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特開2024-31194温室効果ガス濃度の測定方法、温室効果ガス濃度の測定システムのプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031194
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】温室効果ガス濃度の測定方法、温室効果ガス濃度の測定システムのプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01W 1/00 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
G01W1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134600
(22)【出願日】2022-08-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年11月26日~令和4年7月25日に自社ウェブサイトのページに資料アップロードで掲載 http://www.isem.co.jp/Environment/CO2MonitoringSystem/CO2MonitoringSystemDetail.pdf
(71)【出願人】
【識別番号】522340808
【氏名又は名称】株式会社アイエスイーエム
(74)【代理人】
【識別番号】100168538
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 来
(72)【発明者】
【氏名】宮西 洋太郎
(57)【要約】
【課題】屋外の測定において標準ガスを用いた較正を行わなくても実用的な精度をもった値を算出することができる温室効果ガス濃度の測定方法を提供する。
【解決手段】温室効果ガス濃度の測定方法は、基準局における所定期間の公表されたデータに基づいて基準局の傾向パラメータを抽出する基準局傾向パラメータ抽出ステップS2と、計測地点における所定期間のデータに基づいて計測地点の傾向パラメータを算出する計測地点傾向パラメータ算出ステップS3と、計測地点の傾向パラメータが基準局の傾向パラメータに一致するように、計測地点の計測値を変換する計測値変換ステップS4とを備える。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準局と異なる地点である計測地点におけるセンサーを用いた温室効果ガス濃度の測定方法であって、
前記基準局における所定期間の公表されたデータに基づいて基準局の傾向パラメータを抽出する基準局傾向パラメータ抽出ステップと、
前記計測地点における所定期間のデータに基づいて計測地点の傾向パラメータを算出する計測地点傾向パラメータ算出ステップと、
前記計測地点の傾向パラメータが基準局の傾向パラメータに一致するように、計測地点の計測値を変換する計測値変換ステップとを備えることを特徴とする温室効果ガス濃度の測定方法。
【請求項2】
前記所定期間におけるi番目の日、1日のうちのj番目の時間として基準局の公表値S、計測地点の計測値Cとし、i日のj時の基準局の公表値Sij、i日のj時の単位間隔内の計測回数目kの計測地点の計測値Cijkとし、
前記基準局傾向パラメータ抽出ステップにおいて、所定期間における第1変域である日にちi毎に第2変域である時刻jについての基準局の公表値Sijの最小値MinSi=Min(Sij)|jを求めてから、求めた基準局の公表値Sijの最小値MinSi=Min(Sij)|jのうちのさらに第1変域である日にちiについての最小値MinS=Min(MinSi)|iを求め、
前記計測地点傾向パラメータ算出ステップにおいて、所定期間における第1変域である日にちi毎、第2変域である時刻j毎、および、第3変域である第2変域の単位間隔内の計測回数kについて計測地点の計測値Cijkを第3変域の計測回数kで平均化した平均値AvCij=Average(Cijk)|kを求めてから、求めた平均値AvCij=Average(Cijk)|kのうちの第2変域である時刻jについての最小値MinAvCi=Min(AvCij)|jを求めて、求めた最小値MinAvCi=Min(AvCij)|jのうちのさらに第1変域である日にちiについての最小値MinC=MinMinAvC=Min(MinAvCi)|iを求め、
前記計測値変換ステップにおいて、擬似的較正値C0Cijk=Cijk+(MinS-MinC)とすることを特徴とする請求項1に記載の温室効果ガス濃度の測定方法。
【請求項3】
前記所定期間におけるi番目の日、1日のうちのj番目の時間として基準局の公表値S、計測地点の計測値Cとし、i日のj時の基準局の公表値Sij、i日のj時の単位間隔内の計測回数目kの計測地点の計測値Cijkとし、
前記基準局傾向パラメータ抽出ステップにおいて、所定期間における第1変域である日にちi毎に第2変域である時刻jについての基準局の公表値Sijの最小値MinSi=Min(Sij)|jを求めてから、求めた基準局の公表値Sijの最小値MinSi=Min(Sij)|jのうちのさらに第1変域である日にちiについての最小値MinS=Min(MinSi)|iを求めるとともに、基準局の公表値Sijの第1変域である日にちiおよび第2変域である時刻jについての中央値MdS=Median(Sij)|i,jを求め、
前記計測地点傾向パラメータ算出ステップにおいて、所定期間における第1変域である日にちi毎、第2変域である時刻j毎、および、第3変域である第2変域の単位間隔内の計測回数kについて計測地点の計測値Cijkを第3変域の計測回数kで平均化した平均値AvCij=Average(Cijk)|kを求めてから、求めた平均値AvCij=Average(Cijk)|kのうちの第2変域である時刻jについての最小値MinAvCi=Min(AvCij)|jを求めて、求めた最小値MinAvCi=Min(AvCij)|jのうちのさらに第1変域である日にちiについての最小値MinC=MinMinAvC=Min(MinAvCi)|iを求めるとともに、計測地点の計測値Cijkの平均値AvCijの第1変域である日にちiおよび第2変域である時刻jについての中央値MdC=Median(AvCij)|i,jを求め、
前記計測値変換ステップにおいて、
MinS=A×MinC+B、
MdS=A×MdC+B
から求めたA、Bを用いて、擬似的較正値C1Cijk=A×Cijk+Bとすることを特徴とする請求項1に記載の温室効果ガス濃度の測定方法。
【請求項4】
前記所定期間におけるi番目の日、1日のうちのj番目の時間として基準局の公表値S、計測地点の計測値Cとし、i日のj時の基準局の公表値Sij、i日のj時の単位間隔内の計測回数目kの計測地点の計測値Cijkとし、
前記基準局傾向パラメータ抽出ステップにおいて、所定期間における第1変域である日にちi毎に第2変域である時刻jについての基準局の公表値Sijの最小値MinSi=Min(Sij)|jを求めてから、求めた基準局の公表値Sijの最小値MinSi=Min(Sij)|jのうちのさらに第1変域である日にちiについての最小値MinS=Min(MinSi)|iを求めるとともに、基準局の公表値Sijの第1変域である日にちiについての平均値AvS=Average(AvSi)|iを求め、
前記計測地点傾向パラメータ算出ステップにおいて、所定期間における第1変域である日にちi毎、第2変域である時刻j毎、および、第3変域である第2変域の単位間隔内の計測回数kについて計測地点の計測値Cijkを第3変域の計測回数kで平均化した平均値AvCij=Average(Cijk)|kを求めてから、求めた平均値AvCij=Average(Cijk)|kのうちの第2変域である時刻jについての最小値MinAvCi=Min(AvCij)|jを求めて、求めた最小値MinAvCi=Min(AvCij)|jのうちのさらに第1変域である日にちiについての最小値MinC=MinMinAvC=Min(MinAvCi)|iを求めるとともに、計測地点の計測値Cijkの平均値AvCijの第1変域である日にちiについての平均値AvC=AvAvAvC=Average(AvAvCi)|iを求め、
前記計測値変換ステップにおいて、
MinS=A×MinC+B、
AvS=A×AvC+B
から求めたA、Bを用いて、擬似的較正値C1Cijk=A×Cijk+Bとすることを特徴とする請求項1に記載の温室効果ガス濃度の測定方法。
【請求項5】
前記所定期間におけるi番目の日、1日のうちのj番目の時間として基準局の公表値S、計測地点の計測値Cとし、i日のj時の基準局の公表値Sij、i日のj時の単位間隔内の計測回数目kの計測地点の計測値Cijkとし、
前記基準局傾向パラメータ抽出ステップにおいて、所定期間における第1変域である日にちi毎に第2変域である時刻jについての基準局の公表値Sijの最小値MinSi=Min(Sij)|jを求めてから、求めた基準局の公表値Sijの最小値MinSi=Min(Sij)|jのうちのさらに第1変域である日にちiについての最小値MinS=Min(MinSi)|iを求めるとともに、
基準局の公表値Sijの第1変域である日にちiおよび第2変域である時刻jについての中央値MdS=Median(Sij)|i,j、
または、基準局の公表値Sijの第1変域である日にちiについての平均値AvS=Average(AvSi)|iを求め、
前記計測地点傾向パラメータ算出ステップにおいて、所定期間における第1変域である日にちi毎、第2変域である時刻j毎、および、第3変域である第2変域の単位間隔内の計測回数kについて計測地点の計測値Cijkを第3変域の計測回数kで平均化した平均値AvCij=Average(Cijk)|kを求めてから、求めた平均値AvCij=Average(Cijk)|kのうちの第2変域である時刻jについての最小値MinAvCi=Min(AvCij)|jを求めて、求めた最小値MinAvCi=Min(AvCij)|jのうちのさらに第1変域である日にちiについての最小値MinC=MinMinAvC=Min(MinAvCi)|iを求めるとともに、
計測地点の計測値Cijkの平均値AvCijの第1変域である日にちiおよび第2変域である時刻jについての中央値MdC=Median(AvCij)|i,j、
または、計測地点の計測値Cijkの平均値AvCijの第1変域である日にちiについての平均値AvC=AvAvAvC=Average(AvAvCi)|iを求め、
前記計測値変換ステップにおいて、
0<w<1として、
C0Cijk=Cijk+(MinS-MinC)、
C1Cijk=A×Cijk+B
の両者加重平均として、擬似的較正値CwCijk=(1-w)×C0Cijk+w×C1Cijkとすることを特徴とする請求項1に記載の温室効果ガス濃度の測定方法。
【請求項6】
基準局と異なる地点である計測地点におけるセンサーを用いた温室効果ガス濃度の測定システムのプログラムであって、
前記基準局における所定期間の公表されたデータに基づいて基準局の傾向パラメータを抽出する基準局傾向パラメータ抽出ステップと、
前記計測地点における所定期間のデータに基づいて計測地点の傾向パラメータを算出する計測地点傾向パラメータ算出ステップと、
前記計測地点の傾向パラメータが基準局の傾向パラメータに一致するように、計測地点の計測値を変換する計測値変換ステップとを備えることを特徴とする温室効果ガス濃度の測定システムのプログラム。
【請求項7】
基準局と異なる地点である計測地点におけるセンサーを用いた温室効果ガス濃度の測定システムのプログラムであって、
前記基準局における第1所定期間の公表されたデータに基づいて第1所定期間より後の基準局の2年分以上の予測期間の予測値を算出する予測値算出ステップと、
前記第1所定期間より後であって予測期間内である第2所定期間の計測地点におけるデータに基づいて計測地点の傾向パラメータを算出する計測地点傾向パラメータ算出ステップと、
前記計測地点の傾向パラメータが基準局の傾向としての予測値に一致するように、計測地点の計測値を変換する計測値変換ステップとを備えることを特徴とする温室効果ガス濃度の測定システムのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準局と異なる地点である計測地点におけるセンサーを用いた温室効果ガス濃度の測定方法、および、温室効果ガス濃度の測定システムのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象空間における温室効果ガスの一例としてのCO2濃度を定周期で測定するCO2濃度測定手段と、外気のCO2濃度として定められた所定の値を基準値として記憶する基準値記憶手段と、測定対象空間におけるCO2濃度が測定される毎に、その測定されたCO2濃度の測定値とその測定されたCO2濃度の移動平均値との差を求め、その差が所定時間継続して予め定められた許容範囲内に入り続けた場合、CO2濃度の測定値が飽和したと判断するCO2濃度飽和判断手段と、CO2濃度飽和判断手段によって飽和したと判断されたCO2濃度の測定値をベースラインとし、このベースラインを基準値に置き換えるベースライン補正手段とを備えるベースライン補正装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-120114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のベースライン補正装置は、建物内を測定対象空間としており、CO2濃度の測定値が飽和したか否かを判定して、飽和したと判定した場合にそのCO2濃度の測定値をベースラインとする構成であったため、屋外におけるCO2濃度の測定には、対応することが困難であるという問題があった。
言い換えると、屋外においてCO2濃度を測定する場合、精度よく測定することが困難であるという問題があった。
また、我が国においても気象庁や国立環境研究所や埼玉県では大気中のCO2濃度を定点観測しているが、年に2~3ppmの上昇が観測されている。
このような公式の観測では、標準ガスを用いて常時、較正(calibration)を行っているため非常に高精度(±0.02ppm)で観測されているが、そのための観測機器およびそれに付帯する設備や施設が高額であるため、限られた地点での観測となっている。
他方、比較的安価なセンサーを用いた場合、1週間程度の計測値のうち、最小の値を、規定値(たとえば400ppm)に強制的に一致させ、その差分値ですべての計測値を修正する機能を備えているものもあるが、長期的には、大気中のCO2濃度は年々増加していることおよび季節(シーズン)によって最小値が変化していることから、規定値を一定とすると誤差が年々大きくなったり、季節によって誤差が大きくなってしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、屋外の測定において標準ガスを用いた較正を行わなくても実用的な精度をもった値を算出することができる温室効果ガス濃度の測定方法、および、温室効果ガス濃度の測定システムのプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本請求項1に係る発明は、基準局と異なる地点である計測地点におけるセンサーを用いた温室効果ガス濃度の測定方法であって、前記基準局における所定期間の公表されたデータに基づいて基準局の傾向パラメータを抽出する基準局傾向パラメータ抽出ステップと、前記計測地点における所定期間のデータに基づいて計測地点の傾向パラメータを算出する計測地点傾向パラメータ算出ステップと、前記計測地点の傾向パラメータが基準局の傾向パラメータに一致するように、計測地点の計測値を変換する計測値変換ステップとを備えることにより、前述した課題を解決するものである。
ここで、「基準局」とは、標準ガスを用いて常時、較正(calibration)を行っていて非常に高精度で観測している観測データを公開している観測局のことをいう。
また、「傾向パラメータ」とは、計測地点でのある所定の観察期間(例えば、半月程度)における温室効果ガス濃度の傾向を代表的に示すパラメータ(変数)をいい、本発明では、当該期間における移動平均値、最小値、平均値、中央値を用いている。
【0007】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載された温室効果ガス濃度の測定方法の構成に加えて、前記所定期間におけるi番目の日、1日のうちのj番目の時間として基準局の公表値S、計測地点の計測値Cとし、i日のj時の基準局の公表値Sij、i日のj時の単位間隔内の計測回数目kの計測地点の計測値Cijkとし、前記基準局傾向パラメータ抽出ステップにおいて、所定期間における第1変域である日にちi毎に第2変域である時刻jについての基準局の公表値Sijの最小値MinSi=Min(Sij)|jを求めてから、求めた基準局の公表値Sijの最小値MinSi=Min(Sij)|jのうちのさらに第1変域である日にちiについての最小値MinS=Min(MinSi)|iを求め、前記計測地点傾向パラメータ算出ステップにおいて、所定期間における第1変域である日にちi毎、第2変域である時刻j毎、および、第3変域である第2変域の単位間隔内の計測回数kについて計測地点の計測値Cijkを第3変域の計測回数kで平均化した平均値AvCij=Average(Cijk)|kを求めてから、求めた平均値AvCij=Average(Cijk)|kのうちの第2変域である時刻jについての最小値MinAvCi=Min(AvCij)|jを求めて、求めた最小値MinAvCi=Min(AvCij)|jのうちのさらに第1変域である日にちiについての最小値MinC=MinMinAvC=Min(MinAvCi)|iを求め、前記計測値変換ステップにおいて、擬似的較正値C0Cijk=Cijk+(MinS-MinC)とすることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0008】
本請求項3に係る発明は、請求項1に記載された温室効果ガス濃度の測定方法の構成に加えて、前記所定期間におけるi番目の日、1日のうちのj番目の時間として基準局の公表値S、計測地点の計測値Cとし、i日のj時の基準局の公表値Sij、i日のj時の単位間隔内の計測回数目kの計測地点の計測値Cijkとし、前記基準局傾向パラメータ抽出ステップにおいて、所定期間における第1変域である日にちi毎に第2変域である時刻jについての基準局の公表値Sijの最小値MinSi=Min(Sij)|jを求めてから、求めた基準局の公表値Sijの最小値MinSi=Min(Sij)|jのうちのさらに第1変域である日にちiについての最小値MinS=Min(MinSi)|iを求めるとともに、基準局の公表値Sijの第1変域である日にちiおよび第2変域である時刻jについての中央値MdS=Median(Sij)|i,jを求め、前記計測地点傾向パラメータ算出ステップにおいて、所定期間における第1変域である日にちi毎、第2変域である時刻j毎、および、第3変域である第2変域の単位間隔内の計測回数kについて計測地点の計測値Cijkを第3変域の計測回数kで平均化した平均値AvCij=Average(Cijk)|kを求めてから、求めた平均値AvCij=Average(Cijk)|kのうちの第2変域である時刻jについての最小値MinAvCi=Min(AvCij)|jを求めて、求めた最小値MinAvCi=Min(AvCij)|jのうちのさらに第1変域である日にちiについての最小値MinC=MinMinAvC=Min(MinAvCi)|iを求めるとともに、計測地点の計測値Cijkの平均値AvCijの第1変域である日にちiおよび第2変域である時刻jについての中央値MdC=Median(AvCij)|i,jを求め、前記計測値変換ステップにおいて、MinS=A×MinC+B、MdS=A×MdC+Bから求めたA、Bを用いて、擬似的較正値C1Cijk=A×Cijk+Bとすることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0009】
本請求項4に係る発明は、請求項1に記載された温室効果ガス濃度の測定方法の構成に加えて、前記所定期間におけるi番目の日、1日のうちのj番目の時間として基準局の公表値S、計測地点の計測値Cとし、i日のj時の基準局の公表値Sij、i日のj時の単位間隔内の計測回数目kの計測地点の計測値Cijkとし、前記基準局傾向パラメータ抽出ステップにおいて、所定期間における第1変域である日にちi毎に第2変域である時刻jについての基準局の公表値Sijの最小値MinSi=Min(Sij)|jを求めてから、求めた基準局の公表値Sijの最小値MinSi=Min(Sij)|jのうちのさらに第1変域である日にちiについての最小値MinS=Min(MinSi)|iを求めるとともに、基準局の公表値Sijの第1変域である日にちiについての平均値AvS=Average(AvSi)|iを求め、前記計測地点傾向パラメータ算出ステップにおいて、所定期間における第1変域である日にちi毎、第2変域である時刻j毎、および、第3変域である第2変域の単位間隔内の計測回数kについて計測地点の計測値Cijkを第3変域の計測回数kで平均化した平均値AvCij=Average(Cijk)|kを求めてから、求めた平均値AvCij=Average(Cijk)|kのうちの第2変域である時刻jについての最小値MinAvCi=Min(AvCij)|jを求めて、求めた最小値MinAvCi=Min(AvCij)|jのうちのさらに第1変域である日にちiについての最小値MinC=MinMinAvC=Min(MinAvCi)|iを求めるとともに、計測地点の計測値Cijkの平均値AvCijの第1変域である日にちiについての平均値AvC=AvAvAvC=Average(AvAvCi)|iを求め、前記計測値変換ステップにおいて、MinS=A×MinC+B、AvS=A×AvC+Bから求めたA、Bを用いて、擬似的較正値C1Cijk=A×Cijk+Bとすることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0010】
本請求項5に係る発明は、請求項1に記載された温室効果ガス濃度の測定方法の構成に加えて、前記所定期間におけるi番目の日、1日のうちのj番目の時間として基準局の公表値S、計測地点の計測値Cとし、i日のj時の基準局の公表値Sij、i日のj時の単位間隔内の計測回数目kの計測地点の計測値Cijkとし、前記基準局傾向パラメータ抽出ステップにおいて、所定期間における第1変域である日にちi毎に第2変域である時刻jについての基準局の公表値Sijの最小値MinSi=Min(Sij)|jを求めてから、求めた基準局の公表値Sijの最小値MinSi=Min(Sij)|jのうちのさらに第1変域である日にちiについての最小値MinS=Min(MinSi)|iを求めるとともに、基準局の公表値Sijの第1変域である日にちiおよび第2変域である時刻jについての中央値MdS=Median(Sij)|i,j、または、基準局の公表値Sijの第1変域である日にちiについての平均値AvS=Average(AvSi)|iを求め、前記計測地点傾向パラメータ算出ステップにおいて、所定期間における第1変域である日にちi毎、第2変域である時刻j毎、および、第3変域である第2変域の単位間隔内の計測回数kについて計測地点の計測値Cijkを第3変域の計測回数kで平均化した平均値AvCij=Average(Cijk)|kを求めてから、求めた平均値AvCij=Average(Cijk)|kのうちの第2変域である時刻jについての最小値MinAvCi=Min(AvCij)|jを求めて、求めた最小値MinAvCi=Min(AvCij)|jのうちのさらに第1変域である日にちiについての最小値MinC=MinMinAvC=Min(MinAvCi)|iを求めるとともに、計測地点の計測値Cijkの平均値AvCijの第1変域である日にちiおよび第2変域である時刻jについての中央値MdC=Median(AvCij)|i,j、または、計測地点の計測値Cijkの平均値AvCijの第1変域である日にちiについての平均値AvC=AvAvAvC=Average(AvAvCi)|iを求め、前記計測値変換ステップにおいて、0<w<1として、C0Cijk=Cijk+(MinS-MinC)、C1Cijk=A×Cijk+Bの両者加重平均として、擬似的較正値CwCijk=(1-w)×C0Cijk+w×C1Cijkとすることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0011】
本請求項6に係る発明は、基準局と異なる地点である計測地点におけるセンサーを用いた温室効果ガス濃度の測定システムのプログラムであって、前記基準局における所定期間の公表されたデータに基づいて基準局の傾向パラメータを抽出する基準局傾向パラメータ抽出ステップと、前記計測地点における所定期間のデータに基づいて計測地点の傾向パラメータを算出する計測地点傾向パラメータ算出ステップと、前記計測地点の傾向パラメータが基準局の傾向パラメータに一致するように、計測地点の計測値を変換する計測値変換ステップとを備えることにより、前述した課題を解決するものである。
【0012】
本請求項7に係る発明は、基準局と異なる地点である計測地点におけるセンサーを用いた温室効果ガス濃度の測定システムのプログラムであって、前記基準局における第1所定期間の公表されたデータに基づいて第1所定期間より後の基準局の2年分以上の予測期間の予測値を算出する予測値算出ステップと、前記第1所定期間より後であって予測期間内である第2所定期間の計測地点におけるデータに基づいて計測地点の傾向パラメータを算出する計測地点傾向パラメータ算出ステップと、前記計測地点の傾向パラメータが基準局の傾向としての予測値に一致するように、計測地点の計測値を変換する計測値変換ステップとを備えることにより、前述した課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0013】
本請求項1に係る発明の温室効果ガス濃度の測定方法によれば、標準ガスを用いた較正を行っている基準局のデータの傾向パラメータに対して標準ガスを用いた較正を行っていない計測地点の傾向パラメータを一致させるように計測地点の計測値が変換されるため、標準ガスを用いた較正を行わなくても実用的な精度をもった値を算出することができる。
つまり、直接的に標準ガスを用いる較正を行う代わりに、標準ガスを用いた較正を行っている基準局のデータを活用して、間接的に計測地点のデータを擬似的に較正することができる。
【0014】
本請求項2に係る発明の温室効果ガス濃度の測定方法によれば、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、基準局の最小値MinSと、計測地点の最小値MinCとが一致する所謂、1点補正となるため、標準ガスを用いた較正を行わなくても実用的な精度をもった値を算出することができる。
特に、最小値にはシーズンの変化の傾向がよく表れるため、算出した値に実用的な精度をもたせることができる。
【0015】
本請求項3に係る発明の温室効果ガス濃度の測定方法によれば、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、基準局の最小値MinSと、計測地点の最小値MinCとが一致し、基準局の中央値MdSと、計測地点の中央値MdCとが一致する所謂、2点補正となるため、標準ガスを用いた較正を行わなくても実用的な精度をもった値を算出することができる。
特に、最小値および中央値にはシーズンの変化の傾向がよく表れるため、算出した値に実用的な精度をもたせることができる。
【0016】
本請求項4に係る発明の温室効果ガス濃度の測定方法によれば、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、基準局の最小値MinSと、計測地点の最小値MinCとが一致し、基準局の平均値AvSと、計測地点の平均値AvCとが一致する所謂、2点補正となるため、標準ガスを用いた較正を行わなくても実用的な精度をもった値を算出することができる。
特に、最小値および平均値にはシーズンの変化の傾向がよく表れるため、算出した値に実用的な精度をもたせることができる。
【0017】
本請求項5に係る発明の温室効果ガス濃度の測定方法によれば、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、基準局の最小値MinSと、計測地点の最小値MinCとが一致する所謂、1点補正、または、これに加えて、基準局の中央値MdSと計測地点の中央値MdCとが一致する、もしくは、基準局の平均値AvSと計測地点の平均値AvCとが一致する所謂、2点補正の中間となるため、標準ガスを用いた較正を行わなくても実用的な精度をもった値を算出することができる。
【0018】
本請求項6に係る発明の温室効果ガス濃度の測定システムのプログラムによれば、請求項1に係る発明が奏する効果と同様、標準ガスを用いた較正を行っている基準局のデータの傾向パラメータに対して標準ガスを用いた較正を行っていない計測地点の傾向パラメータを一致させるように計測地点の計測値が変換されるため、標準ガスを用いた較正を行わなくても実用的な精度をもった値を算出することができる。
つまり、直接的に標準ガスを用いる較正を行う代わりに、標準ガスを用いた較正を行っている基準局のデータを活用して、間接的に計測地点のデータを擬似的に較正することができる。
【0019】
本請求項7に係る発明の温室効果ガス濃度の測定システムのプログラムによれば、請求項1および請求項6に係る発明が奏する効果と同様、標準ガスを用いた較正を行っている基準局のデータに基づいた予測値に対して標準ガスを用いた較正を行っていない計測地点の傾向パラメータを一致させるように計測地点の計測値が変換されるため、標準ガスを用いた較正を行わなくても実用的な精度をもった値を算出することができる。
つまり、直接的に標準ガスを用いる較正を行う代わりに、標準ガスを用いた較正を行っている基準局のデータに基づいた予測値を活用して、間接的に計測地点のデータを擬似的に較正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施例である二酸化炭素濃度の測定システムの概念を示す図。
図2】本発明の第1実施例である二酸化炭素濃度の測定システムの動作例(測定方法)を示すチャート図。
図3】本発明の第1実施例である基準局としての騎西における二酸化炭素濃度のデータの例を示すグラフ図。
図4】本発明の第1実施例である基準局としての騎西における二酸化炭素濃度のデータの日毎の最小値、最大値、平均値、中央値の例を示すグラフ図。
図5】(A)(B)は基準局の一例である綾里、南鳥島、与那国島における二酸化炭素濃度の経年変化を示すグラフ図および二酸化炭素濃度の年あたりの増加量を示すグラフ図。
図6】基準局としての騎西における二酸化炭素濃度のデータと計測地点である日本橋における二酸化炭素濃度のデータ(疑似的較正なし)とを示すグラフ図。
図7図6において本発明の第1実施例である二酸化炭素濃度の測定方法を計測地点である日本橋における二酸化炭素濃度のデータに対して適用して疑似的較正(最小値で1点補正)したグラフ図。
図8図6において本発明の第1実施例である二酸化炭素濃度の測定方法を計測地点である日本橋における二酸化炭素濃度のデータに対して適用して疑似的較正(平均値で2点補正、1点補正と2点補正との中間で補正)したグラフ図。
図9】本発明の第2実施例である予測値を算出した場合の予測値算出ステップについてのチャート図。
図10】本発明の第2実施例である予測値を算出した場合の計測地点傾向パラメータ算出ステップ、計測値変換ステップについてのチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の温室効果ガス濃度の測定方法や測定システムのプログラムは、基準局における所定期間の公表されたデータに基づいて基準局の傾向パラメータを抽出する基準局傾向パラメータ抽出ステップと、計測地点における所定期間のデータに基づいて計測地点の傾向パラメータを算出する計測地点傾向パラメータ算出ステップと、計測地点の傾向パラメータが基準局の傾向パラメータに一致するように、計測地点の計測値を変換する計測値変換ステップとを備えることにより、直接的に標準ガスを用いる較正を行う代わりに、標準ガスを用いた較正を行っている基準局のデータを活用して、間接的に計測地点のデータを擬似的に較正することができるものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
また、本発明の実施例である温室効果ガス濃度の測定方法や測定システムのプログラムは、基準局における第1所定期間の公表されたデータに基づいて第1所定期間より後の基準局の2年分以上の予測期間の予測値を算出する予測値算出ステップと、第1所定期間より後であって予測期間内である第2所定期間の計測地点におけるデータに基づいて計測地点の傾向パラメータを算出する計測地点傾向パラメータ算出ステップと、計測地点の傾向パラメータが基準局の傾向としての予測値に一致するように、計測地点の計測値を変換する計測値変換ステップとを備えることにより、直接的に標準ガスを用いる較正を行う代わりに、標準ガスを用いた較正を行っている基準局STのデータを活用して、間接的に計測地点CTのデータを擬似的に較正することができるものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0022】
基準局傾向パラメータ抽出ステップ、計測地点傾向パラメータ算出ステップについては、計測方法、プログラムに含まれていればよく、基準局傾向パラメータ抽出ステップ、計測地点傾向パラメータ算出ステップの順番については、どちらが先でもよい。
これと同様に、予測値算出ステップ、計測地点傾向パラメータ算出ステップについては、計測方法、プログラムに含まれていればよく、予測値算出ステップ、計測地点傾向パラメータ算出ステップの順番については、どちらが先でもよい。
また、「温室効果ガス」とは、太陽から放出される熱を地球に閉じ込めて、地表を温める働きがあるガスをいい、「温室効果ガス」には、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、代替フロン類(ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、六ふっ化硫黄、三ふっ化窒素)がある。
【実施例0023】
以下に、本発明の第1実施例である温室効果ガス濃度の一例としての二酸化炭素濃度の計測方法、測定システム100、そのプログラムについて、図1乃至図8に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の第1実施例である二酸化炭素濃度の測定システム100の概念を示す図であり、図2は、本発明の第1実施例である二酸化炭素濃度の測定システム100の動作例(測定方法)を示すチャート図であり、図3は、本発明の第1実施例である基準局STとしての騎西における二酸化炭素濃度のデータの例を示すグラフ図であり、図4は、本発明の第1実施例である基準局STとしての騎西における二酸化炭素濃度のデータの日毎の最小値、最大値、平均値、中央値の例を示すグラフ図であり、図5(A)は、基準局STの一例である綾里、南鳥島、与那国島における二酸化炭素濃度の経年変化を示すグラフ図であり、図5(B)は、綾里、南鳥島、与那国島における二酸化炭素濃度の年あたりの増加量を示すグラフ図であり、図6は、基準局STとしての騎西における二酸化炭素濃度のデータと計測地点CTである東京都日本橋屋外における二酸化炭素濃度のデータ(疑似的較正なし)とを示すグラフ図であり、図7は、図6において本発明の第1実施例である二酸化炭素濃度の測定方法を計測地点CTである東京都日本橋屋外における二酸化炭素濃度のデータに対して適用して疑似的較正(最小値で1点補正)したグラフ図であり、図8は、図6において本発明の第1実施例である二酸化炭素濃度の測定方法を計測地点CTである東京都日本橋屋外における二酸化炭素濃度のデータに対して適用して疑似的較正(平均値で2点補正、1点補正と2点補正との中間で補正)したグラフ図である。
【0024】
本実施例では、「温室効果ガス」の一例として二酸化炭素の濃度の測定について説明する。
本発明の第1実施例である二酸化炭素濃度の測定システム100は、図1に示すように、基準局STと異なる地点である計測地点CTにおけるセンサー110と、一例であるクラウド型のサーバ120と、ユーザー端末130とを備えている。
センサー110は、マイコン端末111と接続され、センサー110で得た計測データは、マイコン端末111を介してサーバ120へ送信される。
また、サーバ120は、基準局STから直接、または、基準局STのデータを公表している別サーバから間接的に、基準局STにおける所定期間の公表されたデータを取得する。
ここで、基準局STは、標準ガスを用いて常時、較正(calibration)を行っている観測機器ST1を有し、非常に高精度(±0.02ppm)で観測を実施している。
【0025】
そして、サーバ120は、基準局STにおける所定期間の公表されたデータに基づいて基準局STの傾向パラメータを抽出する。
さらに、受信した計測地点CTにおける所定期間のデータに基づいて計測地点CTの傾向パラメータを算出する。
また、計測地点CTの傾向パラメータが基準局STの傾向パラメータに一致するように、計測地点CTの計測値を変換する。
そして、ユーザー端末130が、サーバ120にアクセスし、変換された計測値を表示するように構成されている。
【0026】
これにより、標準ガスを用いた較正を行っている基準局STのデータの傾向パラメータに対して標準ガスを用いた較正を行っていない計測地点CTの傾向パラメータを一致させるように計測地点CTの計測値が変換される。
その結果、標準ガスを用いた較正を行わなくても実用的な精度をもった値を算出することができる。
つまり、直接的に標準ガスを用いる較正を行う代わりに、標準ガスを用いた較正を行っている基準局STのデータを活用して、間接的に計測地点CTのデータを擬似的に較正することができる。
【0027】
続いて、二酸化炭素濃度の測定方法、測定システム100の動作例について、より詳しく説明する。
図2に示すように、ステップS1では、データ取得判定ステップとして、基準局STにおける所定期間のデータを取得し、かつ、計測地点CTにおける所定期間のデータを取得したか否かを判定する。
測定システム100のプログラムの場合については、サーバ120が判定する。
測定方法の場合については、サーバ120が判定してもよいし、ユーザーが判定してもよい。
両者を取得したと判定した場合はステップS2へ進み、他方、両者揃っていないと判定した場合はステップS1を繰り返す。
例えば、図3に示すように、基準局STとしての騎西における所定期間を含む1時間毎の二酸化炭素濃度のデータを取得する。
【0028】
なお、図3に示すのは、騎西における一例として2021年5月15日~2022年7月4日の1時間毎の二酸化炭素濃度のデータである。
このうち、所定期間のデータを抽出すればよい。
また、図4に示すのは、騎西における一例として2021年5月15日~2022年7月4日の1時間毎の二酸化炭素濃度のデータの日毎の最小値、最大値、平均値、中央値である。
図4より、最大値の振れ幅が比較的大きいことがわかる。
つまり、最大値は、日々による変化が大きく、今年の今シーズンの傾向をあまり表していないことを観察することができ、他方、最小値が今年の今シーズンの傾向をよく表していることを観察することができる。すなわち、上述した「課題を解決するための手段」に記した傾向パラメータとして利用できる。
そして、中央値は、平均値と比べて、最大値の値そのものの影響が軽減されるため、最小値に次いで今年の今シーズンの傾向をよく表していることを観察することができる。
そこで、今年の今シーズンの傾向として、日ごとの最小値、平均値、中央値の時系列データや15日(半月、2週間程度)の移動平均を用いる。
【0029】
さらに、図5(A)および図5(B)に示すように、基準局STの一例である綾里、南鳥島、与那国島における二酸化炭素濃度の長期的変化をみると、年々、1~3ppm程度ずつ二酸化炭素濃度が高くなっていることがわかる。
さらに、1年のうち、夏場は、日照時間が比較的長く、植物の光合成により二酸化炭素濃度が下がり、冬場は、日照時間が比較的短く、植物の葉が落ちるなどで葉の量が少なくなるため二酸化炭素濃度が上がる傾向であると考えられる。
図5(A)および図5(B)より、場所が異なる場合であっても、二酸化炭素濃度の変化の傾向は同様であるということがわかる。
【0030】
ステップS2では、基準局傾向パラメータ抽出ステップとして、基準局STにおける所定期間の公表されたデータに基づいて基準局STの傾向パラメータを抽出する。
測定システム100のプログラムの場合については、サーバ120が抽出する。
測定方法の場合については、サーバ120が抽出してもよいし、ユーザーがユーザー端末130を用いて抽出してもよい。
例えば、図6に示すように、基準局STとしての騎西における所定期間としての2022年7月13日~7月16日の2週間の公表されたデータに基づいて、基準局STの傾向パラメータの一例として日毎の時間についての最小値、平均値、中央値のいずれかを求め、さらに、所定期間における日についての最小値、平均値、中央値のいずれかを求める。
【0031】
より具体的に説明する。
基準局STのデータは1時間毎に、約1分遅れのほぼ実時間で公開されている。
基準局STからの公表は1時間毎として説明する。
iを所定期間のi番目の日(i=0,1,2,…,13)日
jを1日のうちのj番目の時間(j=0,1,2,…,23)時
として、基準局STの公表値をSで表す。
基準局STのCO2濃度公表は1時間ごととしているので、
i日、j時の公表値をSijとする(文字SはStandardを意味する)。
(i=0,1,2,…,13)(j=0,1,2,…,23)
【0032】
ここで、日毎の時間についての最小値を基準局STの傾向パラメータとする場合、数式1のように、i日の日ごとの最小値MinSiはSijをjについて最小値を求める。
(数1)
MinSi=Min(Sij)|j
これは、変域jについてSijの最小値を求めるという意味である。
【0033】
また、日毎の時間についての平均値を基準局STの傾向パラメータとする場合、数式2のように、i日の日ごとの平均値AvSiはSijをjについて平均化する。
(数2)
AvSi=Average(Sij)|j
これは、変域jについてSijの平均値を求めるという意味である。
【0034】
さらに、日毎の時間についての中央値を基準局STの傾向パラメータとする場合、数式3のように、i日の日ごとの中央値MdSiはSijをjについてSijの中央値を求める。
(数3)
MdSi=Median(Sij)|j
これは、変域jについて中央値を求めるという意味である。
【0035】
さらに、所定期間における最小値MinSは、数式4で求められる。
(数4)
MinS=Min(MinSi)|i
これは、変域iについてMinSiの最小値を求めるという意味である。
同様に、所定期間における平均値AvSは、数式5で求められる。
(数5)
AvS=Average(AvSi)|i
これは、変域iについてAvSiの平均値を求めるという意味である。
さらに、同様に、所定期間における中央値MdSは、数式6で求められる。
(数6)
MdS=Median(Sij)|i,j
これは、変域i,jについてSijの中央値を求めるという意味である。
【0036】
ステップS3では、計測地点傾向パラメータ算出ステップとして、計測地点CTにおける所定期間のデータに基づいて計測地点CTの傾向パラメータを算出する。
測定システム100のプログラムの場合については、サーバ120が算出する。
測定方法の場合については、サーバ120が算出してもよいし、ユーザーがユーザー端末130を用いて算出してもよい。
例えば、図6に示すように、計測地点CTとしての東京都日本橋屋外における所定期間としての2022年7月13日~7月16日の2週間の計測データに基づいて、計測地点CTの傾向パラメータの一例として日毎の時間についての最小値、平均値、中央値のいずれかを求め、さらに、所定期間における日についての最小値、平均値、中央値のいずれかを求める。
【0037】
より具体的に説明する。
計測地点CTの計測は30秒毎の計測として、所定期間を14日間として説明する。
基準局STの例と同様、iを所定期間のi番目の日(i=0,1,2,…,13)日
jを1日のうちのj番目の時間(j=0,1,2,…,23)時
kを1時間のうちのk番目の1/2分(k=0,1,…,119) 1/2分
として、計測地点CTの計測値をCで表す。
計測地点CTでのCO2濃度の計測は30秒毎、所定期間を14日として、i日、j時、k1/2分の計測値をCijkとする(文字CはCO2計測値を意味する)。
(i=0,1,2,…,13)日、(j=0,1,2,…,23)時間、(k=0,1,…,119) 1/2分
【0038】
ここで、計測地点CTの計測値Cijkを基準局STのデータSijとの比較・対比に用いるために、数式7のように、i日、j時の時間毎の平均値AvCijはCijkをkで平均化する。
(数7)
AvCij=Average(Cijk)|k
これは、変域kについてCijkの平均値を求めるという意味である。
つまり、このAvCijがCijkの1時間毎のデータとなる。
【0039】
そして、日毎の時間についての最小値を計測地点CTの傾向パラメータとする場合、数式8のように、i日の日毎の最小値MinAvCiはAvCijをjについて最小値を求める。
(数8)
MinAvCi=Min(AvCij)|j
これは、変域jについてAvCijの最小値を求めるという意味である。
【0040】
また、日毎の時間についての平均値を計測地点CTの傾向パラメータとする場合、数式9のように、i日の日毎の平均値AvAvCiはAvCijをjについて平均化する。
(数9)
AvAvCi=Average(AvCij)|j
これは、変域jについてAvCijの平均値を求めるという意味である。
【0041】
さらに、日毎の時間についての中央値を計測地点CTの傾向パラメータとする場合、数式10のように、i日の日毎の中央値MdAvCiはAvCijをjについて中央値を求める。
(数10)
MdAvCi=Median(AvCij)|j
これは、変域jについてAvCijの中央値を求めるという意味である。
【0042】
さらに、所定期間における最小値MinCは、数式11で求められる。
(数11)
MinC=MinMinAvC=Min(MinAvCi)|i
これは、変域iについてMinAvCiの最小値を求めるという意味である。
同様に、所定期間における平均値AvCは、数式12で求められる。
(数12)
AvC=AvAvAvC=Average(AvAvCi)|i
これは、変域iについてAvAvCiの平均値を求めるという意味である。
さらに、同様に、所定期間における中央値MdCは、数式13で求められる。
(数13)
MdC=Median(AvCij)|i,j
これは、変域i,jについてAvCijの中央値を求めるという意味である。
【0043】
ステップS4では、計測値変換ステップとして、計測地点CTの傾向パラメータが基準局STの傾向パラメータに一致するように、計測地点CTの計測値を変換(疑似的較正)する。
測定システム100のプログラムの場合については、サーバ120が計測値を変換する。
測定方法の場合については、サーバ120が計測値を変換してもよいし、ユーザーがユーザー端末130を用いて計測値を変換してもよい。
【0044】
これにより、例えば、図6に示すように、変換前の状態では、計測値が、基準局STのデータと比べて約30ppm乖離していたが、図7および図8に示すように、標準ガスを用いた較正を行っている基準局STのデータの傾向パラメータに対して標準ガスを用いた較正を行っていない計測地点CTの傾向パラメータを一致させるように計測地点CTの計測値が変換される。
言い換えると、水準や変化量が疑似的較正される。
その結果、標準ガスを用いた較正を行わなくても実用的な精度をもった値を算出することができる。
つまり、直接的に標準ガスを用いる較正を行う代わりに、標準ガスを用いた較正を行っている基準局STのデータを活用して、間接的に計測地点CTのデータを擬似的に較正することができる。
【0045】
より具体的に説明する。
<0次補正(1点補正)>
基準局STの最小値MinSの数式4と、計測値の最小値MinCの数式11とを一致させる。
そのため計測値を数式14で補正する。補正値(疑似的較正値)をC0Cijkとする。
(数14)
C0Cijk=Cijk+(MinS-MinC)
【0046】
つまり、先ず、基準局傾向パラメータ抽出ステップS2において、数式1によって、所定期間における第1変域である日にちi毎に第2変域である時刻jについての基準局STの公表値Sijの最小値MinSi=Min(Sij)|jを求める。
次に、数式4によって、数式1で求めた基準局STの公表値Sijの最小値MinSi=Min(Sij)|jのうちのさらに第1変域である日にちiについての最小値MinS=Min(MinSi)|iを求める。
続いて、計測地点傾向パラメータ算出ステップS3において、数式7によって、所定期間における第1変域である日にちi毎、第2変域である時刻j毎、および、第3変域である第2変域の単位間隔内の計測回数kについて計測地点CTの計測値Cijkを第3変域の計測回数kで平均化した平均値AvCij=Average(Cijk)|kを求める。
【0047】
そして、数式8によって、数式7で求めた平均値AvCij=Average(Cijk)|kのうちの第2変域である時刻jについての最小値MinAvCi=Min(AvCij)|jを求める。
続いて、数式11によって、数式8で求めた最小値MinAvCi=Min(AvCij)|jのうちのさらに第1変域である日にちiについての最小値MinC=MinMinAvC=Min(MinAvCi)|iを求める。
そして、計測値変換ステップS4において、擬似的較正値C0Cijk=Cijk+(MinS-MinC)とする。
【0048】
これにより、図7に示すように、基準局STの最小値MinSと、計測地点CTの最小値MinCとが一致する所謂、1点補正となる。
その結果、標準ガスを用いた較正を行わなくても実用的な精度をもった値を算出することができる。
特に、最小値にはシーズンの変化の傾向がよく表れるため、算出した値に実用的な精度をもたせることができる。
なお、騎西のグラフの比較的大きな山の箇所と、東京都日本橋屋外のグラフの比較的大きな山の箇所とが、時間軸方向にずれている箇所がいくつかあるが、これは、騎西において二酸化炭素濃度が高かった日時から北風の影響を受けて時間差で東京都日本橋屋外において二酸化炭素濃度が高くなったり、これとは逆に、東京都日本橋屋外において二酸化炭素濃度が高かった日時から南風の影響を受けて時間差で騎西において二酸化炭素濃度が高くなったと考えることができる。
【0049】
<中央値による1次補正(2点補正)>
基準局STの最小値MinSの数式4と、計測値の最小値MinCの数式11、および、基準局STの中央値MdSの数式6と、計測値の中央値MdCの数式13との2点で一致するようにCijkを1次式で変換する。
そして、変換の係数A、Bは、数式15、数式16の2元連立1次方程式によって求める。
(数15)
MinS=A×MinC+B
(数16)
MdS=A×MdC+B
このようにして求めたA、Bを用いて数式17で補正する。補正値(疑似的較正値)をC1Cijkとする。
(数17)
C1Cijk=A×Cijk+B
【0050】
つまり、先ず、基準局傾向パラメータ抽出ステップS2において、数式1によって、所定期間における第1変域である日にちi毎に第2変域である時刻jについての基準局STの公表値Sijの最小値MinSi=Min(Sij)|jを求める。
次に、数式4によって、数式1で求めた基準局STの公表値Sijの最小値MinSi=Min(Sij)|jのうちのさらに第1変域である日にちiについての最小値MinS=Min(MinSi)|iを求める。
これとともに、数式6によって、基準局STの公表値Sijの第1変域である日にちiおよび第2変域である時刻jについての中央値MdS=Median(Sij)|i,jを求める。
続いて、計測地点傾向パラメータ算出ステップS3において、数式7によって、所定期間における第1変域である日にちi毎、第2変域である時刻j毎、および、第3変域である第2変域の単位間隔内の計測回数kについて計測地点CTの計測値Cijkを第3変域の計測回数kで平均化した平均値AvCij=Average(Cijk)|kを求める。
続いて、数式8によって、数式7で求めた平均値AvCij=Average(Cijk)|kのうちの第2変域である時刻jについての最小値MinAvCi=Min(AvCij)|jを求める。
【0051】
そして、数式11によって、数式8で求めた最小値MinAvCi=Min(AvCij)|jのうちのさらに第1変域である日にちiについての最小値MinC=MinMinAvC=Min(MinAvCi)|iを求める。
これとともに、数式13によって、計測地点CTの計測値Cijkの平均値AvCijの第1変域である日にちiおよび第2変域である時刻jについての中央値MdC=Median(AvCij)|i,jを求める。
そして、計測値変換ステップS4において、
数式15のMinS=A×MinC+B、
数式16のMdS=A×MdC+B
から求めたA、Bを用いて、擬似的較正値C1Cijk=A×Cijk+Bとする。
【0052】
これにより、基準局STの最小値MinSと、計測地点CTの最小値MinCとが一致し、基準局STの中央値MdSと、計測地点CTの中央値MdCとが一致する所謂、2点補正となる。
その結果、標準ガスを用いた較正を行わなくても実用的な精度をもった値を算出することができる。
特に、最小値および中央値にはシーズンの変化の傾向がよく表れるため、算出した値に実用的な精度をもたせることができる。
【0053】
<平均値による1次補正(2点補正)>
基準局STの最小値MinSの数式4と、計測値の最小値MinCの数式11、および、基準局STの平均値AvSの数式5と、計測値の平均値AvCの数式12との2点で一致するようにCijkを1次式で変換する。
そして、変換の係数A、Bは数式18、数式19の2元連立1次方程式によって求める。
(数18)
MinS=A×MinC+B
(数19)
AvS=A×AvC+B
このようにして求めたA、Bを用いて数式20で補正する。補正値(疑似的較正値)をC1Cijkとする。
(数20)
C1Cijk=A×Cijk+B
【0054】
つまり、先ず、基準局傾向パラメータ抽出ステップS2において、数式1によって、所定期間における第1変域である日にちi毎に第2変域である時刻jについての基準局STの公表値Sijの最小値MinSi=Min(Sij)|jを求める。
次に、数式4によって、数式1で求めた基準局STの公表値Sijの最小値MinSi=Min(Sij)|jのうちのさらに第1変域である日にちiについての最小値MinS=Min(MinSi)|iを求める。
これとともに、数式5によって、基準局STの公表値Sijの第1変域である日にちiについての平均値AvS=Average(AvSi)|iを求める。
【0055】
続いて、計測地点傾向パラメータ算出ステップS3において、数式7によって、所定期間における第1変域である日にちi毎、第2変域である時刻j毎、および、第3変域である第2変域の単位間隔内の計測回数kについて計測地点CTの計測値Cijkを第3変域の計測回数kで平均化した平均値AvCij=Average(Cijk)|kを求める。
続いて、数式8によって、数式7で求めた平均値AvCij=Average(Cijk)|kのうちの第2変域である時刻jについての最小値MinAvCi=Min(AvCij)|jを求める。
【0056】
そして、数式11によって、数式8で求めた最小値MinAvCi=Min(AvCij)|jのうちのさらに第1変域である日にちiについての最小値MinC=MinMinAvC=Min(MinAvCi)|iを求める。
これとともに、数式12によって、計測地点CTの計測値Cijkの平均値AvCijの第1変域である日にちiについての平均値AvC=AvAvAvC=Average(AvAvCi)|iを求める。
そして、計測値変換ステップS4において、
数式18のMinS=A×MinC+B、
数式19のAvS=A×AvC+B
から求めたA、Bを用いて、擬似的較正値C1Cijk=A×Cijk+Bとする。
【0057】
これにより、基準局STの最小値MinSと、計測地点CTの最小値MinCとが一致し、基準局STの平均値AvSと、計測地点CTの平均値AvCとが一致する所謂、2点補正となる。
その結果、図8に示すように、標準ガスを用いた較正を行わなくても実用的な精度をもった値を算出することができる。
特に、最小値および平均値にはシーズンの変化の傾向がよく表れるため、算出した値に実用的な精度をもたせることができる。
【0058】
<w次補正(0次補正と1次補正との中間)>
上述した0次補正と1次補正との中間としてw(0<w<1)次補正をC0CijkとC1Cijkの加重平均として数式21のように定義する。補正値(疑似的較正値)をCwCijkとする。
(数21)
CwCijk=(1-w)×C0Cijk+w×C1Cijk
【0059】
つまり、先ず、基準局傾向パラメータ抽出ステップS2において、数式1によって、所定期間における第1変域である日にちi毎に第2変域である時刻jについての基準局STの公表値Sijの最小値MinSi=Min(Sij)|jを求める。
次に、数式4によって、数式1で求めた基準局STの公表値Sijの最小値MinSi=Min(Sij)|jのうちのさらに第1変域である日にちiについての最小値MinS=Min(MinSi)|iを求める。
これとともに、数式6によって、基準局STの公表値Sijの第1変域である日にちiおよび第2変域である時刻jについての中央値MdS=Median(Sij)|i,jを求めるか、または、数式5によって、基準局STの公表値Sijの第1変域である日にちiについての平均値AvS=Average(AvSi)|iを求める。
【0060】
続いて、計測地点傾向パラメータ算出ステップS3において、数式7によって、所定期間における第1変域である日にちi毎、第2変域である時刻j毎、および、第3変域である第2変域の単位間隔内の計測回数kについて計測地点CTの計測値Cijkを第3変域の計測回数kで平均化した平均値AvCij=Average(Cijk)|kを求める。
続いて、数式8によって、数式7で求めた平均値AvCij=Average(Cijk)|kのうちの第2変域である時刻jについての最小値MinAvCi=Min(AvCij)|jを求める。
【0061】
そして、数式11によって、数式8で求めた最小値MinAvCi=Min(AvCij)|jのうちのさらに第1変域である日にちiについての最小値MinC=MinMinAvC=Min(MinAvCi)|iを求める。
これとともに、数式13によって、計測地点CTの計測値Cijkの平均値AvCijの第1変域である日にちiおよび第2変域である時刻jについての中央値MdC=Median(AvCij)|i,jを求めるか、または、数式12によって、計測地点CTの計測値Cijkの平均値AvCijの第1変域である日にちiについての平均値AvC=AvAvAvC=Average(AvAvCi)|iを求める。
そして、計測値変換ステップS4において、
0<w<1として、
数式14のC0Cijk=Cijk+(MinS-MinC)、
数式17または数式20のC1Cijk=A×Cijk+B
の両者加重平均として、擬似的較正値CwCijk=(1-w)×C0Cijk+w×C1Cijkとする。
【0062】
これにより、基準局STの最小値MinSと、計測地点CTの最小値MinCとが一致する所謂、1点補正、または、これに加えて、基準局STの中央値MdSと計測地点CTの中央値MdCとが一致する、もしくは、基準局STの平均値AvSと計測地点CTの平均値AvCとが一致する所謂、2点補正の中間となる。
その結果、図8に示すように、標準ガスを用いた較正を行わなくても実用的な精度をもった値を算出することができる。
【0063】
なお、本実施例では、「温室効果ガス」の一例として二酸化炭素の濃度の測定値の補正(疑似的較正)について説明したが、これに限らない。
つまり、メタン、一酸化二窒素、代替フロン類(ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、六ふっ化硫黄、三ふっ化窒素)の濃度の測定値の補正(疑似的較正)についても同様の効果を得ることができる。
【0064】
このようにして得られた本発明の第1実施例である温室効果ガス濃度の測定方法または温室効果ガス濃度の測定システム100のプログラムは、基準局STにおける所定期間の公表されたデータに基づいて基準局STの傾向パラメータを抽出する基準局傾向パラメータ抽出ステップS2と、計測地点CTにおける所定期間のデータに基づいて計測地点CTの傾向パラメータを算出する計測地点傾向パラメータ算出ステップS3と、計測地点CTの傾向パラメータが基準局STの傾向パラメータに一致するように、計測地点CTの計測値を変換する計測値変換ステップS4とを備えることにより、直接的に標準ガスを用いる較正を行う代わりに、標準ガスを用いた較正を行っている基準局STのデータを活用して、間接的に計測地点CTのデータを擬似的に較正することができるなど、その効果は甚大である。
【実施例0065】
続いて、本発明の第2実施例である温室効果ガスの一例としての二酸化炭素濃度の計測方法、測定システム100、そのプログラムについて、図5(A)、図5(B)および図9乃至図10に基づいて説明する。
ここで、図9は、本発明の第2実施例である予測値を算出した場合の予測値算出ステップについてのチャート図であり、図10は、本発明の第2実施例である予測値を算出した場合の計測地点傾向パラメータ算出ステップ、計測値変換ステップについてのチャート図である。
第2実施例の二酸化炭素濃度の計測方法、測定システム100、そのプログラムは、第1実施例の二酸化炭素濃度の計測方法、測定システム100、そのプログラムの計測地点CTにおける所定期間のデータに対して、基準局STにおける所定期間のデータを利用できない場合または利用しない場合であって、その代わりに計測地点CTにおける後述する第2所定期間に対応する基準局STにおける予測期間の予測値を予測期間より前の第1所定期間のデータに基づいて算出することにしたものであり、多くの要素について第1実施例の二酸化炭素濃度の計測方法、測定システム100、そのプログラムと共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略する。
【0066】
<基準局STにおける所定期間のデータを利用できない場合または利用しない場合>
上述したように、図5(A)および図5(B)は、基準局STの一例である気象庁の観測点(綾里、与那国島、南鳥島)における二酸化炭素の月毎の経年変化を表している。
このグラフから年々ほぼ直線状に単調増加する関数にシーズン毎に波打っている曲線が重畳した曲線となっていて、技術的思想としては、公表された過去のデータに対して過去からある年までの単調増加分を加え、さらに、その年のある月の季節変動(植物の光合成などの影響によりシーズン毎に波打っている曲線)分を加味することにより、ある年のある月の予測値を得ることができる。
またこのデータは、人的活動による二酸化炭素の増加分を最小限に抑えるため、上記観測点の3地点は人里離れた場所に設置されている。その意図をくみ取り、このデータは最小値を表しているものと解釈する考えと、やはり人的活動も含んだものすなわち平均値と解釈する考えがあり得る。
【0067】
<最小値と解釈する考え方>
上述したように基準局STとしての騎西のデータが1時間毎に得られることに比べて、気象庁データは1ヶ月毎のデータであるので、ある月のある日の予測データは月初めの値と翌月始めの値から、i日目の値として、内挿によって計算することが可能である。
このように予測した二酸化炭素濃度予測データのi日目のデータをMiとする(文字MはJapan Meteorological AgencyのM。iは月初めから月末までを表す場合と比較期間(観察期間、例えば14日間)内におけるi番目の日を表す場合がある)。
このようにして予測した二酸化炭素濃度予測データを、比較期間(観察期間、例では14日間)での最小値MinM=Min(Mi)|iを求める。
このMinMに数式8のMinAvCiの値を合わせるという補正方法(0次補正(1点補正))を用いる。補正値をC0Cijkとする。
【0068】
ただし、予測値Miは1日の予測平均値であるので、i日目の最小値はその値より小さいので、統計的に得た値Δm(mは月)で修正する。Δmは例えば騎西などの1時間ごとのデータが得られる基準局STのデータからある期間(例えば月)の1日の平均値と当日最小値の差分をさらに当月内で平均する。過去の基準局STのデータから計算しておき、繰り返して利用する(この補正計算自体には、基準局STのデータを実時間では使用しない)。
例えば、m月の補正について
(数22)
Δm=(Average(AvSi-MinSi)|i)|m=AvS-MinS|m
(数23)
AvSi=Average(Sij)|j i日目の平均値
(数24)
MinSi=Min(Sij)|j i日目の最小値
上記の計算でΔはm月対応としてΔmとしたが、内挿計算によりm月d日対応のΔmdとして、ある期間で最小値が検出されたカレンダー日付にあわせてΔmdを用いることもできる。
また、上記の計算は、気象庁の過去データに基づく計算であったが、気象庁以外の高精度観測をしている過去データ(埼玉県騎西、国立環境研究所など)によっても計算することができる。
(数25)
CCijk=Cijk+(Mi-Δm-MinAvCi)
【0069】
<平均値と解釈する考え方>
上述したように基準局STとしての騎西のデータが1時間毎に得られることに比べて、気象庁データは1ヶ月毎のデータであるので、ある月のある日の予測データは月初めの値と翌月始めの値から、i日目の値として、内挿によって計算することが可能である。
このようにして予測した二酸化炭素濃度予測データを、上述した0次補正、1次補正、および、その中間(w)の補正を行う。比較期間(例では14日間)のi日目の気象庁データとしてMiとする(文字MはJapan Meteorological AgencyのM)。
このMiに数式9のAvAvCiの値を合わせるという補正方法(0次補正(1点補正))を用いてもよい。補正値をCCijkとする。
1次補正の場合には、上記の最小値、ここでの平均値、または中央値を用いて補正する(1次補正(2点補正))。
(数23)
CCijk=Cijk+(Mi-AvAvCi)
【0070】
予測値は、気象庁の実績データの公表が1年ごとであるので、予想値は、最小2年分を予測しておく。
例えば、2021年の1月~12月の実績データは、2022年の3月末に公表される。このデータから1年分の予測をしても、次の2023年の3月末の発表までに、2023年1月から3月の予測値が間に合わないので、2022年~2023年の少なくとも2年分(2年以上)を予測する必要がある。
【0071】
図9に示すように、ステップS11では、予測値算出ステップとして、年に1度のデータ公表時点で当該年度を含め2年分の予測を行う。
具体的には、基準局STにおける第1所定期間(例えば1987年1月1日~2021年12月31日)の公表された二酸化炭素濃度のデータに基づいて第1所定期間より後の基準局STの2年分以上の予測期間(2022年1月1日~2023年12月31日)の二酸化炭素濃度の予測値を算出する。
ステップS12では、予測値算出ステップとして、ステップS11の予測は月毎の平均値であるので、ある日のデータの予測を、月初と月末のデータから内挿計算によって求める。
【0072】
ステップS13では、予測値算出ステップとして、ステップS12の予測は、日平均であるので、上記の「発明が解決しようとする課題」で述べた一定値(例400ppm)に自動較正するかわりに当該期間(処理期間)の最小値を用いることにすると、その日の最小値を求める必要がある。最小値は、例えば騎西の1時間毎のデータで1日のうちの平均値と最小値の差を求め、それを1か月で平均すると、ある月、m月のなかの平均の平均値と最小値との差を求めることができる。
ステップS14では、予測値算出ステップとして、ステップS13の値も月初と月末の値であり、これを日にち毎に内挿計算によって求める。
ステップS15では、予測値算出ステップとして、m月d日の最小値MINmdを得る。
ステップS11~S15については、予め計算しておき、1年に1回更新する。
なお、技術的思想としては、基準局STとしての綾里、与那国島、南鳥島の少なくとも1箇所のデータを用いて予測値を算出すればよく、ステップS13~ステップS15における騎西のデータの利用は必須ではない。
騎西のデータを用いる技術的意義は、平均値と最小値との差を求めて、平均値と最小値とが互いにどれだけずれるかについての統計値を求めるためであって、平均値ではなく、より精度が高い最小値を得て、計測地点CTにおける計測値の変換後の値の精度をより高めるためである。
【0073】
そして、図10に示すように、ステップS21では、計測地点傾向パラメータ算出ステップとして、前述したステップS3と同様、第1所定期間(例えば1987年1月1日~2021年12月31日)より後であって予測期間(2022年1月1日~2023年12月31日)内である第2所定期間(2022年7月13日~2022年7月26日)の計測地点CTにおけるデータに基づいて計測地点CTの傾向パラメータを算出する。
ステップS22では、計測値変換ステップとして、前述したステップS4と同様、計測地点CTの傾向パラメータが基準局STの傾向としての予測値に一致するように、計測地点CTの計測値を変換する。
【0074】
これにより、標準ガスを用いた較正を行っている基準局STのデータに基づいた予測値に対して標準ガスを用いた較正を行っていない計測地点CTの傾向パラメータを一致させるように計測地点CTの計測値が変換される。
その結果、標準ガスを用いた較正を行わなくても実用的な精度をもった値を算出することができる。
つまり、前述したステップS1~S4の二酸化炭素濃度の測定方法または二酸化炭素濃度の測定システム100のプログラムによって得られる精度と同程度の実用的な精度をもった値を算出することができる。
【0075】
なお、ネットワークに接続しない場合を想定し、測定地点CTのマイコン端末111やサーバ120にRTC(リアルタイムクロック)を装備するとともに、測定地点CTのマイコン端末111やサーバ120の内部に製品寿命分、約10年分を予測して組み込んでおくこともできる。
このようにして、上記の「発明が解決しようとする課題」で述べた一定値(例400ppm)に自動較正することにより、年々の二酸化炭素濃度上昇およびシーズンの変化に追従できないという欠点に対して、日本国内の長期的傾向およびシーズンの変化にそった値に自動較正を行うことにより、この欠点を解決することができる。
【0076】
このようにして得られた本発明の第2実施例である温室効果ガス濃度の測定方法または測定システム100のプログラムは、基準局STにおける第1所定期間(例えば1987年1月1日~2021年12月31日)の公表されたデータに基づいて第1所定期間より後の基準局STの2年分以上の予測期間(2022年1月1日~2023年12月31日)の予測値を算出する予測値算出ステップS11~S15と、第1所定期間より後であって予測期間内である第2所定期間(2022年7月13日~2022年7月26日)の計測地点CTにおけるデータに基づいて計測地点CTの傾向パラメータを算出する計測地点傾向パラメータ算出ステップS21と、計測地点CTの傾向パラメータが基準局STの傾向としての予測値に一致するように、計測地点CTの計測値を変換する計測値変換ステップS22とを備えることにより、直接的に標準ガスを用いる較正を行う代わりに、標準ガスを用いた較正を行っている基準局STのデータに基づいた予測値を活用して、間接的に計測地点CTのデータを擬似的に較正することができるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0077】
100 ・・・ (温室効果ガス濃度の)測定システム
110 ・・・ (計測地点の)センサー
111 ・・・ (計測地点の)マイコン端末
120 ・・・ サーバ
130 ・・・ ユーザー端末
CT ・・・ 計測地点
ST ・・・ 基準局
ST1 ・・・ (基準局の)観測機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10