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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031252
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】鋼管杭の施工方法及び鋼管杭基礎
(51)【国際特許分類】
   E02D 7/22 20060101AFI20240229BHJP
   E02D 5/56 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
E02D7/22
E02D5/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134691
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100224926
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 雄久
(72)【発明者】
【氏名】大前 憲盛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健吾
(72)【発明者】
【氏名】戸田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】澤石 正道
(72)【発明者】
【氏名】東海林 智之
(72)【発明者】
【氏名】長浦 崇晃
【テーマコード(参考)】
2D041
2D050
【Fターム(参考)】
2D041BA44
2D041CA01
2D041CA05
2D041DB02
2D041FA14
2D050CB23
(57)【要約】
【課題】施工性を向上させることが可能となる鋼管杭の施工方法を提供する。
【解決手段】実施形態における鋼管杭の施工方法は、内面に螺旋状の突起を有する鋼管杭2を地盤に回転圧入する鋼管杭の施工方法であって、螺旋状の突起4と鋼管軸Zとがなす下向きの傾斜角度θ1と、回転圧入時の回転方向の変位量D2と鉛直方向の変位量D1とで構成する施工角度θ2とが、鋼管軸Zを挟んで反対側の象限となる逆旋回方向R1に、鋼管杭2を回転圧入する第1回転圧入工程を備える。また、第1回転圧入工程では、鋼管杭2の先端を支持層に貫入し、第1回転圧入工程の後に、傾斜角度θ1と、施工角度θ2とが、同一象限となる正旋回方向R2に、鋼管杭2を回転圧入する第2回転圧入工程を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面に螺旋状の突起を有する鋼管杭を地盤に回転圧入する鋼管杭の施工方法であって、
前記螺旋状の突起と鋼管軸とがなす下向きの傾斜角度と、回転圧入時の回転方向の変位量と鉛直方向変位量とで構成する施工角度とが、鋼管軸を挟んで反対側の象限となる逆旋回方向に、前記鋼管杭を回転圧入する第1回転圧入工程を備えること
を特徴とする鋼管杭の施工方法。
【請求項2】
前記第1回転圧入工程の後に、前記傾斜角度と、前記施工角度とが、同一象限となる正旋回方向に、前記鋼管杭を回転圧入する第2回転圧入工程を備えること
を特徴とする請求項1に記載の鋼管杭の施工方法。
【請求項3】
前記第1回転圧入工程では、前記鋼管杭の先端を支持層に貫入し、
前記第1回転圧入工程の後に、前記第2回転圧入工程を備えること
を特徴とする請求項2に記載の鋼管杭の施工方法。
【請求項4】
内面に螺旋状の突起を有する鋼管杭を請求項1~3の何れか1項に記載の鋼管杭の施工方法によって地盤に貫入して構築されることを特徴とする鋼管杭基礎。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内面に螺旋状の突起を有する鋼管杭の施工方法及び鋼管杭基礎に関する。
【背景技術】
【0002】
素管の鋼管杭を地盤に回転圧入した際に、鋼管杭の先端の開口部から鋼管杭内部に取り入れられる土砂が混入するおそれがある。この場合、杭先端の土砂が締固められる先端閉塞が発現して鋼管杭の圧入抵抗が大きくなってしまい、鋼管杭一本当たりの施工に時間がかかる。
【0003】
従来、内面に螺旋状の突起を有する鋼管杭を地盤に回転圧入する技術として、特許文献1、2が開示されている。
【0004】
特許文献1の鋼管杭の施工方法は、螺旋状の突起と鋼管軸とがなす下向きの傾斜角度と、回転圧入時の回転変位量と鉛直変位量とで構成する施工角度とが同一象限となる正旋回方向に鋼管杭を回転圧入する。これにより、鋼管杭内部に侵入する土砂を螺旋状の突起に沿って、鋼管杭内の上部に向かって取り入れることが容易となる。このため、杭先端開口部に土砂等が混入した場合であっても、杭先端の土砂の先端閉塞を調整して、鋼管杭を回転圧入する回転圧入装置の施工トルクや圧入の圧力を低減させて、施工性の向上を図るとされている。
【0005】
また、特許文献1の鋼管杭の施工方法は、鋼管杭を打ち止めする際に、鋼管杭を単に逆回転させて当該鋼管杭内部の土を締め固める逆回転工程を実施する。これにより、突起が管内土を下向きに押し下げることによって管内土を締め固めることで、杭先端の土砂の先端閉塞を促進させて先端支持力の向上を図るとされている。
【0006】
特許文献2の鋼管は、鋼管の先端部に設けられると共に鋼管の周方向に螺旋状に延出して地盤をほぐす地盤ほぐし部材を有する。特許文献2の鋼管は、鋼管本体部の先端に設けた地盤ほぐし部材が、鋼管が回転する際に地盤を掘削する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-157780号公報
【特許文献2】特開2022-40470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、従来技術は、内面に螺旋状突起を有する鋼管杭を地盤に回転圧入する際には、正旋回方向に回転圧入するものであり、更なる施工性の向上を図る技術が求められる。
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、施工性を向上させることが可能となる鋼管杭の施工方法及び鋼管杭基礎を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、内面に螺旋状の突起を有する鋼管杭の特徴を活かすべく鋭意検討を行った。その結果、螺旋状の突起と鋼管軸とがなす下向きの傾斜角度と、回転圧入時の回転変位量と鉛直変位量とで構成する施工角度とが、鋼管軸を挟んで反対側の象限となる逆旋回方向に鋼管杭を回転圧入することにより、正旋回方向に回転圧入する場合よりも、先端閉塞の発現が阻害されやすくなる。このため、鋼管杭の圧入抵抗を低減でき、施工性を向上させることが可能となる。
【0011】
第1発明に係る鋼管杭の施工方法は、内面に螺旋状の突起を有する鋼管杭を地盤に回転圧入する鋼管杭の施工方法であって、前記螺旋状の突起と鋼管軸とがなす下向きの傾斜角度と、回転圧入時の回転方向の変位量と鉛直方向の変位量とで構成する施工角度とが、鋼管軸を挟んで反対側の象限となる逆旋回方向に、前記鋼管杭を回転圧入する第1回転圧入工程を備えることを特徴とする。
【0012】
第2発明に係る鋼管杭の施工方法は、第1発明において、前記第1回転圧入工程の後に、前記傾斜角度と、前記施工角度とが、同一象限となる正旋回方向に、前記鋼管杭を回転圧入する第2回転圧入工程を備えることを特徴とする。
【0013】
第3発明に係る鋼管杭の施工方法は、第2発明において、前記第1回転圧入工程では、鋼管杭の先端を地盤の支持層に貫入し、前記第1回転圧入工程の後に、前記第2回転圧入工程を備えることを特徴とする。
【0014】
第4発明に係る鋼管杭基礎は、内面に螺旋状の突起を有する鋼管杭を第1発明~第3発明の何れか1つに記載の鋼管杭の施工方法によって地盤に貫入して構築されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1発明によれば、逆旋回方向に鋼管杭を回転圧入する第1回転圧入工程を備える。これにより、管内土を乱す効果が高くなることから、先端閉塞の発現が阻害され易くなる。その結果、鋼管杭の圧入抵抗を低減でき、施工性を向上させることが可能となる。
【0016】
第2発明によれば、前記第1回転圧入工程の後に、正旋回方向に鋼管杭を回転圧入する第2回転圧入工程を備える。これにより、逆旋回方向に回転圧入を継続する場合と比べて、先端閉塞が発現され易くなる。したがって、鋼管杭の先端支持力を向上させることが可能となる。
【0017】
第3発明によれば、前記第1回転圧入工程では、鋼管杭の先端を地盤の支持層に貫入し、前記第1回転圧入工程の後に、正旋回方向に鋼管杭を回転圧入する第2回転圧入工程を備える。これにより、支持層に貫入された鋼管杭において、先端閉塞が発現され易くなる。したがって、鋼管杭の先端が地盤の支持層に貫入された状態で、先端閉塞を発現させ易くすることで、鋼管杭の先端支持力を更に向上させることが可能となる。
【0018】
第4発明によれば、施工性を向上させることが可能となる鋼管杭基礎を構築することができる。また、第4発明によれば、鋼管杭の先端支持力を向上させることが可能となる鋼管杭基礎を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施形態における鋼管杭基礎の一例を示す断面図である。
図2図2(a)は、実施形態における鋼管杭の逆旋回方向への回転圧入を説明する図であり、図2(b)は、実施形態における鋼管杭の正旋回方向への回転圧入を説明する図である。
図3図3(a)は、逆旋回方向へ回転圧入した際の管内土の挙動を説明する図であり、図3(b)は、正旋回方向へ回転圧入した際の管内土の挙動を説明する図である。
図4図4は、鋼管を貫入した際の管内土高さの上昇値の測定方法を説明する図である。
図5図5は、貫入量と管内土高さの上昇値の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した鋼管杭の施工方法及び鋼管杭基礎を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1に示すように、鋼管杭基礎1は、地盤Gに貫入した鋼管杭2を備える。鋼管杭2は、回転圧入装置により回転されるとともに下方に圧入される回転圧入工法によって地盤Gに貫入される。鋼管杭2は、内周面3に螺旋状の突起4が形成された内面突起付きの鋼管である。突起4は、深さ方向(図1中の下方)に向かって時計回りの螺旋状に形成され、その傾斜を、鋼管軸Zとなす傾斜角度θ1とする。
【0022】
鋼管杭2は、例えばスパイラル鋼管のように、予め突起4が形成された鋼板を筒状にすることにより形成されてもよい。鋼管杭2は、予め筒状に形成された鋼管の内周面3に棒鋼や平鋼を溶接する、もしくは溶接金属を盛り上げることにより突起4が後付けされて形成されてもよい。このように、突起4の設置の順序は、任意である。
【0023】
突起4は、図1に示すように、例えば鋼管杭2の内周面3に連続的に形成される。なお、突起4は、例えば鋼管杭2の内周面3に断続的に形成されてもよい。また、突起4は、例えば鋼管杭2の全長に設置される。突起4は、鋼管杭2の先端から、例えば鋼管杭2の外径の1~5倍程度の範囲に設置されてもよい。
【0024】
次に、鋼管杭の施工方法について説明する。鋼管杭の施工方法は、内面に螺旋状の突起4を有する鋼管杭2を地盤に回転圧入する。図2に示すように、回転圧入される鋼管杭2には、鉛直下向きの圧入方向Qの荷重に伴う鉛直方向の変位量D1と、回転方向Rの荷重に伴う回転方向の変位量D2とが生じる。鋼管杭の施工方法は、鋼管杭2を逆旋回方向R1に回転圧入する第1回転圧入工程と、第1回転圧入工程の後に鋼管杭2を正旋回方向R2に回転圧入する第2回転圧入工程と、を備える。
【0025】
図2(a)に示すように、先ず、第1回転圧入工程では、螺旋状の突起4と鋼管軸Zとがなす下向きの傾斜角度θ1と、回転圧入時の鋼管の変位を回転方向の変位量D2と鉛直方向の変位量D1とに分けたとき、D2とD1で構成する施工角度θ2とが、鋼管軸Zを挟んで反対側の象限となる逆旋回方向R1に、鋼管杭2を回転圧入する。
【0026】
これにより、図3(a)に示すように、管内土が連続的に螺旋状の突起4に乗り上げるように移動する。管内土が突起4に乗り上げるように乱されることから、先端閉塞の発現が阻害され易くなる。このため、鋼管杭の圧入抵抗を低減でき、施工性を向上させることが可能となる。
【0027】
第1回転圧入工程では、鋼管杭2の先端を地盤の支持層に貫入する。第1回転圧入工程では、例えば鋼管杭2の地盤の支持層への根入れ深さが鋼管杭2の外径以上となるまで行うことが好ましいが、必要とされる先端支持力によっては、鋼管杭の先端が支持層に到達する前、又は支持層への根入れ深さが鋼管杭2の外形以下であっても、第2回転圧入工程を開始してもよい。また、支持層到達後も先端閉塞が十分に発現し、所定の先端支持力が確保できる場合には第1回転圧入工程を継続してもよい。
【0028】
ここで、支持層は、構造物を支持できるだけの十分な強度及び剛性を有する層をいい、一般的には事前に構造物が構築される敷地内で入手したボーリングデータを基に選定することができる。また、設計の段階で事前に支持層を定めていても、ボーリング未実施個所において支持層の起伏や未確認の地層の存在によって地盤強度に差異が生じるため、施工中に改めて支持層を選定し直す場合もある。各種設計指針に応じて、支持層に求められる地盤強度の条件は異なっているが、例えば「道路橋示方書・同解説(平成29年)」によれば、一般的な支持層の目安として、粘性土層であればN値が20程度以上、砂層・砂礫層であればN値が30程度以上あれば支持層とみなしてよいとされている。
【0029】
次に、図2(b)に示すように、第2回転圧入工程では、第1回転圧入工程の後に、傾斜角度θ1と、施工角度θ2とが、同一象限となる正旋回方向R2に、鋼管杭2を回転圧入する。
【0030】
これにより、図3(b)に示すように、管内土が螺旋状の突起4に沿って移動するものの、管内土を乱す効果は逆旋回方向R1よりも小さくなる。このため、鋼管杭2の先端の土砂が締固められる先端閉塞が発現され易くなる。したがって、鋼管杭2の先端支持力を向上させることが可能となる。
【0031】
特に、第2回転圧入工程は、例えば鋼管杭2の先端が地盤の支持層に貫入された状態において、正旋回方向R2に、鋼管杭2を回転圧入することが好ましい。これにより、支持層に貫入された鋼管杭において、先端閉塞が発現され易くなる。したがって、鋼管杭2の先端が地盤の支持層に貫入された状態で、先端閉塞を発現させ易くすることで、鋼管杭2の先端支持力を更に向上させることが可能となる。
【0032】
以上により、鋼管杭の施工方法の一例が完了する。これにより、内面に螺旋状の突起4を有する鋼管杭2を地盤に貫入した鋼管杭基礎1が構築される。またこの際、鋼管杭2の先端に予めビットを形成してもよい。これにより、地盤を掘削しながら鋼管杭が回転圧入されることから、鋼管杭の圧入抵抗を低減でき、施工性を向上させることが可能となる。
【0033】
本実施形態によれば、逆旋回方向R1に鋼管杭2を回転圧入する第1回転圧入工程を備える。これにより、管内土を乱す効果が高くなることから、先端閉塞の発現が阻害され易くなる。その結果、鋼管杭2の圧入抵抗を低減でき、施工性を向上させることが可能となる。
【0034】
本実施形態によれば、第1回転圧入工程の後に、正旋回方向R2に鋼管杭2を回転圧入する第2回転圧入工程を備える。これにより、逆旋回方向に回転圧入を継続する場合と比べて、先端閉塞が発現され易くなる。したがって、鋼管杭2の先端支持力を向上させることが可能となる。
【0035】
本実施形態によれば、第1回転圧入工程では、鋼管杭2の先端を地盤の支持層に貫入し、第1回転圧入工程の後に、正旋回方向R2に鋼管杭2を回転圧入する第2回転圧入工程を備える。これにより、支持層に貫入された鋼管杭2において、先端閉塞が発現され易くなる。したがって、鋼管杭2の先端が地盤の支持層に貫入された状態で、先端閉塞を発現させ易くすることで、鋼管杭2の先端支持力を更に向上させることが可能となる。
【0036】
本実施形態によれば、第1回転圧入工程では、鋼管杭2の地盤の支持層への根入れ深さが鋼管杭2の外径以上となるまで、逆旋回方向R1に鋼管杭2を回転圧入し、第1回転圧入工程の後に、正旋回方向R2に鋼管杭2を回転圧入する第2回転圧入工程を備える。これにより、地盤の支持層に十分な根入れ深さが確保された鋼管杭2において、先端閉塞が発現され易くなる。したがって、鋼管杭2の先端支持力をより確実に向上させることが可能となる。
【0037】
本実施形態によれば、逆旋回方向R1に鋼管杭2を回転圧入して、鋼管杭基礎1を構築する。これにより、施工性を向上させることが可能となる鋼管杭基礎1を構築することができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、第1回転圧入工程では、鋼管杭2の先端を地盤の支持層に貫入し、第1回転圧入工程の後に、正旋回方向R2に鋼管杭2を回転圧入して、鋼管杭基礎1を構築する。これにより、先端支持力を向上させることが可能となる鋼管杭基礎1を構築することができる。
【0039】
次に、本発明の作用効果について実験結果を用いて説明する。本実験において、鋼管は模型試験サンプルとし、内面螺旋突起付きと突起なしの通常鋼管(素管)を準備し、これを乾燥砂で構成された砂地盤へ回転圧入を行った。内面螺旋突起付きの鋼管については、逆旋回方向への回転圧入と、正旋回方向への回転圧入と、それぞれを行った。鋼管の外径は101.6mmであり、内面螺旋突起高さは3mm(外径の約3%)であり、内面螺旋は杭先端付近から外径と同じ長さの範囲のみに設置されている。
【0040】
本実験では、各種鋼管を回転圧入した際の貫入量と、貫入に伴う管内土高さの上昇値と、を測定した。図4に示すように、鋼管内部に設けられたワイヤー変位計9は、砂地盤に貫入中の管内土Sの天端位置を経時的に測定できる。管内土高さの上昇値Hは、基準となるある時点Aにおける管内土Sの天端位置と時点Aから一定時間が経過した後のある時点Bにおける管内土Sの天端位置との差分により、算出した。
【0041】
図5は、本実験における貫入量と管内土高さの上昇値との関係を示すグラフである。図5において、逆旋回方向への回転圧入した結果を「逆旋回」と表記し、正旋回方向への回転圧入した結果を「正旋回」と表記し、素管の結果を「素管」と表記する。
【0042】
図5に示すように、例えば貫入量が300mmのとき、逆旋回方向へ回転圧入した場合の管内土高さの上昇値と、正旋回方向へ回転圧入した場合の管内土高さの上昇値と、は、何れも素管の場合の管内土高さの上昇値よりも大きくなった。これは、逆旋回方向への回転圧入の場合と、正旋回方向への回転圧入の場合と、は、内面螺旋突起により管内土が上方に移動し易くなったためと考えられる。これにより、逆旋回方向への回転圧入の場合と、正旋回方向への回転圧入の場合と、では、素管の場合よりも先端閉塞の発現が阻害され易いと考えられる。
【0043】
また、例えば貫入量が300mmのとき、逆旋回方向へ回転圧入した場合の管内土高さの上昇値は、正旋回方向へ回転圧入した場合の管内土高さの上昇値よりも大きくなった。これは、逆旋回方向に回転圧入した場合、図3(a)に示すように、管内土が連続的に螺旋状の突起に乗り上げるように移動するのに対し、正旋回方向に回転圧入した場合、図3(b)に示すように、管内土が螺旋状の突起に沿うように移動する。その結果、正旋回方向への回転圧入と比べて逆旋回方向への回転圧入の方が、管内土がより乱されて、管内土の空隙が増加したものと考えられる。したがって、正旋回方向への回転圧入と比べて逆旋回方向への回転圧入の方が、内面の突起による管内土を乱す効果が高くなり、先端閉塞の発現が阻害され易いと考えられる。このため、正旋回方向への回転圧入と比べて逆旋回方向への回転圧入の方が、圧入抵抗を低減させることができる。
【0044】
以上から、逆旋回方向に回転圧入することにより、圧入抵抗を低減させることができる。このため、施工性を向上させることが可能となる。
【0045】
一方、正旋回方向への回転圧入の方が、逆旋回方向への回転圧入よりも、先端閉塞が発現され易いといえる。したがって、逆旋回方向に回転圧入を継続する場合と比べて、逆旋回方向から正旋回方向に回転方向を切り替えて回転圧入することにより、鋼管杭の先端支持力を向上させることが可能となる。特に、鋼管杭の先端が地盤の支持層に貫入された状態で、逆旋回方向から正旋回方向に回転方向を切り替えて回転圧入することにより、鋼管杭の先端支持力を更に向上させることが可能となる。
【0046】
また、内面螺旋は杭全長に設置されている必要はなく、杭先端付近に限定して設置した場合でも効果があることが分かる。螺旋設置範囲は杭先端から外径の1~5倍の範囲にあることが、加工コスト抑制の点からも望ましい。
【0047】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記実施形態では、土木構造物や建築構造物の基礎に利用可能な鋼管杭基礎1を例示したが、本発明の鋼管杭は、基礎として利用されるものに限らず、土留め壁や地中の連続壁などに利用されるものであってもよい。
【0048】
以上、この発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。さらに、この発明は、上記の実施形態の他、様々な新規な形態で実施することができる。したがって、上記の実施形態は、この発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更が可能である。このような新規な形態や変形は、この発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明、及び特許請求の範囲に記載された発明の均等物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1 :鋼管杭基礎
2 :鋼管杭
3 :内周面
4 :突起
9 :ワイヤー変位計
D1 :鉛直変位量
D2 :回転変位量
G :地盤
R :回転方向
R1 :逆旋回方向
R2 :正旋回方向
Q :圧入方向
Z :鋼管軸
θ1 :傾斜角度
θ2 :施工角度
図1
図2
図3
図4
図5