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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031231
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】光電界センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/08 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
G01R29/08 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134655
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000147350
【氏名又は名称】株式会社精工技研
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】濱田 淳
(72)【発明者】
【氏名】鬼澤 正俊
(57)【要約】
【課題】反射型光変調器を用いた光電界センサヘッドを使用した場合に、周波数100MHz以下のノイズレベルを従来よりも抑えることが可能な光電界センサを提供する。
【解決手段】光電界センサ10は、変調電極と一体に形成されたアンテナに誘起される電圧信号により入出力光ファイバ5から入力された入力光15を強度変調し、その強度変調光16を戻す反射型光変調器を用いた光電界センサヘッド20を備えている。入力光15を供給する光源としてDFB半導体レーザ22と、強度変調光16を電気信号に変換するO/E変換器23とを有する光送受信ユニット21を備え、さらに、DFB半導体レーザ22を、100KHz≦fm≦100MHzを満たす周波数fmにおいて、1~50%の変調度で強度変調するためのRF信号源26を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調電極を有する光変調器と、前記変調電極に接続されるか、又は前記変調電極と一体に形成されたアンテナとを備え、前記アンテナに誘起される電圧信号により前記光変調器への入力光を強度変調し、強度変調光として出力するように構成した光電界センサヘッドと、
前記光電界センサヘッドへ入力光を供給する光源と、
前記光電界センサヘッドから出力された前記強度変調光を電気信号に変換するO/E変換器と、
前記光源からの出力光を前記光電界センサヘッドに導き、かつ、前記光電界センサヘッドからの出力光を前記O/E変換手段に導く入出力光ファイバと、を有し、
前記アンテナから入力される電磁波信号を検出する光電界センサであって、
前記光変調器は、前記入出力光ファイバから入力された入力光を強度変調して前記入出力光ファイバに戻す反射型光変調器であり、
前記光源は、100KHz≦fm≦100MHzを満たす周波数fmにおいて、1%以上の変調度で強度変調されているDFB半導体レーザ光を出力することを特徴とする光電界センサ。
【請求項2】
前記光変調器は、電気光学効果を有する材料からなる基板と、前記基板に形成された光導波路を備え、前記光導波路は、前記入出力光ファイバに結合して光の入出力端から延びる入出力光導波路と、前記入出力光導波路から二股に分岐して延びる2本の位相シフト光導波路とを有し、前記2本の位相シフト光導波路を伝播する光波を反射してその伝播方向を反転させる光反射部と、前記2本の位相シフト光導波路に沿って配置された前記変調電極とを備えた反射型の分岐干渉型光変調器であることを特徴とする請求項1に記載の光電界センサ。
【請求項3】
前記基板は、ニオブ酸リチウム結晶基板であることを特徴とする請求項2に記載の光電界センサ。
【請求項4】
前記変調電極は、互いに容量結合した複数の電極に分割されていることを特徴とする請求項3に記載の光電界センサ。
【請求項5】
前記アンテナは、前記基板上に前記変調電極と一体に形成されているか、又は前記変調電極が電磁波により電圧信号を誘起するアンテナとしても機能することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の光電界センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器を用いてその場の電磁波の電界を光信号に変換して光ファイバにより伝送し、O/E変換器により電気信号に変換してその電界を検出する光電界センサに関する。
【背景技術】
【0002】
EMC分野における電磁波ノイズの検出やイミュニティ試験等における電磁波強度の測定、放送用又は通信用の送信アンテナから放出される電磁波の監視等において、電磁波の電界強度や位相を任意の場所で正確に測定することが必要とされる。従来、このような目的で、光ファイバにより入力された入力光の強度をその場の電界強度に応じて変調して光ファイバにより出力する光電界センサヘッドと、その出力光を電気信号に変換するO/E変換器とを用い、そのO/E変換された電気信号により、その場の電界を測定する光電界センサが使用されている。主として誘電体材料で構成され、電磁波周波数での応答が可能な広帯域特性を有する光電界センサヘッドを測定箇所に設置し、それと光源およびO/E変換器などの測定機器との間を光ファイバで接続することにより、測定する電磁波や電磁ノイズ、落雷などによる誘導の影響を受けないで、電磁波の強度や位相特性を正確に測定することができるという特徴がある。
【0003】
通常、光電界センサヘッドは、電気光学効果を有する材料から作られた基板、例えばニオブ酸リチウム結晶基板上に、光導波路と、その光導波路近傍に設置された変調電極とにより構成した光変調器と、アンテナとを備え、電磁波等の電界によりアンテナに誘起された電圧を変調電極に印加して光変調器を通過する光波の強度を変調することを動作原理としている。この場合、アンテナは基板上に一体として形成されるか、又は基板の外部に設置される。また、光電界センサの光源としては、一般的に、干渉性が高く十分な強度を有し広帯域の変調に適したDFB半導体レーザ光源が使用されている。このような光電界センサヘッドの従来例としては、3軸方向の電界検出を可能にした光電界センサヘッドが特許文献1に、電磁波の伝播方向を分離した測定を可能とした光電界センサヘッドが特許文献2に、それぞれ記載されている。また、光電界センサを用いた電磁波の測定システムの例が特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-78633号公報
【特許文献2】特開2021-196203号公報
【特許文献3】特開2018-59864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
反射型光変調器は、透過型の光変調器に比べて同じ電極長に対して2倍の長さ光が透過するので、光変調器の高効率化が可能となり、光電界センサヘッドに用いると、高感度化、小型化が可能となる。さらに、光変調器に接続される光ファイバが1本であるので取り扱いが容易となる。このため、多くの用途に反射型光変調器を用いた光電界センサヘッドが使用されている。しかし、反射型光変調器を100MHz以下の周波数領域の測定で使用した場合、透過型光変調器を用いた場合に比べてノイズレベルが大きくなり、S/Nの劣化のため、検出可能な電界強度の最小値が大きくなってしまうという問題が生じていた。
【0006】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、反射型光変調器を用いた光電界センサヘッドを使用した場合に、周波数100MHz以下のノイズレベルを従来よりも抑えることが可能な光電界センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1の観点では、本発明による光電界センサは、変調電極を有する光変調器と、前記変調電極に接続されるか、又は前記変調電極と一体に形成されたアンテナとを備え、前記アンテナに誘起される電圧信号により前記光変調器への入力光を強度変調し、強度変調光として出力するように構成した光電界センサヘッドと、前記光電界センサヘッドへ入力光を供給する光源と、前記光電界センサヘッドから出力された前記強度変調光を電気信号に変換するO/E変換器と、前記光源からの出力光を前記光電界センサヘッドに導き、かつ、前記光電界センサヘッドからの出力光を前記O/E変換手段に導く入出力光ファイバと、を有し、前記アンテナから入力される電磁波信号を検出する光電界センサであって、前記光変調器は、前記入出力光ファイバから入力された入力光を強度変調して前記入出力光ファイバに戻す反射型光変調器であり、前記光源は、100KHz≦fm≦100MHzを満たす周波数fmにおいて、1%以上の変調度で強度変調されているDFB半導体レーザ光を出力することを特徴とする。
【0008】
本発明は、本発明の発明者らによる実験検討により、反射型光変調器を使用したときの100MHz以下の周波数領域でのノイズレベルの増加が、光源のDFB半導体レーザを100KHz~100MHzの周波数で1%以上の変調度で強度変調することにより低減できることを見出したことに基づいてなされたものである。従来、光ファイバ伝送路中の干渉によるノイズを低減するための方策として、光源を直接変調することにより光源の可干渉性を低減する方法が知られている。しかし、本発明においては、従来の可干渉性を低減する際の光源の変調に比べて、上記のように、光源の変調周波数がかなり低く、また、変調度もかなり低い値でノイズ低減効果が得られることが確認されている。
【0009】
反射型の光変調器を光電界センサヘッドに用いる場合、光源から供給される入力光と光電界センサヘッドから戻る強度変調光が同じ光ファイバ伝送路を通過するので、その光ファイバ伝送路中に挿入された素子や光ファイバコネクタ等による反射光により様々な干渉が生ずることが考えられる。発明者らによる、光ファイバの長さ、各素子の反射率、アイソレーション、透過減衰量等とノイズとの相関等を調査した実験検討においても、反射型光変調器から出力された強度変調光が、O/E変換器に入力するまでの光路のいずれかにおいて、光源から出力された光波と干渉すること、又は、それらの光波のいずれかの点における反射波と干渉することによりそのノイズが発生するのではないかと推測されているが、詳細な原因は不明である。しかし、本観点の発明を用いれば、光ファイバ長、各素子の性能がいずれの場合も大幅なノイズ低減が得られるという実験結果が得られている。なお、DFB半導体レーザの変調周波数は、上記の周波数範囲内において測定対象の周波数に影響を及ぼさないように選択される。また、ノイズ低減効果は、DFB半導体レーザの変調度が20%程度で飽和する実験結果が得られているが、測定に影響がなければそれ以上の変調度であってもよい。
【0010】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点による光電界センサにおいて、前記光変調器は、電気光学効果を有する材料からなる基板と、前記基板に形成された光導波路を備え、前記光導波路は、前記入出力光ファイバに結合して光の入出力端から延びる入出力光導波路と、前記入出力光導波路から二股に分岐して延びる2本の位相シフト光導波路とを有し、前記2本の位相シフト光導波路を伝播する光波を反射してその伝播方向を反転させる光反射部と、前記2本の位相シフト光導波路に沿って配置された前記変調電極とを備えた反射型の分岐干渉型光変調器であることを特徴とする。
【0011】
光変調器として強度変調を行う光導波路型の光変調器、特に分岐干渉型光変調器を用いることにより、小型で高感度の光電界センサヘッドが得られることが知られており、反射型の光変調器を用いることにより、さらなる高効率化、小型化が可能となる。なお、本発明で改善の対象となるノイズは、反射型の光変調器を用いた光電界センサヘッドであれば、いずれの方式の光変調器であっても発生すると考えられる。
【0012】
第3の観点では、本発明は、前記第2の観点の光電界センサにおいて、前記基板は、ニオブ酸リチウム結晶基板であることを特徴とする。分岐干渉型光変調器を用いた光変調器の基板材料としては電気光学効果を有し、光導波路が形成可能であればよい。光変調器を形成するために用いられている現在最も実用的な基板材料は、本観点の発明に用いるニオブ酸リチウム結晶基板である。
【0013】
第4の観点では、本発明は、前記第3の観点の光電界センサにおいて、前記変調電極は、互いに容量結合した複数の電極に分割されていることを特徴とする。本観点の発明は、変調電極として、長手方向に分割され互いに容量結合した複数の電極からなるいわゆる分割電極を用いるものである。一般的に、変調電極の光導波路に沿った長さを長くすると変調効率が高くなり、光電界センサにおける検出感度は大きくなる。しかし、変調電極の長さを長くすると電気容量は増加してしまう。電極容量が大きいと電気信号の周波数が高くなるにつれて等価的なインピーダンスが低下し、電極に印加される電圧が低下することにより変調効率が低下する。そこで、高周波の信号検出のためには、電極の容量はできるだけ小さいことが望ましい。この変調電極の長さと電気容量のトレードオフの関係を改善する有力な手段が、1つの変調電極を容量結合した複数の電極に分割した分割電極である。この分割電極を使用することにより、高効率、広帯域の光変調器を得ることができる。
【0014】
第5の観点では、本発明は、前記第2乃至第4の観点の光電界センサにおいて、前記アンテナは前記基板上に前記変調電極と一体に形成されているか、又は前記変調電極が電磁波により電圧信号を誘起するアンテナとしても機能することを特徴とする。本発明において、アンテナと変調電極の構成としては、光変調器とは別に小型のアンテナをパッケージ内に収納して変調電極に接続してもよいが、変調電極と同じ構造のアンテナパッドを変調電極と一体として製作する方が作製は容易である。又は、変調電極にアンテナとしての機能を持たせること、すなわち、電界により所定の個所に電圧を発生するように変調電極を構成してもよい。
【発明の効果】
【0015】
上記のように、本発明により、反射型光変調器を用いた光電界センサヘッドを使用した場合に、周波数100MHz以下のノイズレベルを従来よりも抑えることが可能な光電界センサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1に係る光電界センサのブロック構成図。
図2】実施例1の光電界センサに用いる光電界センサヘッドの構成の一例を模式的に示す透過型の平面図。
図3】光変調器の構成の一例を模式的に示す図であり、図3(a)は平面図、図3(b)はA-A断面図。
図4】本実施例の光電界センサの測定結果の一例を示す図であり、測定する電磁波の周波数に対するノイズレベルの測定結果。
図5】DFB半導体レーザの変調周波数と変調度を変えた場合の、電磁波の測定周波数100KHzにおけるノイズレベルの測定結果。
図6】DFB半導体レーザの変調周波数と変調度を変えた場合の、電磁波の測定周波数5MHzにおけるノイズレベルの測定結果。
図7】DFB半導体レーザを100MHzで変調し、その変調度を変えた場合のノイズレベルの測定結果。
図8】DFB半導体レーザを300MHzで変調し、その変調度を変えた場合のノイズレベルの測定結果。
図9】光電界センサヘッドの他の構成例を模式的に示す図であり、図9(a)は透過型の平面図、図9(b)は光変調器のA-A断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の光電界センサを実施例により詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一符号を付し、その重複した説明を省略する。
【実施例0018】
図1は実施例1に係る光電界センサのブロック構成図である。図1において、本実施例の光電界センサ10は、変調電極を有する光変調器と、その変調電極と一体に形成されたアンテナとを備え、そのアンテナに誘起される電圧信号により光変調器への入力光を強度変調して出力するように構成した光電界センサヘッド20を備えている。本実施例の光変調器は、入出力光ファイバ5から入力された入力光15を強度変調し、その強度変調光16を入出力光ファイバ5に戻す反射型光変調器である。光電界センサヘッド20へ入力光15を供給する光源としてDFB半導体レーザ22と、光電界センサヘッド20から出力された強度変調光16を電気信号に変換するO/E変換器23とを有する光送受信ユニット21を備えており、さらに、光送受信ユニット21は、DFB半導体レーザ22を、100KHz≦fm≦100MHzを満たす周波数fmにおいて、0~50%の変調度で強度変調するためのRF信号源26を備えている。
【0019】
光送受信ユニット21は、入力光15と強度変調光16を分離するための送受分離器24とO/E変換された電気信号を増幅するためのアンプ25を備えている。DFB半導体レーザ22からの出射光は送受分離器24を通して入出力光ファイバ5に結合し、入出力光ファイバ5から戻る強度変調光16は送受分離器24を通してO/E変換器23に入力する。O/E変換器23において強度変調光16は電気信号に変換され、アンプ25により増幅され出力される。その電気信号はスペクトラムアナライザ27に入力され、アンテナにより入力された電磁波信号が表示される。送受分離器24は、光サーキュレータ、光ファイバ分岐、半透過ミラーのいずれかを用いて構成することができる。
【0020】
図2は実施例1の光電界センサに用いる光電界センサヘッド20の構成の一例を模式的に示す透過型の平面図である。図2において、光電界センサヘッド20は、電磁波の電界の強度に依存して電圧を発生するアンテナ3と一体に構成された変調電極4を備えた光変調器2を有し、変調電極4に印加された電圧に依存して入射光を強度変調して出力する。光変調器2は、ニオブ酸リチウム結晶基板上に形成された光導波路を用いた分岐干渉型光変調器であり、さらに、入射光を内部で反射して折り返す反射型光変調器であって、入力光15及び出力される強度変調光16は入出力光ファイバ5に結合される。
【0021】
光電界センサヘッド20は、光変調器2と入出力光ファイバ5の一部を収納したほぼ直方体形状のパッケージ6を備え、パッケージ6は、電磁波を透過する硬質発泡スチロールや樹脂等の材料により構成されている。入出力光ファイバ5の先端は、光変調器2の入出射端面と端面同士を接着固定するため、フェルール13内に挿入され固定されている。光変調器2はパッケージ6に固定された台座等に固定され、入出力光ファイバ5はゴム状の固定部品14によりパッケージ6に固定されている。
【0022】
図3は、本実施例の光電界センサヘッド20に内蔵される光変調器2の構成の一例を模式的に示す図であり、図3(a)は平面図、図3(b)はA-A断面図である。図3において、光変調器2は、電気光学効果を有する結晶であるニオブ酸リチウム(LiNbO)結晶からXカットで切り出して作られた基板31と、基板31の上面側にTi拡散によって作られた分岐干渉型光導波路32と、基板31の上面側に成膜されたバッファ層33と、バッファ層33の上に形成された変調電極4及び変調電極4と一体に形成されたアンテナ3と、基板31の一方の端部に設置された光反射部35とから構成されている。変調電極4及びアンテナ3は、スパッタリング等によって成膜されたクロム(Cr)と金(Au)の2層膜である。
【0023】
分岐干渉型光導波路32は、入力光5の入射側に延びる1本の入出力光導波路32aと、入出力光導波路32aから二股に分岐して延びる2本の位相シフト光導波路32b,32cとから構成されている。入出力光導波路32aや位相シフト光導波路32b,32cでは、延伸方向に垂直な方向の幅Wはすべて等しい。また、位相シフト光導波路32b,32cは、それらの延伸方向の長さはほぼ等しい。
【0024】
これらの光導波路の幅Wは、5~12μmの範囲にある。位相シフト光導波路32b,32cの延伸方向の長さは、10~30mmの範囲にある。位相シフト光導波路32bと32cは、その中央部分が幅方向へ所定の間隔で離間し、互いに平行に延びている。中央部分における位相シフト光導波路32bと32cの間の間隔は、15~50μmの範囲にある。なお、入出力光導波路32a、位相シフト光導波路32b、32cの幅W、位相シフト光導波路32b,32cの長さ、位相シフト光導波路32b、32c間の間隔について特に限定はなく、それら寸法を任意に設定することができる。
【0025】
バッファ層33は、分岐干渉型光導波路32を伝播する光の一部が変調電極部4やアンテナ3に吸収されることを防止する目的で設けられる。バッファ層33は、主として二酸化ケイ素(SiO)膜等から作られ、その厚さは0.1~1.0μm程度である。
【0026】
光変調器2においては、変調電極4は、位相シフト光導波路32bと32cの間に配置され左側のアンテナ3に接続された電極部4aと、位相シフト光導波路32b,32cを挟んで電極部4aの両側に配置され右側のアンテナ3に接続された電極部4b及び4cとを有している。基板31の入出力光導波路32aの光入出射端には入出力光ファイバ5の入出射端面が結合している。光反射部35は、入出力光導波路32aから入射して位相シフト光導波路32b,32cを伝播した光を反射し、位相シフト光導波路32b,32cから入出力光導波路32aへ戻して伝播させる。アンテナ3に誘起された電圧により、電極部4aと4bとの間、及び電極部4aと4cとの間の2つの位相シフト光導波路32b,32c中に互いに逆向きに電界が印加される。これにより、位相シフト光導波路32bと32cには互いに逆向きの屈折率変化が生じ、それらを通過する光に互いに逆極性の位相シフトが生じ、それらの光が合流するときに互いに干渉して強度変化が生ずる。これによりアンテナ3を介して変調電極4への印加電圧に対応した光強度変化を有する光強度変調信号が得られる。なお、本実施例では入出力光ファイバ5として偏波保存光ファイバを用い、z軸方向のTEモード光が入射されるようにしている。
【0027】
図4は、本実施例の光電界センサの測定結果の一例を示す図であり、測定する電磁波の周波数に対するノイズレベルの測定結果を示す。一番下の測定値が入射光を遮断したときのノイズレベルであり、システム上のノイズレベルの下限値を示す。一番上の測定値は従来の光電界センサ、すなわち、光源であるDFB半導体レーザを変調しないで使用したときのノイズレベルである。このように、従来の光電界センサでは、100MHz以下の測定周波数領域において低周波ほどノイズレベルが大きくなっていることがわかる。本実施例の構成で、20MHzの周波数で20%の変調度(〇)、及び2%の変調度(△)でDFB半導体レーザを強度変調した場合、いずれの場合も従来の変調なしの場合に比べてノイズレベルが大幅に低下していることがわかる。
【0028】
図5は、本実施例の光電界センサにおいて、DFB半導体レーザの変調周波数と変調度を変えた場合の、電磁波の測定周波数100KHzにおけるノイズレベルの測定結果を示す。変調周波数が0.3MHz~100MHzの場合、いずれも変調度が増加するにしたがってノイズレベルが低下し、変調度20%程度でノイズ低減量が飽和していることがわかる。一方、変調周波数が300MHzの場合、ノイズレベルの低減量は小さい。
【0029】
図6は、本実施例の光電界センサにおいて、DFB半導体レーザの変調周波数と変調度を変えた場合の、電磁波の測定周波数5MHzにおけるノイズレベルの測定結果を示す。変調周波数が10MHzと100MHzの場合、変調度が増加するにしたがってノイズレベルが低下していることがわかる。一方、変調周波数が300MHzの場合、ノイズレベルの低減量は小さい。
【0030】
図7は、本実施例の光電界センサにおいて、DFB半導体レーザを100MHzで変調し、その変調度を変えた場合のノイズレベルの測定結果を示す。電磁波の測定周波数が0.1MHz~50MHzの場合、いずれも変調度が増加するにしたがってノイズレベルが低下していることがわかる。
【0031】
図8は、本実施例の光電界センサにおいて、DFB半導体レーザを300MHzで変調し、その変調度を変えた場合のノイズレベルの測定結果を示す。電磁波の測定周波数が0.1MHz~50MHzの場合、いずれもノイズレベルの低減効果が小さいことがわかる。
【0032】
以上の実験結果でも明らかであるが、他の実験を含めて検討した結果、DFB半導体レーザの変調周波数が100KHz~100MHzであって、変調度が1%以上であれば、DFB半導体レーザを変調しないで使用した従来の光電界センサに比べ、実用上、明らかなノイズレベルの低減効果が得られることが確認できた。
【0033】
図9は、本発明の光電界センサに用いることができる光電界センサヘッドの他の構成例を模式的に示す図であり、図9(a)は透過型の平面図、図9(b)は光変調器のA-A断面図である。図9において、本構成の光電界センサヘッド40は、電磁波の電界の強度に依存して電圧を発生するアンテナ43とアンテナ43に接続された変調電極44を備えた光変調器42を有し、変調電極42に印加された電圧に依存して入射光を強度変調して出力する。光変調器42は、ニオブ酸リチウム結晶基板上に形成された光導波路を用いた分岐干渉型光変調器であり、さらに、入射光を内部で反射して折り返す反射型光変調器であって、入力光55及び出力される強度変調光56は入出力光ファイバ46に結合される。光電界センサヘッド40の構成は、光変調器2と光変調器42の違いを除けば、図2に示した光電界センサヘッド20とほぼ同じである。
【0034】
光変調器42は、電気光学効果を有する結晶であるニオブ酸リチウム結晶からXカットで切り出して作られた基板31上に光変調器2と同様な工程で作成された反射型の分岐干渉型光導波路を備えている。光変調器42においては、変調電極44は、位相シフト光導波路54bと54cの間に配置され上側のアンテナ43aに接続された電極部44aと、位相シフト光導波路54cを挟んで電極部44aに対向して配置され下側のアンテナ43bに接続された電極部44bとを有している。アンテナ43に誘起された電圧により、電極部44aと44bとの間に電界が印加され、位相シフト光導波路54cには屈折率変化が生じるので、位相シフト光導波路54bと54cを伝搬する光波には位相シフトが生じ、それらが合流するときに互いに干渉して強度変化が生ずる。これによりアンテナ43を介して変調電極44への印加電圧に対応した光強度変化を有する光強度変調信号が得られる。
【0035】
光電界センサヘッド40を用いた実験においても、上記の実験結果と同様な本発明によるノイズレベルの低減効果が得られることが確認できた。
【0036】
また、2つのDFB半導体レーザの出射光を互いに偏光方向を直交させて合波して構成した直交偏波光源を使用した実験においても、2つのDFB半導体レーザを上記のような本発明の条件で変調して使用した場合には、変調しない従来の場合に比べ、ノイズレベルの低減効果が得られることが確認できた。この直交偏波光源の場合は、入出力光ファイバとして通常の単一モード光ファイバを用いることができ、光変調器が単一偏波のみを導波する場合や2つの光電界センサヘッドに入射光を供給する場合等に有効に用いることができる。
【0037】
なお、本発明は上記の実施例に限定されるものではないことは言うまでもなく、目的に応じて様々な変形が可能である。例えば、DFB半導体レーザの変調周波数や変調度は、100KHz~100MHzの周波数範囲内において測定対象の周波数に応じて選択可能であり、使用する光変調器の方式等は目的とする測定電圧の周波数、振幅などに応じて任意に選択可能である。
【符号の説明】
【0038】
2、42 光変調器
3、43、43a、43b アンテナ
4、44 変調電極
4a、4b、4c、44a、44b 電極部
5、46 入出力光ファイバ
6 パッケージ
10、40 光電界センサ
13 フェルール
14 固定部品
15、55 入力光
16、56 強度変調光
21 光送受信ユニット
22 DFB半導体レーザ
23 O/E変換器
24 送受分離器
25 アンプ
26 RF信号源
27 スペクトラムアナライザ
31 基板
32 分岐干渉型光導波路
32a、54a 入出力光導波路
32b、32c、54b、54c 位相シフト光導波路
33 バッファ層
35 光反射部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9