(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031288
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】多孔質炭素材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 38/00 20060101AFI20240229BHJP
C04B 35/524 20060101ALI20240229BHJP
C04B 38/06 20060101ALI20240229BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20240229BHJP
【FI】
C04B38/00 303Z
C04B35/524
C04B38/06 F
C01B32/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134747
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】396006181
【氏名又は名称】ウエノテックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 光陽
(72)【発明者】
【氏名】小林 幸平
(72)【発明者】
【氏名】小林 高臣
(72)【発明者】
【氏名】太田 道也
【テーマコード(参考)】
4G019
4G146
【Fターム(参考)】
4G019FA11
4G019FA15
4G146AA01
4G146AA19
4G146AB01
4G146AB05
4G146BA03
4G146BA13
4G146BA14
4G146BA18
4G146BB15
4G146BC23
4G146BC33B
(57)【要約】
【課題】タイヤを再資源化した多孔質炭素材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】タイヤを破砕して得たゴム粒子の表面を熱硬化性樹脂で被覆して樹脂被覆ゴム粒子を得る。樹脂被覆ゴム粒子を加熱および加圧して成形体を成形する。成形体を不活性雰囲気下で熱処理して、熱硬化性樹脂を炭化させて樹脂炭化材とし、ゴム粒子に含まれるカーボンブラックを残留させつつゴムをガス化し消失させて樹脂炭化材の内部に多数の空間を形成する。これにより、カーボンブラックを収容した空間を内部に有する多孔質炭素材を得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックを収容した空間を内部に有することを特徴とする多孔質炭素材。
【請求項2】
熱硬化性樹脂を炭化させた樹脂炭化材で構成されている、請求項1に記載の多孔質炭素材。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂が、フラン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、または、縮合多環多核芳香族系樹脂である、請求項2に記載の多孔質炭素材。
【請求項4】
タイヤを破砕して得たゴム粒子の表面を熱硬化性樹脂で被覆して樹脂被覆ゴム粒子とし、
前記樹脂被覆ゴム粒子を不活性雰囲気下で熱処理して、前記熱硬化性樹脂を炭化させて樹脂炭化材とし、ゴム粒子に含まれるカーボンブラックを残留させつつゴムをガス化し消失させて前記樹脂炭化材の内部に多数の空間を形成する、ことを特徴とする多孔質炭素材の製造方法。
【請求項5】
タイヤを破砕して得たゴム粒子の表面を熱硬化性樹脂で被覆して樹脂被覆ゴム粒子とし、
前記樹脂被覆ゴム粒子を加熱および加圧して成形体を成形し、
前記成形体を不活性雰囲気下で熱処理して、前記熱硬化性樹脂を炭化させて樹脂炭化材とし、ゴム粒子に含まれるカーボンブラックを残留させつつゴムをガス化し消失させて前記樹脂炭化材の内部に多数の空間を形成する、ことを特徴とする多孔質炭素材の製造方法。
【請求項6】
前記ゴム粒子の平均粒径が、1mmまたは10mmである、請求項4または請求項5に記載の多孔質炭素材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の空間を内部に有する多孔質炭素材、および、多孔質炭素材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本国内における廃タイヤの発生量は、年間100万トンを超える(2019年の廃タイヤの年間発生量は102万6,000トン、一般社団法人日本自動車タイヤ協会調べ)。廃タイヤは、例えば、特許文献1に開示されている破砕機などにより、細かく細断されてリサイクルに用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
廃タイヤのリサイクル率は90%以上ある。しかしながら、その半分以上が燃料として焼却される熱利用(サーマルリサイクル)である。廃タイヤにはカーボンブラックや硫黄などが含まれているため、廃タイヤを燃料として焼却すると、微小粒子状物質(PM2.5など)が発生したり、酸性雨の原因物質となり得る硫黄酸化物が発生したりして、生活環境に悪影響を及ぼすおそれがある。そのため、廃タイヤのリサイクルとして、新たな材料として蘇らせる再資源化(マテリアルリサイクル)が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、タイヤを再資源化した多孔質炭素材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る多孔質炭素材は、カーボンブラックを収容した空間を内部に有することを特徴とする。
【0007】
本発明において、多孔質炭素材は、熱硬化性樹脂を炭化させた樹脂炭化材で構成されていることが好ましい。
【0008】
本発明において、前記熱硬化性樹脂が、フラン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、または、縮合多環多核芳香族系樹脂である、ことが好ましい。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の他の一態様に係る多孔質炭素材の製造方法は、タイヤを破砕して得たゴム粒子の表面を熱硬化性樹脂で被覆して樹脂被覆ゴム粒子とし、前記樹脂被覆ゴム粒子を不活性雰囲気下で熱処理して、前記熱硬化性樹脂を炭化させて樹脂炭化材とし、ゴム粒子に含まれるカーボンブラックを残留させつつゴムをガス化し消失させて前記樹脂炭化材の内部に多数の空間を形成する、ことを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の他の一態様に係る多孔質炭素材の製造方法は、タイヤを破砕して得たゴム粒子の表面を熱硬化性樹脂で被覆して樹脂被覆ゴム粒子とし、前記樹脂被覆ゴム粒子を加熱および加圧して成形体を成形し、前記成形体を不活性雰囲気下で熱処理して、前記熱硬化性樹脂を炭化させて樹脂炭化材とし、ゴム粒子に含まれるカーボンブラックを残留させつつゴムをガス化し消失させて前記樹脂炭化材の内部に多数の空間を形成する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明において、前記ゴム粒子の平均粒径が、1mmまたは10mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、多孔質炭素材が、カーボンブラックを収容した多数の空間を内部に有している。このようにしたことから、多孔質炭素材は、断熱性を有する新規な材料として利用でき、タイヤの再資源化を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の多孔質炭素材の一実施形態に係る多孔質炭素板を説明する図である。
【
図2】
図1の多孔質炭素板の製造方法を説明する図である。
【
図3】タイヤを破砕して得たゴム粒子の電子顕微鏡画像である。
【
図4】COPNA樹脂で被覆したゴム粒子の電子顕微鏡画像である。
【
図5】COPNA樹脂被覆ゴム粒子とCOPNA樹脂との複合材成形板のデジタルカメラ画像である。
【
図6】COPNA樹脂被覆ゴム粒子を炭化処理して得た多孔質炭素粒子の電子顕微鏡写真である。
【
図7】COPNA樹脂被覆ゴム粒子とCOPNA樹脂との複合材成形板を炭化処理して得た多孔質炭素板のデジタルカメラ画像である。
【
図8】COPNA樹脂多孔質炭素板の断面の電子顕微鏡画像である。
【
図9】フラン樹脂で被覆したゴム粒子の電子顕微鏡画像である。
【
図10】フラン樹脂被覆ゴム粒子とフラン樹脂との複合材成形板のデジタルカメラ画像である。
【
図11】フラン樹脂被覆ゴム粒子を炭化処理して得た多孔質炭素粒子の電子顕微鏡写真である。
【
図12】フラン樹脂被覆ゴム粒子とフラン樹脂との複合材成形板を炭化処理して得た多孔質炭素板のデジタルカメラ画像である。
【
図13】フラン樹脂多孔質炭素板の断面の電子顕微鏡画像である。
【
図14】フェノール樹脂で被覆したゴム粒子の電子顕微鏡画像である。
【
図15】フェノール樹脂被覆ゴム粒子とフェノール樹脂との複合材成形板のデジタルカメラ画像である。
【
図16】フェノール樹脂被覆ゴム粒子を炭化処理して得た多孔質炭素粒子の電子顕微鏡写真である。
【
図17】フェノール樹脂被覆ゴム粒子とフェノール樹脂との複合材成形板を炭化処理して得た多孔質炭素板のデジタルカメラ画像である。
【
図18】フェノール樹脂多孔質炭素板の断面の電子顕微鏡画像である。
【
図19】エポキシ樹脂で被覆したゴム粒子の電子顕微鏡画像である。
【
図20】エポキシ樹脂被覆ゴム粒子とエポキシ樹脂との複合材成形板のデジタルカメラ画像である。
【
図21】エポキシ樹脂被覆ゴム粒子を炭化処理して得た多孔質炭素粒子の電子顕微鏡写真である。
【
図22】エポキシ樹脂被覆ゴム粒子とエポキシ樹脂との複合材成形板を炭化処理して得た多孔質炭素板のデジタルカメラ画像である。
【
図23】エポキシ樹脂多孔質炭素板の断面の電子顕微鏡画像である。
【
図24】ゴム粒子を炭化処理して得たゴム炭素粒子の電子顕微鏡写真である。
【
図25】ゴム粒子、樹脂被覆ゴム粒子、ゴム炭素粒子および多孔質炭素粒子のX線回折図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る多孔質炭素材について、
図1~
図3を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の多孔質炭素材の一実施形態に係る多孔質炭素板を説明する図である。
図1において、多孔質炭素板の一部を拡大してその構造を示している。
図2は、
図1の多孔質炭素板の製造方法を説明する図である。
図2Aは、ゴム粒子を模式的に示す。
図2Bは、樹脂被覆ゴム粒子を模式的に示す。
図2Cは、複合材成形板を模式的に示す。
図2Cにおいて、複合材成形板の一部を拡大してその構造を示している。
図3は、タイヤを破砕して得たゴム粒子の電子顕微鏡画像である。
図3Aは、平均粒径1mmのゴム粒子であり、
図3Bは、平均粒径10mmのゴム粒子である。
【0016】
図1に本発明の一実施形態に係る多孔質炭素材である多孔質炭素板1を示す。多孔質炭素板1は、矩形平板形状を有している。多孔質炭素板1は、熱硬化性樹脂を熱処理して炭化させた樹脂炭化材3で構成されている。多孔質炭素板1は、多数の空間5を内部に有している。空間5には、無定形のカーボンブラック6が収容されている。
【0017】
空間5は、多孔質炭素板1の作製に用いられたゴム粒子の径に応じた大きさを有している。ゴム粒子は、タイヤを破砕することにより得られる。ゴム粒子は、例えば、1mm、5mm、10mmなどの所定の粒径に揃えられたものが多孔質炭素板1の材料として用いられる。もちろん、ゴム粒子は、異なる粒径のものを含み、粒径が不揃いのものを用いてもよい。
【0018】
空間5は、多孔質炭素板1の前駆体であるゴム粒子と熱硬化性樹脂との複合材を熱処理した際に、ゴム粒子のゴムが消失することにより形成される。ゴム粒子に含まれるカーボンブラック6は消失することなく空間5内に残留する。
【0019】
多孔質炭素板1の製造方法について、
図1~
図3を参照して説明する。
【0020】
タイヤを破砕して粒径が1mm~10mm程度のゴム粒子10を得る(
図2A)。
図3にゴム粒子10の一例を示す。熱硬化性樹脂にゴム粒子10を加え、ゴム粒子10の表面に熱硬化性樹脂が十分に行き渡るように30分~1時間程度撹拌する。薬剤処理または加熱処理によってゴム粒子10の表面を覆う熱硬化性樹脂を硬化させて、被覆15を有するゴム粒子10(樹脂被覆ゴム粒子20)を得る(
図2B)。樹脂被覆ゴム粒子20をその被覆15と同種の熱硬化性樹脂25に加えて均一になるように混合し、樹脂被覆ゴム粒子20と熱硬化性樹脂との混合材を金型に入れて加圧成形処理を行い、複合材成形板30を得る(
図2C)。加圧成形処理において、30分~2時間程度経過する毎に、金型温度および混合材に加える荷重を段階的に高めていく。そして、複合材成形板30を不活性雰囲気下(例えば窒素中)で熱処理(炭化処理)する。炭化処理によって、熱硬化性樹脂を炭化させて樹脂炭化材3とし、ゴム粒子10に含まれるカーボンブラック6を残留させつつゴムをガス化し消失させる。このようにして、樹脂炭化材3の内部に多数の空間5が形成された多孔質炭素板1を作製する(
図1)。なお、多孔質炭素粒子を作製する場合には、上記加圧成形処理を省略して、樹脂被覆ゴム粒子20に対して炭化処理を行う。
【0021】
次に、本発明の実施例について、
図4~
図23を参照して説明する。各実施例において、平均粒径1mmのゴム粒子と、平均粒径10mmのゴム粒子と、を用いている。
【0022】
<実施例1:縮合多環多核芳香族系樹脂(COPNA樹脂)>
COPNA樹脂2.0gと酸触媒0.1gをクロロホルム20mlに溶解し、ゴム粒子0.6gを加えて、超音波発生機内で50分間程度撹拌した。減圧環境下でクロロホルムを除去した後、濃硫酸に3分間程度浸漬してゴム粒子の表面を覆う樹脂を硬化させた。次に、上記処理を行ったゴム粒子に対して、クロロホルムを順に16ml、12ml、4mlとして同じ処理を重ねて行い、ゴム粒子の表面がCOPNA樹脂で被覆された樹脂被覆ゴム粒子(COPNA樹脂被覆ゴム粒子)を得た。
図4にCOPNA樹脂被覆ゴム粒子の一例を示す。
図4Aは、平均粒径1mmのCOPNA樹脂被覆ゴム粒子であり、
図4Bは、平均粒径10mmのCOPNA樹脂被覆ゴム粒子である。
【0023】
COPNA樹脂被覆ゴム粒子1.0gと、ピレン系COPNA樹脂粉末2.0gと、酸触媒0.1gと、を均一になるように混合して混合材を得た。この混合材を、板形状に成形するための金型に入れた。そして、混合材に対して、加圧成形処理として、
金型温度100℃において0kgf/cm
2の荷重を2時間程度加え、
金型温度130℃において50kgf/cm
2の荷重を30分間程度加え、
金型温度130℃において100kgf/cm
2の荷重を30分間程度加え、
金型温度130℃において150kgf/cm
2の荷重を30分間程度加え、
金型温度130℃において200kgf/cm
2の荷重を30分間程度加え、
金型温度200℃において200kgf/cm
2の荷重を2時間程度加えて、
複合材成形板(COPNA樹脂複合材成形板)を得た。
図5にCOPNA樹脂複合材成形板の一例を示す。実施例1に係るCOPNA樹脂複合材成形板は、長さ30mm、幅15mm、厚さ6mmである。
【0024】
炭化処理として、COPNA樹脂被覆ゴム粒子およびCOPNA樹脂複合材成形板を電気炉に入れ、電気炉に窒素(N
2)気流を2時間程度導入して、電気炉内の気体を窒素に置換した。そして、電気炉内を1時間程度で200℃まで昇温し、そこから、200℃を1時間程度保持した。さらに、電気炉内を5時間程度で1000℃まで昇温し、そこから1000℃を1時間程度保持し、多孔質炭素材(COPNA樹脂多孔質炭素粒子、COPNA樹脂多孔質炭素板)を得た。COPNA樹脂多孔質炭素粒子は、平均粒径1mmのゴム粒子を用いたもの、および、平均粒径10mmのゴム粒子を用いたもの、を作製した。COPNA樹脂多孔質炭素板も、平均粒径1mmのゴム粒子を用いたもの、および、平均粒径10mmのゴム粒子を用いたもの、を作製した。実施例2~4についても同様である。
図6にCOPNA樹脂多孔質炭素粒子の一例を示す。
図6Aは、平均粒径1mmのCOPNA樹脂多孔質炭素粒子であり、
図6Bは、平均粒径10mmのCOPNA樹脂多孔質炭素粒子である。
図7にCOPNA樹脂多孔質炭素板の一例を示す。
図8にCOPNA樹脂多孔質炭素板の断面の一例を示す。
【0025】
<実施例2:フラン樹脂>
フラン樹脂2.0gとトリフェニルホスフィン0.1gとをメタノール5mlに溶解し、ゴム粒子0.6gを加えて、超音波発生機内で50分間程度撹拌した。減圧環境下でメタノールを除去した後、混酸0.1gを加えてゴム粒子の表面を覆う樹脂を硬化させた。次に、上記処理を行ったゴム粒子に対して、メタノールを3mlとして同じ処理を重ねて行い、ゴム粒子の表面がフラン樹脂で被覆された樹脂被覆ゴム粒子(フラン樹脂被覆ゴム粒子)を得た。
図9にフラン樹脂被覆ゴム粒子の一例を示す。
図9Aは、平均粒径1mmのフラン樹脂被覆ゴム粒子であり、
図9Bは、平均粒径10mmのフラン樹脂被覆ゴム粒子である。
【0026】
フラン樹脂被覆ゴム粒子1.0gとフラン樹脂2.0gとを超音波発生機内で撹拌し、混酸を加えてペースト状になるまで加熱して混合材を得た。この混合材を、板形状に成形するための金型に入れた。そして、混合材に対して、加圧成形処理として、
金型温度150℃において0kgf/cm
2の荷重を2時間程度加え、
金型温度180℃において50kgf/cm
2の荷重を30分間程度加え、
金型温度180℃において100kgf/cm
2の荷重を30分間程度加え、
金型温度180℃において150kgf/cm
2の荷重を30分間程度加え、
金型温度180℃において200kgf/cm
2の荷重を30分間程度加え、
金型温度200℃において200kgf/cm
2の荷重を2時間程度加えて、
複合材成形板(フラン樹脂複合材成形板)を得た。
図10にフラン樹脂複合材成形板の一例を示す。実施例2に係るフラン樹脂複合材成形板は、長さ30mm、幅15mm、厚さ5mmである。
【0027】
フラン樹脂被覆ゴム粒子およびフラン樹脂複合材成形板に対して、実施例1(COPNA樹脂)と同じ炭化処理を行い、多孔質炭素板(フラン樹脂多孔質炭素粒子、フラン樹脂多孔質炭素板)を得た。
図11にフラン樹脂多孔質炭素粒子の一例を示す。
図11Aは、平均粒径1mmのフラン樹脂多孔質炭素粒子であり、
図11Bは、平均粒径10mmのフラン樹脂多孔質炭素粒子である。
図12にフラン樹脂多孔質炭素板の一例を示す。
図13にフラン樹脂多孔質炭素板の断面の一例を示す。
【0028】
<実施例3:フェノール樹脂>
フェノール樹脂2.0gをメタノール10mlに溶解し、ゴム粒子0.6gを加えて、超音波発生機内で50分間程度撹拌した。その後、ろ過を行い加熱してゴム粒子の表面を覆う樹脂を硬化させた。次に、上記処理を行ったゴム粒子に対して、メタノールを順に5ml、3mlとして同じ処理を重ねて行い、ゴム粒子の表面がフェノール樹脂で被覆された樹脂被覆ゴム粒子(フェノール樹脂被覆ゴム粒子)を得た。
図14にフェノール樹脂被覆ゴム粒子の一例を示す。
図14Aは、平均粒径1mmのフェノール樹脂被覆ゴム粒子であり、
図14Bは、平均粒径10mmのフェノール樹脂被覆ゴム粒子である。
【0029】
フェノール樹脂被覆ゴム粒子1.0gとフェノール樹脂2.0gとを超音波発生機内で撹拌し、ペースト状になるまで加熱して混合材を得た。この混合材を、板形状に成形するための金型に入れた。そして、混合材に対して、実施例2(フラン樹脂)と同じ加圧成形処理を行い、複合材成形板(フェノール樹脂複合材成形板)を得た。
図15にフェノール樹脂複合材成形板の一例を示す。実施例3に係るフェノール樹脂複合材成形板は、長さ30mm、幅15mm、厚さ4mmである。
【0030】
フェノール樹脂被覆ゴム粒子およびフェノール樹脂複合材成形板に対して、実施例1(COPNA樹脂)と同じ炭化処理を行い、多孔質炭素板(フェノール樹脂多孔質炭素粒子、フェノール樹脂多孔質炭素板)を得た。
図16にフェノール樹脂多孔質炭素粒子の一例を示す。
図16Aは、平均粒径1mmのフェノール樹脂多孔質炭素粒子であり、
図16Bは、平均粒径10mmのフェノール樹脂多孔質炭素粒子である。
図17にフェノール樹脂多孔質炭素板の一例を示す。
図18にフェノール樹脂多孔質炭素板の断面の一例を示す。
【0031】
<実施例4:エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂2.0gと三フッ化ホウ素エチルアミン0.02gをアセトン6mlに溶解し、ゴム粒子0.6gを加えて、超音波発生機内で50分間程度撹拌した。減圧環境下でアセトンを除去した後、トルエンを加えて加熱してゴム粒子の表面を覆う樹脂を硬化させた。次に、上記処理を行ったゴム粒子に対して、アセトンを順に5ml、4mlとして同じ処理を重ねて行い、ゴム粒子の表面がエポキシ樹脂で被覆された樹脂被覆ゴム粒子(エポキシ樹脂被覆ゴム粒子)を得た。
図19にエポキシ樹脂被覆ゴム粒子の一例を示す。
図19Aは、平均粒径1mmのエポキシ樹脂被覆ゴム粒子であり、
図19Bは、平均粒径10mmのエポキシ樹脂被覆ゴム粒子である。
【0032】
エポキシ樹脂被覆ゴム粒子1.0gと、エポキシ樹脂2.0gと、三フッ化ホウ素エチルアミン0.02gと、を均一になるように混合して混合材を得た。この混合材を、板形状に成形するための金型に入れた。そして、混合材に対して、実施例2(フラン樹脂)と同じ加圧成形処理を行い、複合材成形板(エポキシ樹脂複合材成形板)を得た。
図20にエポキシ樹脂複合材成形板の一例を示す。実施例4に係るエポキシ樹脂複合材成形板は、長さ30mm、幅15mm、厚さ4mmである。
【0033】
エポキシ樹脂被覆ゴム粒子およびエポキシ樹脂複合材成形板に対して、実施例1(COPNA樹脂)と同じ炭化処理を行い、多孔質炭素板(エポキシ樹脂多孔質炭素粒子、エポキシ樹脂多孔質炭素板)を得た。
図21にエポキシ樹脂多孔質炭素粒子の一例を示す。
図21Aは、平均粒径1mmのエポキシ樹脂多孔質炭素粒子であり、
図21Bは、平均粒径10mmのエポキシ樹脂多孔質炭素粒子である。
図22にエポキシ樹脂多孔質炭素板の一例を示す。
図23にエポキシ樹脂多孔質炭素板の断面の一例を示す。
【0034】
<比較例1:市販の炭素板>
比較例1として、市販の炭素板(東京炭素工業社製 グラファイト平板(TTFP))を用いた。比較例1は、炭素99.9%以上のグラファイトCIP材(等方性黒鉛材)である。比較例1は、カサ比重が1.85であり、熱伝導率が110W/m・kである。比較例1は、平板形状を有しており、長さ100~200mm、幅100~200mm、厚さ5~20mmの範囲内の寸法である。比較例1は、上記寸法の範囲内であれば、カサ比重1.85、熱伝導率110W/m・k(またはこれらとほぼ同一の数値)になるものである。
【0035】
<検証1:形状の観察>
各実施例に係るゴム粒子、樹脂被覆ゴム粒子および多孔質炭素粒子(電子顕微鏡画像)、ならびに、多孔質炭素板(デジタルカメラ画像)について形状の観察を行った。
【0036】
タイヤを破砕して得たゴム粒子は、表面にせん断痕が見られる(
図3)。一方、各実施例の樹脂被覆ゴム粒子は、表面のせん断痕が消失している(
図4、
図9、
図14、
図19)。このことから、各実施例における処理によって、ゴム粒子の表面に樹脂被覆が形成されていることが確認できた。また、COPNA樹脂被覆ゴム粒子において、粒径の大きいものの被覆量が、粒径の小さいものの被覆量より多いことが確認できた。なお、COPNA樹脂被覆ゴム粒子よりも、フラン樹脂被覆ゴム粒子、フェノール樹脂被覆ゴム粒子およびエポキシ樹脂被覆ゴム粒子の方が、表面が滑らかであるが、これは樹脂溶液の粘性の違いによるものと考えられる。
【0037】
炭化処理によって得られた各実施例の多孔質炭素粒子は、粒子形状を維持している(
図6、
図11、
図16、
図21)。多孔質炭素粒子は、炭化処理前の樹脂被覆ゴム粒子と比べると、炭化処理前にはなかった凹凸が見られる。これは、ゴムや樹脂の熱分解に伴って発生したガスの放出の痕跡であると考えられる。また、粒径が大きい多孔質炭素粒子は、表面に亀裂が見られる。そのため、多孔質炭素粒子の材料であるゴム粒子は、10mmのものより1mmのもののほうが適していると考えられる。また、多孔質炭素粒子は、同一粒子について炭化処理前後を比較することはできないが、ゴム成分の熱分解によって収縮と軽量化が起きていると考えられる。なお、参考として、樹脂被覆のないゴム粒子について上述した実施例と同じ炭化処理を行ったもの(ゴム炭素粒子)を
図24に示す。
図24Aは、平均粒径1mmのゴム炭素粒子であり、
図24Bは、平均粒径10mmのゴム炭素粒子である。
【0038】
複合材成形板に炭化処理を行ったところ、COPNA樹脂複合材成形板、フラン樹脂複合材成形板およびフェノール樹脂複合材成形板については概ね平板形状の多孔質炭素板を得ることができた(
図7、
図12、
図17)。一方、エポキシ樹脂複合材成形板については、炭化処理後に形状を留めていなかった。そのため、所定形状を有する多孔質炭素体の材料として、COPNA樹脂、フラン樹脂およびフェノール樹脂が適していると考えられる。
【0039】
<検証2:X線回折(XRD)による観察>
タイヤを破砕して得たゴム粒子、COPNA樹脂被覆ゴム粒子(実施例1)、フラン樹脂被覆ゴム粒子(実施例2)、ゴム粒子を炭化処理して得たゴム炭素粒子、COPNA樹脂多孔質炭素粒子(実施例1)およびフラン樹脂多孔質炭素粒子(実施例2)について、X線回折による成分の同定を行った。各粒子は、平均粒径1mmのゴム粒子に基づくものである。結果を
図25に示す。
【0040】
炭化処理前の粒子(ゴム粒子、COPNA樹脂被覆ゴム粒子、フラン樹脂被覆ゴム粒子)では、ゴム由来成分を示す回折帯[E]が確認できるが、炭化処理後の粒子(ゴム炭素粒子、COPNA樹脂多孔質炭素粒子、フラン樹脂多孔質炭素粒子)では、回折帯[E]が確認されず、代わりに、20°~30°でのカーボンブラック由来の無定形炭素の回折帯[F]の強度が高くなったことが確認できる。これは、炭化処理によってゴム成分が熱分解されて消失したためと考えられる。また、COPNA樹脂被覆ゴム粒子の回折帯[E]および回折帯[F]は、ゴム粒子の回折帯[E]および回折帯[F]よりも強度が低い。これは、COPNA樹脂の親和性が高いため、COPNA樹脂のアモルファス性が相対的に強く出ているためと考えられる。また、フラン樹脂被覆ゴム粒子に関して、フラン樹脂はCOPNA樹脂ほど親和性が高くなく、フラン樹脂は、樹脂特有のアモルファス性により回折帯[E]および回折帯[F]が現れたため、これら回折帯[E]、[F]がゴム粒子における回折帯[E]、[F]の強度と同等になっていると考えられる。また、COPNA樹脂多孔質炭素粒子、フラン樹脂多孔質炭素粒子では40°~50°においてもカーボンブラック由来の無定形炭素の回折帯[F]が確認できる。これは、黒鉛でいうd(101)面に対応する。フラン樹脂多孔質炭素粒子において、硫化亜鉛の回折帯[B]が確認された。これは、フラン樹脂被覆ゴム粒子を炭化処理することにより、ゴム粒子中の硫黄と酸化亜鉛の酸素が置換反応を起こしたと考えられる。
【0041】
<検証3:熱伝導率の測定>
上記実施例1、2の多孔質炭素材および上記比較例1の炭素板について、熱伝導率を測定した。実施例1の多孔質炭素材は、平均粒径1mmのゴム粒子を用いて作製したCOPNA樹脂多孔質炭素板を用いた。実施例2の多孔質炭素材は、平均粒径1mmのゴム粒子を用いて作製したフラン樹脂多孔質炭素板を用いた。これら実施例1、2の多孔質炭素材について、レーザーフラッシュ法による熱拡散測定結果から熱伝導率を測定した。また、比較例1の炭素板についても同様に熱伝導率を測定した。測定結果を
図26に示す。
【0042】
図26に示す測定結果から明らかなように、実施例1および実施例2の多孔質炭素板は、比較例1の炭素板より熱伝導率が大幅に低い。このことから、実施例1および実施例2の多孔質炭素板は断熱材として非常に優れていることが確認できた。
【0043】
上記に本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1…多孔質炭素板
3…樹脂炭化材
5…空間
6…カーボンブラック
10…ゴム粒子
15…被覆
20…樹脂被覆ゴム粒子
30…複合材成形板