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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031284
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】X線CT装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20240229BHJP
【FI】
G01N23/046
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134743
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】506382792
【氏名又は名称】コムスキャンテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】田中 靖和
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001GA13
2G001HA08
2G001HA14
2G001JA08
2G001PA12
(57)【要約】
【課題】撮影時に変化する投影データの投影像のズレを精度よく補正し、X線CT装置の特性に応じたより高精度の再構成処理が可能となるX線CT装置を提供する。
【解決手段】X線CT装置1は、回転駆動部14による回転を1回転以上の所定範囲にわたって行いながら、被検体にX線を照射することによって投影データを取得して、取得した投影データを前記投影データ記憶部に記憶する投影データ取得部32と、被検体の断層画像を再構成するために用いられる第1投影データ群における前記X線の投影像と、1回転以外の残りの範囲で、且つ、第1投影データ群の回転角度の一部とそれぞれ同位相である複数の回転角度で取得された第2投影データ群における前記X線の投影像とのズレ量を算出するズレ量算出部34と、算出されたズレ量に基づいて、第1投影データ群を用いた再構成を行う画像再構成部35と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体及び前記被検体にX線を照射するX線源の少なくとも一方を相対的に回転させる回転駆動部と、
前記回転駆動部による回転を行いながら、前記被検体にX線を照射することによって取得された投影データを記憶する投影データ記憶部と、を有し、
前記投影データ記憶部に記憶された投影データに基づいて前記被検体の断層画像を再構成するX線CT装置であって、
前記回転駆動部による回転を1回転以上の所定範囲にわたって行いながら、前記被検体にX線を照射することによって投影データを取得して、取得した投影データを前記投影データ記憶部に記憶する投影データ取得部と、
前記投影データ記憶部に記憶された投影データのうち、1回転の範囲において複数の回転角度で取得され、且つ、前記被検体の断層画像を再構成するために用いられる第1投影データ群における前記X線の投影像と、前記投影データ記憶部に記憶された投影データのうち、前記1回転以外の残りの範囲で、且つ、前記複数の回転角度とそれぞれ同位相である複数の回転角度で取得された第2投影データ群における前記X線の投影像とのズレ量を算出するズレ量算出部と、
前記算出されたズレ量に基づいて、前記第1投影データ群を用いた前記再構成を行う画像再構成部と、
を有する、X線CT装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線CT装置において、
前記ズレ量算出部は、前記算出されたズレ量に基づいて、少なくとも前記第1投影データ群で前記ズレ量が算出されていない回転角度におけるズレ量を推定し、
前記画像再構成部は、前記算出されたズレ量及び前記推定されたズレ量に基づいて、前記第1投影データ群に含まれる投影データを補正する、または、前記被検体の断層画像の再構成に用いる座標を補正する、
X線CT装置。
【請求項3】
請求項2に記載のX線CT装置において、
前記ズレ量算出部は、前記1回転の範囲の起点である基準回転角度よりも小さい回転角度と、前記基準回転角度と同位相の回転角度よりも大きい回転角度とにおけるズレ量を算出する、
X線CT装置。
【請求項4】
請求項1に記載のX線CT装置において、
前記投影データの投影像にズレを生じさせる1種以上の変動因子の値に対応付けられた投影データの投影像のズレ量データを予め記憶するズレ量データ記憶部をさらに有し、
前記ズレ量算出部は、前記算出した算出ズレ量と、前記ズレ量データ記憶部に記憶されているズレ量データとに基づいて、前記第1投影データ群の各回転角度における推定ズレ量を推定し、
前記画像再構成部は、前記算出ズレ量及び前記推定ズレ量に基づいて、前記第1投影データ群に含まれる投影データを補正する、または、前記被検体の断層画像の再構成に用いる座標を補正する、
X線CT装置。
【請求項5】
請求項1に記載のX線CT装置において、
前記投影データの投影像にズレを生じさせる1種以上の変動因子の値に対応付けられた投影データの投影像のズレ量データを予め記憶するズレ量データ記憶部をさらに有し、
前記ズレ量算出部は、
前記算出した算出ズレ量に基づいて、前記第1投影データ群で前記ズレ量が算出されていない回転角度における第1推定ズレ量を推定し、
前記算出した算出ズレ量と、前記ズレ量データ記憶部に記憶されているズレ量データとに基づいて、前記第1投影データ群の各回転角度における第2推定ズレ量を推定し、
前記第1推定ズレ量と前記第2推定ズレ量とに基づいて統合ズレ量を算出し、
前記画像再構成部は、前記統合ズレ量に基づいて、前記第1投影データ群に含まれる投影データを補正する、または、前記被検体の断層画像の再構成に用いる座標を補正する、
X線CT装置。
【請求項6】
被検体及び前記被検体にX線を照射するX線源の少なくとも一方を相対的に回転させる回転駆動部と、
前記回転駆動部による回転を行いながら、前記被検体にX線を照射することによって取得された投影データを記憶する投影データ記憶部と、を有し、
前記投影データ記憶部に記憶された投影データに基づいて前記被検体の断層画像を再構成するX線CT装置であって、
前記回転駆動部による回転を行いながら、前記被検体にX線を照射することによって投影データを取得して、取得した投影データを前記投影データ記憶部に記憶する投影データ取得部と、
前記投影データの投影像にズレを生じさせる1種以上の変動因子の値に応じた投影データの投影像のズレ量データを予め記憶するズレ量データ記憶部と、
前記ズレ量データ記憶部に記憶されている前記1種以上の変動因子と、前記回転駆動部による回転の回転角度との関係性に基づいて、前記回転角度に応じたズレ量を推定するズレ量推定部と、
前記推定されたズレ量に基づいて、前記投影データを用いた前記再構成を行う画像再構成部と、
を有する、X線CT装置。
【請求項7】
請求項6に記載のX線CT装置において、
前記少なくとも1種以上の変動因子は、時間を含む、
X線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線照射によって試料の断層像を得るX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線を試料に照射しながら試料を回転させ、多数の方向から得られたX線投影データに基づいて、試料の断層像を得るX線CT(Computed Tomography)装置が知られている。
【0003】
X線CT装置では、X線の焦点の移動等により、再構成する断層像の画質が低下することが知られている。このためX線CT装置の分野において、断層像の画質向上のための様々な提案がなされている。例えば、特許文献1では、初期位置である0°から1°刻みで359°までの合計360点のX線投影データだけでなく、360°のX線投影データを収集することが開示されている。理想的には、0°と360°とのX線投影データは一致するはずだが、様々な要因から、0°と360°とのX線投影データにずれが生じることがある。特許文献1では、その要因として、機器の強度不足、温度変化などによる部材の変形、X線発生装置から発生するX線の位置(焦点位置)の移動などが挙げられている。このため、特許文献1では、0°でのX線投影データと、その位置からちょうど1回転した360°でのX線投影データを比較し、投影位置のずれ量を算出する。また、特許文献1では、算出したずれ量に基づいて、1°から359°までの各角度におけるX線投影データを線形的に補正することで、断層像の画質の向上を図っている。
【0004】
また、特許文献2でも、特許文献1と同様に、0°の位置での初期投影像と、1回転した360°の位置での投影像とに基づいて、ズレを線形補間する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-14697
【特許文献2】特開2003-344311
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に、産業用のX線CT装置の分野では、より高い解像度が求められる「構造解析」及び「非破壊検査」等の目的に用いられることがある。これまで、解像度向上のため、X線源の焦点サイズがマイクロメートルオーダーのマイクロフォーカスX線の採用などが提案されてきた。
【0007】
マイクロフォーカスX線を用いる場合、例えば、焦点の移動の影響が大きいといわれている。具体的には、マイクロフォーカスX線では、焦点が小さく、安定していることが一般的に求められる。しかしながら、焦点を小さくするためには、フィラメントを小さくする必要があり、また、ターゲットの角度を深くする必要がある。陽極に与えられた熱負荷は陽極及び陽極と接触する部材を熱膨張させ、これらの熱膨張は焦点を移動させる。特にターゲット角度を深くすると、ターゲットの温度変化により、焦点が移動する現象が大きくなる。この焦点変動は特にX線CT装置の拡大率が高い撮影において問題を引き起こす。この移動は数秒から数時間におよぶため、特に長時間、多枚数の撮影を行う場合、撮影の最初と最後ではかなりのずれが蓄積し、再構成画像のぼやけとなって現れる。
【0008】
上述した特許文献1及び特許文献2の技術では、同位相の1点のX線投影データに基づいてズレ量を求めるだけに留まっていた。しかしながら、X線CT装置の分野では、上述のような高解像度化の要求があるため、より多面的な観点からズレ量を求めて補正を行い、断層像の画質を向上することが求められている。
【0009】
本発明の目的は、撮影時に変化する投影データの投影像のズレを精度よく補正し、X線CT装置の特性に応じたより高精度の再構成処理が可能となるX線CT装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
態様1に係るX線CT装置は、被検体及び前記被検体にX線を照射するX線源の少なくとも一方を相対的に回転させる回転駆動部と、前記回転駆動部による回転を行いながら、前記被検体にX線を照射することによって取得された投影データを記憶する投影データ記憶部と、を有し、前記投影データ記憶部に記憶された投影データに基づいて前記被検体の断層画像を再構成するX線CT装置であって、前記回転駆動部による回転を1回転以上の所定範囲にわたって行いながら、前記被検体にX線を照射することによって投影データを取得して、取得した投影データを前記投影データ記憶部に記憶する投影データ取得部と、前記投影データ記憶部に記憶された投影データのうち、1回転の範囲において複数の回転角度で取得され、且つ、前記被検体の断層画像を再構成するために用いられる第1投影データ群における前記X線の投影像と、前記投影データ記憶部に記憶された投影データのうち、前記1回転以外の残りの範囲で、且つ、前記複数の回転角度とそれぞれ同位相である複数の回転角度で取得された第2投影データ群における前記X線の投影像とのズレ量を算出するズレ量算出部と、前記算出されたズレ量に基づいて、前記第1投影データ群を用いた前記再構成を行う画像再構成部と、を有する。
【0011】
上述の態様では、複数の投影データで算出されたズレ量に基づいて、前記被検体の断層画像の再構成を行う。このため、撮影時に変化する投影データの投影像のズレが一様でない場合、補正の精度が低下することを抑制できる。
【0012】
よって、撮影時に変化する投影データの投影像のズレを精度よく補正し、X線CT装置の特性に応じたより高精度の再構成処理が可能となる。
【0013】
態様2に係るX線CT装置は、態様1において、前記ズレ量算出部は、前記算出されたズレ量に基づいて、少なくとも前記第1投影データ群で前記ズレ量が算出されていない回転角度におけるズレ量を推定し、前記画像再構成部は、前記算出されたズレ量及び前記推定されたズレ量に基づいて、前記第1投影データ群に含まれる投影データを補正する、または、前記被検体の断層画像の再構成に用いる座標を補正する。
【0014】
上述の態様では、前記第1投影データ群で前記ズレ量が算出されていない回転角度におけるズレ量を推定する。この推定されたズレ量を用いて前記第1投影データ群で前記ズレ量が算出されていない回転角度における投影データの補正を行うことができる。
【0015】
これにより、前記第1投影データ群の投影データの全体に対して、より精度良く補正を行うことが可能となる。
【0016】
態様3に係るX線CT装置は、態様2において、前記ズレ量算出部は、前記1回転の範囲の起点である基準回転角度よりも小さい回転角度と、前記基準回転角度と同位相の回転角度よりも大きい回転角度とにおけるズレ量を算出する。
【0017】
上述の態様では、再構成に用いられる第1投影データ群が取得される回転角度よりも小さい回転角度及び大きい回転角度におけるズレ量の情報を取得できる。これにより、投影データ取得開始時付近と投影データ取得終了時付近のズレ量の情報を用いた補正を行うことができる。このように、異なるタイミングで取得されたズレ量の情報を用いて補正の精度向上を図ることができる。
【0018】
態様4に係るX線CT装置は、態様1に記載のX線CT装置において、前記投影データの投影像にズレを生じさせる1種以上の変動因子の値に対応付けられた投影データの投影像のズレ量データを予め記憶するズレ量データ記憶部をさらに有し、前記ズレ量算出部は、前記算出した算出ズレ量と、前記ズレ量データ記憶部に記憶されているズレ量データとに基づいて、前記第1投影データ群の各回転角度における推定ズレ量を推定し、前記画像再構成部は、前記算出ズレ量及び前記推定ズレ量に基づいて、前記第1投影データ群に含まれる投影データを補正する、または、前記被検体の断層画像の再構成に用いる座標を補正する。
【0019】
上述の態様では、前記投影データの投影像にズレを生じさせる1種以上の変動因子は例えば時間である。例えば、ズレ量データ記憶部には、X線CT装置における前記被検体の撮影の時間経過に応じた投影データの投影像のズレ量データが記憶できる。
【0020】
つまり、ズレ量データ記憶部には、X線CT装置を構成するX線照射源、X線管等の特性に応じた投影データの投影像のズレ量データが記憶できる。
【0021】
このため、前述の構成によれば、X線CT装置の特性に応じた投影データの投影像のズレ量データに基づいてズレ量を推定できる。
【0022】
よって、X線CT装置の特性に応じて、より高精度な補正が可能である。
【0023】
態様5に係るX線CT装置は、態様1において、前記投影データの投影像にズレを生じさせる1種以上の変動因子の値に対応付けられた投影データの投影像のズレ量データを予め記憶するズレ量データ記憶部をさらに有し、前記ズレ量算出部は、前記算出した算出ズレ量に基づいて、前記第1投影データ群で前記ズレ量が算出されていない回転角度における第1推定ズレ量を推定し、前記算出した算出ズレ量と、前記ズレ量データ記憶部に記憶されているズレ量データとに基づいて、前記第1投影データ群の各回転角度における第2推定ズレ量を推定し、前記第1推定ズレ量と前記第2推定ズレ量とに基づいて統合ズレ量を算出し、前記画像再構成部は、前記統合ズレ量に基づいて、前記第1投影データ群に含まれる投影データを補正する、または、前記被検体の断層画像の再構成に用いる座標を補正する。
【0024】
上述の態様では、投影データの投影像のズレ量と、変動因子に対応付けられたズレ量との両方を考慮した統合ズレ量が取得できる。このような統合ズレ量を用いることで補正の精度の向上が図れる。
【0025】
態様6に係るX線CT装置は、被検体及び前記被検体にX線を照射するX線源の少なくとも一方を相対的に回転させる回転駆動部と、前記回転駆動部による回転を行いながら、前記被検体にX線を照射することによって取得された投影データを記憶する投影データ記憶部と、を有し、前記投影データ記憶部に記憶された投影データに基づいて前記被検体の断層画像を再構成するX線CT装置であって、前記回転駆動部による回転を行いながら、前記被検体にX線を照射することによって投影データを取得して、取得した投影データを前記投影データ記憶部に記憶する投影データ取得部と、前記投影データの投影像にズレを生じさせる1種以上の変動因子の値に応じた投影データの投影像のズレ量データを予め記憶するズレ量データ記憶部と、前記ズレ量データ記憶部に記憶されている前記1種以上の変動因子と、前記回転駆動部による回転の回転角度との関係性に基づいて、前記回転角度に応じたズレ量を推定するズレ量推定部と、前記推定されたズレ量に基づいて、前記投影データを用いた前記再構成を行う画像再構成部と、を有する。
【0026】
上述の態様では、前記1種類以上の変動因子と、前記回転角度との関係性に基づいて推定されたズレ量に基づいて、再構成を行う。撮影時に変化する投影データの投影像のズレを精度よく補正し、X線CT装置の特性に応じたより高精度の再構成処理が可能となるX線CT装置を提供することである。
【0027】
態様7に係るX線CT装置は、態様6において、前記少なくとも1種以上の変動因子は、時間を含む。
【0028】
上述の態様では、経時的に変化するズレ量を用いた、高精度の補正が可能である。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一態様に係るX線CT装置は、被検体及び前記被検体にX線を照射するX線源の少なくとも一方を相対的に回転させる回転駆動部による回転を1回転以上の所定範囲にわたって行いながら、前記被検体にX線を照射することによって投影データを取得して、取得した投影データを前記投影データ記憶部に記憶する投影データ取得部と、前記投影データ記憶部に記憶された投影データのうち、1回転の範囲において複数の回転角度で取得され、且つ、前記被検体の断層画像を再構成するために用いられる第1投影データ群における前記X線の投影像と、前記投影データ記憶部に記憶された投影データのうち、前記1回転以外の残りの範囲で、且つ、前記複数の回転角度とそれぞれ同位相である複数の回転角度で取得された第2投影データ群における前記X線の投影像とのズレ量を算出するズレ量算出部と、前記算出されたズレ量に基づいて、前記第1投影データ群を用いた前記再構成を行う画像再構成部と、を有する。
【0030】
本発明の一態様に係るX線CT装置は、被検体及び前記被検体にX線を照射するX線源の少なくとも一方を相対的に回転させる前記回転駆動部による回転を行いながら、前記被検体にX線を照射することによって投影データを取得して、取得した投影データを前記投影データ記憶部に記憶する投影データ取得部と、前記投影データの投影像にズレを生じさせる1種以上の変動因子の値に応じた投影データの投影像のズレ量データを予め記憶するズレ量データ記憶部と、前記ズレ量データ記憶部に記憶されている前記1種以上の変動因子と、前記回転駆動部による回転の回転角度との関係性に基づいて、前記回転角度に応じたズレ量を推定するズレ量推定部と、前記推定されたズレ量に基づいて、前記投影データを用いた前記再構成を行う画像再構成部と、を有する。
【0031】
上述の態様によれば、撮影時に変化する投影データの投影像のズレを精度よく補正し、X線CT装置の特性に応じたより高精度の再構成処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、実施形態1に係るX線CT装置の概略的構成を示す外観図である。
図2図2は、実施形態1に係るX線CT装置の概略的構成を示す機能ブロック図である。
図3図3は、撮影時における回転角度と投影データの取得位置との関係について説明する図である。
図4図4は、同位相の関係にある投影データについて説明する図である。
図5図5は、回転角度と補正量との関係について示すグラフであり、(A)は、X軸方向の補正量であり、(B)はY軸方向の補正量である。
図6図6は、実施形態2に係るX線CT装置の概略的構成を示す機能ブロック図である。
図7図7は、ズレ量データを用いた補正量の推定について説明するグラフであり、(A)は、経過時間と補正量との対応を示すグラフであり、(B)は、同図の(A)に示す窓W1付近の拡大図である。
図8図8は、プロファイル曲線を用いて補正する例を示すグラフである。
図9図9は、実施形態3に係るX線CT装置の概略的構成を示す機能ブロック図である。
図10図10は、算出ズレ量に基づく補正量を、プロファイル曲線とフィッティングする例を示すグラフであり、(A)は、フィッティング前の状態を示し、(B)は、フィッティング後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。なお、図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。また、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0034】
[実施形態1]
(全体構成)
図1図5を用いて、実施形態1に係るX線CT装置1について説明する。
【0035】
図1は、実施形態1に係るX線CT装置1の概略的構成を示す外観図である。図2は、実施形態1に係るX線CT装置1の概略的構成を示す機能ブロック図である。
【0036】
なお、図1に示す矢印D2は、X線CT装置1の上下方向を示す。
【0037】
図1及び図2に示すように、X線CT装置1は、X線発生器11、検出器12、回転台13、回転駆動部14、操作部15、表示部16、記憶部20及び制御部30を有する。
【0038】
X線発生器11は、コーンビーム状のX線を発生するX線源として機能する。X線発生器11は、焦点が数マイクロメーターから数十マイクロメーターであるマイクロフォーカスX線管を含む。マイクロフォーカスX線管では、フィラメントから発生した電子を収束させ、収束させた電子をターゲットである陽極に当ててX線を発生させる。X線発生器11は、水平方向の一方向に延びるX線光軸D1を有し、X線光軸D1の一方に位置する検出器12の方向にX線を照射する。
【0039】
検出器12は、X線発生器11から照射されたX線を検出する。検出器12は、2次元状に配列された画素を有する2次元X線検出器である。検出器12は、検出したX線に基づき投影データを生成する。
【0040】
回転台13は、被検体Wを載置する台である。回転台13は、X線発生器11と検出器12との間に位置する。
【0041】
回転駆動部14は、回転台13を、上下方向D2に延びる回転軸R1を中心として図1に示す矢印方向に一定速度で回転させる。回転駆動部14は、被検体Wを、X線発生器11に対して相対的に回転させる。回転駆動部14は、モータ等の駆動装置により実現される。回転駆動部14は、被検体の撮影時、制御部30の制御によって被検体Wを載置した回転台13を所定の位置まで回転させる。
【0042】
操作部15は、X線CT装置1における各種の操作を行うためのユーザインターフェースである。操作部15は、例えば、キーボード、ボタン等の入力装置、又は、マウス、ペンタブレット及びタッチパネル等のポインティングデバイスにより実現できる。例えば、操作部15における操作によって、X線CT装置1における撮影操作を行うことができる。
【0043】
表示部16は、ユーザに対してX線CT装置1における各種データを提示する。表示部16は、液晶又は有機EL等の表示装置により実現できる。
【0044】
記憶部20は、制御部30において実行されるプログラム及びプログラムで使用されるデータ等の各種のデータを格納している。記憶部20は、例えば、揮発性又は不揮発性の記憶装置により実現できる。記憶部20は、例えば、内蔵、外付けの記憶装置又はリムーバブルメディアにより実現できる。記憶部20は、具体的に例示すると、キャッシュメモリ及び主記憶装置により実現できる。また、記憶部20は、具体的に例示すると、SSD(Solid State Drive)又はHDD(ハードディスク)等の補助記憶装置により実現できる。また、記憶部20は、投影データを記憶する投影データ記憶部21を有する。
【0045】
制御部30は、プログラムを実行することでX線CT装置1における各種機能を統合的に実行する。制御部30は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等の演算装置がプログラムを実行することにより各種機能を実現できる。なお、制御部30の詳細については後述する。
【0046】
(制御部の詳細)
図2に示すように、制御部30は、投影データ取得部32、ズレ量算出部34及び画像再構成部35を有する。
【0047】
(投影データ取得部)
投影データ取得部32は、回転駆動部14による回転、X線発生器11によるX線照射、検出器12によるX線検出を制御して、投影データを取得する。すなわち、投影データ取得部32は、回転駆動部14による回転を1回転以上の所定範囲にわたって行いながら、X線発生器11による被検体WへのX線照射を行うことにより、検出器12によって生成される投影データを取得する。
【0048】
図3及び図4を用いて、投影データ取得部32の動作について、より具体的に説明する。図3は、撮影時における回転角度と投影データの取得位置との関係について説明する図である。図4は、同位相の関係にある投影データについて説明する図である。
【0049】
図3に示すように、投影データ取得部32は、-10°の回転角度から、X線発生器11による被検体WへのX線照射を開始する。つまり、-10°の回転角度におけるX線照射により検出器12によって生成される投影データを取得する。その後、投影データ取得部32は、回転駆動部14に、回転台13の回転を1°刻みで、0°及び360°を経て、360°+10°=370°の回転角度まで行わせ、各回転角度におけるX線照射により検出器12によって生成される投影データを取得する。これにより、投影データ取得部32は、合計380°分の投影データを取得する。
【0050】
このため、図4に示すように、-10°~+10°(=370°)の回転角度の範囲における投影データには同位相の投影データが存在する。なお、図4では、説明の都合上、5°おきに投影データを作図している。このため、例えば、-10°の回転角度の投影データと、350°の回転角度の投影データとは同位相である。また、これと同様に、-5°、0°、5°及び10°の回転角度の投影データは、それぞれ、355°、360°、365°及び370°の投影データと同位相である。
【0051】
なお、0°~359°の回転角度の360枚分の投影データが、後述する画像再構成部35における被検体の断層画像の再構成に用いられる。つまり、図3において白抜き矢印で示す-10°~-1°の範囲は、再構成に用いられる投影データの回転角度よりも小さい回転角度であり、黒塗り矢印に示す361°~370°の範囲は、再構成に用いられる投影データの回転角度よりも大きい回転角度である。
【0052】
投影データ取得部32は、取得した投影データを、前記投影データを取得した回転角度及び撮影時刻に関連付けて前記投影データ記憶部21に記憶する。
【0053】
(ズレ量算出部)
図4に加えて、図5を用いて、ズレ量算出部34におけるズレ量の算出及びズレ量の推定について説明する。図5は、回転角度と補正量との関係について示すグラフであり、(A)は、X軸方向の補正量であり、(B)はY軸方向の補正量である。
【0054】
ズレ量算出部34は、同位相の投影データについて、投影像のズレ量を算出する。ここで、図4に示すように、投影データ記憶部21に記憶された投影データのうち、0°~359°までの1回転の範囲において複数の回転角度で取得され、且つ、被検体Wの断層画像を再構成するために用いられる投影データのグループを第1投影データ群G1とする。また、投影データ記憶部21に記憶された投影データのうち、前記1回転以外の残りの範囲の-10°~-1°及び360°+1°(=361°)~+10°(=370°)で、且つ、第1投影データ群G1の前記複数の回転角度とそれぞれ同位相である複数の回転角度で取得された投影データのグループを第2投影データ群G2とする。ズレ量算出部34は、第1投影データ群G1の投影データにおける前記X線の投影像と、第2投影データ群G2の投影データにおける前記X線の投影像とのズレ量を算出する。
【0055】
ズレ量算出部34は、例えば、第1投影データ群G1及び第2投影データ群G2の投影データの投影像の特徴を画像処理により抽出し、第1投影データ群G1の投影データの投影像の特徴の位置と、第2投影データ群G2の投影データの投影像の特徴との位置のズレを以下の式(1)及び(2)によってズレ量として計算する。
【0056】
ΔX(A)=X(A)-X(B) ・・・ (1)
ΔY(A)=Y(A)-Y(B) ・・・ (2)
ここで、X(θ)は、回転角度θにおける特徴のX軸上の基準位置であり、Y(θ)は、回転角度θにおける特徴のY軸上の基準位置である。ΔX(θ)及びΔY(θ)は、回転角度θにおける特徴と、回転角度θと同位相の回転角度における特徴とのX軸方向及びY軸方向におけるズレ量を意味する。Aは基準となる回転角度(°)を表し、BはAと同位相の回転角度(°)を表す。
【0057】
例えば、A=-10、B=350の場合、式(1)より、ΔX(-10)=X(-10)-X(350)によりX軸方向のズレ量を求めることができる。
【0058】
なお、投影像の特徴の抽出は、公知の技術によって行うことができる。
【0059】
上述のように算出したズレ量は、投影データの投影像において適用すべき補正量を表している。
【0060】
ズレ量算出部34は、さらに、第1投影データ群G1で前記ズレ量が算出されていない回転角度におけるズレ量を推定する。
【0061】
図5を用いて、ズレ量算出部34によるズレ量、すなわち補正量の推定について説明する。
【0062】
ズレ量算出部34は、ΔX(-10)~ΔX(10)までの点を制御点とするスプライン曲線を計算し、0°~349°までの各回転角度におけるX軸方向の補正量を補外する。これにより、図5の(A)に示すX軸方向の補正量の推定曲線Lxを得る。
【0063】
また、ズレ量算出部34は、ΔY(-10)~ΔY(10)までの点を制御点とするスプライン曲線を計算し、0°~349°までの各回転角度におけるY軸方向の補正量を補外する。これにより、図5の(B)に示すY軸方向の補正量の推定曲線Lyを得る。
【0064】
このように、ズレ量算出部34は、前記算出されたズレ量に基づいて、第1投影データ群G1で前記ズレ量が算出されていない回転角度におけるズレ量を補外する。
【0065】
このズレ量は、投影データに適用する補正量として画像再構成部35の再構成において用いられる。
【0066】
(画像再構成部)
画像再構成部35は、ズレ量算出部34によって算出されズレ量及び推定されたズレ量に基づいて、第1投影データ群G1の投影データを補正し、補正した投影データを用いて、被検体Wの断層画像の再構成を行う。
【0067】
画像再構成部35は、0°~359°の第1投影データ群G1の投影データについて、図5に示すグラフにおいて各回転角度に応じた補正量を用いて、投影データをずらすように補正する。画像再構成部35は、補正した投影データを用いて被検体Wの断層画像の再構成を行う。
【0068】
画像再構成部35は、再構成によって得られた被検体Wの断層画像を表示部16に表示する。
【0069】
以上に説明したように、X線CT装置1は、被検体Wを載置する回転台13を相対的に回転させる回転駆動部14と、回転駆動部14による回転を行いながら、被検体WにX線を照射することによって取得された投影データを記憶する投影データ記憶部21と、を有し、投影データ記憶部21に記憶された投影データに基づいて被検体Wの断層画像を再構成する。
【0070】
X線CT装置1は、投影データ取得部32と、ズレ量算出部34と、画像再構成部35と、を有する。
【0071】
投影データ取得部32は、回転駆動部14による回転を-10°~370°の所定範囲にわたって行いながら、被検体WにX線を照射することによって投影データを取得して、取得した投影データを投影データ記憶部21に記憶する。
【0072】
ズレ量算出部34は、投影データ記憶部21に記憶された投影データのうち、0°~359°の1回転の範囲において複数の回転角度で取得され、且つ、被検体Wの断層画像を再構成するために用いられる第1投影データ群G1における前記X線の投影像と、投影データ記憶部21に記憶された投影データのうち、前記1回転以外の残りの-10°~-1°及び360°~370°の範囲で、且つ、前記複数の回転角度とそれぞれ同位相である複数の回転角度で取得された第2投影データ群G2における前記X線の投影像とのズレ量を算出する。
【0073】
画像再構成部35は、ズレ量算出部34によって算出されたズレ量に基づいて、第1投影データ群G1を用いた前記再構成を行う。
【0074】
X線CT装置1では、複数の投影データで算出されたズレ量に基づいて、被検体Wの断層画像の再構成を行う。このため、撮影時に変化する投影データの投影像のズレが一様でない場合、補正の精度が低下することを抑制できる。
【0075】
よって、撮影時に変化する投影データの投影像のズレを精度よく補正し、X線CT装置1の特性に応じたより高精度の再構成処理が可能となる。
【0076】
また、X線CT装置1では、ズレ量算出部34は、算出されたズレ量に基づいて、第1投影データ群G1で前記ズレ量が算出されていない回転角度11°~349°におけるズレ量を補外する。画像再構成部35は、前記算出されたズレ量及び前記補外されたズレ量に基づいて、第1投影データ群G1に含まれる投影データを補正する。
【0077】
上述の構成では、第1投影データ群G1で前記ズレ量が算出されていない回転角度におけるズレ量を推定する。この推定されたズレ量を用いて第1投影データ群G1で前記ズレ量が算出されていない回転角度における投影データの補正を行うことができる。
【0078】
これにより、第1投影データ群G1の投影データの全体に対して、より精度良く補正を行うことが可能となる。
【0079】
また、X線CT装置1では、ズレ量算出部34は、前記1回転の範囲の起点である基準回転角度0°よりも小さい回転角度-10°~-1°と、基準回転角度0°と同位相の回転角度360°よりも大きい回転角度361°~370°におけるズレ量を算出する。
【0080】
上述の構成では、再構成に用いられる第1投影データ群G1が取得される回転角度よりも小さい回転角度及び大きい回転角度におけるズレ量の情報を取得できる。
【0081】
これにより、投影データ取得開始時付近と投影データ取得終了時付近のズレ量の情報を用いた補正を行うことができる。このように、異なるタイミングで取得されたズレ量の情報を用いて補正の精度向上を図ることができる。
【0082】
[実施形態2]
図6図8を用いて、実施形態2に係るX線CT装置2について説明する。図6は、実施形態2に係るX線CT装置2の概略的構成を示す機能ブロック図である。図7は、ズレ量データを用いた補正量の推定について説明するグラフであり、(A)は、経過時間と補正量との対応を示すグラフであり、(B)は、同図の(A)に示す窓W1付近の拡大図である。図8は、プロファイル曲線を用いて補正する例を示すグラフである。
【0083】
実施形態2に係るX線CT装置2は、さらに経過時間と投影データの投影像のズレ量との対応関係に基づいて補正量を推定する点で、実施形態1に係るX線CT装置1と異なる。なお、実施形態2の説明では、実施形態1に係るX線CT装置1と共通する部分については、詳細な説明を繰り返さない。
【0084】
図6に示すように、X線CT装置2の記憶部20は、ズレ量データ記憶部22をさらに有する。また、X線CT装置2の制御部30は、実施形態1に係るX線CT装置1におけるズレ量算出部34及び画像再構成部35に替えて、ズレ量算出部36及び画像再構成部37を有する。
【0085】
(ズレ量データ記憶部)
ズレ量データ記憶部22は、投影データの投影像のズレ量と、時間との対応付けを示すデータであるズレ量データを記憶している。
【0086】
X線の照射に伴ってX線発生器11に含まれるX線管が発熱する。特に、陽極の温度が上昇するのに伴って陽極が熱膨張を起こす。陽極の熱膨張に伴って焦点移動が生じる。焦点移動は、投影データの投影像のズレを引き起こす。このため、X線発生器11によるX線の照射時間は、投影データの投影像にズレを生じさせる変動因子となる。
【0087】
この変動因子である時間とズレ量との対応付けを示すズレ量データは、例えば、次のような方法で予め取得できる。
【0088】
まず、X線発生器11を所定の時間以上停止する。これは、X線発生器11のX線管を温度上昇の影響がない状態に初期化するために行う。
【0089】
そして、X線発生器11によるX線照射及び照射されたX線の検出器12による検出を行う事前撮影を開始し、開始からの経過時間とともに焦点移動距離であるズレ量を記録する。この事前撮影では、例えば、回転台13に載置した既知の形状を有する基準器を撮影し得られた撮影データに基づいて焦点移動を計測する。基準器としては、既知の直径のサファイア基準球、フォレストゲージ又は十字形状のタングステン照準等を用いることができる。この事前撮影では回転台13の回転は行わなくても構わない。
【0090】
このようにして、ズレ量データをズレ量データ記憶部22に記憶しておく。図7の(A)にズレ量データをグラフ化して示している。図7の(A)に示すようにズレ量データをグラフ化したプロファイル曲線L1は、時間経過に伴いズレ量、すなわち補正量が大きくなるS字カーブを示す。プロファイル曲線L1は、事前撮影の開始直後に補正量の変動が大きく、徐々に補正量の変動幅が小さくなる傾向を示す。
【0091】
なお、図7の(A)では特に区別していないが、補正量は、X軸方向及びY軸方向について計測する。
【0092】
また、この傾向は、X線発生器11又はX線管の個体によって差があるため、X線発生器11又はX線管の個体ごとにズレ量データを取得することが望ましい。
【0093】
(ズレ量算出部)
ズレ量算出部36は、以下に説明する算出ズレ量、第1推定ズレ量、第2推定ズレ量及び統合ズレ量を算出する。
【0094】
(算出ズレ量)
ズレ量算出部36は、上述した投影像の特徴に基づいてズレ量を算出する。以下の説明では、上述した投影像の特徴に基づいて算出されたズレ量のことを「算出ズレ量」と称する。ズレ量算出部36は、同位相の投影データについて、投影像の算出ズレ量を算出する。
【0095】
具体的には、ズレ量算出部36は、前述した式(1)及び(2)を用いて、A=-10、-5、0、5、10、及び、B=350、355、360、365、370の5つの同位相点について、それぞれ、X軸方向及びY軸方向の算出ズレ量を求める。
【0096】
(第1推定ズレ量)
ズレ量算出部36は、前記算出された算出ズレ量に基づいて、実施形態1で説明したとおり第1投影データ群G1で前記ズレ量が算出されていない回転角度におけるズレ量(補正量)を補外する。すなわち、ズレ量算出部36は、上述の推定曲線Lx、Lyを導出し、第1推定ズレ量を推定する。
【0097】
(第2推定ズレ量)
次に、ズレ量算出部36は、上述の算出ズレ量と、ズレ量データ記憶部22に記憶されるズレ量データとに基づいて第1投影データ群G1の各回転角度における第2推定ズレ量を推定する。
【0098】
具体的には、ズレ量算出部36は、上述の通り求めた5つの同位相点の算出ズレ量と、図7に示すプロファイル曲線L1との適合度を計算する。5つの算出ズレ量は、それぞれ、上述の回転角度について計算される。言い換えれば、5つの算出ズレ量は、それぞれ、上記回転角度に応じた時刻について計算される。図7の(B)を用いて具体的に説明すると、5つの算出ズレ量のうち最も小さい位相のA=-10の投影データが取得された時刻と、最も大きい位相のA=10の投影データが取得された時刻との間隔をTWとする。
【0099】
ズレ量算出部36は、5つの算出ズレ量に対応する投影データが取得された時刻の間隔TW内における相対時刻を下記の式(3)によって計算する。
【0100】
Δt(θ)=t(θ)-t(-10) ・・・ (3)
t(θ)は、回転角度θの投影データが取得された時刻である。Δt(θ)は、θ=-10の投影データが取得された時刻からの相対時刻である。なお、Δt(-10)は、0である。
【0101】
ズレ量算出部36は、この間隔TWによって規定される窓を、所定の初期位置から、所定間隔でずらしながら、上述の適合度を計算する。
【0102】
ズレ量算出部36は、例えば、まず、初期位置として、図7の(A)に示す窓W1について、上述の適合度を計算する。ズレ量算出部36は、図7の(B)に示すように、上述した相対時刻に窓W1の初期時刻T1が加算される。これにより、窓W1において、5つの算出ズレ量が示す点は、それぞれ、グラフ上の経過時間に対応する位置が決まる。
【0103】
そして、ズレ量算出部36は、図7の(B)において黒丸で示した5つの算出ズレ量ΔX(-10)、ΔX(-5)、ΔX(0)、ΔX(5)、ΔX(10)の点のそれぞれについて、プロファイル曲線L1との適合度fitnessを算出する。
【0104】
その後、ズレ量算出部36は、窓W1に対して所定の間隔で初期時刻を増加させながら、窓W2、…、窓Wnまで上記の適合度fitnessを計算する。
【0105】
適合度fitnessの計算は、概略的には、5つの算出ズレ量の点と、5つの算出ズレ量の点に対応するプロファイル曲線L1上の点との距離に基づく。5つの算出ズレ量の点に対応するプロファイル曲線L1上の点とは、図7の(B)に白抜き丸で示すように、プロファイル曲線L1において、5つの算出ズレ量のそれぞれと同じ経過時間にある点である。
【0106】
適合度fitnessは、具体的には、以下の式(4)によって計算できる。
【0107】
fitness = {X(Tn)-ΔX(-10)}
{X(Tn+Δt(-5)) - ΔX(-5)}
{X(Tn+Δt(0)) - ΔX(0)}
{X(Tn+Δt(5)) - ΔX(5)}
{X(Tn+Δt(10)) - ΔX(10)} ・・・(4)
ここで、Tnは、n番目の窓Wnの初期時刻である。X(t)は、図7の(A)に示すグラフの経過時間tにおける補正量を示す。なお、図7の(B)は、X軸方向の補正を示しているが、Y軸方向についても同様である。つまり、上記式(4)に準じて、Y軸方向の適合度fitnessも計算できる。
【0108】
適合度が小さいほど、5つの算出ズレ量の点と、プロファイル曲線L1上の対応する点との間に差が小さいことを示す。
【0109】
図8に示すように、ズレ量算出部36は、1番目の窓W1の適合度fitness~n番目の窓Wnの適合度fitnessを比較し、最小の適合度を有する窓Wminを特定する。
【0110】
ズレ量算出部36は、最小の適合度fitnessを有する窓Wminを基準に、被検体Wの断層画像を再構成するために用いられる360°分の投影データの第2推定ズレ量を推定する。以下において具体的に説明する。
【0111】
まず、窓Wminの初期時刻をTminとする。また、0°の投影データを取得した時刻から360°の投影データを取得した時刻までの所要時間をTpとする。
【0112】
Tmin+Δt(0)が、360°の投影データを取得した時刻に対応する。このため、図8に示すように、Tmin+Δt(0)から所要時間Tpを遡った点が、0°の投影データを取得した時刻に対応する。ズレ量算出部36は、プロファイル曲線L1のうち、0°の投影データから359°の投影データまでに対応する区間Lpを第2推定ズレ量による補正量として採用する。
【0113】
(統合ズレ量)
ズレ量算出部36は、前記第1推定ズレ量と前記第2推定ズレ量とに基づいて統合ズレ量を算出する。
【0114】
第1推定ズレ量による補正量をCorr1とし、第2推定ズレ量による補正量をCorr2とする。ズレ量算出部36は、以下の式(5)及び(6)によって最終的な補正量を示す統合ズレ量を決定する。
【0115】
Vx = Corr2(x)×αx + Corr1(x)×(1-αx) ・・・ (5)
Vy = Corr2(y)×αy + Corr1(y)×(1-αy) ・・・ (6)
Vx、Vyは、それぞれ、最終的なX軸方向の補正量及びY軸方向の補正量である。
【0116】
αx、αyは、それぞれ、X軸方向及びY軸方向の算出ズレ量及び推定ズレ量をどの程度反映させるかを決めるブレンド係数である。以下、X軸方向及びY軸方向について特に区別する必要がない場合、単にαと表記する。αは、0~1の値をとる。
【0117】
αは、例えば、0.5に設定できる。これにより、前記第1推定ズレ量と前記第2推定ズレ量とを平均した値を統合ズレ量として算出できる。
【0118】
X線発生器11のX線管には、例えば、初期の焦点移動が大きいもの、及び、焦点移動が継続的に起こるもの等、構造に起因する焦点移動が一様でない場合がある。このような場合、例えば、αの値を0.5以上に設定することで補正精度が向上できることがある。
【0119】
また、ズレ量データは、同一個体のX線発生器11について、時間をあけて複数回取得してもよい。複数回取得したズレ量データを相互に比較して、データの傾向にバラツキがある場合、例えば、αの値を0.5以下に下げることで、第2推定ズレ量による補正量の影響度を下げることができる。複数回取得したズレ量データを相互に比較して、データが一定の傾向を示す場合、例えば、αの値を0.5以上に上げることで、第2推定ズレ量による補正量の影響度を上げることができる。
【0120】
(画像再構成部)
画像再構成部37は、ズレ量算出部36が計算した統合ズレ量に基づいて、第1投影データ群G1に含まれる投影データを補正する。
【0121】
画像再構成部37は、最終的な補正量Vx、Vyを用いて投影データをずらすように補正する。画像再構成部37は、補正した投影データを用いて被検体Wの断層画像の再構成を行う。
【0122】
画像再構成部37は、再構成によって得られた被検体Wの断層画像を表示部16に表示する。
【0123】
以上に説明したとおり、X線CT装置2は、前記投影データの投影像にズレを生じさせる変動因子の1種である経過時間の値に対応付けられた投影データの投影像のズレ量データを予め記憶するズレ量データ記憶部22をさらに有する。
【0124】
ズレ量算出部36は、前記算出されたズレ量に基づいて、第1投影データ群G1で前記ズレ量が算出されていない回転角度における第1推定ズレ量を推定する。
【0125】
ズレ量算出部36は、前記算出された第1推定ズレ量と、前記ズレ量データ記憶部に記憶されているズレ量データとに基づいて、前記第1投影データ群で前記ズレ量が算出されていない回転角度における第2推定ズレ量を推定する。
【0126】
前記第1推定ズレ量と前記第2推定ズレ量とに基づいて統合ズレ量を算出する。
【0127】
画像再構成部37は、前記統合ズレ量に基づいて、第1投影データ群に含まれる投影データを補正する。
【0128】
上述の構成では、投影データの投影像の第1推定ズレ量と、変動因子に対応付けられた第2推定ズレ量との両方を考慮した統合ズレ量が取得できる。このような統合ズレ量を用いることで補正の精度の向上が図れる。
【0129】
さらに言えば、αの値を0より大きく、1より小さい値とすることで、算出したズレ量に基づく第1推定ズレ量を、装置特性に応じた第2推定ズレ量によって調整できる。
【0130】
αの値を0とした場合、第1推定ズレ量のみに基づく補正となり、αの値を1とした場合、第2推定ズレ量のみに基づく補正となる。このような場合も本実施形態の範疇となる。
【0131】
αの値を1とした場合、X線CT装置2は、以下のように表現することもできる。X線CT装置2は、投影データの投影像にズレを生じさせる変動因子の1種である経過時間の値に対応付けられた投影データの投影像のズレ量データを予め記憶するズレ量データ記憶部22を有する。
【0132】
ズレ量算出部36は、算出した算出ズレ量と、ズレ量データ記憶部22に記憶されているズレ量データとに基づいて、第1投影データ群G1の各回転角度における推定ズレ量(第2推定ズレ量)を推定する。
【0133】
画像再構成部37は、前記算出ズレ量及び前記推定ズレ量に基づいて、第1投影データ群G1に含まれる投影データを補正する。
【0134】
上述の構成では、ズレ量データ記憶部22には、X線CT装置2における被検体WのX線照射による撮影の時間経過に応じた投影データの投影像のズレ量データを記憶できる。
【0135】
つまり、ズレ量データ記憶部22には、X線CT装置2のX線発生器に含まれるX線管、陰極又は陽極等の特性に応じた投影データの投影像のズレ量データが記憶できる。
【0136】
このため、前述の構成によれば、X線CT装置2の特性に応じた投影データの投影像のズレ量データに基づいてズレ量を推定できる。
【0137】
よって、X線CT装置2の特性に応じて、より高精度な補正が可能である。
【0138】
[実施形態2の変形例]
図10を用いて、実施形態2の変形例に係るX線CT装置2について説明する。図10は、算出ズレ量に基づく補正量を、プロファイル曲線とフィッティングする例を示すグラフであり、(A)は、フィッティング前の状態を示し、(B)は、フィッティング後の状態を示す。
【0139】
実施形態2の変形例に係るX線CT装置2は、さらに過去に取得した投影データのズレ量に基づいてプロファイル曲線とのフィッティングを行う点で、実施形態2に係るX線CT装置2と異なる。なお、実施形態2の変形例の説明では、実施形態2に係るX線CT装置2と共通する部分については、詳細な説明を繰り返さない。
【0140】
X線CT装置2では、投影データ記憶部21が、X線発生器11からのX線の照射を止めない状態で、2回の撮影にわたって取得された投影データを記憶している。それぞれの撮影では、上述の通り、-10°~370°の回転角度の範囲で投影データが取得される。
【0141】
ズレ量算出部36は、2回の撮影にわたって取得された投影データについて、それぞれ、上述した方法で5つの同位相点についてズレ量を算出する。これにより、図10の(A)に示すように、1回目の撮影において取得された投影データに基づいて算出された算出ズレ量R11と、2回目の撮影において取得された投影データに基づいて算出された算出ズレ量R12とを得る。
【0142】
次に、ズレ量算出部36は、上述の算出ズレ量R11、R12と、ズレ量データ記憶部22に記憶されるズレ量データとに基づいて2回目の撮影における第1投影データ群G1の各回転角度における第2推定ズレ量を推定する。
【0143】
図10の(A)に示すフィッティング前の状態において、ズレ量算出部36は、算出ズレ量R11の点と、算出ズレ量R12の点とを含む窓Whについて、下記の式(7)によって適合度fitnessを計算する。
【0144】
fitness = fitness1 + fitness2 ・・・ (7)
ここで、fitness1は、1回目の撮影の算出ズレ量R11の点について、式(4)によって計算した適合度であり、fitness2は、2回目の撮影の算出ズレ量R12の点について、式(4)によって計算した適合度である。
【0145】
ズレ量算出部36は、窓Whに対して所定の間隔で初期時刻を増加させながら、所定の範囲で式(7)による適合度fitnessを計算する。
【0146】
ズレ量算出部36は、最小の適合度fitnessを有する窓Whを基準に、被検体Wの断層画像を再構成するために用いられる360°分の投影データの第2推定ズレ量を推定する。これにより、図10の(B)に示すように、プロファイル曲線L1とのフィッティングが完了する。ズレ量算出部36は、プロファイル曲線L1のうち、0°の投影データから359°の投影データまでに対応する区間を第2推定ズレ量による補正量として採用する。
【0147】
なお、ズレ量算出部36の第1推定ズレ量及び統合ズレ量の算出と、画像再構成部37の再構成は、上記と同じであるので、ここではその説明を繰り返さない。
【0148】
1回目の撮影と、2回目の撮影との間において、X線発生器11はX線を照射し続けているため、図10の(A)及び(B)のプロファイル曲線L1に示すように、焦点の移動量(すなわち補正量)は時間の経過に伴い増大する。上述の構成によれば、ズレ量算出部36は、X線発生器11からのX線の照射を止めない状態で、複数回数の撮影にわたって取得された投影データについて、それぞれ、上述した方法で5つの同位相点について算出ズレ量を算出する。また、ズレ量算出部36は、このようにして算出した算出ズレ量に基づいて、適合度fitnessを計算する。このため、ズレ量算出部36は、より多くの算出ズレ量の点を用いてプロファイル曲線L1とのフィッティングを行うことができる。よって、より精度よくフィッティングを行うことができる。
【0149】
[実施形態3]
図9を用いて、実施形態3に係るX線CT装置3について説明する。図9は、実施形態3に係るX線CT装置3の概略的構成を示す機能ブロック図である。
【0150】
実施形態3に係るX線CT装置3は、経過時間と投影データの投影像のズレ量との対応関係に基づいて推定した推定ズレ量に基づいて補正量を決定する点で、実施形態2に係るX線CT装置2と異なる。なお、実施形態3の説明では、実施形態2に係るX線CT装置2と共通する部分については、詳細な説明を繰り返さない。
【0151】
図9に示すように、X線CT装置3の制御部30は、実施形態2に係るX線CT装置2におけるズレ量算出部36及び画像再構成部37に替えて、ズレ量推定部38及び画像再構成部39を有する。
【0152】
(ズレ量推定部)
ズレ量推定部38は、ズレ量データ記憶部22に記憶されているズレ量データに対応付けられている経過時間と、回転駆動部14による回転の回転角度との関係性に基づいて、回転角度に応じたズレ量を推定する。
【0153】
X線発生器11を所定の時間以上停止するとX線発生器11のX線管が温度上昇の影響がない状態に初期化される。初期化状態からX線CT装置3が撮影を行う場合、撮影開始であるt=0からの補正量が、図7の(B)のプロファイル曲線L1に示すような増加傾向を示すことがある。
【0154】
このため、ズレ量推定部38は、投影データに対応付けられている時刻を用いて、プロファイル曲線L1を参照して補正量を推定する。
【0155】
(画像再構成部)
画像再構成部39は、ズレ量推定部38が推定したズレ量に基づいて、第1投影データ群G1に含まれる投影データを補正する。
【0156】
画像再構成部39は、補正した投影データを用いて被検体Wの断層画像の再構成を行う。
【0157】
画像再構成部39は、再構成によって得られた被検体Wの断層画像を表示部16に表示する。
【0158】
以上に説明したように、X線CT装置3は、被検体Wを載置する回転台13を回転させる回転駆動部14と、回転駆動部14による回転を行いながら、被検体WにX線を照射することによって取得された投影データを記憶する投影データ記憶部21と、を有し、投影データ記憶部21に記憶された投影データに基づいて被検体Wの断層画像を再構成する。
【0159】
X線CT装置3は、投影データ取得部32と、ズレ量データ記憶部22と、ズレ量推定部38と、画像再構成部39とを有する。
【0160】
投影データ取得部32は、回転駆動部14による回転を行いながら、被検体WにX線を照射することによって投影データを取得して、取得した投影データを投影データ記憶部21に記憶する。
【0161】
ズレ量データ記憶部22は、投影データの投影像にズレを生じさせる変動因子である経過時間の値に応じた投影データの投影像のズレ量データを予め記憶する。
【0162】
ズレ量推定部38は、ズレ量データ記憶部22に記憶されている経過時間と、回転駆動部14による回転の回転角度との関係性に基づいて、回転角度に応じたズレ量を推定する。
【0163】
画像再構成部39は、ズレ量推定部38によって推定されたズレ量に基づいて、投影データ記憶部21に記憶された投影データを用いた前記再構成を行う。
【0164】
これにより、画像再構成部39は、X線照射の時間経過と、回転角度との関係性に基づいてズレ量を推定できる。また、推定されたズレ量に基づいて、画像再構成部39が再構成を行う。これにより、X線CT装置3の特性に応じたより高精度な補正が可能である。
【0165】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0166】
前記各実施形態では、X線CT装置1~3の制御部30がプログラムを実行することにより各種機能を実現する。すなわち、制御部30はソフトウェアによって実現されている。これに限られず、制御部は、専用の集積回路等のハードウェアによって実現されていてもよい。
【0167】
前記各実施の形態では、X線発生器11は、水平方向の一方向に延びるX線光軸D1を有する。これに限られず、X線発生器のX線光軸は上下方向であってもよいし、別の他の方向であってもよい。
【0168】
前記各実施形態では、特に説明しなかったが、X線発生器、検出器及び回転台は、それぞれ、X線光軸の方向、上下方向及び上下方向に直交する水平方向に移動する移動機構を有していてもよい。これにより、X線光軸の位置及び投影データの幾何倍率等を調整できる。
【0169】
前記各実施形態では、回転台13が回転駆動部14によって回転する。これに限られず、回転駆動部は、X線源としてのX線発生器及び検出器12の対を、被検体に対して回転させてもよい。回転駆動部は、被検体及び前記被検体にX線を照射するX線源の少なくとも一方を相対的に回転させてもよい。
【0170】
前記各実施形態では、X線CT装置1~3が記憶部20に投影データを記憶する。これに限られず、X線CT装置は、通信ネットワークを介して接続された外部のサーバに投影データをアップロードしてもよい。また、ズレ量算出部及び画像再構成部は、外部のサーバに保存されている投影データに基づいて、ズレ量の算出及び断層画像の再構成を行ってもよい。
【0171】
前記各実施形態では、X線CT装置1~3が-10°~370°の380°分の範囲で投影データを取得する。これに限られず、X線CT装置は、-10°よりも小さい回転角度の範囲で投影データを取得してもよい。また、X線CT装置は、370°よりも大きい回転角度の範囲で投影データを取得してもよい。
【0172】
前記各実施形態では、投影データ取得部32は、1°刻みで投影データを取得する。これに限られず、1°より小さい回転角度ごとに投影データを取得してもよいし、1°より大きい回転角度ごとに投影データを取得してもよい。
【0173】
前記実施形態1及び2では、ズレ量算出部34、36は、算出した同位相点の算出ズレ量に基づいてスプライン曲線を計算することにより、推定曲線Lx、Lyを導出する。これに限られず、ズレ量算出部は、指数近似、線形近似、対数近似、多項式近似、又は、累乗近似によって推定曲線を計算してもよい。また、ズレ量算出部は、算出ズレ量に対して、その他の曲線を当てはめても構わない。
【0174】
前記実施形態1では、ズレ量算出部34は、ΔX(-10)~ΔX(10)までの点を制御点とするスプライン曲線を計算する。これに限られず、ズレ量算出部34は、ΔX(-10)~ΔX(10)までの点に加えて原点を制御点に加えてスプライン曲線を計算してもよい。
【0175】
前記実施形態1及び2では、ズレ量算出部34、36は、1回転の範囲の起点である基準回転角度よりも小さい回転角度と、前記基準回転角度と同位相の回転角度よりも大きい回転角度とにおけるズレ量を算出する。これに限られず、ズレ量算出部は、前記1回転の範囲の起点である基準回転角度よりも小さい回転角度の範囲だけでズレ量を算出してもよい。また、前記基準回転角度と同位相の回転角度よりも大きい回転角度の範囲だけでズレ量を算出してもよい。また、基準回転角度は0°でなくてもよい。
【0176】
前記各実施形態では、画像再構成部35、37、39は、第1投影データ群G1に含まれる投影データを補正する。これに限られず、画像再構成部は、被検体の断層画像の再構成に用いる座標を補正してもよい。
【0177】
前記各実施形態では、X線CT装置1~3は、0°~359°の回転角度の第1投影データ群G1の投影データを補正して、補正した投影データを用いて、被検体Wの断層画像の再構成を行う。これに限られず、X線CT装置は、1°~360°の回転角度の範囲の投影データを第1投影データ群としてもよい。
【0178】
前記実施形態1では、投影データ取得部32は、-10°の回転角度から、回転を1°刻みで、0°及び360°を経て、360°+10°=370°の回転角度まで行わせ、投影データを取得する。これに限られず、投影データ取得部は、-10°~-1°及び360°~370°の回転角度の範囲の解像度を、0°~359°の回転角度の範囲の解像度よりも小さくしてもよいし、大きくしてもよい。
【0179】
前記実施形態1及び2では、ズレ量算出部34、36が、推定したズレ量に基づいて、補正量を決定する。これに限られず、ズレ量算出部は、ズレ量が算出されている回転角度については、算出ズレ量に基づいて補正量を決定してもよい。
【0180】
前記実施形態2及び3では、ズレ量算出部36及びズレ量推定部38が、5つの算出ズレ量の点と、5つの算出ズレ量の点に対応するプロファイル曲線L1上の点との距離に基づく適合度fitnessを計算する。これに限られず、ズレ量算出部及びズレ量推定部別の手法によって、5つの算出ズレ量の点と、プロファイル曲線とのマッチングを行ってもよい。また、マッチングの基準となる算出ズレ量の点は5つより少なくても多くてもよい。
【0181】
前記実施形態2及び3では、ズレ量算出部36及びズレ量推定部38が、投影データの投影像にズレを生じさせる1種の変動因子として、X線照射の経過時間を用いる。これに限られず、ズレ量算出部及びズレ量推定部は、複数の変動因子を用いてズレ量を推定してもよい。また、ズレ量算出部及びズレ量推定部は、変動因子として、X線CT装置を稼働させるために供給される電圧及び電流、電源の状態、及び、ターゲットの位置変動のうち少なくとも1つを用いてもよい。電圧に関する変動因子としては、X線管に高い電圧が印加されているかどうかも挙げられる。例えば、過去数年間の間で、高電圧領域の使用比率も電圧に関する変動因子である。また、電流に関する変動因子としては、X線管に大きな電流が流されているかどうかも挙げられる。例えば、過去数年間の間における電流分布も電圧に関する変動因子である。
【0182】
前記実施形態2の変形例では、ズレ量算出部36は、2回の撮影にわたって取得された投影データについて算出された算出ズレ量に基づきフィッティングを行う。これに限られず、また、撮影と撮影との間においてX線管によるX線の照射を止めなければ、ズレ量算出部は、3回以上の撮影にわたって取得された投影データについて算出された算出ズレ量に基づきフィッティングを行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0183】
本発明は、X線照射によって試料の断層像を得るX線CT装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0184】
1、2、3 X線CT装置
11 X線発生器(X線源)
12 検出器
13 回転台
14 回転駆動部
15 操作部
16 表示部
20 記憶部
21 投影データ記憶部
22 ズレ量データ記憶部
30 制御部
32 投影データ取得部
34、36 ズレ量算出部
35、37、39 画像再構成部
38 ズレ量推定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10