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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031285
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】土壌の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/02 20060101AFI20240229BHJP
   B09C 1/08 20060101ALI20240229BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20240229BHJP
   C11D 1/02 20060101ALI20240229BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20240229BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20240229BHJP
   C11D 3/39 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B09C1/02 ZAB
B09C1/08
C11D3/37
C11D1/02
C11D1/72
C09K3/00 S
C11D3/39
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134744
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】下田 政朗
(72)【発明者】
【氏名】島田 聡之
【テーマコード(参考)】
4D004
4H003
【Fターム(参考)】
4D004AA41
4D004AB02
4D004AB03
4D004AB05
4D004AC07
4D004CA13
4D004CA34
4D004CA40
4D004CC03
4D004CC05
4D004CC12
4D004CC15
4D004DA03
4D004DA10
4H003AB27
4H003AC08
4H003BA12
4H003DA20
4H003DB01
4H003DC02
4H003EA20
4H003EB36
4H003ED02
4H003FA04
(57)【要約】
【課題】優れた洗浄性を有し、環境負荷が少ない土壌の洗浄方法を提供する。
【解決手段】(A)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が8以上20以下であり、オキシアルキレンの平均付加モル数が3以上20以下のポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテルと、(B)過硫酸塩と、水とを含有する土壌洗浄剤組成物と、土壌とを接触させる、土壌の洗浄方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が8以上20以下であり、オキシアルキレンの平均付加モル数が3以上20以下のポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル〔以下、(A)成分という〕と、(B)過硫酸塩〔以下、(B)成分という〕と、水とを含有する土壌洗浄剤組成物と、土壌とを接触させる、土壌の洗浄方法。
【請求項2】
土壌と土壌洗浄剤組成物を混合した混合物を撹拌混合する、請求項1に記載の土壌の洗浄方法。
【請求項3】
(A)成分の含有量と(B)成分の含有量の質量比(A)/(B)が、10/90以上90/10以下である、請求項1又は2に記載の土壌の洗浄方法。
【請求項4】
土壌洗浄剤組成物は、(A)成分を、0.01質量%以上0.5質量%以下含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の土壌の洗浄方法。
【請求項5】
土壌洗浄剤組成物は、(B)成分を、0.01質量%以上1.0質量%以下含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の土壌の洗浄方法。
【請求項6】
更に(C)重量平均分子量3,000以上1,000,000以下のノニオン性高分子化合物〔ただし、(A)成分を除く〕〔以下、(C)成分という〕を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の土壌の洗浄方法。
【請求項7】
(C)成分は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマーから選ばれる1種以上である、請求項6に記載の土壌の洗浄方法。
【請求項8】
(A)成分の含有量と(C)成分の含有量の質量比(A)/(C)が、30/70以上99/1以下である、請求項6又は7に記載の土壌の洗浄方法。
【請求項9】
更に(D)アニオン性界面活性剤を含有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の土壌の洗浄方法。
【請求項10】
前記土壌と土壌洗浄剤組成物とを接触させることと、土壌と土壌洗浄剤組成物の混合物から土壌洗浄剤組成物の一部又は全部を除去すること、を行う土壌の洗浄を2回以上行う、請求項1~9のいずれか1項に記載の土壌の洗浄方法。
【請求項11】
土壌は、石油系化合物、揮発性有機化合物及び重金属から選ばれる1以上で汚染された土壌である、請求項1~10のいずれか1項に記載の土壌の洗浄方法。
【請求項12】
(A)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が8以上20以下であり、オキシアルキレンの平均付加モル数が3以上20以下のポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテルと、(B)過硫酸塩と、水とを含有する、土壌洗浄剤組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の土壌洗浄剤組成物を製造する土壌洗浄剤組成物製造用キットであって、
(A)成分を含有する剤と、(B)成分を含有する剤とを、相互に混合されない状態で含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌の洗浄方法、土壌洗浄剤組成物及び土壌洗浄剤組成物製造用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業廃棄物の不法投棄、工場における廃棄物処理、最終処分場からの有害物質漏出事故による土壌汚染そして石油コンビナート、ガソリンスタンドや化学工場などの敷地・跡地では、種々の油類の漏出事故や長期にわたる漏出により、様々な場面で深刻な土壌汚染にみまわれるケースが多発している。
【0003】
従来、このような汚染土壌の修復方法には、掘削後の焼却処理、固化・固定化、囲い込み処理、バイオレメディエーション、汚染物質の分解除去法などの技術が用いられてきた。
また、汚染された土壌を土壌洗浄剤組成物で洗浄する技術や、フェントン反応を用いて、土壌中の有機化合物などを分解除去する技術が知られている。
【0004】
特許文献1には、有害有機化合物で汚染された土壌又は地下水に過硫酸塩を添加する、土壌又は地下水の浄化処理方法が開示されている。
特許文献2には、(A)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が10以上18以下であり、エチレンオキシドの平均付加モル数が3以上10以下のポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテルと、(B)分子量200以上1000以下の陰イオン界面活性剤と、水とを所定の割合で含有する、石油系化合物により汚染された土壌を洗浄する、土壌用洗浄剤組成物が開示されている。
特許文献3には、硫酸還元菌が存在する汚染土壌に、汚染土壌の温度より高温で過硫酸塩を含有する水を、汚染土壌に設けられた注入井戸から注入し、汚染土壌に設けられた揚水井戸から揚水する、土壌浄化方法が開示されている。
特許文献4には、アルキルベンゼンスルホン酸塩を含有する界面活性剤、Fe2+の発生源及び過酸化水素を土壌に添加し、Fe2+と過酸化水素水とのフェントン反応により生じる水酸ラジカルによって油分を分解する酸化分解工程を備える、土壌浄化方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-136961号公報
【特許文献2】特開2022-7451号公報
【特許文献3】特開2020-93226号公報
【特許文献4】特開2009-148702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
土壌の洗浄では、土壌の優れた洗浄性だけでなく、より環境への影響が低減された土壌の洗浄方法が求められている。
本発明は、優れた洗浄性を有し、環境負荷が少ない土壌の洗浄方法、土壌洗浄剤組成物及び土壌洗浄剤組成物製造用キットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(A)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が8以上20以下であり、オキシアルキレンの平均付加モル数が3以上20以下のポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル〔以下、(A)成分という〕と、(B)過硫酸塩〔以下、(B)成分という〕と、水とを含有する土壌洗浄剤組成物と、土壌とを接触させる、土壌の洗浄方法に関する。
【0008】
また、本発明は、(A)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が8以上20以下であり、オキシアルキレンの平均付加モル数が3以上20以下のポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテルと、(B)過硫酸塩と、水とを含有する、土壌洗浄剤組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、上記の土壌洗浄剤組成物を製造する土壌洗浄剤組成物製造用キットであって、(A)成分を含有する剤と、(B)成分を含有する剤とを、相互に混合されない状態で含む、キットに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた洗浄性を有し、環境負荷が少ない土壌の洗浄方法、土壌洗浄剤組成物及び土壌洗浄剤組成物製造用キットが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の土壌の洗浄方法が、汚染土壌の洗浄力に優れる理由は必ずしも定かではないが以下のように推察される。
本発明の土壌の洗浄方法では、(A)成分である界面活性剤と(B)成分である過硫酸塩とを併用することで、(A)成分が(B)成分の土壌への浸透を助けるとともに、(B)成分が洗浄助剤(ビルダー)としての役目を果たし、土壌中の汚れ成分が(A)成分によって洗浄されやすい成分に改質されたものと推察される。これにより、本発明の土壌の洗浄方法は、(A)成分、(B)成分をそれぞれ単独で用いた場合よりも、土壌の洗浄性が向上すると推察される。
また、(B)成分は、土壌を洗浄した後、硫酸塩となるので、環境に対する負荷が低減される。また、(B)成分の水溶液は、弱酸性~中性のため、重金属の溶出を抑制しながら土壌を洗浄することができる。
そして、(A)成分と(B)成分を併用することで、(A)成分の添加量を少なくした場合でも、優れた洗浄力が得られるため、土壌の洗浄後の洗浄廃水処理の負担が低減される。
なお、本発明の土壌の洗浄方法及び土壌洗浄剤組成物は、上記の作用機構になんら限定されるものではない。
【0012】
本発明の土壌の洗浄方法は、(A)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が8以上20以下であり、オキシアルキレンの平均付加モル数が3以上20以下のポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル〔以下、(A)成分という〕と、(B)過硫酸塩〔以下、(B)成分という〕と、水とを含有する土壌洗浄剤組成物と、土壌とを接触させる、土壌の洗浄方法に関する。
【0013】
<土壌洗浄剤組成物>
まず、本発明の土壌の洗浄方法に用いられる土壌洗浄剤組成物について、詳細に説明する。
本発明の土壌洗浄剤組成物は、(A)成分、(B)成分及び水を含有する。
本発明の土壌洗浄剤組成物は、石油系化合物、揮発性有機化合物及び重金属から選ばれる1以上で汚染された土壌を洗浄する、石油系化合物、揮発性有機化合物及び重金属から選ばれる1以上で汚染された土壌用洗浄剤組成物であってよく、石油系化合物により汚染された土壌を洗浄する石油系化合物で汚染された土壌用洗浄剤組成物であってよい。
【0014】
<(A)成分>
(A)成分は、ポリオキシアルキレンモノアルキル又はアルケニルエーテルである。(A)成分としては、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が8以上20以下であり、オキシアルキレンの平均付加モル数が3以上20以下のポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテルが挙げられる。
【0015】
(A)成分のポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテルのアルキル基又はアルケニル基の炭素数は、(B)成分の土壌への浸透性の観点から、8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、低添加量での洗浄力の観点から、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下である。
【0016】
(A)成分のポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテルのオキシアルキレンの平均付加モル数は、洗浄水への溶解性の観点から、3以上、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、そして、低添加量での洗浄力の観点から、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下である。
オキシアルキレンは、洗浄水への溶解性の観点から、好ましくはオキシエチレン及びオキシプロピレンから選ばれる1種以上であり、より好ましくはオキシエチレンである。
【0017】
(A)成分は、下記一般式(a1)で表される化合物から選ばれる1種以上を挙げることができる。
1aO[(CO)/(CO)]H (a1)
〔式中、R1aは炭素数8以上20以下の炭化水素基を示す。l、mは平均付加モル数を示し、lは3以上20以下となる数を示し、mは0以上10以下となる数を示し、l+mは3以上20以下である。“/”はオキシエチレン基及びオキシプロピレン基が、順序に関係なく、ランダム又はブロックのいずれに付加したものであってもよいことを示す。〕
【0018】
上記一般式(a1)中のR1aの炭素数は、(B)成分の土壌への浸透性の観点から、8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上であり、そして、低添加量での洗浄力の観点から、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下である。
1aは、洗浄力の観点から、好ましくはアルキル基又はアルケニル基であり、より好ましくはアルキル基である。
アルキル基としては、具体的には、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種ドデシル基(ラウリル基)、各種トリデシル基、各種テトラデシル基、各種ペンタデシル基、各種ヘキサデシル基、各種ヘプタデシル基、各種オクタデシル基を挙げることができる。
アルケニル基としては、各種オクタニル基、各種ノナニル基、各種デカニル基、各種ウンデカニル基、各種ドデカニル基、各種トリデカニル基、各種テトラデカニル基、各種ペンタデカニル基、各種ヘキサデカニル基、各種ヘプタデカニル基、各種オクタデカニル基(例えば、オレイル基、リノール基)を挙げることができる。なお、「各種」とは、n-、sec-、tert-、iso-を含む各種異性体を意味する。
【0019】
上記一般式(a1)中のl、mは、洗浄水への溶解性の観点から、l+mが、3以上、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、そして、低添加量での洗浄力の観点から、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下である。
また、上記一般式(a1)中のlは、保存安定性の観点から、3以上、好ましくは5以上、そして、同様の観点から、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下である。
また、上記一般式(a1)中のmは、保存安定性の観点から、0以上、好ましくは1以上、そして、同様の観点から、10以下、より好ましくは5以下である。
【0020】
(A)成分は、アルキル基の炭素数が8以上、好ましくは10以上、そして、20以下、好ましくは18以下であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が、3以上、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、そして、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下のポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
すなわち、(A)成分は、上記一般式(a1)において、R1aが炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、20以下、好ましくは18以下のアルキル基であり、lが、3以上、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、そして、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下であり、mが0の化合物が好ましい。
【0021】
<(B)成分>
(B)成分は、過硫酸塩である。(B)成分の過硫酸塩としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸アルカリ金属塩、過硫酸アルカリ土類金属塩が挙げられ、入手容易性、経済性の観点から、過硫酸アルカリ金属塩が好ましく、過硫酸ナトリウムがより好ましい。
【0022】
本発明の土壌洗浄剤組成物は、水を含有する。水は、水道水、地下水、河川水、湖沼水、井戸水などを使用することができる。水は、組成物中、(A)成分、(B)成分及び下記の任意成分などを除いた残部であってよく、例えば、組成物中の水の含有量は、90質量%以上99.9質量%以下である。
【0023】
<組成、任意成分等>
本発明の土壌洗浄剤組成物、すなわち、土壌洗浄時に土壌に接触させる土壌洗浄剤組成物は、(A)成分を、(B)成分の土壌への浸透性の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、そして、洗浄廃水処理の観点から、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下含有する。
【0024】
本発明の土壌洗浄剤組成物、すなわち、土壌洗浄時に土壌に接触させる土壌洗浄剤組成物は、(B)成分を、洗浄助剤(ビルダー)の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、そして、環境に対する負荷や経済性の観点から、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下含有する。
【0025】
本発明の土壌洗浄剤組成物における、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量の質量比(A)/(B)は、(B)成分の土壌への浸透性の観点から、好ましくは10/90以上、より好ましくは15/85以上、更に好ましくは20/80以上、そして、洗浄力の観点から、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは60/40以下である。
【0026】
<(C)成分>
本発明の土壌洗浄剤組成物は、任意に(C)重量平均分子量が3,000以上1,000,000以下のノニオン性高分子化合物〔但し、(A)成分を除く〕〔以下、(C)成分という〕を含有することができる。
【0027】
(C)成分は、例えば、下記一般式(c1)で表される化合物が挙げられる。
【0028】
【化1】
【0029】
〔式中、Xは、水酸基、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基又は>N-CH-CH-N<で表される基である。AOは、炭素数2以上3以下のオキシアルキレン基から選択される1種以上のオキシアルキレン基である。nは、平均付加モル数であり20以上23,000以下である。sは、Xに結合する(AO)の数であり、1以上、Xの価数以下の数である。AOが、2種以上のオキシアルキレン基であるとき、AOは、ランダム結合でもブロック結合でもよい。〕
【0030】
一般式(c1)中、AOは、好ましくは炭素数2以上3以下のオキシアルキレン基から選択される1種以上のオキシアルキレン基である。nは、好ましくは50以上、より好ましくは70以上、更に好ましくは100以上、そして、23,000以下、好ましくは20,000以下、より好ましくは15,000以下、更に好ましくは5,000以下、より更に好ましくは1,000以下である。sは、1以上、Xの価数以下であり、より好ましくはXの価数である。具体的に説明すると、Xが水酸基(価数1)の場合、sは1である。また、Xが、炭素数2以上6以下のアルキレン基(価数2)の場合、sは1以上2以下、好ましくは2であり、Xが炭素数1以上6以下のアルコキシ基(価数1)の場合、sは1であり、Xが>N-CH-CH-N<で表される基(価数4)である場合、sは1以上4以下、好ましくは4である。
【0031】
一般式(c1)中のXが水酸基である(C)成分としては、下記一般式(c2)で表される化合物が挙げられる。一般式(c2)で表される化合物は、上記一般式(c1)でXが水酸基でありsが1の化合物である。一般式(c2)中、AOやn等の好ましい態様は、一般式(c1)の場合と同じである。
【0032】
【化2】
【0033】
〔式中、AOは、炭素数2以上3以下のオキシアルキレン基から選択される1種以上のオキシアルキレン基である。nは、平均付加モル数であり20以上23,000以下である。AOが、2種以上のオキシアルキレン基であるとき、AOは、ランダム結合でもブロック結合でもよい。〕
【0034】
一般式(c1)中のXが水酸基である(C)成分としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマーから選択される1種以上のノニオン性高分子が挙げられ、洗浄性向上及び一液安定性の観点から、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーから選択される1種以上のノニオン性高分子化合物が好ましく、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーから選択される1種以上のノニオン性高分子化合物がより好ましい。
【0035】
一般式(c1)中のXが炭素数1以上6以下のアルコキシ基である(C)成分としては、例えば、メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、ブトキシポリエチレングリコール、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0036】
一般式(c1)中のXが>N-CH-CH-N<で表される基である(C)成分としては、例えば、エチレンジアミンのポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマーが挙げられ、このような(C)成分は、例えば、アデカプルロニックTR(登録商標)(例えば、TR-701、TR-704)の商品名で株式会社ADEKAから市販されている。
【0037】
(C)成分としては、ポリオキシエチレン基(EO)、ポリオキシプロピレン基(PO)を有する化合物が好ましい。(C)成分が、EOとPOを含む場合は、EOとPOは、ランダム結合であっても、ブロック結合であってもよく、ブロック結合が好ましい。このような化合物としては、EO-PO共重合体、EO-PO-EO共重合体や、PO-EO-PO共重合体が挙げられる。
【0038】
(C)成分の重量平均分子量は、土壌への吸着性の観点から、3,000以上、好ましくは5,000以上、より好ましくは8,000以上、そして、一液安定性の観点から、1,000,000以下、好ましくは750,000以下、より好ましくは600,000以下、更に好ましくは100,000以下である。(C)成分の重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフィーを使用し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定できる。GPCの測定条件を以下に示す。
【0039】
*GPC条件
装置:GPC(HLC-8320GPC)東ソー株式会社製
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー株式会社製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CHCN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算(単分散のポリエチレングリコール:分子量250,000、145,000、87,500、46,000、24,000)
【0040】
本発明の土壌洗浄剤組成物、すなわち、土壌洗浄時に土壌に接触させる土壌洗浄剤組成物は、(C)成分を、洗浄力の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、更に好ましくは0.03質量%以上、そして、洗浄廃水処理の観点から、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下含有することができる。
【0041】
本発明の土壌洗浄剤組成物が(C)成分を含む場合、本発明の土壌洗浄剤組成物における(A)成分の含有量と(C)成分の含有量の質量比(A)/(C)は、洗浄力の観点から、好ましくは30/70以上、より好ましくは40/60以上、更に好ましくは50/50以上、そして、(A)成分の土壌への吸着を抑制する観点から、好ましくは99/1以下、より好ましくは95/5以下、更に好ましくは90/10以下である。
【0042】
<(D)成分>
本発明の土壌洗浄剤組成物は、任意に(D)アニオン性界面活性剤〔以下、(D)成分という〕を含有することができる。
(D)成分としては、脂肪酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩及び燐酸エステル塩から選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。(D)成分は、分子量200以上1,000以下のアニオン性界面活性剤が好ましい。
【0043】
脂肪酸塩は、脂肪酸の炭素数が好ましくは10以上18以下の化合物が挙げられる。脂肪酸塩の具体例としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びこれらの混合物のアルカリ金属塩、有機アミン塩が挙げられる。
【0044】
硫酸エステル塩としては、炭素数10以上20以下のアルキル基又はアルケニル基を有する硫酸エステルの塩が挙げられる。硫酸エステル塩の具体例としては、炭素数10以上20以下のアルキル基又はアルケニル基を有する硫酸エステル塩(AS)、ポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸エステル塩(AES)(例えば、炭素数2以上4以下のオキシアルキレンの平均付加モル数が0.5モル以上10モル以下であり、炭素数10以上20以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有する、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル塩)、炭素数10以上20以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有するポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ひまし油硫酸エステル塩が挙げられる。
【0045】
スルホン酸塩の具体例としては、炭素数10以上20以下のアルカンスルホン酸塩(SAS)、炭素数8以上18以下のアルキル基を有する直鎖又は分岐鎖のアルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS或いはABS)、炭素数10以上20以下のα-オレフィンスルホン酸塩(AOS)、ジもしくは、モノアルキルスルホコハク酸塩(例えば、ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(AOT))、炭素数8以上20以下の飽和又は不飽和α-スルホ脂肪酸又はそのメチル、エチルもしくはプロピルエステル塩が挙げられる。
【0046】
燐酸エステル塩としては、炭素数10以上20以下のアルキル基又はアルケニル基を有する燐酸エステルの塩が挙げられる。燐酸エステル塩の具体例としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル燐酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩、長鎖アルキル燐酸塩が挙げられる。燐酸エステル塩としては、例えば、モノエステル体、ジエステル体、モノ体とジ体の任意の混合物(例えば、セスキエステル体)を用いることができる。
【0047】
(D)成分は、(B)成分の浸透促進の観点から、硫酸エステル塩(AS)、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル塩(AES)、及びアルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)から選ばれる1種以上のアニオン性界面活性剤が好ましい。
(D)成分は、硫酸エステル塩(AS)、及びポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル塩(AES)から選ばれる1種以上のアニオン性界面活性剤がより好ましい。
【0048】
(D)成分は、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、及びアルキルベンゼンスルホン酸塩から選ばれる1種以上のアニオン性界面活性剤であって、分子量200以上1,000以下のアニオン性界面活性剤が好ましく、アルキル硫酸エステル塩、及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩から選ばれる1種以上のアニオン性界面活性剤であって、分子量200以上1,000以下のアニオン性界面活性剤がより好ましい。
【0049】
アルキル硫酸エステル塩は、洗浄性向上の観点から、アルキル基の炭素数が10以上18以下であるアルキル硫酸エステル塩が好ましい。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩は、洗浄性向上の観点から、アルキル基の炭素数が10以上18以下であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が0.5以上5.0以下のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましい。
アルキルベンゼンスルホン酸は、洗浄性向上の観点から、アルキル基の炭素数が10以上14以下であるアルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましい。
【0050】
(D)成分のアニオン性界面活性剤の塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩などが挙げられる。(D)成分のアニオン性界面活性剤の塩は、一液安定性の観点から、アルカリ金属塩及びアルカノールアミン塩から選ばれる塩が好ましく、ナトリウム塩又はアルカノールアミン塩がより好ましい。アルカノールアミン塩は、炭素数1以上3以下のアルカノール基を1以上3以下有するアルカノールアミンの塩が好ましい。
【0051】
本発明の土壌洗浄剤組成物は、(D)成分を、洗浄性向上の観点から、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.02質量%以上、そして、泡立ち抑制の観点から、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下含有することができる。
【0052】
本発明の土壌洗浄剤組成物が(D)成分を含む場合、本発明の土壌洗浄剤組成物中、(A)成分の含有量と(D)成分の含有量の質量比(A)/(D)は、洗浄力の観点から、好ましくは50/50以上、より好ましくは60/40以上、更に好ましくは70/30以上、そして、製品安定性の観点から、好ましくは99/1以下、より好ましくは98/2以下、更に好ましくは95/5以下である。
【0053】
<その他の成分>
本発明の土壌洗浄剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、その他の任意成分を、目的に応じて適宜含有することができる。例えば、本発明の土壌洗浄剤組成物は、ゲル化防止剤、増粘剤、香料、染料、顔料、殺菌剤、防腐剤、pH調整剤、pH緩衝剤、マスキング剤などの成分を含有することができる。
【0054】
本発明の土壌洗浄剤組成物は、石油系化合物、揮発性有機化合物及び重金属から選ばれる1以上で汚染された土壌を洗浄することができる。すなわち、本発明は、土壌中の、石油系化合物のような油性汚れ、揮発性有機化合物及び重金属を除去することができる。石油系化合物は、例えば、石油系炭化水素が挙げられる。石油系化合物は、例えば、ガソリン、灯油、軽油、重油、機械油などであってよい。揮発性有機化合物は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンや揮発性有機塩素化合物であるトリクロロエチレン、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、四塩化炭素などであってよい。重金属は、例えば、鉛、六価クロム、カドミウム、砒素、水銀及びその化合物などであってよい。
【0055】
本発明の土壌洗浄剤組成物は、(A)成分と、(B)成分と、水とを配合してなり、石油系化合物、揮発性有機化合物及び重金属から選ばれる1以上で汚染された土壌を洗浄する、土壌洗浄剤組成物であってよい。前記した好ましい態様はこの土壌洗浄剤組成物に適宜適用できる。また、前記した各成分の含有量は、配合量に置き換えてこの土壌洗浄剤組成物に適用できる。
【0056】
<土壌洗浄剤組成物製造用キット>
本発明は、上記本発明の土壌洗浄剤組成物を製造する土壌洗浄剤組成物製造用キットであって、
(A)成分を含有する剤と、(B)成分を含有する剤とを、相互に混合されない状態で含む、キットを提供する。
【0057】
本発明のキットの例としては、(A)成分を含み(B)成分を含まない剤と、(B)成分を含み(A)成分を含まない剤とから構成されるキットが挙げられる。
本発明のキットでは、界面活性剤である(A)成分と、酸化能を有する(B)成分は分離して保存、供給することが化合物安定性の観点から好ましい。
(A)成分、(B)成分、及び(C)成分や(D)成分などの任意成分の具体例及び好ましい例などは、本発明の土壌洗浄剤組成物と同じである。本発明の土壌洗浄剤組成物で述べた事項は、本発明のキットに適宜適用することができる。
【0058】
本発明のキットを構成する各剤において、(A)成分及び(B)成分の含有量は、例えば、前記範囲の含有量や質量比でこれらの成分を含有する本発明の土壌洗浄剤組成物が調製できるような量であってよい。
【0059】
本発明のキットを構成する剤は、それぞれ任意に(C)成分、(D)成分及びその他の任意成分を含むことができる。これらの好ましい態様は、本発明の土壌洗浄剤組成物と同じである。(C)成分や(D)成分は、それぞれ(A)成分を含有する剤や(B)成分を含有する剤と異なる剤とすることもできるが、(C)成分及び(D)成分は、(A)成分を含み(B)成分を含まない剤に含むことが好ましい。
【0060】
(A)成分、(B)成分、任意に(C)成分、任意に(D)成分から選ばれる成分を含む複数の剤は、土壌の洗浄の際に混合され、希釈せず又は水で希釈されて、所定の土壌洗浄剤組成物が調製される。
本発明の土壌洗浄剤組成物製造用キットは、本発明の土壌洗浄剤組成物の調製に好適に用いられる。
【0061】
(A)成分を含む剤は、(A)成分を、3質量%以上、更に5質量%以上、更に25質量%以上、そして、100質量%以下、更に90質量%以下含有することが好ましく、100質量%含有してもよい。
また、(B)成分を含む剤は、(B)成分を、5質量%以上、更に10質量%以上、更に20質量%以上、そして、100質量%以下、更に90質量%以下含有することが好ましく、100質量%含有してもよい。
また、(C)成分を含む剤は、(C)成分を、5質量%以上、更に10質量%以上、更に20質量%以上、そして、100質量%以下、更に90質量%以下含有することが好ましく、100質量%含有してもよい。
また、(D)成分を含む剤は、(D)成分を、5質量%以上、更に10質量%以上、更に20質量%以上、そして、100質量%以下、更に90質量%以下含有することが好ましく、100質量%含有してもよい。
【0062】
<土壌の洗浄方法>
本発明の土壌の洗浄方法は、(A)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が8以上20以下であり、オキシアルキレンの平均付加モル数が3以上20以下のポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテルと、(B)過硫酸塩と、水とを含有する土壌洗浄剤組成物と、土壌と、を接触させる、土壌の洗浄方法である。
本発明の土壌の洗浄方法は、土壌と、前記の(A)成分、(B)成分及び水を含有する土壌洗浄剤組成物と、を接触させた後、土壌と土壌洗浄剤組成物の混合物から土壌洗浄剤組成物の一部又は全部を除去すること、を行う土壌の洗浄を2回以上行う、土壌の洗浄方法であってよい。
【0063】
また、本発明の土壌の洗浄方法は、石油系化合物、揮発性有機化合物及び重金属から選ばれる1以上で汚染された掘削土壌と、前記の土壌洗浄剤組成物と、を接触させた後、土壌と土壌洗浄剤組成物の混合物から土壌洗浄剤組成物の一部又は全部を除去すること、を行う土壌の洗浄を2回以上行う、掘削土壌の洗浄方法であってよい。
本発明の土壌の洗浄方法には、本発明の土壌洗浄剤組成物で述べた事項を適宜適用することができる。例えば、本発明の土壌の洗浄方法における(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分等の具体例や好ましい態様などは、本発明の土壌洗浄剤組成物と同じである。本発明の土壌の洗浄方法には、本発明の土壌洗浄剤組成物及び/又は本発明の土壌洗浄剤組成物製造用キットを用いることができる。
【0064】
本発明の土壌の洗浄方法では、土壌と水とを混合し、これに(A)成分と(B)成分とを混合することができる。また、本発明の土壌の洗浄方法では、土壌と、(A)成分を含む剤と、(B)成分を含む剤と、水とを混合することができる。
【0065】
本発明の土壌の洗浄方法では、土壌と土壌洗浄剤組成物との混合物において、土壌洗浄剤組成物(液体)と土壌(固体)との割合(液体/固体の質量比:液固比)は、効率的な洗浄の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.8以上、そして、洗浄廃水を低減する観点から、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.2以下である。
【0066】
本発明の土壌の洗浄方法では、土壌と土壌洗浄剤組成物とを接触させる時間は、洗浄性の観点から、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、更に好ましくは15分以上、そして、作業効率の観点から、好ましくは24時間以下、より好ましくは16時間以下、更に好ましくは10時間以下である。
本発明の土壌の洗浄方法では、土壌と土壌洗浄剤組成物とを混合した混合物を撹拌混合してもよい。該混合物を撹拌混合する時間は、混合均一性の観点から、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、更に好ましくは15分以上、そして、撹拌機の消費エネルギーの観点から、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下、更に好ましくは30分以下である。
【0067】
本発明の土壌の洗浄方法では、(A)成分を、土壌と水との混合物に対して、(B)成分の土壌への浸透性の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、そして、洗浄廃水処理の観点から、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下用いる。
【0068】
本発明の土壌の洗浄方法では、(B)成分を、土壌と水との混合物に対して、洗浄助剤(ビルダー)の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、そして、環境に対する負荷や経済性の観点から、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下用いる。
【0069】
本発明の土壌の洗浄方法では、(A)成分と(B)成分を合計で、土壌と水との混合物に対して、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、そして、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下用いる。
【0070】
本発明の土壌の洗浄方法では、(C)成分を、土壌と水との混合物に対して、洗浄力の観点から、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.02質量%以上、より更に好ましくは0.03質量%以上、そして、洗浄廃水処理の観点から、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下用いることができる。
【0071】
本発明の土壌の洗浄方法では、(D)成分を、土壌と水との混合物に対して、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、そして、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下用いることができる。
【0072】
本発明の土壌の洗浄方法では、土壌の洗浄を、洗浄性の効率化の観点から、1回以上、好ましくは2回以上、より好ましくは3回以上、そして、回収水処理の観点から、好ましくは5回以下行う。
【0073】
土壌の洗浄を複数回行う場合、土壌と本発明の土壌洗浄剤組成物とを混合して土壌と本発明の土壌洗浄剤組成物とを接触させた後、該土壌と土壌洗浄剤組成物との混合物から土壌洗浄剤組成物の一部又は全部を除去する。本発明の土壌の洗浄方法では、土壌の洗浄を複数回行う場合、この土壌と土壌洗浄剤組成物とを混合する混合工程と、土壌と土壌洗浄剤組成物との混合物から土壌洗浄剤組成物の一部又は全部を除去する工程と、を行うことを1回の土壌の洗浄工程とし、この工程を2回以上繰り返す。
【0074】
本発明の土壌の洗浄方法では、土壌と土壌洗浄剤組成物との混合物から土壌洗浄剤組成物の一部又は全部を除去するために、土壌と土壌洗浄剤組成物の分離操作を行うことができる。分離操作としては、静置や遠心分離等により土壌を沈殿させ土壌洗浄剤組成物である上澄み液を除去する操作、メッシュ等を用いて濾過により土壌と土壌洗浄剤組成物を分離する操作、等が挙げられる。
【0075】
土壌と土壌洗浄剤組成物との混合物から除去される土壌洗浄剤組成物は、再汚染の観点から、土壌に混合された土壌洗浄剤組成物の、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、そして、脱水性の観点から、100質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
【0076】
本発明の土壌の洗浄方法では、洗浄した土壌のすすぎは行ってもよいし、行わなくてもよい。工程の簡略化などの観点では、本発明では、すすぎ工程を実施しなくてもよい。
【0077】
本発明の土壌の洗浄方法では、掘削土壌を、その土壌が存在する場所(現地)で洗浄してもよいし、原位置とは異なる場所(現地外)で洗浄してもよい。例えば、掘削土壌を、現地とは異なる場合に設けた洗浄設備で洗浄することができる。その際、例えば、現地から掘削により採取した土壌を、現地とは異なる場所に設けた洗浄設備に移送して洗浄することができる。洗浄設備は、現地の近くに設置することが好ましい。例えば、ある区域内の所定の場所(現地)で土壌を採取し、同じ区域内の採取場所とは別の場所に洗浄設備を設けることができる。このように、いわゆる現地プラントとして洗浄設備を設けて掘削土壌を洗浄することができる。
また、原位置で洗浄する場合は、例えば掘削した場所に土壌洗浄剤組成物を添加し、重機(バックホウやパワーショベルなど)で簡易的に撹拌洗浄することができる。この場合、地下水を土壌洗浄剤組成物の水の一部として利用することもできる。
【0078】
本発明の土壌の洗浄方法では、土壌と土壌洗浄剤組成物との混合物から土壌洗浄剤組成物の一部又は全部を除去するために、土壌を遠心分離することが好ましい。遠心分離の条件は、例えば、遠心加速度が100G以上1200G以下、処理時間が1分以上10分以下である。遠心分離により、土壌と液相との分離が促進され、土壌の回収、再利用(埋め戻し)が容易となる。
遠心分離機が無い場合は、自然沈降し、上澄み液だけを除去することができる。自然沈降させる時間は、10分以上が好ましく、より好ましくは15分以上、更に好ましくは30分以上静置することが好ましい。
【0079】
洗浄後の土壌は、採取した場所や別の場所に埋め戻して再利用することができる。
【実施例0080】
表1、2の土壌洗浄剤組成物の調製には、下記の成分を用いた。
<(A)成分>
・C12(EO)8:アルキル基の炭素数が12であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が8のポリオキシエチレンアルキルエーテル、花王株式会社製
・C12(EO)6:アルキル基の炭素数が12であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が6のポリオキシエチレンアルキルエーテル、花王株式会社製
・C12-13(EO)7:アルキル基の炭素数が12と13の混合物であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が7のポリオキシエチレンアルキルエーテル、花王株式会社製
<(B)成分>
・過硫酸Na:ペルオキソ二硫酸ナトリウム、富士フイルム和光純薬株式会社製
<(C)成分>
・PEG13000:ポリエチレングリコール、重量分子量13,000、三洋化成工業株式会社製
・プルロニックF-68:ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(重量平均分子量10,000)、製品名アデカプルロニックF-68、株式会社ADEKA製
<(D)成分>
・C12OSO3・TEA:アルキル基の炭素数が12であるアルキル硫酸エステルのトリエタノールアミン塩、花王株式会社製
【0081】
[洗浄性の評価方法]
(1)洗浄試験
(1-1)模擬汚染砂の調製
市販の川砂(あかぎ園芸製群馬県渡良瀬川川砂を水洗い・アク抜き・ふるい通し・選別した砂)を105℃で24時間以上乾燥し室温まで冷却した後、この川砂に軽油を0.5質量%(5000mg/kg)添加し、均一になるようにハンドミキサーで混合し、7日以上室温にて養生し、模擬汚染砂を調製した。
(1-2)洗浄性の評価
表の組成になるように土壌洗浄剤組成物50gを調製した。ただし、土壌洗浄剤組成物は40gの洗浄液Aと10gの洗浄液Bとから構成されるキットを調製し、洗浄時に洗浄液Aと洗浄液Bを混合して用いた。洗浄液Aは(A)成分と、(C)成分や(D)成分を含む場合は(C)成分及び/又は(D)成分とを含み、残部が水であり、洗浄液Bは(B)成分を含み、残部が水である。
100mlスクリュー管に、(1-1)で調製した模擬汚染砂を50g入れ、このスクリュー管に洗浄液Aを40g添加した後、更に洗浄液Bを10g添加し、転倒回転型撹拌器(ロータ・ミックス(型式:RKVSD)、東京硝子機械株式会社製)を用いて回転数20rpmで10分間撹拌洗浄した。
撹拌後30分間静置し、上澄液を抜き取り、洗浄1回のサンプルを得た。別途、上澄液を抜き取ったスクリュー管に再度、洗浄液Aと洗浄液Bを添加し、同様に撹拌→静置→上澄液抜き取りを繰り返し、洗浄2回及び洗浄3回のサンプルを得た。
上澄液を抜き取り後の汚染砂が入った100mlスクリュー管を40℃乾燥器で7日間乾燥した。
次に、前記サンプルの100mlスクリュー管に、50mlのジクロロメタンを添加し、ペンシルミキサーで1分間撹拌し、60分静置した。
静置後の上澄液を50mlスクリュー管に移した後、ジクロロメタンを揮発させた。揮発後、30mlのn-ヘキサンを添加し、スクリュー管内の油をn-ヘキサンに溶解後、このn-ヘキサンを0.8μmのフィルター(ADVANTEC製DISMIC25CS080AN)でろ過し、ろ液を精秤した30mlスクリュー管に移した。このろ液からn-ヘキサンを揮発後、40℃乾燥器で2時間乾燥し、抽出した油が残った30mlスクリュー管を精秤した。
この定量結果を模擬汚染砂50gに含まれる軽油の量として、模擬汚染砂に残存する軽油の量(全石油系炭化水素:Total Petroleum Hydrocarbon:TPH(mg/kg))を算出した。
土壌洗浄後に算出されたTPHの値が低いほど、土壌の洗浄性に優れた土壌洗浄剤組成物といえる。表1の比較例1-3では、界面活性剤である(A)成分の濃度を高くしたがTPHの値が低くはならなかった。この理由は土壌中の間隙水に含まれる界面活性剤がTPHとして算出されていることによると考えられる。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】