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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031291
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B41J2/165 505
B41J2/165 101
B41J2/165 205
B41J2/165 211
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134757
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】新井 章文
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EA27
2C056EC22
2C056EC24
2C056EC32
2C056EC36
2C056EC39
2C056EC41
2C056FA10
2C056JA04
2C056JA13
2C056JC06
2C056JC20
2C056KA01
(57)【要約】
【課題】加圧クリーニング後の残圧解除に要する時間を短くし、残圧解除の制御を容易に行う。
【解決手段】プリンタ10は、ノズル43を有するインクヘッド40と、ノズル43にインクを供給するインク供給機構50と、制御装置90とを備える。インク供給機構50は、インク容器51と、送液ポンプ53が設けられ、インク容器51とノズル43とを接続するインク流路52とを備える。制御装置90は、送液ポンプ53の少なくとも何れかを駆動させる加圧制御部93と、加圧制御部93の制御後、インクヘッド40にキャップ71が装着された状態で、加圧制御部93によって駆動された送液ポンプ53に対応したノズル43からインクを吸引し、かつ、加圧制御部93によって駆動されなかった送液ポンプ53に対応したノズル43からインクを吸引しないように、吸引ポンプ73の駆動を制御する残圧解除制御部97とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のインクを吐出する第1ノズルと、第2のインクを吐出する第2ノズルとを有するノズルが形成されたノズル面を有するインクヘッドと、
前記ノズルに向かってインクを供給するインク供給機構と、
前記ノズルを覆うように前記インクヘッドに装着可能なキャップと、前記インクヘッドに対して前記キャップを装着させたり離間させたりするキャップ移動機構と、前記キャップに接続された吸引ポンプとを有するキャップユニットと、
制御装置と、
を備え、
前記インク供給機構は、
前記第1のインクが収容された第1インク容器と、前記第2のインクが収容された第2インク容器とを有するインク容器と、
前記第1インク容器と前記第1ノズルとを接続する第1インク流路と、前記第2インク容器と前記第2ノズルとを接続する第2インク流路とを有するインク流路と、
前記第1インク流路に設けられ、駆動時に前記第1インク容器から前記第1ノズルに向かって前記第1のインクを送るように構成された第1送液ポンプと、前記第2インク流路に設けられ、駆動時に前記第2インク容器から前記第2ノズルに向かって前記第2のインクを送るように構成された第2送液ポンプとを有する送液ポンプと、
を備え、
前記制御装置は、
前記送液ポンプのうち少なくとも何れかを駆動させる加圧制御部と、
前記加圧制御部による制御の後、前記インクヘッドに前記キャップを装着させるキャッピング制御部と、
前記インクヘッドに前記キャップが装着された状態において、前記加圧制御部によって駆動された前記送液ポンプに対応した前記インク流路に接続された前記ノズルからインクを吸引し、かつ、前記加圧制御部によって駆動されなかった前記送液ポンプに対応した前記インク流路に接続された前記ノズルからインクを吸引しないように、前記吸引ポンプの駆動を制御する残圧解除制御部と、
を備えた、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記残圧解除制御部は、
所定の吸引時間、前記吸引ポンプを駆動させる吸引制御部と、
前記吸引制御部による制御の後、所定の待機時間、前記吸引ポンプを停止させて待機する待機制御部と、
を有し、
前記残圧解除制御部は、所定の回数ずつ、前記吸引制御部と前記待機制御部との制御を交互に実行させる、請求項1に記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記待機時間は、前記吸引時間よりも長い、請求項2に記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記吸引時間と前記待機時間との和に、前記所定の回数を掛けた合計時間は、前記残圧解除制御部による制御を行わずに残圧解除を行ったときに要する比較時間よりも短い、請求項2または3に記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記吸引制御部は、前記インクヘッドに前記キャップが装着された状態における前記キャップ内の圧力が、所定の圧力以上、かつ、0kPa未満になるように、前記吸引ポンプの駆動を制御する、請求項1に記載されたインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記所定の圧力は、前記インクヘッドに前記キャップが装着された状態で、前記吸引ポンプの駆動を制御して吸引を行ったときに、前記ノズルからインクが漏れ出さない最低圧力である、請求項5に記載されたインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、インクを吐出するノズルが形成されたインクヘッドを備えたインクジェット記録装置が開示されている。上記インクジェット記録装置は、インクが貯留されたインクタンクと、インクタンクとノズルとを接続するインク供給路と、インク供給路に設けられ、インクを正逆方向に送液可能な送液ポンプとを備えている。
【0003】
上記インクジェット記録装置では、インクヘッド内を加圧して、ノズルから異物などを排出する加圧クリーニングが実行されることが可能である。加圧クリーニングのとき、送液ポンプを正回転させて、インク供給路内においてノズルに向かってインクを流す。このことで、インクヘッド内が加圧されて、ノズルからインクが排出されると共に、異物などもノズルから排出される。
【0004】
加圧クリーニングの後において、印刷を開始するためには、インクヘッド内の圧力を所定の圧力まで減圧させる必要がある。ここでは、インクヘッド内の圧力を所定の圧力まで減圧させる制御のことを残圧解除という。上記インクジェット記録装置では、この残圧解除を行うために、送液ポンプを逆回転させてインクヘッド内を減圧させる。このことで、残圧解除に要する時間を短くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-262478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記インクジェット記録装置において、インクヘッドが複数の場合、各インクヘッドに対して、インクタンク、インク供給路、および、送液ポンプなどが個々に用意されている。そのため、インクジェット記録装置の部品点数が増えてコストが増大するおそれがあった。そこで、コストの増大を抑制するために、送液ポンプを、インクの送液が一方向にしか行えないポンプ(例えばダイヤフラム式のポンプ)に変更することが考えられる。この場合には、インクを逆方向へ送液させることによる減圧ができないため、残圧解除に要する時間が掛かるおそれがあった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用する送液ポンプの種類によらず、加圧クリーニング後の残圧解除に要する時間を短くしつつ、残圧解除に対する制御を容易に行うことが可能なインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るインクジェットプリンタは、インクヘッドと、インク供給機構と、キャップユニットと、制御装置とを備えている。前記インクヘッドは、第1のインクを吐出する第1ノズルと、第2のインクを吐出する第2ノズルとを有するノズルが形成されたノズル面を有している。前記インク供給機構は、前記ノズルに向かってインクを供給する。前記キャップユニットは、前記ノズルを覆うように前記インクヘッドに装着可能なキャップと、前記インクヘッドに対して前記キャップを装着させたり離間させたりするキャップ移動機構と、前記キャップに接続された吸引ポンプとを有している。前記インク供給機構は、インク容器と、インク流路と、送液ポンプとを備えている。前記インク容器は、前記第1のインクが収容された第1インク容器と、前記第2のインクが収容された第2インク容器とを有している。前記インク流路は、前記第1インク容器と前記第1ノズルとを接続する第1インク流路と、前記第2インク容器と前記第2ノズルとを接続する第2インク流路とを有している。前記送液ポンプは、前記第1インク流路に設けられ、駆動時に前記第1インク容器から前記第1ノズルに向かって前記第1のインクを送るように構成された第1送液ポンプと、前記第2インク流路に設けられ、駆動時に前記第2インク容器から前記第2ノズルに向かって前記第2のインクを送るように構成された第2送液ポンプとを有している。前記制御装置は、加圧制御部と、キャッピング制御部と、残圧解除制御部と、を備えている。前記加圧制御部は、前記送液ポンプのうち少なくとも何れかを駆動させる。前記キャッピング制御部は、前記加圧制御部による制御の後、前記インクヘッドに前記キャップを装着させる。前記残圧解除制御部は、前記インクヘッドに前記キャップが装着された状態において、前記加圧制御部によって駆動された前記送液ポンプに対応した前記インク流路に接続された前記ノズルからインクを吸引し、かつ、前記加圧制御部によって駆動されなかった前記送液ポンプに対応した前記インク流路に接続された前記ノズルからインクを吸引しないように、前記吸引ポンプの駆動を制御する。
【0009】
上記インクジェットプリンタによれば、加圧制御部によって送液ポンプのうち少なくとも何れかを駆動させて加圧クリーニングを実行した後、インクヘッドにキャップが装着された状態で、吸引ポンプを駆動させる。このことによって、加圧クリーニングが行われたノズルからインクが吸引されることで、加圧クリーニングが行われたノズルに接続されたインク流路の減圧が促進されるため、残圧解除に要する時間を短くすることができる。また、ここでは、複数の送液ポンプを駆動させずに、吸引ポンプを駆動させることで残圧解除を行っているため、残圧解除の制御を容易に行うことができる。さらに、ここでは、残圧解除のとき、加圧クリーニングが行われなかったノズルからインクが吸引されないため、無駄なインクの消費を抑制することができる。このように、吸引ポンプを使用して残圧解除を行っているため、送液ポンプの種類によらず、加圧クリーニング後の残圧解除に要する時間を短くしつつ、残圧解除に対する制御を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、使用する送液ポンプの種類によらず、加圧クリーニング後の残圧解除に要する時間を短くしつつ、残圧解除に対する制御を容易に行うことが可能なインクジェットプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るインクジェットプリンタを示す正面図である。
図2】キャリッジおよびインクヘッドの底面の構成を模式的に示した底面図である。
図3】インク供給機構を示す模式図である。
図4】実施形態に係るインクジェットプリンタのブロック図である。
図5】ダンパーを模式的に示した平面図であり、インク貯留室の圧力が所定の基準圧力以下である状態を示す図である。
図6】ダンパーを模式的に示した平面断面図であり、インク貯留室の圧力が所定の基準圧力よりも大きい状態を示す図である。
図7】キャップユニットを模式的に示した正面断面図であり、キャップがインクヘッドに装着されている状態を示す図である。
図8】キャップユニットを模式的に示した正面断面図であり、キャップがインクヘッドから離間している状態を示す図である。
図9】加圧クリーニングから残圧解除までの制御の手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るインクジェットプリンタの実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化される。
【0013】
図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、プリンタともいう。)10を示す正面図である。図2は、プリンタ10のキャリッジ17およびインクヘッド40の底面の構成を模式的に示した底面図である。図3は、プリンタ10のインク供給機構50を模式的に示した図である。図4は、プリンタ10のブロック図である。ここで、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれプリンタ10の前、後、左、右、上、下を意味するものとする。図面中の符号Yは主走査方向を示している。本実施形態では、主走査方向Yは左右方向である。図面中の符号Xは副走査方向を示している。副走査方向Xは、平面視において主走査方向Yと交差(ここでは直交)している。本実施形態では、副走査方向Xは前後方向である。図面中の符号Zは高さ方向、すなわち上下方向である。ただし、これら方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0014】
プリンタ10は、インクジェット方式のプリンタである。プリンタ10は、図1に示す媒体5に対して印刷を行うものである。媒体5は例えばロール状の記録紙であり、いわゆるロール紙である。しかしながら、媒体5は、ロール状の記録紙に限定されない。例えば媒体5は、普通紙やインクジェット用印刷紙などの紙類以外に、ポリ塩化ビニルやポリエステルなどの樹脂製のシートやフィルム、板材、織布や不織布などの布帛、その他の媒体であってもよい。
【0015】
図1に示すように、プリンタ10は、プリンタ本体11と、プラテン13と、副走査移動機構20と、ガイドレール15と、キャリッジ17と、主走査移動機構30と、インクヘッド40(図2参照)と、インク供給機構50(図3参照)と、を備えている。
【0016】
図1に示すように、プリンタ本体11は、主走査方向Yに延びたケーシングを有している。プリンタ本体11は、脚12によって支持されている。脚12は、プリンタ本体11の底面に設けられている。脚12は、プリンタ本体11の底面から下方に延びている。
【0017】
プリンタ本体11には、操作パネル14が設けられている。本実施形態では、操作パネル14は、プリンタ本体11の右端部の前面に配置されている。操作パネル14には、プリンタ10の状態などを表示する表示画面14aと、ユーザによって操作および入力される入力キー14bなどが備えられている。
【0018】
プラテン13は、媒体5を支持する。ここでは、媒体5は、プラテン13の上面に載置されている。プラテン13上において媒体5に対して印刷が行われる。プラテン13の上面は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに広がっている。
【0019】
プラテン13に支持された媒体5は、副走査移動機構20によって副走査方向Xに移動可能である。副走査移動機構20は、プラテン13上の媒体5を副走査方向Xに移動させるように構成されている。なお、副走査移動機構20の構成は特に限定されない。本実施形態では、副走査移動機構20は、ピンチローラ21と、グリットローラ22と、フィードモータ23とを備えている。ピンチローラ21は、プラテン13の上方、かつ、ガイドレール15よりも下方に設けられ、媒体5を上から押さえ付けるものである。ピンチローラ21は、平面視においてキャリッジ17よりも後方に配置されている。グリットローラ22は、プラテン13に設けられている。ここでは、グリットローラ22は、その上面部を露出させた状態でプラテン13に埋設されている。グリットローラ22は、例えば円柱状の外周形状を有している。グリットローラ22は、ピンチローラ21と対向しており、ピンチローラ21の下方に配置されている。グリットローラ22とピンチローラ21とによって媒体5を挟む。グリットローラ22には、フィードモータ23が接続されている。
【0020】
ここでは、ピンチローラ21とグリットローラ22との間に媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ23が駆動すると、グリットローラ22が回転する。このことによって、プラテン13上の媒体5は、副走査方向Xに移動する。
【0021】
図1に示すように、ガイドレール15は、プラテン13の上方に配置されている。ガイドレール15は、プラテン13の上面と平行になるように配置され、主走査方向Yに延びている。ガイドレール15には、キャリッジ17が係合している。キャリッジ17は、ガイドレール15に摺動可能に設けられている。キャリッジ17は、ガイドレール15に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0022】
主走査移動機構30は、プラテン13に支持された媒体5に対して、キャリッジ17およびインクヘッド40(図2参照)を主走査方向Yに相対的に移動させる機構である。ここでは、主走査移動機構30は、キャリッジ17およびインクヘッド40を主走査方向Yに移動させる。なお、主走査移動機構30の構成は特に限定されない。
【0023】
本実施形態では、図1に示すように、主走査移動機構30は、左右のプーリ31a、31bと、ベルト32と、スキャンモータ33とを備えている。左のプーリ31aは、ガイドレール15の左端部の周囲に設けられている。右のプーリ31bは、ガイドレール15の右端部の周囲に設けられている。ベルト32は、無端状のベルトであり、左右のプーリ31a、31bに巻き掛けられている。ベルト32には、キャリッジ17が取り付け固定されている。右のプーリ31bには、スキャンモータ33が接続されている。
【0024】
ここでは、スキャンモータ33が駆動することで、右のプーリ31bが回転し、左右のプーリ31a、31bの間においてベルト32が走行する。このことによって、キャリッジ17およびインクヘッド40は、ガイドレール15に沿って主走査方向Yに移動する。
【0025】
図2に示すように、インクヘッド40は、キャリッジ17に設けられている。インクヘッド40は、その底面を下方に露出させるように、キャリッジ17に支持されている。インクヘッド40は、インクを吐出するものである。なお、インクヘッド40の数は、特に限定されない。ここでは、インクヘッド40の数は2つである。2つのインクヘッド40は、主走査方向Yに並んで配置されている。
【0026】
なお、本実施形態において2つのインクヘッド40の構成は同じである。図2に示すように、インクヘッド40は、ノズル43と、複数のノズル43が形成されたノズル面45とを有している。ノズル面45は、インクヘッド40の底面を構成している。
【0027】
ノズル43は、ノズル面45に形成され、インクを吐出する。本実施形態では、ノズル43は、ノズル面45に複数形成されている。ここでは、ノズル43は、第1のインクを吐出する第1ノズル43Aと、第2のインクを吐出する第2ノズル43Bと、第3のインクを吐出する第3ノズル43Cとを有している。第1ノズル43Aは、副走査方向Xに並ぶように複数形成されている。第2ノズル43Bは、副走査方向Xに並ぶように複数形成されている。第3ノズル43Cは、副走査方向Xに並ぶように複数形成されている。ここでは、第1ノズル43Aの列、第2ノズル43Bの列、第3ノズル43Cの列を、それぞれ第1ノズル列44A、第2ノズル列44B、第3ノズル列44Cという。本実施形態では、1つのインクヘッド40に対して、ノズル列の数は、第1ノズル列44A、第2ノズル列44B、および、第3ノズル列44Cの3つである。ただし、1つのインクヘッド40に対するノズル列の数は、特に限定されず、例えば4つであってもよいし、8つであってもよい。
【0028】
本実施形態では、第1のインクと、第2のインクと、第3のインクとは、異なる色のインクである。しかしながら、第1のインクと、第2のインクと、第3のインクとは、同じ色のインクであってもよい。また、各インクヘッド40において、第1ノズル43Aから吐出されるインクの色は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。すなわち、左のインクヘッド40の第1ノズル43Aから吐出される第1のインクと、右のインクヘッド40の第1ノズル43Aから吐出される第1のインクとは、同じ色のインクであってもよいし、異なる色のインクであってもよい。同様に、各インクヘッド40において、第2ノズル43Bから吐出されるインクの色は、同じであってもよく、異なっていてもよい。各インクヘッド40において、第3ノズル43Cから吐出されるインクの色は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0029】
ノズル43から吐出されるインク(ここでは、第1のインク~第3のインク)は、例えばプロセスカラーインクおよび特色インクなどのうちの何れかの色のインクである。プロセスカラーインクには、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクなどが含まれている。特色インクには、プロセスカラーインク以外の色のインク、例えばホワイトインク、クリアインクなどが含まれている。また、インクの材料は何ら限定されず、従来からのインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。
【0030】
次に、図3に示すインク供給機構50について説明する。インク供給機構50は、インクヘッド40のノズル43に向かってインクを供給する機構である。本実施形態では、1つのインクヘッド40に対して、3つのインク供給機構50が接続されている。ここでは、インク供給機構50は、インクヘッド40の第1ノズル43Aに接続された第1インク供給機構50Aと、第2ノズル43Bに接続された第2インク供給機構50Bと、第3ノズル43Cに接続された第3インク供給機構50Cとを有している。第1インク供給機構50Aは、第1ノズル43Aに第1のインクを供給する。第2インク供給機構50Bは、第2ノズル43Bに第2のインクを供給する。第3インク供給機構50Cは、第3ノズル43Cに第3のインクを供給する。本実施形態において、第1インク供給機構50A、第2インク供給機構50B、および、第3インク供給機構50Cの構成は実質的に同じである。以下の説明において、第1インク供給機構50A、第2インク供給機構50B、第3インク供給機構50Cに対して共通の説明の場合には、インク供給機構50と示すこととする。
【0031】
インク供給機構50の構成は特に限定されない。本実施形態では、インク供給機構50は、インク容器51と、インク流路52と、送液ポンプ53と、ダンパー54とを備えている。
【0032】
インク容器51には、インクが収容されている。インク容器51とは、例えばインクタンクや、インクカートリッジのことである。本実施形態では、インク容器51は、第1のインクが収容された第1インク容器51Aと、第2のインクが収容された第2インク容器51Bと、第3のインクが収容された第3インク容器51Cとを有している。ここでは、インク容器51は、例えばプリンタ本体11に設けられた容器収容部(図示せず)に収容され、プリンタ本体11に支持されている。
【0033】
インク流路52は、インク容器51と、インクヘッド40のノズル43とを接続するものである。インク流路52には、インクが流れる。インク流路52は、例えば可撓性を有するチューブによって構成されている。本実施形態では、インク流路52は、第1インク流路52Aと、第2インク流路52Bと、第3インク流路52Cとを有している。第1インク流路52Aは、第1インク容器51Aと第1ノズル43Aとを接続し、第1のインクを流す。第2インク流路52Bは、第2インク容器51Bと第2ノズル43Bとを接続し、第2のインクを流す。第3インク流路52Cは、第3インク容器51Cと第3ノズル43Cとを接続し、第3のインクを流す。
【0034】
送液ポンプ53は、インク流路52に設けられている。ここでは、送液ポンプ53は、インク流路52の途中部分に設けられている。送液ポンプ53は、駆動時にインク容器51からノズル43に向かってインクを送るように構成されている。なお、送液ポンプ53の種類は特に限定されない。送液ポンプ53は、例えばダイヤフラムポンプや、チューブポンプなどである。送液ポンプ53は、例えば所定の一方向にインクを送液可能なポンプ(例えばダイヤフラムポンプ、または、逆回転することでチューブへの潰しが開放されるタイプのチューブポンプなど)である。
【0035】
本実施形態では、送液ポンプ53は、第1送液ポンプ53Aと、第2送液ポンプ53Bと、第3送液ポンプ53Cとを有している。第1送液ポンプ53Aは、第1インク流路52Aの途中部分に設けられている。第1送液ポンプ53Aは、駆動時に第1インク容器51Aから第1ノズル43Aに向かって第1のインクを送るように構成されている。第1送液ポンプ53Aの駆動によって、第1のインクは、第1インク流路52A内を第1ノズル43Aに向かって流れる。第2送液ポンプ53Bは、第2インク流路52Bの途中部分に設けられている。第2送液ポンプ53Bは、駆動時に第2インク容器51Bから第2ノズル43Bに向かって第2のインクを送るように構成されている。第2送液ポンプ53Bの駆動によって、第2のインクは、第2インク流路52B内を第2ノズル43Bに向かって流れる。第3送液ポンプ53Cは、第3インク流路52Cの途中部分に設けられている。第3送液ポンプ53Cは、駆動時に第3インク容器51Cから第3ノズル43Cに向かって第3のインクを送るように構成されている。第3送液ポンプ53Cの駆動によって、第3のインクは、第3インク流路52C内を第3ノズル43Cに向かって流れる。
【0036】
ダンパー54は、インクの圧力変動を緩和させて、インクヘッド40のノズル43からのインクの吐出動作を安定させるものである。ダンパー54は、ダンパー54に流入するインクの流量(言い換えると、ダンパー54内の圧力)を検出する。ダンパー54は、インクヘッド40のノズル43に接続されている。ダンパー54は、インク流路52とノズル43との間に設けられている。
【0037】
本実施形態では、ダンパー54は、第1ダンパー54Aと、第2ダンパー54Bと、第3ダンパー54Cとを有している。第1ダンパー54Aは、第1ノズル43Aに接続され、第1インク流路52Aと第1ノズル43Aとの間に設けられている。第2ダンパー54Bは、第2ノズル43Bに接続され、第2インク流路52Bと第2ノズル43Bとの間に設けられている。第3ダンパー54Cは、第3ノズル43Cに接続され、第3インク流路52Cと第3ノズル43Cとの間に設けられている。なお、本実施形態において、第1ダンパー54A、第2ダンパー54B、および、第3ダンパー54Cの構成は実質的に同じである。以下の説明において、第1ダンパー54A、第2ダンパー54B、第3ダンパー54Cに対して共通の説明の場合には、ダンパー54と示すこととする。
【0038】
ダンパー54の構成は特に限定されない。図5は、ダンパー54を模式的に示した平面図であり、インク貯留室62の圧力が所定の基準圧力以下の状態を示す図である。図6は、ダンパー54を模式的に示した平面断面図であり、インク貯留室62の圧力が所定の基準圧力より大きい状態を示す図である。本実施形態では、図5に示すように、ダンパー54は、ダンパー本体61と、インク貯留室62と、ダンパー膜63と、検出機構64とを備えている。
【0039】
ダンパー本体61は中空のものである。インク貯留室62は、ダンパー本体61内に形成されており、一部に形成された開口を有している。インク貯留室62には、インクが一時的に貯留される。インク貯留室62は、インク流路52(図3参照)およびノズル43(図3参照)と連通している。本実施形態では、ダンパー本体61の上部には、インク流路52が接続された流入口65aが形成されている。図示は省略するが、ダンパー本体61の下部には、ノズル43に接続された流出口が形成されている。ただし、流入口65aおよび上記流出口の形成位置は特に限定されない。本実施形態では、ダンパー54は、インク容器51内のインクが消費される際に、流入口65aからインク貯留室62に流入したインクがノズル43へ流れるように構成されている。
【0040】
図5に示すように、ダンパー膜63は、インク貯留室62の開口部分を覆うようにダンパー本体61に設けられている。ここでは、ダンパー膜63とダンパー本体61によって囲まれた空間がインク貯留室62である。ダンパー膜63は、例えば可撓性を有する樹脂製のフィルムによって構成されている。ダンパー膜63は、インク貯留室62内のインクの貯留量や、インク貯留室62内の圧力に基づいて、図5および図6に示すように、インク貯留室62の内側および外側に変形可能である。ダンパー膜63は、インク貯留室62の内側および外側にそれぞれ撓むことができる程度の張力で、ダンパー本体61に取り付けられている。
【0041】
本実施形態では、図5に示すように、インク貯留室62には、バネ65が設けられている。バネ65は、圧縮された状態でインク貯留室62に配置されており、ダンパー膜63に向かって弾性力を付与する。ここでは、バネ65は、ダンパー膜63におけるインク貯留室62側の面に接続されている。なお、バネ65の種類は特に限定されず、例えば、バネ65はコイルバネである。
【0042】
検出機構64は、インク貯留室62内の圧力を検出する機構である。ここでは、検出機構64は、インク貯留室62内の圧力を検出することで、インク流路52(図3参照)内の圧力を間接的に検出する。なお、検出機構64の構成は特に限定されない。本実施形態では、検出機構64は、押圧体66と、フィラー67と、フィラーセンサ68とを備えている。押圧体66は、ダンパー膜63に設けられている。本実施形態では、押圧体66は、ダンパー膜63におけるインク貯留室62側の面に設けられている。押圧体66は、バネ65に支持されており、ダンパー膜63の撓みと共に、インク貯留室62の内側および外側に移動可能である。
【0043】
フィラー67は、ダンパー膜63または押圧体66と接触可能にダンパー本体61に設けられている。本実施形態では、ダンパー本体61には、支持バネ69が設けられており、フィラー67は、支持バネ69に支持されている。フィラー67の形状は特に限定されない。ここでは、フィラー67は、略コの字状に形成されている。詳しくは、フィラー67は、押圧体66の右方において、前後方向に延びた接触部67aと、接触部67aの後部から左方に延びた支持部67bと、接触部67aの前部から左方に延びた被検出部67cとを有している。接触部67aは、ダンパー膜63または押圧体66に直接または間接的に接触する。支持部67bは、支持バネ69に支持されている。被検出部67cは、フィラーセンサ68によって検出される部位である。
【0044】
フィラーセンサ68は、フィラー67の位置を検出することによって、インク貯留室62内の圧力を検出する。フィラーセンサ68は、インク貯留室62内の圧力を検出することで、インク流路52内の圧力を間接的に検出する。本実施形態では、フィラーセンサ68は、フィラー67に対して非接触式のセンサであるが、接触式のセンサであってもよい。本実施形態では、フィラーセンサ68は、一対の検出部68aを有している。図5に示すように、一対の検出部68aの間に、フィラー67の被検出部67cが位置しているとき、フィラーセンサ68は、インク貯留室62の圧力が所定の基準圧力以下であることを検出する。
【0045】
図6に示すように、インク貯留室62の圧力が大きくなるにしたがって、ダンパー膜63がインク貯留室62の外側に撓む。このとき、押圧体66によって、フィラー67がインク貯留室62の外側に押されることで、フィラー67は、接触部67aと支持部67bとの間に位置する軸67dを軸にして回転する。そして、インク貯留室62の圧力が所定の基準圧力より大きくなったとき、フィラー67の被検出部67cがフィラーセンサ68の一対の検出部68aの間から外れた位置に移動する。フィラーセンサ68は、一対の検出部68aの間に、フィラー67の被検出部67cが位置していないとき、インク貯留室62の圧力が所定の基準圧力よりも大きいことを検出する。以上が、本実施形態に係るダンパー54の構成である。
【0046】
本実施形態では、第1インク供給機構50Aは、第1インク容器51Aと、第1インク流路52Aと、第1送液ポンプ53Aと、第1ダンパー54Aとを備えている。第2インク供給機構50Bは、第2インク容器51Bと、第2インク流路52Bと、第2送液ポンプ53Bと、第2ダンパー54Bとを備えている。第3インク供給機構50Cは、第3インク容器51Cと、第3インク流路52Cと、第3送液ポンプ53Cと、第3ダンパー54Cとを備えている。
【0047】
本実施形態では、図1に示すように、プリンタ10は、キャップユニット70を備えている。キャップユニット70は、インクヘッド40をクリーニングする際に使用されるものである。キャップユニット70は、プラテン13の主走査方向Y側に配置されている。本実施形態では、キャップユニット70は、プラテン13の右方に配置されているが、プラテン13の左方に配置されていてもよい。キャップユニット70は、ガイドレール15の下方であり、平面視において、プラテン13から外れた位置であって、ガイドレール15と重なる位置に配置されている。ここでは、キャリッジ17およびインクヘッド40(図2参照)がガイドレール15に沿って主走査方向Yに移動し、キャップユニット70の真上に配置されたとき、インクヘッド40に対してクリーニングを行うことが可能になる。
【0048】
図7および図8は、キャップユニット70を模式的に示した正面断面図である。図7では、キャップ71がインクヘッド40に装着された状態が示されている。図8では、キャップ71がインクヘッド40から離間している状態が示されている。図7に示すように、キャップユニット70は、キャップ71と、キャップ移動機構72と、吸引ポンプ73とを備えている。
【0049】
キャップ71は、ノズル43を覆うようにインクヘッド40に装着可能なものである。ここでは、1つのキャップ71は、1つのインクヘッド40の複数のノズル43(ここでは、第1ノズル43A、第2ノズル43Bおよび第3ノズル43C)を覆うように、1つのインクヘッド40に装着されるように構成されている。ここでは、1つのキャップ71は、1つのインクヘッド40のノズル面45に装着される。図示は省略するが、キャップ71の数は、インクヘッド40の数と同じ2つである。なお、本実施形態では、2つのキャップ71の構成は同じである。
【0050】
図7に示すように、キャップ71は、上部が上方に開口した箱状の形状である。ここでは、キャップ71は、台座80と、容器部81と、リップ部82と、吸収体83とを有している。
【0051】
台座80は、キャップ71の少なくとも下部を構成している。台座80の形状は特に限定されない。ここでは、台座80は、直方体形状である。本実施形態では、台座80の上面の中央部分には、下方に凹んだ凹部86が形成されている。
【0052】
容器部81は、台座80に形成された凹部86に収容されている。容器部81は、台座80に下方から支持されている。容器部81は、上方に開口した容器状のものである。容器部81は、凹部86に対応した形状を有しており、外周形状および内周形状は四角形状である。
【0053】
リップ部82は、キャップ71の先端部(ここでは上端部)を構成している。図7に示すように、キャップ71がインクヘッド40に装着されたとき、リップ部82はノズル面45に接触する。本実施形態では、リップ部82は、容器部81の上端から上方に延びている。リップ部82は、台座80よりも上方に突出している。
【0054】
リップ部82は、環状のものである。ここでは、リップ部82の外周形状および内周形状は、四角形状である。図8に示すように、リップ部82は、先端(ここでは上端)に向かうにしたがって幅が小さくなっている。ここで、リップ部82の幅とは、リップ部82の周方向に対して平面視において直交する方向の長さのことをいう。リップ部82は、先細り形状を有している。
【0055】
リップ部82は、弾性変形可能なものである。そのため、図7に示すように、リップ部82がインクヘッド40のノズル面45に接触したとき、弾性変形することがあり得る。ここでは、リップ部82がノズル面45に接触したとき、リップ部82の先端部は、潰れるように撓む。なお、リップ部82を形成する材料は特に限定されない。本実施形態では、リップ部82は、ゴム製である。具体的には、リップ部82は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)またはブチルゴムによって形成されている。本実施形態では、リップ部82は、容器部81と一体的に形成されている。そのため、容器部81もゴム製であり、リップ部82と同じ材料で形成されている。
【0056】
吸収体83は、キャップ71の内部に配置されている。ここでは、吸収体83は、容器部81内に設けられており、容器部81に収容されている。吸収体83は、インクヘッド40のノズル43からキャップ71内にインクが吐出(または排出、吸引)されたとき、当該インクを受ける部材である。吸収体83が受けたインクは、吸収体83に吸収される。図8に示すように、吸収体83は、リップ部82の先端(ここでは上端)よりも下方に配置されている。吸収体83を形成する材料は、インクを吸収できるものであれば特に限定されない。ここでは、吸収体83は、多孔質の材料によって形成されている。例えば吸収体83は、ポリビニルアルコールから形成されたスポンジ(例えばPVAスポンジ)である。また、吸収体83の形状も特に限定されない。ここでは、吸収体83は、容器部81の内周面に対応した形状であり、例えば直方体形状である。
【0057】
図7および図8に示すように、キャップ移動機構72は、インクヘッド40に対してキャップ71を装着させたり離間させたりする機構である。ここでは、キャップ移動機構72は、キャップ71を昇降させることで、キャップ71のリップ部82と、インクヘッド40のノズル面45との間隔が変更される。例えばキャップ移動機構72によってキャップ71を上昇させることで、図7に示すように、ノズル面45から離間しているキャップ71をインクヘッド40に装着させる。一方、キャップ移動機構72によってキャップ71を下降させることで、図8に示すように、インクヘッド40に装着されたキャップ71をノズル面45から離間させる。
【0058】
なお、キャップ移動機構72の構成は特に限定されない。図示は省略するが、例えばキャップ移動機構72は、上下に延びたレールと、レールに係合するキャップキャリッジと、キャップキャリッジに接続されたキャッピングモータとを有している。このキャップキャリッジには、キャップ71が固定されている。ここで、キャッピングモータが駆動することで、キャップキャリッジおよびキャップ71が昇降する。このことで、キャップ71は、インクヘッド40に対して装着されたり、離間されたりする。
【0059】
吸引ポンプ73は、キャップ71に接続されている。吸引ポンプ73は、接続されたキャップ71内のインクや、接続されたキャップ71が装着されたインクヘッド40内のインクを吸引する。ここでは、1つのキャップ71につき、1つの吸引ポンプ73が接続されている。そのため、図示は省略するが、吸引ポンプ73の数は、キャップ71の数と同じ2つである。吸引ポンプ73は、チューブ74の途中部分に設けられている。チューブ74の一端はキャップ71に接続され、チューブ74の他端は、廃液タンク(図示せず)に接続されている。本実施形態では、例えば真空ポンプである。ただし、吸引ポンプ73は、チューブポンプや、シリンジポンプであってもよく、キャップ71がノズル面45に装着された際に、キャップ71内をメニスカス耐圧(例えば-0.4kPaなど)以上かつ0kPa未満の圧力に制御可能な能力を有するポンプであれば、吸引ポンプ73の種類は特に限定されない。
【0060】
図7に示すように、例えばキャップ71がインクヘッド40に装着された状態で吸引ポンプ73が駆動すると、インクヘッド40内よりも低い負圧がキャップ71内に形成されるように構成されている。このことによって、複数のノズル43の少なくとも一部からインクが吸引され、インクヘッド40内のインクがキャップ71内に排出される。吸引ポンプ73に吸引されたキャップ71内のインクなどは、チューブ74を介して廃液タンクに排出される。
【0061】
図1に示すように、プリンタ10は、制御装置90を備えている。制御装置90は、印刷に関する制御、および、インクヘッド40のクリーニングに関する制御などを行う装置である。制御装置90の構成は特に限定されない。制御装置90は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されない。制御装置90は、例えばホストコンピュータなどの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(Random Access Memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリと、を備えている。制御装置90は、プリンタ本体11の内部に設けられている。ただし、制御装置90は、プリンタ本体11の外部に設置されたコンピュータなどで実現されてもよい。この場合、制御装置90は、有線または無線を介してプリンタ10の制御基板(図示せず)と通信可能に接続されているとよい。
【0062】
図4に示すように、制御装置90は、操作パネル14、副走査移動機構20(詳しくはフィードモータ23)、主走査移動機構30(詳しくはスキャンモータ33)、インクヘッド40、インク供給機構50の送液ポンプ53、ダンパー54のフィラーセンサ68、および、キャップユニット70(詳しくは、キャップ移動機構72および吸引ポンプ73)と通信可能に接続されている。制御装置90は、操作パネル14、副走査移動機構20、主走査移動機構30、インクヘッド40、送液ポンプ53、フィラーセンサ68、および、キャップユニット70を制御する。
【0063】
本実施形態では、制御装置90は、記憶部91と、加圧制御部93と、キャッピング制御部95と、残圧解除制御部97とを備えている。残圧解除制御部97は、吸引制御部98と、待機制御部99とを備えている。制御装置90の各部91~99は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば制御装置90の各部91~99は、複数のプロセッサによって実現されるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。なお、制御装置90の各部91~99の具体的な制御については後述する。
【0064】
以上、本実施形態に係るプリンタ10の構成について説明した。本実施形態では、インクヘッド40に対して加圧クリーニングが行われる。加圧クリーニングでは、図3に示すように、インク供給機構50の送液ポンプ53を駆動させる。送液ポンプ53が駆動されると、インク容器51からノズル43に向かってインクが供給され、インク流路52が加圧される。ここでは、インク流路52に関する圧力(加圧または減圧)については、ノズル43の圧力(加圧または減圧)と言い換えることができる。加圧クリーニングにおいてインク流路52が加圧されると、ノズル43からインクが排出される。仮にノズル43内に異物がある場合には、加圧クリーニングにおいてノズル43からインクが排出されるときに、異物もノズル43から排出される。本実施形態では、加圧クリーニングは、図8に示すように、キャップ71の真上にインクヘッド40が配置された状態で行われる。そのため、加圧クリーニングのときにノズル43から排出されたインクや異物は、キャップ71に落下して排出される。
【0065】
なお、加圧クリーニングは、インク供給機構50毎に行うことができる。本実施形態では、図3に示すように、第1インク供給機構50A~第3インク供給機構50C(言い換えると、第1ノズル43A~第3ノズル43C)に対して選択的に加圧クリーニングを行うことができる。例えば第1インク供給機構50A(言い換えると、第1ノズル43A)に対して加圧クリーニングを行いたい場合には、第1送液ポンプ53Aを駆動させる。このことによって、第1インク流路52Aが加圧されて、第1ノズル43Aからインクを排出することができる。同様に、第2インク供給機構50B(言い換えると、第2ノズル43B)に対して加圧クリーニングを行いたい場合には、第2送液ポンプ53Bを駆動させる。このことによって、第2インク流路52Bが加圧されて、第2ノズル43Bからインクを排出することができる。また、第3インク供給機構50C(言い換えると、第3ノズル43C)に対して加圧クリーニングを行いたい場合には、第3送液ポンプ53Cを駆動させる。このことによって、第3インク流路52Cが加圧されて、第3ノズル43Cからインクを排出することができる。
【0066】
このように加圧クリーニングを行うことでインク流路52内は圧力が大きくなる。インク流路52の圧力が大きいと、ダンパー54においてインク貯留室62の圧力も大きくなり、図6に示すように、ダンパー膜63がインク貯留室62の外側に撓んだ状態になる。このような状態で加圧クリーニングが終了すると、ダンパー膜63がインク貯留室62の内側に徐々に戻り、インク貯留室62の圧力も徐々に小さくなる。インク貯留室62の圧力が徐々に小さくなることで、インク流路52の圧力も徐々に小さくなる。そして、インク流路52の圧力が所定の基準圧力になったとき、印刷を開始することができる状態になる。本実施形態では、加圧クリーニングの後、インク流路52の圧力を基準圧力まで戻すことを残圧解除という。
【0067】
この残圧解除は、加圧クリーニングが終了した後、送液ポンプ53の駆動を停止させて待機することで、時間の経過と共にインク流路52の圧力が基準圧力まで徐々に小さくなることで行われることができる。特に、送液ポンプ53が一方向にのみ送液可能なタイプの場合には、時間の経過と共にノズル43からインクが徐々に染み出すことで、残圧が解除されることになる。このときの残圧解除に要する時間は、例えば100秒程であった。しかしながら、この残圧解除に要する時間は、より短い方が好ましい。そこで、本実施形態では、加圧クリーニング後の残圧解除に要する時間を短縮することを実現する。
【0068】
次に、本実施形態において、加圧クリーニングから残圧解除までの制御について図9のフローチャートに沿って説明する。
【0069】
まず図9のステップS101では、図4の加圧制御部93は、インクヘッド40に対して加圧クリーニングを実行する。ここでは、加圧制御部93は、図3に示すように、インクヘッド40の第1ノズル43A、第2ノズル43B、第3ノズル43Cのうち、少なくとも何れかのノズル43に対して加圧クリーニングを実行する。加圧クリーニングは、第1ノズル43A~第3ノズル43Cの全てのノズル43に対して実行されてもよいし、第1ノズル43A~第3ノズル43Cのうちの何れか1つまたは2つのノズル43に対して実行されるものであってもよい。ここでは、第1ノズル43Aに対して加圧クリーニングが行われ、第2ノズル43B、第3ノズル43Cに対して加圧クリーニングが行われない場合について説明する。
【0070】
加圧クリーニングを行うとき、まず加圧制御部93は、主走査移動機構30を制御して、キャップユニット70のキャップ71の真上にインクヘッド40が位置するように、ガイドレール15に沿ってキャリッジ17およびインクヘッド40を主走査方向Yに移動させる。このことによって、平面視においてキャップ71と重なる位置に、インクヘッド40が配置される。このとき、図8に示すように、インクヘッド40にはキャップ71は装着されず、キャップ71は、インクヘッド40から下方に離間した位置に配置される。
【0071】
図8に示すように、インクヘッド40からキャップ71が離間した状態において、加圧制御部93は、送液ポンプ53のうちの少なくとも何れかを駆動させる。加圧制御部93は、加圧クリーニングを実行するノズル43に対応したインク供給機構50の送液ポンプ53を駆動させる。本実施形態では、第1ノズル43Aに対して加圧クリーニングを実行する。そのため、加圧制御部93は、第1ノズル43Aに接続された第1インク供給機構50Aの第1送液ポンプ53Aを駆動させる。なお、ここでは、第2ノズル43Bおよび第3ノズル43Cに対して加圧クリーニングを実行させないため、加圧制御部93は、第2送液ポンプ53Bおよび第3送液ポンプ53Cを駆動させずに、停止させた状態を維持する。
【0072】
このように、第1送液ポンプ53Aが駆動することで、第1インク流路52Aが加圧される。このことによって、第1ノズル43Aに第1のインクが供給されるため、第1ノズル43Aからキャップ71に向かって第1のインクが排出される。なお、ここでは、第2送液ポンプ53Bおよび第3送液ポンプ53Cは駆動されていないため、第2インク流路52Bおよび第3インク流路52Cは加圧されず、第2ノズル43Bおよび第3ノズル43Cからインクは排出されない。
【0073】
このように加圧クリーニングが実行された後、次に図9のステップS103では、図4のキャッピング制御部95は、インクヘッド40にキャップ71を装着させる。ステップS101において、図8に示すように、キャップ71は、インクヘッド40の真下に配置されている。そのため、キャッピング制御部95は、キャップ71を上昇させるように、キャップ移動機構72を制御する。このことによって、キャップ71は、インクヘッド40に向かうように移動し、図7に示すように、キャップ71のリップ部82が、インクヘッド40のノズル面45に接触する。このことによって、キャップ71がインクヘッド40に装着される。
【0074】
このようにキャップ71がインクヘッド40に装着された後、図9のステップS105を実行する。ステップS105では、図4の残圧解除制御部97は、残圧解除を実行する。残圧解除制御部97は、加圧クリーニングが実行されたノズル43に対応したインク供給機構50に対して残圧解除を実行する。本実施形態では、第1ノズル43Aに対して加圧クリーニングが実行されたため、第1ノズル43Aに対応した第1インク供給機構50Aに対して残圧解除を実行する。本実施形態では、残圧解除制御部97は、インクヘッド40にキャップ71が装着された状態において、加圧制御部93によって駆動された送液ポンプ53に対応したインク流路52に接続されたノズル43からインクを吸引し、かつ、加圧制御部93によって駆動されなかった送液ポンプ53に対応したインク流路52に接続されたノズル43からインクを吸引しないように、吸引ポンプ73の駆動を制御する。
【0075】
ここでは、加圧制御部93によって駆動された送液ポンプ53とは、第1送液ポンプ53Aのことであり、加圧制御部93によって駆動されなかった送液ポンプ53とは、第2送液ポンプ53B、および、第3送液ポンプ53Cのことである。そのため、残圧解除制御部97は、第1送液ポンプ53Aに対応した第1インク流路52Aに接続された第1ノズル43Aから第1のインクを吸引し、第2送液ポンプ53Bに対応した第2インク流路52Bに接続された第2ノズル43Bから第2のインクを吸引せず、かつ、第3送液ポンプ53Cに対応した第3インク流路52Cに接続された第3ノズル43Cから第3のインクを吸引しないように、吸引ポンプ73の駆動を制御する。
【0076】
ここでは、残圧解除制御部97は、第1ノズル43Aからインクを吸引し、かつ、第2ノズル43Bおよび第3ノズル43Cからインクを吸引しない程度に、キャップ71内の圧力が負圧になるように、吸引ポンプ73の駆動を制御する。ここで、キャップ71内の圧力は、第2ノズル43Bおよび第3ノズル43Cのメニスカスが維持される程度の負圧であることが好ましい。ここでは、メニスカスが維持される程度の負圧のことを、メニスカス耐圧といい、メニスカス耐圧は、例えば-0.4kPa程度である。
【0077】
本実施形態では、図9に示すように、ステップS105の残圧解除は、ステップS1051の吸引処理と、ステップS1052の待機処理とを繰り返し実行することで実現される。まず、ステップS1051の吸引処理は、図4の吸引制御部98によって実行される。吸引制御部98は、所定の吸引時間T1、吸引ポンプ73を駆動させる。ここで、所定の吸引時間T1は、図4の記憶部91に予め記憶された時間である。所定の吸引時間T1は、吸引ポンプ73の駆動時の吸引力、および、ノズル43から吐出されるインクの成分などに応じて適宜に設定される時間である。また、所定の吸引時間T1は、使用するインクヘッド40や、吸引ポンプ73、キャップ71の種類や能力などの条件によっても適宜に設定される。所定の吸引時間T1は、例えば第2ノズル43Bおよび第3ノズル43Cからインクが吸引されない程度の時間である。所定の吸引時間T1は、例えばノズル43のメニスカスを壊さない程度、言い換えるとメニスカスを維持することができる程度の吸引量となるような時間である。所定の吸引時間T1は、キャップ71内の圧力がメニスカス耐圧まで減圧するために要する時間である。ここでは、所定の吸引時間T1は、1秒以下であり、好ましくは0.5秒以下であり、特に好ましくは0.2秒以下である。所定の吸引時間T1は、例えば0.2秒である。例えば吸引ポンプ73の吸引速度が1ml/秒のとき、所定の吸引時間T1は、0.2秒以下になる。
【0078】
また、ステップS1051において、吸引制御部98は、インクヘッド40にキャップ71が装着された状態におけるキャップ71内の圧力が、ノズル43のメニスカスを維持することができる圧力以上になるように、吸引ポンプ73の駆動を制御するとよい。ここで、上述のように、ノズル43のメニスカスを維持することができる圧力のことをメニスカス耐圧という。メニスカス耐圧とは、インクヘッド40にキャップ71が装着された状態で、吸引ポンプ73の駆動を制御して吸引を行ったときに、ノズル43からインクが漏れ出さない最低圧力である。例えばメニスカス耐圧は、-0.4kPaである。ここでは、吸引制御部98は、インクヘッド40にキャップ71が装着された状態におけるキャップ71内の圧力が、メニスカス耐圧(例えば-0.4kPa)以上かつ0kPa未満になるように、吸引ポンプ73の駆動を制御するとよい。本実施形態では、メニスカス耐圧は、所定の圧力の一例である。所定の圧力は、所定の負圧と言い換えることが可能である。例えばキャップ71内の圧力がメニスカス耐圧になるように、所定の吸引時間T1(例えば0.2秒)だけ、吸引ポンプ73を駆動させることで、第1ノズル43Aからインクを吸引しつつ、第2ノズル43Bおよび第3ノズル43Cからインクを吸引しないようにすることができる。
【0079】
このように吸引処理を実行した後、次に、図9のステップS1052を実行する。ステップS1052は、図4の待機制御部99によって実行される。待機制御部99は、吸引制御部98による制御の後、所定の待機時間T2、吸引ポンプ73を停止させて待機する。この所定の待機時間T2は、図4の記憶部91に予め記憶された時間である。所定の待機時間T2は、例えば吸引処理のときのキャップ71内の圧力や、吸引時間T1に応じて適宜設定される。また、所定の待機時間T2は、キャップ71の形状などによって適宜設定される。待機時間T2は、キャップ71内の圧力が大気圧に戻るまでの時間である。待機時間T2は、吸引時間T1よりも長い。待機時間T2は、例えば2秒以上あり、好ましくは3秒以上であり、特に好ましくは4秒以上である。本実施形態では、待機時間は、4秒に設定される。
【0080】
本実施形態では、ステップS1051の吸引処理と、ステップS1052の待機処理は、所定の回数R1ずつ交互に実行される。ここでは、吸引処理は、所定の回数R1、実行され、待機処理も所定の回数R1、実行される。ここで、所定の回数R1は、図4の記憶部91に予め記憶された回数である。所定の回数R1は、加圧クリーニングが実行されたノズル43(ここでは第1ノズル43A)に対応した第1インク供給機構50Aの残圧が解除される程度の回数である。所定の回数R1は、ステップS1051の吸引処理のときのキャップ71内の圧力、吸引時間T1、および、ステップS1052の待機処理における待機時間T2に応じて適宜に設定されるものである。
【0081】
例えば吸引時間T1が、基準吸引時間よりも短いときには、所定の回数R1は、第1基準回数よりも多く設定され、吸引時間T1が、基準吸引時間よりも長いときには、所定の回数R1は、第1基準回数よりも少なく設定される。また、例えば待機時間T2が、基準待機時間よりも短いときには、所定の回数R1は、第2基準回数よりも多く設定され、待機時間T2が、基準待機時間よりも長いときには、所定の回数R1は、第2基準回数よりも少なく設定される。上記の第1基準回数と第2基準回数は、例えば記憶部91に予め記憶されている。第1基準回数と第2基準回数とは、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。ここでは、所定の回数R1は、例えば10回以上であり、好ましくは13回以上あり、特に好ましくは15回である。本実施形態では、所定の回数R1は、15回に設定されている。この所定の回数R1が1回以上であれば、残圧解除に要する時間を短縮することができる。
【0082】
なお、本実施形態では、吸引時間T1と待機時間T2との和に、所定の回数R1を掛けた時間を合計時間という。合計時間は、(T1+T2)×R1によって算出される。この合計時間は、残圧解除制御部97によって吸引ポンプ73が駆動されて残圧解除が行われたときに要する時間である。また、ここでは、残圧解除制御部97による制御(すなわち、吸引ポンプ73が駆動される制御)を行わずに残圧解除を行ったときに、残圧解除に要する時間のことを比較時間という。この比較時間は、送液ポンプ53の駆動、および、吸引ポンプ73を停止させて待機して、時間の経過と共にノズル43からインクが徐々に染み出すことで、残圧が解除されたときに要する時間のことであり、例えば100秒程度である。上記の合計時間は、比較時間よりも短い。
【0083】
本実施形態では、ステップS1051の吸引処理と、ステップS1052の待機処理を交互に15回ずつ実行することで、図9のフローチャートが終了する。ステップS1051の吸引処理と、ステップS1052の待機処理を交互に15回ずつ実行することで、残圧を解除することができる。この場合、例えば残圧を解除するまでに要する時間は、80秒程度である。
【0084】
以上、本実施形態では、図1に示すように、プリンタ10は、インクヘッド40(図2参照)と、インク供給機構50(図3参照)と、キャップユニット70と、制御装置90とを備えている。図2に示すように、インクヘッド40は、第1のインクを吐出する第1ノズル43Aと、第2のインクを吐出する第2ノズル43Bとを有するノズル43が形成されたノズル面45を有している。図3に示すように、インク供給機構50は、ノズル43に向かってインクを供給する。図7に示すように、キャップユニット70は、ノズル43を覆うようにインクヘッド40に装着可能なキャップ71と、インクヘッド40に対してキャップ71を装着させたり離間させたりするキャップ移動機構72と、キャップ71に接続された吸引ポンプ73とを有している。図3に示すように、インク供給機構50は、インク容器51と、インク容器51とノズル43とを接続するインク流路52と、インク流路52に設けられ、駆動時にインク容器51からノズル43に向かってインクを送るように構成された送液ポンプ53と、を備えている。図4に示すように、制御装置90は、加圧制御部93と、キャッピング制御部95と、残圧解除制御部97とを備えている。加圧制御部93は、図9のステップS101に示すように、送液ポンプ53のうち少なくとも何れか(ここでは、例えば第1送液ポンプ53A)を駆動させる。キャッピング制御部95は、図9のステップS103に示すように、加圧制御部93による制御の後、インクヘッド40にキャップ71を装着させる。残圧解除制御部97は、図9のステップS105に示すように、インクヘッド40にキャップ71が装着された状態において、加圧制御部93によって駆動された送液ポンプ53(ここでは、第1送液ポンプ53A)に対応したインク流路52に接続されたノズル43(ここでは、第1ノズル43A)からインクを吸引し、かつ、加圧制御部93によって駆動されなかった送液ポンプ53(ここでは、第2送液ポンプ53Bおよび第3送液ポンプ53C)に対応したインク流路52に接続されたノズル43(ここでは、第2ノズル43Bおよび第3ノズル43C)からインクを吸引しないように、吸引ポンプ73の駆動を制御する。
【0085】
このことによって、例えば加圧制御部93によって第1送液ポンプ53Aを駆動させて、第1ノズル43Aに対して加圧クリーニングを実行した後、図8に示すように、インクヘッド40にキャップ71が装着された状態で、吸引ポンプ73を駆動させる。このことによって、加圧クリーニングが行われた第1ノズル43Aからインクが吸引されることで、加圧クリーニングが行われた第1ノズル43Aに接続された第1インク流路52Aの減圧が促進されるため、残圧解除に要する時間を短くすることができる。また、ここでは、複数の送液ポンプ53を駆動させずに、吸引ポンプ73を駆動させることで残圧解除を行っているため、残圧解除の制御を容易に行うことができる。さらに、ここでは、残圧解除のとき、加圧クリーニングが行われなかった第2ノズル43Bおよび第3ノズル43Cからインクが吸引されないため、無駄なインクの消費を抑制することができる。このように、吸引ポンプ73を使用して残圧解除を行っているため、送液ポンプ53の種類によらず、加圧クリーニング後の残圧解除に要する時間を短くしつつ、残圧解除に対する制御を容易に行うことができる。
【0086】
本実施形態では、図3に示すように、インク供給機構50は、インク流路52とノズル43との間に設けられたダンパー54を備えている。図5に示すように、ダンパー54は、一部に開口が形成されたインク貯留室62と、インク貯留室62の開口を覆うダンパー膜63と、を備えている。このことによって、加圧クリーニングが行われたとき、ダンパー膜63がインク貯留室62の外側に撓み、インク貯留室62やインク流路52が加圧される。加圧クリーニングの後、ダンパー膜63がインク貯留室62の内側に向かって徐々に撓むことで、インク貯留室62およびインク流路52が徐々に減圧される。このように、ダンパー54が設けられることで、残圧解除に要する時間が長くなる傾向にある。しかしながら、本実施形態では、残圧解除を行う際、吸引ポンプ73を駆動させることで、加圧クリーニングが行われた第1ノズル43Aに接続された第1インク流路52Aの減圧が促進されるため、残圧解除に要する時間を短くすることができる。
【0087】
本実施形態では、残圧解除制御部97は、図9のステップS1051に示すように、所定の吸引時間T1、吸引ポンプ73を駆動させる吸引処理を実行する吸引制御部98(図4参照)と、吸引制御部98による制御の後、図9のステップS1052に示すように、所定の待機時間T2、吸引ポンプ73を停止させて待機する待機処理を実行する待機制御部99(図4参照)と、を有している。残圧解除制御部97は、所定の回数R1ずつ、吸引制御部98と前記待機制御部99との制御を交互に実行させる。このように、吸引処理と、待機処理とを交互に実行することで、加圧クリーニングが実行された第1ノズル43Aからインクを吸引しつつ、加圧クリーニングが実行されていない第2ノズル43Bおよび第3ノズル43Cからインクを吸引しないような制御を行い易い。
【0088】
本実施形態では、待機時間T2は、吸引時間T1よりも長い。吸引時間T1は、1秒以下である。このことによって、残圧解除のとき、吸引処理における吸引時間T1を短くして、吸引処理を小刻みに多く実行させることで、吸引処理のときに、加圧クリーニングが実行されていない第2ノズル43Bおよび第3ノズル43Cからインクを吸引し難くすることができる。
【0089】
本実施形態では、吸引時間T1と待機時間T2との和に、所定の回数R1を掛けた合計時間は、残圧解除制御部97による制御を行わずに残圧解除を行ったときに要する比較時間よりも短い。このことによって、送液ポンプ53、および、吸引ポンプ73を停止させて待機して、時間の経過と共にノズル43からインクが徐々に染み出すことで、残圧が解除されたときに要する時間よりも、残圧解除制御部97によって残圧解除をしたときの方が、残圧解除に要する時間を短くすることができる。
【0090】
本実施形態では、吸引制御部98は、インクヘッド40にキャップ71が装着された状態におけるキャップ71内の圧力が、所定の圧力(例えばメニスカス耐圧)以上、かつ、0kPa未満になるように、吸引ポンプ73の駆動を制御する。このことによって、吸引処理のときに、ノズル43のメニスカスを維持することができる。
【0091】
本実施形態では、所定の圧力(メニスカス耐圧)は、インクヘッド40にキャップ71が装着された状態で、吸引ポンプ73の駆動を制御して吸引を行ったときに、ノズル43からインクが漏れ出さない最低圧力である。このことによって、ノズル43からインクが漏れ出さない程度に、吸引ポンプ73で吸引することができる。
【0092】
上記実施形態では、残圧解除制御部97は、吸引処理と、待機処理とを繰り返し実行することで残圧解除を行っていた。しかしながら、残圧解除制御部97は、インク流路52の圧力をセンシングし、インク流路52の圧力が所定の基準圧力になるまで、吸引ポンプ73を駆動させるように制御してもよい。この場合、例えばダンパー54の検出機構64(図5参照)を用いてもよい。ここでは、図5に示すように、例えばフィラーセンサ68の一対の検出部68aの間に、フィラー67の被検出部67cが位置するとき、インク貯留室62の圧力が所定の基準圧力以下となる。インク貯留室62の圧力が所定の基準圧力以下のとき、インク流路52の圧力も所定の基準圧力以下と推定される。そのため、残圧解除制御部97は、残圧解除のとき、ダンパー54のフィラーセンサ68の一対の検出部68aの間に、フィラー67の被検出部67cが位置するまで、吸引ポンプ73の駆動を制御してもよい。また、上記実施形態では、フィラーセンサ68を使用して、インク貯留室62の圧力が所定の基準圧力以下であるか否かを判定していたが、所定の圧力センサを使用して、インク貯留室62の圧力を圧力値(例えば電圧)で計測してもよい。そして、圧力センサによって計測した圧力値が、所定の基準圧力以下であるか否かを判定してもよい。
【符号の説明】
【0093】
10 プリンタ(インクジェットプリンタ)
40 インクヘッド
43 ノズル
43A 第1ノズル
43B 第2ノズル
45 ノズル面
50 インク供給機構
51 インク容器
51A 第1インク容器
51B 第2インク容器
52 インク流路
52A 第1インク流路
52B 第2インク流路
53 送液ポンプ
53A 第1送液ポンプ
53B 第2送液ポンプ
54 ダンパー
54A 第1ダンパー
54B 第2ダンパー
62 インク貯留室
63 ダンパー膜
70 キャップユニット
71 キャップ
72 キャップ移動機構
73 吸引ポンプ
90 制御装置
93 加圧制御部
95 キャッピング制御部
97 残圧解除制御部
98 吸引制御部
99 待機制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9