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  • 特開-圧力センサ 図1
  • 特開-圧力センサ 図2A
  • 特開-圧力センサ 図2B
  • 特開-圧力センサ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031318
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/12 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
G01L9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134805
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山内 凱偉
(72)【発明者】
【氏名】添田 将
(72)【発明者】
【氏名】石原 卓也
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055CC02
2F055EE25
2F055FF07
(57)【要約】
【課題】計測に用いるダイアフラムの領域を切り替える圧力センサの計測精度の安定化させる。
【解決手段】この圧力センサは、基台101、ダイアフラム102、構造体103、第1スイッチ電極105a、第2スイッチ電極105b、スイッチ導体105c、および測定部120を備える。構造体103は、ダイアフラム102の基台101の側の面の第1領域102aと第2領域102bとの境界部に設けられて基台101の側に突出して凸状に形成されている。第1スイッチ電極105a、第2スイッチ電極105b、スイッチ導体105cにより、ダイアフラム102が基台101の側に変位して構造体103が基台101に当接したことを検出する検出部が構成される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変位可能とされて基台の上に形成され、中央部の第1領域と前記第1領域の周囲の第2領域とを有して測定対象の気体の圧力を受けるダイアフラムと、
前記ダイアフラムの前記基台の側の面の前記第1領域と前記第2領域との境界部に設けられて前記基台の側に突出する凸状の構造体と、
前記ダイアフラムが前記基台の側に変位して前記構造体が前記基台に当接したことを検出するように構成された検出部と、
前記第1領域の変位を測定することで前記第1領域が受けた第1圧力値を求め、前記第2領域の変位を測定することで前記第2領域が受けた第2圧力値を求めるように構成された測定部と
を備え、
前記測定部は、前記検出部により前記構造体が前記基台に当接したことが検出されると、前記第2圧力値の出力から前記第1圧力値の出力に変更する
ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
請求項1記載の圧力センサにおいて、
前記検出部は、
前記基台に設けられた第1スイッチ電極および第2スイッチ電極と、
前記構造体の先端に設けられ、前記構造体が前記基台に当接した時に前記第1スイッチ電極と前記第2スイッチ電極とを短絡するスイッチ導体と
を備えることを特徴とする圧力センサ。
【請求項3】
請求項1または2記載の圧力センサにおいて、
前記ダイアフラムの前記第1領域の前記基台の側の面に形成された第1可動電極と、
前記基台の表面に設けられて前記第1可動電極と向かい合う第1固定電極と、
前記ダイアフラムの前記第2領域の前記基台の側の面に形成された第2可動電極と、
前記基台の表面に設けられて前記第2可動電極と向かい合う第2固定電極と
を備えることを特徴とする圧力センサ。
【請求項4】
請求項3記載の圧力センサにおいて、
前記基台の表面の前記第2固定電極の周囲に形成され、前記第2可動電極と向かい合う参照電極をさらに備えることを特徴とする圧力センサ。
【請求項5】
請求項4記載の圧力センサにおいて、
前記測定部は、
前記ダイアフラムの変位による前記第1可動電極と前記第1固定電極との間の容量変化を前記第1圧力値に変換して出力し、
前記第2可動電極と前記参照電極との間の容量を基準とし、前記ダイアフラムの変位による前記第2可動電極と前記第2固定電極との間の容量変化を前記第2圧力値に変換して出力する
ことを特徴とする圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
中央部の第1ダイアフラム部と、第1ダイアフラム部を取り囲む中央肉厚部と、中央肉厚部の周囲の第2ダイアフラム部とを備える圧力センサがある(特許文献1)。この圧力センサは、第2ダイアフラム部の変位により第1の圧力範囲を測定し、中央肉厚部が台座に当接した後は、第1ダイアフラム部の変位により第2の圧力範囲を測定する。このように1つのセンサで複数の圧力範囲を測定する部分を1つのセンサに設けることで、コンパクト化の効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-178533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現在、半導体製造装置の制御技術の高度化要求に伴い、圧力センサに対して、コンパクト化に加えて計測精度の安定化に向けた改善が要求されている。
【0005】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、計測に用いるダイアフラムの領域を切り替える圧力センサの計測精度の安定化を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る圧力センサは、変位可能とされて基台の上に形成され、中央部の第1領域と第1領域の周囲の第2領域とを有して測定対象の気体の圧力を受けるダイアフラムと、ダイアフラムの基台の側の面の第1領域と第2領域との境界部に設けられて基台の側に突出する凸状の構造体と、ダイアフラムが基台の側に変位して構造体が基台に当接したことを検出するように構成された検出部と、第1領域の変位を測定することで第1領域が受けた第1圧力値を求め、第2領域の変位を測定することで第2領域が受けた第2圧力値を求めるように構成された測定部とを備え、測定部は、検出部により構造体が基台に当接したことが検出されると、第2圧力値の出力から第1圧力値の出力に変更する。
【0007】
上記圧力センサの一構成例において、検出部は、基台に設けられた第1スイッチ電極および第2スイッチ電極と、構造体の先端に設けられ、構造体が基台に当接した時に第1スイッチ電極と第2スイッチ電極とを短絡するスイッチ導体とを備える。
【0008】
上記圧力センサの一構成例において、ダイアフラムの第1領域の基台の側の面に形成された第1可動電極と、基台の表面に設けられて第1可動電極と向かい合う第1固定電極と、ダイアフラムの第2領域の基台の側の面に形成された第2可動電極と、基台の表面に設けられて第2可動電極と向かい合う第2固定電極とを備える。
【0009】
上記圧力センサの一構成例において、基台の表面の第2固定電極の周囲に形成され、第2可動電極と向かい合う参照電極をさらに備える。
【0010】
上記圧力センサの一構成例において、測定部は、ダイアフラムの変位による第1可動電極と第1固定電極との間の容量変化を第1圧力値に変換して出力し、第2可動電極と参照電極との間の容量を基準とし、ダイアフラムの変位による第2可動電極と第2固定電極との間の容量変化を第2圧力値に変換して出力する。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、ダイアフラムの基台の側の面の第1領域と第2領域との境界部に設けられて基台の側に突出する凸状の構造体が基台に当接したことを検出するので、計測に用いるダイアフラムの領域を切り替える圧力センサの計測精度の安定化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る圧力センサの構成を示す断面図である。
図2A図2Aは、本発明の実施の形態1に係る圧力センサの一部構成を示す平面図である。
図2B図2Bは、本発明の実施の形態1に係る圧力センサの一部構成を示す平面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態2に係る圧力センサの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る圧力センサについて説明する。
【0014】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1に係る圧力センサについて、図1を参照して説明する。この圧力センサは、基台101、ダイアフラム102、構造体103、第1スイッチ電極105a、第2スイッチ電極105b、スイッチ導体105c、および測定部120を備える。
【0015】
ダイアフラム102は、変位可能とされて基台101の上に形成されている。ダイアフラム102は、中央部の第1領域102aと、第1領域102aの周囲の第2領域102bとを有して測定対象の気体の圧力を受ける。ダイアフラム102は、基台101の表面から離間して基台101と向かい合う対向面を有する。ダイアフラム102の対向面は、基台101と離間して配置され、ダイアフラム102は、基台101の平面の法線方向に変位可能とされている。ダイアフラム102は、測定対象からの圧力を受けると変位する。例えば、第1領域102aは、第2領域102bより厚く形成されている。また、基台101とダイアフラム102の対向面との間には、基準室115が形成される。基準室115は、例えば、真空とされている。
【0016】
ダイアフラム102は、ダイアフラム基板111に設けられた支持部112によって、基台101の上に支持されている。ダイアフラム基板111の支持部112と基台101とは、ダイアフラム102の外周部の接合部113で接合されている。なお、基台101の方に、支持部を設けることができる。例えば、基台101,ダイアフラム基板111は、平面視正方形とされている。ただし、平面視正方形以外の形状であってもよい。また、ダイアフラム102の支持部112の内側の領域は平面視で円形とされている。基台101およびダイアフラム基板111は、例えばサファイアやアルミナセラミックなどの絶縁体から構成することができる。
【0017】
構造体103は、ダイアフラム102の基台101の側の面の第1領域102aと第2領域102bとの境界部に設けられて基台101の側に突出して凸状に形成されている。第1スイッチ電極105aおよび第2スイッチ電極105bは、基台101の構造体103の形成位置に向かい合うに箇所に設けられている。スイッチ導体105cは、構造体103の先端に設けられている。構造体103が基台101に当接した時に、スイッチ導体105cにより第1スイッチ電極105aと第2スイッチ電極105bとが短絡する。第1スイッチ電極105a、第2スイッチ電極105b、スイッチ導体105cにより、ダイアフラム102が基台101の側に変位して構造体103が基台101に当接したことを検出する検出部が構成される。
【0018】
測定部120は、第1領域102aの変位を測定することで第1領域102aが受けた第1圧力値を求め、第2領域102bの変位を測定することで第2領域102bが受けた第2圧力値を求める。測定部120は、検出部により構造体103が基台101に当接したことが検出されると、第2圧力値の出力から第1圧力値の出力に変更する。
【0019】
実施の形態1において、圧力センサは、第1可動電極106、第1固定電極107、第2可動電極108、第2固定電極109を備える。第1可動電極106は、ダイアフラム102の第1領域102aの基台101の側の面(対向面)に形成されている。第1固定電極107は、基台101の表面に設けられて第1可動電極106と向かい合って配置されている。
【0020】
第2可動電極108は、ダイアフラム102の第2領域102bの基台101の側の面(対向面)に形成されている。第2固定電極109は、基台101の表面に設けられて第2可動電極108と向かい合って配置されている。可動電極と固定電極とは、容量を形成する。この容量は、ダイアフラム102が変位する(撓む)ことで、変化する。よく知られているように、静電容量式の圧力センサは、固定電極と可動電極との間に形成される容量の変化により、ダイアフラム102で受けた圧力を測定する。
【0021】
測定部120は、ダイアフラム102の変位による第1可動電極106と第1固定電極107との間の容量変化を第1圧力値に変換して出力する。また、測定部120は、第2可動電極108と参照電極との間の容量を基準とし、ダイアフラム102の変位による第2可動電極108と第2固定電極109との間の容量変化を第2圧力値に変換して出力する。
【0022】
例えば、ダイアフラム102が受圧していない状態から、ダイアフラム102が受圧する圧力がある圧力値に達すると、ダイアフラム102の変位により構造体103の先端が、基台101に当接する。この状態は、第1スイッチ電極105aと第2スイッチ電極105bとが、スイッチ導体105cにより短絡されたことにより検出される。
【0023】
構造体103の先端が基台101に当接するまでは、ダイアフラム102の外周(支持部112)が固定支持端となってダイアフラム102が変形する。構造体103の先端が基台101に当接した後は、構造体103が固定支持端となってダイアフラム102が変形する。
【0024】
第1領域102aと第2領域102bではその面積または厚さの違いにより、構造体103の当接前後で印加圧力に対する変位量が異なる。たわみ(変位量)は面積の2乗と厚さの3乗に比例するため、第1領域102aが当接する前の低圧測定を可能とし、第2領域102bが当接した後に高圧測定を可能にする。また、構造体103が基台101に当接したことを検出するので、切り替わるタイミングが分かるため、適切な圧力値の演算切替えができるようになり、計測精度の安定化の効果が得られる。
【0025】
構造体103は、図2Aに示すように、つい立て状の形状とすることができる。また、構造体103は、図2Bに示すように、円柱状とすることができる。また、構造体103は、複数設けることができる。
【0026】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2に係る圧力センサについて、図3を参照して説明する。この圧力センサは、基台101、ダイアフラム102、構造体103、第1スイッチ電極105a、第2スイッチ電極105b、スイッチ導体105cを備える。また、圧力センサは、第1可動電極106、第1固定電極107、第2可動電極108、第2固定電極109を備える。これらの構成は、前述した実施の形態1と同様である。
【0027】
実施の形態2では、基台101の表面の第2固定電極109の周囲に形成され、第2可動電極108と向かい合う参照電極110を備える。測定部120aは、ダイアフラム102の変位による第1可動電極106と第1固定電極107との間の容量変化を第1圧力値に変換して出力する。また、測定部120aは、第2可動電極108と参照電極110との間の容量を基準とし、ダイアフラム102の変位による第2可動電極108と第2固定電極109との間の容量変化を第2圧力値に変換して出力する。
【0028】
実施の形態2においても、例えば、ダイアフラム102が受圧していない状態から、ダイアフラム102が受圧する圧力がある圧力値に達すると、ダイアフラム102の変位により構造体103の先端が、基台101に当接する。この状態は、第1スイッチ電極105aと第2スイッチ電極105bとが、スイッチ導体105cにより短絡されたことにより検出される。
【0029】
構造体103の先端が基台101に当接するまでは、ダイアフラム102の外周(支持部112)が固定支持端となってダイアフラム102が変形する。構造体103の先端が基台101に当接した後は、構造体103が固定支持端となってダイアフラム102が変形する。第1領域102aと第2領域102bではその面積または厚さの違いにより、構造体103の当接前後で印加圧力に対する変位量が異なる。たわみ(変位量)は面積の2乗と厚さの3乗に比例するため、第1領域102aが当接する前の低圧測定を可能とし、第2領域102bが当接した後に高圧測定を可能にする。さらに、実施の形態2位よれば、第2可動電極108と参照電極110との間の容量を基準として第2可動電極108と第2固定電極109との間の容量変化を測定するので、測定のバラツキを抑制することができる。
【0030】
以上に説明したように、本発明によれば、ダイアフラムの基台の側の面の第1領域と第2領域との境界部に設けられて基台の側に突出する凸状の構造体が基台に当接したことを検出するので、計測に用いるダイアフラムの領域を切り替える圧力センサの計測精度の安定化が図れるようになる。
【0031】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0032】
101…基台、102…ダイアフラム、102a…第1領域、102b…第2領域、103…構造体、105a…第1スイッチ電極、105b…第2スイッチ電極、105c…スイッチ導体、106…第1可動電極、107…第1固定電極、108…第2可動電極、109…第2固定電極、111…ダイアフラム基板、112…支持部、113…接合部、115…基準室、120…測定部。
図1
図2A
図2B
図3