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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031305
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ICタグ及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/07 20060101AFI20240229BHJP
   H04B 5/48 20240101ALI20240229BHJP
【FI】
G06K19/07 230
H04B5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134787
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 康喜
【テーマコード(参考)】
5K012
【Fターム(参考)】
5K012AB03
5K012AC06
5K012AC09
5K012AC11
5K012AE02
(57)【要約】
【目的】誤動作を防止することが可能なICタグ及び半導体装置を提供することを目的とする。
【構成】本発明は、搬送波信号中に搬送波が途切れるポーズ期間が断続的に存在する変調信号を受信するアンテナと、アンテナで受信した変調信号から、当該変調信号に含まれる搬送波を2値化した信号をクロック信号として抽出するクロック抽出回路と、受信した変調信号を検波することで2値の検波信号を生成する復調回路と、受信モード時に、クロック信号に同期させて検波信号からコマンドデータ片を復元すると共にコマンドデータ片に応じた処理を行う制御回路と、制御回路が受信モード以外の状態時に、受信した変調信号からポーズ期間を検知した場合に、リセットを促すポーズリセット信号を制御回路に供給するリセット回路部と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送波信号中に搬送波が途切れるポーズ期間が断続的に存在する変調信号を受信するアンテナと、
前記アンテナで受信した変調信号から、当該変調信号に含まれる前記搬送波を2値化した信号をクロック信号として抽出するクロック抽出回路と、
前記受信した変調信号を検波することで2値の検波信号を生成する復調回路と、
受信モード時に、前記クロック信号に同期させて前記検波信号からコマンドデータ片を復元すると共に前記コマンドデータ片に応じた処理を行う制御回路と、
前記制御回路が受信モード以外の状態時に、前記受信した変調信号から前記ポーズ期間を検知した場合に、ポーズリセット信号を前記制御回路に供給するリセット回路部と、を有することを特徴とするICタグ。
【請求項2】
前記リセット回路部は、前記検知した前記ポーズ期間の終了時点より前の時点から、前記終了時点より所定期間後方の時点までの間に亘り前記ポーズリセット信号を生成することを特徴とする請求項1に記載のICタグ。
【請求項3】
前記リセット回路部は、前記受信した変調信号に基づき前記復調回路が生成した前記検波信号に応じて、当該検波信号のフロントエッジ部の時点から、前記検波信号のリアエッジ部の時点から所定期間が経過した時点までの間に亘り前記ポーズリセット信号を生成することを特徴とする請求項2に記載のICタグ。
【請求項4】
前記所定期間は、前記ポーズ期間の終了時点から、前記クロック信号にグリッチが重畳する時点よりも後方の時点までの期間長を有することを特徴とする請求項3に記載のICタグ。
【請求項5】
前記受信した変調信号に基づき前記制御回路を動作させる電源電圧を生成する電源電圧生成部を含み、
前記リセット回路部は、
前記電源電圧の電圧値が所定の閾電圧に到達するまでの間パワーオンリセット信号を生成するパワーオンリセット回路を含み、前記パワーオンリセット信号又は前記ポーズリセット信号を前記制御回路に供給することを特徴とする請求項1~4のいずれか1に記載のICタグ。
【請求項6】
搬送波信号中に搬送波が途切れるポーズ期間が断続的に存在する変調信号を受信するアンテナを接続する為のアンテナ端子を有する半導体装置であって、
前記アンテナで受信した変調信号から、当該変調信号に含まれる前記搬送波を2値化した信号をクロック信号として抽出するクロック抽出回路と、
前記受信した変調信号を検波することで2値の検波信号を生成する復調回路と、
受信モード時に、前記クロック信号に同期させて前記検波信号からコマンドデータ片を復元すると共に前記コマンドデータ片に応じた処理を行う制御回路と、
前記制御回路が受信モード以外の状態時に、前記受信した変調信号から前記ポーズ期間を検知した場合に、ポーズリセット信号を前記制御回路に供給するリセット回路部と、を有することを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信機能を有するICタグ及びICタグに搭載されている半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、センサを備え且つ通信機能を有するICタグを様々な物体(モノ)に設置し、夫々をインターネット等の通信網を介して接続することで、各物体の状態や遠隔計測などを行うIoT(Internet of Things)が普及している。
【0003】
また、このようなICタグとして、リーダーライタと称される通信端末との間で電磁波を使った近距離の無線通信を行うことで、当該電磁波を利用した電源電圧の生成及びデータのやり取りを行う非接触ICカードが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の非接触ICカードは、アンテナ、電源回路、クロック回路、復調回路、メモリ及び制御回路を含む。
【0004】
アンテナは、リーダーライタから放射された、ASK100%変調が施された電波を受信する。尚、例えば国際規格ISO/IEC14443-2で規定されているASK100%変調方式では、13.56MHzの搬送波中に、ポーズ期間と称する電波が途絶する期間が設けられる。この際、時間軸上において搬送波中のどの位置にポーズ期間が挿入されるかによって伝送するデータが表現される。
【0005】
電源回路は、アンテナで受信した受信信号、つまりASK100%変調信号を整流することで非接触ICカード自身が動作するための電源電圧を生成する。クロック回路は、当該受信信号を2値化してクロック信号を生成する。復調回路は、受信信号を包絡線検波して包絡線検波出力を得て、当該包絡線検波出力に復調処理を施すことで復調データを抽出する。制御回路は、復調データに基づきコマンドを解釈し、そのコマンドに基づきメモリに対してリード/ライト制御を施す。この際、制御回路は、当該メモリから読み出されたデータを変調回路に供給する。変調回路は、制御回路から供給されたデータにASK100%変調処理を施して得られた変調信号をアンテナに供給することで、当該変調信号に基づく電波をリーダーライタに送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-333112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非接触ICカードをリーダーライタに近づけると、この非接触ICカードは、リーダーライタから送信された搬送波を受信し、当該搬送波に基づき電源電圧の生成を開始する。これにより、非接触ICカードが起動し、当該非接触ICカード内で上記した各回路をリセットするいわゆるパワーオンリセット信号、及びクロック信号が生成される。そして、非接触ICカードは、起動後、所定期間経過後にリーダーライタから送信されたデータを正しく受信することが可能な受信モードに移行する。
【0008】
しかしながら、非接触ICカードをリーダーライタに近づけるタイミングによっては、受信モードに移行する前に、リーダーライタから送信された意図しないコマンドを表す搬送波、つまり、ポーズ期間を含む搬送波を受信してしまう場合がある。この際、ポーズ期間中はクロック信号が途絶し、そのポーズ期間が終了するとクロック信号が再開するが、その再開時にクロック信号にグリッチが重畳する。よって、このグリッチが重畳したグリッチクロック信号が各回路に入力されると誤動作を引き起こし、非接触ICカードが無応答状態になるおそれがあった。
【0009】
そこで、本発明は、このような誤動作を防止することが可能なICタグ及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るICタグは、搬送波信号中に搬送波が途切れるポーズ期間が断続的に存在する変調信号を受信するアンテナと、前記アンテナで受信した変調信号から、当該変調信号に含まれる前記搬送波を2値化した信号をクロック信号として抽出するクロック抽出回路と、前記受信した変調信号を検波することで2値の検波信号を生成する復調回路と、受信モード時に、前記クロック信号に同期させて前記検波信号からコマンドデータ片を復元すると共に前記コマンドデータ片に応じた処理を行う制御回路と、前記制御回路が受信モード以外の状態時に、前記受信した変調信号から前記ポーズ期間を検知した場合に、ポーズリセット信号を前記制御回路に供給するリセット回路部と、を有する。
【0011】
本発明に係る半導体装置は、搬送波信号中に搬送波が途切れるポーズ期間が断続的に存在する変調信号を受信するアンテナを接続する為のアンテナ端子を有する半導体装置であって、前記アンテナで受信した変調信号から、当該変調信号に含まれる前記搬送波を2値化した信号をクロック信号として抽出するクロック抽出回路と、前記受信した変調信号を検波することで2値の検波信号を生成する復調回路と、受信モード時に、前記クロック信号に同期させて前記検波信号からコマンドデータ片を復元すると共に前記コマンドデータ片に応じた処理を行う制御回路と、前記制御回路が受信モード以外の状態時に、前記受信した変調信号から前記ポーズ期間を検知した場合にポーズリセット信号を前記制御回路に供給するリセット回路部と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、搬送波信号中に搬送波が途切れるポーズ期間が断続的に存在する変調信号中の搬送波から抽出したクロック信号に同期して各種処理を行う制御回路が受信モード以外の状態にある際に、変調信号からポーズ期間を検知した場合には、制御回路に対して強制的にリセットを掛けるようにしている。
【0013】
これにより、ポーズ期間の終了時において、クロック信号の生成開始に伴うグリッチがクロック信号に重畳されても、この間、制御回路は強制的にリセットされるので、グリッチクロックに伴う誤動作を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るICタグ200を上面側から眺めた正面図である。
図2】ICタグ200及びリーダーライタ300間で近距離無線通信を行う際の形態を示す図である。
図3】ICチップ100の内部構成を示すブロック図である。
図4】ICチップ100の内部動作を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係るICタグ200を上面から眺めた正面図である。
【0017】
ICタグ200は、図2に示すように、リーダーライタ300との間で、近距離無線通信を行う。例えばICタグ200及びリーダーライタ300は、UHF帯、HF(High Frequency)帯又はLF(Low Frequency)帯の搬送波信号に、情報データ片又はコマンドデータ片に基づくASK100%変調を施した変調信号に対応した電波による近距離無線通信を行う。尚、ASK100%変調を施した変調信号は、情報データ又はコマンドデータ片が例えば論理レベル0を表す区間では上記した搬送波信号がそのまま表れ、論理レベル1を表す区間(ポーズ期間と称する)では搬送波信号が途切れてその信号レベルが所定の一定値に固定される信号である。
【0018】
上記した近距離無線通信により、ICタグ200は、例えばセンサ(図示せぬ)等で取得した情報データ片を、リーダーライタ300から無線送信されたコマンドに応じてリーダーライタ300に無線送信する。
【0019】
図1に示すように、ICタグ200は、基板150と、基板150の一方の面に設置されているアンテナ50及びICチップ100を含む。
【0020】
アンテナ50は、例えば導電性の配線材料からなり、その一端及び他端がICチップ100の一対のアンテナ端子に接続されている。アンテナ50は、リーダーライタ300から放出された電波を受信して得た変調信号をICチップ100に供給する、又はICチップ100から供給された変調信号に対応した電波を放出する。
【0021】
図3は、ICチップ100に形成されている回路構成を示すブロック図である。
【0022】
図3に示すように、ICチップ100は、キャパシタC1、整流回路101、電源電圧生成回路102、クロック抽出回路103、復調回路104、及び変調回路105、パワーオンリセット回路106、ポーズ期間リセット回路107、論理ゲート108及び109、制御回路110及びメモリ111を含む。
【0023】
ICチップ100のアンテナ端子A1及びA2には、アンテナ50の一端及び他端が接続されている。
【0024】
アンテナ端子A1がラインL1を介してキャパシタC1の一端、整流回路101、クロック抽出回路103、復調回路104及び変調回路105に接続されており、アンテナ端子A2がラインL2を介してキャパシタC1の他端、整流回路101、復調回路104及び変調回路105に接続されている。
【0025】
整流回路101は、ラインL1及びL2を介してアンテナ50から送出された変調信号に基づく高周波電流を整流することで直流電圧を生成し、これを電源電圧生成回路102に供給する。電源電圧生成回路102は、整流回路101から供給された直流電圧に基づき電圧値一定の電源電圧VDDを生成する。電源電圧生成回路102は、この電源電圧VDDを、各回路を動作させるための電源電圧として、クロック抽出回路103、復調回路104、変調回路105、パワーオンリセット回路106、ポーズ期間リセット回路107、論理ゲート108及び109、制御回路110及びメモリ111に供給する。当該電源電圧VDDが各回路モジュール(103~111)に供給開始されると、ICチップ100が起動する。
【0026】
クロック抽出回路103は、ラインL1を介して供給された変調信号から、この変調信号に含まれる搬送波信号を所定閾値に基づき2値化した信号をクロック信号CLKとして抽出し、このクロック信号CLKを制御回路110に供給する。
【0027】
復調回路104は、ラインL1を介して供給された変調信号を検波することで、論理レベル0又は1を有する2値の検波信号DEMを生成し、これを制御回路110に供給する。
【0028】
変調回路105は、上記した搬送波信号を、制御回路110から供給された情報データ片に基づきASK100%変調した変調信号を、ラインL1及びL2を介してアンテナ50に送出する。
【0029】
パワーオンリセット回路106は、電源電圧VDDの電圧値が所定の閾電圧より低い状態にある間はリセットを促す論理レベル0を有するパワーオンリセット信号Rponを生成する。一方、電源電圧VDDの電圧値が所定の閾電圧以上となる場合には、パワーオンリセット回路106は、リセット解除を促す論理レベル1を有するパワーオンリセット信号Rponを生成する。パワーオンリセット回路106は、生成したパワーオンリセット信号Rponを論理ゲート109に供給する。
【0030】
ポーズ期間リセット回路107は、検波信号DEMから論理レベル1の状態を維持するポーズ期間を検知した場合に、少なくともこのポーズ期間に亘りリセットを促す論理レベル0のポーズリセット信号Rpauを生成する。
【0031】
具体的には、ポーズ期間リセット回路107は、検波信号DEMのフロントエッジ部の時点t2から、この検波信号DEMのリアエッジ部の時点t3から所定期間Tmが経過した時点t4までの期間に亘り、リセットを促す論理レベル0の状態を維持し、その他の期間は論理レベル1の状態を維持するポーズリセット信号Rpauを生成する。ポーズ期間リセット回路107は、生成したポーズリセット信号Rpauを論理ゲート108に供給する。
【0032】
論理ゲート108は、かかるポーズリセット信号Rpauと共に、制御回路110から送出された受信モード信号JMを受ける。尚、受信モード信号JMとは、ICタグ200が、アンテナ50で受けた電波に対応した変調信号からコマンドデータの復元が可能な受信モードの状態にある場合は論理レベル1を有し、受信モード以外の状態にある場合は論理レベル0を有する2値の信号である。受信モード以外の状態とは、例えばICタグ200が変調信号をリーダーライタ300に無線送信する送信モード、又はリーダーライタ300から無線送信された電源電圧VDD生成用の電波を受信する給電モード等の状態である。
【0033】
論理ゲート108は、受信モード信号JMが論理レベル0を有している間、つまり、受信モード以外の状態(非受信モード)にある場合にだけ、ポーズリセット信号Rpauを論理ゲート109に供給する。つまり、論理ゲート108は、ICタグ200が非受信モードの状態にある場合に、リセットを促す論理レベル0のポーズリセット信号Rpauを受けたときに、このポーズリセット信号Rpauをそのまま論理ゲート109に供給する。
【0034】
論理ゲート109は、パワーオンリセット回路106からリセットを促す論理レベル0のパワーオンリセット信号Rponを受けた場合、或いは論理ゲート108を介して論理レベル0のポーズリセット信号Rpauを受けた場合に、リセットを促す論理レベル0のリセット信号RSTを制御回路110に供給する。
【0035】
制御回路110は、クロック抽出回路103から供給されたクロック信号CLKに同期させて以下の処理を行う。
【0036】
すなわち、ICチップ100の起動後、所定の待機期間が経過するまでの間、ICタグ200は非受信モードの状態にあるので、この間、制御回路110は、非受信モードを表す論理レベル0の受信モード信号JMを論理ゲート108に供給する。そして、かかる待機期間の経過後は、ICタグ200は受信モードの状態となるので、制御回路110は、受信モードを表す論理レベル1の受信モード信号JMを論理ゲート108に供給する。
【0037】
また、制御回路110は、例えばセンサ(図示せぬ)等で取得した情報データ片を取り込み、当該情報データ片を本ICタグ200の識別番号に対応付けしてメモリ111に格納する。
【0038】
更に、制御回路110は、復調回路104から供給された検波信号DEMに基づきコマンドデータを復元する。そして、制御回路110は、当該コマンドデータにて示されるコマンドに応じて、例えばメモリ111から上記した情報データ片及び識別番号を読み出し、夫々を変調回路105に供給する。これにより、変調回路105は、情報データ片及び識別番号にて搬送波信号をASK100%変調した変調信号をアンテナ50に供給することで、当該変調信号に対応した電波をリーダーライタ300に放出させる。
【0039】
以下に、図3に示すICチップ100の内部動作について説明する。
【0040】
図4は、無線給電によってICタグ200が起動してから、当該ICタグ200が受信モードに移行するまでの間に、ポーズ期間を含む変調信号を受信した場合でのICチップ100の内部動作波形を示すタイムチャートである。
【0041】
先ず、ICタグ200をリーダーライタ300に近接させる。これにより、ICタグ200は、リーダーライタ300から放出された電波の受信を開始し、アンテナ50、ラインL1及びL2を介して、図4に示すような波形を有する変調信号JSを取り込む。かかる変調信号JSに基づき電源電圧生成回路102が電源電圧VDDの生成を開始する。この際、電源電圧VDDの電圧値が図4に示すように徐々に上昇し、時点t0にて、各回路(103~111)が動作可能となる回路動作電圧Vcに到達する。これにより、クロック信号CLKが制御回路110に供給開始されると共に、リセットを促す論理レベル0のパワーオンリセット信号Rponを表すリセット信号RSTに応じて、制御回路110がリセット状態となる。
【0042】
その後、電源電圧VDDの上昇によりその電圧値が所定の閾電圧Vthに到達した時点t1にて、パワーオンリセット信号Rponが論理レベル1に遷移し、ICタグ200は、リセットが解除された通常の状態になる。尚、かかる時点t1から所定の待機期間Twが経過した時点teまでは、ICタグ200は非受信モードに設定され、時点te以降、受信モードに設定される。
【0043】
そして、電源電圧VDDの電圧値が最大電圧Vmaxに至った後、図4に示すように、ICタグ200が受信モードに移行する前の時点t2~t3に亘り、変調信号JSとしての搬送波信号中にそのレベルが一定値となるポーズ期間Tpauが表れる。つまり、ICタグ200は、受信モード以外のタイミングで、コマンドデータの一部を担うポーズ期間Tpauを含む、図4に示す波形の変調信号JSを受信する。
【0044】
復調回路104は、当該変調信号に基づき、当該ポーズ期間Tpauに亘り論理レベル1を有し、それ以外の期間では論理レベル0を有する検波信号DEMを生成する。この際、ポーズ期間リセット回路107は、図4に示すように、検波信号DEMのフロントエッジ部の時点t2から、検波信号DEMのリアエッジ部の時点t3から所定期間Tmが経過した時点t4までの期間に亘りリセットを促す論理レベル0の状態を維持するポーズリセット信号Rpauを生成する。
【0045】
尚、所定期間Tmは、ポーズ期間Tpauの終了時点から、クロック信号CLKにグリッチが重畳する時点、及び変調信号に含まれる搬送波信号が安定化する時点のいずれよりも後方の時点までの期間長を有する。
【0046】
制御回路110は、当該ポーズリセット信号Rpauに応じて、図4に示す時点t2~t4の期間に亘りリセットされ、時点t4以降、リセットが解除された通常の状態に戻る。
【0047】
ところで、ICタグ200は、自身が受信モード以外の状態にある場合に、図4に示すようなポーズ期間Tpauを含む変調信号JSを受信すると、このポーズ期間Tpauの間(t2~t3)は、搬送波信号が存在しないので、クロック信号CLKの生成ができなくなる。この際、ポーズ期間Tpauが終了する時点t3以降、変調信号JS中に搬送波信号が表れることからクロック信号CLKの生成が再開するが、その再開時に当該クロック信号CLKにグリッチが重畳する。すなわち、図4に示す時点t3の直後、制御回路110にはグリッチが重畳されたクロック信号CLKが供給されることになる。よって、制御回路110は、このグリッチが重畳されたクロック信号CLKによって誤動作を引き起こし、リーダーライタ300に対して無応答の状態になるおそれが生じる。
【0048】
しかしながら、ICタグ200では、受信モード以外の状態でポーズ期間を含む変調信号を受信した場合には、図4に示すように、ポーズ期間の先頭の時点t2から当該ポーズ期間の終了時点t3よりも後方の時点t4までの間に亘り、強制的に制御回路110に対してリセットを掛けている。
【0049】
これにより、ポーズ期間の終了直後に、グリッチが重畳されたクロック信号CLKが制御回路110に供給されても、この間、制御回路110はリセット状態にあるので、グリッチクロックに伴う誤動作を回避することができる。この際、ポーズ期間が終了し、変調信号に含まれる搬送波信号が安定化する時点t4でリセットが解除され、その後、グリッチが重畳していない正常なクロック信号CLKが制御回路110に供給される。
【0050】
よって、ICタグ200は、このリセットの解除後、正常な通常状態で受信モードに移行して、リーダーライタ300に対する応答を行うことが可能となる。
【0051】
尚、図3に示す構成では、復調回路104で生成された検波信号DEMのフロントエッジ部のタイミングをトリガとして、ポーズ期間リセット回路107がポーズリセット信号Rpauを生成しているが、復調回路104を介さずに、受信した変調信号から直にポーズリセット信号Rpauを生成する回路を設けるようにしても良い。
【0052】
また、図3に示す構成では、制御回路110に対してリセットを掛けるリセット回路部として、パワーオンリセット回路106、ポーズ期間リセット回路107、論理ゲート108及び109を設けている。しかしながら、前述したようなポーズ期間の終了直後にクロック信号に重畳するグリッチを防ぐには、少なくともポーズ期間リセット回路107及び論理ゲート108と同様な動作を行う回路が含まれていれば良い。
【0053】
要するに、本発明に係るICタグとしては、以下のアンテナ、クロック抽出回路、復調回路、制御回路、及びリセット回路部を含むものであれば良い。
【0054】
すなわち、アンテナ(50)は、搬送波信号中に搬送波が途切れるポーズ期間(Tpau)が断続的に存在する変調信号を送信又は受信する。クロック抽出回路(103)は、アンテナで受信した変調信号から、この変調信号に含まれる搬送波を2値化した信号をクロック信号(CLK)として抽出する。復調回路(104)は、受信した変調信号を検波することで2値の検波信号(DEM)を生成する。制御回路(110)は、受信モード時に、上記クロック信号に同期させて検波信号からコマンドデータ片を復元すると共にコマンドデータ片に応じた処理を行う。リセット回路部(106~109)は、制御回路が受信モード以外の状態時に、受信した変調信号からポーズ期間を検知した場合に、リセットを促すポーズリセット信号(Rpau)を制御回路に供給する。
【符号の説明】
【0055】
100 ICチップ
106 パワーオンリセット回路
107 ポーズ期間リセット回路
108、109 論理ゲート
200 ICタグ
図1
図2
図3
図4