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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031214
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20240229BHJP
   B60C 3/04 20060101ALI20240229BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B60C13/00 E
B60C3/04
B60C13/00 H
B60C11/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134635
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西島 茂樹
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA33
3D131AA34
3D131AA35
3D131AA36
3D131AA39
3D131BB01
3D131BC05
3D131BC31
3D131BC34
3D131BC47
3D131CA03
3D131DA09
3D131DA33
3D131DA34
3D131DA54
3D131DA56
3D131EA02U
3D131EA08X
3D131EA09V
3D131EA09W
3D131EA09X
3D131EA09Y
3D131EA10Y
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EC22U
3D131GA19
3D131HA33
3D131HA45
3D131LA28
(57)【要約】
【課題】質量の増加を抑えながら、見栄えの向上を達成できる、タイヤ2の提供。
【解決手段】タイヤ2は、JATMA規格又はETRTO規格に規定される、新品寸法の外径最大値から4mm引いた値よりも小さい外径を有し、前記新品寸法の総幅最大から5mm引いた値よりも小さい総幅を有する。タイヤ2の外面2Gは、トレッド面20と、一対のサイド面24とを備える。トレッド面20は赤道面との交点である赤道PCを有する。それぞれのサイド面24は最大幅位置PWを有する。タイヤ2の正規状態において、ショルダー線分の長さLShの、基準線分の長さLBSに対する比率は85.9%以上89.3%以下である。ショルダー線分のうち、タイヤ2のカーカス12からショルダー基準点PBGまでの長さLGCの、ショルダー線分の長さLShに対する比率は6%以上12%以下である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
JATMA規格又はETRTO規格に規定される、新品寸法の外径最大値から4mm引いた値よりも小さい外径を有し、前記新品寸法の総幅最大から5mm引いた値よりも小さい総幅を有するタイヤであって、
一対のビードと、一対の前記ビードの間を架け渡すカーカスとを備え、
前記タイヤの外面が、路面と接地するトレッド面と、前記トレッド面に連なる一対のサイド面とを備え、
前記トレッド面が、赤道面との交点である赤道を有し、
それぞれの前記サイド面が、前記タイヤが最大幅を示す最大幅位置を有し、
前記タイヤの子午線断面において、
ビードベースラインと前記赤道面との交点が第一基準点であり、
前記赤道を通り軸方向にのびる直線と、前記最大幅位置を通り径方向にのびる直線との交点が第二基準点であり、
前記第一基準点と前記第二基準点とを結ぶ線分が基準線分であり、
前記基準線分と前記タイヤの外面との交点がショルダー基準点であり、
前記第一基準点と前記ショルダー基準点とを結ぶ線分がショルダー線分であり、
前記タイヤを正規リムに組み、前記タイヤの内圧を正規内圧に調整し、前記タイヤに荷重をかけていない、正規状態において、
前記ショルダー線分の長さの、前記基準線分の長さに対する比率が85.9%以上89.3%以下であり、
前記ショルダー線分のうち、前記カーカスから前記ショルダー基準点までの長さの、前記ショルダー線分の長さに対する比率が6%以上12%以下である、
タイヤ。
【請求項2】
前記正規状態の前記タイヤに正規荷重の70%の荷重を付与して、前記タイヤを平面に接触させて得られる、接地面の軸方向外端が基準接地端であり、前記基準接地端に対応する、前記タイヤの外面上の位置が、基準接地位置であり、
前記正規状態において、前記赤道から前記基準接地位置までの軸方向距離の、前記赤道から前記ショルダー基準点までの軸方向距離に対する比率が、79%以上86%以下である、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記正規状態において、前記赤道から前記最大幅位置までの軸方向距離の、前記赤道から前記ショルダー基準点までの軸方向距離に対する比が1.07以上1.13以下である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記サイド面の輪郭線が上部円弧を含み、
前記上部円弧が、前記最大幅位置から前記ショルダー基準端に向かってのびる円弧であり、
前記正規状態において、前記ショルダー基準端から前記上部円弧の外端までの径方向距離の、前記ショルダー基準端から前記最大幅位置までの径方向距離に対する比率が50%以上60%以下である、
請求項1又は2に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。詳細には、本発明は乗用車に装着されるタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示されるように、タイヤTは、ホイールハウスHに収容される。ホイールハウスHにタイヤTが干渉しないように、タイヤTの形状は設定される。
タイヤTの形状は、操縦安定性、乗り心地、転がり抵抗、耐偏摩耗性等の性能に影響する。耐偏摩耗性の向上のために、例えば、子午線断面におけるトレッド面の輪郭線が調整される(下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-060129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、乗用車では、性能だけでなく外観も重視される。特に、外観に関しては、車両とタイヤとを一つのまとまりとして、見栄えの向上が求められている。
前述したように、車両BのホイールハウスHにタイヤTは収容される。ホイールハウスHにタイヤTが干渉しないように、ホイールハウスHとタイヤTとの間には隙間(図7の符号G)が設けられる。隙間Gは、後述する第一基準点PB1と第二基準点PB2とを通る直線に沿って計測される、タイヤTの外面からホイールハウスまでの距離である。
隙間Gが小さくなるほど、車両BとタイヤTとの一体感が高まる。一体感の高まりは、見栄えの向上に貢献する。
図7に点線で示されるように、ショルダー部分Sが角張った形状を有するようにトレッド面の輪郭線を修正すれば、隙間Gは小さくなり、車両BとタイヤTとの一体感は高まる。しかし単純にトレッド面の輪郭線を修正すると、ショルダー部分Sがせり出し、ショルダー部分Sのボリュームが増加する。ボリュームの増加はタイヤの質量を増加させる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、質量の増加を抑えながら、見栄えの向上を達成できる、タイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るタイヤは、JATMA規格又はETRTO規格に規定される、新品寸法の外径最大値から4mm引いた値よりも小さい外径を有し、前記新品寸法の総幅最大から5mm引いた値よりも小さい総幅を有するタイヤである。前記タイヤは、一対のビードと、一対の前記ビードの間を架け渡すカーカスとを備える。前記タイヤの外面は、路面と接地するトレッド面と、前記トレッド面に連なる一対のサイド面とを備える。前記トレッド面は、赤道面との交点である赤道を有し、それぞれの前記サイド面が、前記タイヤが最大幅を示す最大幅位置を有する。前記タイヤの子午線断面において、ビードベースラインと前記赤道面との交点が第一基準点であり、前記赤道を通り軸方向にのびる直線と、前記最大幅位置を通り径方向にのびる直線との交点が第二基準点であり、前記第一基準点と前記第二基準点とを結ぶ線分が基準線分であり、前記基準線分と前記タイヤの外面との交点がショルダー基準点であり、前記第一基準点と前記ショルダー基準点とを結ぶ線分がショルダー線分である。前記タイヤを正規リムに組み、前記タイヤの内圧を正規内圧に調整し、前記タイヤに荷重をかけていない、正規状態において、前記ショルダー線分の長さの、前記基準線分の長さに対する比率は85.9%以上89.3%以下であり、前記ショルダー線分のうち、前記カーカスから前記ショルダー基準点までの長さの、前記ショルダー線分の長さに対する比率は6%以上12%以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、質量の増加を抑えながら、見栄えの向上を達成できる、タイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤの一部を示す断面図である。
図2】基準線分及びショルダー線分を説明する断面図である。
図3】トレッド面の輪郭線を説明する断面図である。
図4】タイヤ各部の寸法を説明する断面図である。
図5】タイヤの接地面形状を示す模式図である。
図6】タイヤが装着される車両前部を示す側面図である。
図7図6のVII-VII線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0010】
タイヤはリムに組まれる。タイヤの内部には空気が充填され、タイヤの内圧が調整される。本発明において、リムに組まれたタイヤは、タイヤ-リム組立体である。タイヤ-リム組立体は、リムと、このリムに組まれたタイヤとを備える。
【0011】
本発明においては、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけていない状態は、正規状態と称される。
【0012】
本発明においては、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの断面(以下、基準切断面)において、測定される。この測定では、左右のビード間の距離は、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致するようにセットされる。
【0013】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0014】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0015】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0016】
本発明において、「タイヤの呼び」は、JIS D4202「自動車用タイヤ-呼び方及び諸元」に規定された「タイヤの呼び」である。
【0017】
本発明において、タイヤのトレッド部とは、路面と接地する、タイヤの部位である。ビード部とは、リムに嵌め合わされる、タイヤの部位である。サイドウォール部とは、トレッド部とビード部との間を架け渡す、タイヤの部位である。タイヤは、部位として、トレッド部、一対のビード部及び一対のサイドウォール部を備える。トレッド部の中央部分はクラウン部分とも称される。トレッド部の端の部分はショルダー部分とも称される。
【0018】
[本発明の実施形態の概要]
[構成1]
本発明の一態様に係るタイヤは、JATMA規格又はETRTO規格に規定される、新品寸法の外径最大値から4mm引いた値よりも小さい外径を有し、前記新品寸法の総幅最大から5mm引いた値よりも小さい総幅を有するタイヤであり、一対のビードと、一対の前記ビードの間を架け渡すカーカスとを備え、前記タイヤの外面が、路面と接地するトレッド面と、前記トレッド面に連なる一対のサイド面とを備え、前記トレッド面が、赤道面との交点である赤道を有し、それぞれの前記サイド面が、前記タイヤが最大幅を示す最大幅位置を有し、前記タイヤの子午線断面において、ビードベースラインと前記赤道面との交点が第一基準点であり、前記赤道を通り軸方向にのびる直線と、前記最大幅位置を通り径方向にのびる直線との交点が第二基準点であり、前記第一基準点と前記第二基準点とを結ぶ線分が基準線分であり、前記基準線分と前記タイヤの外面との交点がショルダー基準点であり、前記第一基準点と前記ショルダー基準点とを結ぶ線分がショルダー線分であり、前記タイヤを正規リムに組み、前記タイヤの内圧を正規内圧に調整し、前記タイヤに荷重をかけていない、正規状態において、前記ショルダー線分の長さの、前記基準線分の長さに対する比率が85.9%以上89.3%以下であり、前記ショルダー線分のうち、前記カーカスから前記ショルダー基準点までの長さの、前記ショルダー線分の長さに対する比率が6%以上12%以下である。
【0019】
このようにタイヤを整えることにより、このタイヤは隙間を小さくすることができる。隙間が小さくなるほど、車両とタイヤとの一体感が高まる。一体感の高まりは、見栄えの向上に貢献する。
このタイヤはホイールハウスと干渉することを防止できる。ショルダー部分のせり出しが適切に維持されるので、偏摩耗の発生が効果的に抑えられる。
タイヤをインフレートした際、カーカスラインが自然平衡形状を保つことができる。カーカスに均一な張力が作用する。タイヤの変形が小さく抑えられる。このタイヤは良好な耐偏摩耗性を維持できる。
ショルダー部分におけるゴムのボリュームが適切に維持される。ショルダー部分のボリュームの増加が抑えられるので、見栄え向上のためにトレッド面の輪郭線を修正し、ショルダー部分を角張った形状に整えても、タイヤ2の質量増加が抑えられる。
このタイヤは、質量の増加を抑えながら、見栄えの向上を達成できる。しかもこのタイヤでは、良好な耐偏摩耗性も維持される。
【0020】
[構成2]
好ましくは、前述の[構成1]に記載のタイヤにおいて、前記正規状態の前記タイヤに正規荷重の70%の荷重を付与して、前記タイヤを平面に接触させて得られる、接地面の軸方向外端が基準接地端であり、前記基準接地端に対応する、前記タイヤの外面上の位置が、基準接地位置であり、前記正規状態において、前記赤道から前記基準接地位置までの軸方向距離の、前記赤道から前記ショルダー基準点までの軸方向距離に対する比率が、79%以上86%以下である。
このようにタイヤを整えることにより、このタイヤは隙間を効果的に小さくすることができる。このタイヤは、見栄えの向上に貢献できる。
ショルダー部分において接地圧が局所的に高まることが抑えられるので、良好な耐偏摩耗性が維持される。
【0021】
[構成3]
好ましくは、前述の[構成1]又は[構成2]に記載のタイヤにおいて、前記正規状態において、前記赤道から前記最大幅位置までの軸方向距離の、前記赤道から前記ショルダー基準点までの軸方向距離に対する比が1.07以上1.13以下である。
このようにタイヤを整えることにより、ショルダー基準端と最大幅位置との間でタイヤの外面の輪郭変化を小さく抑えることができる。サイドウォール部に特異な歪が生じることが抑えられるので、良好な耐久性が維持される。
サイドウォール部におけるゴムのボリュームが適切に維持される。このタイヤでは、質量の増加が抑えられる。
【0022】
[構成4]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成3]のいずれか一の構成に記載のタイヤにおいて、前記サイド面の輪郭線が上部円弧を含み、前記上部円弧が、前記最大幅位置から前記ショルダー基準端に向かってのびる円弧であり、前記正規状態において、前記ショルダー基準端から前記上部円弧の外端までの径方向距離の、前記ショルダー基準端から前記最大幅位置までの径方向距離に対する比率が50%以上60%以下である。
このようにタイヤを整えることにより、このタイヤは、ショルダー基準端から最大幅位置までの領域におけるゴムのボリュームを低減できる。このタイヤは、質量の増加を抑えることができる。
ショルダー基準端に対して上部円弧の外端が適切な距離をあけて配置される。サイドウォール部に特異な歪が生じることが抑えられるので、良好な耐久性が維持される。
【0023】
[本発明の実施形態の詳細]
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ2の一部を示す。このタイヤ2は、乗用車用空気入りタイヤである。
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面(以下、子午線断面)の一部を示す。図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
図1においてタイヤ2はリムR(正規リム)に組まれている。タイヤ2の内部には空気が充填され、タイヤ2の内圧が調整される。
【0024】
図1において、軸方向に延びる実線BBLはビードベースラインである。このビードベースラインは、リムRのリム径(JATMA等参照)を規定する線である。
【0025】
図1において符号PCで示される位置は、タイヤ2の外面2G(具体的には、後述するトレッド面)と赤道面との交点である。交点PCはタイヤ2の赤道である。後述するが、このタイヤ2の赤道面上には溝が位置する。この場合、溝がないと仮定して得られる仮想外面に基づいて赤道PCは特定される。赤道PCはタイヤ2の径方向外端である。
【0026】
図1において符号PWで示される位置はタイヤ2の軸方向外端(以下、外端PW)である。模様や文字等の装飾が外面にある場合、外端PWは、装飾がないと仮定して得られる仮想外面に基づいて特定される。
正規状態において得られる第一外端PWから第二外端PWまでの軸方向距離がタイヤ2の断面幅(JATMA等参照)である。外端PWは最大幅位置とも称される。最大幅位置とは、タイヤ2が最大幅を示す位置である。
【0027】
図1において符号PTで示される位置はタイヤ2のトゥである。トゥPTは、タイヤ2の外面2Gと内面2Nとの境界である。
【0028】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、バンド16及びインナーライナー18を備える。
【0029】
トレッド4は、トレッド面20において路面と接地する。トレッド4は、路面と接地するトレッド面20を有する。トレッド4には溝22が刻まれる。トレッド4は、後述するカーカス12の径方向外側に位置する。
トレッド面20はタイヤ2の外面2Gの一部である。トレッド面20にはサイド面24が連なる。タイヤ2の外面2Gは、トレッド面20と、一対のサイド面24とを備える。
トレッド面20は赤道PCを含み、それぞれのサイド面24は最大幅位置PWを含む。
【0030】
トレッド4は、キャップ部26と、ベース部28とを備える。キャップ部26はトレッド面20を含む。キャップ部26は、耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなる。ベース部28はキャップ部26の径方向内側に位置する。ベース部28はその全体が、キャップ部26に覆われる。ベース部28は低発熱性の架橋ゴムからなる。
【0031】
それぞれのサイドウォール6はトレッド4に連なる。サイドウォール6はトレッド4の径方向内側に位置する。サイドウォール6はカーカス12の軸方向外側に位置する。サイドウォール6は、耐カット性を考慮した架橋ゴムからなる。サイドウォール6はサイド面24の一部を構成する。
【0032】
それぞれのクリンチ8はサイドウォール6の径方向内側に位置する。クリンチ8はリムRと接触する。クリンチ8は耐摩耗性が考慮された架橋ゴムからなる。クリンチ8はサイドウォール部の一部を構成する。
【0033】
それぞれのビード10はクリンチ8の軸方向内側に位置する。ビード10はサイドウォール6の径方向内側に位置する。
ビード10は、コア30と、エイペックス32とを備える。コア30は周方向にのびる。図示されないが、コア30はスチール製のワイヤーを含む。エイペックス32はコア30の径方向外側に位置する。エイペックス32は径方向外向きに先細りである。エイペックス32は高い剛性を有する架橋ゴムからなる。
【0034】
カーカス12は、トレッド4、一対のサイドウォール6及び一対のクリンチ8の内側に位置する。カーカス12は、一対のビード10の間、すなわち、第一のビード10と第二のビード10(図示されず)との間を架け渡す。カーカス12は少なくとも1枚のカーカスプライ34を含む。
【0035】
このタイヤ2のカーカス12は1枚のカーカスプライ34で構成される。図示されないが、カーカスプライ34は並列された多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードは赤道面と交差する。このタイヤ2のカーカス12はラジアル構造を有する。このタイヤ2では、有機繊維からなるコードがカーカスコードとして用いられる。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0036】
カーカスプライ34は、プライ本体34aと、一対の折り返し部34bとを含む。プライ本体34aは、一対のビード10の間を架け渡す。それぞれの折り返し部34bは、プライ本体34aに連なりそれぞれのビード10で軸方向内側から外側に向かって折り返される。このタイヤ2では、折り返し部34bの端は最大幅位置PWの径方向外側に位置する。折り返し部34bの端が最大幅位置PWの径方向内側に位置してもよい。
【0037】
ベルト14はトレッド4の径方向内側に位置する。ベルト14はカーカス12に積層される。前述の赤道面は、ベルト14の軸方向幅の中心においてベルト14と交差する。
このタイヤ2では、ベルト14の軸方向幅はタイヤ2の断面幅の70%以上90%以下である。
【0038】
ベルト14は、第一層36と、第二層38とを備える。第一層36はプライ本体34aの径方向外側に位置し、プライ本体34aに積層される。第二層38は第一層36の径方向外側に位置し、第一層36に積層される。
【0039】
図1に示されるように、第二層38の端は第一層36の端の径方向内側に位置する。第二層38は第一層36よりも狭い。第二層38の端から第一層36の端までの長さは3mm以上10mm以下である。前述のベルト14の軸方向幅は、幅広の第一層36の軸方向幅で表される。
【0040】
図示されないが、第一層36及び第二層38はそれぞれ、並列した多数のベルトコードを含む。これらベルトコードはトッピングゴムで覆われる。それぞれのベルトコードは赤道面に対して傾斜する。ベルトコードの材質はスチールである。
【0041】
バンド16は、径方向においてカーカス12とトレッド4との間に位置する。バンド16は、トレッド4の内側においてベルト14に積層される。
バンド16の端はベルト14の端の軸方向外側に位置する。ベルト14の端からバンド16の端までの長さは3mm以上7mm以下である。
前述の赤道面は、バンド16の軸方向幅の中心においてバンド16と交差する。バンド16の両端はそれぞれ、赤道面を挟んで相対するように配置される。バンド16は、その第一端と第二端との間を架け渡す。このバンド16はフルバンドである。このタイヤ2では、バンド16の端を覆い、軸方向に離して配置される一対のエッジバンドがさらに設けられてもよい。
【0042】
図示されないが、バンド16はらせん状に巻かれたバンドコードを含む。バンドコードはトッピングゴムで覆われる。バンド16においてバンドコードは実質的に周方向にのびる。詳細には、バンドコードが周方向に対してなす角度は、5°以下である。バンド16はジョイントレス構造を有する。有機繊維からなるコードがバンドコードとして用いられる。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0043】
インナーライナー18はカーカス12の内側に位置する。インナーライナー18はタイヤ2の内面2Nを構成する。インナーライナー18は空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー18はタイヤ2の内圧を保持する。
【0044】
図2は、タイヤ2の子午線断面を模式的に示す。図2は外面2Gの輪郭線を示す。輪郭線は、溝、模様や文字等の装飾がないと仮定して得られる仮想外面により表される。図2の点線は、装飾の一例としてのリムプロテクターである。
詳述しないが、本発明において外面2Gの輪郭線は、例えば変位センサーを用いて、正規状態のタイヤ2の外面形状を計測することで得られる。
【0045】
図2において、符号ODXで示される長さはJATMA規格に規定される新品寸法の外径最大値である。軸方向にのびる実線DLは、外径最大値ODXを示す寸法線である。タイヤ2の呼びが「195/65R15」である場合、新品寸法の外径最大値ODXは643mmである。
図2において、軸方向にのびる直線DBLは、新品寸法の外径最大値ODXより4mm小さい外径を示す、外径基準線である。両矢印dは寸法線DLから外径基準線DBLまでの径方向距離である。本発明において径方向距離dは2.0mmである。タイヤ2の呼びが「195/65R15」である場合、第一の外径基準線DBLから第二の外径基準線DBL(図示されず)までの径方向距離は639mmである。
外径最大値ODXとして、ETRTO規格に規定される新品寸法の外径最大値が用いられてもよい。
【0046】
図2において、符号AWXで示される長さはJATMA規格に規定される新品寸法の総幅最大である。径方向にのびる実線WLは、総幅最大AWXを示す寸法線である。タイヤ2の呼びが「195/65R15」である場合、新品寸法の総幅最大は209mmである。
図2において、径方向にのびる直線WBLは、新品寸法の総幅最大AWXより5mm小さい総幅を示す、総幅基準線である。両矢印wは寸法線WLから総幅基準線WBLまでの軸方向距離である。本発明において軸方向距離wは2.5mmである。タイヤ2の呼びが「195/65R15」である場合、第一の総幅基準線WBLから第二の総幅基準線WBL(図示されず)までの軸方向距離は204mmである。
総幅最大AWXとして、ETRTO規格に規定される新品寸法の総幅最大が用いられてもよい。
【0047】
このタイヤ2はその全体が、第一の外径基準線DBL及び第二の外径基準線DBL、並びに、第一の総幅基準線WBL及び第二の総幅基準線WBLで囲まれる領域内に収まる。言い換えれば、このタイヤ2は、JATMA規格又はETRTO規格に規定される、新品寸法の外径最大値から4mm引いた値よりも小さい外径を有し、新品寸法の総幅最大から5mm引いた値よりも小さい総幅を有する。
【0048】
前述したように、タイヤ2の外面2Gは、路面と接地するトレッド面20と、トレッド面20に連なる一対のサイド面24とを備える。トレッド面20は赤道PCを有する、それぞれのサイド面24は、最大幅位置PWを有する。
【0049】
図2において符号PB1で示される位置は、ビードベースラインと赤道面との交点である。本発明において、この交点PB1が第一基準点である。
図2において実線PCLは、赤道PCを通り軸方向にのびる直線である。実線PWLは、最大幅位置PWを通り径方向にのびる直線である。符号PB2で示される位置は、直線PCLと直線PWLとの交点である。本発明において、この交点PB2が第二基準点である。第一基準点PB1と第二基準点PB2とを結ぶ線分が基準線分であり、図2の符号LBSで示される長さが基準線分の長さである。
図2において符号PBGは、基準線分と外面2Gとの交点である。本発明において、この交点PBGがショルダー基準点である。第一基準点PB1とショルダー基準点PBGとを結ぶ線分がショルダー線分であり、図2の符号LShで示される長さがショルダー線分の長さである。
【0050】
本発明においては、第一基準点PB1と第二基準点PB2とを通る直線に沿って計測される、タイヤ2の外面2Gからホイールハウス(図示されず)までの距離が、図7に示された、タイヤTと車両BのホイールハウスHとの間に形成される隙間Gである。この隙間Gが22mm未満になると、タイヤ2がホイールハウスと干渉する。言い換えれば、車両における干渉限界隙間量は22mmである。
【0051】
図3は、子午線断面における、タイヤ2の外面2Gの輪郭線の一部を示す。
子午線断面においてトレッド面20の輪郭線は軸方向に並ぶ複数の円弧で構成される。言い換えれば、トレッド面20の輪郭線は軸方向に並ぶ複数の円弧を含む。
複数の円弧のうち、軸方向において中央に位置する円弧がセンター円弧である。図3において符号Rcで示される矢印はセンター円弧の半径である。センター円弧は、赤道PCを通る。センター円弧の中心は赤道面上に位置する。
複数の円弧のうち、軸方向において外側に位置する円弧がショルダー円弧である。図3において符号Rshで示される矢印はショルダー円弧の半径である。ショルダー円弧は、トレッド面20の輪郭線を構成する複数の円弧の中で、最も小さい半径Rshを有する。
このタイヤ2のトレッド面20の輪郭線は、センター円弧とショルダー円弧との間に、2つの円弧を含む。この2つの円弧にうち、センター円弧側に位置する円弧がミドル円弧であり、ショルダー円弧側に位置する円弧がサイド円弧である。図3において符号Rmで示される矢印はミドル円弧の半径であり、符号Rsで示される矢印はサイド円弧の半径である。ミドル円弧の半径Rmはセンター円弧の半径Rcよりも小さい。サイド円弧の半径Rsはミドル円弧の半径Rmよりも小さい。
このタイヤ2では、トレッド面20の輪郭線を構成する複数の円弧は、赤道PCを通る円弧であるセンター円弧と、軸方向において最も外側に位置し、最も小さな半径Rshを有する円弧である一対のショルダー円弧と、センター円弧の隣に位置し、センター円弧の半径Rcよりも小さな半径Rmを有する円弧である一対のミドル円弧と、ミドル円弧とショルダー円弧との間に位置し、ミドル円弧の半径Rmよりも小さな半径Rsを有する一対のサイド円弧とを含む。具体的には、複数の円弧は、センター円弧、一対のミドル円弧、一対のサイド円弧及び一対のショルダー円弧からなる。
【0052】
図3において符号CMで示される位置はセンター円弧とミドル円弧との境界である。ミドル円弧は、境界CMにおいてセンター円弧と接する。符号MSで示される位置は、ミドル円弧とサイド円弧との境界である。サイド円弧は、境界MSにおいてミドル円弧と接する。符号SHで示される位置は、サイド円弧とショルダー円弧との境界である。ショルダー円弧は、境界SHにおいてサイド円弧と接する。符号HUで示される位置はショルダー円弧とサイド面24の輪郭線との境界である。サイド面24の輪郭線は、境界HUにおいてショルダー円弧と接する。
このタイヤ2では、境界HUはショルダー基準点PBGの径方向内側に位置する。境界HUがショルダー基準点PBGの径方向外側に位置してもよいし、境界HUの位置がショルダー基準点PBGの位置と一致していてもよい。
【0053】
図3において符号WCMで示される長さは、第一の境界CMから第二の境界CMまでの軸方向距離である。軸方向距離WCMの中心は、赤道面の位置に一致する。符号WMSで示される長さは、第一の境界MSから第二の境界MSまでの軸方向距離である。軸方向距離WSMの中心は、赤道面の位置に一致する。符号WXで示される長さはこのタイヤ2の断面幅である。
このタイヤ2では、軸方向距離WCMの、断面幅WXに対する比率(WCM/WX)は25%以上40%以下であるのが好ましい。軸方向距離WMSの、断面幅WXに対する比率(WMS/WX)は45%以上60%以下であるのが好ましい。
【0054】
図3において直線LSHは、境界SHでショルダー円弧と接する接線である。直線LHUは、境界HUでショルダー円弧と接する接線である。符号PEは、接線LSHと接線LHUとの交点である。本発明においては、この交点PEがトレッド4の基準端である。符号WTで示される長さは、第一の基準端PEから第二の基準端PEまでの軸方向距離である。本発明においては、軸方向距離WTがトレッド4の幅である。
このタイヤ2では、トレッド4の幅WTの、断面幅WXに対する比率(WT/WX)は、75%以上92%以下であるのが好ましい。
【0055】
サイド面24の輪郭線は、少なくとも1の円弧を含む。このサイド面24の輪郭線は、上部円弧を含む。上部円弧は、最大幅位置PWを含み、この最大幅位置PWからショルダー基準端PBGに向かってのびる円弧である。上部円弧は外向きに凸な円弧であり、その中心は、最大幅位置PWを通り軸方向にのびる直線上に位置する。図3において符号UGで示される位置は、上部円弧の外端である。
【0056】
図4は、図2における直線PCL及び直線PWL並びに基準線分とともに、図1の子午線断面におけるカーカス12の輪郭線を示す。このタイヤ2では、カーカス12の輪郭線はプライ本体34aの外面の輪郭線で表される。プライ本体34aの外面が特定できない場合は、プライ本体34aに含まれるカーカスコードによってカーカス12の輪郭線が表される。
【0057】
図4において、符号PBCは、基準線分(又はショルダー基準線分)と、カーカス12の輪郭線との交点である。符号LGCで示される長さは、交点PBCとショルダー基準点PBGとを結ぶ線分の長さである。長さLGCは、基準線分(又はショルダー基準線分)に沿って計測される。本発明においては、この長さLGCが、ショルダー線分のうち、カーカス12からショルダー基準点PBGまでの長さである。
【0058】
このタイヤ2では、正規状態において、ショルダー線分の長さLShの、基準線分の長さLBSに対する比率(LSh/LBS)は85.9%以上89.3%以下である。
比率(LSh/LBS)が89.3%以下であるので、このタイヤ2は、ホイールハウスから適度に離して配置される。このタイヤ2では、ホイールハウスと干渉することが防止される。ショルダー部分のせり出しが適切に維持されるので、偏摩耗の発生が効果的に抑えられる。
従来タイヤでは、比率(LSh/LBS)は85.9%未満である。これに対して、このタイヤ2では、比率(LSh/LBS)は85.9%以上であり、従来タイヤに比べて、基準線分に占めるショルダー線分の割合が大きい。このタイヤ2では、干渉限界隙間量に近い、隙間Gが形成される。言い換えれば、このタイヤ2は隙間Gを小さくすることができる。隙間Gが小さくなるので、車両とタイヤ2との一体感が高められる。一体感の高まりは、見栄えの向上に貢献できる。
【0059】
タイヤにおいて比率(LSh/LBS)を増大させることは、トレッド面の輪郭線の修正を伴う。具体的には、ショルダー部分が角張った形状を有するように、トレッド面の輪郭線が修正される。この場合、単純にトレッド面の輪郭線を修正すると、ショルダー部分がせり出し、ショルダー部分のボリュームが増加する。ボリュームの増加はタイヤの質量を増加させる。
【0060】
しかし、このタイヤ2では、カーカス12の輪郭線(カーカスラインとも称される。)とトレッド面20の輪郭線との間の距離、言い換えれば、カーカス12からタイヤ2の外面までの長さがコントロールされる。具体的には、ショルダー線分のうち、カーカス12からショルダー基準点PBGまでの長さLGCの、ショルダー線分の長さLShに対する比率(LGC/LSh)が6%以上12%以下である。
【0061】
比率(LGC/LSh)が6%以上であるので、タイヤ2をインフレートした際、カーカスラインが自然平衡形状を保つことができる。カーカス12に均一な張力が作用する。タイヤ2の変形が小さく抑えられる。このタイヤ2は良好な耐偏摩耗性を維持できる。この観点から、比率(LGC/LSh)は7%以上であるのが好ましく、8%以上であるのがより好ましい。
比率(LGC/LSh)が12%以下であるので、ショルダー部分におけるゴムのボリュームが適切に維持される。ショルダー部分のボリュームの増加が抑えられるので、見栄え向上のためにトレッド面20の輪郭線を修正し、ショルダー部分を角張った形状に整えても、タイヤ2の質量増加が抑えられる。この観点から、比率(LGC/LSh)は11%以下であるのが好ましく、10%以下であるのがより好ましい。
【0062】
このタイヤ2では、比率(LSh/LBS)が85.9%以上89.3%以下であり、比率(LGC/LSh)が6%以上12%以下である。
このタイヤ2は、質量の増加を抑えながら、見栄えの向上を達成できる。しかもこのタイヤ2では、良好な耐偏摩耗性も維持される。
【0063】
図5は、このタイヤ2の接地面形状を示す。図5において、左右方向はタイヤ2の軸方向に対応する。上下方向は、タイヤ2の周方向に対応する。
【0064】
前述したように、トレッド4には溝22が刻まれる。溝22は周方向にのびる溝(以下周方向溝40)を含む。このタイヤ2では、3本の周方向溝40がトレッド4に刻まれ、4本の陸部42が構成される。
3本の周方向溝40のうち、軸方向において外側に位置する周方向溝40sがショルダー周方向溝である。ショルダー周方向溝40sの軸方向内側に位置する周方向溝40mがミドル周方向溝である。このタイヤ2のミドル周方向溝40mは、赤道面上に位置する。
4本の陸部42のうち、軸方向において外側に位置する陸部42sがショルダー陸部である。ショルダー陸部42sの軸方向内側に位置する陸部42mがミドル陸部である。
【0065】
接地面は、タイヤ接地面形状測定装置(図示されず)を用いて、正規状態のタイヤ2に所定の荷重を付与して、このタイヤ2を平面に接触させることにより得られる。接地面に含まれる各陸部42の輪郭をトレースすることで、図5に示された接地面形状が得られる。接地面を得るにあたってタイヤ2は、その軸方向が路面に対して平行となるように配置される。このタイヤ2には、路面に対して垂直な向きに前述の荷重がかけられる。
【0066】
図5において符号GEで示される位置は接地面の軸方向外端(接地端とも称される。)である。符号WCで示される長さは、接地面の第一の軸方向外端GEから第二の軸方向外端GEまでの軸方向距離(接地幅とも称される。)である。
本発明においては、正規状態のタイヤ2に正規荷重の70%の荷重を付与して、タイヤ2を平面に接触させて得られる、タイヤ2の接地面の軸方向外端GEが基準接地端であり、その軸方向距離WCが基準接地幅である。基準接地端GEに対応するタイヤ2の外面2Gの位置が、基準接地位置である。
【0067】
図4において符号BGEで示される位置が前述の基準接地位置である。両矢印CEで示される長さは、赤道PCから基準接地位置BGEまでの軸方向距離である。両矢印CGで示される長さが、赤道PCからショルダー基準点PBGまでの軸方向距離である。両矢印CWで示される長さが、赤道PCから最大幅位置PWまでの軸方向距離である。
【0068】
このタイヤ2では、その正規状態において、軸方向距離CEの軸方向距離CGに対する比率(CE/CG)は79%以上86%以下であるのが好ましい。
比率(CE/CG)が79%以上に設定されることにより、このタイヤ2は隙間Gを効果的に小さくすることができる。このタイヤ2は、見栄えの向上に貢献できる。この観点から、比率(CE/CG)は80%以上であるのがより好ましく、81%以上であるのがさらに好ましい。
比率(CE/CG)が86%以下に設定されることにより、基準接地位置BGEがショルダー基準点PBGから適切な距離をあけて配置される。これにより、ショルダー部分(具体的にはショルダー陸部42s)において接地圧が局所的に高まることが抑えられる。このタイヤ2では、良好な耐偏摩耗性が維持される。ベルト14の端部に歪が集中することが抑えられるので、良好な耐久性も維持される。この観点から、比率(CE/CG)は84%以下であるのがより好ましく、82%以下であるのがさらに好ましい。
【0069】
このタイヤ2では、その正規状態において、軸方向距離CWの軸方向距離CGに対する比(CW/CG)は1.07以上1.13以下であるのが好ましい。
比(CW/CG)が1.07以上に設定されることにより、ショルダー基準端PBGと最大幅位置PWとの間で外面2Gの輪郭変化を小さく抑えることができる。サイドウォール部に特異な歪が生じることが抑えられるので、良好な耐久性が維持される。この観点から、比(CW/CG)が1.10以上であるのがより好ましい。
比(CW/CG)が1.13以下に設定されることにより、サイドウォール部におけるゴムのボリュームが適切に維持される。このタイヤ2では、質量の増加が抑えられる。この観点から、比(CW/CG)は1.12以下であるのがより好ましい。
【0070】
このタイヤ2では、前述の境界HUと外端UGとは直線で結ばれる。この直線は、境界HUにおいてショルダー円弧と接し、外端UGにおいて上部円弧と接する。境界HUの位置と外端UGの位置とが一致していてもよい。この場合、ショルダー円弧に上部円弧が直接繋げられる。
上部円弧の外端UGをショルダー基準端PBGから離して配置するほど、ショルダー基準端PBGから最大幅位置PWまでの領域におけるゴムのボリュームの低減が可能である。ゴムボリュームの低減は、タイヤ2の軽量化に貢献する。外端UGをショルダー基準端PBGから離して配置できる観点から、外面2Gの輪郭線において、境界HUと外端UGとは直線で結ばれるのが好ましい。
【0071】
図4において符号GWで示される長さは、ショルダー基準端PBGから最大幅位置PWまでの径方向距離である。符号GGで示される長さは、ショルダー基準端PBGから上部円弧の外端UGまでの径方向距離である。
【0072】
このタイヤ2では、その正規状態において、軸方向距離GGの軸方向距離GWに対する比率(GG/GW)は50%以上60%以下であるのが好ましい。
比率(GG/GW)が50%以上に設定されることにより、このタイヤ2は、ショルダー基準端PBGから最大幅位置PWまでの領域におけるゴムのボリュームを低減できる。このタイヤ2では、質量の増加が抑えられる。この観点から、比率(GG/GW)は55%以上であるのがより好ましい。
比率(GG/GW)が60%以下に設定されることにより、ショルダー基準端PBGに対して外端UGが適切な距離をあけて配置される。サイドウォール部に特異な歪が生じることが抑えられるので、良好な耐久性が維持される。この観点から、比率(GG/GW)は57%以下であるのがより好ましい。
【0073】
タイヤにおいて比率(LSh/LBS)を増大させることは、トレッド面20の輪郭線の修正を伴う。そのため、ショルダー部分の接地圧が高まり、偏摩耗が生じることが懸念される。転がり抵抗の増加を抑えながら、見栄えの向上が達成されたタイヤ2を従来タイヤと変わりなく使用し続けるには、耐偏摩耗性への影響を考慮して、トレッド面20の輪郭線を整える必要がある。
【0074】
このタイヤ2では、センター円弧の半径Rcの、ミドル円弧の半径Rmに対する比(Rc/Rm)は1.85以上2.00以下であるのが好ましい。
比(Rc/Rm)が1.85以上に設定されることにより、センター円弧の半径Rcと、ミドル円弧の隣に位置するサイド円弧の半径Rsとの差を小さく抑えることができる。ショルダー部分の滑りが効果的に抑えられるので、偏摩耗の発生が抑制される。このタイヤ2では、良好な耐偏摩耗性が得られる。この観点から、比(Rc/Rm)は1.90以上であるのがより好ましい。
比(Rc/Rm)が2.00以下に設定されることにより、サイド円弧をより大きな半径Rsを有する円弧で構成できる。トレッド面20をより平坦な面に近づけることができる。このタイヤ2のトレッド面20は、干渉限界隙間量に近い、隙間Gを形成することに効果的に貢献できる。このタイヤ2は隙間Gを小さくすることができる。この観点から、比(Rc/Rm)は1.95以下であるのがより好ましい。
【0075】
このタイヤ2では、ミドル円弧の半径Rmの、サイド円弧の半径Rsに対する比(Rm/Rs)は2.08以上2.74以下であるのが好ましい。
比(Rm/Rs)が2.08以上に設定されることにより、ホイールハウスとの干渉を考慮しつつ、干渉限界隙間量に近い、隙間Gを形成することに効果的に貢献できるトレッド面20が構成される。このタイヤ2は車両との一体感を効果的に高めることができる。この観点から、比(Rm/Rs)は2.30以上であるのがより好ましい。
比(Rm/Rs)が2.74以下に接地されることにより、ミドル円弧の隣に位置するセンター円弧の半径Rcと、サイド円弧の半径Rsとの差を小さく抑えることができる。ショルダー部分の滑りが効果的に抑えられるので、偏摩耗の発生が抑制される。このタイヤ2では、良好な耐偏摩耗性が得られる。この観点から、比(Rm/Rs)は2.50以下であるのがより好ましい。
【0076】
このタイヤ2では、センター円弧の半径Rcの、トレッド4の幅WTに対する比(Rc/WT)は3.90以上4.30以下が好ましい。
比(Rc/WT)が3.90以上に設定されることにより、トレッド面20をより平坦な面に近づけることができる。このタイヤ2のトレッド面20は、干渉限界隙間量に近い、隙間Gを形成することに効果的に貢献できる。このタイヤ2は隙間Gを小さくすることができる。この観点から、比(Rc/WT)は3.95以上がより好ましく、4.00以上がさらに好ましい。
比(Rc/WT)が4.30以下に設定されることにより、タイヤ2がホイールハウスと干渉することが抑えられる。ショルダー部分の滑りが効果的に抑えられるので、偏摩耗の発生が抑制される。この観点から、比(Rc/WT)は4.25以下がより好ましく、4.20以下がより好ましい。
【0077】
このタイヤ2では、上部円弧の半径Ruの、トレッド4の幅WTに対する比(Ru/WT)は0.38以上0.44以下が好ましい。
比(Ru/WT)が0.38以上に設定されることにより、トレッド面20をより平坦な面に近づけることができる。このタイヤ2のトレッド面20は、干渉限界隙間量に近い、隙間Gを形成することに効果的に貢献できる。このタイヤ2は隙間Gを小さくすることができる。この観点から、比(Ru/WT)は0.39以上がより好ましく、0.40以上がさらに好ましい。
比(Ru/WT)が0.44以下に設定されることにより、タイヤ2がホイールハウスと干渉することが抑えられる。ショルダー部分の滑りが効果的に抑えられるので、偏摩耗の発生が抑制される。この観点から、比(Rc/WT)は0.43以下がより好ましく、0.42以下がより好ましい。
【0078】
図5において、一点鎖線LPは、接地面における、タイヤ2の赤道PCに対応する直線である。接地面において赤道PCの特定が困難な場合は、接地幅WCの軸方向中心線がこの赤道PCに対応する直線として用いられる。両矢印P100は、直線LPを含む平面と接地面との交線の長さである。このタイヤ2では、この交線の長さP100が、接地面において、赤道PCに沿って計測される赤道接地長である。
【0079】
図5において、実線LEは、接地面の軸方向外端GEを通り、直線LPに平行な直線である。実線L80は、直線LEと直線LPとの間に位置し、直線LE及び直線LPに平行な直線である。両矢印A100は、直線LPから直線LEまでの軸方向距離を表す。この距離A100は接地幅WCの半分に相当する。両矢印A80は、直線LPから直線L80までの軸方向距離を表す。この図5においては、距離A80の、距離A100に対する比率は80%に設定される。つまり、直線L80は、接地面の接地幅WCの80%の幅に相当する位置を表す。両矢印P80は、直線L80を含む平面と接地面との交線の長さである。このタイヤ2では、この交線の長さP80が、接地面において、接地幅の80%の幅に相当する位置における基準接地長である。
【0080】
このタイヤ2では、図5に示された接地面において、赤道接地長P100及び基準接地長P80を特定し、赤道接地長P100の、基準接地長P80に対する比(P100/P80)で表される形状指数Fが得られる。
【0081】
このタイヤ2では、形状指数Fは1.05以上1.35以下であるのが好ましい。
形状指数Fが1.05以上に設定されることにより、ショルダー部分の滑りが効果的に抑えられ、偏摩耗の発生が抑制される。
形状指数Fが1.35以下に設定されることにより、適度な大きさを有する接地面が形成される。局所的な接地圧の高まりが抑制されるので、この場合においても、偏摩耗の発生が抑制される。
【0082】
図1において符号TCで示される長さは、ベルト14の端におけるトレッド4の厚さである。厚さTCは、ベルト14の端におけるベルト14の法線(図1の直線LTC)に沿って計測される。厚さTCは、トレッド4の内面からタイヤ2の外面2Gまでの距離で表される。
【0083】
このタイヤ2では、トレッド4の厚さTCの、ショルダー線分のうち、カーカス12からショルダー基準点PBGまでの長さLGCに対する比(TC/LGC)は0.90以上1.10以下であるのが好ましい。
比(TC/LGC)が0.90以上に設定されることにより、このタイヤ2は隙間Gを効果的に小さくすることができる。このタイヤ2は、見栄えの向上に貢献できる。この観点から、比(TC/LGC)は0.95以上であるのがより好ましい。
比(TC/LGC)が1.10以下に設定されることにより、ショルダー部分におけるゴムのボリュームが適切に維持される。ショルダー部分のボリュームの増加が抑えられるので、このタイヤ2では、質量増加が抑えられる。この観点から、比(TC/LGC)は1.05以下であるのが好ましい。
【0084】
以上説明したように、発明によれば、質量の増加を抑えながら、見栄えの向上を達成できる、タイヤが得られる。
【実施例0085】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0086】
[実施例1]
図1に示された基本構成を備えた乗用車用の空気入りタイヤ(タイヤサイズ=195/65R15)を得た。
比率(LSh/LBS)、比率(LGC/LSh)、比率(CE/CG)、比(CW/CG)及び比率(GG/GW)は下記の表1に示された通りである。
LShはショルダー線分の長さである。LBSは基準線分の長さである。LGCはショルダー線分のうち、カーカスからショルダー基準点までの長さである。CEは赤道から基準接地位置までの軸方向距離である。CGは赤道からショルダー基準点までの軸方向距離である。CWは赤道から最大幅位置までの軸方向距離である。GGはショルダー基準端から上部円弧の外端までの径方向距離である。GWはショルダー基準端から最大幅位置までの径方向距離である。
長さLBSは163mmであった。タイヤの外径は637mmであった。タイヤの断面幅は203mmであった。軸方向距離CGは90mmであった。径方向距離GWは60.4mmであった。
【0087】
[実施例2-6及び比較例1-3]
比率(LSh/LBS)、比率(LGC/LSh)、比率(CE/CG)、比(CW/CG)及び比率(GG/GW)を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2-6及び比較例1-3のタイヤを得た。
【0088】
[見栄え]
試作タイヤをリム(サイズ=15×6.5J)に組み、空気を充填して内圧を250kPaとした。このタイヤを試験車両に装着した。ドライバーが1名乗車し、車両を静止した状態で、隙間量G(図7参照)を測定し、干渉限界隙間量に対する比を算出した。その結果が指数で下記の表1に示されている。100に近いほど見栄えに優れる。指数が100よりも小さい場合は、隙間が小さくホイールハウスと干渉しやすいことを表し、100よりも大きい場合は隙間が大きく見栄えに不利であることを表す。
【0089】
[耐偏摩耗性]
試作タイヤをリム(サイズ=15×6.5J)に組み、空気を充填して内圧を250kPaに調整した。このタイヤを摩耗エネルギー測定装置に装着した。キャンバー角を0°、スリップ角を0°に設定して、タイヤの摩耗エネルギーを測定した。赤道面における摩耗エネルギーEcと、接地端における摩耗エネルギーEsとから、耐偏摩耗性の指標としての比(Ec/Es)を求めた。その結果が比較例1を100とした指数で下記の表1に示されている。数値が大きいほど耐偏摩耗性に優れる。
【0090】
[質量]
試作タイヤの質量を計測した。その結果が比較例1を100とした指数で下記の表1に示されている。数値が小さいほど軽い。
【0091】
[耐久性]
試作タイヤをリム(サイズ=15×6.5J)に組み、空気を充填して内圧を250kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着した。4.24kNの縦荷重をタイヤに負荷し、このタイヤを、80km/hの速度で、ドラム(半径=1.7m)の上で走行させた。タイヤに損傷が確認されるまでの走行距離を測定した。その結果が比較例1を100とした指数で下記表1に示されている。数値が大きいほど耐久性に優れる。
【0092】
【表1】
【0093】
表1に示されているように、実施例では、質量の増加を抑えながら、見栄えの向上が達成されている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上説明された、見栄えの向上のための技術は種々のタイヤにも適用されうる。
【符号の説明】
【0095】
2・・・タイヤ
2G・・・タイヤ2の外面
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
10・・・ビード
12・・・カーカス
14・・・ベルト
20・・・トレッド面
24・・・サイド面
34・・・カーカスプライ
34a・・・プライ本体
34b・・・折り返し部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7