(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031184
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】橋桁の解体搬送装置と解体搬送方法
(51)【国際特許分類】
E01D 24/00 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
E01D24/00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134584
(22)【出願日】2022-08-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・令和3年11月4日に発行した工事パンフレット ・令和4年4月5日に発行されたリーフレット ・令和4年5月14日と令和4年5月28日に新聞折り込みにて配布されたチラシ ・令和4年5月27日に発行されたニュースレター ・令和4年4月1日に発行された会社広報誌(阪神ハイウェイ)225号2022SPRING8頁~9頁 ・令和3年12月10日と令和4年4月5日に公開されたプレスリリース資料 ・令和4年4月5日に開催された社長定例記者会見の資料 ・令和4年4月5日に設置された特設サイト ・令和4年5月13日に公開された対談動画(会社HPとYouTube) ・令和4年3月23日、令和4年5月19日、令和4年5月26日、令和4年5月27日に公開された対談動画(TwitterとFacebook) ・令和4年4月7日に公開された公益社団法人日本バス協会のウェブサイト ・令和4年5月16日及び令和4年6月21日にマスコミ宛に資料送付 ・令和4年3月23日に開催された「14号松原線喜連瓜破付近の橋梁架替え工事に伴う通行止め」説明会 ・令和4年5月23日~令和4年5月25日に開催された「14号松原線喜連瓜破付近の橋梁架替え工事に伴う通行止め」プロモート ・令和4年5月14日に発行された読売新聞朝刊5面 ・令和4年6月1日から開始された工事 ・令和4年7月27日に発行され、令和4年7月29日に会社HPで公開されたCSRレポート ・令和4年8月1日にウェブ閲覧が開始された論文 3件(令和4年9月16日開催の令和4年度土木学会全国大会第77回年次学術講演会用)
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000237134
【氏名又は名称】株式会社富士ピー・エス
(71)【出願人】
【識別番号】505413255
【氏名又は名称】阪神高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】島田 哲治
(72)【発明者】
【氏名】森田 秀人
(72)【発明者】
【氏名】堀口 政一
(72)【発明者】
【氏名】藤本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】多田 育修
(72)【発明者】
【氏名】田畑 晶子
(72)【発明者】
【氏名】藤原 勝也
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA05
2D059DD04
2D059GG41
(57)【要約】
【課題】桁下空間の一部もしくは全部を占有することなく、効率的に橋桁を解体して搬送することのできる、橋桁の解体搬送装置と解体搬送方法を提供する。
【解決手段】既設の橋脚Pの上に架設されている既設の橋桁Gを解体して搬送する、橋桁の解体搬送装置50であり、橋桁Gの上方に間隔を置いて配設される、複数の仮設支持体60と、複数の仮設支持体60に架設され、橋軸方向に延設する仮設桁10と、仮設桁10に沿って移動するサスペンションクレーン40とを有し、サスペンションクレーン40は、橋軸直角方向に延設する第6レール43と、第6レール43に移動自在に設置されている第2揚重設備44とを備え、第2揚重設備44により、橋桁Gが切断された搬送用の分割体Dを橋軸直角方向に搬送する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の橋脚の上に架設されている既設の橋桁を解体して撤去する、橋桁の解体搬送装置であって、
前記橋桁の上方に間隔を置いて配設される、複数の仮設支持体と、
複数の前記仮設支持体に架設され、橋軸方向に延設する、仮設桁と、
前記仮設桁に沿って移動する、サスペンションクレーンとを有し、
前記サスペンションクレーンは、橋軸直角方向に延設する第6レールと、該第6レールに移動自在に設置されている第2揚重設備とを備えており、該第2揚重設備により、前記橋桁が切断された搬送用の分割体を橋軸直角方向に搬送することを特徴とする、橋桁の解体搬送装置。
【請求項2】
前記仮設桁には、橋軸方向に延設する第3レールが設けられており、
複数の前記仮設桁が、橋軸直角方向に間隔を置いて併設しており、
複数の前記第3レールに対して前記サスペンションクレーンが移動自在に設置されていることを特徴とする、請求項1に記載の橋桁の解体搬送装置。
【請求項3】
前記仮設桁の長さは、前記橋桁の撤去範囲よりも長いことを特徴とする、請求項1又は2に記載の橋桁の解体搬送装置。
【請求項4】
前記仮設桁に配設され、橋軸方向に延設する、第1レールをさらに有し、
前記第1レールに対して、移動式台車が移動自在に設置され、
前記移動式台車には、前記橋桁の橋軸直角方向の幅以上の幅を備え、該橋桁の下方に配設されて、該橋桁を切断する作業床が垂下されていることを特徴とする、請求項2に記載の橋桁の解体搬送装置。
【請求項5】
前記移動式台車に対して、橋軸直角方向に延設する第1上部桁が設置されており、
前記第1上部桁の左右端側において吊り材が垂下され、該吊り材により前記作業床が垂下されていることを特徴とする、請求項4に記載の橋桁の解体搬送装置。
【請求項6】
前記作業床には、前記分割体を支持する支保工が設けられていることを特徴とする、請求項5に記載の橋桁の解体搬送装置。
【請求項7】
前記仮設桁の異なる位置に、前記第1レールと前記第3レールが設置されており、
前記移動式台車と前記サスペンションクレーンが、相互に独立して橋軸方向に移動自在であることを特徴とする、請求項6に記載の橋桁の解体搬送装置。
【請求項8】
既設の橋脚の上に架設されている既設の橋桁を解体して撤去する、橋桁の解体搬送方法であって、
前記橋桁の上方に間隔を置いて、複数の仮設支持体を設置し、複数の該仮設支持体に対して橋軸方向に延設する仮設桁を架設する、A工程と、
前記仮設桁にサスペンションクレーンを移動自在に設置する、B工程と、
前記サスペンションクレーンを橋軸方向に移動させて前記橋桁の解体領域に位置合わせし、該橋桁を切断して搬送用の分割体とし、前記サスペンションクレーンにて該分割体を吊り上げ、該サスペンションクレーンを橋軸方向に移動させて該分割体を搬出する、C工程とを有することを特徴とする、橋桁の解体搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋桁の解体搬送装置と解体搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国においては、高度経済成長期に施工された様々な橋梁の老朽化が進んでおり、これら老朽化した橋梁の一部もしくは全部を解体して新規の橋梁を施工する、橋梁の改修工事(更新工事)の増加が予測される。
橋梁には、河川を横断する橋梁や、高速道路の一部を成して地上の車道や鉄道等を横断する橋梁など、様々な形態が存在するが、例えば、都市部において地上の車道を横断する橋梁の改修工事においては、車道を一部通行止めにしたり、一定期間に亘り車道を完全に通行止めにする等の措置を講じた上で、橋梁の改修工事を行う必要があることなどから、改修工事が周辺交通へ多大な影響を与え得るといった課題を有している。
また、例えば車道を一部通行止めにしながらの改修工事では、工事の進捗が往々にして進まず、結果として改修工事期間が長期に及ぶといった課題を有している。
【0003】
橋梁の改修工事のうち、老朽化した橋梁を構成する橋桁の解体工事の方法に目を向けると、この解体工事には様々な工法が存在する。そのうち、クレーンベント工法は、桁下空間にベントを設置して既設の橋桁を支えながら、橋桁を順次解体撤去する方法であるが、桁下空間が施工ヤードとして使用できない場合は施工が困難であり、上記する都市部における改修工事では車道の一部もしくは全部の通行止めを余儀なくされる。
また、クレーン一括工法(大ブロック解体工法)は、橋桁をクレーンで吊った状態で解体し、解体された橋桁をクレーンにて一括で吊り上げ、搬出する工法であるが、この工法も、桁下空間が施工ヤードとして使用できない場合は施工が困難である。
また、手延べ機による引戻し工法は、橋桁を手延べ機に連結し、橋桁をジャッキアップして手延べ機にて引戻す工法であるが、この工法も桁下空間が施工ヤードとして使用できない場合は施工が困難である。
さらに、エレクションガーターの縦移動による引戻し工法は、既設の橋台や橋脚の上に仮ベント設備を設置し、仮ベント設備に仮設桁を架設し、仮設桁にローラ設備を設け、ウインチやジャッキにて橋桁を吊り上げ、搬出する工法である。この工法では、吊り上げる橋桁の重量が大きな場合に、これを支持する仮ベント設備や仮設桁を大規模なものにする必要があることに加えて、ローラ設備は橋軸方向に移動できる一方で橋軸直角方向に移動できないことから、橋桁の橋軸直角方向の幅が広い場合は、桁下空間の制約を受けずに橋桁を撤去して搬送するのが極めて困難となる。
【0004】
このように、既存の橋桁の解体撤去方法(解体搬送方法)は、桁下空間を施工ヤードとすることを要し、あるいは少なからず桁下空間の一部もしくは全部を占有することから、桁下空間の一部もしくは全部を占有することなく、効率的に橋桁を解体して搬送することのできる、橋桁の解体搬送装置と解体搬送方法が望まれる。
【0005】
ここで、特許文献1には、橋梁の架け替え工法が提案されている。この工法は、橋梁の径間に架け渡す撤去対象の既設桁を持ち上げる持ち上げ工程と、既設桁の後端に新設の更新桁を一列になるように連結する更新桁連結工程と、既設桁の先端に先端延長桁を一列状になるように連結する先端延長桁連結工程と、撤去対象の既設桁が配置されていた径間に新設の更新桁が送り出されるように、更新桁連結工程および先端延長桁連結工程で連結した撤去対象の既設桁、新設の更新桁および先端延長桁を、橋軸方向に送り出す送り出し工程と、撤去対象の既設桁が配置されていた径間と隣接する径間の橋梁上に送り出し工程で送り出された撤去対象の既設桁の部位を、解体する解体工程等を備えている。
既設桁を持ち上げる持ち上げ工程では、既設桁の下方の桁下空間に複数のベントを設置し、ベントの上端面にジャッキを配置し、既設桁をジャッキアップすることにより持ち上げることにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の橋梁の架け替え工法によれば、撤去対象の既設桁の搬出と新設の更新桁の架設を連続的に行うことができるため、効率的な橋梁の架け替えを行うことができるとしている。しかしながら、この橋梁の架け替え工法においても、既設桁の下方の桁下空間にベントやジャッキを設置し、既設桁をジャッキアップして持ち上げることから、上記する課題、すなわち、桁下空間の一部もしくは全部を占有することなく、効率的に橋桁を解体して搬送する施工を実現するものではない。
【0008】
本発明は、桁下空間の一部もしくは全部を占有することなく、効率的に橋桁を解体して搬送することのできる、橋桁の解体搬送装置と解体搬送方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明による橋桁の解体搬送装置の一態様は、
既設の橋脚の上に架設されている既設の橋桁を解体して撤去する、橋桁の解体搬送装置であって、
前記橋桁の上方に間隔を置いて配設される、複数の仮設支持体と、
複数の前記仮設支持体に架設され、橋軸方向に延設する、仮設桁と、
前記仮設桁に沿って移動する、サスペンションクレーンとを有し、
前記サスペンションクレーンは、橋軸直角方向に延設する第6レールと、該第6レールに移動自在に設置されている第2揚重設備とを備えており、該第2揚重設備により、前記橋桁が切断された搬送用の分割体を橋軸直角方向に搬送することを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、既設の橋桁の上に配設された複数の仮設支持体に仮設桁が架設され、仮設桁に沿って移動するサスペンションクレーンに設置されて橋軸直角方向に延設する第6レールに対して、第2揚重設備が移動自在に設置されていることにより、橋桁が切断されて形成された分割体に第2揚重設備をアクセスさせ、吊り上げて橋軸直角方向の所望位置まで搬送することができ、かつ、サスペンションクレーンを橋軸方向に移動させて分割体を搬送することにより、桁下空間の一部もしくは全部を占有することなく、効率的な橋桁の解体と搬送を実現できる。
ここで、桁下空間の一部もしくは全部を利用しないことから、桁下空間が道路や鉄道等の場合は、これらの一部もしくは全部を通行止めにすることなく、供用させながら橋桁の解体搬送工事を行うことができる。
【0011】
撤去対象の橋桁は、橋脚や橋台の上に架設されており、本明細書では、橋脚に橋台も含まれるものとする。
また、撤去対象の橋桁を備えている橋梁には、鋼橋、コンクリート橋、石橋、木橋等が含まれ、コンクリート橋には、鉄筋コンクリート橋(RC:Reinforced Concrete 橋)やプレストレストコンクリート橋(PC:Prestressed Concrete 橋)、鋼材とコンクリートの複合橋等が含まれる。また、撤去対象の橋桁には、桁橋やラーメン橋を構成する主桁の他、トラス橋を構成するトラス桁、吊り橋や斜張橋を構成する補剛桁等が含まれ、橋桁の断面形状による種類としては、I形やH形、T形、箱型、格子形等が含まれる。
【0012】
また、本発明による橋桁の解体搬送装置の他の態様において、
前記仮設桁には、橋軸方向に延設する第3レールが設けられており、
複数の前記仮設桁が、橋軸直角方向に間隔を置いて併設しており、
複数の前記第3レールに対して前記サスペンションクレーンが移動自在に設置されていることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、橋軸直角方向に間隔を置いて併設している複数の仮設桁に設けられている、複数の第3レールに対してサスペンションクレーンが移動自在に設置されていることにより、橋軸直角方向に延設するサスペンションクレーンを安定した姿勢で仮設桁にて移動自在に支持することができ、このことにより、より一層安定した姿勢で分割体を搬送することができる。
【0014】
また、本発明による橋桁の解体搬送装置の他の態様において、
前記仮設桁の長さは、前記橋桁の撤去範囲よりも長いことを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、仮設桁の長さが橋桁の撤去範囲よりも長いことにより、仮設桁に沿ってサスペンションクレーンを移動させながら橋桁を順次撤去していくことで、桁下空間の一部もしくは全部を占有することなく、橋桁の全撤去範囲の撤去を行うことができる。
【0016】
また、本発明による橋桁の解体搬送装置の他の態様は、
前記仮設桁に配設され、橋軸方向に延設する、第1レールをさらに有し、
前記第1レールに対して、移動式台車が移動自在に設置され、
前記移動式台車には、前記橋桁の橋軸直角方向の幅以上の幅を備え、該橋桁の下方に配設されて、該橋桁を切断する作業床が垂下されていることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、仮設桁に配設されて橋軸方向に延設する第1レールに沿って移動する移動式台車から垂下している作業床を利用して、橋桁の解体を行い、搬送することにより、サスペンションクレーンを利用することと相俟って、より一層効率的な橋桁の解体と搬送を実現できる。
また、作業床が、橋桁の橋軸直角方向の幅以上の幅を備えて、橋桁の下方に配設されていることにより、橋桁が切断されて形成された搬送用の分割体が桁下空間に落下することが防止され、施工安全性を保証することができる。特に、高速道路を構成する橋桁等、橋軸直角方向の幅の広い橋桁の解体においても、作業床が橋桁の橋軸直角方向の幅を全てカバーしていることから、十分な施工安全性が保証される。
【0018】
ここで、「橋桁の橋軸直角方向の幅以上の幅」とは、例えば、橋脚に架設されている橋桁が1つの場合は、その全幅のことを意味しており、橋脚の上に複数の橋桁が併設している場合(高速道路の上下線に対応した複数の橋桁が併設している形態等)は、解体対象がそのうちの1つの橋桁の場合は当該1つの橋桁の幅となり、解体対象が全ての橋桁の場合は全ての橋桁の幅を合わせた全幅となる。
【0019】
また、本発明による橋桁の解体搬送装置の他の態様において、
前記移動式台車に対して、橋軸直角方向に延設する第1上部桁が設置されており、
前記第1上部桁の左右端側において吊り材が垂下され、該吊り材により前記作業床が垂下されていることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、複数の第1レールに設置されている移動式台車に跨がるようにして橋軸直角方向に延びる第1上部桁が設置され、第1上部桁の左右端側から垂下されている吊り材にて作業床が支持されていることにより、作業床がその橋軸直角方向の全域において安定した姿勢で移動式台車にて支持されることになる。例えば、作業床の左右端と橋軸方向の移動方向後方側の端部に防護柵や防護シート等により形成される防護材を設置することにより、分割体の作業床からの落下や作業員の落下等を防止することができ、施工安全性を一層高めることができる。
【0021】
また、本発明による橋桁の解体搬送装置の他の態様において、
前記作業床には、前記分割体を支持する支保工が設けられていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、分割体を支持する支保工が作業床に設けられていることにより、橋桁を切断した際に分割体が作業床に落下して衝撃音を発生させたり、分割体の落下による作業床の破損等を防止できる。
【0023】
また、本発明による橋桁の解体搬送装置の他の態様は、
前記仮設桁の異なる位置に、前記第1レールと前記第3レールが設置されており、
前記移動式台車と前記サスペンションクレーンが、相互に独立して橋軸方向に移動自在であることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、仮設桁の異なる位置に第1レールと第3レールが設置され、移動式台車とサスペンションクレーンが相互に独立して橋軸方向に移動自在であることにより、例えば、移動式台車による解体とサスペンションクレーンによる分割体の搬送を並行して行うことができ、橋桁の解体から搬出までの効率的な施工を実現できる。
【0025】
また、本発明による橋桁の解体搬送方法の一態様は、
既設の橋脚の上に架設されている既設の橋桁を解体して撤去する、橋桁の解体搬送方法であって、
前記橋桁の上方に間隔を置いて、複数の仮設支持体を設置し、複数の該仮設支持体に対して橋軸方向に延設する仮設桁を架設する、A工程と、
前記仮設桁にサスペンションクレーンを移動自在に設置する、B工程と、
前記サスペンションクレーンを橋軸方向に移動させて前記橋桁の解体領域に位置合わせし、該橋桁を切断して搬送用の分割体とし、前記サスペンションクレーンにて該分割体を吊り上げ、該サスペンションクレーンを橋軸方向に移動させて該分割体を搬出する、C工程とを有することを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、既設の橋桁の上に複数の仮設支持体を配設し、複数の仮設支持体に仮設桁を架設した後、仮設桁に沿って移動するサスペンションクレーンを利用して、橋桁が切断されて形成された分割体を吊り上げ、搬送することにより、桁下空間の一部もしくは全部を占有することなく、効率的な橋桁の解体と搬送を実現できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の橋桁の解体搬送装置と解体搬送方法によれば、桁下空間の一部もしくは全部を占有することなく、効率的に橋桁を解体して搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施形態に係る橋桁の解体搬送方法が適用される、施工エリアの一例の平面図である。
【
図2】
図1のII方向矢視図であって、解体対象の橋梁の側面図である。
【
図3】
図1のIII方向矢視図であって、橋梁の橋軸直角方向の縦断面図である。
【
図4】実施形態に係る解体搬送装置の一例を、解体対象の橋桁とともに橋軸方向から見た正面図である。
【
図5】実施形態に係る解体搬送装置のうち、複数の仮設桁に移動自在に設置されている移動式台車の一例のみを取り出して示した斜視図である。
【
図6A】実施形態に係る解体搬送装置のうち、複数の仮設桁に移動自在に設置されている運搬台車の一例のみを取り出して示した正面図である。
【
図6B】
図6AのB方向矢視図であって、運搬台車の一例の平面図である。
【
図6C】複数の仮設桁に移動自在に設置されている運搬台車の一例のみを取り出して示した斜視図である。
【
図7A】実施形態に係る解体搬送装置のうち、複数の仮設桁に移動自在に設置されているサスペンションクレーンの一例のみを取り出して示した正面図である。
【
図7B】複数の仮設桁に移動自在に設置されているサスペンションクレーンの一例のみを取り出して示した斜視図である。
【
図8A】橋桁の解体から収容設備への収容までの一連の施工の流れを説明する説明図である。
【
図8B】
図8Aに続いて、橋桁の解体から収容設備への収容までの一連の施工の流れを説明する説明図である。
【
図8C】
図8Bに続いて、橋桁の解体から収容設備への収容までの一連の施工の流れを説明する説明図である。
【
図9A】実施形態に係る解体搬送方法の一例の工程図である。
【
図9B】
図9Aに続いて、実施形態に係る解体搬送方法の一例の工程図である。
【
図9C】
図9Bに続いて、実施形態に係る解体搬送方法の一例の工程図である。
【
図10A】
図9Cに続いて、実施形態に係る解体搬送方法の一例の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、実施形態に係る橋桁の解体搬送装置と解体搬送方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0030】
[実施形態に係る橋桁の解体搬送装置]
はじめに、
図1乃至
図8を参照して、実施形態に係る橋桁の解体搬送装置の一例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係る橋桁の解体搬送方法が適用される、施工エリアの一例の平面図であり、
図2は、
図1のII方向矢視図であって、解体対象の橋梁の側面図であり、
図3は、
図1のIII方向矢視図であって、橋梁の橋軸直角方向の縦断面図である。また、
図4は、実施形態に係る解体搬送装置の一例を、解体対象の橋桁とともに橋軸方向から見た正面図であり、
図5は、実施形態に係る解体搬送装置のうち、複数の仮設桁に移動自在に設置されている移動式台車の一例のみを取り出して示した斜視図である。また、
図6Aは、実施形態に係る解体搬送装置のうち、複数の仮設桁に移動自在に設置されている運搬台車の一例のみを取り出して示した正面図であり、
図6Bは、
図6AのB方向矢視図であって、運搬台車の一例の平面図であり、
図6Cは、複数の仮設桁に移動自在に設置されている運搬台車の一例のみを取り出して示した斜視図である。さらに、
図7Aは、実施形態に係る解体搬送装置のうち、複数の仮設桁に移動自在に設置されているサスペンションクレーンの一例のみを取り出して示した正面図であり、
図7Bは、複数の仮設桁に移動自在に設置されているサスペンションクレーンの一例のみを取り出して示した斜視図である。
【0031】
図1に示すように、更新対象の橋梁Bを構成する橋桁Gは、市街地を東西に延びる高速道路の一部を成し、桁下空間には南北に延びる車道Rを備えている。平面視における車道Rと橋梁Bの交差点近傍には、橋梁Bを構成する橋脚P2,P3があり、その外側(交差点の反対側)には、別途の橋脚P1,P4があり、これら4基の橋脚Pに架設されている3径間の橋桁Gが撤去対象となる。
【0032】
尚、図示例は、高速道路の下り線に対応する橋桁G1と、上り線に対応する橋桁G2がいずれも鉄筋コンクリート製の箱桁により形成される。より詳細には、隣接する橋脚Pの間に架設される複数の単純桁同士が、PC鋼材により緊結されている、プレストレストコンクリート橋である。尚、更新対象の橋桁は、鉄筋コンクリート製の箱桁に限定されるものでなく、I形やT形の鋼桁等、様々な形態の橋桁であってよい。
【0033】
図4に示す解体搬送装置50は、
図1及び
図2に示す道路Rを供用しながら、その上部において交差した態様で延設する橋桁Gを解体し、搬送(搬出)する装置であり、橋桁Gの解体搬送に際して、橋桁Gの桁下空間を占有(利用)せずに施工を行うことを可能にした装置である。
【0034】
解体搬送装置50は、橋桁Gの上方に間隔を置いて配設される、複数の仮設支持体60(
図9C参照)の上に架設されて橋軸方向に延設する、複数(図示例は4本)の仮設桁10と、この仮設桁10に配設されている3種のレール(第1レール11,第2レール12、第3レール13)に移動自在に設置されている、移動式台車20と運搬台車30とサスペンションクレーン40を主たる構成要素とする。尚、仮設桁10を支持する仮設支持体60の設置方法等に関しては、以下の解体搬送方法の説明の際に詳説する。
【0035】
図4に示すように、下り線の橋桁G1の上方には、
図4において図示を省略する仮設支持体60(
図9C参照)を介して、2本の仮設桁10Aが橋軸方向に延設する姿勢で架設されている。一方、上り線の橋桁G2の上方には、同様に図示を省略する仮設支持体60を介して、2本の仮設桁10Bが橋軸方向に延設する姿勢で架設されている。
【0036】
各仮設桁10の上面10aの中央位置には、第1レール11が橋軸方向に延設する姿勢で設置されている。また、ともに2本の上り線と下り線の仮設桁10A,10Bのうち、内側に位置する仮設桁10A,10Bの上面10aの内側端には、第2レール12が橋軸方向に延設する姿勢で設置されている。さらに、各仮設桁10の左右の側面10bには、第3レール13が橋軸方向に延設する姿勢で設置されている。
【0037】
一対の仮設桁10Aのそれぞれの第1レール11に跨がるようにして、正面視逆Tの字状の主フレーム21の下端に設けられている電動車輪22が設置されており、同様に、一対の仮設桁10Bのそれぞれの第1レール11にも、正面視逆Tの字状の主フレーム21の下端に設けられている電動車輪22が設置されている。そして、これら一対の主フレーム21の上端には、橋軸直角方向に延設する第1上部桁24が掛け渡され、第1上部桁24の上方に屋根25が設けられることにより、移動式台車20が構成される。
【0038】
橋軸直角方向に延設する第1上部桁24の左右端近傍からは、ワイヤやチェーン、PC鋼棒等により形成される複数の吊り材26が垂下されており、各吊り材26の下端には、作業床27が固定されている。
【0039】
図4に示すように、作業床27は、解体対象である2つの橋桁G1,G2の下方に配設された状態で吊り材26を介して第1上部桁24から垂下されている。2つの橋桁G1,G2の橋軸直角方向の全幅:t1に対して、作業床27の橋軸直角方向の幅t2は相対的に広幅となっている。
【0040】
作業床27の左右端には、防護材27aが立設している。この防護材27aは、防護柵と、防護柵に設置されている吸音シート等の防護シートにより形成されている。作業床27は、平面視矩形を呈しており、その左右端には図示例の防護材27aが立設しているが、移動式台車20の移動方向と反対側の端辺にも不図示の防護材27aが立設している。以下で説明するように、移動式台車20の橋軸方向の移動に際して橋桁Gが解体撤去されるため、移動式台車20の移動方向の反対側には橋桁Gが存在しておらず、従って、移動式台車20の移動方向と反対側の端辺にある不図示の防護材27aは橋桁Gと干渉しないことからその設置が可能になる。
【0041】
このように、平面視矩形の作業床27の少なくとも3つの端辺に沿って防護材27aが立設していることにより、作業床27上にある資機材や作業員の落下が防止され、施工安全性の高い解体搬送装置50が形成される。
【0042】
図4に示すように、作業床27の上には、解体対象の橋桁Gを下方から支保する支保工28が設けられている。
【0043】
このように、支保工28にて橋桁Gを支保した状態で、橋桁Gを搬送用の大きさの複数の分割体に分割することにより、分割体を形成した際に作業床27の上に分割体が落下して作業床27が破損したり、落下した際の衝撃音が周辺に響き渡るといった問題を解消できる。
【0044】
ここで、
図5は、解体搬送装置50の中から、作業床27を垂下する移動式台車20のみを取り出して示した斜視図であり、
図4に示す上方の屋根25も省略している。尚、
図5に示す移動式台車20では、第1上部桁24Aが正面視ハット形を呈している、別形態の上部桁であるが、その他の基本構成は
図4に示す例と同様である。
【0045】
このように、移動式台車20は、橋桁Gを解体する際の作業床27を支持し、安全な作業空間を形成するための台車である。ここで、移動式台車20は、第1レール11に沿って橋軸方向に移動自在であることから、橋桁Gを解体して形成された分割体を撤去範囲外にある隣接桁近傍まで搬送し、隣接桁上に待機するクレーン等を介して分割体を搬出するような使用態様で使用されてもよい。
【0046】
図4に戻り、左右の内側にある仮設桁10A,10Bの第2レール12には、それぞれ、主フレーム31の下端に設けられている電動車輪32が設置されている。そして、これら一対の主フレーム31の上端には、橋軸直角方向に延設する第2上部桁34が掛け渡されることにより、運搬台車30が構成される。
【0047】
解体搬送装置50の中から、運搬台車30のみを取り出して示した
図6Aと、その平面図である
図6B、さらに斜視図で示す
図6Cを参照することにより、運搬台車30の構成がより一層明りょうになる。一対の主フレーム31は橋軸方向に沿う架構を呈しており、双方の主フレーム31の上端には、橋軸直角方向に延設する複数(図示例は3本)の第2上部桁34が掛け渡されている。その内の1本の第2上部桁34には、同様に橋軸直角方向に延設する第5レール35が設置され、第5レール35には、複数(図示例は2つ)の第1揚重設備37が電動トロリー37aを介して移動自在に設置されている。
【0048】
一対の主フレーム31の上端には、橋軸方向に延設する第4レール33が設置されており、第1揚重設備37を備えた第2上部桁34の両端に設けられている電動トロリー34bを介して、一対の第4レール33に対して当該第2上部桁34が橋軸方向に移動自在に設置されている。ここで、図示例の第1揚重設備37は、チェーンブロックにより形成される。
【0049】
一対の主フレーム31の間には、解体された搬送用の分割体を収容する収容設備38が設けられている。複数の第2上部桁34のうち、橋軸方向に間隔を置いて配設された一対の第2上部桁34Aの間の隙間S1を介して、第1揚重設備37にて吊り上げられた分割体は、収容設備38に収容されるようになっている。運搬台車30は、収容設備38に分割体を収容した後、第2レール12に沿って橋軸方向に走行し、分割体を場外へ搬出する。
【0050】
運搬台車30では、第1揚重設備37を垂下する第2上部桁34が第4レール33に沿って橋軸方向に移動し、第2上部桁34に設置されている第5レール35に沿って第1揚重設備37が電動トロリー37aを介して橋軸直角方向に移動することから、第1揚重設備37は橋軸方向と橋軸直角方向の双方向に移動自在となっている。従って、作業床27上(の支保工28上)の様々な位置に分割体が載置されていても、第1揚重設備37は容易にアクセスして分割体を吊り上げ、収容設備38に収容することができる。
【0051】
図4に戻り、各仮設桁10A,10Bの側面10bに設置されている第3レール13には、主フレーム41の上端に設けられている電動車輪42が設置されている。そして、これら複数の主フレーム41により、サスペンションクレーン40が構成される。
【0052】
解体搬送装置50の中から、サスペンションクレーン40のみを取り出して示した
図7A、
図7Bを参照することにより、サスペンションクレーン40の構成がより一層明りょうになる。サスペンションクレーン40は、橋軸方向に併設した一対の主フレーム41により構成され、主フレーム41の上方には橋軸直角方向に延設する第6レール43が設置され、第2揚重設備44が電動トロリー44aを介して第6レール43に対して橋軸直角方向に移動自在に設置されている。図示例の第2揚重設備44もチェーンブロックにより形成されており、第6レール43の左右にそれぞれ、2つで1組の第2揚重設備44が配設されている。各組の第2揚重設備44は、左右にある橋桁G1,G2の解体搬送にそれぞれ適用される。
【0053】
主フレーム41の橋軸直角方向の中央位置には、仮置き受け台46が垂下されており、1組の第2揚重設備44にて橋軸直角方向に搬送されてきた分割体は、仮置き受け台46に一旦仮置きされる。
【0054】
ここで、
図8A乃至
図8Cを参照して、サスペンションクレーン40を利用した分割体の橋軸直角方向への搬送から、運搬台車30による分割体の吊り上げと収容設備38への収容までの一連の流れを説明する。
【0055】
まず、
図8Aに示すように、鉄筋コンクリート製の橋桁G1,G2は、図示例のように、運搬台車30にて橋軸方向に運搬可能な規模と重量の複数の分割体Dに切断分割される。より具体的には、各分割体Dの橋軸方向の長さは、
図5や
図7B等で示すように作業床27の橋軸方向の幅未満の幅に切断される。
【0056】
このような橋桁Gの切断施工は、作業床27の上で、作業員がワイヤーソー等の切削工具を用いて行う。
【0057】
図8Aでは、一方の橋桁G1の端部の高欄を備えた分割体Dを切断し、搬送する状態を示している。尚、
図8A等では、橋桁Gを支保する支保工の図示を省略しており、橋桁Gの周囲の作業床27上に設置されている作業足場28'を示している。
【0058】
作業足場28'上で作業員が橋桁G1を切断して形成された分割体Dは、X1方向に運ばれて第2揚重設備44に垂下された後、第2揚重設備44が第6レール43に沿って橋軸直角方向へX2方向に移動することにより、サスペンションクレーン40の中央位置へ搬送される。
【0059】
次に、
図8Bに示すように、第2揚重設備44にて搬送された分割体Dは、サスペンションクレーン40の中央位置にある仮置き受け台46に一旦預けられる。
【0060】
仮置き受け台46の上方には、運搬台車30の収容設備38や、第1揚重設備37が配設されている。より詳細には、
図8Bからも明らかなように、第5レール35に沿って橋軸直角方向へ移動する第1揚重設備37の移動範囲t5は、仮置き受け台46の橋軸直角方向の幅t6よりも広く設定されている。
【0061】
そのため、ともに内側にある仮設桁10A,10Bの間の隙間S2を介して第1揚重設備37がX3方向に降下してきた際に、第1揚重設備37は仮置き受け台46の中に収容されている分割体Dにアクセスすることができ、分割体Dを第1揚重設備37にて吊り上げることができる。
【0062】
図8Cに示すように、第1揚重設備37にて吊り上げられた分割体Dは、収容設備38に収容される。運搬台車30は、橋桁G1,G2に配設されている第2レール12に沿って橋軸方向に移動し、分割体Dを撤去対象外の隣接桁等の上に待機するクレーン近傍まで移動した後、クレーンに分割体Dが受け渡され、場外へ搬出される。分割体Dをクレーンに受け渡した後、運搬台車30は第2レール12に沿って次の撤去領域に移動する。
【0063】
運搬台車30の収容設備38に分割体Dを収容した姿勢で分割体Dを搬送することにより、分割体Dを落下等させることなく、安全に搬出することができる。
【0064】
ここで、サスペンションクレーン40は、第3レール13に沿って橋軸方向に移動自在であることから、分割体Dを運搬台車30に受け渡すことなく、例えば
図8Aに示すように分割体Dを第2揚重設備44にて吊り上げた状態で、サスペンションクレーン40が第3レール13に沿って橋軸方向に移動し、分割体Dをクレーンに受け渡してもよい。
【0065】
以上、
図4乃至
図8の各図を参照すると明らかなように、3種の第1レール11,第2レール12、及び第3レール13が各仮設桁10の異なる位置に設置され、複数の仮設桁10の上方において、正面視寸法が相対的に大寸法で門型の移動式台車20が配設され、移動式台車20の内側に、相対的に小寸法で門型の運搬台車30が配設されるとともに、複数の仮設桁10の下方にサスペンションクレーン40が配設されていることにより、それぞれが相互に独立して橋軸方向に移動自在な解体搬送装置50が形成される。
【0066】
このことにより、移動式台車20と運搬台車30、及びサスペンションクレーン40が同時に個別の作業を行うことができ、解体搬送施工の効率が向上する。例えば、移動式台車20とサスペンションクレーン40が、橋桁Gの切断による分割体Dの形成や分割体Dの橋軸直角方向への搬送を行う施工と並行して、運搬台車30は既に撤去された分割体Dを橋軸方向に搬出する施工が実現でき、効率的に橋桁Gを解体して搬送することができる。
【0067】
また、解体搬送装置50によれば、撤去対象の橋桁Gの桁下空間を一切占有する必要がないことから、桁下空間にある車道Rを供用し、交通規制を行うことなく、橋桁Gの解体撤去施工を行うことができる。また、このこととの関連で、車道Rを規制しながらの解体撤去施工でないことから、可能であれば時間制限なく施工を継続することができ、資機材等の搬送を含めて全て車道Rの上空で行うことができることから、施工効率を一層向上させることができる。
【0068】
[実施形態に係る橋桁の解体搬送方法]
次に、
図9A乃至
図9Cと、
図10A乃至
図10Cを参照して、実施形態に係る橋桁の解体搬送方法の一例について説明する。ここで、
図9A乃至
図10Bは順に、実施形態に係る解体搬送方法の一例の工程図であり、
図10Cは、
図10Bに示す施工状態を斜視図として示す図である。
【0069】
図9A乃至
図9Cは、解体搬送方法のうち、既設の橋桁Gの解体撤去に際して、橋桁Gの上に仮設桁10を設置する方法を説明する工程図である。
【0070】
図9Aに示すように、図示例において解体撤去される橋桁Gは、4本の橋脚Pにて支持される3径間に延設する単純桁が、PC鋼材により緊結されている橋桁である。撤去範囲の左右端にある橋脚P1,P4には、撤去範囲外にある隣接桁G'が架設されている。
【0071】
左右の隣接桁G'からそれぞれ、クレーンCが撤去範囲に進入して資機材を搬送したり、資材の設置を行う。まず、各クレーンCは、橋軸方向における撤去範囲の中央位置から順に、盛り替え支持体61,62を橋桁Gの上に間隔を置いて設置し、複数の盛り替え支持体61,62の上に仮設桁分割体10'を橋軸方向に連続するように並べ、隣接する仮設桁分割体10'の端部同士を連結していく。
【0072】
各クレーンCは、左右の隣接桁G'側へY1方向に後退しながら、盛り替え支持体61,62の盛り替え設置と仮設桁分割体10'の設置を行っていく。ここで、盛り替え支持体61,62の盛り替え設置は、例えば、
図9Aにおいて橋軸方向の中央側にある盛り替え支持体61を取り外して、新たに仮設桁分割体10'が設置される隣接桁G'側の所定位置に盛り替え支持体61を盛り替え、新たな仮設桁分割体10'をその上に載置する。以後、
図9Aに示す盛り替え支持体62を取り外して、同様の要領で、新たに仮設桁分割体10'が設置される隣接桁G'側の所定位置に盛り替え支持体62を盛り替え、新たな仮設桁分割体10'をその上に載置する。
【0073】
図9Bに示すように、橋脚P2,P3の上には、盛り替え支持体61,62ではなく、橋桁Gを撤去する際に仮設桁10を正規に支持するための仮設支持体60を設置する。仮設支持体60は、各径間に亘る長尺な仮設桁10を分担して直接支持する支持体であることから、仮設桁10を施工するために使用される盛り替え支持体61,62に比べて剛性も高く、大規模な支持体である。ここで、仮設支持体60は、H形鋼や山形鋼、溝形鋼等の形鋼材が組み付けられ、必要に応じて短尺な鋼管や角形鋼管等が適用されることにより、形成される。
【0074】
仮設支持体60が各橋脚Pの上に設置され、この仮設支持体60にて長尺な仮設桁10が支持されることから、仮設桁10の荷重は仮設支持体60を介して橋脚Pにスムーズに伝達される。
【0075】
以後、クレーンCが後退しながら、盛り替え支持体61,62の盛り替え設置と、仮設桁分割体10'の設置、仮設桁分割体10'同士の連結を繰り返し行い、
図9Cに示すように、さらに橋脚P1,P4の上に仮設支持体60を設置する。
【0076】
橋軸方向に並ぶ複数の仮設桁分割体10'が相互に連結されることにより、仮設桁10を形成し、4本の橋脚P1乃至P4の上方に設置された4基の仮設支持体60に仮設桁10を架設する。
【0077】
図9Cに示すように、仮設桁10の長さt9は、撤去範囲である橋脚P1~橋脚P4の区間長t8よりも長くなるように設定されている。このように、仮設桁10が撤去範囲よりも長い長さを有していることにより、橋桁Gの撤去範囲の全域の解体撤去を行うことができる。
【0078】
図9Cには、橋脚P4の近傍に設置される仮設桁分割体10'を、多軸台車Mを利用してY2方向に搬送する状態を合わせて示している。このように、仮設桁分割体10'の搬送は、クレーンCの他にも様々な搬送手段により行われてよい。
【0079】
また、各仮設桁分割体10'には、第1レール11,第2レール12、及び第3レール13を構成する各分割レールが予め設置されており、仮設桁10が形成された際に、各分割レールが橋軸方向に連続することにより、仮設桁10と同程度の長さを有する第1レール11,第2レール12、及び第3レール13が同時に形成される(以上、A工程)。
【0080】
次に、
図10A乃至
図10Cに示すように、仮設桁10を利用して橋桁Gを解体撤去する。まず、
図10Aに示すように、第1レール11(
図4参照)に移動式台車20を移動自在に設置し、第3レール13(
図4参照)にサスペンションクレーン40を移動自在に設置し、移動式台車20にて橋桁Gの下方に配設される作業床27を垂下させ、作業床27を防護材27aにて包囲する。尚、
図10Aの段階では、運搬台車30は第2レール12に設置されない。
【0081】
ここで、移動式台車20とサスペンションクレーン40は2台で1組を成し、中央にある橋脚P2の左右と、橋脚P3の左右のそれぞれに各組を配置する。そして、左右各組のそれぞれに対して、以後に設置予定の1台の運搬台車30が割り当てられる(以上、B工程)。
【0082】
橋桁Gの撤去は、大きく4つの撤去区間が設定されており、橋脚P2の左右には、バランス区間A,Bが設定され、各区間に対して各組の移動式台車20とサスペンションクレーン40が割り当てられる。そして、バランス撤去区間A,Bで生じた分割体Dは、これらの区間に割り当てられている運搬台車30にて、左側にある隣接桁G'上に待機しているクレーンCの近傍まで搬送され、クレーンCを介して運搬車Tに積み込まれ、場外へ搬出されることになる。
【0083】
一方、橋脚P3の左右には、バランス撤去区間C,Dが設定され、各区間に対して各組の移動式台車20とサスペンションクレーン40が割り当てられる。そして、バランス区間C,Dで生じた分割体Dも、これらの区間に割り当てられている運搬台車30にて、右側にある隣接桁G'上に待機しているクレーンCの近傍まで搬送され、クレーンCを介して運搬車Tに積み込まれ、場外へ搬出される。
【0084】
これらバランス撤去区間A,Bやバランス撤去区間C,Dにおける橋桁Gの解体撤去は、橋脚P2から左右に張り出す左側領域と右側領域の橋桁Gの張り出し長さをバランスさせながら解体撤去され、同様に、橋脚P3から左右に張り出す左側領域と右側領域の橋桁Gの張り出し長さをバランスさせながら解体撤去されることから、ここでは、「バランス撤去区間」と称している。
【0085】
例えば、橋脚P2の左側領域と右側領域の張り出し長さを比較した際に、左側領域の長さが長いことから、左右の張り出し長さをバランスさせながら撤去する施工に際して、左側領域における一部区間を、先行撤去区間A(差分区間)として先行撤去する。このことは、橋脚P3の左側領域と右側領域についても同様であり、橋脚P3の左側領域と右側領域の張り出し長さを比較した際に、右側領域の長さが長いことから、左右の張り出し長さをバランスさせながら撤去する施工に際して、右側領域における一部区間を、先行撤去区間B(差分区間)として先行撤去する。
【0086】
先行撤去区間A,Bの撤去に際しては、仮設桁10からPC鋼棒等からなる複数の仮吊り材70を垂下し、仮吊り材70にて橋桁Gにおける各先行撤去区間を吊持した状態で、移動式台車20とサスペンションクレーン40を撤去領域に移動させ、解体する。
【0087】
先行撤去区間A,Bの近傍には、クレーンCが待機し、クレーンCのブームの届く範囲に作業床27がある場合は、作業床27の上にある解体された橋桁Gの一部をクレーンCにて直接受け取り、搬出する。一方、クレーンCのブームの届く範囲に作業床27がない場合は、移動式台車20をクレーンC側へ移動させ、クレーンCにて解体された橋桁Gの一部を受け取らせた上で搬出する。
【0088】
このように、先行撤去区間A,Bを撤去することにより、橋脚P2,P3のそれぞれの左側領域と右側領域の張り出し長さは、同一、もしくはバランス撤去が可能な範囲で略同一に調整される。
【0089】
次に、
図10Bに示すように、橋脚P2の左側領域と右側領域を分担する運搬台車30と、橋脚P3の左側領域と右側領域を分担する運搬台車30が、仮設桁10の第2レール12に設置される。
【0090】
橋脚P2では、バランス撤去区間Aとバランス撤去区間Bのそれぞれの端に、対応する移動式台車20とサスペンションクレーン40を位置合わせし、橋桁Gを複数の分割体Dに分割しながら順次解体する。解体された分割体Dは、運搬台車30が順次積み込み、クレーンCの近傍まで移動してクレーンCに受け渡す輸送方法により、搬出される。
【0091】
橋脚P2の左側領域と右側領域では、双方の解体撤去のスピードをバランスさせ、橋脚P2の上の仮設支持体60からの張り出し長さが同程度となるように双方の長さをバランスさせながら、橋脚P2側へY3方向に解体撤去を進めていく。
【0092】
橋脚P3においても、上記橋脚P2の左右における解体撤去方法と同様の方法で、バランス撤去区間Cとバランス撤去区間Dにおける橋桁Gの解体撤去を進めていく。
【0093】
図10Cは、
図10Bを斜め上方から見た斜視図で示す図である。実施形態に係る解体搬送方法によれば、撤去対象の橋桁Gの桁下空間を一切占有しなくてよいことから、
図10Cに示すように、橋桁Gの解体撤去施工は、下方にある車道Rを供用しながら行うことができる。
【0094】
各橋脚P2,P3まで移動式台車20とサスペンションクレーン40の解体撤去が進み、撤去範囲にある全ての橋桁Gが解体撤去される(以上、C工程)。
【0095】
橋桁Gが解体された後、移動式台車20と運搬台車30とサスペンションクレーン40を解体して搬出し、橋脚P上に残された仮設桁10は、例えば、一方の隣接桁G'側に引き込んで順次解体することにより、仮設桁10が解体される。
【0096】
その後、既設の橋脚Pも解体撤去され、新設の橋脚が施工され、新設の橋脚上に新設の橋桁が架設されることにより、橋梁が更新される。
【0097】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0098】
10,10A,10B:仮設桁
10':仮設桁分割体
10a:上面
10b:側面
11:第1レール
12:第2レール
13:第3レール
15:安全柵
20:移動式台車
21:主フレーム
22:電動車輪
24,24A:第1上部桁
25:屋根
26:吊り材
27:作業床
27a:防護材
28:支保工
28':作業足場
29:第3揚重設備(チェーンブロック)
30:運搬台車
31:主フレーム
32:電動車輪
33:第4レール
34,34A:第2上部桁
34a:電動トロリー
35:第5レール
37:第1揚重設備(チェーンブロック)
37a:電動トロリー
38:収容設備
40:サスペンションクレーン
41:主フレーム
42:電動車輪
43:第6レール
44:第2揚重設備(チェーンブロック)
44a:電動トロリー
46:仮置き受け台
50:解体搬送装置(橋桁の解体搬送装置)
60:仮設支持体
61,62:盛り替え支持体
70:仮吊り材(PC鋼棒)
B:橋梁
P,P1~P4:橋脚
G,G1,G2:橋桁
G':隣接桁
R:車道
S1,S2:隙間
D:分割体
C:クレーン
M:多軸台車
T:運搬車