(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031312
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】交流発電機
(51)【国際特許分類】
H02P 9/04 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
H02P9/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134797
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 祐介
【テーマコード(参考)】
5H590
【Fターム(参考)】
5H590AA01
5H590AB03
5H590CA07
5H590CC22
5H590CC24
5H590CC31
5H590CC36
5H590EA08
5H590FC26
5H590HA02
5H590HA04
5H590JA02
5H590JB02
5H590KK01
5H590KK04
(57)【要約】
【課題】交流発電機の残容量(使用可能な発電容量)を有効電力値で表示して、追加で接続される負荷の消費電力との関係を明確にする。
【解決手段】交流発電機は、電機子巻線に接続される出力端子から異なる複数の電源仕様で電力を取り出し可能なエンジン駆動の交流発電機であって、出力端子の端子間の電圧値と出力端子に流れる電流値とから残容量を求めて表示する演算処理装置を備え、演算処理装置は、電圧値と電流値から複数の電源仕様毎の残容量を皮相電力値で求める処理と、電圧値と電流値から複数の電源仕様毎の使用電力を有効電力値で求め、使用電力をエンジンの定格出力から差し引いた残電力を求める処理と、複数の電源仕様毎に、皮相電力値の残容量と有効電力値の残電力を比較し、より小さい方の値を有効電力値の残容量の表示値とする処理を行う。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電機子巻線に接続される出力端子から異なる複数の電源仕様で電力を取り出し可能なエンジン駆動の交流発電機であって、
前記出力端子の端子間の電圧値と前記出力端子に流れる電流値とから残容量を求めて表示する演算処理装置を備え、
前記演算処理装置は、
前記電圧値と前記電流値から前記複数の電源仕様毎の前記残容量を皮相電力値で求める処理と、
前記電圧値と前記電流値から前記複数の電源仕様毎の使用電力を有効電力値で求め、前記使用電力をエンジンの定格出力から差し引いた残電力を求める処理と、
前記複数の電源仕様毎に、皮相電力値の前記残容量と有効電力値の前記残電力を比較し、より小さい方の値を有効電力値の前記残容量の表示値とする処理を行うことを特徴とする交流発電機。
【請求項2】
前記演算処理装置は、
皮相電力値の前記残容量の表示と、前記表示値による有効電力値の前記残容量の表示を選択的に切り替える処理を行うことを特徴とする請求項1記載の交流発電機。
【請求項3】
前記演算処理装置は、
前記残容量を前記複数の電源仕様毎に切り替えて表示する処理を行うことを特徴とする請求項1記載の交流発電機。
【請求項4】
前記電機子巻線は、三相巻線と、前記三相巻線の少なくとも一部を共通巻線部分として含む単相巻線とを有することを特徴とする請求項1記載の交流発電機。
【請求項5】
前記エンジンの定格出力は、前記電源仕様の周波数毎に設定されることを特徴とする請求項1記載の交流発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の電源仕様で電力を負荷に供給可能な交流発電機が知られている。ここでの電源仕様は、電圧、周波数、相数等で特定される、供給電力のタイプを示している。このような交流発電機は、例えば、工事用機器の動力用電源である三相200V電源の他に、照明機器や電動工具等の電源である単相100V電源或いは単相200V電源等が、50Hzと60Hzのいずれかの周波数を選択した上で供給可能になる。
【0003】
このような交流発電機は、例えば、単相100Vの電源仕様で負荷に電力を供給中に、追加で単相100Vの電源仕様の負荷や三相200Vの電源仕様の負荷を接続することが可能になるが、この場合、交流発電機の定格出力を超えないように、追加の負荷を接続することが必要になる。ここで、追加接続できる負荷は、使用可能な発電容量の範囲内であり、この使用可能な発電容量を残容量と言う。
【0004】
従来技術として、複数の電源仕様で電力を負荷に供給可能な交流発電機において、現在接続されている負荷に供給されている出力を交流発電機の定格出力から差し引くことで残容量を求め、求めた残容量を複数の電源仕様毎に表示する残容量表示部を設けたものが提案されている(下記特許文献1参照)。この従来技術によると、使用者が様々な電源仕様で追加の負荷を接続する場合に、残容量表示部の表示値が、容量オーバーになる負荷の接続を回避するための指標になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来技術では、発電体保護の観点から、残容量を皮相電力(kVA)で表示して、交流発電機の定格出力との関係を明確にしている。これに対して、接続される負荷の電力(消費電力)は一般に有効電力(kW)で示されているので、残容量についても有効電力で表示して欲しいという要求が有る。
【0007】
一方、エンジン駆動の交流発電機では、皮相電力表示の残容量を超えない範囲で負荷を接続したとしても、負荷の総電力がエンジンの定格出力を超えてしまうことがある。そのような場合には、エンジンが過負荷になって安定した運転を行うことができなくなる。このため、使用者は、エンジンの定格出力との関係を考慮した上で追加の負荷を選択することが求められているが、皮相電力表示の残容量では、エンジンの定格出力との関係を即座に把握することができない問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に対処するために提案されたものである。すなわち、交流発電機の残容量(使用可能な発電容量)を有効電力値で表示して、追加で接続される負荷の消費電力との関係を明確にすること、エンジン駆動の交流発電機において、エンジンの定格出力との関係を気にすることなく、残容量の表示から追加する負荷を選択できるようにすること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
電機子巻線に接続される出力端子から異なる複数の電源仕様で電力を取り出し可能なエンジン駆動の交流発電機であって、前記出力端子の端子間の電圧値と前記出力端子に流れる電流値とから残容量を求めて表示する演算処理装置を備え、前記演算処理装置は、前記電圧値と前記電流値から前記複数の電源仕様毎の残容量を皮相電力値で求める処理と、前記電圧値と前記電流値から前記複数の電源仕様毎の使用電力を有効電力値で求め、前記使用電力をエンジンの定格出力から差し引いた残電力を求める処理と、前記複数の電源仕様毎に、前記残容量の皮相電力値と前記残電力の有効電力値を比較し、より小さい方の値を前記残容量の表示値とする処理を行うことを特徴とする交流発電機。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有する本発明によると、交流発電機の残容量(使用可能な発電容量)を有効電力値で表示することで、追加で接続される負荷の消費電力との関係を明確にすることができる。また、エンジン駆動の交流発電機において、エンジンの定格出力との関係を気にすることなく、残容量の表示から追加する負荷を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る交流発電機の構成例を示した説明図。
【
図2】本発明の実施形態に係る交流発電機の電機子と演算制御装置との関係を示した説明図。
【
図3】本発明の実施形態に係る交流発電機の電機子巻線の構成例を示した説明図。
【
図5】演算処理装置における演算処理ユニットのハードウェア構成を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0013】
図1に示すように、交流発電機1は、発電機10と発電機10を駆動するエンジン(一例としては、ディーゼルエンジン)20を備えている。発電機10は、図示省略の回転子と電機子(固定子)を備えており、エンジン20の出力軸21が回転子に接続され、電機子から引き出された出力配線が交流発電機1の出力端子11に接続される。
【0014】
図1に示す交流発電機1には、エンジン20に対して周波数切替スイッチ22が設けられている。この周波数切替スイッチ22は、エンジン20の出力軸21の回転数を2段階に切り替えるものであり、一つの回転数が交流発電機1の一つの周波数(例えば、50Hz)に対応しており、もう一つの回転数が交流発電機1の他の周波数(例えば、60Hz)に対応している。
【0015】
図2及び
図3に示すように、発電機10の電機子10Aは、出力端子11から異なる複数の電源仕様で電力を取り出し可能な電機子巻線を備えている。この電機子巻線は、三相巻線又は単相巻線と、三相巻線又は単相巻線の少なくとも一部を共通巻線部分として含む単相巻線部とを有している。
【0016】
電機子10Aの電機子巻線の一例を
図3に示す。この電機子10Aは、三相巻線100を形成する巻き数が等しい3つの巻線m1,m2,m3を有している。三相巻線100は、各巻線m1,m2,m3の巻始端が中性点Oでスター結線され、各巻線m1,m2,m3の巻終端T1,T2,T3が、出力配線L1,L2,L3を介して、出力端子11の三相出力端子11A(U端子,V端子,W端子)に接続されている。
【0017】
また、電機子10Aの電機子巻線は、巻線m1,m3の中間位置(巻始端から所定の同巻数分の位置)に、それぞれ接続点T10,T30が設けられ、その接続点T10,T30に枝巻線m4,m5が接続され、この枝巻線m4,m5は、巻線m2に対して電気的に対称位相方向に巻き回されている。巻線m1,m3のうち、巻始端から接続点T10,T30までを共通巻線部分m10,m30とすると、共通巻線部分m10及び枝巻線m4と、共通巻線部分m30及び枝巻線m5とで単相巻線200が形成されている。
【0018】
単相巻線200は、中性点Oが出力配線L10を介してN端子に接続され、巻線m4の巻終端T11が出力配線L11を介してU1端子に接続され、巻線m5の巻終端T31が出力配線L12を介してW1端子に接続されており、N端子とU1端子とW1端子が出力端子11における単相出力端子11Bを構成している。
【0019】
図3に示した電機子10Aは、接続点T10,T30が、それぞれ巻線m1,m3の中間点に設けられ、巻数を二等分している。また、共通巻線部分m10,m30の巻数と枝巻線m4,m5の巻数は、全て等しく設定されている。更に、枝巻線m4,m5は、それぞれ巻線m3,m1と電気的に逆相になるように巻き回されている。
【0020】
図2及び
図3に示した発電機10は、4つの電源仕様で負荷に電力を供給することができる。その一つの第1電源仕様は、三相出力端子11A(U端子,V端子,W端子)に負荷を接続する三相交流出力(例えば、定格出力20kVA、定格電流58A、定格電圧200V)である。他の一つの第2電源仕様は、単相出力端子11Bの端子U1-端子W1間に負荷を接続する単相交流出力(例えば、定格出力11.6kVA、定格電流58A、定格電圧200V)である。他の二つの第3電源仕様と第4電源仕様は、単相出力端子11Bの端子U1-端子N間に負荷を接続する単相交流出力(例えば、定格出力5.8kVA、定格電流58A、定格電圧100V)と単相出力端子11Bの端子W1-端子N間に負荷を接続する単相交流出力(例えば、定格出力5.8kVA、定格電流58A、定格電圧100V)である。また、これらの第1~第4電源仕様は、それぞれ周波数を2形態(例えば、50Hzと60Hz)に切り替えることができる。
【0021】
これら複数の電源仕様(第1~第4電源仕様)は、それぞれ単独で使用することができ、また、単一周波数の下で、任意の組み合わせで、同時に使用することができる。使用する電源仕様に応じて、出力端子11の各端子に選択的に負荷が接続されると、負荷が接続された端子と電機子巻線を繋げる出力配線には電流が流れる。この際、同時に複数の電源仕様が使用された場合には、前述した共通巻線部分m10,m30には、使用する電源仕様に応じた電流が重畳して流れる場合がある。
【0022】
なお、前述した電機子10Aの構成は一例であり、本発明の実施形態に係る交流発電機1は、特に
図3に示した電機子10Aの構成に限定されるものでは無い。発電機10は、電機子巻線に接続される出力端子11から異なる複数の電源仕様で電力を取り出し可能な構成であればよく、電機子10Aはどのような巻線形態であってもよい。
【0023】
交流発電機1における発電機10は、電源仕様の使用に応じて、出力端子11の端子間(出力配線間)の電圧値と出力端子11において負荷が接続された端子に流れる電流値とから残容量を求めて表示する演算処理装置30を備えている。
図2に示した例では、前述した電圧値と電流値を得るために、出力配線L1,L2,L3,L10,L11,L12には、それぞれ電圧測定用の接続点VT1,VT2,VT3,VT4,VT5,VT6が設けられ、出力配線L1,L2,L3,L11,L12には、それぞれ電流検出素子CT1,CT2,CT3,CT4,CT5が設けられている。
【0024】
図示の例では、接続端子VT1,VT2,VT3,VT4,VT5,VT6を介して測定された電圧は、トランス12を介して演算処理装置30に入力される。また、電流検出素子CT1,CT2,CT3,CT4,CT5によって検出された電流は、そのまま演算処理装置30に入力される。
【0025】
演算処理装置30は、発電機10に搭載される制御基板によって構成することができる。演算処理装置30には、演算処理によって求められる残容量を表示する表示装置31と、表示装置31の表示内容を選択した電源仕様毎に切り替える残容量表示選択スイッチ32が設けられている。表示装置31と残容量表示選択スイッチ32は、前述した制御基板に実装して一体に設けてもよいし、制御基板とは別に設けて配線接続するようにしてもよい。
【0026】
また、演算処理装置30は、
図4に示すように、各種処理を実行する演算処理ユニット40を備えている。演算処理ユニット40は、後述する各部の処理を実行するようにプログラムが組み込まれたコンピュータであり、
図5に示したハードウェア構成を備えている。
【0027】
図5において、演算処理ユニット40は、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)300、メモリとして情報やプログラムを記憶するROM(Read Only Memory)301とRAM(Random Access Memory)302、および外部I/F(Interface)303などを備え、これらの各ハードウェアは、バス304を介して相互に接続されている。
【0028】
CPU300は、ROM301に記憶されている各種プログラムを実行することにより、演算処理ユニット40の処理を制御する。ROM301は、不揮発性メモリである。例えば、ROM301は、CPU300により実行されるプログラム、CPU300がプログラムを実行するために必要なデータ等を記憶する。RAM302は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の主記憶装置である。例えば、RAM302は、CPU300がプログラムを実行する際に利用する作業領域として機能する。外部I/F303は、一般には、外部に対する信号の送受信を制御するものであり、演算処理ユニット40では、後述するA/D変換部41として機能する。
【0029】
演算処理ユニット40は、残容量を求めて表示する処理を実行するための機能部として、A/D変換部41、出力電圧値演算部42、出力電流値演算部43、残容量(kVA)演算部44、使用電力(kW)演算部45、残電力(kW)演算部46、エンジン定格出力(kW)記憶部47、残容量(kW)演算部48、残容量表示選択部49を備えている。
【0030】
A/D変換部41は、トランス12を介して入力される出力端子11の端子間電圧のアナログ信号をデジタル信号に変換して出力電圧値演算部42に出力し、出力端子11に流れる検出電流のアナログ信号をデジタル信号に変換して出力電流値演算部43に出力する。
【0031】
出力電圧値演算部42は、デジタル信号に変換された端子間電圧によって、複数の電源仕様毎の電圧値を出力する。
図2に示した例によると、出力電圧値演算部42は、第1~第4電源仕様のそれぞれの端子間の電圧値を出力する。すなわち、第1電源仕様の三相交流出力では、接続点VT1-VT2間、接続点VT2-VT3間、接続点VT1-VT3間の各電圧の実効値を演算して出力する。また、第2電源仕様の単相交流出力では、接続点VT5-VT6間の電圧の実効値を演算して出力する。更に、第3電源仕様,第4電源仕様では、接続点VT4-VT5間、接続点VT4-VT6間の電圧の実効値をそれぞれ演算して出力する。また、単相交流出力における出力電圧は、接続点VT4における電圧をVT4、接続点VT6における電圧をVT6として、(VT4+VT6)/2によって求めてもよい。
【0032】
出力電流値演算部43は、デジタル信号に変換された検出電流によって、負荷が接続されている電源仕様毎の電流値を出力する。すなわち
図2に示した例によると、出力電流値演算部43は、第1~第4電源仕様のうち使用されている電源仕様毎に出力端子11に流れる電流の実効値を演算して出力する。
【0033】
ここでは、第1電源仕様が使用されている場合には、端子Uと端子Wに流れる電流の実効値を出力し、第2電源仕様が使用されている場合には、端子U1と端子W1に流れる電流の実効値を出力し、第3電源仕様,第4電源仕様のいずれかが使用されている場合には、端子U1と端子W1のいずれかの電流の実効値が出力される。
【0034】
残容量(kVA)演算部44は、出力電圧演算部42が出力する電圧値(実効値)と出力電流演算部43が出力する電流値(実効値)から複数の電源仕様毎の残容量を皮相電力値(kVA)で求める。
【0035】
ここでは、特定の電源仕様が使用されていることを前提にして、出力電圧演算部42が出力する電圧値と出力電流演算部43が出力する電流値の積によって皮相使用電力(kVA)を求め、これを発電機10の電源仕様毎の定格出力(kVA)から差し引くことで、電源仕様毎の残容量(kVA)が求められる。この際、当然ながら、現時点で使用されている電源仕様が無い場合には、出力電流演算部43が出力する電流値はゼロになる。このため、現時点で使用されている電源仕様が無い場合は、皮相使用電力(kVA)はゼロであり、全ての電源仕様における残容量(kVA)は、その電源仕様における発電機10の定格出力(kVA)になる。
【0036】
使用電力(kW)演算部45は、出力電圧演算部42が出力する電圧値(実効値)と出力電流演算部43が出力する電流値(実効値)から複数の電源仕様毎の使用電力を有効電力値(kW)で求める。ここでは、出力電圧演算部42が出力する電圧値と出力電流演算部43が出力する電流値の積に、力率cosθを掛けることで、電源仕様毎の使用電力(kW)が求められる。
【0037】
ここでの力率cosθは、出力電圧値演算部42に入力される電圧検出値の周期変化と出力電流値演算部43に入力される電流検出値の周期変化から位相差θを求め、この位相差θによって力率cosθを求める。
【0038】
残電力(kW)演算部46は、使用電力(kW)演算部45から出力される電源仕様毎の使用電力(kW)を、エンジン定格出力(kW)記憶部47に記憶されているエンジン定格出力(kW)から差し引くことで残電力(kW)を求めている。ここでの残電力(kW)は、これを超える消費電力(kW)の負荷が追加された場合には、エンジン20の定格出力を超えてしまうことを示している。
【0039】
エンジン定格出力(kW)は、交流出力において選択される周波数(例えば、50Hz又は60Hz)毎に設定され、周波数毎の設定値が、エンジン定格出力(kW)記憶部47に記憶されている。これにより、周波数切替スイッチ22の切り替えで周波数が選択されると、選択された周波数に対応するエンジン定格出力(kW)が、エンジン定格出力(kW)記憶部47から残電力(kW)演算部46に出力される。
【0040】
残容量(kW)演算部48は、複数の電源仕様毎に、残容量(kVA)演算部44が出力する残容量の皮相電力値(kVA)と残電力(kW)演算部46が出力する残電力の有効電力値(kW)を比較し、より小さい方の値を残容量の有効電力表示値(kW)として残容量表示選択部49に出力する。
【0041】
残容量表示選択部49には、残容量(kVA)演算部44からの皮相電力値の残容量(kVA)が電源仕様毎に入力されると共に、前述したように、残容量(kW)演算部48からの有効電力値の残容量(kW)が入力される。そして、残容量表示選択部49は、残容量表示選択スイッチ32からのスイッチ入力に基づいて、表示装置31の残容量表示部31Aに出力される表示値を選択的に切り替えると共に、表示装置31の電源仕様表示部31Bの表示を選択的に切り替える。
【0042】
残容量表示選択スイッチ32によると、電源仕様の選択入力がなされると共に、残容量の皮相電力(kVA)表示と使用電力(kW)表示の切り替えがなされる。
図2に示す例で具体的に説明すると、表示装置31の残容量表示部31Aには、表示値が皮相電力値であるか有効電力値であるかを表示する2つの表示部d1,d2が設けられると共に、表示値の数値を表示する表示部d3が設けられている。また、表示装置31の電源仕様表示部31Bには、選択された電源仕様を表示する4つの表示部d4,d5,d6,d7が設けられている。
【0043】
そして、残容量表示選択スイッチ32のスイッチ操作では、第1のスイッチ操作で、残容量表示部31Aの表示部d1が点灯表示されると共に、電源仕様表示部31Bの表示部d4が点灯表示されて、表示部d3には、第1電源仕様における皮相電力値の残容量(kVA)が表示される。
【0044】
残容量表示選択スイッチ32の第2のスイッチ操作では、残容量表示部31Aの表示部d1が点灯表示されると共に、電源仕様表示部31Bの表示部d5が点灯表示されて、表示部d3には、第2電源仕様における皮相電力値の残容量(kVA)が表示される。
【0045】
残容量表示選択スイッチ32の第3のスイッチ操作では、残容量表示部31Aの表示部d1が点灯表示されると共に、電源仕様表示部31Bの表示部d6が点灯表示されて、表示部d3には、第3電源仕様における皮相電力値の残容量(kVA)が表示される。
【0046】
残容量表示選択スイッチ32の第4のスイッチ操作では、残容量表示部31Aの表示部d1が点灯表示されると共に、電源仕様表示部31Bの表示部d7が点灯表示されて、表示部d3には、第4電源仕様における皮相電力値の残容量(kVA)が表示される。
【0047】
そして、残容量表示選択スイッチ32の第5のスイッチ操作では、残容量表示部31Aの表示部d2が点灯表示されると共に、電源仕様表示部31Bの表示部d4が点灯表示されて、表示部d3には、第1電源仕様における有効電力値の残容量(kW)が表示される。
【0048】
残容量表示選択スイッチ32の第6のスイッチ操作では、残容量表示部31Aの表示部d2が点灯表示されると共に、電源仕様表示部31Bの表示部d5が点灯表示されて、表示部d3には、第2電源仕様における有効電力値の残容量(kW)が表示される。
【0049】
残容量表示選択スイッチ32の第7のスイッチ操作では、残容量表示部31Aの表示部d2が点灯表示されると共に、電源仕様表示部31Bの表示部d6が点灯表示されて、表示部d3には、第3電源仕様における有効電力値の残容量(kW)が表示される。
【0050】
残容量表示選択スイッチ32の第8のスイッチ操作では、残容量表示部31Aの表示部d2が点灯表示されると共に、電源仕様表示部31Bの表示部d7が点灯表示されて、表示部d3には、第4電源仕様における有効電力値の残容量(kW)が表示される。
【0051】
このように、残容量表示選択スイッチ32のスイッチ操作が入力されると、残容量表示選択部49は、表示装置31の残容量表示部31A及び電源仕様表示部31Bの表示を切り替えて、選択された電源仕様に応じて、残容量表示選択部49で選択された残容量の表示値を残容量表示部31Aの表示部d3に表示する。この際、残容量表示選択スイッチ32によって、表示部d1が点灯する皮相電力表示が選択された場合には、表示部d3には、残容量(kVA)演算部44から出力された残容量(kVA)の値が表示される。
【0052】
そして、残容量表示選択スイッチ32によって、表示部d2が点灯する有効電力表示が選択された場合には、表示部d3には、残容量(kW)演算部48から出力された表示値が表示される。すなわち、選択された電源仕様毎に、残容量(kVA)演算部44が出力する残容量の皮相電力値(kVA)と残電力(kW)演算部46が出力する残電力の有効電力値(kW)のうち、より小さい方の値が表示部d3に表示される。
【0053】
残容量表示選択スイッチ32の操作方法を具体的に説明すると、使用者は、現在使用されていない電源仕様に対して追加の負荷を接続することを前提にして、残容量表示選択スイッチ32のスイッチ操作を行い、これから使用する(現時点では使用されていない)電源仕様の残容量を表示させる。
【0054】
この際、表示部d2が点灯する有効電力表示が選択された場合に、表示部d3に表示された表示値が、残電力(kW)演算部46が出力する残電力(kW)である場合には、使用者は、表示部d3に表示された表示値と、これから追加しようとする負荷の消費電力(kW)とを比較して、追加しようとする負荷がエンジンの定格出力と発電機の定格出力の両方で容量オーバーにならないかの判断を速やかに行うことができる。
【0055】
また、表示部d2が点灯する有効電力表示が選択された場合に、表示部d3に表示された表示値が、残容量(kVA)演算部44が出力する残容量(kVA)である場合(残容量(kVA)演算部44から出力される残容量(kVA)の値が、残電力(kW)演算部46から出力される残電力(kW)の値より小さい場合)には、使用者は、残容量(kVA)の表示値と追加しようとする負荷の消費電力(kW)とを比較することになる。この場合には、負荷を接続する前の段階では負荷を接続した後の力率cosθを正確に把握することができないため、この表示値を一つの指標にして、エンジンの定格出力と発電機10の定格出力の両方で容量オーバーにならない負荷の選択を行う。
【0056】
仮に、負荷を接続した後の力率cosθが1よりかなり小さくなるような場合には、残容量(kVA)の表示値より小さい消費電力(kW)の負荷を接続したとしても、容量オーバーになってしまう場合が起こり得る。これに対しては、
図2及び
図4に示すように、配線遮断器13,14を設けて、電機子10Aの損傷を未然に抑止している。
【0057】
配線遮断器13は、三相出力端子11Aに接続される出力配線L1,L2,L3に対して設けられ、遮断器13a,13b,13cの作動で出力配線L1,L2,L3を遮断する。配線遮断器14は、単相出力端子11Bに接続される出力配線L11,L12に対して設けられ、遮断器14a,14bの作動で出力配線L11,L12を遮断する。
【0058】
配線遮断器13,14の動作は、出力電流値演算部43の出力を遮断判定部50にて遮断電流51と比較し、負荷接続後の出力電流値演算部43の出力が遮断電流51を超えた場合に、配線遮断器駆動部33が配線遮断器13,14の作動部130,140を動作させる。作動部130,140が動作すると、前述した遮断器13a,13b,13c又は遮断器14a,14bが動作して、電機子10Aに流れる過電流を未然に抑止する。
【0059】
なお、負荷を接続した後の容量オーバーに対しては、表示部d1が点灯する皮相電力表示が選択されている場合と表示部d2が点灯する有効電力表示が選択された場合の両方で、表示部d3の表示を「-」表示にするなどして、使用者に容量オーバーを視認させる。このような表示を行うことで、配線遮断器13,14の作動前に使用者に容量オーバーの状況を把握させることができる。これによって、電機子10Aの焼失や配線遮断器13,14による突然の配線遮断を抑止することができる。
【0060】
このように、本発明の実施形態に係る交流発電機1は、残容量の有効電力表示によって、残容量と追加する負荷の消費電力との関係が明確になり、容量オーバーになる負荷の接続を未然に抑止することができる。また、残容量の有効電力表示において、エンジンの定格出力から残容量を求めることで、過負荷によるエンジンの回転数低下や停止を未然に抑止することができる。また、エンジンの過負荷を未然に抑止することで、製品の長寿命化を図ることができる。
【0061】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1:交流発電機,10:発電機,10A:電機子,
11:出力端子,11A:三相出力端子,11B:単相出力端子,
12:トランス,13,14:配線遮断器,
13a~13c,14a,14b:遮断器,130,140:作動部,
20:エンジン,21:出力軸,22:周波数切替スイッチ,
30:演算処理装置,31:表示装置,
31A:残容量表示部,31B:電源仕様表示部,
32:残容量表示選択スイッチ,33:配線遮断器駆動部,
40:演算処理ユニット,
41:A/D変換部,42:出力電圧値演算部,43:出力電流値演算部,
44:残容量(kVA)演算部,45:使用電力(kW)演算部,
46:残電力(kW)演算部,47:エンジン定格出力(kW)記憶部,
48:残容量(kW)演算部,49:残容量表示選択部,
50:遮断判定部,51:遮断電流,100:三相巻線,200:単相巻線,
300:CPU,301:ROM,302:RAM,303:外部I/F,
m1,m2,m3:巻線,m4,m5:枝巻線,
m10,m30:共通巻線部分,O:中心点,
T1,T2,T3,T11,T31:巻終端,T10,T30:接続点,
L1,L2,L3,L10,L11,L12:出力配線,
VT1~VT6:接続点,CT1~CT5:電流検出素子,
d1~d7:表示部