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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031317
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】試料管移送装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 24/00 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
G01N24/00 510C
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134803
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 由宇生
(57)【要約】
【課題】試料管を保護しつつ試料管を確実に移送する。
【解決手段】ロードユニット34は、コーン状の隙間G1から通路上の第1位置P1へロードガスを噴射する。これにより試料管をロードするための第1ガス流が生じる。イジェクトユニット36は、コーン状の隙間G2から通路上の第2位置P2へイジェクトガスを噴射する。これにより試料管をイジェクトするための第2ガス流が生じる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料管内の試料に対するNMR測定の前に、試料管収容器と試料管回転器との間の通路における第1位置へロードガスを噴射し、前記試料管収容器から前記試料管回転器へ前記試料管を移送する第1ガス流を生じさせるロードユニットと、
前記試料に対するNMR測定の後に、前記通路における第2位置へイジェクトガスを噴射し、前記試料管回転器から前記試料管収容器へ前記試料管を移送する第2ガス流を生じさせるイジェクトユニットと、
を含むことを特徴とする試料管移送装置。
【請求項2】
請求項1記載の試料管移送装置において、
前記ロードユニットは、前記試料管回転器側を向く第1出口を有し前記通路に対して前記ロードガスを噴射する第1隙間を含み、
前記イジェクトユニットは、前記試料管収容器側を向く第2出口を有し前記通路に対して前記イジェクトガスを噴射する第2隙間を含む、
ことを特徴とする試料管移送装置。
【請求項3】
請求項2記載の試料管移送装置において、
前記第1隙間及び前記第2隙間は、それぞれ、コーン状の隙間であり、
前記第1出口及び前記第2出口は、それぞれ、環状の出口である、
ことを特徴とする試料管移送装置。
【請求項4】
請求項1記載の試料管移送装置において、
前記第1位置及び前記第2位置の内で、前記試料管回転器に近い方が前記第1位置であり、前記試料管収容器に近い方が前記第2位置である、
ことを特徴とする試料管移送装置。
【請求項5】
請求項1記載の試料管移送装置において、
前記ロードユニット及び前記イジェクトユニットは連結されている、
ことを特徴とする試料管移送装置。
【請求項6】
請求項1記載の試料管移送装置において、
前記試料管回転器は、そこに収容された前記試料管の一方端面に対してガスを吹き付けるスラストガスベアリングを有し、
前記ロードユニットは、前記試料管回転器内において前記試料管が回転している回転状態において前記第1ガス流を生じさせ、
前記回転状態において前記第1ガス流によるガスが前記試料管の他方端面に対して吹き付けられる、
ことを特徴とする試料管移送装置。
【請求項7】
請求項1記載の試料管移送装置において、
前記イジェクトユニットは、前記試料管が前記試料管収容器内に戻された後も前記第2ガス流を生じさせる、
ことを特徴とする試料管移送装置。
【請求項8】
請求項1記載の試料管移送装置において、
前記通路における少なくとも上端部分を囲む上端部材を含み、
前記試料管収容器は、
前記試料管を収容する収容室と、
前記収容室の底に設けられ、当該試料管収容器が前記上端部材に連結された時に閉状態から開状態へ変化し、当該試料管収容器が前記上端部材から離脱した時に開状態から閉状態へ変化する開閉機構と、
を含み、
前記開閉機構は、前記閉状態において前記収容室内の前記試料管を支える複数の可動要素を含む、
ことを特徴とする試料管移送装置。
【請求項9】
請求項8記載の試料管移送装置において、
静磁場発生器のボア内に設けられた中空のガイド部材を含み、
前記ガイド部材内において前記試料管収容器が落下運動し、これにより前記試料管収容器が前記上端部材に連結される、
ことを特徴とする試料管移送装置。
【請求項10】
請求項9記載の試料管移送装置において、
前記試料管収容器を前記ガイド部材から離脱させ且つ前記試料管収容器を浮上させるために前記ガイド部材内に上昇ガス流を生じさせるリフトユニットを含む、
ことを特徴とする試料管移送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料管移送装置に関し、特に、NMR測定システムにおいて試料管収容器と試料管回転器との間で試料管を移送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
NMR(核磁気共鳴:Nuclear Magnetic Resonance)測定システムは、試料を分析するために試料において生じるNMRを測定するシステムである。NMR測定システムは、静磁場発生器、NMR測定プローブ、分光計等を有する。
【0003】
NMR測定の対象が固体試料である場合、一般に、MAS(Magic angle spinning)法が用いられる。MAS法では、試料管が静磁場に対して所定の角度(概ね54.7度)傾けられた状態において試料管に回転運動を行わせながら、試料管内の固体試料に対するNMR測定が実施される。固体試料は例えば粉体である。MAS法の実施に際しては、NMR測定プローブ内に試料管回転器(以下、単に「回転器」という。)が設けられる。回転器において、回転運動する試料管はローターであり、回転器それ自体はステータである。回転器はMASモジュールとも呼ばれる。
【0004】
回転器に対して試料管をセットしまた回転器から試料管を取り出す際に、ユーザーに対して、NMR測定プローブの取り外しや取り付けを求めると、ユーザーにおいて大きな負担が生じる。
【0005】
試料管の交換を容易にするために、試料管移送装置が提案されている(特許文献1~3を参照)。試料管移送装置は、試料管収容器(以下、単に「収容器」という。)と回転器との間で、試料管を自動的に移送する装置である。収容器は、例えば、試料管キャリアである。
【0006】
特許文献1、2に開示された試料管移送装置では、静磁場発生器の上側に設けられた収容器と静磁場発生器内の回転器との間で試料管が移送されている。収容器と回転器との間の通路の途中には、試料管を排出(イジェクト)するためのユニットが設けられている。そのユニットは、通路の中心軸に対して傾斜した方向から通路の中へガスを噴射する噴射孔を有している。ガスの噴射により、回転器から収容器へ向かうガス流が生じている。このガス流により試料管が排出されている。特許文献1,2には、試料管の投入(ロード)時に機能する具体的な構成は開示されていない。
【0007】
特許文献3に開示された試料管移送装置では、静磁場発生器の下側に設けられた収容器と静磁場発生器内の回転器との間で試料管が移送されている。試料管の移送はガス流によって行われているが、ガス流を生成するための具体的な構成は特許文献3には開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6016373号明細書
【特許文献2】特許第6876471号明細書
【特許文献3】特許第6445484号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
NMR測定システムにおける試料管移送装置において、試料管が運動する通路それ全体にわたって試料管に対して適度な移送力を与えることが望まれる。具体的には、試料管の破損や摩耗の回避、及び、通路の途中での試料管の停止の回避を両立させることが望まれている。近時、試料管の直径は益々小さくなっており、静電気や試料管表面の汚れ等に起因して、通路の途中で試料管が止まりやすくなっている。試料管のロード時に通路の途中で試料管が止まってしまうと、試料に対するNMR測定を行うことができなくなる。
【0010】
本発明の目的は、試料管を保護しつつ試料管を確実に移送することにある。本発明の他の目的は、試料管の姿勢が不安定にならないように試料管を移送することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る試料管移送装置は、試料管内の試料に対するNMR測定の前に、試料管収容器と試料管回転器との間の通路における第1位置へロードガスを噴射し、前記試料管収容器から前記試料管回転器へ前記試料管を移送する第1ガス流を生じさせるロードユニットと、前記試料に対するNMR測定の後に、前記通路における第2位置へイジェクトガスを噴射し、前記試料管回転器から前記試料管収容器へ前記試料管を移送する第2ガス流を生じさせるイジェクトユニットと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、試料管を保護しつつ試料管を確実に移送できる。あるいは、本発明によれば、試料管の姿勢が不安定にならないように試料管を移送できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る試料管移送装置を含むNMR測定システムを示す図である。
図2】構造体の一例を示す断面図である。
図3】試料管ロード時の動作を示す模式図である。
図4】試料管イジェクト時の動作を示す模式図である。
図5】回転器を示す模式図である。
図6】キャリア(収容器)を示す断面図である。
図7】キャリアの動作を示す断面図である。
図8】ガス供給制御を示すタイミングチャートである。
図9】試料管移送装置の動作例を示すフローチャートである。
図10】試料管移送装置の他の動作例を示すフローチャートである。
図11】構造体の他の例を示す断面図である。
図12図11に示した構造体の動作を示す図である。
図13】他の実施形態に係る試料管移送装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
(1)実施形態の概要
実施形態に係る試料管移送装置は、ロードユニット及びイジェクトユニットを有する。ロードユニットは、試料管内の試料に対するNMR測定の前に、試料管収容器と試料管回転器との間の通路における第1位置へロードガスを噴射し、試料管収容器から試料管回転器へ試料管を移送する第1ガス流を生じさせる。イジェクトユニットは、試料に対するNMR測定の後に、通路における第2位置へイジェクトガスを噴射し、試料管回転器から試料管収容器へ試料管を移送する第2ガス流を生じさせる。
【0016】
上記構成によれば、ロードユニット及びイジェクトユニットの両方が設けられているので、試料管のロード及び試料管のイジェクトを確実に行える。より詳しくは、通路の途中(第1位置、第2位置)にガス(ロードガス、イジェクトガス)が送り込まれ、これによりガス流(第1ガス流、第2ガス流)が生成されるので、通路それ全体にわたって試料管に対して適度な移送力を与えることができる。よって、試料管を保護しつつ、試料管を確実に移送できる。
【0017】
上記構成において、試料管収容器は、通路の一方端に設けられる部材である。試料管収容器は、例えば、キャリア、ホルダ、マガジンラック、投入口等である。試料管回転器は、通路の他方端に設けられるモジュールであり、具体的には、MAS法に従って試料管に回転運動を行わせるものである。静磁場発生器の上側から試料管が投入されてもよいし、静磁場発生器の下側から試料管が投入されてもよい。通路の一部が湾曲部分を構成していてもよいし、通路の途中に方向転換器が設けられてもよい。
【0018】
実施形態において、ロードユニットは、試料管回転器側を向く第1出口を有し通路に対してロードガスを噴射する第1隙間を含む。イジェクトユニットは、試料管収容器側を向く第2出口を有し通路に対してイジェクトガスを噴射する第2隙間を含む。
【0019】
試料管ロード時に、第1開口から第1位置へロードガスが送られると、第1位置の上流側に存在するガスが下流側へ引き込まれ、同時に、第1位置に存在するガスが下流側へ押し出される。すなわち、第1位置よりも上流側の区間(第1上流区間)において第1上流側ガス流が生じ、第1位置よりも下流側の区間(第1下流区間)において第1下流側ガス流が生じる。実施形態において、第1上流区間では負圧が生じ、通路における一方端等を通じて、外界に存在する大気が第1上流区間へ流入する。また、実施形態において、第1下流区間では正圧が生じ、通路における他方端等を通じて、外界へガスが放出される。よって、第1上流側ガス流による移送力が過大となることを防止でき、且つ、第1下流側ガス流による移送力が過小となることを防止できる。第1上流側ガス流及び第1下流側ガス流により第1ガス流が構成される。第1ガス流は、それ全体にわたって、適度な移送力を発揮するものである。
【0020】
一方、試料管イジェクト時に、第2開口から第2位置へイジェクトガスが送られると、第2位置の上流側に存在するガスが下流側へ引き込まれ、且つ、第2位置に存在するガスが下流側へ押し出される。すなわち、第2位置よりも上流側の区間(第2上流区間)において第2上流側ガス流が生じ、第2位置よりも下流側の区間(第2下流区間)において第2下流側ガス流が生じる。実施形態において、第2上流区間では負圧が生じ、通路における他方端等を通じて、外界に存在する大気が第2上流区間へ流入する。また、実施形態において、第2下流区間では正圧が生じ、通路における一方端等を通じて、外界へガスが放出される。よって、第2上流側ガス流による移送力が過大となることを防止でき、且つ、第2下流側ガス流による移送力が過小となることを防止できる。第2上流側ガス流及び第2下流側ガス流により第2ガス流が構成される。第2ガス流は、それ全体にわたって、適度な移送力を発揮するものである。
【0021】
実施形態において、第1隙間及び第2隙間は、それぞれ、コーン状の隙間である。第1出口及び第2出口は、それぞれ、環状の出口である。この構成によれば、試料管ロード時において、第1位置を試料管が通過する際に、試料管の周囲から試料管の側面に向かってロードガスが噴射されるので、試料管の姿勢が不安定になることを防止できる。また、試料管イジェクト時において、第2位置を試料管が通過する際に、試料管の周囲から試料管の側面に向かってイジェクトガスが噴射されるので、試料管の姿勢が不安定になることを防止できる。
【0022】
実施形態において、第1位置及び第2位置の内で、試料管回転器に近い方が第1位置であり、試料管収容器に近い方が前記第2位置である。この構成によれば、第1上流区間内(つまり負圧区間内)に第2位置を設定でき、また、第2上流区間内(つまり負圧区間内)に第1位置を設定できる。よって、試料管ロード時において、第2位置を試料管が通過する際に、試料管の姿勢が不安定になることを防止できる。また、試料管イジェクト時において、第1位置を試料管が通過する際に、試料管の姿勢が不安定になることを防止できる。負圧及び正圧は、一般に、大気圧又は外界圧力を基準として定義されるものである。
【0023】
実施形態において、ロードユニット及びイジェクトユニットは連結されている。この構成によれば、2つのユニットの中心軸(具体的には2つの内部通路の中心軸)を一致させることが容易となる。また、第1位置及び第2位置を近付けることが容易となる。
【0024】
実施形態において、試料管回転器は、そこに収容された試料管の一方端面に対してガスを吹き付けるスラストガスベアリングを有する。ロードユニットは、試料管回転器内において試料管が回転している回転状態において第1ガス流を生じさせる。回転状態において第1ガス流によるガスが試料管の他方端面に対して吹き付けられる。この構成によれば、試料管の回転状態において、回転中心軸方向における試料管位置を安定化させることができる。
【0025】
実施形態において、イジェクトユニットは、試料管が試料管収容器内に戻された後も第2ガス流を生じさせる。この構成によれば、通路内への異物の侵入を防止できる。特に、試料収容器の浮上後において、第2ガス流を継続的に生じさせるのが望ましい。
【0026】
実施形態に係る試料管移送装置は、通路における少なくとも上端部分を囲む上端部材を含む。試料管収容器は、試料管を収容する収容室と、開閉機構と、を有する。開閉機構は、収容室の底に設けられ、当該試料管収容器が上端部材に連結された時に閉状態から開状態へ変化し、当該試料管収容器が上端部材から離脱した時に開状態から閉状態へ変化する。開閉機構は、閉状態において収容室内の試料管を支える複数の可動要素を含む。
【0027】
上記構成によれば、上端部材に対する試料管収容器の着脱に従って開閉機構が動作するので、開閉機構を外部から制御する必要がない。また、複数の可動要素によって試料管を安定的に支えることが可能となる。
【0028】
実施形態に係る試料管移送装置は、静磁場発生器のボア内に設けられた中空のガイド部材を含む。ガイド部材内において試料管収容器が落下運動し、これにより試料管収容器が上端部材に連結される。実施形態に係る試料管移送装置は、試料管収容器をガイド部材から離脱させ且つ試料管収容器を浮上させるためにガイド部材内に上昇ガス流を生じさせるリフトユニットを含む。
【0029】
(2)実施形態の詳細
図1には、実施形態に係る試料管移送装置を含むNMR測定システム10が示されている。NMR測定システムは、試料を分析するためのシステムであり、具体的には、固体試料において生じるNMRを測定するシステムである。
【0030】
NMR測定システム10は、静磁場発生器12、NMR測定プローブ14、試料管移送装置18、分光計63、等を有する。図1においては、分光計63の具体的構成の図示が省略されている。NMR測定システム10は、更に、流量調整器群48及び主制御部60を有する。流量調整器群48及び主制御部60を試料管移送装置18の一部であると理解してもよい。なお、図1においては、各要素が模式的に表現されており、あるいは、誇張表現されている。また、図1においては、NMR測定プローブ14の内部に設けられている複数の配管の図示が省略されている。
【0031】
静磁場発生器12は、超電導マグネットを有し、静磁場を生じさせるものである。静磁場の方向は、図1において上下方向である。静磁場発生器12は、貫通孔としてのボア12Aを有する。
【0032】
NMR測定プローブ14は、本体20と基部22とにより構成される。本体20は、ボア12A内に挿入される部分であり、それは円筒状の形態を有している。基部22は、ボア12Aの外側(下側)に配置される部分である。本体20における上端部の内部には、図示されていない検出コイルと共に、回転器24が配置されている。また、その上端部の内部には、後に詳述するロードユニット34及びイジェクトユニット36を含む構造体30が設けられている。
【0033】
基部22と分光計63とが信号線62を介して電気的に接続されている。分光計には、送信器、受信器、NMRスペクトル生成器、等が含まれる。ボア12Aには中空のガイド部材16が配置されている。具体的には、NMR測定プローブ14の本体20の上側にガイド部材16が配置されている。
【0034】
試料管移送装置18は、試料を収容した試料管を移送する装置である。具体的には、試料管ロード時に、キャリア26から回転器24へ試料管を移送し、試料管イジェクト時に、回転器24からキャリア26へ試料管を移送するものである。キャリア26は、収容器の一種である。ホルダ、マガジンラック等に収容されている試料管がロードされてもよい。回転器24は、試料管を回転運動させるMASモジュールである。キャリア26と回転器24との間に試料管移送用の通路が設けられている。
【0035】
試料管移送装置18は、軸状部材28、構造体30、湾曲管32、等を有する。キャリア26及び回転器24を試料管移送装置18の一部であるとみなしてもよい。軸状部材28の内部には中空部材が配置されており、その内部は通路の一部である。構造体30に形成された貫通孔も通路の一部である。また、湾曲管32の内部も通路の一部である。軸状部材28の上端部は、通路の上端部を囲む部分である。
【0036】
キャリア26は、試料管を収容する収容室を有する。NMR測定前の試料管及びNMR測定後の試料管が収容室に収容される。回転器24は、試料管を収容する収容空間を有する。収容空間内に収容された試料管に対して回転駆動力が与えられる。上記通路の一端(上端)がキャリア26内の収容室に連なっており、上記通路の他端(下端)が回転器24内の収容空間に連なっている。
【0037】
構造体30は、ロードユニット34及びイジェクトユニット36を有する。ロードユニット34は、回転器24側を向く噴射口を有し、試料管ロード時に、通路に対して斜め方向からロードガスを噴射する。これにより、通路において第1ガス流が生じる。第1ガス流は、図1において上から下への流れである。第1ガス流により、キャリア26から回転器24へ試料管が移送される。
【0038】
イジェクトユニット36は、キャリア26側を向く噴射口を有し、試料管イジェクト時に、通路に対して斜めの方向からイジェクトガスを噴射する。これにより、通路において第2ガス流が生じる。第2ガス流は、図1において下から上への流れである。第2ガス流により、回転器24からキャリア26へ試料管が移送される。
【0039】
NMR測定に先立って、試料管を収容したキャリア26がガイド部材16の中に落とし込まれる。その落下運動により、キャリア26が軸状部材28に連結される。その後、第1ガス流により、キャリア26の内部から通路へ試料管が送り出される。NMR測定の後、第2ガス流により、回転器24からキャリア26の内部へ試料管が移送される。その後、リフトガスによる浮上力がキャリア26に与えられ、キャリアが上昇運動(浮上運動)する。図示されていないストッパにより、キャリア26のそれ以上の上昇が制限される。キャリア26は、後述するように、収容室及び開閉機構を有する。
【0040】
配管38は、ロードガスを供給するためのものであり、配管40は、イジェクトガスを供給するためのものであり、配管42は、リフトガスを供給するためのものである。配管44は、ベアリングガスを供給するためのものであり、配管46は、ドライブガスを供給するためのものである。
【0041】
流量調整器群48は、図示の構成例において、5つの流量調整器50,52,54,56、58により構成されている。流量調整器50は、ロードガスの流量を調整するコントローラである。流量調整器52は、イジェクトガスの流量を調整するコントローラである。流量調整器54は、リフトガスの流量を調整するコントローラである。流量調整器56は、ベアリングガスの流量を調整するコントローラである。流量調整器58は、ドライブガスの流量を調整するコントローラである。
【0042】
上記のロードガス及びイジェクトガスとして、乾燥空気(例えば露点を摂氏0度より低くしたもの)、不活性ガス(例えば窒素ガス、アルゴンガス)、それらを混合したガス、等を用いることができる。なお、ロードガス及びイジェクトガスの流量は、例えば、1L/min以上である。それらのガスの圧力は、例えば、5kPa以上である。ロードガス及びイジェクトガス以外のガスも、乾燥空気、不活性ガス等により構成され得る。
【0043】
主制御部60は、NMR測定システムを構成する各要素の動作を制御するものである。主制御部60により、流量調整器群48の動作が制御される。主制御部60が行うガス制御の内容については後に説明する。
【0044】
図1に示した構成において、軸状部材28の上端部を静磁場発生器12の上側まで引き上げ、その上端部に、試料管ホルダ、複数の試料管を備えたマガジンラック、等を接続してもよい。
【0045】
図2には、構造体30の断面が示されている。構造体30は、ロードユニット34及びイジェクトユニット36を有する。P1は、ロードガスの噴射が行われる第1位置を示しており、P2は、イジェクトガスの噴射が行われる第2位置を示している。
【0046】
より詳しくは、構造体30は、本体65、上側部材66、中間部材68及び下側部材70を有する。本体65は、筒状の形態を有し、それは上下方向に伸長した貫通孔64を有している。貫通孔64の中に、上側部材66、中間部材68及び下側部材70が配置されている。
【0047】
本体65は、ロードガスが流れる流路76、イジェクトガスが流れる流路78、及び、リフトガスが流れる流路80を有する。流路76にはポート82を通じてロードガス86が送られている。流路78にはポート84を通じてイジェクトガスが送られている。流路80には図示されていない経路を通じてリフトガス90が送られている。流路80から上方へリフトガスが送られている。流路80及びそれに接続される配管等により、上昇ガス流を生じさせるリフトユニットが構成される。なお、図2においては、複数の配管等の図示が省略されている。
【0048】
中間部材68は、下向きのノズル94及び上向きのノズル96を有する。中間部材68は、貫通孔98を有している。下側部材70は、ノズル94の周囲を取り囲むコーン状(円錐面状、漏斗状又は傘状)の斜面100を有する。斜面100とノズル94の外面(テーパー面)95との間にコーン状の隙間G1が生じている。隙間G1は、回転器側を向く環状の出口(噴射口)a1を有する。流路76に連なる貯留室102から送り込まれたロードガスが、隙間G1を介して、第1位置P1(具体的には合流空間104)へ噴射される。この噴射により、通路において第1ガス流が生じる。
【0049】
具体的には、第1位置P1へのロードガスの噴出により、第1位置P1より上流側に存在するガスが第1位置P1へ引き込まれ、同時に、第1位置P1に存在するガスがそれよりも下流側へ押し出される。これにより、第1位置P1よりも上流側の第1上流区間内において第1上流側ガス流が生じ、第1位置P1よりも下流側の第1下流区間内において第1下流側ガス流が生じる。実施形態においては、第1上流区間では負圧が生じ、通路の一方端等を通じて外界に存在する大気が通路内に進入する。第1下流区間では正圧が生じ、通路の他方端等からガスが外界へ放出される。第1上流側ガス流と第1下流側ガス流により第1ガス流が構成される。
【0050】
なお、下側部材70に形成された貫通孔106が直線管74の内部空間に連なっている。その直線管74は湾曲管32に連結されている。貫通孔98、合流空間104及び貫通孔106は、通路の一部である。
【0051】
上側部材66は、ノズル96の周囲を取り囲むコーン状の斜面108を有する。斜面108とノズル96の外面(テーパー面)97との間にコーン状の隙間G2が生じている。隙間G2は、キャリア側を向く環状の出口(噴出口)a2を有する。流路78に連なる貯留室110から送り込まれたイジェクトガスが、隙間G2を介して、第2位置P2(具体的には合流空間112)へ噴射される。この噴射により、第2ガス流が生じる。
【0052】
具体的には、第2位置P2へのイジェクトガスの噴出により、第2位置P2より上流側に存在するガスが第2位置P2へ引き込まれ、同時に、第2位置P2に存在するガスがそれよりも下流側へ押し出される。これにより、第2位置P2よりも上流側の第2上流区間内において第2上流側ガス流が生じ、第2位置P2よりも下流側の第2下流区間内において第2下流側ガス流が生じる。実施形態においては、第2上流区間では負圧が生じ、通路の一方端等を通じて外界に存在する大気が通路内に進入する。第2下流区間では正圧が生じ、通路の他方端等からガスが外界へ放出される。第2上流側ガス流と第2下流側ガス流により第2ガス流が構成される。
【0053】
上側部材66に形成された貫通孔114が合流空間112に連なっている。貫通孔114が直線管72の内部空間に連なっている。合流空間112及び貫通孔114も通路の一部である。
【0054】
図3には、試料管ロード時の動作が示されている。ロードユニット34では、コーン状の隙間G1から第1位置P1に向けてロードガス118が噴射される。この噴射により、第1位置P1よりも上流側の第1上流区間126において、試料管124に対して第1移送力を与える第1上流側ガス流120が生じ、同時に、第1位置P1よりも下流側の第1下流区間128において試料管に対して第2移送力を与える第1下流側ガス流122が生じる。第1上流区間126では負圧が生じ、第1下流区間128では正圧が生じる。よって、第1移送力が過大となることを防止でき、且つ、第2移送力が過小となることを防止できる。
【0055】
ロードユニット34を試料管が通過する際、試料管の側面に対して均等にロードガスが吹き付けられるので、試料管の姿勢が不安定となることはない。試料管ロード時において、イジェクトユニット36は動作しないが、仮に、隙間G2を介した若干のガス流通が許容されていても、通路へ入るガス流123が生じるだけであり、イジェクトユニット36を通過する試料管の姿勢が不安定になることはない。
【0056】
図4には、試料管イジェクト時の動作が示されている。イジェクトユニット36では、コーン状の隙間G2から第2位置P2に向けてイジェクトガス132が噴射される。この噴射により、第2位置P2よりも上流側の第2上流区間140において、試料管138に対して第3移送力を与える第2上流側ガス流134が生じ、同時に、第2位置P2よりも下流側の第2下流区間142において試料管に対して第4移送力を与える第2下流側ガス流136が生じる。第2上流区間140では負圧が生じ、第2下流区間142では正圧が生じる。よって、実施形態では、第3移送力が過大となることを防止でき、且つ、第4移送力が過小となることを防止できる。
【0057】
イジェクトユニット36を試料管が通過する際、試料管の側面に対して均等にイジェクトガスが吹き付けられるので、試料管の姿勢が不安定となることはない。試料管イジェクト時において、ロードユニット34は動作しないが、仮に、隙間G1を介した若干のガス流通が許容されていても、通路へ入るガス流137が生じるだけであり、ロードユニット34を通過する試料管の姿勢が不安定になることはない。
【0058】
なお、図2図4に示した構成においては、ロードユニット34及びイジェクトユニット36が連なっており、つまり、それらが一体化されている。これにより、2つのユニット34,36の中心軸を一致させることが容易である。更に、部品点数の削減、組立容易、等の利点も得られる。もっとも、2つのユニット34,36を別体化してもよい。
【0059】
図5には、回転器24が模式的に示されている。湾曲管32の端部に回転器24が連結されている。回転器24は、試料管146を収容する収容空間144を有する。試料管146の一端部には、回転検出のためのマーカー147が設けられている。試料管146の他端部には、複数のタービン翼148が設けられている。試料管146の内部は、試料を収容する試料室である。
【0060】
試料管146の直径は、例えば、0.5~2mmの範囲内にある。特に、試料管146の直径が1mm程度又はそれ以下になると、静電気や試料管表面の汚れ等に起因して通路の途中で試料管146が止まり易くなる。実施形態において、上記のように、ロードユニット及びイジェクトユニットが設けられているので、試料管ロード時及び試料管イジェクト時における試料管の停止を確実に防止できる。
【0061】
収容空間144を取り囲むように2つのガスベアリング152,154が設けられている。各ガスベアリング152,154は、試料管146の側面に対してベアリングガスを吹き付けることにより、試料管146を非接触で保持する機構である。また、試料管146の一方端面に対してガスを吹き付けるスラストガスベアリング156が設けられている。ドライブユニット158は、複数のタービン翼148に対してドライブガスを吹き付けることにより、試料管146に回転力を生じさせるものである。符号150は、試料管146の中心軸を示しており、それは回転軸に一致している。
【0062】
実施形態においては、試料管ロード後の試料管回転状態においても、通路に対してロードガスが供給されており、つまり第1ガス流が維持されている。第1ガス流によるガス162が試料管146の他方端面に対して吹き付けられている。ガス162の吹き付け方向は、スラストガスベアリング156のガス吹き付け方向とは逆の方向である。これにより、中心軸150の方向において、試料管146の位置を高精度に保持することが可能である。
【0063】
検出器160は、試料管146の回転を検出するものである。検出器160は、レーザー光を出射する光ファイバと、試料管で反射したレーザー光(反射光)を受け取る光ファイバと、を有する。試料管146の回転に伴ってマーカー147が回転するので、反射光の光量が周期的に変化する。その変化から単位時間当たりの回転数つまり回転速度が演算される。
【0064】
図6には、キャリア26の断面が示されている。なお、図6においては、複数の配管等の図示が省略されている。
【0065】
キャリア26は、本体164、キャップ166、可動部材168及び開閉機構170を有する。本体164は、ロードガス用の貫通孔172及びイジェクトガス用の貫通孔174を有する。更に、本体164は、リフトガス用の貫通孔も有するが、図1には、それは現れていない。本体164の中には、収容室171が形成されている。収容室171の上端部は、複数の連絡孔173を介して外界に連なっている。本体164は、下向きに突出した突出部164Aを有する。突出部164Aを覆うようにキャップ166が設けられている。キャップ166の内部に開閉機構170が設けられている。
【0066】
符号176は、図6において破線の円で囲まれている部分の拡大図を示している。可動部材168における軸部分が、キャップ166に形成された開口166Aを通過している。開閉機構170は、図示の構成例では、2つのレバー184,186を有する。2つのレバー184,186は、キャリアが有する中心軸の周囲に均等に配置されており、具体的には、中心軸の一方側及び他方側に配置されている。各レバー184,186は、回転軸180,182周りにおいて回転運動することが可能な可動片である。
【0067】
レバー184は、肩部188及び上端部192を有する。肩部188は、開閉機構170が閉状態にある場合に、試料管200を支える台座として機能する。肩部188の下側には斜面が形成されている。上端部192は、突出部に形成された斜面196に当たっている。レバー184が下降状態にある場合、レバー184の起立姿勢(垂直姿勢)が生じる。レバーが上昇運動すると、斜面196に沿って上端部192が図中左方向へ開き運動し、レバー184の傾斜姿勢が生じる。その状態では肩部188の支持作用が消失する。
【0068】
レバー184とレバー186は線対称関係にある。レバー186は、肩部190及び上端部194を有する。肩部190は、開閉機構170が閉状態にある場合に、試料管200を支える台座として機能する。肩部190の下側には斜面が形成されている。上端部194は、突出部に形成された斜面198に当たっている。レバー186が下降状態にある場合、レバー186の起立姿勢(垂直姿勢)が生じる。レバー186が上昇運動すると、斜面198に沿って上端部194が図中右方向へ開き運動し、レバー186の傾斜姿勢が生じる。その状態では、肩部190の支持作用が消失する。
【0069】
符号178が示しているように、可動部材168は上下方向に運動可能である。可動部材168が軸状部材の先端部に当たって上昇運動すると、開閉機構170が閉状態から開状態へ変化する。これにより、収容室の底が開く。キャリア26が軸状部材の先端部から離脱して、可動部材168が下降運動すると、開閉機構170が開状態から閉状態へ変化する。これにより、収容室の底が閉じる。
【0070】
各レバー184,186は開閉機構170を構成する可動要素である。3つ以上のレバーを設けてもよい。複数のレバーに代えて、複数の可動片又は複数のバネ部材を設けてもよい。その場合、複数のバネ部材は、それぞれ、可動部材168の運動に従って弾性変形する。キャリア26が有する中心軸の周りに均等に複数の可動片又はバネ部材が設けられる。
【0071】
図7には、連結状態が示されている。キャリア26の落下運動後、キャリア26が軸状部材の上端部202に結合する。これにより可動部材168に対して押上げ力204が及び、可動部材168が上昇運動する。これにより、符号206が示すように、開閉機構170が閉状態から開状態へ変化する。それと同時に、通路へロードガスが供給され、第1ガス流が生じる。収容室171内の試料管は、重力作用及び第1ガス流により、下方へ移動する。なお、収容室171は上記のように複数の連絡孔173を通じて外界に連なっている。外界から複数の連絡孔173を通じて大気が収容室へ流れ込む。
【0072】
図8には、主制御部が実行するガス制御が示されている。待機状態おいて、S10では、キャリアがガイド部材の中に配置される。キャリアが落下運動し、連結状態が生じる。なお、待機状態では、イジェクトガスの供給が継続されており(符号212を参照)、リフトガスの供給も継続されている(符号214を参照)。リフトガスの流量は、キャリアの落下運動を妨げない程度の小流量である。
【0073】
S12では、主制御部がロード指示を出力する。例えば、ユーザーによる所定の操作に従ってロード指示が出力されてもよい。ロード指示が出力された時点で、イジェクトガスの供給が停止され、且つ、ロードガスの供給が開始される(符号216を参照)。S14において試料管のロードが完了する。すなわち、試料管が回転器の中に配置される。実際には、ロード指示からの一定時間t1の経過時点でロード完了が判断されている。符号128は、ロードガスの供給により生じた第1ガス流による試料管移送の期間を示している。
【0074】
S16において、主制御部から回転指示が出力される。これにより、回転器へのベアリングガス及びドライブガスの供給が開始される(符号222を参照)。回転開始後、S20において、試料管の回転の有無が判定される。その判定により、試料管が回転器に収容されているか否かが事後的にチェックされる。試料管が回転器に収容されていない場合におけるエラー動作については後述する。
【0075】
S18において、NMR測定が実施される。NMR測定期間の全体にわたって、第1ガス流が維持される(符号220を参照)。これにより、試料管におけるスラスト方向の位置ずれが抑制される。なお、NMR測定期間において、第1ガス流の流量を変更してもよい。例えば、ロード時においては第1流量を設定し、回転時においては第1流量よりも少ない第2流量を設定してもよい(符号224を参照)。
【0076】
NMR測定の終了後、S22において、主制御部がイジェクト指示を出力する。その時点で、ロードガスの供給が停止され、同時に、イジェクトガスが供給され、これにより第2ガス流が生じる(符号226を参照)。S24においてイジェクト完了が判定されている。実際には、イジェクト指示から所定の時間t2を経過した時点でイジェクト完了が判定されている。キャリア内に試料管を検出するセンサを設け、センサの出力信号に基づいてイジェクト完了を判定してもよい。
【0077】
S26では、主制御部がリフト指示を出力する。これにより、リフトガスが供給される。その流量は大流量である(符号228を参照)。上昇ガス流により、キャリアが所定位置まで上方へ持ち上げられる。S28ではリフト完了が判定される。その時点で、リフトガスの流量が大流量から小流量へ変更される(符号230を参照)。これにより、S30において、次のキャリアの受け入れを待つ状態(待機状態)が形成される。待機状態では、イジェクトガス及びリフトガスの両方が流される。これにより通路を含むボア内への異物の進入が防止される。
【0078】
図9には、試料管移送装置の動作例が示されている。図9は、主制御部の制御内容を示すものでもある。図9においてはガス制御についての詳細が省略されている。
【0079】
S50では、ユーザーにより、ガイド部材の入口にキャリアが配置される。その後、結合状態が生じる。S52では、主制御部がロード指示を出力する。S54において、試料管がロードされる。すなわち、キャリアから回転器へ試料管が移送される。S56では、回転開始後において回転の検出の有無が判定される。
【0080】
S56において、回転が検出された場合、S58において、NMR測定が実行される。その終了後、S60において、主制御部がイジェクト指示を出力する。S62において、試料管のイジェクトが実施される。S64では、リフトガスが供給され、キャリアが上方へ持ち上げられる。
【0081】
一方、S56において、回転が検出されなかった場合、S66において、ロード動作回数Nが最大値Nmaxを超えたか否かが判断される。ロード動作回数Nが最大値Nmax以下であれば、S68においてロード動作回数Nがインクリメントされた上で、S54以降の工程が再び実行される。なお、ロード動作回数Nの初期値は1である。S66において、ロード動作回数Nが最大値Nmaxを超えたと判断された場合、S70においてエラー処理が実行される。例えば、ユーザーに対してエラーが報知される。
【0082】
図10には、試料管移送装置の他の動作例が示されている。図10において、図9に示した工程と同様の工程には同一の工程番号を付し、その説明を省略する。S66において、ロード動作回数Nが最大値Nmax以下であれば、S72において、イジェクト指示が出力され、それに従って、S74においてイジェクト動作が実行される。更に、S76では、キャリアを浮上させる動作が実行される。その上で、S68においてロード動作回数Nがインクリメントされる。その後、S52以降の各工程が繰り返し実行される。例えば、キャリアの結合状態の不良が疑われるような場合に、図10に示した他の動作例を採用し得る。
【0083】
図11には、構造体の他の例が示されている。構造体250は、ロードユニット252及びイジェクトユニット254を有する。上側に設けられているユニットがロードユニット252であり、下側に設けられているユニットがイジェクトユニット254である。
【0084】
ロードユニット252は、コーン状の隙間G3から第1位置P1へロードガスを噴射するものである。これにより第1ガス流が生じる。イジェクトユニット254は、コーン状の隙間G4から第2位置P2へイジェクトガスを噴射するものである。これにより第2ガス流が生じる。隙間G3が有する出口(噴射口)の向きは下向きであり、隙間G4が有する出口(噴射口)の向きは上向きである。
【0085】
試料管ロード時において、第1位置P1よりも上流側の第1上流区間256において負圧が生じ、第1位置P1よりも下流側の第1下流区間258において正圧が生じる。試料管イジェクト時において、第2位置P2よりも上流側の第2上流区間260において負圧が生じ、第2位置P2よりも下流側の第2下流区間262において正圧が生じる。
【0086】
図12には、試料管ロード時における、図11に示した構造体の動作が示されている。ロードユニット252において、ロードガス264が隙間G3から第1位置P1へ噴射されており、これにより第1ガス流が生じている。ロードユニット252内において、ロードガス264は、試料管266の側面に対して均等に吹き付けられるため、試料管の姿勢が不安定になることはない。
【0087】
一方、第1下流区間258では正圧が生じるところ、隙間G4において若干のガス流通が許容されている場合、隙間G4に入り込むガス流270が生じ得る。そのようなガス流270により試料管272の姿勢が不安定になるおそれがある。そのような問題を回避するために、図2に示した構造体を採用することが望まれる。もっとも、試料管272の姿勢の不安性という問題が生じない場合には、図11に示した構造体を採用してもよい。
【0088】
図13には、他の実施形態に係る試料管移送装置が示されている。試料管移送装置273は、キャリア26と回転器24との間で試料管の移送を行うものである。試料管移送装置273は、軸状部材280、ロードユニット276、イジェクトユニット278、軸状部材274、湾曲管、等を有している。
【0089】
ロードユニット276は、通路上の第1位置に対してロードガスを噴射し、これにより通路において第1ガス流を生じさせるものである。第1ガス流は図13において下向きの流れである。イジェクトユニット278は、通路上の第2位置に対してイジェクトガスを噴射し、これにより通路において第2ガス流を生じさせるものである。第2ガス流は図13において上向きの流れである。ロードユニット276及びイジェクトユニット278として、図2に示した構成が採用されてもよい。
【0090】
ロードユニット276及びイジェクトユニット278は、キャリア26に近い位置に設けられており、具体的には、静磁場発生器の外側に設けられている。図13に示す構成では、キャリア26の落下運動や浮上運動は行われない。例えば、ユーザーにより、軸状部材280に対してキャリア26が取り付けられる。
【0091】
図13に示す構成では、第1位置を堺として第1上流区間及び第1下流区間が定められ、また、第2位置を堺として第2上流区間及び第2下流区間が定められる。第1下流区間での過大な移送力や第2上流区間での移送力の過小が問題となる場合、図1に示した構成を採用することが望まれる。
【0092】
図13に示す構成において、ロードユニット276とイジェクトユニット278の位置
を入れ替えてもよい。ボア内部であってNMRプローブよりも上側の中間位置にロードユニット276とイジェクトユニット278を配置してもよい。
【0093】
上記実施形態においては、静磁場発生器の上側から試料管が投入されたが、静磁場発生器の下側から試料管が投入されてもよい。その場合においても通路の途中に第1位置及び第2位置を設定すれば、上記実施形態と同様の作用効果を得られる。上記実施形態において、クライオNMR測定プローブが用いられてもよい。
【0094】
試料管の回転状態において試料管の他方端面へガスを吹き付ける技術を、実施形態に係る試料管移送装置以外の試料管移送装置へ適用してもよい。また、開閉機構を備えたキャリアを、実施形態に係る試料管移送装置以外の試料管移送装置(例えば溶液試料を収容した試料管を移送する装置)へ適用してもよい。
【符号の説明】
【0095】
10 NMR測定システム、12 静磁場発生器、14 NMR測定プローブ、18 試料管移送装置、24 回転器、26 キャリア(収容器)、30 構造体、34 ロードユニット、36 イジェクトユニット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13