(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031277
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240229BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240229BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134732
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】堀内 悠平
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AC01
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA58
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB34
5H127BB37
5H127EE25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】燃料電池スタックと加湿器とが生成水を介して電気的に接続することを防止する。
【解決手段】燃料電池システムは、燃料電池スタック(12)と、所定の機器(62)とを備える。前記機器には、燃料電池スタックから排出された排出ガスを受けるガス受入部(82)が形成される。燃料電池スタックのガス出口(40b)とガス受入部とは、配管(70)を介して接続される。配管における下流開口(94)の内部には、絶縁体からなる中継管(100)の上流端部(102)が挿入される。中継管は、上流端部よりも外径が小さな中空突出部(116)を有する。中空突出部は、上流端部よりも排出ガスの流通方向における上流(配管の内方)に突出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックから排出された排出ガスが送られる機器と、前記燃料電池スタックと前記機器とを接続する配管とを備える燃料電池システムであって、
前記燃料電池スタックに、前記排出ガスが排出されるガス出口が形成され、且つ前記機器に、前記排出ガスを受けるガス受入部が形成され、前記配管は、前記ガス出口から前記ガス受入部に向かって延在し、
前記配管と前記ガス受入部との間に、絶縁体からなる中継管が介在し、
前記中継管の上流端部は、前記配管の下流開口の内部に挿入され、
前記中継管と前記配管との間に、前記中継管の前記上流端部と、前記配管の内壁との間をシールするシール部材が設けられ、
前記中継管に、前記上流端部よりも前記排出ガスの流通方向における上流に突出し、且つ前記上流端部よりも外径が小さい中空突出部が設けられた燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池システムにおいて、前記中継管の内径は、前記中空突出部で最小であり、前記排出ガスの流通方向における下流に向かうにつれて大きくなる燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2記載の燃料電池システムにおいて、前記配管に、前記排出ガスと一緒に流通する水分を排出するドレイン孔が形成されている燃料電池システム。
【請求項4】
請求項3記載の燃料電池システムにおいて、前記配管の内壁に、前記水分を前記ドレイン孔に導く案内溝が形成されている燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1記載の燃料電池システムにおいて、前記中継管が弾性体からなる燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の燃料電池システムにおいて、前記機器が加湿器である燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックを含む燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能且つ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する燃料電池に関する研究開発が行われている。また、地球環境に与える負荷を軽減するため、自動車の排気ガス規制が一段と進んでいる。以上の観点から、自動車において、内燃機関に代替して燃料電池システムを搭載することが試みられている。燃料電池システムでは、CO2、SOX及びNOX等が排出されることがないからである。
【0003】
燃料電池システムは、複数個の単位セルが積層された燃料電池スタックを備える。燃料電池スタックが運転されるとき、単位セルのアノード電極に燃料ガスが供給され、且つ単位セルのカソード電極に酸化剤ガスが供給される。カソード電極では、電極反応によって水が生成される。従って、カソード電極からは、余剰の酸化剤ガスと、生成水とが一緒に排出される。以下、カソード電極から排出された余剰の酸化剤ガスを、カソードオフガスと表記する。
【0004】
カソードオフガスは、例えば、特許文献1に記載されるように加湿器に送られる。加湿器の内部には、多孔質膜が設けられている。カソードオフガス中の生成水は、多孔質膜によって酸化剤ガスと分離される。ここで、加湿器には、カソード電極に新たに供給される酸化剤ガスが流通する。酸化剤ガスには、カソードオフガスから分離された生成水が供与される。生成水によって湿潤状態となった酸化剤ガスは、加湿器からカソード電極に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
単位セルを構成するセパレータは、導電体である。また、加湿器を構成する容器の素材は、典型的には金属である。すなわち、容器も導電体である。生成水は単位セルから溶出する導電性イオンを含んでいるので、該生成水も導電体である。従って、燃料電池スタックから加湿器にわたって連続的に生成水が付着していると、生成水を介して燃料電池スタックから加湿器に電流が流れることが可能である。燃料電池システムが自動車に搭載される場合、電流がさらに車体に流れることも可能である。
【0007】
そこで、燃料電池スタックと加湿器とが生成水を介して電気的に接続することを防止する必要がある。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックから排出された排出ガスが送られる機器と、前記燃料電池スタックと前記機器とを接続する配管とを備える燃料電池システムであって、前記燃料電池スタックに、前記排出ガスが排出されるガス出口が形成され、且つ前記機器に、前記排出ガスを受けるガス受入部が形成され、前記配管は、前記ガス出口から前記ガス受入部に向かって延在し、前記配管と前記ガス受入部との間に、絶縁体からなる中継管が介在し、前記中継管の上流端部は、前記配管の下流開口の内部に挿入され、前記中継管と前記配管との間に、前記中継管の前記上流端部と、前記配管の内壁との間をシールするシール部材が設けられ、前記中継管に、前記上流端部よりも前記排出ガスの流通方向における上流に突出し、且つ前記上流端部よりも外径が小さい中空突出部が設けられた燃料電池システムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、中継管の一部である上流端部から、同じく中継管の一部である中空突出部が突出する。ここで、中継管と配管との間には、上流端部の外壁と配管の内壁との間をシールするシール部材が設けられる。すなわち、上流端部の外壁は、シール部材を介して配管の内壁に当接する。その一方で、中空突出部の外径は、上流端部の外径よりも小さい。従って、中空突出部の外壁は、配管の内壁から離間する。これにより、配管の内壁と中空突出部の外壁との間にポケットが形成される。
【0011】
配管内の水(液水)は、一般的に、帯状又は筋状に連なった状態で配管の内壁に沿って流動する。従って、配管内を流動した水は、排出ガスによって配管から吹き飛ばされて液滴となった状態で、配管の内壁から中空突出部の内部に進入する。又は、水は、前記ポケットに進入した後、中空突出部の外壁の端部から排出ガスによって吹き飛ばされる。このときも、水は、液滴となって中空突出部の内部に進入する。ここで、「液滴」はミストを含む。
【0012】
すなわち、中継管の内部に進入した水は、配管内の水から分断されている。このため、配管内の水と、中継管の内部に進入した水とが電気的に絶縁される。また、中継管は電気絶縁体である。
【0013】
以上のような理由から、燃料電池スタックと所定の機器とが、水を介して電気的に接続されることが防止される。換言すれば、燃料電池スタックから前記機器に電流が流れることを回避することができる。燃料電池システムが自動車の車体に搭載されたときには、車体に電流が流れることも回避される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、燃料電池システムの概略システム図である。
【
図2】
図2は、燃料電池スタックにおけるカソードオフガスの出口と、機器(加湿器)におけるカソードオフガスの入口との接続部分の概略側面断面図である。
【
図4】
図4は、
図3中のIV-IV線から見た一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下において、アノードオフガスは、
図1に示す燃料電池スタック12のアノード電極22から排出された余剰の燃料ガスを意味する。カソードオフガスは、燃料電池スタック12のカソード電極24から排出された余剰の酸化剤ガスを意味する。また、「上流」及び「下流」は、それぞれ、カソードオフガスの流通方向における上流及び下流を表す。
【0016】
はじめに、
図1に示す燃料電池システム10につき説明する。なお、
図1は、燃料ガス及び酸化剤ガスの流通過程等の理解を容易にするために簡素化されている。従って、
図1に示される方向が、実際の燃料電池システム10における方向に一致しているとは限らない。また、
図1では、バルブ又はバイパスライン等が省略されている。
【0017】
燃料電池システム10は、燃料電池スタック12を備える。燃料電池スタック12は、複数個の単位セル14が積層されることで構成される。単位セル14は、電解質膜・電極構造体(MEA)16が第1セパレータ18と第2セパレータ20との間に挟まれることで構成される。MEA16は、アノード電極22とカソード電極24との間に電解質膜26が挟まれることで構成される。第1セパレータ18及び第2セパレータ20の素材は、例えば、金属である。電解質膜26の素材は、例えば、水分を含むパーフルオロスルホン酸等の固体高分子である。
【0018】
第1セパレータ18には、第1ガス流路30が形成される。第1ガス流路30には、アノード電極22に供給される水素ガス(燃料ガス)が流通する。第2セパレータ20には、第2ガス流路32が形成される。第2ガス流路32には、カソード電極24に供給される圧縮エア(酸化剤ガス)が流通する。互いに隣接する単位セル14において、第1セパレータ18と第2セパレータ20との間には、不図示の冷却媒体流路が形成される。冷却媒体流路には、冷却媒体が流通する。
【0019】
燃料電池スタック12には、第1水素入口34a、第2水素入口34b、第1水素出口36a及び第2水素出口36bが形成される。燃料電池スタック12には、第1エア入口38a、第2エア入口38b、第1エア出口40a、第2エア出口40bが形成される。すなわち、燃料電池スタック12において、水素ガスの入口及び出口はそれぞれ2個である。同様に、圧縮エアの入口及び出口もそれぞれ2個である。水素入口及びエア入口は単数個であってもよい。
【0020】
第1水素入口34a及び第2水素入口34bは、第1ガス流路30の入口に連通する。該第1ガス流路30の出口は、第1水素出口36a及び第2水素出口36bに連通する。第1エア入口38a及び第2エア入口38bは、第2ガス流路32の入口に連通する。該第2ガス流路32の出口は、第1エア出口40a及び第2エア出口40bに連通する。
【0021】
燃料電池システム10は、高圧タンク50と、エゼクタ52とを備える。高圧タンク50には、水素ガスが充填されている。エゼクタ52は、アノード電極22に水素ガスを供給するための機器である。エゼクタ52と燃料電池スタック12との間には、第1供給マニホールド54が設けられる。第1供給マニホールド54は、エゼクタ52から送られた水素ガスを二方向に分配する。一方向に分配された水素ガスは、第1水素入口34aに向かう。残る一方向に分配された水素ガスは、第2水素入口34bに向かう。
【0022】
燃料電池スタック12には、第1排気マニホールド56を介して気液分離器58が接続される。第1水素出口36a及び第2水素出口36bからそれぞれ排出されたアノードオフガスは、第1排気マニホールド56で集合して気液分離器58に送られる。アノードオフガスは、気液分離器58において水素ガスと水とに分離される。水素ガスは、エゼクタ52に戻された後にアノード電極22に再供給される。
【0023】
燃料電池システム10は、エアポンプ60と、加湿器62と、循環ポンプ64とをさらに備える。エアポンプ60は、例えば、大気を圧縮して圧縮エアを生成する。燃料電池スタック12と加湿器62とは、第2供給マニホールド68及び第2排気マニホールド70を介して接続される。エアポンプ60によって得られた圧縮エアには、加湿器62において、燃料電池スタック12の発電時に生成された水(後述する生成水PW)が供与される。これにより、圧縮エアが湿潤状態となる。湿潤状態となった圧縮エアは、第2供給マニホールド68により二方向に分配される。一方向に分配された圧縮エアは、第1エア入口38aに向かう。残る一方向に分配された圧縮エアは、第2エア入口38bに向かう。なお、循環ポンプ64を省略してもよい。
【0024】
第1エア出口40a及び第2エア出口40bからそれぞれ排出されたカソードオフガスは、第2排気マニホールド70で集合して加湿器62に送られる。カソードオフガス中の水は、加湿器62において圧縮エアから分離される。圧縮エアは、例えば、循環ポンプ64によってカソード電極24に再供給される。一方、水は、上記したように、エアポンプ60から送られた新たな圧縮エアに供与される。
【0025】
燃料電池システム10は、制御装置72によって制御される。このように構成される燃料電池システム10は、例えば、自動車の車体に搭載される。
【0026】
図2は、燃料電池スタック12におけるカソードオフガスの出口と、加湿器62におけるカソードオフガスの入口との接続部分の概略側面断面図である。上記したように、燃料電池システム10は、燃料電池スタック12と加湿器62とを接続する第2排気マニホールド70を備える。加湿器62は、燃料電池スタック12から排出されたカソードオフガスの流通方向において、燃料電池スタック12の下流に接続される機器に相当する。また、第2排気マニホールド70は配管に相当する。
【0027】
上記したように、燃料電池スタック12には、第1エア出口40a及び第2エア出口40b(双方ともガス出口)が形成される。その一方で、加湿器62には給気口80が形成される。加湿器62には、ガス受入部82が設けられる。ガス受入部82は、
図2の左右方向に沿って延在する第1部分84aと、給気口80を覆う第2部分84bとを有する。
図2の要部を拡大した
図3に示すように、第1部分84aの内部には、該第1部分84aの内部を狭小化するように、環状ストッパ部86が設けられている。第2部分84bは、給気口80の直上で第1部分84aに対して略90°折曲され、該給気口80に向かう。このことから理解されるように、ガス受入部82は略L字形状をなす。
【0028】
第2排気マニホールド70は、第1エア出口40a及び第2エア出口40bからガス受入部82に向かって延在する形状である(
図2参照)。具体的に、第2排気マニホールド70は、第1エア出口40aに接続される第1導入部88aと、第2エア出口40bに接続される第2導入部88bと、集合部90とを有する。本実施形態では、第1導入部88aは第2導入部88bの重力方向下方に位置し、且つ集合部90は上下方向に沿って延在する。
【0029】
第1導入部88a及び第2導入部88bは、集合部90に個別に連なる。集合部90において、第1導入部88aの近傍にはドレイン孔92が形成される。ドレイン孔92にドレインチューブ93を接続してもよい。
【0030】
集合部90において、第2導入部88bから約180°離間した位置には、下流開口94が形成される。集合部90は、下流開口94が形成された接続筒91を有する。接続筒91に中継管100が挿入される。接続筒91は、中継管100を囲む。第1導入部88a及び第2導入部88bに流入したカソードオフガスは、集合部90を流通して下流開口94に向かう。集合部90の内壁において、下流開口94の近傍には、
図4の紙面手前に向かって突出する突出壁95a、95bが設けられている。突出壁95aと突出壁95bとの間には、案内溝96が形成される。案内溝96は、集合部90の延在方向である上下方向に沿って延在する幅広な溝である。なお、
図3には、突出壁95aのみが示されている。
【0031】
図3に示すように、ガス受入部82には、上流開口98が形成されている。上流開口98は、カソードオフガスの流通方向において、第2排気マニホールド70の下流開口94よりも下流に位置する。ただし、上流開口98は、カソードオフガスの流通方向において、給気口80よりも上流である。すなわち、上流開口98は、第2排気マニホールド70の下流開口94と、加湿器62の給気口80との間に位置する。
【0032】
第2排気マニホールド70とガス受入部82とは、中継管100を介して接続される。ここで、中継管100は絶縁体からなる。なお、中継管100は、弾性体であることが好ましい。この場合、中継管100は、圧縮応力を受けたときには十分に圧縮され、圧縮応力が取り除かれたときには容易に元の形状に復元する。中継管100の素材の好適な具体例には、ゴム、エラストマー又は樹脂等が挙げられる。
【0033】
図3に示すように、中継管100は、上流端部102と、中間部104と、下流端部106とを有する。若干大径なフランジ状の上流端部102には、周方向に沿って延在する第1環状溝108が形成される。第1環状溝108には、弾性を示す第1シール部材110が装着される。第1シール部材110は、上流端部102の外周壁と、第2排気マニホールド70の集合部90における下流開口94近傍の内壁との間をシールする。
【0034】
若干大径なフランジ状の下流端部106は、環状ストッパ部86に当接する。これにより、中継管100がガス受入部82に対して相対的に位置決めされる。下流端部106には、周方向に沿って延在する第2環状溝112が形成される。第2環状溝112には、弾性を示す第2シール部材114が装着される。第2シール部材114は、下流端部106の外周壁と、ガス受入部82における上流開口98の近傍の内壁との間をシールする。上流端部102及び下流端部106の外径は、互いに略等しい。
【0035】
中継管100は、上流端部102から突出した中空突出部116をさらに有する。中空突出部116の突出方向は、カソードオフガスの流通方向における上流方向である。このため、中空突出部116は、カソードオフガスの流通方向において、上流端部102(及び第1シール部材110)よりも上流に位置する。中空突出部116の外径は、上流端部102の外径よりも小さい。このため、第2排気マニホールド70における集合部90の内壁と、中空突出部116の外周壁との間に、環状ポケット118が形成される。
【0036】
中空突出部116の突端116aの外周部は、その全周に亘って接続筒91の内壁から離間する。環状ポケット118は、中空突出部116の突端116aから下流端部106に向かって凹む環状溝である。環状ポケット118は、カソードオフガスの流通方向における上流に向かって開口する。上流端部102の一端面(環状の側面)が、環状ポケット118の溝底部を構成する。
【0037】
中継管100の内径は、燃料電池スタック12を向く最上流の中空突出部116で最も小さく、且つ上流端部102から中間部104に向かうにつれて徐々に大きくなる。中継管100の内径は、加湿器62を向く下流端部106で最大である。すなわち、中継管100の内径は、上流で小さく下流で大きい。なお、中空突出部116の内径は略一定であり、下流端部106の内径も略一定である。
【0038】
本実施形態に係る燃料電池システム10は、基本的には以上のように構成される。次に、燃料電池システム10の作用効果について説明する。
【0039】
燃料電池システム10を組み上げるとき、加湿器62のガス受入部82の上流開口98に中継管100の下流端部106が挿入される(
図3参照)。下流端部106の端面は、ガス受入部82の内部に設けられた環状ストッパ部86に当接する。この当接により、中継管100がガス受入部82に対して相対的に位置決めされる。その一方で、燃料電池スタック12に第2排気マニホールド70が取り付けられる。次に、第2排気マニホールド70における集合部90の下流開口94に、中継管100の中空突出部116が挿入される。この状態で、燃料電池スタック12、第2排気マニホールド70及び加湿器62が、例えば、自動車の車体に位置決め固定される。
【0040】
ここで、第2排気マニホールド70等の寸法(内径等)が、公称値よりも公差の範囲内で大きい場合がある。このとき、中継管100が弾性に基づいて若干圧縮される。このため、燃料電池スタック12、第2排気マニホールド70及び加湿器62のそれぞれの連結部(ボルト穴等)の位置と、車体の連結部(ボルト穴等)の位置とを容易に合わせることができる。従って、燃料電池システム10を車体に搭載する作業が容易である。
【0041】
燃料電池スタック12を運転するときには、高圧タンク50(
図1参照)から水素ガスが供給される。水素ガスは、エゼクタ52を通過して第1供給マニホールド54に流入する。水素ガスは、第1供給マニホールド54内で二方向に分配された後、第1水素入口34a及び第2水素入口34bから第1ガス流路30に流入する。水素ガスは、第1ガス流路30を流通する最中にアノード電極22に接触して酸化反応を起こす。余剰の水素ガス(アノードオフガス)は、水分を含んだ状態で、第1ガス流路30から第1水素出口36a又は第2水素出口36bを経て、第1排気マニホールド56に排出される。
【0042】
第1排気マニホールド56内では、第1水素出口36aから排出されたアノードオフガスと、第2水素出口36bから排出されたアノードオフガスとが合流する。その後、気液分離器58において、アノードオフガス中の水と水素ガスとが分離される。水分が除去された水素ガスは、エゼクタ52に流れる。エゼクタ52において、高圧タンク50から供給された新たな水素ガスと、気液分離器58から排出された水素ガスとが合流する。合流した水素ガスは、上記と同様の経路から、第1ガス流路30に流入する。以降は、上記の循環が繰り返される。
【0043】
その一方で、エアポンプ60から圧縮エアが供給される。圧縮エアは、加湿器62内を流通する。このとき、圧縮エアに水分が供与される。すなわち、圧縮エアの湿度が上昇する。圧縮エアは第2供給マニホールド68に流入し、該第2供給マニホールド68内で二方向に分配される。その後、圧縮エアは、第1エア入口38a及び第2エア入口38bから第2ガス流路32に流入する。圧縮エア中の酸素は、第2ガス流路32を流通する最中にカソード電極24に接触して還元反応を起こす。この還元反応において、水が生成される。この水は、生成水PWである。
【0044】
生成水PWは、余剰の圧縮エア(カソードオフガス)と一緒に、第2ガス流路32から第1エア出口40a又は第2エア出口40bを経て、第2排気マニホールド70に排出される。具体的に、第1エア出口40aから排出されたカソードオフガス及び生成水PWは、
図2に示す第1導入部88aを経て集合部90に流入する。第2エア出口40bから排出されたカソードオフガス及び生成水PWは、
図2に示す第2導入部88bを経て集合部90に流入する。集合部90において、第1エア出口40aから排出されたカソードオフガスと、第2エア出口40bから排出されたカソードオフガスとが合流する。
【0045】
合流したカソードオフガスは、給気口80を介して加湿器62内に流入する。加湿器62において、カソードオフガスが図示しない多孔質膜を通過するとき、圧縮エアと生成水PWとが分離される。すなわち、圧縮エアの湿度が低下する。圧縮エアの全部又は一部は、循環ポンプ64(
図1参照)によって加湿器62に戻される。その途中で、圧縮エアと、エアポンプ60から送られた新たな圧縮エアとが合流する。合流した圧縮エアは、加湿器62に流入する。このとき、上記と同様に圧縮エアに生成水PWが水分として供与される。水分が供与された圧縮エアは、上記と同様の経路から、第2ガス流路32に流入する。以降は、上記の循環が繰り返される。
【0046】
ここで、カソードオフガスは、上記したように生成水PWを含んでいる。従って、第2排気マニホールド70内には、
図2に示すように、生成水PWが流入する。カソードオフガスが給気口80に向かって流れているので、生成水PWは、カソードオフガスから、給気口80に向かう方向の圧力を受ける。従って、生成水PWは、集合部90の下流開口94に向かって流動する。燃料電池スタック12が運転される最中、カソード電極24において、生成水PWが反応生成物として継続的に生成される。従って、生成水PWは、第2排気マニホールド70の内壁に沿って、例えば、帯状又は筋状に連なる。
【0047】
本実施形態においては、集合部90の下流開口94に中継管100の中空突出部116が挿入されている。中空突出部116の外径は、集合部90の内径よりも小さい。このため、第2排気マニホールド70の内壁を伝った生成水PWは、環状ポケット118に一旦貯留される。環状ポケット118内の生成水PWにカソードオフガスが接触すると、生成水PWの一部が環状ポケット118から押し出され、中空突出部116の外壁を伝って中空突出部116の開口に到達する。カソードオフガスが中空突出部116の開口を介して該中空突出部116の内部に流入しているので、生成水PWの一部がカソードオフガスによって中空突出部116の内部に吹き飛ばされる。これに伴い、生成水PWの一部が分断されて液滴水DWとなる。
【0048】
又は、環状ポケット118外の生成水PWが、カソードオフガスによって中空突出部116の内部に吹き飛ばされる。このことによっても、生成水PWの一部が分断されて液滴水DWとなる。以上のように、生成水PWの一部は、液滴水DWとして中空突出部116の内部に進入する。
【0049】
上記したように、中継管100の内径は、カソードオフガスの流通方向(液滴水DWの進行方向)において最上流に位置する中空突出部116で最小である。このため、中空突出部116の上流開口において、カソードオフガスの流速が大きくなる。すなわち、中空突出部116の上流開口において負圧が生じ易くなる。その結果、生成水PWが、中継管100の内部に比較的急速に吸引される。この吸引によっても、生成水PWの一部が分断されて液滴水DWとなる。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、生成水PWの連なりが中継管100によって断たれる。また、中継管100は絶縁体からなる。従って、燃料電池スタック12と加湿器62とが、電気的に絶縁された状態となる。このため、生成水PWに含まれる導電性のイオンの濃度が高く、該生成水PWの導電度が大きい場合であっても、電流が中継管100よりも下流に流れることが回避される。これにより、加湿器62又は車体等に電流が流れることを防止することができる。
【0051】
液滴水DWの一部は、給気口80を介して加湿器62の内部に流入する。加湿器62の内部の液滴水DWは、上記と同様に、エアポンプ60から供給された新たな圧縮エアに供与される。液滴水DWの残りは、中継管100の内部で集合して集合水CWを形成する。集合水CWが一定量以上となると、集合水CWが中空突出部116の開口から集合部90に流出する。なお、給気口80の最下端は、中空突出部116の開口の最下端よりも高位置である。これにより、集合水CWが給気口80から加湿器62の内部に流入することが防止される。
【0052】
その一方で、環状ポケット118に貯留された生成水PWの一部が、環状ポケット118から集合部90に流出する。集合部90に流出した生成水PWは、中空突出部116の開口から集合部90に流出した集合水CWに合流する。
【0053】
上記したように、集合部90の内壁には案内溝96(
図2~
図4参照)が形成されている。集合部90に流出した生成水PW及び集合水CWは、例えば、案内溝96における突出壁95a、95bの近傍を伝って集合部90内を下降する。下降した生成水PW及び集合水CWは、ドレイン孔92及びドレインチューブ93を介して第2排気マニホールド70の外部に排出される。なお、
図4には、環状ポケット118に向かって上昇する生成水PWは示していない。
【0054】
図4に仮想線で示すように、接続筒91及び集合部90の内壁を切り欠くようにして傾斜溝120を形成してもよい。この場合、環状ポケット118内の生成水PWが、傾斜溝120を伝って案内溝96に移動し易くなる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態は、燃料電池スタック(12)と、前記燃料電池スタックから排出された排出ガスが送られる機器(62)と、前記燃料電池スタックと前記機器とを接続する配管(70)とを備える燃料電池システム(10)であって、前記燃料電池スタックに、前記排出ガスが排出されるガス出口(40a、40b)が形成され、且つ前記機器に、前記排出ガスを受けるガス受入部(82)が形成され、前記配管は、前記ガス出口から前記ガス受入部に向かって延在し、前記配管と前記ガス受入部との間に、絶縁体からなる中継管(100)が介在し、前記中継管の上流端部(102)は、前記配管の下流開口(94)の内部に挿入され、前記中継管と前記配管との間に、前記中継管の前記上流端部と、前記配管の内壁との間をシールするシール部材(110)が設けられ、前記中継管に、前記上流端部よりも前記排出ガスの流通方向における上流に突出し、且つ前記上流端部よりも外径が小さい中空突出部(116)が設けられた燃料電池システムを開示する。
【0056】
中継管において、上流端部から中空突出部が突出する。上流端部には、該上流端部の外壁と配管の内壁との間をシールするシール部材が設けられる。且つ中空突出部の外径は、上流端部の外径よりも小さい。従って、中空突出部の外壁は、配管の内壁から離間する。このことに基づいて、中空突出部の外壁と、配管の内壁との間にポケットが形成される。
【0057】
配管内の水は、一般的に、帯状又は筋状に連なった状態で配管の内壁に沿って流動する。従って、配管内を流動した水は、排出ガスによって配管から吹き飛ばされて液滴となった状態で、中空突出部の内部に進入する。又は、水は、前記ポケットに進入した後、中空突出部の外壁の端部から、排出ガスによって吹き飛ばされる。このときも、水は、液滴となって中空突出部の内部に進入する。
【0058】
すなわち、中継管の内部に進入した水(液滴)は、配管内の水から分断されている。このため、配管内の水と、中継管の内部に進入した水とが電気的に絶縁される。また、中継管は絶縁体である。
【0059】
以上のような理由から、燃料電池スタックと所定の機器とが、水を介して電気的に接続されることが防止される。このため、仮に生成水の導電度が高くなった場合であっても、燃料電池スタックから前記機器(加湿器等)に電流が流れることを回避することができる。燃料電池システムが自動車の車体に搭載されたときには、車体に電流が流れることも回避される。
【0060】
本実施形態は、前記中継管の内径は、前記中空突出部で最小であり、前記排出ガスの流通方向における下流に向かうにつれて大きくなる燃料電池システムを開示する。
【0061】
この構成によれば、排出ガスの流速が中空突出部の上流開口近傍で大きくなる。このため、水が中空突出部の内部に比較的急速に吸引される。この吸引によって、生成水の一部が一層容易に分断される。すなわち、配管内の水と、中継管の内部に進入した水とを電気的に絶縁することが一層容易となる。
【0062】
本実施形態は、前記配管に、前記排出ガスと一緒に流通する水分を排出するドレイン孔(92)が形成されている燃料電池システムを開示する。
【0063】
配管内の余剰の水は、ドレイン孔を介して配管の外部に排出される。すなわち、前記機器の内部に流入しない余剰の水を、ドレイン孔によって配管の外部に排出することができる。
【0064】
本実施形態は、前記配管の内壁に、前記水分を前記ドレイン孔に導く案内溝(96)が形成されている燃料電池システムを開示する。
【0065】
余剰の水は、案内溝を伝ってドレイン孔に向かう。すなわち、案内溝によって余剰の水がドレイン孔に効率よく導かれる。このため、余剰の水を配管の外部に効率よく排出することができる。
【0066】
本実施形態は、前記中継管が弾性体からなる燃料電池システムを開示する。
【0067】
燃料電池スタック、配管又は機器等の寸法が、公称値よりも公差の範囲内で大きい場合がある。このような場合、中継管が弾性に基づいて若干圧縮される。このため、燃料電池スタック、配管及び機器におけるそれぞれの連結部(ボルト穴等)の位置と、燃料電池システムの搭載対象の連結部(ボルト穴等)の位置とを容易に合わせることができる。従って、燃料電池システムを搭載対象に搭載する作業が容易である。搭載対象は、例えば、自動車の車体である。
【0068】
燃料電池スタックでは、カソード電極における還元反応で水が生成される。すなわち、カソードオフガスは多量の生成水を含む。生成水を含んだカソードオフガスは、加湿器に送られる。このように、燃料電池システムにおいて、カソードオフガスは、燃料電池スタックを上流とし、且つ加湿器を下流として流れる。従って、この場合、燃料電池スタックと加湿器とが、生成水を介して電気的に接続されることが回避される。
【0069】
このことから理解されるように、前記機器の具体例としては加湿器が挙げられる。すなわち、本実施形態は、前記機器が加湿器である燃料電池システムを開示する。
【0070】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0071】
10…燃料電池システム 12…燃料電池スタック
14…単位セル 22…アノード電極
24…カソード電極 26…電解質膜
30…第1ガス流路 32…第2ガス流路
34a…第1水素入口 34b…第2水素入口
36a…第1水素出口 36b…第2水素出口
38a…第1エア入口 38b…第2エア入口
40a…第1エア出口 40b…第2エア出口
50…高圧タンク 54…第1供給マニホールド
56…第1排気マニホールド 60…エアポンプ
62…加湿器 64…循環ポンプ
68…第2供給マニホールド 70…第2排気マニホールド
80…給気口 82…ガス受入部
88a…第1導入部 88b…第2導入部
90…集合部 92…ドレイン孔
94…下流開口 96…案内溝
98…上流開口 100…中継管
102…上流端部 106…下流端部
108…第1環状溝 110…第1シール部材
112…第2環状溝 114…第2シール部材
116…中空突出部 118…環状ポケット