(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031229
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】粘着ラベル
(51)【国際特許分類】
G09F 3/10 20060101AFI20240229BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20240229BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240229BHJP
【FI】
G09F3/10 J
C09J7/29
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134652
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 彩佳
【テーマコード(参考)】
4J004
【Fターム(参考)】
4J004AA14
4J004AA15
4J004AB01
4J004CB03
4J004CC03
4J004FA01
(57)【要約】
【課題】低温(70℃程度)のアルカリ水溶液において印刷部を短時間で脱離(剥離)できるとともに、容器の材質に応じて貼り付けた状態のままか、剥がした状態のいずれかでリサイクルすることができ、かつ、印刷適性に優れる粘着ラベルを提供する。
【解決手段】粘着剤層15と、基材層16と、脱離コート層14と、をこの順に有し、脱離コート層14が酸価10KOHmg/g以上であり、ガラス転移温度Tgが0℃以上70℃以下である水性ポリエステル系樹脂を含む脱離コート層形成用組成物から形成されてなることを特徴とする、粘着ラベル10を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層と、基材層と、脱離コート層と、をこの順に有し、
前記脱離コート層が酸価10KOHmg/g以上であり、ガラス転移温度Tgが0℃以上70℃以下である水性ポリエステル系樹脂を含む脱離コート層形成用組成物から形成されてなることを特徴とする、粘着ラベル。
【請求項2】
前記水性ポリエステル系樹脂の数平均分子量が1,000以上15,000以下であることを特徴とする、請求項1に記載の粘着ラベル。
【請求項3】
前記水性ポリエステル系樹脂がカルボキシル基を有することを特徴とする、請求項1に記載の粘着ラベル。
【請求項4】
さらに、アルカリ非溶解コート層を、前記基材層と相対する前記脱離コート層上に有することを特徴とする、請求項1に記載の粘着ラベル。
【請求項5】
前記アルカリ非溶解コート層が、ウレタン変性ポリエステル樹脂であることを特徴とする、請求項4に記載の粘着ラベル。
【請求項6】
前記アルカリ非溶解コート層に含まれる樹脂が架橋体であることを特徴とする、請求項4に記載の粘着ラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境汚染、石油資源の枯渇等の問題から、ポリエステル系容器のリサイクル化が強く望まれている。ポリエステル系容器の中でも、特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトルのリサイクル化が望まれている。
【0003】
ポリエステル系容器のマテリアルリサイクル化においては、通常容器をフレーク状に破砕した後、加熱溶融して全体を均質化し、得られた再生樹脂をポリエステル系容器の素材として用いるものである。
【0004】
通常、PETボトルのようなポリエステル系容器には、その表面に様々な情報が記録された粘着ラベル(ラベルとも称する)が貼り付けられている。このようなラベル付PETボトル等のポリエステル系容器をマテリアルリサイクル化する際に、ラベルの樹脂基材とポリエステル系容器を構成する樹脂とが相溶性を有しない場合には、ラベルを構成する樹脂基材及び粘着剤が異物として作用し、再生樹脂の機械特性が低下するという問題が生じる。したがって、このような場合には、ポリエステル系容器に貼り付けられているラベルを剥離してから、フレーク状に破砕し、加熱溶融することが必要である。しかしながら、ポリエステル系容器からラベルを剥離する操作は、極めて煩雑で手間がかかるとともにリサイクル処理費が高くなり、作業上も経済上も不利になるという問題が生じている。
【0005】
これに関連して、例えば下記の特許文献1には、被着体であるポリエステル系容器と相溶性を有するポリエステル系の樹脂基材の片面にアルカリ水溶液による洗浄浸漬によって基材より剥離可能であるとともに印刷適性を有するコート層を設け、かつ反対面にポリエステル系粘着剤層を設けてなる粘着ラベルが開示されている。
【0006】
このような構成とすることで、アルカリ水溶液で洗浄浸漬することによって、表面コート、インク層が容易に剥離され、かつPETボトル等の樹脂成形品と同素材からなるポリエステル系の粘着剤を使用することにより、ラベルを剥がすことなくPETボトル等の成形品の再生処理を可能にするとある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、PETボトルのようなポリエステル系容器のリサイクルにおいて、被着体に印刷されたポリエステル系の粘着ラベルが貼り付けられた状態では、基材や粘着剤層と被着体の相溶性は高いが、印刷部が不純物となるため、リサイクル効率が下がる。このため、印刷部をアルカリ水溶液の洗浄の際に脱離させる必要があり、印刷部を短時間で脱離させた後に、粘着ラベルを貼り付けた状態のままリサイクル処理を行うことができる粘着ラベルが求められている。
【0009】
一方で、ガラス製の容器の場合は、粘着ラベルを貼り付けた状態のままリサイクル処理を行うことはできない。また、プラスチック容器の場合も、容器と相溶性の低い材料を使用した粘着ラベルが貼られている場合は、粘着ラベルを貼り付けた状態のままリサイクル処理を行うことはできない。これらのような場合は、容器から粘着ラベルを剥がして容器のリサイクルを行うが、剥がされたラベルも別途リサイクルしたいという要望がある。この場合も印刷部は不純物となるため、やはり印刷部を短時間で脱離させる必要がある。
また、上記の容器の材質や粘着ラベルの材質に関係なく、ラベルに情報を印刷する際には印刷適性に優れることが求められる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために発明されたものであり、低温(70℃程度)のアルカリ水溶液において印刷部を短時間で脱離(剥離)できるとともに、貼り付けた状態のままか、剥がした状態のいずれかでリサイクルすることができる粘着ラベルを提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、印刷適性に優れた粘着ラベルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は鋭意検討を行い、粘着剤層と、基材層と、脱離コート層と、をこの順に有する粘着ラベルにおいて、脱離コート層を、酸価及びガラス転移温度Tgがそれぞれ所定の数値範囲内である水性ポリエステル系樹脂を含む脱離コート層形成用組成物から形成することで、低温(70℃程度)のアルカリ水溶液において印刷部を短時間で脱離(剥離)できるとともに、容器の材質に応じて貼り付けた状態のままか、剥がした状態のいずれかでリサイクルすることができ、かつ、印刷適性に優れる粘着ラベルとすることができ、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
【0012】
(1)本発明の第1の態様は、粘着剤層と、基材層と、脱離コート層と、をこの順に有し、前記脱離コート層が酸価10KOHmg/g以上であり、ガラス転移温度Tgが0℃以上70℃以下である水性ポリエステル系樹脂を含む脱離コート層形成用組成物から形成されてなることを特徴とする、粘着ラベルである。
【0013】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の粘着ラベルであって、前記水性ポリエステル系樹脂の数平均分子量が1,000以上15,000以下であることを特徴とするものである。
【0014】
(3)本発明の第3の態様は、(1)に記載の粘着ラベルであって、前記水性ポリエステル系樹脂がカルボキシル基を有することを特徴とするものである。
【0015】
(4)本発明の第4の態様は、(1)に記載の粘着ラベルであって、さらに、アルカリ非溶解コート層を、前記基材層と相対する前記脱離コート層上に有することを特徴とするものである。
【0016】
(5)本発明の第5の態様は、(4)に記載の粘着ラベルであって、前記アルカリ非溶解コート層が、ウレタン変性ポリエステル樹脂であることを特徴とするものである。
【0017】
(6)本発明の第6の態様は、(4)に記載の粘着ラベルであって、前記アルカリ非溶解コート層に含まれる樹脂が架橋体であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低温(70℃程度)のアルカリ水溶液において印刷部を短時間で脱離(剥離)できるとともに、貼り付けた状態のままか、剥がした状態のいずれかでリサイクルすることができ、かつ、印刷適性に優れる粘着ラベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る粘着ラベルを示す断面模式図である。
【
図2】本発明の他の実施形態に係る粘着ラベルを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0021】
また、本明細書において、特記しない限り、操作及び物性等は、室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度45%RH以上55%RH以下の条件で測定する。
【0022】
粘着ラベルは、ガラス瓶等のガラス系容器やPETボトル等のプラスチック系容器といった様々な容器に貼り付けられる。以下、粘着ラベルが貼り付けられる被着体として、PETボトルを例に挙げて説明する。なお、粘着ラベルの形状としては、特に限定されないが、積層方向から視て、長方形であることが一般的である。また、粘着ラベルの形状は、三角形や円形状であってもよい。粘着剤層は、例えば基材層の全面に配置されている。
【0023】
以下、
図1を参照して、粘着ラベルの構成について説明する。
【0024】
図1は、一実施形態に係る粘着ラベル10の断面概略図である。本発明の実施形態に係る粘着ラベル10は、
図1に示すように、上から順に、印刷部13、脱離コート層14、基材層16、粘着剤層15、剥離ライナー30、を有する。剥離ライナー30は、剥離剤層12、剥離基材層11がこの順に配置されてなる。脱離コート層14は、アルカリ水に接触すると分解・溶解し、粘着ラベル10から印刷部13を脱離(剥離)させる。これにより、脱離された印刷部13は、表面に浮いているため、回収が容易となる。なお、粘着ラベル10は、各層間又は表面にプライマー層等の他の機能層を有していてもよい。
【0025】
図2は、他の一実施形態に係る粘着ラベル20の断面概略図である。粘着ラベル20においては、粘着ラベル10の印刷部13と、脱離コート層14との間にアルカリ非溶解コート層17を有する。すなわち、アルカリ非溶解コート層17を、基材層16と相対する脱離コート層14上に有する。アルカリ非溶解コート層17は、アルカリ剥離の際には溶解せずに樹脂のまま残るために、上部の印刷部13とともに膜形状として脱離される。つまり、印刷部13が細かくならずに一定以上の大きさをもっているため、回収が容易となる。ここで、「脱離コート層」上とは、脱離コート層14と、アルカリ非溶解コート層17と、が隣接している形態だけではなく、脱離コート層14とアルカリ非溶解コート層17との間に他の層が存在していてもよい(図示しない)。好ましい形態は、脱離コート層14と、アルカリ非溶解コート層17と、が隣接している形態である。
【0026】
また、基材層16と粘着剤層15との間には、他の脱離コート層がない形態が好ましい。好適な一形態は、基材層16と粘着剤層15とが隣接してなる。基材層16と粘着剤層15との間には、他の脱離コート層がなく、基材層16と印刷部13、又は基材層16とアルカリ非溶解コート層17の間に脱離コート層14があることで、粘着ラベル10(20)をPETボトル(ポリエステル系容器)に貼り付けた状態のままリサイクル処理を行うとき、アルカリ水に接触させると基材層16は、ポリエステル容器(被着体)から剥離せず、粘着剤層15と基材層16はポリエステル容器に貼付された状態のままになる。ゆえに、基材層16及び粘着剤層15の双方を一度にリサイクルすることが可能となる。
なお、粘着ラベル10(20)を容器とともにリサイクルしない場合は、粘着ラベル10(20)を容器から剥がした後、上記と同様にアルカリ水に接触させて印刷部13(及びアルカリ非溶解コート層17)を脱離させた後に、リサイクル処理を行う。
【0027】
「ラベル」の概念には、フィルム、シート、テープ等と称されるものが包含される。
【0028】
以下、各構成要素について説明する。
【0029】
<印刷部>
印刷部13は情報を表示するための層であり、本発明においては任意の層である。印刷部13がどのように形成されるか特に限定されず、例えば、フレキソ印刷、オフセット印刷、凸版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、熱転写印刷等によって形成される。
印刷部13に標示される情報は、例えば、文字、数字、イラスト、写真、グラフ等であってもよく、又はそれらの組み合わせ等であってもよい。
【0030】
<アルカリ非溶解コート層>
アルカリ非溶解コート層17は印刷部13の下層に配置される層であり、アルカリ剥離の際には溶解せずに樹脂のまま残るために、印刷部13が膜形状として脱離され、印刷部13の回収が行われやすい。このため、アルカリ非溶解コート層17は、印刷面に配置されることが好ましい。
【0031】
アルカリ非溶解コート層17は樹脂を主成分とする。ここで、主成分とは、アルカリ非溶解コート層17中、60質量%以上(上限100質量%)含むことを指す。樹脂はアルカリ非溶解性である。ここで、アルカリ非溶解性とは、例えば、70℃1.5質量%水酸化ナトリウム水溶液(pH13.6)に対して溶解量が20質量%以下(下限0質量%)、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下であることを指す。
【0032】
アルカリ非溶解コート層17を形成する樹脂としては、ウレタン変性ポリエステル樹脂、アクリル酸エステル(共)重合体、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。中でも高い印刷密着性が得られることから、アルカリ非溶解コート層17を形成する樹脂は、ウレタン変性ポリエステル樹脂であることが好ましい。また、アルカリ非溶解コート層17を形成する樹脂は、アルカリ水への溶解性を低下させることから、酸価が3KOHmg/g以下であることが好ましく、2KOHmg/g以下であることがより好ましい。酸価が上記の数値範囲内であれば、ポリエステル系樹脂もアルカリ非溶解コート層17を形成する樹脂として使用可能である。
【0033】
ウレタン変性ポリエステル樹脂の具体例としては、ポリオールとカルボン酸成分とを縮重合させて得られた重合体の末端にヒドロキシル基を有するポリエステルポリオールに、各種のポリイソシアネート化合物を反応させて得られた重合体(ポリエステルウレタン)等を挙げることができる。
【0034】
ポリイソシアネート化合物としては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0035】
ウレタン変性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2,000以上100,000以下であることが好ましく、5,000以上50,000以下であることがより好ましい。ここで、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算による数平均分子量である。
【0036】
ウレタン変性ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、例えば、100℃以下であることが好ましく、-40℃以上100℃以下であることがより好ましい。
【0037】
ウレタン変性ポリエステル樹脂は市販品を用いてもよく、市販品としては、バイロンシリーズ(商品名):東洋紡社製等が挙げられ、バイロンUR-2300(数平均分子量32,000、Tg18℃、酸価1KOHmg/g未満)、バイロンUR-3200(数平均分子量40,000、Tg-3℃、酸価1KOHmg/g未満)、バイロンUR-3210(数平均分子量40,000、Tg-3℃、酸価1KOHmg/g未満)、バイロンUR-6100(数平均分子量25,000、Tg-30℃、酸価1KOHmg/g未満)、バイロンUR-8200(数平均分子量25,000、Tg73℃、酸価1KOHmg/g未満)、バイロンUR-8300(数平均分子量30,000、Tg23℃、酸価1KOHmg/g未満)、バイロンUR-8700(数平均分子量32,000、Tg-22℃、酸価1KOHmg/g未満)等を好ましく用いることができる。
【0038】
アルカリ非溶解コート層17における、樹脂の含有量は、80質量%以上100質量%以下であることが好ましく、90質量%以上99質量%以下であることがより好ましい。
【0039】
アルカリ非溶解コート層17に含まれる樹脂は架橋体であることが好ましい。樹脂が架橋体であることで、アルカリ水への溶解性が一層低下するため好ましい。樹脂を架橋体とするためには、後述する、アルカリ非溶解コート層17を形成するためのアルカリ非溶解コート層形成用組成物中に架橋剤を含有させればよい。この際、架橋剤は、樹脂中の架橋性反応基と反応する架橋剤が適宜選択される。特に架橋性反応基であるカルボキシル基と反応する架橋剤を選択することで、樹脂に残存するカルボキシル基を架橋させることができ、アルカリ水に対する溶解性が一層低下するため、好ましい。
【0040】
カルボキシル基と反応しうる架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤が挙げられる。
【0041】
イソシアネート系架橋剤としては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;及びイソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;等のジイソシアネート化合物、並びにジイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、ジイソシアネート化合物のビウレット体やイソシアヌレート体、ジイソシアネート化合物の二官能型等のイソシアネート誘導体が挙げられる。
【0042】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。
【0043】
アジリジン系架橋剤としては、例えば、ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカーボキサミド)、トリメチロールプロパントリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ-β-アジリジニルプロピオネート、トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカーボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル-1-(2-メチルアジリジン)、トリス-1-(2-メチルアジリジン)フォスフィン、トリメチロールプロパントリ-β-(2-メチルアジリジン)プロピオネート等が挙げられる。
【0044】
金属キレート系架橋剤には、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズ等のキレート化合物があるが、性能の点からアルミニウムキレート化合物が好ましい。アルミニウムキレート化合物としては、例えば、ジイソプロポキシアルミニウムモノオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムビスオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノオレエートモノエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノラウリルアセトアセテート、ジイソプロポキアルミニウムモノステアリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノイソステアリルアセトアセテート等が挙げられる。
【0045】
中でも、架橋後のコート層において高い印刷密着性が得られることから、架橋剤がイソシアネート系架橋剤であることが好ましい。
【0046】
上記架橋剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0047】
架橋剤の添加量は、樹脂の架橋性反応基量等を考慮して適宜設定されるが、樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
【0048】
アルカリ非溶解コート層17の厚さは、印刷部13の回収のしやすさ、及び薄膜性を考慮すると、0.05μm以上1μm以下であることが好ましく、0.05μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。
【0049】
アルカリ非溶解コート層17は、触媒、紫外線吸収剤、顔料、フィラー等の添加剤を含んでいてもよい。
【0050】
<脱離コート層>
脱離コート層14は、酸価が10KOHmg/g以上である水性ポリエステル系樹脂を含むコート層形成用組成物から形成された層である。
【0051】
脱離コート層14の厚さは、アルカリ浸漬したときの脱墨性(印刷インクの除去性)の観点から、0.01~3μmであることが好ましく、0.03~1μmであることがより好ましく、0.05~0.5μmであることがさらにより好ましい。
【0052】
脱離コート層14の形成材料である脱離コート層形成用組成物は、酸価が10KOHmg/g以上である水性ポリエステル系樹脂(以下、単に「水性ポリエステル系樹脂」ともいう)を含む。
【0053】
「水性ポリエステル系樹脂」は、水性溶媒に溶解して水溶液の形態をとり得るポリエステル系樹脂、又は水性溶媒中にエマルションとして分散した水分散体の形態をとり得るポリエステル系樹脂を意味する。このような「水性」のポリエステル系樹脂を用いることで、塗布時の揮発性有機化合物排出量の削減が可能である。ここで、水性溶媒とは水を60質量%以上(上限100質量%)含有されたものを指し、好ましくは70質量%以上、より好ましくは85質量%以上であり、最も好ましくは水系溶媒が95質量%以上である。
【0054】
水性溶媒中に含まれる水以外の成分としては、水に溶解する有機溶剤を挙げることができる。水に溶解する有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、メチルセルソルブ、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル等が挙げられる。
【0055】
なお、本発明の一態様において、水中で水性ポリエステル系樹脂のエマルションとして分散した水分散体とするために、本発明の効果を損なわない範囲において、少量の乳化剤や界面活性剤等を用いてもよい。
【0056】
ただし、乳化剤や界面活性剤等の低分子量成分は、脱離コート層14中で局在化することで、接着性が低下し、層間密着性の低下の原因となる場合がある。当該現象を抑制する観点から、本発明の一態様において、水性ポリエステル系樹脂は、自己乳化型の水性ポリエステル系樹脂であることが好ましい。
【0057】
自己乳化型の水性ポリエステル系樹脂であれば、層間密着性の低下の原因となる乳化剤や界面活性剤等の低分子量成分を使用せずにエマルションを形成することもできるため、得られる粘着ラベル10(20)の層間密着力をより向上させることができる。なお、「自己乳化型」とは、樹脂骨格に何らかの親水性基を化学的に導入し、乳化剤や界面活性剤の添加を必要とせず、樹脂自体が乳化能を有することを意味する。
【0058】
水性ポリエステル系樹脂の酸価は、10KOHmg/g以上であり、好ましくは15KOHmg/g以上、より好ましくは20KOHmg/g以上、更に好ましくは30KOHmg/g以上、より更に好ましくは40KOHmg/g以上、特に好ましくは50KOHmg/g以上である。水性ポリエステル系樹脂の酸価が10KOHmg/g未満であると、脱離コート層14が脱墨性に劣る。
本明細書において、水性ポリエステル系樹脂の酸価は、JIS K 0070:1992に準拠して測定した値である。
【0059】
水性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は0℃以上70℃以下であり、好ましくは10℃以上65℃以下、より好ましくは15℃以上60℃以下、更に好ましくは20℃以上55℃以下である。水性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が0℃未満であると、粘着ラベル10(20)が耐ブロッキング性に劣り、結果として印刷適性に劣る。水性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が70℃を超えると、脱離コート層14が脱墨性に劣る。
本明細書において、水性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121:2012に準拠して測定した値であり、具体的には以下に記載の方法に基づいて測定した値である。
【0060】
水性ポリエステル系樹脂の数平均分子量(Mn)としては、水への溶解性又は分散性を良好とし、形成されるプライマー層と、基材層16及び/又は粘着剤層15との層間密着性を向上させる観点から、好ましくは1,000以上15,000以下であり、より好ましくは1,500以上10,000以下であり、更に好ましくは2,000以上5,000以下である。水性ポリエステル系樹脂のMnが比較的低分子であるこのような範囲であれば、水への溶解性や分散性が十分に高くなり、脱墨性がより良好となるため好ましい。
【0061】
なお、本発明において、数平均分子量(Mn)の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には以下に記載の方法に基づいて測定した値である。
(1)数平均分子量(Mn)
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー社製、製品名「HLC-8020」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いる。
・カラム:「TSK guard column HXL-H」「TSK gel GMHXL(×2)」「TSK gel G2000HXL」(いずれも東ソー社製)
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
(2)ガラス転移温度(Tg)
JIS K 7121:2012に準拠し、示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、製品名「DSC Q2000」)を用いて、昇温速度20℃/分にて測定する。
【0062】
本発明の一態様で用いる水性ポリエステル系樹脂としては、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合して得られる共重合体、及び当該共重合体の変性物等が挙げられる。
【0063】
当該共重合体の変性物としては、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合して得られる共重合体の末端に有するヒドロキシル基とポリイソシアネート化合物とが反応して得られるポリウレタン変性ポリエステル系樹脂等が挙げられる。本発明においては、このような水性ポリエステル系樹脂の変性物も「水性ポリエステル系樹脂」に含まれる。
【0064】
アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを使用することができる。
【0065】
具体的なアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、3-メチル-4,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル等のグリコール類;これらのグリコール類にε-カプロラクトン等のラクトン類を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のポリエステルジオール類;1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、スピログリコール、ジヒドロキシメチルトリシクロデカン等の二価環式アルコール;ビスフェノールAのエチレンオキシドやプロピレンオキシド付加物;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール等の三価以上の多価アルコールが挙げられる。これらのアルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
カルボン酸成分としては、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する多塩基酸を使用することができる。
【0067】
具体的なカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4-ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン-4,4'-ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸及びこれらの無水物;トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメシン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、テトラクロロヘキセントリカルボン酸等のトリカルボン酸及びこれらの無水物;1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸等のテトラカルボン酸及びその無水物等が挙げられる。これらのカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
本発明の一態様で用いる水性ポリエステル系樹脂は、酸価を上記範囲に調整する観点から、1分子中に3個以上のカルボキシル基を有する多塩基酸に由来する構成単位を有することが好ましく、トリカルボン酸又はトリカルボン酸の無水物に由来する構成単位を有することがより好ましい。
【0069】
また、本発明の一態様で用いる水性ポリエステル系樹脂は、上記と同様の観点から、カルボキシル基を含有する水性ポリエステル系樹脂であることが好ましい。
【0070】
(粒子)
脱離コート層形成用組成物は、滑り性を向上させる等の目的で、粒子を含有していてもよい。
【0071】
粒子としては、水分散性であれば無機粒子、有機粒子のいずれであってもよい。無機粒子としては、例えば、ジルコニア、シリカ、二酸化チタン、カオリン、アルミナ、チタニア、ゼオライト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、リン酸カルシウム、ガラス、マイカ、タルク等が挙げられる。有機粒子としては、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂粒子、ポリスチレン系粒子、スチレン-アクリル系樹脂粒子、ポリカーボネート系粒子等が挙げられる。中でも、シリカであることが好ましい。
【0072】
脱離コート層形成用組成物中の粒子の含有量は、所望の目的(例えば、滑り性向上)を達成するために適宜設定されるが、例えば、水性ポリエステル系樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下である。
【0073】
粒子の平均粒子径は、所望の目的を考慮して適宜設定されるが、例えば、耐ブロッキング性向上を目的とすれば、0.1~1μmであることが好ましく、0.3~0.6μmであることがより好ましい。本明細書において、平均粒子径は、特に断りのない限り、体積基準の平均粒子径を言い、例えば、粒子の分散液をコールターカウンター法粒度分布測定器(ベックマン・コールター社製TA-II型)にて、50μmのアパチャーを用いて測定することにより求めることができる。
【0074】
(汎用添加剤、他の樹脂成分)
本発明の一態様で用いる脱離コート層形成用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、上述の水性ポリエステル系樹脂や粒子以外に、酸化防止剤等の汎用添加剤を含有していてもよい。
【0075】
<基材層>
基材層16に用いる基材は特に制限されず、内部に空洞を有する合成紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、各種オレフィン系共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂及びこれらの樹脂の混合物又は積層物からなるフィルム等を挙げることができる。基材の材質は適宜選択でき、粘着ラベル10(20)を貼り付ける容器の材質と基材の材質の関係から、容器に貼り付けた状態のままか、剥がした状態のいずれかでリサイクルすることを選択することもできる。
このとき、粘着ラベル10(20)を容器とともにリサイクルする(すなわち、粘着ラベル10(20)を貼り付けた状態のままリサイクルする)場合は、被着体の容器と相溶性を有する同じ素材を使用することが好ましい。例えば、粘着ラベル10(20)をPETボトルに貼り付けて用いる場合は、基材層16に用いる基材がポリエステル系樹脂基材であることが好ましい。再生樹脂の機械特性等の品質の点から、ポリエステル系フィルムの樹脂基材としては、PETボトルに使用されている樹脂の組成に近いものを用いることが特に有利である。
【0076】
ポリエステル系フィルムに使用される樹脂基材としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂を挙げることができ、これらの中から、被着体のPETボトルに使用されている樹脂の種類に応じて、それと相溶性のある樹脂基材が得られるように、一種又は二種以上を適宜選択して用いればよい。
ここで、相溶性とは、容器を加熱溶融する際の温度で溶融し、かつ溶融したPETボトルの樹脂基材とよく混和し、その再生品の特性を低下させないことを意味する。なお、PETボトルを構成する樹脂基材が、相溶性のある樹脂二種以上の混合物である場合、樹脂基材層16の樹脂としては、PETボトルを構成する樹脂混合物の中の1つの樹脂を用いることができる。また、容器がポリエステル系樹脂以外の樹脂である場合も、同様に使用されている樹脂の種類に応じて、それと相溶性のある樹脂基材が得られるように、樹脂を適宜選択して用いればよい。
【0077】
基材層16の厚さは特に制限はなく、用途等に応じて適宜選定されるが、一般には25μm以上100μm以下の範囲であることが好ましい。粘着ラベル10(20)を容器に貼付する際に、生産効率の観点から、ラベリング装置を用いて容器に粘着ラベル10(20)を貼付するラベリング工程を設ける場合がある。基材層16の厚みを25μm以上とすることで、ラベリング工程での剥離ライナー30からの粘着ラベル10(20)の剥離性に優れる。また、基材層16の厚みを100μm以下とすることで、ラベリング装置に設置するロールの巻き長を十分に長くでき、ロールの交換頻度を下げて、作業効率を高めることができる。基材層16が樹脂基材である場合は、従来公知の方法、例えば押出し法、カレンダー法、溶液コーティング法、キャスティング法等の、いずれの方法により得られたものであってもよい。
【0078】
本発明においては、この基材層16には、その上に設けられるコート層や、反対面に設けられるポリエステル系粘着剤層15との密着性を向上させる目的で、所望により、片面あるいは両面に表面処理を施すことができる。この表面処理方法としては、例えばサンドブラスト法や溶剤処理法等による表面の凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等の表面の酸化処理等が挙げられる。
【0079】
<粘着剤層>
次に、粘着剤層15について説明する。粘着剤層15に用いる粘着剤は、従来ラベルの粘着剤として慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができ、例えばアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤及びポリエステル系粘着剤等が挙げられる。粘着剤の組成に関しても基材層16と同様に、粘着ラベル10(20)を貼り付ける容器の材質に応じて適宜選択でき、それにより容器に貼り付けた状態のままか、剥がした状態のいずれかでリサイクルすることを選択することができる。
しかし、基材層16と同様に、粘着ラベル10(20)を容器とともにリサイクルする場合は、粘着剤層15は容器と相溶性の高い素材から形成されることが好ましい。例えば、粘着ラベル10(20)をPETボトルに貼り付けて用いる場合は、粘着剤層15はポリエステル系樹脂(A)を主成分とするポリエステル系粘着剤組成物から形成されることが好ましい。
ポリエステル系粘着剤組成物の主成分であるポリエステル系樹脂(A)は、構成原料として、多価カルボン酸成分(A1)及びポリオール成分(A2)を含む共重合成分を共重合することにより得られる。
【0080】
(多価カルボン酸成分(A1))
多価カルボン酸成分(A1)としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ベンジルマロン酸、ジフェン酸、4、4′-オキシジ安息香酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2、2-ジメチルグルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、チオジプロピオン酸、ジグリコール酸等の脂肪族ジカルボン酸;1、3-シクロペンタンジカルボン酸、1、2-シクロヘキサンジカルボン酸、1、3-シクロペンタンジカルボン酸、1、4-シクロヘキサンジカルボン酸、2、5-ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等の二価カルボン酸が挙げられる。これらは単独で又は2種以上併せて用いることができる。
これらの中でも、凝集力を付与する点から、芳香族ジカルボン酸を含むことが好ましい。
【0081】
(ポリオール成分(A2))
ポリオール成分(A2)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2、4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1、3-ジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール;1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1、3-シクロブタンジオール等の脂環族ジオール;4,4′-チオジフェノール、4,4′-メチレンジフェノール、4,4′-ジヒドロキシビフェニル、o-、m-及びp-ジヒドロキシベンゼン、2,5-ナフタレンジオール、p-キシレンジオール及びそれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加体等の芳香族ジオール;等の二価アルコールが挙げられる。これらは単独で又は2種以上併せて用いることができる。
【0082】
これらの中でも、反応性に優れる点で、脂肪族ジオール、脂環族ジオールが好ましく、特に好ましくは、脂肪族ジオールとしてはエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールであり、脂環族ジオールとしては1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1、4-シクロヘキサンジメタノールである。
【0083】
多価カルボン酸成分(A1)とポリオール成分(A2)の配合割合としては、多価カルボン酸成分(A1)1当量あたり、ポリオール成分(A2)が1~2当量であることが好ましく、特に好ましくは1.1~1.7当量である。ポリオール成分(A2)の含有割合が低すぎると、酸価が高くなり高分子量化が困難となる傾向があり、高すぎると収率が低下する傾向がある。
【0084】
ポリエステル系樹脂(A)は、上記多価カルボン酸成分(A1)とポリオール成分(A2)を任意に選び、これらを触媒存在下、公知の方法により重縮合反応させることにより製造される。
【0085】
なお、粘着剤層15に用いる粘着剤には、本発明の効果を損なわない範囲において、従来公知の、加水分解抑制剤、軟化剤、紫外線吸収剤、安定剤、耐電防止剤、粘着付与剤等の添加剤を配合することができる。
粘着剤層15の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、5μm以上100μm以下であり、10μm以上50μm以下であってもよい。
【0086】
<剥離ライナー30>
剥離ライナー30は、
図1及び
図2に示すように、剥離基材層11と、剥離剤層12と、を有する。
【0087】
剥離基材層11に用いる剥離基材としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、樹脂材料、紙等が挙げられる。樹脂材料としては、ポリエステル、ポリオレフィン等が挙げられる。紙としては、上質紙、グラシン紙、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙等が挙げられる。
【0088】
剥離ライナー30の厚みは、25μm以上100μm以下であることが好ましい。剥離ライナー30の厚みを25μm以上とすることで、粘着ラベル10(20)が抜き加工適性に優れる。また、剥離ライナー30の厚みを100μm以下とすることで、ラベリング工程において剥離ライナー30が粘着剤層15に対する剥離性に優れる。
【0089】
剥離剤層12を構成する剥離剤としては、シリコーン系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤、フッ素系剥離剤、ゴム系剥離剤等が挙げられる。これらの中では、シリコーン系剥離剤が好ましい。剥離剤層12の厚みは、通常0.01μm以上5μm以下程度である。
【0090】
<製造方法>
本発明の粘着ラベル10(20)の製造方法は、特に限定されるものではないが、粘着ロール又はシートを作製した後、必要に応じ印刷、半抜き加工、カス上げを行い、粘着ラベル10(20)を製造する方法が挙げられる。粘着ロール又はシートの製造方法は、(1)剥離ライナー30上に粘着剤組成物を塗布して粘着剤層15を形成した後、これを基材層16に貼り合わせる方法、(2)基材層16上に粘着剤組成物を直接塗布して粘着剤層15を形成した後に剥離ライナー30を貼り合わせる方法、等が挙げられる。
【0091】
粘着剤組成物の基材層16又は剥離ライナー30への塗布方法は特に限定されず、例えばロールコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スロットダイコーター、リップコーター、グラビアコーター等の公知の塗布装置を用いて塗布することができる。
【0092】
また、基材層16には、あらかじめ脱離コート層14又はアルカリ非溶解コート層17を形成することができる。
【0093】
各コート層は、樹脂、必要に応じて添加剤、さらに溶媒を混合してコート層形成用組成物(脱離コート層形成用組成物又はアルカリ非溶解コート層形成用組成物、以下、まとめて単にコート層形成用組成物とも称する。)を準備する。溶媒は、樹脂の形態によって適宜選択され、樹脂が水系ポリエステル樹脂の場合には、溶媒は、例えば、水、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール等)が好ましく、水がより好ましい。溶媒は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、樹脂がウレタン変性ポリエステル樹脂の場合には、溶媒は、例えば、トルエンやメチルエチルケトン、酢酸エチルである。
【0094】
その後、基材層16やコート層に対して、コート層形成用組成物を塗布してコート層(脱離コート層14又はアルカリ非溶解コート層17)を形成する。塗布の方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法、例えば、基材層16上にコート層形成用組成物を塗布し、乾燥させて、各コート層を形成する方法等を採用することができる。塗布方法としては特に限定されるものではないが、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロッドブレードコーター、バーブレードコーター、グラビアコーター、バーコーター、多段ロールコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、スプレーコーター等の各種塗布装置を適宜選択して塗布する方法を採用することができる。
【0095】
コート層形成用組成物を塗布した後、乾燥工程に供してもよい。乾燥条件は適宜設定されるが、例えば、80℃以上160℃以下で10秒以上60秒以下である。
【0096】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例0097】
以下の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「質量部」又は「質量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は室温(25℃)で行われる。
【0098】
(実施例1)
脱離コート層形成用組成物として自己乳化型水性ポリエステル系樹脂溶液(固形分25質量%、粘度10mPa・s(20℃)、水溶媒、ポリエステル系樹脂:酸価50mgKOH/g、カルボキシル基含有、分子量3,000、Tg46℃)を使用した。厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(基材層)上に脱離コート層形成用組成物をバーコーターにより乾燥膜厚0.06μmとなるように塗布・乾燥した。得られた脱離コート層上に、ウレタン変性ポリエステル樹脂(東洋紡社製、バイロンUR-8200)及び樹脂固形分100質量部に対して架橋剤(ヘキサメチレンジイソシアネート)を3質量部混合し、トルエンにて希釈したアルカリ非溶解コート層形成用組成物をバーコーターにより乾燥膜厚0.08μmとなるように塗布・乾燥し、アルカリ非溶解コート層を形成した。
【0099】
次に、ポリエステル系樹脂(三菱ケミカル社製、商品名「NP-110S50EO」)100質量部(固形分)に対し、架橋剤(東ソー社製、商品名「コロネートL」)2質量部(固形分)、酢酸エチル40質量部を添加・混合して粘着剤組成物を調製した。
【0100】
得られた粘着剤組成物を、ポリエチレンラミネートグラシン紙上にシリコーン系剥離剤を塗布した剥離ライナー(厚さ:88μm)上にナイフコーターにより乾燥後の膜厚が20μmとなるように塗布した後、90℃下で1分間乾燥させ粘着剤層を形成した。
【0101】
ポリエチレンテレフタレートフィルムの脱離コート層と反対側の面と、剥離ライナーに積層された粘着剤層を貼付し、標準環境下(23℃50%RH)に7日間静置して、粘着ラベルを得た。
【0102】
(実施例2)
実施例1において、自己乳化型水性ポリエステル系樹脂溶液(固形分25質量%、粘度
10mPa・s(20℃)、水溶媒、ポリエステル系樹脂:酸価40mgKOH/g、カルボキシル基含有、分子量3,000、Tg52℃)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着ラベルを得た。
【0103】
(比較例1)
実施例1において、自己乳化型水性ポリエステル系樹脂溶液(固形分25質量%、粘度
10mPa・s(20℃)、水溶媒、ポリエステル系樹脂:酸価25mgKOH/g、カルボキシル基含有、分子量5,000、Tg85℃)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着ラベルを得た。
【0104】
(比較例2)
実施例1において、自己乳化型水性ポリエステル系樹脂溶液(固形分25質量%、粘度
10mPa・s(20℃)、水溶媒、ポリエステル系樹脂:酸価5mgKOH/g、カルボキシル基含有、分子量15,000、Tg-20℃)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着ラベルを得た。
【0105】
(比較例3)
実施例1において、自己乳化型水性ポリエステル系樹脂溶液(固形分25質量%、粘度
10mPa・s(20℃)、水溶媒、ポリエステル系樹脂:酸価2mgKOH/g、カルボキシル基含有、分子量27,000、Tg64℃)を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着ラベルを得た。
【0106】
<評価方法1:印刷適性>
印刷機:RIテスター、インク:UV161 J 墨 S(T&K TOKA社製)インクを用いてベタ印刷し、高圧水銀ランプで紫外線照射してインクを硬化させた後、脱離コート層又はアルカリ非溶解コート層との密着性をセロハンテープ剥離で評価した。具体的には、1mm間隔で10マス×10マスの100マスのクロスカットを形成し、セロハンテープ剥離後の残存する印刷部を下記評価基準にしたがって評価した。結果を表1に示す。
5:91~100%残存
4:66~90%残存
3:41~65%残存
2:16~40%残存
1:0~15%残存
【0107】
<評価方法2:脱墨性>
実施例及び比較例で得られた試料に、印刷機:RIテスター、インク:UV161 J 墨 S(T&K TOKA社製)インクを用いてベタ印刷し、高圧水銀ランプで紫外線照射してインクを硬化させた後、試料サイズ:10mm×10mmにカットし、70℃1.5質量%水酸化ナトリウム水溶液(pH13.6)1Lに試料を5枚投入し撹拌した。印刷が5枚すべて剥がれた時間を記録し(最大15分間)、下記評価基準にしたがって評価した。結果を表1に示す。
5:5分以内にすべて剥がれる
4:15分以内にすべて剥がれる
3:15分間で一部剥がれあり
2:15分間で剥がれなし、取り出し直後に印刷面を擦ったときに剥がれる
1:15分間で剥がれなし、取り出し直後に印刷面を擦っても剥がれない
【0108】
<評価方法3:耐ブロッキング性>
実施例及び比較例で得られた粘着ラベルの一部の層を用いた試料(試料サイズ:50mm×100mm、試料構成:脱離コート層/基材層(ポリエチレンテレフタレート))を用いて、脱離コート面と基材層背面が接触するように試料を10枚重ね、40g/cm2の荷重をかけ、40℃80%RH環境下で7日間静置した後、下記評価基準にしたがって評価した。結果を表1に示す。
5:フィルム間の貼り付きが全くない
4:フィルム間の貼り付きがほとんどない
3:フィルム間で貼り付きが少しあるが、問題ない
2:フィルム間である程度貼り付きが見られる
1:フィルム間で強い貼り付きが見られる
【0109】
【0110】
上記で示されるように、実施例1及び2の粘着ラベルは、印刷適性及び耐ブロッキング性に優れるとともに、低温(70℃程度の)アルカリ温水での脱墨性に優れるものであった。一方、ガラス転移温度Tgが70℃を超える水性ポリエステル系樹脂を含む脱離コート層形成用組成物を用いた比較例1は、印刷部の脱墨性に劣り、ガラス転移温度Tgが0℃未満の水性ポリエステル系樹脂を含む脱離コート層形成用組成物を用いた比較例2は、耐ブロッキング性に劣るものであった。また、酸価が10KOHmg/g未満の水性ポリエステル系樹脂を含む脱離コート層形成用組成物を用いた比較例3も、比較例1と同様に印刷部の脱墨性に劣るものであった。