IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ホシノの特許一覧

<>
  • 特開-スローアウェイ式開先カッター 図1
  • 特開-スローアウェイ式開先カッター 図2
  • 特開-スローアウェイ式開先カッター 図3
  • 特開-スローアウェイ式開先カッター 図4
  • 特開-スローアウェイ式開先カッター 図5
  • 特開-スローアウェイ式開先カッター 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031188
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】スローアウェイ式開先カッター
(51)【国際特許分類】
   B23C 3/12 20060101AFI20240229BHJP
   B23C 5/02 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B23C3/12 D
B23C5/02
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134590
(22)【出願日】2022-08-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】322009022
【氏名又は名称】株式会社ホシノ
(74)【代理人】
【識別番号】100104514
【弁理士】
【氏名又は名称】森 泰比古
(72)【発明者】
【氏名】星野 博幸
【テーマコード(参考)】
3C022
【Fターム(参考)】
3C022DD07
3C022GG03
3C022GG05
(57)【要約】
【課題】切り屑の排出方向を安定させ、静音性が高く精度のよい開先加工を可能にする。
【解決手段】スローアウェイ式開先カッター1は、カッタボディ2の外面にスローアウェイチップ3,3,…を中心から外周へと連続する様に配置してなるチップ列5,5,…を放射状に複数組備える。各チップ列5のスローアウェイチップ3,3,…は、半径方向のスクイ角度が正となり、中心から外周に向かって回転方向前方側へ向かう階段状の配置となる様にカッタボディ2の外面に取り付けられる。スローアウェイチップ3,3,…のスクイ面側に配置される切り屑ポケット4,4,…は、それぞれ外周側から中心側に伸び、より外周側に位置する切り屑ポケットが、より中心側に位置する切り屑ポケットに部分的に入り込んだ状態となる様に連通され、各チップ列5毎に相互に連続する球面状底部を形成する一連の切り屑ポケット群6,6,…を構成している。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開先角度に対応する傾斜面を有する円錐台状のカッタボディの外面に、複数個のスローアウェイチップ及び複数個の切り屑ポケットを中心から外周へと連続する様に配置してなるチップ列を放射状に複数組備えた開先カッターであって、さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とするスローアウェイ式開先カッター。
(1A)前記各チップ列は、前記複数個のスローアウェイチップを、中心から外周に向かって回転方向前方側へ向かう階段状の配置となる様に前記カッタボディの外面に取り付けることによって構成されていること。
(1B)前記複数個の切り屑ポケットは、前記複数個のスローアウェイチップのスクイ面側にそれぞれ配置され、前記各チップ列ごとに連続した一連の切り屑ポケット群を構成する様に前記カッタボディの外面に形成されていること。
(1C)前記一連の切り屑ポケット群は、当該切り屑ポケット群を構成する前記複数個の切り屑ポケットは、それぞれ外周側から中心側に伸び、より外周側に位置する切り屑ポケットが、より中心側に位置する切り屑ポケットに部分的に入り込んだ状態となる様に連通され、前記各チップ列毎に相互に連続する球面状底部を形成する様に構成されていること。
【請求項2】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項1に記載のスローアウェイ式開先カッター。
(2)前記各スローアウェイチップは、半径方向のスクイ角が正の角度となる様に前記カッタボディに取り付けられていること。
【請求項3】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項2に記載のスローアウェイ式開先カッター。
(3A)前記各スローアウェイチップは、断面がほぼ等方台形で、当該等方台形の長辺となる下底の両端において幅方向に伸びる縁を切れ刃とするものであって、前記下底の両端の内の一方の縁を切れ刃エッジとしたとき、当該切れ刃エッジの縁で前記開先角度に一致する切れ刃を構成する様に押さえ金具を介して前記カッタボディに対して着脱可能に取り付けられていること。
(3B)前記カッタボディには、前記スローアウェイチップを収容するチップ収容溝が、前記一連の切り屑ポケット群に対して回転方向後方側から一部入り込み、前記各チップにおいて前記切れ刃エッジを入れ換えた場合にあっても前記開先角度及び前記半径方向スクイ角に一致する切れ刃を構成した状態で収容可能となる様に形成されていること。
(3C)前記チップ収容溝の回転方向後方側に前記押さえ金具を収納する押さえ金具収納溝を備え、当該押さえ金具収納溝は、前記スローアウェイチップを前記チップ収容溝の前側壁面に押し付けた状態となる様に前記押さえ金具を収納し得るものとして構成されていること。
(3D)放射状に複数組備えた前記各チップ列は、隣り合うチップ列との間では前記スローアウェイチップの半径方向の配置を異ならせつつ、同一のチップ列においては中心から外側に向かって反時計周りに前記スローアウェイチップを配置し、全体として半径方向に連続した切削可能範囲を構成する様に取り付けられていること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開先カッターに係り、特に、建築構造用角形鋼管(コラム)の接続端に溶接用の開先を切削加工するためのスローアウェイ式開先カッターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コラムの接続端に溶接用の開先加工をするための装置として、定位置において回転駆動される旋回体の回転平面部に沿ってXY方向に移動可能に設置した二つの開先カッターを、コラムの先端を挟み付ける様に当接させ、コラム外周面に当接させた倣いローラによって切削位置を規定した状態で旋回体を回転させる間にコラムの接続端に溶接用の開先加工を行う様にした装置が提案されている(特許文献1,2)。
【0003】
また、こうした開先加工に用いるカッターとして、円錐台形状のカッタボディの外周面に切り屑ポケットに臨ませたチップ取付溝に任意の厚みをもつ超硬合金製のスローアウェイチップを嵌合し締付ねじで締付固定したものが知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-13973号公報(図6図9
【特許文献2】特開2016-64456号公報(図4
【特許文献3】特公平03-073403号公報(図1図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2記載の装置に、特許文献3記載の開先カッターを装着してコラムの開先加工を実行すると、図6に示す様に、開先カッターAでコラムBの垂直部分に開先加工をする際に発生する切り屑Cが装置Dに当たって跳ね返り、コラムB側へと戻ってくる現象が見られた。この戻ってきた切り屑CはコラムBの上面に蓄積され易く、チップ刃先及び倣いローラEへの噛み込みが発生し、切削中におけるビビリ振動や加工面品位への悪影響を生じさせ得るといった問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、切り屑の排出方向を安定させ、静音性が高く精度のよい開先加工を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明のスローアウェイ式開先カッターは、開先角度に対応する傾斜面を有する円錐台状のカッタボディの外面に、複数個のスローアウェイチップ及び複数個の切り屑ポケットを中心から外周へと連続する様に配置してなるチップ列を放射状に複数組備えた開先カッターであって、さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする。
(1A)前記各チップ列は、前記複数個のスローアウェイチップを、中心から外周に向かって回転方向前方側へ向かう階段状の配置となる様に前記カッタボディの外面に取り付けることによって構成されていること。
(1B)前記複数個の切り屑ポケットは、前記複数個のスローアウェイチップのスクイ面側にそれぞれ配置され、前記各チップ列ごとに連続した一連の切り屑ポケット群を構成する様に前記カッタボディの外面に形成されていること。
(1C)前記一連の切り屑ポケット群は、当該切り屑ポケット群を構成する前記複数個の切り屑ポケットは、それぞれ外周側から中心側に伸び、より外周側に位置する切り屑ポケットが、より中心側に位置する切り屑ポケットに部分的に入り込んだ状態となる様に連通され、前記各チップ列毎に相互に連続する球面状底部を形成する様に構成されていること。
【0008】
本発明のスローアウェイ式開先カッターによれば、放射状に配置された複数組のチップ列びそれぞれにおいて、複数個のスローアウェイチップが中心から外周に向かって回転方向前方側へ向かう階段状の配置となる様に取り付けられると共に、各スローアウェイチップのスクイ面側に配置される切り屑ポケットが、チップ列ごとに連続した一連の切り屑ポケット群を構成し、この一連の切り屑ポケット群は、当該切り屑ポケット群を構成する複数個の切り屑ポケットが、それぞれ外周側から中心側に伸び、より外周側に位置する切り屑ポケットが、より中心側に位置する切り屑ポケットに部分的に入り込んだ状態となる様に連通され、前記各チップ列毎に相互に連続する球面状底部を形成する様に構成されているから、切り屑の排出方向がランダム化し難くなると共に、切り屑ポケット群に沿ってカッタ前方外側へと流れ易くなる。例えば、角形鋼管(コラム)の端部への開先加工において装置に当たって跳ね返る切り屑の量を減らすことができ、コラム上面への切り屑の蓄積を抑制することができる。また、各チップ列に沿う様に配置される複数個の切り屑ポケット同士を連通させ、全体として連続する球面状底部を形成する一連の切り屑ポケット群をチップ列毎に備えさせることで、切り屑ポケットへの切り屑の詰まりも抑制することができる。その結果、本発明のスローアウェイ式開先カッターは、切り屑の排出方向を安定させ、静音性が高く精度のよい開先加工を可能にする。なお、本発明のスローアウェイ式開先カッターは、コラム(角形鋼管)の端部に限らず、H型鋼、平鋼板などのエッジに溶接用の開先を切削加工する際に用いることもできる。
【0009】
ここで、本発明のスローアウェイ式開先カッターは、さらに、以下の構成をも備えたものとすることができる。
(2)前記各スローアウェイチップは、半径方向のスクイ角が正の角度となる様に前記カッタボディに取り付けられていること。
【0010】
かかる構成をも備えたスローアウェイ式開先カッターによれば、半径方向のスクイ角が正の角度である結果、切削抵抗が軽減され、ビビリ振動を抑制する効果が期待できる。また、切れ刃に邪魔されることなく切り屑がスムーズに排出され、カッタ後方への流れを抑制しつつ前方外側へと排出する作用をより一層高めることができる。
【0011】
このスローアウェイ式開先カッターは、さらに、以下の構成をも備えたものとすることができる。
(3A)前記各スローアウェイチップは、断面がほぼ等方台形で、当該等方台形の長辺となる下底の両端において幅方向に伸びる縁を切れ刃とするものであって、前記下底の両端の内の一方の縁を切れ刃エッジとしたとき、当該切れ刃エッジの縁で前記開先角度に一致する切れ刃を構成する様に押さえ金具を介して前記カッタボディに対して着脱可能に取り付けられていること。
(3B)前記カッタボディには、前記スローアウェイチップを収容するチップ収容溝が、前記一連の切り屑ポケット群に対して回転方向後方側から一部入り込み、前記各チップにおいて前記切れ刃エッジを入れ換えた場合にあっても前記開先角度及び前記半径方向スクイ角に一致する切れ刃を構成した状態で収容可能となる様に形成されていること。
(3C)前記チップ収容溝の回転方向後方側に前記押さえ金具を収納する押さえ金具収納溝を備え、当該押さえ金具収納溝は、前記スローアウェイチップを前記チップ収容溝の前側壁面に押し付けた状態となる様に前記押さえ金具を収納し得るものとして構成されていること。
(3D)放射状に複数組備えた前記各チップ列は、隣り合うチップ列との間では前記スローアウェイチップの半径方向の配置を異ならせつつ、同一のチップ列においては中心から外側に向かって反時計周りに前記スローアウェイチップを配置し、全体として半径方向に連続した切削可能範囲を構成する様に取り付けられていること。
【0012】
かかる構成をも備えたスローアウェイ式開先カッターによれば、刃先が摩耗したときは押さえ金具を緩め、スローアウェイチップの切れ刃エッジを変更することで継続して切削加工することができる。このとき、スローアウェイチップをチップ収容溝にしっかりと収納しかつその前側壁面に押し付けた状態となる様に押さえ金具で押さえることにより、チップにガタツキを生じ難く、かつ、開先角度及び半径方向スクイ角を適正な角度とする取り付けを容易に実施することができる。そして、各チップ列は、隣り合うチップ列との間では前記スローアウェイチップの半径方向の配置を異ならせつつ、同一のチップ列においては中心から外側に向かって反時計周りに前記スローアウェイチップを配置し、全体として半径方向に連続した切削可能範囲を構成する様に取り付けられているから、切り屑の排出方向を安定させつつ各種口径のコラムに対しても開先加工を適切に実施することができる。
【0013】
なお、本発明のスローアウェイ式開先カッタは、特に、コラムの端部に開先加工を行う自動開先切削盤の一対のスピンドルの先端に取り付け、角形鋼管の端部に求心的に当接させると共に、前記スピンドルと同軸上の前方側に配置した倣いローラを前記角形鋼管の外面に当接させた状態を維持しつつ前記スピンドルを駆動し、求心的に当接させた一対の前記開先カッターに前記角形鋼管に対して点対称の位置をとらせつつ周回させることにより、溶接用の開先を切削加工するための加工装置に用いるとよい。
【0014】
この様な自動開先切削盤に用いることにより、本発明のスローアウェイ式開先カッターは、上述の通り、切り屑のカッター後方へのランダムな排出を抑制し、切り屑をカッター前方外側へと排出するから、切り屑が角形鋼管の上面に蓄積され難いという作用を発揮する。この結果、本発明の自動開先切削盤は、静音性が高く精度のよい開先加工を可能にする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、切り屑の排出方向を安定させ、静音性が高く精度のよい開先加工を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1の自動開先切削盤を示し、(A)は縦断面図、(B)はフレーム部分の正面図、(C)は開先加工実行時の倣いローラ及び開先カッターのコラムに対する当接状態の変化を示した説明図である。
図2】実施例1のスローアウェイ式開先カッターを示し、(A)は斜視図、(B)は正面図、(C)は底面図である。
図3】実施例1のスローアウェイ式開先カッターを示し、(A)はスローアウェイチップ及びその収容溝等の分解斜視図、(B)は部分拡大正面図、(C)は部分的に断面で示した二つの斜視図を用いた説明図である。
図4】実施例1のスローアウェイ式開先カッターにおけるスローアウェイチップの配置状態を示し、(A)は正面図、(B)は一部断面で示した呈面図である。
図5】変形例のスローアウェイ式開先カッターを示す斜視図である。
図6】従来技術の問題点を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態として、具体的な実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【実施例0018】
まず、実施例1の開先カッターを用いて建築構造用角形鋼管(以下、「コラム」という。)の接続端に溶接用の開先を切削加工する自動開先切削盤100の一例を説明する。
【0019】
自動開先切削盤100は、図1(A),(B)に示す様に、コラムWを載置するローラコンベア110と、ローラコンベア110の中間部に垂直に立設されたフレーム120と、フレーム120に対して水平軸周りに回転可能に支持された回動部材130とを備えている。
【0020】
回動部材130には、一対の開先カッター1,1及び倣いローラ170,170が備えられ、図1(A),(C)に示す様に、倣いローラ170をコラムWの先端部外周面に当接させた状態でスローアウェイ式開先カッター1で鋼管端部を切削し、コラムWの端部全周に溶接用の開先を加工する。
【0021】
このとき、スローアウェイ式開先カッター1,1をコラムWの端部に求心的に当接させると共に、図1(C)に示す様に、コラムWに対して点対称の位置をとらせつつ周回させる。
【0022】
スローアウェイ式開先カッター1は、図2に示す様に、開先角度に対応する傾斜面を有する円錐台状のカッタボディ2の外面に、複数個のスローアウェイチップ3,3,…及び複数個の切り屑ポケット4,4,…を中心から外周へと連続する様に配置してなるチップ列5,5,…を放射状に複数組備えている。
【0023】
各チップ列5,5,…は、それぞれ、3個又は4個のスローアウェイチップ3,3,…を、図3(B)に示す様に、中心から外周に向かって回転方向前方側へ向かう階段状の配置となる様にカッタボディ2の外面に取り付けることによって構成されている。
【0024】
複数個の切り屑ポケット4,4,…は、対応するスローアウェイチップ3,3,…のスクイ面側にそれぞれ配置され、各チップ列5,5,…ごとに連続した一連の切り屑ポケット群6,6,…を構成する様にカッタボディ2の外面に形成されている。なお、図中符号2aは、スローアウェイ式開先カッター1を自動開先切削盤100に脱着する際の棒状工具を装着するためのカッター脱着用工具装着穴である。
【0025】
これら一連の切り屑ポケット群6,6,…は、当該切り屑ポケット群を構成する3個又は4個の切り屑ポケット4,4,は、それぞれ外周側から中心側に伸び、図3(C)に示す様に、より外周側に位置する切り屑ポケットが、より中心側に位置する切り屑ポケットに部分的に入り込んだ状態となる様に連通され、各チップ列毎に相互に連続する球面状底部を形成する様に構成されている。
【0026】
また、本実施例のスローアウェイ式開先カッター1では、さらに、各スローアウェイチップ3,3,…が、半径方向のスクイ角が正の角度(好ましくは+1°~+12°)となる様にカッタボディ2に取り付けられている。
【0027】
ここで、各スローアウェイチップ3は、図3(A)に示す様に、断面がほぼ等方台形のチップ体31の長辺となる下底の両端において幅方向に伸びる縁を切れ刃とするものであって、当該下底の両端の内の一方の縁を切れ刃エッジとしたとき当該切れ刃エッジの縁で開先角度に一致する切れ刃を構成する様に、チップ体31の底面31bに密着させた状態で、押さえ金具32をネジ33で固定することにより、カッタボディ2に対して着脱可能に取り付けられている。
【0028】
これに対応する様に、カッタボディ2には、スローアウェイチップ3を収容するチップ収容溝41が、一連の切り屑ポケット群6,6,…に対して回転方向後方側から一部入り込み、各チップ体31において切れ刃エッジを入れ換えた場合にあっても開先角度及び半径方向スクイ角に一致する切れ刃を構成した状態で収容可能となる様に形成されている。また、チップ収容溝41の回転方向後方側に押さえ金具を収納する押さえ金具収納溝42を備え、当該押さえ金具収納溝42は、チップ体31をチップ収容溝41の前側壁面に押し付けた状態となる様に押さえ金具32を収納し得るものとして構成されている。
【0029】
本実施例のスローアウェイ式開先カッター1においては、図4(A)に示す様に、放射状に複数組備えた各チップ列5,5,…は、隣り合うチップ列との間でスローアウェイチップ3の半径方向の配置を異ならせつつ、同一のチップ列においては中心から外側に向かって反時計周りに前記スローアウェイチップを配置し、全体として半径方向に連続した切削可能範囲を構成する様に取り付けられている。より具体的には、本実施例のスローアウェイ式開先カッター1は、3本のチップ列を一組とするチップ列グループG1,G2,G3において、それぞれ、第1列=A,D,G,J、第2列=B,E,H,K,第3列=C,F,Iと、半径方向の配置を異ならせた配置を採用している。また、各グループ毎に見たとき、図4(B)に示す様に、AとB、BとC、CとD、…、IとJ、JとKが、それぞれ刃幅半分の重なりを有する様に配置されている。
【0030】
本実施例のスローアウェイ式開先カッター1によれば、放射状に配置された複数組のチップ列5,5,…それぞれにおいて、複数個のスローアウェイチップ3,3,…が中心から外周に向かって回転方向前方側へ向かう階段状の配置となる様に取り付けられると共に、各スローアウェイチップ3,3,…のスクイ面側に配置される切り屑ポケット4,4,…が、チップ列5ごとに連続した一連の切り屑ポケット群6,6,…を構成し、この一連の切り屑ポケット群6は、当該切り屑ポケット群6を構成する複数個の切り屑ポケット4,4,…が、それぞれ外周側から中心側に伸び、より外周側に位置する切り屑ポケットが、より中心側に位置する切り屑ポケットに部分的に入り込んだ状態となる様に連通され、各チップ列毎に相互に連続する球面状底部を形成する様に構成されているから、切り屑の排出方向がランダム化し難くなると共に、切り屑ポケット群6に沿ってカッタ前方外側へと流れ易くなる。この結果、自動開先切削盤100に当たって跳ね返る切り屑の量を減らすことができ、コラムWの上面への切り屑の蓄積を抑制することができる。また、各チップ列5,5,…に沿う様に配置される複数個の切り屑ポケット4,4,…同士を連通させ、全体として連続する球面状底部を形成する一連の切り屑ポケット群6,6,…をチップ列5毎に備えさせることで、切り屑ポケット4,4,…への切り屑の詰まりも抑制することができる。その結果、本実施例のスローアウェイ式開先カッター1は、静音性が高く精度のよい開先加工を可能にする。
【0031】
また、本実施例のスローアウェイ式開先カッター1によれば、各スローアウェイチップ3,3,…を、半径方向のスクイ角が正の角度となる様にカッタボディ2に取り付けることにより、切削抵抗が軽減され、ビビリ振動を抑制する効果が期待できる。また、切れ刃に邪魔されることなく切り屑がスムーズに排出され、カッタ後方への流れを抑制しつつ前方外側へと排出する作用をより一層高めることができる。
【0032】
さらに、本実施例のスローアウェイ式開先カッター1は、断面がほぼ等方台形のチップ体31の長辺となる下底の両端において幅方向に伸びる縁を切れ刃とするものであって、当該下底の両端の内の一方の縁を切れ刃エッジとしたとき当該切れ刃エッジの縁で開先角度に一致する切れ刃を構成する様に、チップ体31の底面31bに密着させた状態で、押さえ金具32をネジ33で固定することにより、カッタボディ2に対して着脱可能に取り付けているから、刃先が摩耗したときは押さえ金具を緩め、スローアウェイチップの切れ刃エッジを変更することで継続して切削加工することができる。このとき、スローアウェイチップをチップ収容溝にしっかりと収
【0033】
加えて、本実施例のスローアウェイ式開先カッター1では、カッタボディ2に、スローアウェイチップ3を収容するチップ収容溝41を一連の切り屑ポケット群6,6,…に対して回転方向後方側から一部入り込み、各チップ体31において切れ刃エッジを入れ換えた場合にあっても開先角度及び半径方向スクイ角に一致する切れ刃を構成した状態で収容可能となる様に形成し、チップ収容溝41の回転方向後方側に押さえ金具を収納する押さえ金具収納溝42を備えさせ、当該押さえ金具収納溝42を、チップ体31をチップ収容溝41の前側壁面に押し付けた状態となる様に押さえ金具32を収納し得るものとしているから、チップ本体31をチップ収容溝41にしっかりと収納しかつその前側壁面に押し付けた状態となる様に押さえ金具で押さえることにより、チップ本体31にガタツキを生じ難く、かつ、開先角度及び半径方向スクイ角を適正な角度とする取り付けを容易に実施することができる。
【0034】
また、本実施例のスローアウェイ式開先カッター1では、各チップ列5,5,…を、隣り合うチップ列との間ではスローアウェイチップの半径方向の配置を異ならせつつ、同一のチップ列においては中心から外側に向かって反時計周りに前記スローアウェイチップを配置し、全体として半径方向に連続した切削可能範囲を構成する様に取り付けられているから、切り屑の排出方向を安定させつつ各種口径のコラムに対して開先加工を適切に実施することができる。
【0035】
そして、本実施例のスローアウェイ式開先カッタ1は、特に、コラムWの端部に開先加工を行う自動開先切削盤100の一対のスピンドルの先端に取り付け、コラムWの端部に求心的に当接させると共に、スピンドルと同軸上の前方側に配置した倣いローラ170,170をコラムWの外面に当接させた状態を維持しつつスピンドルを駆動し、求心的に当接させた一対の開先カッター1,1にコラムWに対して点対称の位置をとらせつつ周回させることにより、切り屑のカッター後方へのランダムな排出を抑制し、切り屑をカッター前方外側へと排出するから、切り屑がコラムWの上面に蓄積され難いという作用を発揮する。
【0036】
以上、発明を実施するための最良の形態としての実施例を説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内における種々の変更が可能である。
【0037】
例えば、図5に示す様に、チップ列ごとに配置するスローアウェイチップの個数を代えたもの1B,1Cも本発明の要旨を逸脱するものではない。加えて、カッター回転方向を逆方向とする場合は、上述した実施例におけるスローアウェイカッタ3と切り屑ポケット4の位置を左右逆転させた配置とすればよい。また、本発明のスローアウェイ式開先カッタは、コラムWに限らず、H型鋼や平鋼板など各種鋼材に対して開先加工を施す際に用いることができる。さらに、押さえ金を用いることなく、カッタボディの表面に沿わせる様にスローアウェイチップをねじ止め固定するタイプの開先カッターにおけるチップ列及び切り屑ポケット群の配置について、本発明の構成を採用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は角形鋼管やH型鋼、平鋼板など各種鋼材の端部やエッジに溶接用の開先加工に利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1,1B,1C・・・スローアウェイ式開先カッター、2・・・カッタボディ、2a・・・カッター脱着用工具装着穴、3・・・スローアウェイチップ、4・・・切り屑ポケット、5・・・チップ列、6・・・切り屑ポケット群、31・・・チップ体、32・・・押さえ金具、33・・・ネジ、41・・・チップ収容溝、42・・・押さえ金具収納溝。
G1,G2,G3・・・チップ列グループ、W・・・コラム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-11-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開先角度に対応する傾斜面を有する円錐台状のカッタボディの外面に、複数個のスローアウェイチップ及び複数個の切り屑ポケットを中心から外周へと連続する様に配置してなるチップ列を放射状に複数組備えた開先カッターであって、さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とするスローアウェイ式開先カッター。
(1A)前記各チップ列は、前記複数個のスローアウェイチップを、中心から外周に向かって回転方向前方側へ向かう階段状の配置となる様に前記カッタボディの外面に取り付けることによって構成されていること。
(1B)前記複数個の切り屑ポケットは、前記複数個のスローアウェイチップのスクイ面側にそれぞれ配置され、前記各チップ列ごとに連続した一連の切り屑ポケット群を構成する様に前記カッタボディの外面に形成されていること。
(1C)前記一連の切り屑ポケット群は、当該切り屑ポケット群を構成する前記複数個の切り屑ポケットは、それぞれ外周側から中心側に伸び、より外周側に位置する切り屑ポケットが、より中心側に位置する切り屑ポケットに部分的に入り込んだ状態となる様に連通され、前記各チップ列毎に相互に連続する球面状底部を形成する様に構成されていること
2)前記各スローアウェイチップは、半径方向のスクイ角が正の角度となる様に前記カッタボディに取り付けられていること。
【請求項2】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項に記載のスローアウェイ式開先カッター。
(3A)前記各スローアウェイチップは、断面がほぼ等方台形で、当該等方台形の長辺となる下底の両端において幅方向に伸びる縁を切れ刃とするものであって、前記下底の両端の内の一方の縁を切れ刃エッジとしたとき、当該切れ刃エッジの縁で前記開先角度に一致する切れ刃を構成する様に押さえ金具を介して前記カッタボディに対して着脱可能に取り付けられていること。
(3B)前記カッタボディには、前記スローアウェイチップを収容するチップ収容溝が、前記一連の切り屑ポケット群に対して回転方向後方側から一部入り込み、前記各チップにおいて前記切れ刃エッジを入れ換えた場合にあっても前記開先角度及び前記半径方向スクイ角に一致する切れ刃を構成した状態で収容可能となる様に形成されていること。
(3C)前記チップ収容溝の回転方向後方側に前記押さえ金具を収納する押さえ金具収納溝を備え、当該押さえ金具収納溝は、前記スローアウェイチップを前記チップ収容溝の前側壁面に押し付けた状態となる様に前記押さえ金具を収納し得るものとして構成されていること。
(3D)放射状に複数組備えた前記各チップ列は、隣り合うチップ列との間では前記スローアウェイチップの半径方向の配置を異ならせつつ、同一のチップ列においては中心から外側に向かって反時計周りに前記スローアウェイチップを配置し、全体として半径方向に連続した切削可能範囲を構成する様に取り付けられていること。