(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031199
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】金具装着カシメ用の挟圧工具
(51)【国際特許分類】
B25B 7/02 20060101AFI20240229BHJP
B25B 7/10 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B25B7/02
B25B7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134612
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】519017269
【氏名又は名称】川北商店株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128794
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 庸悟
(72)【発明者】
【氏名】川北 靖
【テーマコード(参考)】
3C020
【Fターム(参考)】
3C020PP03
3C020RR07
(57)【要約】
【課題】一方の挟圧片部20に集中した押圧力を与えて他方の挟圧片部30に分散した押圧力を与えることで、金具の一方の部分を大きく変形させ、他方の部分を小さく変形させるといった使用条件に好適に対応できる金具装着カシメ用の挟圧工具を提供する。
【解決手段】金具を挟んで押圧力を加えて変形させる一対の挟圧片部20、30を備えるペンチやプライヤーの形態をした金具装着カシメ用の挟圧工具であって、一対の挟圧片部20、30の金具に同時に当接する面積について、一方の挟圧片部20に比べて他方の挟圧片部30の方が広くなるように、一方の挟圧片部20に比べて他方の挟圧片部30の方が左右に幅広に設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金具を挟んで押圧力を加えて変形させる一対の挟圧片部を備えるペンチやプライヤーの形態をした金具装着カシメ用の挟圧工具であって、
前記一対の挟圧片部の前記金具に同時に当接する面積について、一方の挟圧片部に比べて他方の挟圧片部の方が広くなるように、前記一方の挟圧片部に比べて前記他方の挟圧片部の方が左右に幅広に設けられていることを特徴とする金具装着カシメ用の挟圧工具。
【請求項2】
前記ペンチやプライヤーを操作するための一対の把持片部を構成する一方の把持片部と他方の把持片部とを備え、
前記一方の挟圧片部が、前記一方の把持片部の先端部に一体に設けられ、
前記他方の挟圧片部が、前記他方の把持片部の先端部に着脱可能に装着されるように設けられていることを特徴とする請求項1記載の金具装着カシメ用の挟圧工具。
【請求項3】
前記他方の把持片部の先端部に、先端方向へ延びるように突起した被装着用の突起部が設けられ、前記他方の挟圧片部に、前記被装着用の突起部に嵌る装着用の嵌合孔が設けられていることを特徴とする請求項2記載の金具装着カシメ用の挟圧工具。
【請求項4】
前記他方の挟圧片部には、表裏の関係となる二つの面であって、前記一方の挟圧片部の押圧面との間で前記金具を挟むことで生じる押圧力を受ける第1の押圧受面と第2の押圧受面とが設けられていることを特徴とする請求項3記載の金具装着カシメ用の挟圧工具。
【請求項5】
前記第1の押圧受面と前記第2の押圧受面とで前記一方の挟圧片部の押圧面との面同士間の角度が異なるように、前記第1の押圧受面と第2の押圧受面とに対する前記装着用の嵌合孔の穿設方向の角度が異なるように設けられていることを特徴とする請求項4記載の金具装着カシメ用の挟圧工具
【請求項6】
前記装着用の嵌合孔が、前記他方の挟圧片部の一端から他端に貫通するように穿設されて設けられ、前記他方の挟圧片部の前記一端又は前記他端のどちらからも前記被装着用の突起部に装着可能に設けられていることを特徴とする請求項5記載の金具装着カシメ用の挟圧工具。
【請求項7】
前記一方の挟圧片部における前記他方の挟圧片部の押圧受面に対面する押圧面の少なくとも一部が、該押圧面の先端から後方へ向かって前記押圧受面から徐々に間隔を広げる面となるように傾斜した面になっていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の金具装着カシメ用の挟圧工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金具を挟んで押圧力を加えて変形させる一対の挟圧片部を備えるペンチやプライヤーの形態をした金具装着カシメ用の挟圧工具に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の挟圧片部を備えるペンチの形態をした挟圧工具としては、軽合金製のペンチ体の左右の挾着部の対向面に鋼製挾着板を付設し、係止突条を並設し、下部に切断刃を縦設し、ビス孔と芯をずらしてビス孔を鋼製挾着板の挾着面下部に設け、ビス孔周縁に上部ボス部と下部ボス部を突設し、上部嵌合孔と下部嵌合孔とを挾着部の対向面に凹設し、この上部嵌合孔と下部嵌合孔とに上部ボルト孔と下部ボルト孔を設け、上部止着ボルトと下部止着ボルトを螺着してペンチ体の挾着部に鋼製挾着板を止着し、軽合金製のペンチ体の交叉軸着部に金属製枢着軸を形成し、この金属製枢着軸のボルト筒の外周面に摺動筒を被嵌し、軸摺動筒の外周面に弗化系樹脂加工層を形成した軽合金製ペンチ(特許文献1)が提案されている。これによれば、鋼製挾着板によって、一対の挟圧片部の形態を調整することができる。
【0003】
また、一対の挟圧片部を備えるプライヤーの形態をした挟圧工具としては、基方を把手とし先方を挟持作用部とした2個の挟持体を交差させ、交差箇所を枢結(枢結軸、軸長孔)した金属製の工具本体と、前記挟持作用部に装着する樹脂製の挟持部材とで構成し、挟持部材が適宜な挟持面を備えると共に挟持作用部の外形に対応する内部形状を備えて被冠装着可能な下方開口のキャップ形状に形成され、工具本体と挟持部材とに挟持部材の弾性で係止される係止構造(顎部及び係止段差と係止段差との係止)を付設してなる(特許文献2)挟持工具が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08-276368号公報(第1頁)
【特許文献2】実用新案登録第3211427号公報(第1頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金具装着カシメ用の挟圧工具に関して解決しようとする問題点は、従来の形態では、一対の挟圧片部の押圧面が同形状に形成されており、その一対の挟圧片部のそれぞれに同等の押圧力を生じさせるもので、一方の挟圧片部に集中した押圧力を与えて他方の挟圧片部に分散した押圧力を与えるものが提案されておらず、金具の一方の部分を大きく変形させ、他方の部分を小さく変形させるという使用条件に対応することができないことにある。
【0006】
そこで本発明の目的は、一方の挟圧片部に集中した押圧力を与えて他方の挟圧片部に分散した押圧力を与えることで、金具の一方の部分を大きく変形させ、他方の部分を小さく変形させるという使用条件に好適に対応できる金具装着カシメ用の挟圧工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係る金具装着カシメ用の挟圧工具の一形態によれば、金具を挟んで押圧力を加えて変形させる一対の挟圧片部を備えるペンチやプライヤーの形態をした金具装着カシメ用の挟圧工具であって、前記一対の挟圧片部の前記金具に同時に当接する面積について、一方の挟圧片部に比べて他方の挟圧片部の方が広くなるように、前記一方の挟圧片部に比べて前記他方の挟圧片部の方が左右に幅広に設けられている。
【0008】
本発明に係る金具装着カシメ用の挟圧工具の一形態によれば、前記ペンチやプライヤーを操作するための一対の把持片部を構成する一方の把持片部と他方の把持片部とを備え、前記一方の挟圧片部が、前記一方の把持片部の先端部に一体に設けられ、前記他方の挟圧片部が、前記他方の把持片部の先端部に着脱可能に装着されるように設けられていることを特徴とすることができる。
本発明に係る金具装着カシメ用の挟圧工具の一形態によれば、前記他方の把持片部の先端部に、先端方向へ延びるように突起した被装着用の突起部が設けられ、前記他方の挟圧片部に、前記被装着用の突起部に嵌る装着用の嵌合孔が設けられていることを特徴とすることができる。
【0009】
本発明に係る金具装着カシメ用の挟圧工具の一形態によれば、前記他方の挟圧片部には、表裏の関係となる二つの面であって、前記一方の挟圧片部の押圧面との間で前記金具を挟むことで生じる押圧力を受ける第1の押圧受面と第2の押圧受面とが設けられていることを特徴とすることができる。
【0010】
本発明に係る金具装着カシメ用の挟圧工具の一形態によれば、前記第1の押圧受面と前記第2の押圧受面とで前記一方の挟圧片部の押圧面との面同士間の角度が異なるように、前記第1の押圧受面と第2の押圧受面とに対する前記装着用の嵌合孔の穿設方向の角度が異なるように設けられていることを特徴とすることができる。
【0011】
本発明に係る金具装着カシメ用の挟圧工具の一形態によれば、前記装着用の嵌合孔が、前記他方の挟圧片部の一端から他端に貫通するように穿設されて設けられ、前記他方の挟圧片部の前記一端又は前記他端のどちらからも前記被装着用の突起部に装着可能に設けられていることを特徴とすることができる。
【0012】
本発明に係る金具装着カシメ用の挟圧工具の一形態によれば、前記一方の挟圧片部における前記他方の挟圧片部の押圧受面に対面する押圧面の少なくとも一部が、該押圧面の先端から後方へ向かって前記押圧受面から徐々に間隔を広げる面となるように傾斜した面になっていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の金具装着カシメ用の挟圧工具によれば、一方の挟圧片部に集中した押圧力を与えて他方の挟圧片部に分散した押圧力を与えることで、金具の一方の部分を大きく変形させ、他方の部分を小さく変形させるといった使用条件に好適に対応できるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る金具装着カシメ用の挟圧工具の形態例を示す斜視図である。
【
図8】本発明に係る金具装着カシメ用の挟圧工具の他の形態例を示す斜視図である。
【
図9】本発明に係る他方の嵌め部材の形態例を示す斜視図である。
【
図16】本発明に係る他方の嵌め部材の他の形態例を装着した本発明に係る金具装着カシメ用の挟圧工具の形態例を示す斜視図である。
【
図17】本発明に係る金具装着カシメ用のプライヤーの形態例を示す正面図である。
【
図19】
図17の形態例の他方の把持片部を示す平面図である。
【
図20】
図17の形態例の他方の把持片部を示す背面図である。
【
図21】
図17の形態例の他方の把持片部を示す左側面図である。
【
図22】
図17の形態例の一方の把持片部を実線で示す正面図である。
【
図23】
図17の形態例の一方の把持片部を示す平面図である。
【
図24】
図17の形態例の一方の把持片部を示す左側面図である。
【
図26】
図25の状態から一対の挟圧片部を閉じた状態の正面図である。
【
図27】本発明に係る金具装着カシメ用の挟圧工具であって他方の挟圧片部が着脱可能に設けられた形態例を示す斜視図である。
【
図28】
図27の形態例の他方の挟圧片部を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図29】
図27の形態例であって、一対の把持片部の間にバネ(トーションバネ)が装着された状態と、他方の挟圧片部の装着状態を保持するためマグネット(磁石)が装着された状態を示す斜視図である。
【
図30】
図27の形態例における他方の挟圧片部を第1の形態に装着した状態を示す側面図である。
【
図31】
図27の形態例における他方の挟圧片部を第2の形態に装着した状態を示す側面図である。
【
図32】
図27の形態例における他方の挟圧片部を第3の形態に装着した状態を示す側面図である。
【
図33】
図27の形態例における他方の挟圧片部を第4の形態に装着した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る金具装着カシメ用の挟圧工具の形態例を、図面(
図1~16)に基づいて詳細に説明する。この金具装着カシメ用の挟圧工具は、金具を挟んで押圧力を加えて変形させる一対の挟圧片部20、30及び一対の把持片部11、12を備えるペンチやプライヤーの形態をしたものである。
【0016】
本発明に係る金具装着カシメ用の挟圧工具によれば、一対の挟圧片部20、30の金具に同時に当接する面積について、一方の挟圧片部20に比べて他方の挟圧片部30の方が広くなるように、一方の挟圧片部20に比べて他方の挟圧片部30の方が左右に幅広に設けられている。
【0017】
すなわち、
図1などに示すように、他方の挟圧片部30の形状が、カシメ加工がなされる金具を挟圧する際にその金具がその一対の挟圧片部20、30の間に進入される方向に交差する方向(本形態例では実質的に直交する方向)である左右方向(幅方向)に、幅広になっていることで、金具に当接する面積が大きく広い形態となっている。本形態例では、一方の挟圧片部20の幅の長さに比べて、他方の挟圧片部30の幅が、約3倍の長さに設けられている。
【0018】
金具としては、例えば、がま口の口金や、バッグなどの製品に用いられるへり止め金具を挙げることができ、これらの金具は、断面U字状の形態の金属部材になっており、カシメられることによってがま口やバッグなどの装着される対象物に固定されるものになっている。なお、がま口の口金を固定する際には、そのがま口の内側へ一方の挟圧片部20を入れ、がま口の外側に露出する口金の面へ他方の挟圧片部30の押圧受面31を当てた状態で行うと、作業がし易く綺麗に仕上げることができる。
【0019】
この金具装着カシメ用の挟圧工具によれば、金具に対し、一方の挟圧片部20によって集中した押圧力を与え、他方の挟圧片部30によって分散した押圧力を与えることになり、金具の一方の部分を大きく変形させ、他方の部分を小さく変形させるといった使用条件に好適に対応できるという特別有利な効果を奏する。すなわち、本形態例では、一方の挟圧片部20の幅に比べて、他方の挟圧片部30の幅が、約3倍の長さに設けられているため、一方の挟圧片部20の押圧面21に当接されて押圧された金具の部分は、大きく変形するようにカシメがなされ、他方の挟圧片部30の押圧受面31に当接されて押圧された金具の部分は、押圧力が分散されるため、変形が小さいと共にその部分の表面に傷が付きにくくなるという特別有利な効果を奏する。
【0020】
そして、本形態例では、一方の挟圧片部20における他方の挟圧片部30の押圧受面31に対面する押圧面21が、他方の挟圧片部30の押圧受面31に近接する面となっている先端部の押圧面21aと、その先端部の押圧面21aから連続して後方へ向かって他方の挟圧片部30の押圧受面31から徐々に間隔を広げる面となるように傾斜した面となっている後端部の押圧面21bとによって構成されている。
【0021】
これによれば、他方の挟圧片部30の押圧受面31に比べて、一方の挟圧片部20の押圧面21が金具の一方部に当接してカシメを行う作業工程の初期において、その押圧面21の面積が、先端部の押圧面21aのみによる小さく狭い面積になるため、さらに押圧力が集中することになる。従って、金具の一方部の面に対するカシメのための押圧力が集中して作用し易く、金具を被装着部である例えばがま口などの口縁にその一方部を適切に潰し変形させて強固に固定させることができる。他方、金具の他方部については、押圧力が分散して変形されにくく、その金具の他方部の表面を傷つけることなく、仕上がり良く、金具を被装着部に固定できる。この金具の他方部の表面が、がま口の外側に露出する面となることで、外観の綺麗ながま口を作ることができる。
【0022】
また、本形態例では、一対の挟圧片部20、30によって金具を挟圧する際にその金具がその一対の挟圧片部20、30の間に進入する長さを規制できるように、一対の挟圧片部20、30の少なくともどちらかに金具進入方向の受け面37が設けられている。
【0023】
これによれば、例えば、がま口の口金をそのがま口の口縁に固定する際に、適切にカシメの作業を行うことができる。すなわち、例えば、がま口の口金を構成する金具は、断面U字状に形成されており、所要の幅でがま口の口縁を縁取るように固着されるもので、その所要の幅の長さと、金具が一対の挟圧片部20、30の間に進入できる長さとが一致するように、金具進入方向の受け面37が設けられることで、その金具進入方向の受け面37に、金具の断面U字状の折り曲げ部の外側面を当接させることで、その金具の位置決めが簡単にでき、カシメの作業を容易に行うことができる。また、前記の後端部の押圧面21bによって、押圧に係る逃げ部21cが形成されている。これによって、例えば、がま口の口金については、断面U字状の折り曲げ部については、潰されることなく綺麗に仕上げることができる。
【0024】
さらに、本発明の発展的な形態例としては、金具進入方向の受け面37が、押圧力が作用する方向と平行な面となるように他方の挟圧片部30に設けられ、押圧受面31を構成する受面板部32が、他方の挟圧片部30の基部を構成する受面基部33と別体に設けられ、一方の挟圧片部20の押圧面21との間隔を調整できるように、金具進入方向の受け面37に案内されて移動可能に配されている。
【0025】
これによれば、受面板部32を金具進入方向の受け面37に沿わせてスライド調整できるため、一方の挟圧片部20の押圧面21との間隔を安定的に変化させて保持させることができる。すなわち、簡単な構成であるが、金具の種々のサイズに適切に対応してカシメ作業を適切に行うことができるように、容易に調整することができる。
【0026】
また、本形態例では、押圧受面31と押圧面21との間隔を調整するための受面板部の移動手段35は、螺子による移動機構になっている。この形態例では、
図1などに示すように、受面基部33に設けられたスリット部34に操作ナット36が配され、その操作ナット36に、受面板部32の押圧受面31の反対面である下面に固定されて下方へ延設されたボルト部32aが螺合されている。また、スリット部34が形成された受面基部33の上部33a及び下部33bのそれぞれに設けられた貫通孔に、ボルト部32aが挿通されて保持されている。
【0027】
これによれば、操作ナット36を回転することで、その操作ナット36が脱落することなく、受面板部32の高さ位置を適切に調整することができる。すなわち、押圧受面31と押圧面21との間隔を無段階で調整することができるため、汎用性を高めることができる。
【0028】
次に、本発明の他の形態例を、
図8~
図16に基づいて詳細に説明する。
この本発明の他の形態例としては、一対の挟圧片部20、30の押圧面21と押圧受面31との間隔を変更して種類の異なる金具に対応して挟圧できるように、間隔調整用の嵌め部材が、一対の挟圧片部20、30の少なくともどちらかに装着できるように設けられている。
【0029】
これによれば、押圧受面31と押圧面21との間隔を、段階的に調整することができるため、種類の異なる金具に対応して挟圧できることになり、汎用性を高めることができる。つまり、複数の間隔調整用の嵌め部材を用意しておくことで、押圧受面31と押圧面21との間隔について複数の条件に対応できる。さらに、この間隔調整用の嵌め部材40が、樹脂などの金具(金属)よりも柔らかい材質で形成されていることで、金具に傷がつくことを防止でき、カシメ作業を好適に行うことができる。
【0030】
また、本形態例では、
図8~
図16に示すように、間隔調整用の嵌め部材が、一方の嵌め部材41と他方の嵌め部材42との対によって構成されており、一対の挟圧片部20、30の両側に装着されている。なお、本形態例では、一方の嵌め部材41は、一方の挟圧片部20に固着された状態に配され、他方の嵌め部材42は、他方の挟圧片部30に対して着脱できるように設けられている。すなわち、一方の嵌め部材41には、溝が形成されており、一対の挟圧片部20の側に形成された凸筋部に嵌って固着される形態になっている。また、他方の嵌め部材42については、
図9に示すように、底面側に一対の装着用突起42a、42aが設けられており、その一対の装着用突起42a、42aが他方の挟圧片部30に形成された一対の装着用穴部39、39(
図13参照)に嵌合することで装着されるように設けられている。そして、他方の嵌め部材42については、
図16に示すように、厚さの異なるものを付け替えることで、押圧面21と押圧受面31との間隔を、容易に調整することができる。なお、
図16に示す形態例では、
図8~15に示すものよりも他方の嵌め部材42が厚く形成されており、押圧面21と押圧受面31との間隔を適切に狭めることができる。
【0031】
なお、本発明に係る金具装着カシメ用の挟圧工具は、ペンチやプライヤーの形態をしたものであり、図に示した形態例では、一対の把持片部11、12を備えており、一方の把持片部11が一方の挟圧片部20と一体に形成された部材となっており、他方の把持片部12が他方の挟圧片部30と一体に形成された部材となっている。そして、その両部材が、枢軸13によって回動可能に軸着されており、一対の挟圧片部20、30が開閉し、対象物を挟圧或いは挟持できるペンチの形態になっている。なお、本発明は、図に示したようなペンチの形態例に限定されるものではなく、プライヤーのように、枢軸13が係止する複数の部分を備える長孔が設けられたものであってもよい。
【0032】
また、
図17~26に示した形態例(プライヤーの形態例)では、一方の挟圧片部20における他方の挟圧片部30の押圧受面31に対面する押圧面21の少なくとも一部が、その押圧面21の先端から後方へ向かって前記押圧受面31から徐々に間隔を広げる面となるように傾斜した面になっている。
【0033】
すなわち、押圧面21と押圧受面31とが、相互に先端から後方へ向けて傾斜して広がるスペース(逃げ部21c)が形成されるように、テーパ状に配された状態となるように設けられている。なお、このプライヤーの形態例では、押圧面21と押圧受面31との両面について、先端から後端までの全面に亘って相互に傾斜するテーパ面になっている。これによれば、前述の形態例について説明したように、逃げ部21cがあることよって、例えば、がま口の開け口の外縁となる口金のU字状に折り曲げられた曲げの部分が、過度にカシメられて潰されることを防ぎ、綺麗に仕上げることができる。
【0034】
また、このプライヤーの形態例によれば、
図18や
図24などに示すように押圧面21の口先が、その左右方向の幅について細く設けられており、その押圧面21(一方の挟圧片部20)が、先細になるように設けられている。これによれば、押圧面21の先端側の方で、押圧力をより集中し易くなり、押圧力を適正に加え易くなり、カシメの作業性を向上できる効果がある。
【0035】
なお、このプライヤーの形態例は、一対の挟圧片部20、30を開閉するように回動させる回動軸(枢軸13)が、二つの円の一部同士が重ねられた形状に設けられた二つの軸心を有する軸着係合孔15のいずれかの軸心の側に位置して係合することによって、その一対の挟圧片部20、30の開閉の大きさを変換できるように設けられている。本形態例では、軸着係合孔15が、他方の挟圧片部30の側に設けられている。また、本形態例では、柄の部分が、ウレタンによって被覆されて把持し易い持ち手(一対の把持片部11、12)となっている。
【0036】
次に、本発明に係る金具装着カシメ用の挟圧工具であって他方の挟圧片部30が着脱可能に設けられた形態例を、
図27~
図33に基づいて詳細に説明する。
【0037】
本形態例では、
図27及び
図28に示すように、ペンチやプライヤーを操作するための一対の把持片部を構成する一方の把持片部11と他方の把持片部12とを備え、一方の挟圧片部20が、一方の把持片部11の先端部に一体に設けられ、他方の挟圧片部30が、他方の把持片部12の先端部に着脱可能に装着されるように設けられている。これによれば、他方の挟圧片部30を適宜に交換できる。
【0038】
また、本形態例では、他方の把持片部12の先端部に、先端方向へ延びるように突起した被装着用の突起部12aが設けられ、他方の挟圧片部30に、被装着用の突起部12aに嵌る装着用の嵌合孔30aが設けられている。本形態例の被装着用の突起部12aは、より具体的には
図28及び
図29に示すように、短冊状の直方体になっており、その直方体の長手方向が先端方向へ延びるように突起した形状で、その直方体の先端から根元まで実質的に同一の矩形断面となる形状になっている。なお、本発明は、この形態例の被装着用の突起部12aに限定されるものではなく、長手方向に溝が入った形態や、二本(複数本)の突起による形態など、装着用の嵌合孔30aに対して適宜に抜き差しができて、他方の挟圧片部30を他方の把持片部12の先端部に適切に固定できる形状であればよい。これによれば、他方の挟圧片部30を、他方の把持片部12の先端部に容易且つ適切に装着できる。
【0039】
そして、一対の把持片部11、12の間にスプリング50(本形態例ではトーションバネ)が装着された状態と、他方の挟圧片部30の装着状態を保持するための磁石60が装着された状態が示された
図29のように、他方の挟圧片部30が、他方の把持片部12の先端部に外嵌め状態に装着される。すなわち、磁石60が被装着用の突起部12aの根元部に固定されて配置されていることで、磁力によって他方の挟圧片部30が他方の把持片部12から離脱しないように固定できる。これによれば、他方の挟圧片部30を、他方の把持片部12の先端部に着脱可能に、容易且つ適切に装着できる。
【0040】
また、本形態例の他方の挟圧片部30には、表裏の関係となる二つの面であって、一方の挟圧片部20の押圧面21との間で、がま口の口金などの金具を挟むことで生じる押圧力を受ける第1の押圧受面31aと第2の押圧受面31bとが設けられている。
【0041】
これによれば、
図30及び
図31に示すように、他方の挟圧片部30の表裏を反転することで、それぞれの形態に他方の挟圧片部30を他方の把持片部12の先端部に装着することができる。すなわち、
図30の状態では、一方の挟圧片部20の押圧面21と第1の押圧受面31aとで金具を挟むことができる第1の装着形態となるように一対の挟圧片部20、30が構成され、
図31の状態では、一方の挟圧片部20の押圧面21と第2の押圧受面31bとで金具を挟むことができる第2の装着形態となるように一対の挟圧片部20、30が構成されている。
【0042】
そして、本形態例では、第1の押圧受面31aと第2の押圧受面31bとで一方の挟圧片部20の押圧面21との面同士間の角度が異なるように、第1の押圧受面31aと第2の押圧受面31bとに対する装着用の嵌合孔30aの穿設方向の角度が異なるように設けられている。
【0043】
これによれば、
図30の状態では、一方の挟圧片部20の押圧面21と、他方の挟圧片部30の第1の押圧受面31aとが、相互にほぼ平行な面になるように構成されている。そして、
図31の状態では、
図30の状態(第1の装着形態)から他方の挟圧片部30を表裏反転させて他方の把持片部12の先端部(被装着用の突起部12a)に装着した形態(第2の装着形態)であり、一方の挟圧片部20の押圧面21と、他方の挟圧片部30の第2の押圧受面31bとにおいて、その間隔が先端から後方へ向かって徐々に広くなるように構成されている。
【0044】
そして、本形態例では、装着用の嵌合孔30aが、他方の挟圧片部30の一端30bから他端30cに貫通するように穿設されて設けられ、その他方の挟圧片部30の一端30b又は他端30cのどちらからも被装着用の突起部12aに装着可能に設けられている。
【0045】
これによれば、
図32及び
図33に示すように、他方の挟圧片部30の前後を反転することで、それぞれの形態に他方の挟圧片部30を他方の把持片部12の先端部に装着することができる。すなわち、
図32の状態では、
図30の状態(第1の装着形態)から他方の挟圧片部30の前後が反転されて他方の挟圧片部30の一端30bから被装着用の突起部12aが挿入され、一方の挟圧片部20の押圧面21と第1の押圧受面31aとで金具を挟むことができる第3の装着形態となるように一対の挟圧片部20、30が構成されている。また、
図33状態では、
図31の状態(第2の装着形態)から他方の挟圧片部30の前後が反転されて他方の挟圧片部30の一端30bから被装着用の突起部12aが挿入され、一方の挟圧片部20の押圧面21と第2の押圧受面31bとで金具を挟むことができる第4の装着形態となるように一対の挟圧片部20、30が構成されている。
【0046】
このように、本形態例によれば、他方の挟圧片部30を他方の把持片部12の先端部に装着した状態として、一方の挟圧片部20の押圧面21と他方の挟圧片部30の押圧受面31(31a、31b)との閉じ角度がそれぞれ異なる第1~4の形態の4通りに構成することができる。従って、金具の形態に合わせて、この第1~4の形態のいずれかを用いることができ、より適切にカシメ作業などを行うことができる。なお、
図32に示した第3の形態において、一方の挟圧片部20の押圧面21と他方の挟圧片部30の押圧受面31(31a)の閉じ角度が最も大きくなっており、その閉じた状態で両面の間隔が先端から後方へ向かってテーパ状に最も広くなる形態になっている。
【0047】
また、本形態例では、一方の把持片部11の後端に略直角に折られた形状に設けられた折り片部11aを備えている。この折り片部11aによれば、例えば断面U字状に形成されたがま口の口金の溝に、がま口の袋部を構成する布の端部を差し込むと共に紙紐を入れ、その両者を押し込むように口金の溝に差し込みながら押圧する際に用いることができる。これによれば、従来から、がま口専用の差し込む器具はあるが、この折り片部11aによってそれに代用することができる。
【0048】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0049】
11 一方の把持片部
11a 折り片部
12 他方の把持片部
12a 被装着用の突起部
13 枢軸
15 軸着係合孔
20 一方の挟圧片部
21 押圧面
21a 先端部の押圧面
21b 後端部の押圧面
21c 逃げ部
30 他方の挟圧片部
30a 装着用の嵌合孔
30b 一端
30c 他端
31 押圧受面
31a 第1の押圧受面
31b 第2の押圧受面
32 受面板部
32a ボルト部
33 受面基部
33a 上部
33b 下部
34 スリット部
35 受面板部の移動手段
36 操作ナット
37 金具進入方向の受け面
39 装着用穴部
41 一方の嵌め部材
42 他方の嵌め部材
42a 装着用突起
50 スプリング
60 磁石