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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031309
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】中敷設計装置、および中敷設計方法
(51)【国際特許分類】
   A43B 17/00 20060101AFI20240229BHJP
   A43B 7/142 20220101ALI20240229BHJP
   A43B 7/32 20060101ALI20240229BHJP
   B29D 35/12 20100101ALN20240229BHJP
   A43D 1/02 20060101ALN20240229BHJP
   A43B 7/24 20060101ALN20240229BHJP
【FI】
A43B17/00 Z ZBP
A43B7/142
A43B7/32
B29D35/12
A43D1/02
A43B7/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134793
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼山 亮太
(72)【発明者】
【氏名】波多野 元貴
(72)【発明者】
【氏名】高島 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】岡本 利彰
(72)【発明者】
【氏名】楠見 浩行
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050EA01
4F050EA06
4F050EA11
4F050HA22
4F050HA23
4F050HA53
4F050HA56
4F050HA58
4F050HA59
4F050HA60
4F050HA63
(57)【要約】      (修正有)
【課題】靴に装着することでユーザが靴に求める特性を得ることができる中敷を設計する中敷設計装置、および中敷設計方法を提供する。
【解決手段】中敷設計装置1は、測定した足型データを受け付ける入力部(インターフェース14)と、入力部で受け付けた足型データに基づいて中敷の設計データを求めるプロセッサ11と、プロセッサ11で求めた設計データを出力する出力部(インターフェース14)と、を備える。プロセッサ11は、受け付けた靴特性(第1特性パラメータ)と靴データ(第2特性パラメータ)との差分に基づき、設計データを調整する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴の中敷を設計する中敷設計装置であって、
測定した足型データを受け付ける入力部と、
前記入力部で受け付けた前記足型データに基づいて前記中敷の設計データを求める演算部と、
前記演算部で求めた前記設計データを出力する出力部と、を備え、
前記入力部は、ユーザが前記靴に求める特性を示す第1特性パラメータと、前記ユーザが選択した前記靴の特性を示す第2特性パラメータと、をさらに受け付け、
前記演算部は、
前記入力部で受け付けた前記第1特性パラメータと前記第2特性パラメータとの差分に基づき、前記設計データを調整する、中敷設計装置。
【請求項2】
前記第1特性パラメータおよび前記第2特性パラメータには、クッション性、安定性、グリップ性、屈曲性、フィット性、耐久性、通気性、軽量性、反発性、切り返し特性、アーチサポートのうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載の中敷設計装置。
【請求項3】
前記設計データは、材料、構造、部位別のカップ高、中敷の縮率、部位別の厚み、アーチ位置、底面形状のうち少なくとも1つを含む、請求項1または請求項2に記載の中敷設計装置。
【請求項4】
前記演算部は、
前記第1特性パラメータに対して所定値以上の差を有する前記第2特性パラメータの値を、前記第1特性パラメータの値に近づく方向に変更すべく前記設計データを調整する、請求項1または請求項2に記載の中敷設計装置。
【請求項5】
前記演算部は、
ユーザが選択した前記第1特性パラメータに対して前記第2特性パラメータの値が、前記第1特性パラメータの値以上となるように前記設計データを調整する、請求項1または請求項2に記載の中敷設計装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記足型データから無荷重状態における前記ユーザの足の形状を予測し、予測した前記足の形状に基づいて前記中敷の設計データを求める、請求項1または請求項2に記載の中敷設計装置。
【請求項7】
荷重状態と無荷重状態とで同一の複数のサンプルの足の形状の測定データから算出された、荷重状態における第1サンプルデータおよび無荷重状態における第2サンプルデータを記憶する記憶部をさらに備え、
前記演算部は、
前記足型データと、前記第1サンプルデータとの差を求め、求めた差と、前記第2サンプルデータとに基づき、無荷重状態における前記ユーザの足の形状を予測する、請求項6に記載の中敷設計装置。
【請求項8】
靴の中敷を設計する中敷設計方法であって、
測定した足型データを受け付けるステップと、
ユーザが前記靴に求める特性を示す第1特性パラメータを受け付けるステップと、
前記ユーザが選択した前記靴の特性を示す第2特性パラメータを受け付けるステップと、
受け付けた前記足型データに基づいて前記中敷の設計データを求めるステップと、
受け付けた前記第1特性パラメータと前記第2特性パラメータとの差分に基づき、前記設計データを調整するステップと、
調整した前記設計データを出力するステップと、を含む、中敷設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、中敷設計装置、および中敷設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
靴のフィット性を高めるために、足の形状に合わせてオーダーメイドで中敷(インソール)が作製される。例えば、国際公開第2017/057388号(特許文献1)では、足の形状(足型データ)と靴データとに基づいて、靴の内部空間に足が配置された状態において内部空間の内周面と足との間に形成される隙間の三次元形状を算出し、算出した隙間の三次元形状に基づいて、インソールを設計する中敷設計装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/057388号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
国際公開第2017/057388号(特許文献1)に開示された中敷設計装置は、靴とインソールとを組み合わせたときに足が所望の状態に保持されることを目的としてインソールを設計しており、靴のフィット性を向上することしか考慮されていない。しかし、ユーザが靴に求める特性は、フィット性に限られない。
【0005】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、靴に装着することでユーザが靴に求める特性を得ることができる中敷を設計する中敷設計装置、および中敷設計方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従う中敷設計装置は、靴の中敷を設計する中敷設計装置である。中敷設計装置は、測定した足型データを受け付ける入力部と、入力部で受け付けた足型データに基づいて中敷の設計データを求める演算部と、演算部で求めた設計データを出力する出力部と、を備える。入力部は、ユーザが靴に求める特性を示す第1特性パラメータと、ユーザが選択した靴の特性を示す第2特性パラメータと、をさらに受け付ける。演算部は、入力部で受け付けた第1特性パラメータと第2特性パラメータとの差分に基づき、設計データを調整する。
【0007】
本開示のある局面に従う中敷設計方法は、靴の中敷を設計する中敷設計方法である。中敷設計方法は、測定した足型データを受け付けるステップと、ユーザが靴に求める特性を示す第1特性パラメータを受け付けるステップと、ユーザが選択した靴の特性を示す第2特性パラメータを受け付けるステップと、受け付けた足型データに基づいて中敷の設計データを求めるステップと、受け付けた第1特性パラメータと第2特性パラメータとの差分に基づき、設計データを調整するステップと、調整した設計データを出力するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、第1特性パラメータと第2特性パラメータとの差分に基づき、設計データを調整するので、靴に装着することでユーザが求める靴特性を得ることができる中敷を設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る中敷設計装置を含むシステムの構成を示す概略図である。
図2】実施の形態に係る中敷設計装置の構成を示すブロック図である。
図3】実施の形態に係る中敷の使用態様を説明するための模式図である。
図4】実施の形態に係る中敷の部位別のカップ高を説明するための模式図である。
図5】実施の形態に係る中敷の部位別の厚みを説明するための模式図である。
図6】実施の形態に係る中敷のアーチ位置を説明するための模式図である。
図7】三次元メッシュ構造体で作製された中敷を示す模式図である。
図8図7に示す中敷の基層部が有する立体構造を説明するための模式図である。
図9】実施の形態に係る中敷設計装置が実行する設計処理を示すフローチャートである。
図10】実施の形態に係る中敷設計装置で設計データを調整する実施例1を説明するための模式図である。
図11】靴特性と中敷の設計データとの関連性を説明するための図である。
図12】プロネーションを説明するための模式図である。
図13】実施の形態に係る中敷設計装置で設計データを調整する実施例2を説明するための模式図である。
図14】実施の形態に係る中敷設計装置で設計データを調整する実施例3を説明するための模式図である。
図15】実施の形態に係る中敷設計装置で設計データを調整する実施例4を説明するための模式図である。
図16】無荷重状態における被測定者の足の形状を予測する予測処理を示すフローチャートである。
図17】荷重足形データの一例を示す図である。
図18】無荷重足形データの一例を示す図である。
図19】被測定者データと第1サンプルデータとの差分の算出を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明では、同一の構成には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。また、以下の実施形態の説明において、内側又は内足側は、足幅方向における足の第1趾側を指し、外側又は外足側は、足幅方向における足の第5趾側を指す。
【0011】
[中敷設計装置の構成]
図1は、実施の形態に係る中敷設計装置1を含むシステムの構成を示す概略図である。図2は、実施の形態に係る中敷設計装置1の構成を示すブロック図である。図3は、実施の形態に係る中敷1Aの使用態様を説明するための模式図である。靴屋などの店舗、イベント会場などにおいては、個人の足の形状に合わせたオーダーメイドの中敷1Aを作製することが行われる。中敷1Aは、図3に示すように、履き物としてのたとえば靴100に装着されて使用される。靴100は、ソール110およびアッパー120を備えており、使用に際しては、中敷1Aが、アッパー120に設けられた履き口121を介して靴100の内部に挿入される。これにより、中敷1Aは、その下面が靴100の内底面に面するように当該内底面上に載置されることになり、これによって中敷1Aが靴100に装着されることになる。なお、以下の説明において、中敷1Aは、靴100に装着されて使用されると説明するが、履き物に使用できればよく、たとえばサンダルのフットベッドとして使用してもよい。
【0012】
靴100をユーザが着用した着用時においては、ユーザの足裏が、中敷1Aの上面上に配置されることになる。そのため、中敷1Aは、靴100のソール110とユーザの足裏とによって挟み込まれることになり、これによって中敷1Aは、ユーザの足を支持することになる。また、靴100の内部空間にユーザの足が配置される状態において、中敷1Aは、靴100の内部空間と足との間に形成される隙間を埋め、靴100のフィット性を向上させることができる。
【0013】
しかし、中敷1Aは、靴100のフィット性を向上させるだけでなく、中敷1Aの設計データ(例えば、材料、構造、部位別のカップ高、厚みなど)を調整することで、靴100の特性(例えば、クッション性、安定性、グリップ性など)を変更することができる。中敷設計装置1は、ユーザが靴100に求める特性を得ることができる中敷1Aに調整した中敷1Aの設計データを生成するための装置である。
【0014】
中敷設計装置1を含む中敷作製システムは、図1に示すように、中敷設計装置1と、測定装置2と、3Dプリンタ3とを備える。なお、中敷1Aを作製する装置は、3Dプリンタ3に限られず、たとえばNC工作機械などの装置であってもよい。また、実施の形態においては、中敷設計装置1を用いて中敷1Aを作製するための設計データを生成する例が示されているが、オーダーメイドの靴を作製するための設計装置に、本開示の技術を適用して中敷1Aを作製するための設計データを生成させてもよい。
【0015】
測定装置2は、たとえば、レーザ測定による3次元の足型スキャナであり、天板21と、天板を挟み込むように設置されたレーザ測定部22とを備える。被測定者(ユーザ)が立位姿勢で天板21に足を載せると、被測定者の体重によって足から天板21に対して荷重がかかる。すなわち、被測定者の足に荷重がかかった状態になる。測定装置2は、被測定者の足に荷重がかかった状態で、レーザ測定部22によって足のつま先から踵まで移動しながら足の形状を測定する。測定装置2は、レーザ測定部22によって取得した被測定者の足の形状データ(足型データ)を含む被測定者データを、中敷設計装置1に出力する。なお、被測定者データは、測定装置2によって取得された足の形状データを少なくとも含んでいればよく、その他のデータ(たとえば、被測定者の性別または年齢などの個人データ)を含んでいてもよい。
【0016】
中敷設計装置1は、測定装置2から被測定者データを取得し、被測定者データに基づき、中敷1Aを作製するための設計データを生成する。中敷設計装置1において、靴100に装着することでユーザが靴100に求める特性を得ることができる中敷1Aの設計データの生成については、詳しくは後述する。中敷設計装置1は、生成した中敷1Aの設計データを、中敷1Aを作製する3Dプリンタ3などに出力する。
【0017】
このように、中敷作製システムにおいては、測定装置2によって取得された被測定者の足の形状(足型データ)に基づき、中敷設計装置1が中敷1Aの設計データを生成し、3Dプリンタ3で中敷1Aを作製することができる。これにより、中敷作製システムは、中敷設計装置1で生成した中敷1Aの設計データに基づいて、靴100に装着することでユーザが靴100に求める特性を得ることができる中敷1Aを容易に作製することができる。なお、本開示においては、中敷設計装置1と、測定装置2と、3Dプリンタ3とを備える中敷作製システムで中敷1Aを作製すると説明するが、装置の構成はこれに限られず、装置の構成は、中敷設計装置1と、測定装置2と、3Dプリンタ3とが一体となった中敷作製装置であっても、測定装置2と、3Dプリンタ3とが一体となった中敷作製装置などであってもよい。さらに、本開示においては、3Dプリンタ3などで中敷1A全体を作製する構成について説明するが、中敷の一部分を3Dプリンタ3などで作製する構成でもよい。つまり、作り置きの中敷があって、オーダーメイドの中敷を作製するために、作り置きの中敷と組み合わせるパーツを上記の3Dプリンタ3などで作製してもよい。また、オーダーメイドの中敷を作製する中敷作製システムには、作り置きしてある複数のパーツを個人の足の形状など情報に基づいて選択し、これらを組み合わせて中敷を作製してもよい。
【0018】
[予測装置の構成]
図2に示すように、中敷設計装置1は、プロセッサ11と、メモリ12と、ストレージ13と、インターフェース14と、メディア読取装置15と、通信装置16とを備える。これらの各構成は、プロセッサバス17を介して接続されている。
【0019】
プロセッサ11は、「演算部」の一例である。プロセッサ11は、ストレージ13に記憶されたプログラム(たとえば、設計プログラム130、予測プログラム131、およびOS(Operating System)132)を読み出し、読み出したプログラムをメモリ12に展開して実行するコンピュータである。プロセッサ11は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはMPU(Multi Processing Unit)などで構成される。なお、プロセッサ11は、演算回路(Processing Circuitry)で構成されていてもよい。
【0020】
メモリ12は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)またはSRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性メモリ、あるいは、ROM(Read Only Memory)またはフラッシュメモリなどの不揮発性メモリなどで構成される。
【0021】
ストレージ13は、「記憶部」の一例である。ストレージ13は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)などの不揮発性記憶装置などで構成される。ストレージ13は、設計プログラム130と、予測プログラム131と、OS132と、荷重足形データ133と、無荷重足形データ134となどを記憶する。
【0022】
設計プログラム130は、靴100に装着することでユーザが靴100に求める特性を得ることができる中敷1Aを設計する処理(後述する図9に示す設計処理)を実行するためのプログラムである。
【0023】
予測プログラム131は、無荷重状態におけるユーザの足の形状を予測する場合に実行されるプログラムである。予測プログラム131は、測定装置2によって取得された荷重状態におけるユーザの足の形状に基づき、中敷設計装置1が無荷重状態におけるユーザの足の形状を予測する処理(後述する図16に示す予測処理)を実行するためのプログラムである。
【0024】
荷重足形データ133は、無荷重状態におけるユーザの足の形状を予測する場合に用いられるデータである。荷重足形データ133は、「第1サンプルデータ」の一例で、荷重状態における複数のサンプルの足の形状データから算出されたデータを含む。荷重足形データ133については、図17を用いて後述する。
【0025】
無荷重足形データ134は、無荷重状態におけるユーザの足の形状を予測する場合に用いられるデータである。無荷重足形データ134は、「第2サンプルデータ」の一例で、無荷重状態における複数のサンプルの足の形状データから算出されたデータを含む。無荷重足形データ134については、図18を用いて後述する。
【0026】
インターフェース14は、「入力部」または「出力部」の一例である。インターフェース14は、中敷設計装置1のユーザによる入力を受け付け、キーボード、マウス、およびタッチデバイスなどで構成される。
【0027】
メディア読取装置15は、リムーバブルディスク18などの記憶媒体を受け入れ、リムーバブルディスク18に格納されているデータを取得する。
【0028】
通信装置16は、「入力部」または「出力部」の一例である。通信装置16は、有線通信または無線通信を行うことによって、他の装置との間でデータを送受信する。たとえば、通信装置16は、測定装置2と通信することによって、測定装置2によって取得された足の形状データを測定装置2から受け付ける取得する。通信装置16は、3Dプリンタ3と通信することによって、中敷1Aを作製するために用いる中敷1Aの設計データを3Dプリンタ3に出力する。
【0029】
なお、中敷設計装置1は、通信装置16によって足の形状データを測定装置2から受け付けることに限らない。たとえば、中敷設計装置1は、インターフェース14を用いてユーザによって入力された足の形状データを受け付けてもよい。あるいは、中敷設計装置1は、メディア読取装置15によってリムーバブルディスク18に記憶された足の形状データを読み取ってもよい。
【0030】
[中敷1Aの設計データ]
図4図8を参照しながら、中敷1Aの設計データについて説明する。中敷1Aの設計データには、長さや幅などの形状パラメータ以外に、材料、構造、部位別のカップ高、中敷の縮率、部位別の厚み、アーチ位置、底面形状などの調整パラメータが含まれる。なお、中敷1Aの設計データには、形状パラメータ以外に、材料、構造、部位別のカップ高、中敷の縮率、部位別の厚み、アーチ位置、底面形状などの調整パラメータのうち少なくとも1つのパラメータを含んでいれば、靴100の特性を変更することができる。
【0031】
中敷1Aの設計データに含まれる調整パラメータのうち、材料は、中敷1Aに使用する材料を示している。材料を調節することによって、クッション性、グリップ性、屈曲性、耐久性、反発性、軽量性を必要に応じて、付与することができる。中敷1Aに使用する材料を樹脂製とする場合には、たとえばポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド系熱可塑性エラストマ(TPA、TPAE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)とすることができる。中敷1Aに使用する材料をゴム製とする場合には、たとえばブタジエンゴム(BR)とすることができる。中敷1Aに使用する材料をポリマー組成物に含有させるポリマーとする場合には、たとえばオレフィン系エラストマやオレフィン系樹脂等のオレフィン系ポリマーとすることができる。オレフィン系ポリマーとしては、たとえばポリエチレン(たとえば直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-ペンテン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、1-ブテン-4-メチル-ペンテン、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体、プロピレン-メタクリル酸共重合体、プロピレン-メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン-メチルアクリレート共重合体、プロピレン-エチルアクリレート共重合体、プロピレン-ブチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピレン-酢酸ビニル共重合体のポリオレフィン等が挙げられる。
【0032】
また、上記ポリマーは、たとえばアミド系エラストマやアミド系樹脂等のアミド系ポリマーであってもよい。アミド系ポリマーとしては、たとえばポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610等が挙げられる。
【0033】
また、上記ポリマーは、たとえばエステル系エラストマやエステル系樹脂等のエステル系ポリマーであってもよい。エステル系ポリマーとしては、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0034】
また、上記ポリマーは、たとえばウレタン系エラストマやウレタン系樹脂等のウレタン系ポリマーであってもよい。ウレタン系ポリマーとしては、たとえばポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン等が挙げられる。
【0035】
また、上記ポリマーは、たとえばスチレン系エラストマやスチレン系樹脂等のスチレン系ポリマーであってもよい。スチレン系エラストマとしては、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体(SEB)、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、SBSの水素添加物(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS))、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、SISの水素添加物(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS))、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体(SIBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエン(SBSB)、スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエン-スチレン(SBSBS)等が挙げられる。スチレン系樹脂としては、たとえばポリスチレン、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)等が挙げられる。
【0036】
また、上記ポリマーは、たとえばポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系ポリマー、ウレタン系アクリルポリマー、ポリエステル系アクリルポリマー、ポリエーテル系アクリルポリマー、ポリカーボネート系アクリルポリマー、エポキシ系アクリルポリマー、共役ジエン重合体系アクリルポリマーならびにその水素添加物、ウレタン系メタクリルポリマー、ポリエステル系メタクリルポリマー、ポリエーテル系メタクリルポリマー、ポリカーボネート系メタクリルポリマー、ポリエステル系ウレタンアクリレート、ポリカーボネート系ウレタンアクリレート、ポリエーテル系ウレタンアクリレート、エポキシ系メタクリルポリマー、共役ジエン重合体系メタクリルポリマーならびにその水素添加物、ポリ塩化ビニル系樹脂、シリコーン系エラストマ、ブタジエンゴム、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等であってもよい。
【0037】
なお、中敷1Aの材料は、生分解性の素材、複合材料(例えば、炭素繊維、ガラス繊維とゴム、樹脂の複合材料)など材料を採用してもよい。また、中敷1Aの材料は、中敷1A全体を同じ1つの材料で作製しても、部位別に硬度異なる同一材料、または異なる材料で作製してもよい。
【0038】
中敷1Aの設計データに含まれる調整パラメータのうち、部位別のカップ高は、各部位における中敷1Aの内底面からの中敷1Aの側壁の高さを示している。部位別のカップ高を調節することによって、フィット性、安定性、切り返し特性、アーチサポートを必要に応じて、付与することができる。図4は、実施の形態に係る中敷1Aの部位別のカップ高を説明するための模式図である。図4に示すように、中敷1Aは、中敷1Aの内底面h0から外側前足部の側壁の高さをh1、中敷1Aの内底面h0から外側中足部の側壁の高さをh2、中敷1Aの内底面h0から外側後足部の側壁の高さをh3とする。さらに、中敷1Aは、中敷1Aの内底面h0からヒール後方の側壁の高さをh4、中敷1Aの内底面h0から内側アーチ部の側壁の高さをh5とする。
【0039】
中敷1Aの設計データに含まれる調整パラメータのうち、部位別の厚みは、各部位における中敷1Aの厚みを示している。部位別の厚みを調節することによって、クッション性、屈曲性、フィット性、軽量性、反発性、切り返し特性を必要に応じて、付与することができる。図5は、実施の形態に係る中敷1Aの部位別の厚みを説明するための模式図である。図5に示すように、中敷1Aは、中敷1Aの外側前足部の厚みをD1、中敷1Aの外側中足部の厚みをD2、中敷1Aの外側後足部の厚みをD3とする。さらに、中敷1Aは、中敷1Aの内側後足部の厚みをD4、中敷1Aの内側中足部の厚みをD5、中敷1Aの内側前足部の厚みをD6とする。
【0040】
中敷1Aの設計データに含まれる調整パラメータのうち、アーチ位置は、足のアーチをサポートする中敷1Aのアーチ部分の位置を示している。図6は、実施の形態に係る中敷1Aのアーチ位置を説明するための模式図である。図6に示すように、中敷1Aは、後足側にアーチ部分を設けるアーチ位置をL1、中足側にアーチ部分を設けるアーチ位置をL2、前足側にアーチ部分を設けるアーチ位置をL3とする。なお、図6では、アーチ位置を分かりやすく説明するため、アーチ位置をL1~L3の3つの位置を図示しているが、実際のアーチ位置は、ユーザの足形から予測変換された足形状を元にアーチトップの位置を決定した上で、アーチ位置を計算して特定する。
【0041】
中敷1Aの設計データに含まれる調整パラメータのうち、構造は、中敷1Aが平板で形成されているのかラティス構造(三次元メッシュ構造体)、ジャイロイドなどの面構造で形成されているのかなどを示している。構造を調節することによって、クッション性、安定性、グリップ性、屈曲性、耐久性、通気性、軽量性、反発性、切り返し特性を必要に応じて、付与することができる。図7は、三次元メッシュ構造体で作製された中敷1Aを示す模式図である。図7に示すように、三次元メッシュ構造体で形成されている中敷1Aは、基層部10および上層部20からなる2層構造を有している。なお、中敷1Aを形成する三次元メッシュ構造体は、光造形方式などの三次元積層造形法で作製することができる。
【0042】
基層部10は、立体格子構造を単位構造としかつ当該単位構造が繰り返し複数配列されてなる三次元メッシュ構造体にて構成されている。図8は、図7に示す中敷の基層部が有する立体構造を説明するための模式図である。図8に示すように、中敷1Aの基層部10は、立体格子構造からなる単位構造4Aが繰り返し複数配列されてなる三次元メッシュ構造体3Aにて構成されている。より具体的には、複数の単位構造4Aは、幅方向(図中に示すX方向)、奥行き方向(図中に示すY方向)および高さ方向(図中に示すZ方向)の各々に沿って規則的にかつ連続的に繰り返し配列されている。図8においては、幅方向、奥行き方向および高さ方向においてそれぞれ隣接する3つの単位構造4Aのみを抜き出して示しており、その破断面には、濃い色を付している。
【0043】
立体格子構造からなる単位構造4Aは、所定方向に沿って延在する複数の柱が相互に接続されてなる立体的形状を有している。単位構造4Aとしては、様々な構造のものが利用でき、たとえば直方体格子、ダイヤモンド格子、八面体格子、ダブルピラミッド格子、あ
るいは、これら格子に各種のサポートが付加されたもの等、各種の構造の適用が可能である。なお、図示する単位構造4Aは、直方体格子に中央サポートが付加されたものである。
【0044】
このように構成された基層部10を中敷1Aの下部側の部分に配置することにより、中敷1Aに高い変形能をもたせることが可能になるため、緩衝性能に優れた履き心地のよい中敷きとすることができるとともに、着用時の安定性が高められた中敷きとすることも可能になる。また、基層部10が上記構成を有していることにより、その大きさに比して軽量の中敷きとすることもでき、さらには、通気性に優れた中敷きとすることもできる。
【0045】
中敷1Aの設計データに含まれる調整パラメータのうち、中敷の縮率がある。中敷の縮率を調節することによって、安定性、フィット性、アーチサポートの特性を必要に応じて、付与することができる。中敷の縮率は、足形状と中敷1Aの内底面によって作られる空間の圧縮率を示していて、完全に埋まっている状態を100%とする。また、本開示で示した中敷1Aの設計データに含まれる調整パラメータは、一例であって、これらのパラメータに限定されない。
【0046】
中敷1Aの設計データには調整パラメータ以外の基礎的なパラメータとして、底面形状がある。底面形状は、中敷1Aの外底面に形成される凹凸などの形状を示している。なお、中敷1Aを用いる靴100が決まると当該靴100の内底面に対応して中敷1Aの底面形状が決まるため、底面形状は、中敷1Aを設計するための基礎的なパラメータとして考えられる。ただし、中敷1Aには、製造上や利便性の理由から、端部に曲面を設けてもよい。
【0047】
[中敷1Aの設計データの生成]
図9図15を参照しながら、中敷設計装置1で中敷1Aの設計データを生成する設計処理について説明する。図9は、実施の形態に係る中敷設計装置1が実行する設計処理を示すフローチャートである。図9に示す各ステップ(以下、「S」で示す。)は、中敷設計装置1のプロセッサ11が設計プログラム130を実行することによって実現される。
【0048】
図9に示すように、中敷設計装置1は、測定装置2によって取得された足型データを受け付ける(S101)。中敷設計装置1は、S101で受け付けた足型データに基づいて、中敷1Aの設計データを生成する(S102)。ここで、生成する中敷1Aの設計データは、足型データの形状パラメータのみを最適化した設計データであり、公知の方法を用いて足の形状にフィットさせた中敷1Aの設計データである。
【0049】
中敷設計装置1では、さらにユーザが希望する靴特性(第1特性パラメータ)を受け付ける(S103)。靴特性には、例えば、クッション性、安定性、グリップ性、屈曲性、フィット性、耐久性、通気性、軽量性、反発性、切り返し特性、アーチサポートなどのうち少なくとも1つの特性パラメータを含んでいればよい。なお、本開示で示した靴特性に含まれる特性パラメータは、一例であって、これらのパラメータに限定されない。
【0050】
靴特性に含まれる特性パラメータについて、詳しく説明する。なお、靴特性に含まれる特性パラメータは、靴の設計・開発時において事前に各パラメータが設定されている場合がある。まず、靴特性に含まれる特性パラメータのうちクッション性は、靴100を履いて着地した際、衝撃を吸収する靴100の性能を示す特性パラメータである。クッション性は、例えば、設計上の性能評価結果のほか、ユーザが靴100を履いて着地した際に感じる衝撃の大きさをユーザの感覚に基づいて5段階で評価したり、靴100または身体に取り付けたセンサや、測定器を用いてユーザが靴100を履いて着地した際、当該センサに加わる力を計測して評価したりしてもよい。
【0051】
靴特性に含まれる特性パラメータのうち安定性は、靴100を履いて着地した際の接地面に対する水平方向へのずれや、前額面における傾きなどの靴100の性能を示す特性パラメータである。安定性は、例えば、設計上の性能評価結果のほか、ユーザが靴100を履いて着地した際に感じる水平方向へのずれや、前額面における傾きなどの大きさを5段階で評価したり、靴100または身体に取り付けたセンサや、画像解析などでユーザが靴100を履いて着地した際の水平方向へのずれや、前額面における傾きなどの大きさを変位量や角度、地面反力の変化などにより計測して評価したりしてもよい。
【0052】
靴特性に含まれる特性パラメータのうちグリップ性は、靴100を履いて走行した際の接地面と靴100、または靴100内部とユーザの足部との摩擦の大きさを示す特性パラメータである。グリップ性は、例えば、設計上の性能評価結果のほか、ユーザが靴100を履いて走行した際に感じる接地面と靴100との摩擦の大きさを5段階で評価したり、ユーザが靴100を履いて走行した際の接地面と靴100との摩擦の大きさを測定器で計測して評価したりしてもよい。
【0053】
靴特性に含まれる特性パラメータのうち屈曲性は、靴100を履いて走行した際の靴100の曲げやすさを示す特性パラメータである。屈曲性は、例えば、設計上の性能評価結果のほか、ユーザが靴100を履いて走行した際に感じる靴100の曲げやすさを5段階で評価したり、靴100に荷重を加えた際の靴100の曲がり具合を測定器で計測して評価したりしてもよい。
【0054】
靴特性に含まれる特性パラメータのうち通気性は、靴100を通過する空気の量を示す特性パラメータである。通気性は、例えば、設計上の性能評価結果のほか、ユーザが靴100を履いた際に感じる空気の通りやすさを5段階で評価したり、靴100を通過する空気の量や温度および湿度を測定器で計測して評価したりしてもよい。
【0055】
靴特性に含まれる特性パラメータのうち軽量性は、靴100の重さを示す特性パラメータである。軽量性は、例えば、設計上の性能評価結果のほか、ユーザが感じる靴100の重さを5段階で評価したり、靴100の重さを測定器で計測して評価したりしてもよい。
【0056】
靴特性に含まれる特性パラメータのうち反発性は、靴100を履いて着地した際、押し戻す力の大きさを示す特性パラメータである。反発性は、例えば、圧縮時の荷重変位応答などの設計上の性能評価結果のほか、ユーザが靴100を履いて着地した際に感じる押し戻す力の大きさをユーザの感覚に基づいて5段階で評価したり、靴100のソールに錘を一定の高さから落とし、跳ね返り高さ率(最大跳ね返り高さ/初期高さ)を計測して評価したりしてもよい。
【0057】
靴特性に含まれる特性パラメータのうち切り返し特性は、靴100を履いて左右方向に移動する際の安定感を示す特性パラメータである。切り返し特性は、例えば、設計上の性能評価結果のほか、ユーザが靴100を履いて左右方向に移動する際に感じる安定感を5段階で評価したり、画像解析などでユーザが靴100を履いて左右方向に移動する際の靴100の左右方向の変形の大きさや地面反力を計測して評価したりしてもよい。
【0058】
靴特性に含まれる特性パラメータのうちアーチサポートは、靴100を履いた際に足のアーチのサポート感を示す特性パラメータである。アーチサポートは、例えば、設計上の性能評価結果のほか、ユーザが靴100を履いた際に感じる足のアーチのサポート感を5段階で評価したり、足のアーチのサポート部分の大きさや硬さを測定器で測定して評価したりしてもよい。
【0059】
前述のように、靴特性を評価する評価指標および、その評価方法について説明したが、あくまでも評価指標および評価方法は一例であり、これらに限定されるものではない。また、前述した靴特性に含まれる特性パラメータも一例であり、一般的な靴の特性を示す他の特性パラメータを採用してもよい。
【0060】
中敷設計装置1では、ユーザが希望する靴特性(第1特性パラメータ)は各々の靴特性を入力するだけでなく、ユーザが靴を使用する用途、競技、性別、年齢、体重、プロネーション、平均走速度、平均走行距離、走路面、受傷歴などの情報を入力することで個人の使用習慣に適した推奨の靴特性を提示して、ユーザが希望する靴特性の入力サポートを行ってもよい。また、中敷設計装置1では、ストレージ13に予めユーザの注文履歴の靴特性を記憶しておき、ユーザが過去に注文した靴特性に基づき、希望する改善点の入力サポートを行ってもよい。また、中敷設計装置1では、ストレージ13に予め有名選手が使用する靴特性を記憶しておき、ユーザが希望する靴特性を入力する際に提示したり、ユーザがインターネットで入手した他の選手が使用する靴特性を読み込むことができるようにしたりして、ユーザが希望する靴特性の入力サポートを行ってもよい。さらに、中敷設計装置1では、ストレージ13に様々な使用習慣の個人が選んだ靴特性が予め記憶してあり、ユーザが入力した使用習慣に近似する個人の使用習慣に対応する靴特性を読み込むようにして、ユーザが希望する靴特性の入力サポートを行ってもよい。また、中敷設計装置1は、SNS(Social Networking Service)サイト、購入サイトなどに投稿されている個人が選んだ靴特性などの情報を参照することができるようにして、ユーザが希望する靴特性の入力サポートを行ってもよい。
【0061】
次に、中敷設計装置1では、中敷1Aを使用する靴100の靴データ(第2特性パラメータ)を受け付ける(S104)。靴データには、S103で受け付けた靴特性と対比できるように、例えば、クッション性、安定性、グリップ性、屈曲性、フィット性、耐久性、通気性、軽量性、反発性、切り返し特性、アーチサポートなどのうち少なくとも1つの特性パラメータを含んでいればよい。なお、本開示で示した靴データに含まれる特性パラメータは、一例であって、これらのパラメータに限定されない。中敷設計装置1では、靴100の靴データを、靴100のメーカから提供を受けてあらかじめストレージ13に記憶してある。もちろん、ストレージ13に記憶されていない靴100の靴データについては、ユーザが中敷設計装置1に靴データを直接入力してもよく、また店舗などで靴100を評価して、中敷設計装置1に靴データを入力してもよい。
【0062】
中敷設計装置1は、S103で受け付けたユーザが希望する靴特性と、S104で受け付けた靴データとの差分値を求める(S105)。中敷設計装置1は、S105で求めた差分値が所定値以上となる靴特性のパラメータがあるか否かを判断する(S106)。所定値以上となる靴特性のパラメータがある場合(S106でYES)、中敷設計装置1は、ユーザが希望する靴特性のパラメータへ変更するため中敷1Aの設計データを調整する(S107)。
【0063】
具体的に、ユーザが希望する靴特性に靴100の靴データを変更すべく、中敷設計装置1で、中敷1Aの設計データを調整する実施例について説明する。図10は、実施の形態に係る中敷設計装置1で設計データを調整する実施例1を説明するための模式図である。実施例1では、ユーザの購入した靴100がランニングシューズで、この靴100を使用する用途、競技が例えばテニス、バスケットなどの高い切り返し特性が必要な競技に使用したい場合に、靴特性を変更することができる中敷1Aを中敷設計装置1で設計する例を説明する。
【0064】
まず、ユーザが希望するテニス、バスケットなどの競技に必要な靴特性を中敷設計装置1で受付ける(S103)。必要な靴特性は、図10に示すように、安定性およびグリップ性が”4”、軽量性および切り返し特性が”5”である。なお、靴特性は、5段階評価として”1”が低評価、”5”が高評価とし、靴特性の用途に応じて無関係なパラメータは”n/a”と記載し評価から除外する。図10に示す例では、テニス、バスケットなどの競技の用途に必要な靴特性においてクッション性、耐久性などは評価から除外している。
【0065】
一方、ユーザの購入した靴100の型番などを中敷設計装置1に入力して、当該型番の靴100の靴データをストレージ13から読み出して、中敷設計装置1で受付ける(S104)。受け付けた靴100の靴データは、図10に示すように、安定性およびグリップ性が”3”、軽量性が”4”、および切り返し特性が”2”である。なお、靴100の靴データは、今回の用途に関係なく図10に示すように、すべてのパラメータに評価値が入力されている。
【0066】
必要な靴特性と靴100の靴データとの差分値を中敷設計装置1で求める(S105)。求めた差分値は、図10に示すように、安定性、グリップ性および軽量性が”1”、切り返し特性が”3”である。中敷設計装置1は、差分値が”2”(所定値)以上である靴特性のパラメータを変更する必要がある靴特性のパラメータと判断する(S106)。図10に示すように、切り返し特性の差分値が”3”となり、所定値以上であるため変更する必要がある靴特性のパラメータと判断される。なお、差分値が所定値以上である場合に、変更する必要がある靴特性のパラメータと判断することは一例であり、例えば、差分値がマイナスで、かつ差分値の絶対値が”2”(所定値)以上である場合に、変更する必要がある靴特性のパラメータと判断してもよい。
【0067】
中敷設計装置1は、靴特性のパラメータを変更すべく、中敷1Aの設計データを調整する(S107)。図10に示すように、靴100の切り返し特性を”2”から”5”へと近づけるため、中敷1Aの設計データのうち、構造、部位別のカップ高、および部位別の厚みを調整する。中敷設計装置1は、切り返し特性を向上するため、靴100の外倒れを防止すべく、硬めの構造にし、外側のカップ高(h1~h3)を高く、外側の厚みをやや厚く設定した中敷1Aの設計データに調整する。
【0068】
中敷設計装置1では、靴特性のパラメータを変更するには、どの中敷1Aの設計データを調整する必要があるのかについて関係性があらかじめストレージ13に記憶してある。図11は、靴特性と中敷の設計データとの関連性を説明するための図である。図11に示す関連性は一例であり、例えば、靴特性のパラメータのクッション性を変更するには、中敷1Aの設計データの材料、構造、部位別の厚みのうち、少なくとも1つのパラメータを調整する必要がある。また、靴特性のパラメータの安定性を変更するには、中敷1Aの設計データの構造、部位別の厚み、中敷きの縮率のうち、少なくとも1つのパラメータを調整する必要がある。なお、中敷設計装置1は、ユーザの性別、年齢、体重など、また平均走速度、平均走行距離、走路面、受傷歴などを考慮して調整するパラメータの量を変更してもよい。
【0069】
次に、実施例2では、ユーザの足のプロネーションと、靴100のプロネーションとが異なる場合に、靴特性を変更することができる中敷1Aを中敷設計装置1で設計する例を説明する。まず、図12は、プロネーションを説明するための模式図である。プロネーションとは、着地の衝撃を分散するために、着地時にかかとが内側に倒れ込むように動く人体の自然な動きである。具体的に、プロネーションは、図12に示すように、着地前のかかと201から延びる線202が、着地時、内側に倒れ込むことでかかと201から延びる線が線203のようになる。プロネーションには、線202に対する線203の角度が大きいオーバープロネーション、線202に対する線203の角度が適度な角度であるニュートラルプロネーション、線202に対する線203の角度が小さいであるアンダープロネーションに分類することができる。そのため、オーバープロネーションの足のユーザが、ニュートラルプロネーションの靴100を履いた場合、ひざの関節など脚に過度な負担がかかったり、衝撃緩衝の効果が不充分なために、痛みや怪我につながったりすることがある。
【0070】
図13は、実施の形態に係る中敷設計装置1で設計データを調整する実施例2を説明するための模式図である。図13では、走り方としてオーバープロネーションのユーザが、ニュートラルプロネーションの靴100を履く場合に、靴100に装着することで靴特性をオーバープロネーションに変更することができる中敷1Aを中敷設計装置1で設計する例を説明する。
【0071】
まず、オーバープロネーションの靴特性を、ユーザが希望する靴特性として中敷設計装置1で受付ける(S103)。必要な靴特性は、図13に示すように、クッション性が”4”、安定性が”5”、およびアーチサポートが”3”である。なお、靴特性は、5段階評価として”1”が低評価、”5”が高評価とし、靴特性の用途に応じて無関係なパラメータは”n/a”と記載し評価から除外する。
【0072】
一方、ユーザの購入した靴100の型番などを中敷設計装置1に入力して、当該型番の靴100の靴データをストレージ13から読み出して、中敷設計装置1で受付ける(S104)。受け付けた靴100の靴データは、図13に示すように、クッション性が”5”、安定性が”3”、およびアーチサポートが”2”である。なお、靴100の靴データは、今回の用途に関係なく図13に示すように、すべてのパラメータに評価値が入力されている。
【0073】
必要な靴特性と靴100の靴データとの差分値を中敷設計装置1で求める(S105)。求めた差分値は、図13に示すように、クッション性が”-1”、安定性が”2”、およびアーチサポートが”1”である。中敷設計装置1は、差分値が”2”(所定値)以上である靴特性のパラメータを変更する必要がある靴特性のパラメータと判断する(S106)。図13に示すように、安定性の差分値が”2”となり、所定値以上であるため変更する必要がある靴特性のパラメータと判断される。
【0074】
中敷設計装置1は、靴特性のパラメータを変更するため、中敷1Aの設計データを調整する(S107)。図13に示すように、靴100の安定性を”3”から”5”へと近づけるため、中敷1Aの設計データのうち、構造、部位別のカップ高、および中敷の縮率を調整する。中敷設計装置1は、着地時、かかとが内側に倒れ込むのを防止すべく、内側の構造を硬めにし、内側アーチ部のカップ高(h5)を高く、内側の中敷の縮率をやや高く設定した中敷1Aの設計データに調整する。なお、中敷設計装置1は、ユーザの性別、年齢、体重など、また平均走速度、平均走行距離、走路面、受傷歴などを考慮して調整するパラメータの量を変更してもよい。
【0075】
次に、実施例3では、ユーザが日々のランニングに使用するために購入した靴100が競技用の靴でオーバースペックとなっている場合に、靴特性を変更することができる中敷1Aを中敷設計装置1で設計する例を説明する。図14は、実施の形態に係る中敷設計装置1で設計データを調整する実施例3説明するための模式図である。まず、ランニング用途の靴特性を、ユーザが希望する靴特性として中敷設計装置1で受付ける(S103)。必要な靴特性は、図14に示すように、クッション性が”4”、安定性が”3”、グリップ性が”3”、屈曲性が”4”、フィット性が”3”、耐久性が”3”、通気性が”4”、軽量性が”3”、反発性が”3”、およびアーチサポートが”4”である。なお、靴特性は、5段階評価として”1”が低評価、”5”が高評価とし、靴特性の用途に応じて無関係なパラメータは”n/a”と記載し評価から除外する。
【0076】
一方、ユーザの購入した靴100の型番などを中敷設計装置1に入力して、当該型番の靴100の靴データをストレージ13から読み出して、中敷設計装置1で受付ける(S104)。受け付けた靴100の靴データは、図14に示すように、クッション性が”2”、安定性が”2”、グリップ性が”4”、屈曲性が”4”、フィット性が”3”、耐久性が”2”、通気性が”5”、軽量性が”5”、反発性が”4”、およびアーチサポートが”3”である。なお、靴100の靴データは、ランニング用途のため切り返し特性は”n/a”と記載し評価から除外している。
【0077】
必要な靴特性と靴100の靴データとの差分値を中敷設計装置1で求める(S105)。求めた差分値は、図14に示すように、クッション性が”2”、安定性が”1”、グリップ性が”-1”、屈曲性が”0”、フィット性が”0”、耐久性が”1”、通気性が”-1”、軽量性が”-2”、反発性が”-1”、およびアーチサポートが”1”である。中敷設計装置1は、差分値が”2”(所定値)以上である靴特性のパラメータを変更する必要がある靴特性のパラメータと判断する(S106)。図14に示すように、クッション性の差分値が”2”となり、所定値以上であるため変更する必要がある靴特性のパラメータと判断される。
【0078】
中敷設計装置1は、靴特性のパラメータを変更するため、中敷1Aの設計データを調整する(S107)。図14に示すように、靴100のクッション性を”2”から”4”へと近づけるため、中敷1Aの設計データのうち、材料、構造、および部位別の厚みを調整する。中敷設計装置1は、クッション性を良くするため、弾力性のある材料に変更したり、ラティス構造を採用したり、全体的な厚みを1mm厚く設定した中敷1Aの設計データを調整する。なお、差分値がマイナスで、かつ差分値の絶対値が”2”(所定値)以上である軽量性を、変更する必要がある靴特性のパラメータと判断してもよい。この場合、中敷1Aの設計データのうち、材料、構造、および部位別の厚みをさらに調整してもよい。なお、中敷設計装置1は、ユーザの性別、年齢、体重など、また平均走速度、平均走行距離、走路面、受傷歴などを考慮して調整するパラメータの量を変更してもよい。
【0079】
次に、実施例4では、購入した靴100に対して、ユーザが選択した靴特性をより高くすることを希望した場合に、靴特性を変更することができる中敷1Aを中敷設計装置1で設計する例を説明する。図15は、実施の形態に係る中敷設計装置1で設計データを調整する実施例4説明するための模式図である。まず、ユーザが選択した靴特性を、ユーザが希望する靴特性として中敷設計装置1で受付ける(S103)。必要な靴特性は、図15に示すように、クッション性が”5”、および安定性が”5”である。なお、靴特性は、5段階評価として”1”が低評価、”5”が高評価とし、ユーザが選択していない靴特性を無関係なパラメータとして”n/a”と記載し評価から除外する。
【0080】
一方、ユーザの購入した靴100の型番などを中敷設計装置1に入力して、当該型番の靴100の靴データをストレージ13から読み出して、中敷設計装置1で受付ける(S104)。受け付けた靴100の靴データは、図15に示すように、クッション性が”4”、安定性が”3”、グリップ性が”3”、屈曲性が”4”、フィット性が”3”、耐久性が”3”、通気性が”4”、軽量性が”3”、反発性が”3”、切り返し特性が”2”、およびアーチサポートが”4”である。
【0081】
必要な靴特性と靴100の靴データとの差分値を中敷設計装置1で求める(S105)。求めた差分値は、図15に示すように、クッション性が”1”、および安定性が”2”である。なお、図15では、ユーザが選択した靴特性のパラメータにハッチングを付している。中敷設計装置1は、差分値が”1”(所定値)以上である靴特性のパラメータを変更する必要がある靴特性のパラメータと判断する(S106)。図15に示すように、クッション性の差分値が”1”および安定性の差分値が”2”となり、所定値以上であるため変更する必要がある靴特性のパラメータと判断される。
【0082】
中敷設計装置1は、靴特性のパラメータを変更するため、中敷1Aの設計データを調整する(S107)。図15に示すように、靴100のクッション性を”4”から”5”へと近づけるため、中敷1Aの設計データのうち、材料、構造、および部位別の厚みを調整する。また、靴100の安定性を”3”から”5”へと近づけるため、中敷1Aの設計データのうち、構造、部位別の厚み、および中敷の縮率を調整する。中敷設計装置1は、クッション性を良くするため、弾力性のある材料に変更したり、ラティス構造を採用したり、全体的な厚みを1mm厚く設定した中敷1Aの設計データに調整する。さらに、中敷設計装置1は、安定性を良くするため、内側アーチ部のカップ高(h5)を高くしたり、中敷の縮率を60%から70%に変更したりした中敷1Aの設計データに調整する。なお、中敷設計装置1は、ユーザの性別、年齢、体重など、また平均走速度、平均走行距離、走路面、受傷歴などを考慮して調整するパラメータの量を変更してもよい。
【0083】
図9に戻って、中敷設計装置1は、差分値が所定値以上となるすべての靴特性のパラメータを変更した場合、所定値以上となる靴特性のパラメータがないと判断し(S106でNO)、調整した中敷1Aの設計データを3Dプリンタ3(またはNC工作機械)に出力する(S108)。3Dプリンタ3(またはNC工作機械)は、調整した中敷1Aの設計データで中敷1Aを作製することで、中敷1Aを装着した靴100の靴特性をユーザが希望する靴特性に近づけることができる。
【0084】
[ユーザの足の形状予測]
図9に示すS102では、中敷設計装置1は、S101で受け付けた足型データに基づいて、中敷1Aの設計データを生成する。S101で受け付けた足型データは、被測定者(ユーザ)の足に荷重がかかった状態で、レーザ測定部22によって測定された足型データである。しかし、足の形状に適した中敷1Aを作製するためには、荷重による足の変形がない無荷重状態における足型データであることが望ましい。中敷設計装置1では、無荷重状態における被測定者の足型データを容易に取得するため、無荷重状態における被測定者の足の形状の予測を行うことが可能である。
【0085】
図16図19を参照しながら、中敷設計装置1による無荷重状態における被測定者の足の形状の予測処理について説明する。図16は、無荷重状態における被測定者の足の形状を予測する予測処理を示すフローチャートである。図17は、荷重足形データの一例を示す図である。図18は、無荷重足形データの一例を示す図である。図19は、被測定者データと第1サンプルデータとの差分の算出を説明するための図である。図16に示す各ステップ(以下、「S」で示す。)は、中敷設計装置1のプロセッサ11が予測プログラム131を実行することによって実現される。
【0086】
図16に示すように、中敷設計装置1は、測定装置2によって取得された荷重状態における被測定者の足の形状の測定データ(足型データ)を含む被測定者データを取得する(S201)。中敷設計装置1は、被測定者データに基づき、相同モデルを作製し、被測定者データの特徴量(この例では、アーチ高率,踵の傾斜角度)を抽出する(S202)。中敷設計装置1は、被測定者データの特徴量に基づき、被測定者の足の足形タイプを選択する(S203)。たとえば、中敷設計装置1は、被測定者の足のアーチタイプおよび踵の傾斜タイプに基づいて分類される図17に示す足形タイプから一の足形タイプを選択する。
【0087】
中敷設計装置1は、ストレージ13に記憶している荷重足形データ133から、S203で選択した被測定者の足形タイプに合った荷重状態における第1サンプルデータを抽出する(S204)。抽出された第1サンプルデータは、被測定者の足形タイプに合った荷重状態における平均的な足の形状データ(相同モデル)を含む。
【0088】
図17に示すように、荷重足形データは、足の形状に関する少なくとも1つの特徴量に基づき、荷重状態における複数のサンプルの足の形状の測定データ(具体的には測定データに基づき作製された相同モデル)を複数の足形タイプごとに分類したデータを含む。図17に示す例では、少なくとも1つの特徴量として、アーチ高率および踵の傾斜角度(踵の内側への倒れ込み角度)が用いられている。そして、アーチ高率に基づいて分類された3種類のアーチタイプと、踵の傾斜角度に基づいて分類された3種類の踵傾斜タイプとによって、荷重足形データは、計9種類の足形タイプに分類される。
【0089】
さらに、中敷設計装置1は、ストレージ13に記憶している無荷重足形データ134から、S203で選択した被測定者の足形タイプに合った無荷重状態における第2サンプルデータを抽出する(S5)。抽出された第2サンプルデータは、被測定者の足形タイプに合った無荷重状態における平均的な足の形状データ(相同モデル)を含む。
【0090】
図18に示すように、無荷重足形データは、足の形状に関する少なくとも1つの特徴量に基づき、無荷重状態における複数のサンプルの足の形状の測定データ(具体的には測定データに基づき作製された相同モデル)を複数の足形タイプごとに分類したデータを含む。図18に示す例では、少なくとも1つの特徴量として、アーチ高率および踵の傾斜角度が用いられている。そして、アーチ高率に基づいて分類された3種類のアーチタイプと、踵の傾斜角度に基づいて分類された3種類の踵傾斜タイプとによって、無荷重足形データは、計9種類の足形タイプに分類される。
【0091】
中敷設計装置1は、S204で抽出した荷重状態における第1サンプルデータの足長および直交足幅を、被測定者データに基づき作製された相同モデルの足長および直交足幅に合わせる(S206)。これにより、第1サンプルデータに対応する荷重状態における平均的な足のカーブ線が、被測定者の足長および直交足幅に合わせて変更される。
【0092】
さらに、中敷設計装置1は、S205で抽出した無荷重状態における第2サンプルデータの足長および直交足幅を、被測定者データに基づき作製された相同モデルの足長および直交足幅に合わせる(S207)。これにより、第2サンプルデータに対応する無荷重状態における平均的な足のカーブ線が、被測定者の足長および直交足幅に合わせて変更される。
【0093】
中敷設計装置1は、被測定者データおよびS206で変更された第1サンプルデータの各々に基づき、足のカーブ線を算出し、被測定者データにおける足のカーブ線と、S206で変更された第1サンプルデータに対応する荷重状態における足のカーブ線とを比較することによって、両者の差分を算出する(S208)。
【0094】
具体的には、図19に示すように、中敷設計装置1は、実線で表される被測定者データにおける足のカーブ線と、点線で表される第1サンプルデータに対応する荷重状態における足のカーブ線とを比較することによって、足長方向における両者のカーブ線の差分を算出する。
【0095】
ここで、荷重状態における第1サンプルデータの足のカーブ線および被測定者データの足のカーブ線は、それぞれ測定装置2によって取得された足裏の形状から算出すればよい。具体的には、荷重状態であっても、輪郭線、内側接地線、および外側接地線が判別可能であるため、輪郭線、内側接地線、および外側接地線に基づき、荷重状態における第1サンプルデータの足のカーブ線および被測定者データの足のカーブ線を算出すればよい。なお、第1サンプルデータの足のカーブ線は、無荷重状態における第2サンプルデータの足のカーブ線を用いてもよい。たとえば、最下線からある高さを通る線と足の内側または外側における外形との交点を用いて、内側接地線および外側接地線を算出し、算出した内側接地線および外側接地線を用いて第2サンプルデータの足のカーブ線を算出し、算出したカーブ線を第1サンプルデータの足のカーブ線としてもよい。
【0096】
中敷設計装置1は、算出したカーブ線の差分に基づき、S206で変更された第2サンプルデータに対応する無荷重状態における足の曲がり度合い(カーブ線)を変更することによって、無荷重状態における被測定者の足の形状(相同モデル)を算出する(S209)。その後、中敷設計装置1は、本処理を終了する。
【0097】
具体的には、中敷設計装置1は、第2サンプルデータにおける足の断面の外形に沿って配置された複数の構成点を、S208で算出した差分を相殺する方向に移動させる。すなわち、中敷設計装置1は、第2サンプルデータにおける足のカーブ線を、被測定者データにおける足のカーブ線に一致させるように、第2サンプルデータにおける足の断面の外形に沿って配置された複数の構成点を移動させる。中敷設計装置1は、このような複数の構成点の移動を、足長方向に沿って所定間隔(たとえば、1mmごと)で実行する。
【0098】
これにより、中敷設計装置1は、測定装置2によって取得された荷重状態における被測定者の足の形状の測定データから、無荷重状態における被測定者の足の形状のデータ(相同モデル)を算出することができる。
【0099】
[変形例]
本開示は、上記の実施例に限られず、さらに種々の変形、応用が可能である。以下、本開示に適用可能な変形例について説明する。
【0100】
実施の形態に係る中敷設計装置1は、図9に示すように、受け付けた靴特性(第1特性パラメータ)と靴データ(第2特性パラメータ)との差分が所定値以上の値を、変更する靴特性のパラメータを判断していたが、これに限られない。
【0101】
たとえば、中敷設計装置1は、受け付けた靴特性(第1特性パラメータ)と靴データ(第2特性パラメータ)との差分に係数を掛けて所定値と比較したり、差分を所定の関数に代入し演算を行ったりすることで、変更する靴特性のパラメータを判断してもよい。
【0102】
中敷設計装置1は、測定装置2が設置された店舗内に設置されてもよいし、クラウド上のサーバ装置として存在してもよい。さらに、クラウド上のサーバ装置として存在する中敷設計装置1は、複数の店舗の各々に設置された測定装置2と通信可能に接続され、各測定装置2から取得した足形データに基づき、中敷1Aの設計データを生成してもよい。
【0103】
[態様]
(1)本開示に係る中敷設計装置は、靴の中敷を設計する中敷設計装置であって、測定した足型データを受け付ける入力部と、入力部で受け付けた足型データに基づいて中敷の設計データを求める演算部と、演算部で求めた設計データを出力する出力部と、を備え、入力部は、ユーザが靴に求める特性を示す第1特性パラメータと、ユーザが選択した靴の特性を示す第2特性パラメータと、をさらに受け付け、演算部は、入力部で受け付けた第1特性パラメータと第2特性パラメータとの差分に基づき、設計データを調整する。
【0104】
これにより、中敷設計装置は、入力部で受け付けた第1特性パラメータと第2特性パラメータとの差分に基づき、設計データを調整するので、靴に装着することでユーザが求める靴特性を得ることができる中敷を設計することができる。
【0105】
(2)(1)に記載の中敷設計装置は、第1特性パラメータおよび第2特性パラメータには、クッション性、安定性、グリップ性、屈曲性、フィット性、耐久性、通気性、軽量性、反発性、切り返し特性、アーチサポートのうち少なくとも1つを含む。これにより、ユーザが求める靴特性を表すことができる。
【0106】
(3)(1)または(2)に記載の中敷設計装置は、設計データは、材料、構造、部位別のカップ高、中敷の縮率、部位別の厚み、アーチ位置、底面形状のうち少なくとも1つを含む。これにより、中敷の設計データを靴特性に応じて調整することができる。
【0107】
(4)(1)~(3)のいずれか1項に記載の中敷設計装置は、演算部は、第1特性パラメータに対して所定値以上の差を有する第2特性パラメータの値を、第1特性パラメータの値に近づく方向に変更すべく設計データを調整する。これにより、靴に装着することでユーザの希望に沿った靴特性を得ることができる中敷を設計することができる。
【0108】
(5)(1)~(3)のいずれか1項に記載の中敷設計装置は、演算部は、ユーザが選択した第1特性パラメータに対して第2特性パラメータの値が、第1特性パラメータの値以上となるように設計データを調整する。これにより、靴に装着することでユーザがより高い靴特性を得ることができる中敷を設計することができる。
【0109】
(6)(1)~(5)のいずれか1項に記載の中敷設計装置は、演算部は、足型データから無荷重状態におけるユーザの足の形状を予測し、予測した足の形状に基づいて中敷の設計データを求める。これにより、無荷重状態におけるユーザの足の形状に沿った中敷を設計することができる。
【0110】
(7)(6)に記載の中敷設計装置は、荷重状態と無荷重状態とで同一の複数のサンプルの足の形状の測定データから算出された、荷重状態における第1サンプルデータおよび無荷重状態における第2サンプルデータを記憶する記憶部をさらに備え、演算部は、足型データと、第1サンプルデータとの差を求め、求めた差と、第2サンプルデータとに基づき、無荷重状態におけるユーザの足の形状を予測する。これにより、無荷重状態におけるユーザの足の形状を容易に予想することができる。
【0111】
(8)本開示に係る中敷設計方法は、靴の中敷を設計する中敷設計方法であって、測定した足型データを受け付けるステップと、ユーザが靴に求める特性を示す第1特性パラメータを受け付けるステップと、ユーザが選択した靴の特性を示す第2特性パラメータを受け付けるステップと、受け付けた足型データに基づいて中敷の設計データを求めるステップと、受け付けた第1特性パラメータと第2特性パラメータとの差分に基づき、設計データを調整するステップと、調整した設計データを出力するステップと、を含む。これにより、中敷設計方法は、受け付けた第1特性パラメータと第2特性パラメータとの差分に基づき、設計データを調整するので、靴に装着することでユーザが求める靴特性を得ることができる中敷を設計することができる。
【0112】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0113】
1 中敷設計装置、1A 中敷、2 測定装置、3 3Dプリンタ、11 プロセッサ、12 メモリ、13 ストレージ、14 インターフェース、15 メディア読取装置、16 通信装置、17 プロセッサバス、18 リムーバブルディスク、21 天板、22 レーザ測定部、100 靴、110 ソール、120 アッパー、121 履き口、130 設計プログラム、131 予測プログラム、132 OS、133 荷重足形データ、134 無荷重足形データ、h0 内底面。
図1
図2
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