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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031172
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】プレス成形装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 45/08 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B21D45/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134560
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】東 淳一
(57)【要約】
【課題】プレス成形品の排出機構の構造の小型化、簡単化、低コスト化の少なくとも1つを実現することができるプレス成形装置を得る。
【解決手段】プレス成形装置は、プレス成形品を成形する接近位置とプレス成形品を露出させる離間位置の間で移動する一対のプレス成形型と、一対のプレス成形型が接近位置から離間位置へと移動するエネルギを利用してプレス成形品を排出するプレス成形品排出機構とを有する。プレス成形品排出機構は、一対のプレス成形型が接近位置から離間位置へと移動する第1のエネルギ(例えば上下方向のエネルギ)を、第1のエネルギと異なる方向から一対のプレス成形型の間に入り込んでプレス成形品を排出する第2のエネルギ(例えば上下方向と直交する水平方向のエネルギ)に変換する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス成形品を成形する接近位置と前記プレス成形品を露出させる離間位置の間で移動する一対のプレス成形型と、
前記一対のプレス成形型が前記接近位置から前記離間位置へと移動するエネルギを利用して前記プレス成形品を排出するプレス成形品排出機構と、
を有することを特徴とするプレス成形装置。
【請求項2】
前記プレス成形品排出機構は、前記一対のプレス成形型が前記接近位置から前記離間位置へと移動する第1のエネルギを、前記第1のエネルギと異なる方向から前記一対のプレス成形型の間に入り込んで前記プレス成形品を排出する第2のエネルギに変換する、
ことを特徴とする請求項1に記載のプレス成形装置。
【請求項3】
前記第1のエネルギは、上下方向のエネルギであり、
前記第2のエネルギは、上下方向と直交する水平方向のエネルギである、
ことを特徴とする請求項2に記載のプレス成形装置。
【請求項4】
前記一対のプレス成形型は、上型と下型から構成され、
前記プレス成形品排出機構は、
前記上型に接続されるとともに、前記上型と前記下型の上下方向の接近位置と離間位置で前後方向の位置が変化する上側アームと、
前記下型に接続されるとともに、前記上型と前記下型の上下方向の接近位置の時は側方位置に位置し、前記上型と前記下型の上下方向の離間位置の時は前記上側アームと連係して左右方向に突出する突出位置に移動することで、前記一対のプレス成形型の側方から前記一対のプレス成形型の間に入り込んで前記プレス成形品を排出する下側アームと、
を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載のプレス成形装置。
【請求項5】
前記一対のプレス成形型は、上型と下型から構成され、
前記プレス成形品排出機構は、
前記上型に接続されるとともに、前記上型と前記下型の上下方向の接近位置で前後方向の間隔が相対的に広くなり、前記上型と前記下型の上下方向の離間位置で前後方向の間隔が相対的に狭くなる揺動型の一対の上側アームと、
前記下型に接続されるとともに、前記上型と前記下型の上下方向の接近位置で前記一対の上側アームの前後方向の間隔が相対的に広いときには側方位置に位置し、前記上型と前記下型の上下方向の離間位置で前記一対の上側アームの前後方向の間隔が相対的に狭いときには、左右方向に突出する突出位置へ移動する伸縮型の下側アームと、
を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載のプレス成形装置。
【請求項6】
前記伸縮型の下側アームは、パンタグラフ型の伸縮アームからなる、
ことを特徴とする請求項5に記載のプレス成形装置。
【請求項7】
前記上側アームは、前記上型と前記下型の上下方向の接近位置と離間位置のいずれかにかかわらず、前記一対のプレス成形型の間に入り込むことはなく、
前記下側アームは、前記上型と前記下型の上下方向の接近位置では、前記一対のプレス成形型の間に入り込むことはなく、前記上型と前記下型の上下方向の離間位置でのみ、前記一対のプレス成形型の間に入り込んで前記プレス成形品を排出する、
ことを特徴とする請求項4から請求項6のいずれかに記載のプレス成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、シートクッションとシートバックの一方に固定したベースプレートと、他方に固定しかつベースプレートと対向しながらベースプレートに対する相対回転可能なラチェットプレートと、を備えるリクライニング機構のベースプレートとラチェットプレートの少なくとも一方の部材である円盤状部材をプレス成形するための方法が開示されている。この方法では、金属板からなる母材から円盤状部材と同じ外形形状をなす円盤をプレス成形するための断面円形をなす外形切出用成形型の内側に、円盤状部材に設けたすべての貫通孔及びすべての凹凸を母材又は円盤に対してプレス成形するための複数の内周用成形型を配置し、外形切出用成形型及び複数の内周用成形型による母材及び円盤に対するプレス成形のタイミングを互いにすべてずらしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-88371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1を含んだ従来のプレス成形方法を実現するプレス成形装置では、プレス成形品の排出機構の構造の大型化、複雑化、高コスト化が避けられないという問題がある。例えば、従来のプレス成形装置では、プレス成形装置とは別に、電気やエアをエネルギとして使用したプレス成形品の排出機構が必須となっていた。
【0005】
本発明は、以上の問題意識に基づいてなされたものであり、プレス成形品の排出機構の構造の小型化、簡単化、低コスト化の少なくとも1つを実現することができるプレス成形装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態のプレス成形装置は、プレス成形品を成形する接近位置と前記プレス成形品を露出させる離間位置の間で移動する一対のプレス成形型と、前記一対のプレス成形型が前記接近位置から前記離間位置へと移動するエネルギを利用して前記プレス成形品を排出するプレス成形品排出機構と、を有することを特徴とする。
【0007】
前記プレス成形品排出機構は、前記一対のプレス成形型が前記接近位置から前記離間位置へと移動する第1のエネルギを、前記第1のエネルギと異なる方向から前記一対のプレス成形型の間に入り込んで前記プレス成形品を排出する第2のエネルギに変換してもよい。
【0008】
前記第1のエネルギは、上下方向のエネルギであり、前記第2のエネルギは、上下方向と直交する水平方向のエネルギであってもよい。
【0009】
前記一対のプレス成形型は、上型と下型から構成され、前記プレス成形品排出機構は、前記上型に接続されるとともに、前記上型と前記下型の上下方向の接近位置と離間位置で前後方向の位置が変化する上側アームと、前記下型に接続されるとともに、前記上型と前記下型の上下方向の接近位置の時は側方位置に位置し、前記上型と前記下型の上下方向の離間位置の時は前記上側アームと連係して左右方向に突出する突出位置に移動することで、前記一対のプレス成形型の側方から前記一対のプレス成形型の間に入り込んで前記プレス成形品を排出する下側アームと、を有してもよい。
【0010】
前記一対のプレス成形型は、上型と下型から構成され、前記プレス成形品排出機構は、前記上型に接続されるとともに、前記上型と前記下型の上下方向の接近位置で前後方向の間隔が相対的に広くなり、前記上型と前記下型の上下方向の離間位置で前後方向の間隔が相対的に狭くなる揺動型の一対の上側アームと、前記下型に接続されるとともに、前記上型と前記下型の上下方向の接近位置で前記一対の上側アームの前後方向の間隔が相対的に広いときには側方位置に位置し、前記上型と前記下型の上下方向の離間位置で前記一対の上側アームの前後方向の間隔が相対的に狭いときには、左右方向に突出する突出位置へ移動する伸縮型の下側アームと、を有してもよい。
【0011】
前記伸縮型の下側アームは、パンタグラフ型の伸縮アームからなってもよい。
【0012】
前記上側アームは、前記上型と前記下型の上下方向の接近位置と離間位置のいずれかにかかわらず、前記一対のプレス成形型の間に入り込むことはなく、前記下側アームは、前記上型と前記下型の上下方向の接近位置では、前記一対のプレス成形型の間に入り込むことはなく、前記上型と前記下型の上下方向の離間位置でのみ、前記一対のプレス成形型の間に入り込んで前記プレス成形品を排出してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、プレス成形品の排出機構の構造の小型化、簡単化、低コスト化の少なくとも1つを実現することができるプレス成形装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態によるプレス成形装置を前後方向から見た概念図であり、図1Aは上型と下型の離間位置を描いており、図1Bは上型と下型の接近位置を描いている。
図2】本実施形態によるプレス成形装置を左右方向から見た概念図であり、図2Aは上型と下型の離間位置を描いており、図2Bは上型と下型の接近位置を描いている。
図3】上型と下型の離間位置に対応する、プレス成形品排出機構の上側アームと下側アームの連係状態の一例を上下方向から見た概念図である。
図4】上型と下型の接近位置に対応する、プレス成形品排出機構の上側アームと下側アームの連係状態の一例を上下方向から見た概念図である。
図5】パンタグラフ型の伸縮アームからなる下側アームの伸縮機構の一例を示す概念図である。
図6】上型と下型の離間位置に対応する、プレス成形品排出機構の上側アームと下側アームの連係状態の一例を示す斜視図である。
図7】上型と下型の接近位置に対応する、プレス成形品排出機構の上側アームと下側アームの連係状態の一例を示す斜視図である。
図8】下側アームの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1図8を参照して、本実施形態によるプレス成形装置1について詳細に説明する。本実施形態のプレス成形装置1では、シートクッションとシートバックの一方と他方に固定したベースプレートとラチェットプレートを有するシートリクライニング装置の一部品であるラチェットプレートをプレス成形品Pとした場合を例示して説明する。しかし、プレス成形品Pをどのような部材にするかには自由度があり、種々の設計変更が可能である。例えば、プレス成形品Pをシートリクライニング装置のベースプレートとしてもよいし、シートリクライニング装置の他部品としてもよいし、他の車両搭載装置の部品としてもよいし、車両搭載用以外の任意の装置の部品としてもよい。
【0016】
本明細書における上下前後左右の各方向は、図中に示した矢線方向を基準とする。但し、本明細書における前後方向と左右方向は互いに読み替えてもよい。例えば、本明細書における前後方向と左右方向は、上下方向(鉛直方向)と直交する平面(水平面)において互いに直交する第1、第2の方向と読み替えてもよい。
【0017】
図1A図1Bに示すように、プレス成形装置1は、上型10と下型20とを有している。上型10の下面には上側成形面11が形成されており、下型20の上面には下側成形面21が形成されている。上側成形面11と下側成形面21の間には、成形面対向領域Sが画成されている。すなわち、上型10と下型20とが最も接近した位置(例えば図1B)では、成形面対向領域Sの上下方向のクリアランスが最小となり、上側成形面11と下側成形面21の間でプレス材料をプレスしてプレス成形品Pが製造される。なお、図1Bでは、成形面対向領域Sの上下方向のクリアランスがゼロのように(上側成形面11と下側成形面21が接しているように)描いているが、これは作図の便宜上の理由によるものであり、実際には、プレス成形を可能とするための上下方向のクリアランスが成形面対向領域Sに設けられている。一方、上型10と下型20とが最も離間した位置(例えば図1A)では、成形面対向領域Sの上下方向のクリアランスが最大となり、上側成形面11と下側成形面21との間にプレス成形品Pが露出される。具体的に、下型20の下側成形面21にプレス成形品Pが載置される(取り残される)。このように、上型10と下型20は、プレス成形品Pを成形する接近位置とプレス成形品Pを露出させる離間位置の間で移動する「一対のプレス成形型」を構成する。
【0018】
本実施形態では、プレス材料を下側成形面21に載置した下型20の上下方向の位置を固定として(図1A図1Bの例では載置面に載置して)、上型10を下型20に対して上下方向に移動可能(昇降可能)とすることで、上型10と下型20(一対のプレス成形型)を接近位置と離間位置の間で移動可能としている。但し、これは一例にすぎず、上型10の上下方向の位置を固定として、プレス材料を下側成形面21に載置した下型20を上型10に対して上下方向に移動可能(昇降可能)とすることで、上型10と下型20(一対のプレス成形型)を接近位置と離間位置の間で移動可能としてもよい。あるいは、上型10と下型20の双方を上下方向に移動可能(昇降可能)とすることで、上型10と下型20(一対のプレス成形型)を接近位置と離間位置の間で移動可能としてもよい。つまり、上型10と下型20(一対のプレス成形型)の少なくとも一方を移動(相対移動)させることで、上型10と下型20(一対のプレス成形型)を、プレス成形品Pを成形する接近位置とプレス成形品Pを露出させる離間位置の間で移動させてもよい。
【0019】
プレス成形装置1は、上型10と下型20(一対のプレス成形型)が接近位置(例えば図1B)から離間位置(例えば図1A)へと移動するエネルギを利用してプレス成形品Pを排出するプレス成形品排出機構30を有している。より具体的に、図1Aに示すように、プレス成形品排出機構30は、上型10と下型20(一対のプレス成形型)が接近位置から離間位置へと移動する第1のエネルギ(上下方向のエネルギ)F1を、第1のエネルギF1と異なる方向から上型10と下型20(一対のプレス成形型)の間に入り込んでプレス成形品Pを排出する第2のエネルギ(上下方向と直交する水平方向のエネルギ)F2に変換する。ここでは、第2のエネルギF2の方向が左右方向である場合を例示しているが、左右方向と前後方向を読み替えた場合、第2のエネルギF2の方向が前後方向であってもよい。図1A図1Bに模式的に描いたように、プレス成形品排出機構30は、上型10に接続される上側アーム40と、下型20に接続される下側アーム50とを有している。
【0020】
図2A図2Bに示すように、上側アーム40は、上型10の側の上型側基部41と、下型20の側の下型側基部42との間に架け渡された一対の上側アーム43A、43Bを有している。一対の上側アーム43A、43Bの上型10の側の端部は、共通(単一)の上型側基部41に対して、左右方向に延びる揺動軸(回動軸)44A、44Bを中心として揺動(回動)可能に支持されている。下型側基部42は、一対の上側アーム43A、43Bに対応する一対の下型側基部42A、42Bが設けられており、一対の上側アーム43A、43Bの下型20の側の端部は、一対の下型側基部42A、42Bのそれぞれに対して、左右方向に延びる揺動軸(回動軸)45A、45Bを中心として揺動(回動)可能に支持されている。
【0021】
図2A図2Bに示すように、上型10と下型20(一対のプレス成形型)の上下方向の相対位置に応じて、揺動軸(回動軸)44A、44B、45A、45Bを中心として一対の上側アーム43A、43Bが揺動(回動)することにより、一対の上側アーム43A、43B(一対の下型側基部42A、42B)の前後方向の間隔Dが変化する。一対の上側アーム43A、43Bは、上型10と下型20(一対のプレス成形型)の上下方向の接近位置で前後方向の間隔Dが相対的に広くなり、上型10と下型20(一対のプレス成形型)の上下方向の離間位置で前後方向の間隔Dが相対的に狭くなる揺動型の一対の上側アームである。図2Bに示すように、上型10と下型20(一対のプレス成形型)が上下方向に最も接近した状態では、一対の上側アーム43A、43Bの前後方向の間隔Dが最大値Dmaxとなっている。図2Aに示すように、上型10と下型20(一対のプレス成形型)が上下方向に最も離間した状態では、一対の上側アーム43A、43Bの前後方向の間隔Dが最小値Dminとなっている。
【0022】
図3図7に示すように、下側アーム50は、上型10と下型20(一対のプレス成形型)の上下方向の相対位置に応じて、上型10と下型20(一対のプレス成形型)の側方位置(成形面対向領域Sの側方位置)と、上型10と下型20(一対のプレス成形型)の間に入り込んだ突出位置(成形面対向領域Sに入り込んだ突出位置)との間を移動可能なパンタグラフ型の伸縮アームからなる。
【0023】
下側アーム50は、パンタグラフ型伸縮部52と、パンタグラフ型伸縮部52の先端に設けられたプレス成形品押出排出部53とを有している。パンタグラフ型伸縮部52の基端は、一対の上側アーム43A、43Bに接続された一対の下型側基部42A、42Bに、上下方向に延びる回動軸51を中心として回動可能に支持されている。
【0024】
図4図7に示すように、パンタグラフ型伸縮部52は、上型10と下型20(一対のプレス成形型)の上下方向の接近位置で一対の上側アーム43A、43Bの前後方向の間隔が相対的に広いときには(例えば最大値Dmax)、左右方向の位置が変化しない。すなわち、パンタグラフ型伸縮部52が伸長しない自由状態となり、下側アーム50(パンタグラフ型伸縮部52)は、上型10と下型20(一対のプレス成形型)の側方位置(成形面対向領域Sの側方位置)に留まっている。
【0025】
図3図6に示すように、パンタグラフ型伸縮部52は、上型10と下型20(一対のプレス成形型)の上下方向の離間位置で一対の上側アーム43A、43Bの前後方向の間隔が相対的に狭いときには(例えば最小値Dmin)、左右方向に突出する。すなわち、パンタグラフ型伸縮部52が伸長して、上型10と下型20(一対のプレス成形型)の間に入り込んだ突出位置(成形面対向領域Sに入り込んだ突出位置)に移動する。その結果、パンタグラフ型伸縮部52の先端に設けられたプレス成形品押出排出部53が、上型10と下型20(一対のプレス成形型)の間に位置するプレス成形品Pを左右方向(ここでは右方向)に押し出すことで、プレス成形品Pが排出される(図1A図3参照)。
【0026】
このように、下側アーム50は、下型20に接続されるとともに、上型10と下型20の上下方向の接近位置の時は側方位置に位置し、上型10と下型20の上下方向の離間位置の時は上側アーム43A、43Bと連係して左右方向に突出する突出位置に移動することで、上型10と下型20(一対のプレス成形型)の側方から上型10と下型20(一対のプレス成形型)の間に入り込んでプレス成形品Pを排出する。また、下側アーム50は、下型20に接続されるとともに、上型10と下型20の上下方向の接近位置で一対の上側アーム43A、43Bの前後方向の間隔が相対的に広いときには側方位置に位置し、上型10と下型20の上下方向の離間位置で一対の上側アーム43A、43Bの前後方向の間隔が相対的に狭いときには、左右方向に突出する突出位置へ移動する伸縮型の下側アームから構成される。
【0027】
図5では、パンタグラフ型伸縮部52が伸長しない自由状態における前後方向の長さをW1maxで描き、パンタグラフ型伸縮部52が最大限まで伸長した状態における前後方向の長さをW1minで描いている。また、図5では、パンタグラフ型伸縮部52が伸長しない自由状態における左右方向の長さをW2minで描き、パンタグラフ型伸縮部52が最大限まで伸長した状態における左右方向の長さをW2maxで描いている。図5に明らかなように、下側アーム50に蛇腹構造のパンタグラフ型伸縮部52を設けることで、上側アーム40の短いストロークを下側アーム50の長いストロークに変換できるので、プレス成形品Pを高いエネルギ効率で確実に排出することが可能になる。
【0028】
上側アーム40は、上型10と下型20(一対のプレス成形型)の上下方向の接近位置と離間位置のいずれかにかかわらず、上型10と下型20(一対のプレス成形型)の間(成形面対向領域S)に入り込むことはない。一方、下側アーム50は、上型10と下型20(一対のプレス成形型)の上下方向の接近位置では、上型10と下型20(一対のプレス成形型)の間(成形面対向領域S)に入り込むことはなく、上型10と下型20(一対のプレス成形型)の上下方向の離間位置でのみ、上型10と下型20(一対のプレス成形型)の間(成形面対向領域S)の間に入り込んで、プレス成形品Pを排出する。これにより、プレス成形装置1によるプレス成形動作に何らの支障をきたすことなく、プレス成形品Pを排出することができる。また、プレス成形品Pの排出機構30の構造の小型化、簡単化、低コスト化(の少なくとも1つ又は全て)を実現することができる。
【0029】
このように、本実施形態のプレス成形装置1は、プレス成形品Pを成形する接近位置とプレス成形品Pを露出させる離間位置の間で移動する上型10と下型20(一対のプレス成形型)と、上型10と下型20(一対のプレス成形型)が接近位置から離間位置へと移動するエネルギを利用してプレス成形品Pを排出するプレス成形品排出機構30とを有している。従って、プレス成形装置とは別に、電気やエアをエネルギとして使用したプレス成形品の排出機構が必須となっている従来技術と比較して、プレス成形品Pの排出機構30の構造の小型化、簡単化、低コスト化(の少なくとも1つ又は全て)を実現することができる。また、例えば、プレス成形品排出機構30の下側アーム50を蛇腹構造とすることで、上側アーム40の短いストロークを下側アーム50の長いストロークに変換できるので、プレス成形品Pを高いエネルギ効率で確実に排出することが可能になる。
【0030】
また、本発明の実施の形態は上記実施形態やその変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。
【0031】
例えば、以上の実施形態では、上側アームとして揺動型の一対の上側アーム43A、43Bを設け、下側アームとして伸縮型の下側アーム50を設ける場合を例示して説明した。しかし、上側アームが揺動型であること、一対であることは必須ではなく、下側アームが伸縮型であることは必須ではない。例えば、上型に接続される上側アームは、上型と下型の上下方向の接近位置と離間位置で前後方向の位置が変化するものであってもよく、下型に接続される下側アームは、上型と下型の上下方向の接近位置で上側アームと連係せずに左右方向の位置が変化せず、上型と下型の上下方向の離間位置で上側アームと連係して左右方向に突出することで、一対のプレス成形型の側方から一対のプレス成形型の間に入り込んでプレス成形品を排出するものであってもよい。
【0032】
また、例えば、下側アームは、上型と下型の上下方向の接近位置で一対の上側アームと非接触で左右方向の位置が変化せず、上型と下型の上下方向の離間位置で一対の上側アームに前後方向から挟まれることで左右方向に突出する伸縮型の下側アームであってもよい。この場合、図8の変形例に示すように、下側アーム50は、一対の上側アームに前後方向から挟まれることでパンタグラフ型伸縮部52の伸縮動作のトリガとなる両持ち形状の着力部(一対の被挟持部)54を有していてもよい。あるいは、両持ち形状の着力部(一対の被挟持部)54に代えて、片持ち形状の着力部(単一の被挟持部)を設けてもよい(被挟持部が両持ち、一対であることは必須の構成要件ではない)。
【0033】
さらに、例えば、上側アームと下側アームの双方をパンタグラフ型伸縮部とする態様、上側アームと下側アームの双方をシリンダ型伸縮部とする態様、上側アームと下側アームの一方をパンタグラフ型伸縮部として他方をシリンダ型伸縮部とする態様が可能である。いずれの態様であっても、プレス成形品Pの排出機構30の構造の小型化、簡単化、低コスト化(の少なくとも1つ又は全て)を実現することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 プレス成形装置
10 上型(一対のプレス成形型)
11 上側成形面
20 下型(一対のプレス成形型)
21 下側成形面
30 プレス成形品排出機構
40 上側アーム
41 上型側基部
42 下型側基部
42A 42B 一対の下型側基部
43A 43B 一対の上側アーム
44A 44B 揺動軸(回動軸)
45A 45B 揺動軸(回動軸)
50 下側アーム
51 回動軸
52 パンタグラフ型伸縮部
53 プレス成形品押出排出部
F1 第1のエネルギ(上下方向のエネルギ)
F2 第2のエネルギ(上下方向と直交する水平方向のエネルギ)
P プレス成形品(ラチェットプレート)
S 成形面対向領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8