水平になっている状態を表している。
【0023】
昇降駆動機構6は、動力源としてのモータ12と、該モータ12の回転運動を上下方向への往復運動に変換して昇降フレーム22を昇降駆動するスライダクランク機構29とを備えている。
【0024】
次に、本例のトンネルハウス用杭打機1の動作について説明する。図4はトンネルハウス用杭打機1の背面側の要部拡大図であって、杭打込部5が杭Pに接触する前の状態を示している。図5は杭打込部5が杭Pに接触した状態を示しており、このとき、それぞれの可動式の押込部25、26が、杭Pの上面に接触することにより、該上面における杭長方向の傾斜に沿って傾斜している。図6は杭打込部5が下死点に達した状態を示しており、畝Uへの杭Pの打ち込みが終了している。
【0025】
以上のように構成された本例のトンネルハウス用杭打機1によれば、可動式の押込部25、26は、それが当接する位置において杭Pの上面における杭長方向の傾斜に略沿って凹溝27が傾斜するので、杭Pを畝Uに打ち込むための下方への力を、杭Pの上面に効果的に伝達することができる。
【0026】
また、可動式の押込部25、26は、その凹溝27が杭Pの上面に当接する位置において想定される該杭Pの上面における杭長方向の傾斜に略沿って凹溝27が傾斜しているように、軸28に対する左右の重量バランスが設定されている。この構成によれば、前記可動式の押込部25、26は、前記想定される前記傾斜に略沿って傾斜しているので、様々な湾曲形状の杭Pや変形した杭Pに対して少ない揺動動作で凹溝27が杭Pにスムーズに当接する可能性を高めることができる。
【0027】
さらに、押込部24、25、26は、上下方向に位置調節可能に杭打込部5に設けられている。この構成によれば、杭Pの曲げ形状に応じた適切な位置に各押込部24、25、26の位置を調節することができ、該各押込部により該杭Pの各部に均等に力が加わるようにすることができる。
【0028】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)昇降駆動機構6を省き、昇降フレームを人力で昇降駆動させるように構成すること。
(2)後輪17を駆動するモータ11及び動力伝達手段を省き、人力で走行させるように構成すること。
【符号の説明】
【0029】
1 トンネルハウス用杭打機
2 走行手段
3 機体
4 杭保持部
4a 位置調節手段
4b 位置調節手段
5 杭打込部
6 昇降駆動機構
10 発電機
11 モータ
12 モータ
16 前輪
16a 軸
17 後輪
20 後部フレーム
20a 縦フレーム片
20b 横フレーム片
21 ガイドレール
22 昇降フレーム
23 コロ
24 押込部
24a 押込片
25 押込部
25a 押込片
26 押込部
26a 押込片
27 凹溝
28 軸
29 スライダクランク機構
30 位置調節手段
34 予備杭保持部
34a 受け部
34b 支持部
35 係止部
35a 第一面
35b 第二面
F 機体の前側
P 杭
U 畝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9