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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031230
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
A61B3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134653
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(74)【代理人】
【識別番号】100166785
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100184550
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 珠美
(72)【発明者】
【氏名】濱口 浩二
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA11
4C316AB16
4C316FA06
4C316FA16
4C316FA18
4C316FC01
4C316FC02
4C316FC07
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】顔固定アタッチメントの使用状況に応じて適切に被検眼の検査を実行することが可能な眼科装置を提供する。
【解決手段】眼科装置1は、検眼ユニット2、顔固定部10、およびアタッチメント検出手段を備える。検眼ユニット2は、被検者の被検眼を検査するために用いられる。顔固定部10は、検査中の被検者の顔を、検眼ユニット2に対して固定する。アタッチメント検出手段は、顔固定アタッチメント11Aの顔固定部10への装着の有無を検出する。顔固定アタッチメント11Aは、顔固定部10に着脱可能に装着されることで、被検者の顔に接触して顔を固定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の被検眼を検査するための検眼ユニットと、
検査中の前記被検者の顔を、前記検眼ユニットに対して固定する顔固定部と、
前記顔固定部に着脱可能に装着されることで前記被検者の顔に接触する顔固定アタッチメントの、前記顔固定部への装着の有無を検出するアタッチメント検出手段と、
を備えたことを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
請求項1に記載の眼科装置であって、
画像を撮影する撮影部をさらに備え、
前記アタッチメント検出手段は、前記撮影部によって撮影された画像に基づいて、前記顔固定アタッチメントの前記顔固定部への装着の有無を検出することを特徴とする眼科装置。
【請求項3】
請求項2に記載の眼科装置であって、
前記顔固定部のうち、前記顔固定アタッチメントが装着された際に前記撮影部側が遮蔽される部位、および、前記顔固定アタッチメントのうち、前記顔固定部に装着された際に前記撮影部側を向く部位の少なくとも一方に、前記撮影部によって撮影された画像による検出精度を向上させる被検出部が設けられていることを特徴とする眼科装置。
【請求項4】
請求項1に記載の眼科装置であって、
前記被検眼に対する前記検眼ユニットの相対位置を移動させる駆動部をさらに備え、
前記眼科装置の制御部は、前記顔固定アタッチメントの装着の有無の検出結果に応じて、前記駆動部による前記検眼ユニットの移動制御を変更することを特徴とする眼科装置。
【請求項5】
請求項1に記載の眼科装置であって、
前記眼科装置の制御部は、前記アタッチメント検出手段による前記顔固定アタッチメントの装着の有無の検出結果を検者に通知することを特徴とする眼科装置。
【請求項6】
請求項1に記載の眼科装置であって、
前記眼科装置の制御部は、
前記顔固定アタッチメントの前記顔固定部からの取り外しと、前記顔固定部への装着が行われたか否かを、前記顔固定アタッチメントの装着の有無の検出結果に基づいて判定し、
前回の被検眼の検査が終了した以後に、前記顔固定アタッチメントの取り外しと装着が行われていないと判定した場合に、前記顔固定アタッチメントが交換されていないことを検者に通知することを特徴とする眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼を検査するための眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼を検査するための種々の眼科装置(例えば、眼屈折力測定装置、角膜曲率測定装置、眼圧測定装置、眼底カメラ、OCT装置、レーザ走査型検眼装置(SLO)、隅角撮影装置等)が知られている。多くの眼科装置による被検眼の検査は、被検眼と検眼ユニットの間の相対位置が適正位置に調整された状態で実行される必要がある。そこで、眼科装置は、検眼ユニットに対する被検者の顔の相対位置を固定するための顔固定部(例えば、額当ておよび顎台等の少なくともいずれか)を備える場合もある。さらに、顔固定部に着脱可能に装着される顔固定アタッチメントが用いられる場合もある。例えば、特許文献1に記載の眼科装置は、顔固定部の顎受け台に脱着可能である顎受け台カバーによって、顎受け台の衛生度の確保を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-34858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
顔固定部に対して着脱可能な顔固定アタッチメントは有効なツールであるが、顔固定アタッチメントの使用状況に応じて、眼科装置による被検眼の検査をより適切に実行することが可能な技術が望まれる。
【0005】
本発明の典型的な目的は、顔固定アタッチメントの使用状況に応じて適切に被検眼の検査を実行することが可能な眼科装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における典型的な実施形態が提供する眼科装置は、被検者の被検眼を検査するための検眼ユニットと、検査中の前記被検者の顔を、前記検眼ユニットに対して固定する顔固定部と、前記顔固定部に着脱可能に装着されることで前記被検者の顔に接触する顔固定アタッチメントの、前記顔固定部への装着の有無を検出するアタッチメント検出手段と、を備える。
【0007】
本開示に係る眼科装置によると、顔固定アタッチメントの使用状況に応じて適切に被検眼の検査が実行される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】眼科装置1の外観を示す右側面図である。
図2】眼科装置1の電気的構成を示すブロック図である。
図3】顔固定アタッチメント11Aを右斜め前方から見た斜視図である。
図4】顔固定アタッチメント11Aを左斜め後方から見た斜視図である。
図5】眼科装置1が実行する検査処理のフローチャートである。
図6】顔固定アタッチメント11Aが顔固定部10に装着されている状態で撮影部9によって撮影された画像の一例を示す図である。
図7】顔固定アタッチメント11Aが装着される顔固定部10に被検出部15が設けられた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<概要>
本開示で例示する眼科装置は、検眼ユニット、顔固定部、およびアタッチメント検出手段を備える。検眼ユニットは、被検者の被検眼を検査するために用いられる。顔固定部は、検査中の被検者の顔を、検眼ユニットに対して固定する。アタッチメント検出手段は、顔固定アタッチメントの顔固定部への装着の有無を検出する。顔固定アタッチメントは、顔固定部に着脱可能に装着されることで、被検者の顔に接触して顔を固定する。
本開示に係る眼科装置によると、顔固定部への顔固定アタッチメントの装着の有無が自動的に検出される。従って、眼科装置による被検眼の検査が、顔固定アタッチメントの使用状況に応じて適切に実行され易くなる。
【0010】
顔固定アタッチメントの詳細な構成は適宜選択できる。例えば、顔固定アタッチメントは、被検者の額に接触する額当てアタッチメント、および、被検者の顎が載置される顎台アタッチメントの少なくともいずれかであってもよい。また、顔固定アタッチメントを顔固定部に装着する目的も、特に限定されない。例えば、顔固定部の衛生度を確保するために、被検者が代わる毎に顔固定アタッチメントが交換されてもよい。また、検眼ユニットに対する被検者の顔の相対位置(例えば、検眼ユニットの検査軸に沿う方向(Z方向)における顔の位置、および、高さ方向(Y方向)における顔の位置の少なくともいずれか)を調整するために、検査の種類、または顔の大きさ等に応じて、顔固定アタッチメントを使用するか否かが選択されてもよい。
【0011】
本開示で例示する技術は、被検眼の検査(例えば、被検眼の撮影、被検眼の眼特性の測定、被検眼の観察(手術または治療のための観察等を含む)等)を実行するための種々の眼科装置に適用できる。例えば、被検眼の撮影を行う眼科装置として、OCT装置、レーザ走査型検眼装置(SLO)、眼底カメラ、隅角撮影装置、および、角膜内皮細胞撮影装置等が挙げられる。被検眼の眼特性の測定を行う眼科装置として、眼屈折力測定装置、角膜形状測定装置、眼軸長測定装置、および、眼圧測定装置等が挙げられる。また、被検眼を観察しながら被検眼の組織の手術または治療を行うための光凝固装置、ヤグレーザ手術装置、スリットランプ等の眼科装置に、本開示で例示する技術を採用してもよい。
【0012】
眼科装置は、画像を撮影する撮影部をさらに備えていてもよい。アタッチメント検出手段は、撮影部によって撮影された画像に基づいて、顔固定アタッチメントの顔固定部への装着の有無を検出してもよい。例えば、眼科装置の制御部が、撮影部によって撮影された画像に基づいて顔固定アタッチメントの顔固定部への装着の有無を検出することで、アタッチメント検出手段として機能してもよい。この場合、顔固定アタッチメントを検出するためのセンサまたはスイッチ等を新たに設けなくても、眼科装置における何らかの工程(例えば、被検眼に対する検眼ユニットの位置合わせの工程、および、被検眼の検査工程等の少なくともいずれか)に使用される画像を利用して、顔固定アタッチメントの装着の有無が検出される。従って、顔固定アタッチメントの装着の有無が、効率良く且つ適切に検出される。
【0013】
前述したように、撮影部は、被検眼に対する検眼ユニットの位置合わせを眼科装置が実行するために、被検者の顔の少なくとも一部を撮影してもよい。詳細には、眼科装置は、被検眼に対する検眼ユニットの相対位置を移動させる駆動部を備えていてもよい。眼科装置の制御部は、撮影部によって撮影された画像に基づいて駆動部を制御することで、被検眼に対する検眼ユニットの相対位置を適正位置に調整してもよい。さらに、撮影部の撮影範囲には、顔固定部の少なくとも一部が含まれていてもよい。制御部は、撮影部によって撮影された画像に基づいて、顔固定アタッチメントの顔固定部への装着の有無を検出してもよい。この場合、撮影部によって撮影される画像は、被検眼に対する検眼ユニットの位置合わせ処理と、顔固定アタッチメントの装着の有無の検出処理で共用される。よって、顔固定アタッチメントの装着の有無が、効率良く且つ適切に検出される。
【0014】
ただし、撮影部の構成を変更することも可能である。例えば、撮影部は、検眼ユニットに内蔵されたカメラ(一例として、被検眼の前眼部を撮影することが可能な前眼部カメラ等)であってもよい。つまり、撮影部が設置された位置、および、撮影部が用いられる目的等に関わらず、顔固定部における顔固定アタッチメントの着脱位置が、撮影部の撮影範囲内に含まれていれば、撮影部によって撮影された画像に基づいて、顔固定アタッチメントの装着の有無が適切に検出される。
【0015】
撮影部によって撮影された画像に基づいて顔固定アタッチメントの装着の有無を検出するための具体的な方法は、適宜選択できる。例えば、眼科装置の制御部は、撮影部によって撮影された画像に対して公知の画像処理を行うことで、顔固定アタッチメントの装着の有無を検出してもよい。また、制御部は、顔固定アタッチメントの装着の有無を検出するように、機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルに、撮影された画像を入力することで、検出結果を取得してもよい。
【0016】
顔固定部のうち、顔固定アタッチメントが装着された際に撮影部側が遮蔽される部位、および、顔固定アタッチメントのうち、顔固定部に装着された際に撮影部側を向く部位の少なくとも一方に、撮影部によって撮影された画像による顔固定アタッチメントの装着有無の検出精度を向上させる被検出部が設けられていてもよい。この場合、撮影部によって撮影された画像に被検出部が写っているか否かによって、顔固定アタッチメントの装着の有無が高い精度で検出される。
【0017】
なお、被検出部の具体的な構成は適宜選択できる。例えば、被検出部の色、模様、またはパターン等を、他の部位とは異なる色、模様、またはパターン等(例えば、画像処理によって検出され易い色等)とすることで、画像による検出精度を向上させてもよい。また、被検出部の形状を、画像処理によって検出され易い形状(例えば、エッジ検出によって検出され易い角部を有する形状等)とすることで、画像による検出精度を向上させてもよい。
【0018】
本開示では、撮影部によって撮影された画像に基づいて、顔固定アタッチメントの顔固定部への装着の有無を検出する場合について例示する。しかし、撮影された画像を用いずに、顔固定アタッチメントの装着の有無を検出することも可能である。例えば、眼科装置は、顔固定部への顔固定アタッチメントの装着の有無を検出するためのセンサまたはスイッチ等を備えていてもよい。つまり、アタッチメント検出手段として、センサまたはスイッチ等が利用されてもよい。この場合でも、眼科装置による被検眼の検査が、顔固定アタッチメントの使用状況に応じて適切に実行され易くなる。
【0019】
眼科装置は、被検眼に対する検眼ユニットの相対位置を移動させる駆動部をさらに備えてもよい。制御部は、顔固定アタッチメントの装着の有無の検出結果に応じて、駆動部による検眼ユニットの移動制御を変更してもよい。この場合、検眼ユニットが、顔固定アタッチメントの装着の有無に応じて適切に移動される。従って、眼科装置による被検眼の検査が、顔固定アタッチメントの使用状況に応じて適切に実行され易くなる。
【0020】
なお、顔固定アタッチメントの装着の有無に応じて、検眼ユニットの移動制御を変更する際の具体的な方法は、適宜選択できる。例えば、額当てアタッチメントが装着されていない場合には、額当てアタッチメントが装着されている場合に比べて、顔固定部によって固定された顔と検眼ユニットの間の距離が短くなる。従って、額当てアタッチメントが装着されていない場合には、検眼ユニットと顔が接触し易い。よって、制御部は、額当てアタッチメントが装着されていない場合には、装着されている場合に比べて検眼ユニットの顔側への可動範囲を短くするように、検眼ユニットの移動制御を変更してもよい。その結果、検眼ユニットと顔が接触してしまう可能性が適切に低下する。
【0021】
また、顎台アタッチメントが装着されていない場合には、顎台アタッチメントが装着されている場合に比べて、顔固定部によって固定された顔の高さが低くなる。従って、制御部は、額当てアタッチメントが装着されていない場合には、装着されている場合に比べて、検眼ユニットの移動を開始させる際の初期位置を低くするように、検眼ユニットの移動制御を変更してもよい。その結果、被検眼に対する検眼ユニットの相対位置が適正位置に調整されるまでの時間が短縮され易くなる。
【0022】
眼科装置の制御部は、アタッチメント検出手段による顔固定アタッチメントの装着の有無の検出結果を検者に通知する検出結果通知ステップを実行してもよい。この場合、検者は、顔固定アタッチメントが顔固定部に装着されているか否かを把握したうえで、被検眼の検査を適切に実行することができる。
【0023】
眼科装置の制御部は、顔固定アタッチメントの顔固定部からの取り外しと、顔固定部への装着が行われたか否かを、顔固定アタッチメントの装着の有無の検出結果に基づいて判定してもよい。制御部は、前回の被検眼の検査が終了した以後に、顔固定アタッチメントの取り外しと装着が行われていないと判定した場合に、顔固定アタッチメントが交換されていないことを検者に通知してもよい。この場合、検者は、顔固定アタッチメントが交換されたか否かを把握したうえで、被検眼の検査を適切に実行することができる。よって、顔固定部の衛生度をさらに確保し易くなる。
【0024】
<実施形態>
以下、本開示に係る典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。本実施形態の眼科装置1は、被検眼Eとの間の相対位置が適正位置に調整された状態で(例えば、被検眼Eに検査軸を一致させた状態で)、被検眼Eを検査する。本実施形態で例示する眼科装置1は、被検眼Eの眼屈折力を測定する眼屈折力測定装置である。ただし、眼科装置1は、眼屈折力の測定とは異なる検査を実行する装置(例えば、OCT装置、レーザ走査型検眼装置(SLO)、眼底カメラ、隅角撮影装置、角膜内皮細胞撮影装置、角膜曲率測定装置、眼圧測定装置、または眼軸長測定装置等)であってもよい。以下の説明において、検査に用いられる光の光軸方向をZ軸方向(前後方向)、Z軸方向に垂直な水平方向をX軸方向(左右方向)、Z軸およびX軸に共に垂直な方向をY軸方向(上下方向)とする。
【0025】
(概略構成)
図1を参照して、眼科装置1の概略構成について説明する。本実施形態の眼科装置1は、筐体3、基台5、顔固定部10、検眼ユニット2、操作部60、駆動部4、制御部50、表示部8、および撮影部9等を備える。筐体3は、基台5を備えると共に、眼科装置1の各種構成(例えば、検眼ユニット2、駆動部4、および制御部50等)を備える。筐体3の基台5は、眼科装置1の全体を支持する。顔固定部10は、検査中の被検者の顔を、検眼ユニット2に対して固定する。本実施形態の顔固定部10は、被検者の額に接触する額当て11と、被検者の顎が載せられる顎台12を備える。さらに、本実施形態の顔固定部10には、顔固定アタッチメント(本実施形態では額当てアタッチメント)11Aが装着される場合もある。顔固定アタッチメント11Aの詳細については後述する。なお、本実施形態の顔固定部10は基台5に設けられているが、基台5とは独立して顔固定部10が設けられていてもよい。
【0026】
検眼ユニット2は、被検眼Eを検査する。検眼ユニット2は、例えば、被検眼Eの眼屈折力、角膜曲率、および眼圧等の少なくともいずれかの検査を行うための構成(本実施形態では光学系)を備えていてもよい。また、検眼ユニット2は、被検眼の組織を撮影するための光学系を備えていてもよい。駆動部4は、検眼ユニット2を基台5に対して上下左右前後方向(三次元方向)に移動させることで、被検眼Eと検眼ユニット2の間の相対位置を移動させる。なお、駆動部4は、検眼ユニット2と共に、または検眼ユニット2の代わりに顔固定部10を移動させることで、被検眼Eと検眼ユニット2の間の相対位置を移動させてもよい。
【0027】
操作部60は、検眼ユニット2を移動させるための指示、および、検査の実行開始指示等の各種指示を入力するために、検者によって操作される。制御部50は、眼科装置1における各種制御を司る。表示部8は、各種画像(例えば、被検眼Eの観察画像、および測定結果等)を表示させる。本実施形態では、表示部8の表面にタッチパネルが設けられている。タッチパネルは、検者が各種指示を入力するために操作する操作部60の1つとして用いられる。なお、表示部8は筐体3とは独立して設けられていてもよい。撮影部9は、画像を撮影する。本実施形態の撮影部9は、被検者の顔の少なくとも一部を撮影する。さらに、本実施形態部の撮影部9の撮影範囲には、顔固定部10における顔固定アタッチメント11Aの着脱位置(つまり、額当て11の近傍)が含まれる。
【0028】
(電気的構成)
図2を参照して、本実施形態の眼科装置1の電気的構成について説明する。前述したように、眼科装置1は制御部50を備える。制御部50には、CPU(コントローラ)51、RAM52、ROM53、および不揮発性メモリ(Non-volatile memory:NVM)54を備える。CPU51は、眼科装置1の各種制御を司る。RAM52は、各種情報を一時的に記憶する。ROM53には、各種プログラム、初期値等が記憶されている。不揮発性メモリ54は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、および着脱可能なUSBメモリ等を不揮発性メモリ54として使用してもよい。本実施形態では、後述する検査処理を実行するための眼科装置制御プログラム等が、不揮発性メモリ54に記憶される。
【0029】
制御部50は、前述した駆動部4、表示部8、操作部60、撮影部9、および検眼ユニット2に接続されている。本実施形態で例示する眼科装置1は、被検眼の眼屈折力を測定する眼屈折力測定装置である。従って、検眼ユニット2には、眼屈折力を測定するための構成が含まれる。本実施形態の検眼ユニット2は、測定光源21、測定用撮影素子22、および観察用撮影素子23等を備える。測定光源21は、眼底に投影される光を出射する。測定用撮影素子22は、眼底からのリング状の反射光を受光する。受光されたリング状の反射光に基づいて、眼屈折力の算出等が行われる。観察用撮影素子23は、被検眼の前眼部を撮影する。なお、検眼ユニット2の構成には従来の眼科装置の構成を採用できるので、検眼ユニット2の構成の配置等の説明は省略する。また、眼科装置が実行する検査の内容に応じて、検眼ユニット2の構成を変更してもよいことは言うまでもない。
【0030】
(顔固定アタッチメント)
図1図3、および図4を参照して、本実施形態の眼科装置1で使用される顔固定アタッチメント11Aの一例について説明する。前述したように、本実施形態の顔固定部10(図1参照)には、顔固定アタッチメント11Aが装着される場合がある。詳細は後述するが、眼科装置1は、顔固定部10への顔固定アタッチメント11Aの装着の有無を検出する。なお、本実施形態では、顔固定アタッチメント11Aとして、被検者の額に接触する額当てアタッチメントが使用される場合を例示する。しかし、額当てアタッチメントの代わりに、または額当てアタッチメントと共に、他のアタッチメント(例えば、被検者の顎が載せられる顎台アタッチメント等)が顔固定アタッチメント11Aとして使用されてもよい。複数の顔固定アタッチメント11Aが使用される場合、後述する検査処理では、複数の顔固定アタッチメント11Aの全てについての装着の有無が検出されてもよいし、複数の顔固定アタッチメント11Aの一部についての装着の有無が検出されてもよい。
【0031】
図3および図4に示すように、本実施形態の顔固定アタッチメント11Aは、顔接触部13Aと、装着部14Aを備える。顔接触部13Aは、検査対象の被検者の顔(本実施形態では額)に接触することで、検査中の顔の位置を固定する。装着部14Aは、顔固定アタッチメント11Aを、顔固定部10に対して着脱可能に装着する。詳細には、本実施形態の装着部14Aは、右装着部14ARと左装着部14ALを備える。右装着部14ARおよび左装着部14ALが、顔固定部10における額当て11(図1参照)に上方から嵌め合わされることで、顔固定アタッチメント11Aが顔固定部10に着脱可能に装着される。
【0032】
図4に示すように、顔固定アタッチメント11Aのうち、顔固定部10(図1参照)に装着された際に撮影部9(図1参照)側を向く部位には、被検出部15Aが設けられている。被検出部15Aは、撮影部9によって撮影された画像によって顔固定アタッチメント11Aの装着の有無が検出される際の検出精度を向上させる。つまり、本実施形態では、撮影部9によって撮影された画像に被検出部15Aが含まれる場合には、顔固定アタッチメント11Aが装着されていることが検出される。一方で、撮影部9によって撮影された画像に被検出部15Aが含まれない場合には、顔固定アタッチメント11Aが装着されていないことが検出される。一例として、本実施形態では、顔固定アタッチメント11Aが顔固定部10に装着された際に、撮影部9の撮影領域に写る装着部14Aの背面側(詳細には、右装着部14ARおよび左装着部14ALの各々の背面側)に、被検出部15Aが設けられている。
【0033】
一例として、本実施形態では、被検出部15Aの色、模様、またはパターンが、他の部位とは異なる色、模様、またはパターン等(例えば、画像処理によって検出され易い色等)とすることで、画像による検出精度が向上される。また、被検出部15Aの形状を、画像処理によって検出され易い形状(例えば、エッジ検出によって検出され易い角部を有する形状等)とすることで、画像による検出精度を向上させてもよい。
【0034】
(検査処理)
図5および図6を参照して、本実施形態の眼科装置1が実行する検査処理について説明する。検査処理では、顔固定アタッチメント11Aの顔固定部10への装着の有無が検出されると共に、被検眼の検査が実行される。なお、本実施形態では、1つの顔固定アタッチメント11Aが使用される場合を例示する。しかし、複数の顔固定アタッチメント11Aが使用される場合、検査処理では、複数の顔固定アタッチメント11Aの全てについての装着の有無が検出されてもよい。眼科装置1の制御部50(CPU51)は、電源がオンとされると、記憶装置(例えばROM53等)に記憶された眼科装置制御プログラムに従って、図5に例示する検査処理を実行する。
【0035】
まず、制御部50は、撮影部9によって撮影された画像を取得する(S1)。本実施形態では、撮影部9によって動画像が撮影されている。S1では、その時点で撮影された最新の画像が取得される。前述したように、本実施形態部の撮影部9の撮影範囲には、顔固定部10における顔固定アタッチメント11Aの着脱位置(つまり、額当て11の近傍)が含まれる。
【0036】
制御部50は、S1で取得された画像に基づいて、顔固定アタッチメント11Aの顔固定部10への装着の有無を検出する(S2)。従って、顔固定アタッチメント11Aを検出するためのセンサまたはスイッチ等を新たに設けなくても、眼科装置1における何らかの工程(本実施形態では、被検眼に対する検眼ユニット2の位置合わせの工程)に使用される画像を利用して、顔固定アタッチメント11Aの装着の有無が検出される。よって、顔固定アタッチメント11Aの装着の有無が、効率良く且つ適切に検出される。なお、本実施形態のS2では、制御部50は、撮影部9によって撮影された画像に対して公知の画像処理を行うことで、顔固定アタッチメント11Aの装着の有無を検出する。
【0037】
本実施形態のS2では、撮影部9によって撮影された画像に被検出部15Aが含まれるか否かによって、顔固定アタッチメント11Aの装着の有無が検出される。図6に示すように、撮影部9によって撮影された画像には、顔固定部10に装着された顔固定アタッチメント11Aがはっきりと写り込まない場合もあり得る。しかし、前述したように、本実施形態の顔固定アタッチメント11Aには、顔固定アタッチメント11Aの装着の有無を画像によって検出する際の精度を向上させる被検出部15Aが設けられている。図6に示す画像では、顔固定アタッチメント11Aの形状等は不明確であるが、顔固定アタッチメント11Aに設けられた被検出部15Aは明確に写り込んでおり、画像処理によって容易に検出できる。従って、被検出部15Aが利用されることで、顔固定アタッチメント11Aの装着の有無が、画像によって高い精度で検出され易くなる。詳細には、制御部50は、撮影部9によって撮影された画像に被検出部15Aが含まれる場合には、顔固定アタッチメント11Aが装着されていることを検出する。一方で、制御部50は、撮影部9によって撮影された画像に被検出部15Aが含まれない場合には、顔固定アタッチメント11Aが装着されていないことを検出する。
【0038】
次いで、制御部50は、S2で取得された顔固定アタッチメント11Aの装着の有無の検出結果を、記憶装置(例えばRAM52等)に記憶させると共に、検者に通知する(S3)。顔固定アタッチメント11Aの装着の有無の検出結果を検者に通知するための具体的な方法は、適宜選択できる。例えば、制御部50は、検出結果がいずれであるかを示すランプの点灯を、検出結果に応じて制御することで、検出結果を検者に通知してもよい。また、制御部50は、検出結果を表示部8に表示させることで、検出結果を検者に通知してもよい。制御部50は、検出結果を示す音声を発生させることで、検出結果を検者に通知してもよい。
【0039】
制御部50は、S2で取得された顔固定アタッチメント11Aの装着の有無の検出結果に応じて、駆動部4(図1および図2参照)による検眼ユニット2の移動制御パラメータを設定する(S4)。つまり、制御部は、顔固定アタッチメント11Aの装着の有無の検出結果に応じて、駆動部4による検眼ユニット2の移動制御を変更する。その結果、検眼ユニット2が、顔固定アタッチメント11Aの装着の有無に応じて適切に移動される。
【0040】
詳細には、顔固定アタッチメント11A(本実施形態では額当てアタッチメント)が装着されていない場合には、顔固定アタッチメント11Aが装着されている場合に比べて、顔固定部10によって固定された顔と検眼ユニット2の間の距離が短くなる。従って、顔固定アタッチメント11Aが装着されていない場合には、検眼ユニット2と顔が接触し易い。よって、本実施形態の制御部50は、顔固定アタッチメント11Aが装着されていない場合には、装着されている場合に比べて検眼ユニット2の顔側への可動範囲を短くするように、検眼ユニット2の移動制御パラメータを設定する。その結果、検眼ユニット2と顔が接触してしまう可能性が適切に低下する。
【0041】
なお、顔固定アタッチメントとして、顎台アタッチメントが使用される場合もある。顎台アタッチメントが装着されていない場合には、顎台アタッチメントが装着されている場合に比べて、顔固定部10によって固定された顔の高さが低くなる。従って、制御部50は、額当てアタッチメントが装着されていない場合には、装着されている場合に比べて、検眼ユニット2の移動を開始させる際の初期位置(例えば、移動前の待機位置等)を低くするように、検眼ユニット2の移動制御パラメータを設定してもよい。その結果、被検眼に対する検眼ユニット2の相対位置が適正位置に調整されるまでの時間が短縮され易くなる。
【0042】
次いで、制御部50は、検眼ユニット2による被検眼の検査の開始指示が入力されたか否かを判断する(S6)。入力されていなければ(S6:NO)、処理はそのままS1へ戻る。検査の開始指示が入力されると(S6:YES)、制御部50は、顔固定アタッチメント11Aが装着中であるか否かを判断する(S7)。装着中でなければ(S7:NO)、制御部50は、被検眼に対する検眼ユニット2のアライメントを実行する(S9)。本実施形態のS9では、制御部50は、撮影部9によって撮影された画像に基づいて駆動部4を制御することで、被検眼に対する検眼ユニット2の相対位置を適正位置に自動調整する。つまり、撮影部9によって撮影された画像は、被検眼に対する検眼ユニット2のアライメント(位置調整)と、顔固定アタッチメント11Aの装着の有無の検出の両方で兼用される。次いで、検眼ユニット2による被検眼の検査が実行されて(S10)、処理はS1へ戻る。
【0043】
顔固定アタッチメント11Aが装着中であれば(S7:YES)、装着中の顔固定アタッチメント11Aが、前回の検査が実行された以後に交換されたか否かを判定する(S8)。本実施形態のS8では、制御部50は、前回の被検眼の検査(S10)が終了した以後に、顔固定アタッチメント11Aの顔固定部10からの取り外しと、顔固定部10への装着が共に行われたか否かを、顔固定アタッチメント11Aの装着の有無の検出結果に基づいて判定する。制御部50は、前回の被検眼の検査(S10)が終了した以後に、顔固定アタッチメント11Aの取り外しと装着が共に行われたと判定すると(S8:YES)、検眼ユニット2のアライメント(S9)、および、被検眼の検査(S10)を実行し、処理はS1へ戻る。
【0044】
一方で、制御部50は、前回の被検眼の検査(S10)が終了した以後に、顔固定アタッチメント11Aの取り外しと装着が行われていないと判定すると(S8:NO)、顔固定アタッチメント11Aが交換されていないことを検者に通知する(S11)。その結果、検者は、顔固定アタッチメント11Aが交換されたか否かを把握したうえで、被検眼の検査を適切に実行することができる。よって、顔固定部10の衛生度をさらに確保し易くなる。なお、本実施形態では、顔固定アタッチメント11Aが交換されていないと判定された場合には(S8:NO)、交換されていないことが検者に通知されるのみであり(S11)、被検眼の検査は実行されない。しかし、同一の被検者に対する検査が実行される場合や、顔固定部10を消毒した場合等には、顔固定アタッチメント11Aを交換せずに検査を実行することも考えられる。従って、顔固定アタッチメント11Aが交換されていないことが検者に通知された場合であっても、S9およびS10の処理が実行されてもよい。
【0045】
上記実施形態で開示された技術は一例に過ぎない。従って、上記実施形態で例示された技術を変更することも可能である。例えば、上記実施形態では、画像による顔固定アタッチメント11Aの検出精度を向上させるための被検出部15Aは、顔固定アタッチメント11Aのうち、顔固定部10(図1参照)に装着された際に撮影部9(図1参照)側を向く部位に設けられている。しかし、被検出部の位置を変更することも可能である。例えば、図7に示すように、被検出部15は、顔固定部10のうち、顔固定アタッチメント11Aが装着された際に撮影部9(図1参照)側が遮蔽される部位(図7では装着部14Aによって遮蔽される部位)に設けられていてもよい。制御部50は、撮影部9によって撮影された画像に被検出部15が含まれる場合には、顔固定アタッチメント11Aが装着されていないことを検出する。一方で、制御部50は、撮影部9によって撮影された画像に被検出部15が含まれない場合には、顔固定アタッチメント11Aが装着されていることを検出する。その結果、顔固定アタッチメント11Aの装着の有無が高い精度で検出される。
【0046】
また、上記実施形態では、顔固定アタッチメント11Aが交換されていないことの検者への通知は、検査の開始が指示された際に実行される。しかし、制御部50は、各々の検査が終了した後、顔固定アタッチメント11Aの交換が完了するまで、顔固定アタッチメント11Aが交換されていないことの検者への通知を行ってもよい。この場合、検者は、顔固定アタッチメント11Aの交換が必要である旨を適切に把握することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 眼科装置
2 検眼ユニット
4 駆動部
9 撮影部
10 顔固定部
11A 顔固定アタッチメント
15,15A 被検出部
50 制御部
51 CPU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7