(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003126
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】磁気粘性流体装置
(51)【国際特許分類】
F16D 37/02 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
F16D37/02 D
F16D37/02 M
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023190920
(22)【出願日】2023-11-08
(62)【分割の表示】P 2019129684の分割
【原出願日】2019-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110003801
【氏名又は名称】KEY弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】榮 淳
(72)【発明者】
【氏名】上嶋 優矢
(72)【発明者】
【氏名】赤岩 修一
(57)【要約】
【課題】磁気粘性流体の分散媒の種類にかかわらず、特性値が周囲の環境温度等による影響を受け難い磁気粘性流体装置を提供すること。
【解決手段】 ロータ3と、ロータ3に対して微小隙間17を介して対向する対向面11aを有するヨーク11と、微小隙間17に介在する磁気粘性流体5と、微小隙間17を貫通する磁路を形成する磁路形成手段4と、を備える。磁路形成手段4は、コイル13を含んでいる。ヨーク11に接触して設けられ、ヨーク11の加熱を行う、コイルを含まない温調部6をさらに備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、
前記ロータに対して微小隙間を介して対向する対向面を有するヨークと、
前記微小隙間に介在する磁気粘性流体と、
前記微小隙間を貫通する磁路を形成する磁路形成手段と、
を備える磁気粘性流体装置であって、
前記磁路形成手段は、コイルを含んでおり、
前記ヨークに接触して設けられ、前記ヨークの加熱を行う、コイルを含まない温調部を備えることを特徴とする磁気粘性流体装置。
【請求項2】
ロータと、
前記ロータに対して微小隙間を介して対向する対向面を有するヨークと、
前記微小隙間に介在する磁気粘性流体と、
前記微小隙間を貫通する磁路を形成する磁路形成手段と、
を備える磁気粘性流体装置であって、
前記磁路形成手段は、コイルを含んでおり、
前記ヨークに接触して設けられ、前記ヨークの加熱又は冷却を行う、コイルを含まない温調部と、
前記磁気粘性流体の温度、または前記磁気粘性流体の温度変化に伴って温度変化する部分の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部が検出する温度に基づいて、前記温度検出部が検出する温度が所定の温度に近づき、当該所定の温度を維持するように、前記温調部を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする磁気粘性流体装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の磁気粘性流体装置において、
前記ヨークの前記対向面は、前記ロータの一方の面に対して微小隙間を介して対向しており、
前記温調部は、前記ヨークの前記対向面と反対側に接触して設けられている、ことを特徴とする磁気粘性流体装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項2に従属する請求項3に記載の磁気粘性流体装置において、
前記温調部は、前記ヨークに接触して設けられ、前記ヨークの加熱および冷却を行う、コイルを含まない温調部である、
ことを特徴とする磁気粘性流体装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の磁気粘性流体装置において、
前記温調部は、前記ロータの回転軸線方向から視て前記ロータの全体を覆う形状および大きさを有する、ことを特徴とする磁気粘性流体装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の磁気粘性流体装置において、
前記温調部は、ペルチェ素子であることを特徴とする磁気粘性流体装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の磁気粘性流体装置において、
前記温調部は、前記ヨークの前記対向面と反対側に着脱可能に設けられている、ことを特徴とする磁気粘性流体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対回転可能に設けられた部材間に磁気粘性流体を介在させ、磁気粘性流体に付与する磁場の強さを変えることにより、上記部材間で伝達されるトルクを変えることができる磁気粘性流体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の磁気粘性流体装置は、例えば特許文献1,2に開示されている。同文献に開示された磁気粘性流体装置は、円板とケーシングとの間に磁気粘性流体を介在させ、磁気粘性流体に付与する磁場の強さを変えることにより、円板とケーシングとの間で伝達されるトルクを変えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-011788号公報
【特許文献2】特開2019-032050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、磁気粘性流体装置に封入される磁気粘性流体の分散媒(オイル)の粘度は温度に依存する。このため、磁気粘性流体は、磁場発生用のコイルの発熱や周囲の環境温度に影響されて粘度が変化してしまう。その結果、磁気粘性流体装置の特性値(例えば所定の電流をコイルに印加した場合に発生する回転抵抗など)にも影響が及ぶ。
【0005】
広い温度範囲で粘度の変化が少ない分散媒を使用したり、分散媒に添加剤を添加することによって環境温度等の変化による磁気粘性流体装置の特性値の変化を抑制することは可能である。しかし、そのような分散媒や添加剤を使用することによって磁気粘性流体装置に悪影響(例えば磁気粘性流体装置の耐久性が低下するなど)が生じることがある。
【0006】
そこで、本発明は、磁気粘性流体装置に使用される磁気粘性流体の分散媒の種類にかかわらず、特性値が周囲の環境温度等による影響を受け難い磁気粘性流体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る磁気粘性流体装置は、ロータと、前記ロータに対して微小隙間を介して対向する対向面を有するヨークと、前記微小隙間に介在する磁気粘性流体と、
前記微小隙間を貫通する磁路を形成する磁路形成手段と、を備え、さらに、前記ヨークに接触して設けられ、前記ヨークの加熱又は冷却を行う温調部を備える。
【0008】
かかる構成を備える磁気粘性流体装置によれば、磁気粘性流体装置に使用される磁気粘性流体の分散媒の種類にかかわらず、特性値が周囲環境温度等による影響を受け難くなる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る磁気粘性流体装置は、第1の態様に係る磁気粘性流体装置において、前記ヨークの前記対向面は、前記ロータの一方の面に対して微小隙間を介して対向しており、前記温調部は、前記ヨークの前記対向面と反対側に接触して設けられ、前記ヨークの加熱又は冷却を行う、ものである。
【0010】
本発明の第3の態様に係る磁気粘性流体装置は、第1又は第2の態様に係る磁気粘性流体装置において、前記温調部は、前記ロータの回転軸線方向から視て前記ロータを覆う形状および大きさを有する。
【0011】
本発明の第4の態様に係る磁気粘性流体装置は、第1~第3の態様に係る磁気粘性流体装置において、前記温調部は、ペルチェ素子である。
【0012】
本発明の第5の態様に係る磁気粘性流体装置は、第1~第4の態様に係る磁気粘性流体装置において、前記磁気粘性流体の温度または前記磁気粘性流体の温度変化に伴って温度変化する部分の温度を検出する温度検出部と、前記温度検出部が検出する温度に基づいて前記温調部を制御する制御部と、をさらに備える。
【0013】
本発明の第6の態様に係る磁気粘性流体装置は、第1~第4の態様に係る磁気粘性流体装置において、前記磁路形成手段は、コイルを含んでおり、前記コイルの電流抵抗値を検出する抵抗値検出部と、前記抵抗値検出部が検出する電流抵抗値に基づいて前記温調部を制御する制御部と、を備える。
【0014】
本発明の第7の態様に係る磁気粘性流体装置は、第1~第6の態様に係る磁気粘性流体装置において、前記温調部は、前記ヨークの前記対向面と反対側に着脱可能に設けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る磁気粘性流体装置よれば、磁気粘性流体の分散媒の種類にかかわらず、特性値が周囲の環境温度等による影響を受け難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施形態に係る磁気粘性流体装置を示す断面図である。
【
図2】第1の実施形態の変形例に係る磁気粘性流体装置を示す断面図である。
【
図3】第2の実施形態に係る磁気粘性流体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
-第1実施形態-
以下、本発明の第1実施の形態に係る磁気粘性流体装置について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る磁気粘性流体装置1は、回転軸2、ロータ3、磁路形成手段4、磁気粘性流体5、温調部6、温度検出部7、制御部8等を備えている。
【0018】
回転軸2は、軸受10に回転自在に支持されており、回転軸2の一端部にロータ3の中心部が接続されている。
【0019】
ロータ3は、回転軸2と一体に回転するよう設けられている。本実施形態では、ロータ3は円板状に形成されている。ロータ3は、磁性体で構成されていることが望ましい。
【0020】
磁路形成手段4は、第1ヨーク11、第2ヨーク12、コイル13等を用いて構成されている。
【0021】
第1ヨーク11は、ロータ3の一方の面3aに対向する対向面11aを有する。ロータ3の一方の面3aと、第1ヨーク11の対向面11aとの間には微小隙間17が形成されている。本実施形態では、第1ヨーク11は、軸線方向から視て円状の輪郭を有する。第1ヨーク11の対向面11aと反対側の面11b(以下「外側面11b」ともいう。)は平坦に形成されている。第1ヨーク11の外周側には、コイル13の配置スペース11cが形成されている。
【0022】
第2ヨーク12は、ロータ3の他方の面3bに対向する対向面12aを有する。ロータ3の他方の面3bと、第2ヨーク12の対向面12aとの間にも微小隙間18が形成されている。本実施形態では、第2ヨーク12も、軸方向から視て円状の輪郭を有する。第2ヨーク12の外周側には、コイル13の配置スペース12cが形成されている。
図1に示すように、第2ヨーク12の外周部12dは第1ヨーク11の外周部11dと接続されている。また、第2ヨーク12の内側には、軸穴12e、軸受ハウジング12fおよび環状溝12gが形成されている。軸穴12eには、回転軸2が挿通されている。軸受ハウジング12fには、回転軸2を支持する軸受10が嵌合されている。環状溝12gには、シール部材19が嵌め付けられる。なお、シール部材19は、磁気粘性流体5が外部に漏出しないように、回転軸2と第2ヨーク12との隙間をシールしている。
【0023】
コイル13は、電流印加時に、上記微小隙間17,18を直交する磁路を形成するように設けられている。すなわち、コイル13に電流が印加されると
図1の矢印Pに沿った方向に磁路が形成される。本実施形態では、コイル13は、ロータ3の外側において第1ヨーク11と第2ヨーク12との間に環状に配設されている。なお、コイル13には、図示しない給電装置から所望の電流が供給されるようになっている。
【0024】
磁気粘性流体5は、第1ヨーク11および第2ヨーク12の内側に形成された封入空間21に封入されている。
図1では、灰色に塗り潰した領域が磁気粘性流体5の封入空間21を表す。この磁気粘性流体5は、ロータ3の一方の面3aと対向面11aとの微小隙間17、並びに、ロータ3の他方の面3bと対向面12aとの微小隙間18に介在し、これらの間で粘度に応じたトルク伝達を行う。
【0025】
磁気粘性流体5は、磁性粒子を分散媒に分散させてなる液体である。磁性粒子として、例えば、ナノサイズの金属粒子(金属ナノ粒子)を使用することができる。磁性粒子は磁化可能な金属材料からなり、金属材料に特に制限はないが軟磁性材料が好ましい。軟磁性材料としては、例えば鉄、コバルト、ニッケル及びパーマロイ等の合金が挙げられる。分散媒は、特に限定されるものではなく、一般的に磁気粘性流体に用いられる周知の分散媒を用いることができる。
【0026】
温調部6は、第1ヨーク11の外側面11bに接触して設けられ、第1ヨーク11の加熱又は冷却を行う。本実施形態では、温調部6としてペルチェ素子が用いられる。また、本実施形態では、
図1に示すように、温調部6の第1ヨーク11側の面は、微小隙間17に対して平行に配設されている。
【0027】
温度検出部7は、磁気粘性流体5の温度を検出するためのものであり、例えば温度センサを用いて構成される。
図1に示すように、温度センサの感温部7aは、磁気粘性流体5内に配置されることが望ましい。
図1に示す例では、感温部7aは、第1ヨーク11の対向面11aに沿った面上で、ロータ3の外周より外側に配置されている。
【0028】
また、温調部6の磁気粘性流体5と反対側の面7bには、放熱・吸熱部材14が設けられている。放熱・吸熱部材14は、温調部6側が比較的高温になると、温調部6から伝導する熱を外部に放熱し、温調部6側が比較的低温になると、外部から吸熱した熱を温調部6側に伝導する。放熱・吸熱部材14として、銅合金、アルミニウム合金等の熱伝導性に優れた材料を使用することができる。例えば、アルミニウム合金からなるヒートシンク等を使用することができる。本実施形態では、放熱・吸熱部材14は、非磁性体からなる環状の部材23の内側に固定され、環状の部材23は、固定具22(本実施形態ではボルト等)によって第1ヨーク11および第2ヨーク12に固定されている。温調部6は、放熱・吸熱部材14と第1ヨーク11に挟まれた状態で、環状の部材23の内側に固定されている。なお、本実施形態では、温調部6、放熱・吸熱部材14および部材23は、互いに一体に設けられており、固定具22によって第1ヨーク11に対して着脱可能に取り付けられている。
【0029】
また、温調部6は、ロータ3の回転軸線方向から視てロータ3を覆う形状(円形状)および大きさを有する。
【0030】
制御部8は、温度検出部7が検出する磁気粘性流体5の温度に基づいて温調部6に供給する電流を制御する。具体的には、温度検出部7が検出する磁気粘性流体5の温度が所定の温度に近づくように温調部6に供給する電流や電流の極性の切り替えを行う。制御部8は、例えば、磁気粘性流体5の温度が所定の目標温度(例えば20℃)より所定温度(例えば1℃)以上高温(例えば40℃)である場合、その温度が目標温度に対して所定範囲内(例えば目標温度±0.5℃)に下がるまで温調部6が第1ヨーク11を冷却するように温調部6に電流を供給する。一方、磁気粘性流体5の温度が所定の目標温度(例えば20℃)より所定温度(例えば1℃)以上低温(例えば-5℃)である場合、その温度が目標温度に対して所定範囲内(例えば目標温度±0.5℃)に上昇するまで温調部6が第1ヨーク11を加熱するように、温調部6に電流を供給する。なお、制御部8は、マイコン等を用いて構成してもよいし、マイコンを含まない電子回路を用いて構成してもよい。
【0031】
以上に説明した磁気粘性流体装置1によれば、磁気粘性流体5の温度を所定の好ましい温度に維持することができる。このため、磁気粘性流体装置1に使用される磁気粘性流体の分散媒の種類にかかわらず、特性値(例えば所定の電流をコイル13に印加した場合に発生する回転軸2の回転抵抗)が周囲の環境温度、コイル13の発熱等による影響を受け難いものとなる。
【0032】
特に、温調部6は、ロータ3と第1ヨーク11との微小隙間17から比較的近い位置に設けられているため、第1ヨーク11を介して微小隙間17に介在する磁気粘性流体を効率的に加熱・冷却することができる。
【0033】
また、温調部6は、ロータ3の回転軸線方向から視てロータ3を覆う形状および大きさを有するため、微小隙間17に介在する磁気粘性流体を全体的に均一且つ迅速に加熱・冷却することができる。
【0034】
<温度検出部の変形例1>
上記温度検出部7は、温度センサを用いて磁気粘性流体5の温度を検出するものであったが、磁気粘性流体5の温度と磁気粘性流体装置1における他の部分(磁気粘性流体5以外の部分)の温度(例えば、第1ヨーク11、第2ヨーク12等の温度)はある程度連動する。また、他の部分の温度から磁気粘性流体5の温度をある程度推定することもできる。よって、磁気粘性流体の温度を検出する代わりに、他の部分の温度を検出し、制御部8が温度検出部が検出する他の部分の温度に基づいて温調部6に供給する電流を制御するようにしても、磁気粘性流体5の温度をある程度所望の温度に維持することができる。なお、このことは、後述する第2実施形態でも同様のことがいえる。
【0035】
<温度検出部の変形例2>
上記温度検出部7は、温度センサを用いて磁気粘性流体5の温度を検出するものであったが、磁気粘性流体の温度を検出する代わりに、
図2に示すように、コイル13の電流抵抗値を検出する抵抗値検出部26を設けて、制御部8が抵抗値検出部26が検出する電流抵抗値に基づいて温調部6に供給する電流を制御するようにしても、磁気粘性流体5の温度をある程度所望の温度に維持することができる。すなわち、コイル13の電流抵抗値(銅の電流抵抗値)はコイル13の温度が高くなると高くなり、コイル13の温度が低くなると低くなるため、コイル13の電流抵抗値によって、コイル13の温度を推定することができ、コイルの推定温度によって磁気粘性流体5の温度もある程度推定することができるからである。なお、このことは、後述する第2実施形態でも同様のことがいえる。
【0036】
<温調部の取付場所>
第1実施形態における温調部6の取り付け場所は、磁気粘性流体5の温度を所望の温度に維持し易い場所の一例である。上記以外の場所で、第1ヨーク11又は第2ヨーク12に温調部6を接触させて設置しても磁気粘性流体5の温度をある程度所望の範囲に維持することは可能である。なお、このことは、後述する第2実施形態でも同様のことがいえる。
【0037】
<温調部の大きさ>
既述した実施形態における温調部6は、ロータ3を覆う形状および大きさを有するため、微小隙間17に介在する磁気粘性流体を全体的に均一且つ迅速に加熱・冷却することができるが、温調部6がロータ3を覆う大きさを有しないものであっても、磁気粘性流体5の温度をある程度所望の範囲に維持することは可能である。なお、このことは、後述する第2実施形態でも同様のことがいえる。
【0038】
-第2実施形態-
以下、本発明の第2実施形態に係る磁気粘性流体装置1Bについて説明する。なお、以下の説明では、各部を構成する部材の機能が第1実施形態で説明した磁気粘性流体装置1におけるものと同様の機能を果たす場合は、多少形状等が相違していても第1実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
【0039】
第2実施形態に係る磁気粘性流体装置1Bは、
図3に示すように、回転軸2、ロータ3、磁路形成手段4、磁気粘性流体5、温調部6、温度検出部7、制御部8等を備えている。
【0040】
磁路形成手段4は、第1ヨーク11A、第2ヨーク12A、コイル13等を用いて構成されている。第2実施形態に係る磁気粘性流体装置1Bが第1実施形態に係る磁気粘性流体装置1と相違する主な点は、第1ヨーク11A、第2ヨーク12A、ロータ3、温調部6、放熱・吸熱部材14の形状、大きさ等である。
【0041】
すなわち、
図3に示すように、第1ヨーク11Aは、平板状に形成されており、ロータ3の直径と略同一とされている。第2ヨーク12Aは、ロータ3側に開口した断面コ字状に形成されており、ロータ3の他方の面3bに対向する対向面12Aaがコイル13より内側とコイル13より外側とに形成されている。温調部6は、第1ヨーク11Aと略同じ形状および大きさとされている。放熱・吸熱部材14は、温調部6の全体に密着するように設けられている。なお、第1ヨーク11A、第2ヨーク12Aおよび温調部6は、非磁性体からなる円筒部材27に嵌め込まれて固定されている。
【0042】
また、放熱・吸熱部材14は、ボルト等の固定具22にて円筒部材27に対して着脱可能に固定されている。これに伴い温調部6も第1ヨーク11A等に対して着脱可能となっている。
【0043】
コイル13は、電流印加時に、微小隙間17,18を直交する磁路を形成するように設けられている。すなわち、コイル13に電流が印加されると
図3の矢印Pに沿った方向に磁路が形成される。本実施形態では、コイル13は、第2ヨーク12Aの環状溝に配設されている。なお、コイル13には、図示しない給電装置から所望の電流が供給されるようになっている。
【0044】
<温調部の後付け>
以上に説明した第1および第2実施形態では、温調部6および放熱・吸熱部材14は、第1ヨーク11に対して着脱可能に取り付けられているが、温調部6および放熱・吸熱部材14を持たない磁気粘性流体装置に対しても、第1ヨークおよび第2ヨークの形状・構造等が第1又は第2実施形態のものと同様であれば、簡単な施工(例えば固定具22用のネジ穴の加工等)をすることにより、
図1~
図3に示したような温調部6付きの磁気粘性流体装置1,1A,1Bを構築することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、例えば、相対回転可能に設けられた部材間に磁気粘性流体を介在させ、磁気粘性流体に付与する磁場の強さを変えることにより、上記部材間で伝達されるトルクを変えることができる磁気粘性流体装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1,1A,1B 磁気粘性流体装置
2 回転軸
3 ロータ
3a ロータの一方の面
3b ロータの他方の面
4 磁路形成手段
5 磁気粘性流体
6 温調部
7 温度検出部
8 制御部
11 第1ヨーク
11a 対向面
11b 外側面
12 第2ヨーク
12a 対向面
13 コイル
14 放熱・吸熱部材
17,18 微小隙間
19 シール部材
22 固定具
26 抵抗検出部