(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031321
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ロボット装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B25J15/08 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134811
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】盛 真唯子
(72)【発明者】
【氏名】杉田 澄雄
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS10
3C707ES05
3C707ES07
3C707HS27
3C707HT04
(57)【要約】
【課題】ロボット装置において対象物を確実に把持することができること。
【解決手段】ロボット装置1は、屈曲状態Cと伸長状態Sとを有する指部50と、伸長状態Sから屈曲状態Cになる指部50の屈曲動作に応じて、指部50の基端B側から先端E側に指部50を並進移動させる移動装置20と、備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲状態と伸長状態とを有する指部と、
前記伸長状態から前記屈曲状態になる前記指部の屈曲動作に応じて、前記指部の基端側から先端側に前記指部を並進移動させる移動装置と、備えている、
ロボット装置。
【請求項2】
前記移動装置は、前記指部の屈曲動作に応じて第1方向に沿って前記指部を並進移動させ、
前記指部の屈曲動作によって生じる前記指部の先端の前記第1方向に沿った先端移動量と、前記指部の並進移動によって生じる前記指部の前記第1方向に沿った指移動量とは、互いに等しい、
請求項1に記載のロボット装置。
【請求項3】
前記指部は、
第1節部と、
第2節部と、
前記第1節部と前記第2節部とを連結し、前記第1節部に対して回転軸線回りに前記第2節部を回転させる関節部と、を備え、
前記指部の屈曲動作によって生じる前記第1節部に対する前記第2節部の回転角度に基づいて、前記先端移動量を算出し、前記移動装置を制御する制御装置をさらに備えている、
請求項2に記載のロボット装置。
【請求項4】
前記指部は、前記第1節部に対して前記第2節部を付勢するバネ部材、および、前記バネ部材の付勢力を検出する検出部をさらに備え、
前記制御装置は、前記第1節部に対する前記第2節部の回転角度と前記バネ部材の付勢力との相関関係に基づいて、前記検出部の検出結果を用いて、前記先端移動量を算出する、
請求項3に記載のロボット装置。
【請求項5】
前記バネ部材は、板バネである、
請求項4に記載のロボット装置。
【請求項6】
前記指部を複数備え、
複数の前記指部は、前記指部の先端が互いに近づく方向に屈曲する、
請求項1から5の何れか1項に記載のロボット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、多関節一指ハンドを有するピッキング装置の一例が開示されている。多関節一指ハンドが伸展状態から屈曲状態となることで、ピッキング装置はワークを引っ掛けて把持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、多関節一指ハンド(指部)は伸展状態から屈曲状態となると、指部の先端が上昇し、指の先端とワーク(対象物)との高さ方向の位置がずれることで、指部と対象物とが接触せずに、ピッキング装置(ロボット装置)が対象物を引っ掛けて把持することができない可能性がある。
【0005】
本開示の態様は、ロボット装置において対象物を確実に把持することができることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の態様は、屈曲状態と伸長状態とを有する指部と、前記伸長状態から前記屈曲状態になる前記指部の屈曲動作に応じて、前記指部の基端側から先端側に前記指部を並進移動させる移動装置と、備えているロボット装置を提供する。
【0007】
本開示の態様によれば、例えば載置面に置かれている対象物をロボット装置が把持する場合に、指部の屈曲動作に応じて指部の基端側から先端側(すなわち指部の先端が載置面に向かう側;載置面側)に指部が並進移動することで、指部の先端が載置面から離れることが抑制される。これにより、指部が載置面に置かれた対象物と接触することができ、ロボット装置は、対象物を把持することができる。
【0008】
本開示の態様において、前記移動装置は、前記指部の屈曲動作に応じて第1方向に沿って前記指部を並進移動させ、前記指部の屈曲動作によって生じる前記指部の先端の前記第1方向に沿った先端移動量と、前記指部の並進移動によって生じる前記指部の前記第1方向に沿った指移動量とは、互いに等しい。
【0009】
これにより、例えば載置面に置かれている対象物をロボット装置が把持する場合に、指部の屈曲動作時において指部の先端と載置面との距離がほぼ一定に維持され、指部の先端が載置面から離れることが確実に抑制される。よって、ロボット装置は、確実に対象物を把持することができる。
【0010】
本開示の態様において、前記指部は、第1節部と、第2節部と、前記第1節部と前記第2節部とを連結し、前記第1節部に対して回転軸線回りに前記第2節部を回転させる関節部と、を備えている。また、ロボット装置は、前記指部の屈曲動作によって生じる前記第1節部に対する前記第2節部の回転角度に基づいて、前記先端移動量を算出し、前記移動装置を制御する制御装置をさらに備えている。
【0011】
これにより、ロボット装置は、第1節部に対する第2節部の回転角度に基づいて先端移動量を算出することで、指移動量を精度よく算出することができる。よって、ロボット装置は、さらに確実に対象物を把持することができる。
【0012】
本開示の態様において、前記指部は、前記第1節部に対して前記第2節部を付勢するバネ部材、および、前記バネ部材の付勢力を検出する検出部をさらに備えている。前記制御装置は、前記第1節部に対する前記第2節部の回転角度と前記バネ部材の付勢力との相関関係に基づいて、前記検出部の検出結果を用いて、前記先端移動量を算出する。
【0013】
これにより、ロボット装置は、検出部の検出結果から、先端移動量を精度よく算出することができる。また、ロボット装置は、比較的簡便な構成で指移動量を算出することができる。
【0014】
本開示の態様において、前記バネ部材は、板バネである。
【0015】
板バネは、例えばコイルバネ等の他の種類のバネと比べて、第1節部に対する第2節部の回転角度に対するバネ部材の付勢力の変化量、すなわちバネ定数を精度よく定めることができる。つまり、指部の大きさ、並びに、対象物の重量および硬度などに対応するバネ部材の付勢力に対して、第1節部に対する第2節部の回転角度とバネ部材の付勢力の変化量との関係を適切に定めることができる。よって、ロボット装置は、先端移動量ひいては指移動量をさらに精度よく算出することができる。
【0016】
本開示の態様において、ロボット装置は、前記指部を複数備えている。複数の前記指部は、前記指部の先端が互いに近づく方向に屈曲する。
【0017】
これにより、ロボット装置は、複数の指部によって対象物をつかむことで把持することができ、複数の指部が対象物をつかむ場合においても、確実に対象物を把持することができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示の態様によれば、対象物を確実に把持することができる指部を有するロボット装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るロボット装置の概要図である。
【
図3】
図3は、-Z側からZ方向に沿って見たハンド部の平面図である。
【
図5】
図5は、伸長状態である指部の背側から見た第1関節部の周辺の部分拡大図である。
【
図6】
図6は、
図5に示すA-A線に沿った指部の断面図である。
【
図7】
図7は、節部の回転角度を示す指部の模式図である。
【
図8】
図8は、制御装置が指部を屈曲動作させてハンド部が対象物を把持する場合の指部の動作を示す図である。
【
図9】
図9は、把持力とモータ部の出力軸の回転量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0021】
また、以下の説明においては、後述するハンド部10を構成する基部40の底面40aと直交する方向をZ方向とし、Z方向と直交する方向をX方向とし、Z方向およびX方向と直交する方向をY方向とする。つまり、X方向およびY方向は、底面40aと平行である。なお、X、Y、Zの方向は一例であって、本開示はこれらの方向に限定されない。
【0022】
図1は、本実施形態に係るロボット装置1の概要図である。ロボット装置1は、搬送台2などの載置面2aに置かれた対象物Tを把持し、把持した対象物Tを移動させる。ロボット装置1は、ハンド部10、移動装置20、および、制御装置30を備えている。
【0023】
ハンド部10は、対象物Tを把持する。ハンド部10は、並進移動可能に移動装置20に取り付けられている。
【0024】
図2は、ハンド部10の概要図である。ハンド部10は、基部40および複数の指部50を備えている。ハンド部10は、載置面2aに置かれた対象物Tを複数の指部50でつかむことで把持する。
【0025】
基部40は、移動装置20に取り付けられる。基部40は、底壁41aを含んで構成されているケーシング41、および、複数の指駆動部42を備えている。
【0026】
指駆動部42は、指部50を駆動する。指駆動部42の個数は、指部50の個数と等しい。指駆動部42は、モータ部42a、第1プーリ42b、第2プーリ42c、および、ワイヤ42dを備えている。モータ部42a、第1プーリ42bおよび第2プーリ42cは、ケーシング41に収納されている。
【0027】
モータ部42aは、出力軸42a1の回転角度を制御可能なモータを含んで構成されている。モータ部42aは、ステッピングモータである。モータ部42aは、制御装置30と電気的に接続され、制御装置30によって制御される(詳細は後述する)。なお、モータ部42aは、直流電源で駆動するDCモータ、減速機構、および、出力軸42a1の回転角度を検出するエンコーダを含んで構成されてもよい。
【0028】
第1プーリ42bは、モータ部42aの出力軸42a1に取り付けられ、出力軸42a1と一体回転する。また、第1プーリ42bには、ワイヤ42dの第1端が固定されている。出力軸42a1の回転に応じて、第1プーリ42bは、ワイヤ42dの巻取り、または、ワイヤ42dの繰り出しを行う。
【0029】
第2プーリ42cは、ワイヤ42dを指部50に案内する。
【0030】
ワイヤ42dは、例えばステンレス鋼などの金属製である。なお、ワイヤ42dの材料は、樹脂および繊維でもよい。ワイヤ42dの第1端側は、ケーシング41内にあり、ワイヤ42dの第2端側は、ケーシング41の外部にある。ワイヤ42dの第2端は、指部50に固定されている。
【0031】
指部50は、複数あり、互いに同様に構成されている。指部50の個数は、4つであるが、4つに限定されないことは言うまでもない。指部50の基端Bは、基部40の底面40aに固定されている。
【0032】
図3は、-Z側からZ方向に沿って見たハンド部10の平面図である。複数の指部50は、平面視において、複数の指部50の間に対象物Tより大きい空間A(
図2および
図3)を取り囲む位置にある。具体的には、4つの指部50の基端Bは、平面視において正四角形の頂点に対応する位置に固定されている。なお、指部50の個数が3以上である場合、複数の指部50の基端Bは、平面視において、指部50の個数と等しい個数の辺を有する多角形の頂点に対応する位置に固定される。指部50の個数が2である場合、2つの指部50は、空間Aを挟んで対向して配置される。
【0033】
また、指部50は、伸長状態Sと屈曲状態Cを有する。伸長状態Sは、
図2に示すように、指部50が伸長方向に沿って伸びている状態である。伸長方向は、本実施形態においてZ方向と平行である。指部50が伸長状態Sである場合に、指部50において最も+Z側に位置する部位が指部50の先端Eに相当する。
【0034】
屈曲状態Cは、指部50が屈曲している状態である。屈曲状態Cでは、指部50は、複数の指部50の先端Eが空間Aの内側に向かう方向に屈曲している。複数の指部50は、指部50の先端Eが互いに近づく方向に屈曲する。Z方向に沿う平面視において複数の指部50の先端Eが上記の正四角形の重心に近づく方向に、複数の指部50が屈曲する。指部50が屈曲すると、対象物Tに接触する。
【0035】
以下、指部50において、空間Aに向いている側を腹側と称し、その反対側を背側と称する。屈曲状態Cの詳細は、後述する。
【0036】
図4は、指部50の側面図である。
図4にて実線で示す指部50は、伸長状態Sであり、破線で示す指部50は、屈曲状態Cである。
【0037】
指部50は、1列に並ぶ複数の節部51、複数の関節部52、および、接触部53を備えている。互いに隣り合う2つの節部51が後述する回転軸線R回りに相対回転することで、指部50が伸長状態Sまたは屈曲状態Cとなる。なお、
図4において、回転軸線RがY方向と平行であり、指部50の腹側が+X側であり、指部50の背側が-X側である。
【0038】
節部51は、4つあり、第1節部51a、第2節部51b、第3節部51c、および、第4節部51dを有する。第1節部51a、第2節部51b、第3節部51c、および、第4節部51dは、指部50の基端B側(-Z側)から先端E側(+Z側)に向けて、この順に配置されている。なお、第1節部51a、第2節部51b、第3節部51c、および、第4節部51dを区別することなく説明する場合は、単に「節部51」と称する。節部51の個数が4つに限定されないことは言うまでもない。
【0039】
第1節部51aは、基部40の底面40aに固定されている。第2節部51b、第3節部51c、および、第4節部51dは、それぞれ、基端B側の節部51と当たらずに指部50を腹側に屈曲可能とする弧状の切り欠き部50a、および、基端B側の節部51と当たることで指部50が背側に屈曲することが妨げられる角部50bを有している。具体的には、指部50の伸長状態Sでは、第2節部51bの角部50bが第1節部51aと当たり、第3節部51cの角部50bが第2節部51bと当たり、さらに、第4節部51dの角部50bが第3節部51cと当たっている。
【0040】
また、第4節部51dの背側には、ワイヤ42dの第2端を固定する固定部50cが配置されている。第2節部51bの背側には、ワイヤ42dを案内し、節部51とワイヤ42dとが擦れることを抑制する案内部50dが配置されている。つまり、ワイヤ42dは、指部50の背側に位置する。なお、案内部50dは、複数あり、第2節部51b以外の節部51および基部40に配置されてもよい。
【0041】
複数の関節部52は、3つあり、第1節部51aと第2節部51bとを連結する第1関節部52a、第2節部51bと第3節部51cとを連結する第2関節部52b、および、第3節部51cと第4節部51dとを連結する第3関節部52cを有する。
【0042】
第1関節部52aは、第1回転軸線R1を有し、第1節部51aに対して第1回転軸線R1回りに第2節部51bを回転させる。第2関節部52bは、第2回転軸線R2を有し、第2節部51bに対して第2回転軸線R2回りに第3節部51cを回転させる。第3関節部52cは、第3回転軸線R3を有し、第3節部51cに対して第3回転軸線R3回りに第4節部51dを回転させる。第1回転軸線R1、第2回転軸線R2、および、第3回転軸線R3は、互いに平行であり、伸長状態Sである指部50の伸長方向(Z方向)と直交する。
【0043】
なお、第1回転軸線R1、第2回転軸線R2、および、第3回転軸線R3を区別することなく説明する場合は、単に「回転軸線R」と称する。また、第1関節部52a、第2関節部52b、および、第3関節部52cを区別することなく説明する場合は、単に「関節部52」と称する。関節部52の個数は3つに限定されないことは言うまでもなく、節部51の個数に対応して定められる。
【0044】
関節部52は、回転軸線Rと同軸の円柱状である。
【0045】
接触部53は、第4節部51dの腹側にあり、断面弧状である。接触部53は、ハンド部10が対象物Tを把持する際に、対象物Tと接触する。なお、接触部53は、断面弧状に限定されないことは言うまでもなく、ハンド部10が対象物Tを把持できる形状であればよい。
【0046】
さらに、指部50は、バネ部材54および検出部55それぞれを複数備えている。バネ部材54の個数および検出部55の個数は、関節部52の個数と等しい。バネ部材54および検出部55それぞれは、関節部52に対応して1つずつ配置されている。
【0047】
具体的には、第1バネ部材54aおよび第1検出部55aが第1関節部52aに対応して配置され、第2バネ部材54bおよび第2検出部55bが第2関節部52bに対応して配置され、第3バネ部材54cおよび第3検出部55cが第3関節部52cに対応して配置されている。なお、第1バネ部材54a、第2バネ部材54b、および、第3バネ部材54cを区別することなく説明する場合は、単に「バネ部材54」と称する。また、第1検出部55a、第2検出部55b、および、第3検出部55cを区別することなく説明する場合は、単に「検出部55」と称する。
【0048】
図5は、伸長状態Sである指部50の背側から見た第1関節部52aの周辺の部分拡大図である。なお、
図5では、ワイヤ42dの図示は省略されている。
図6は、
図5に示すA-A線に沿った指部50の断面図である。
【0049】
第1バネ部材54aは、板バネである。第1バネ部材54aは、第1節部51aの被接触面P1に第1端部が接触し、かつ、被接触面P1に対向する第2節部51bの対向面P2に配置された第1検出部55aに第2端部が接触した状態で、第1関節部52aの周りで屈曲した状態で配置されている。対向面P2は、指部50の背側を向くように被接触面P1に対して第1回転軸線R1回りに傾斜しており、第1バネ部材54aは、第1端部および第2端部が指部50の背側に位置するように屈曲している。
【0050】
第1バネ部材54aは、第1節部51aに対して第2節部51bを第1回転軸線R1回りに指部50の腹側に回転させる方向に、第2節部51bを付勢する。つまり、第1バネ部材54aは、指部50の伸長状態Sおよび屈曲状態Cにおいて、第1バネ部材54aが伸展する方向に、被接触面P1および第1検出部55aを付勢している。
【0051】
第1バネ部材54aの付勢力は、対象物Tの重量および硬度などによって定められている。第1バネ部材54aの付勢力は、指部50が伸長状態Sである場合に最大となり、第1節部51aに対して第2節部51bが回転することで、指部50が屈曲するにしたがって小さくなる。つまり、第1節部51aに対する第2節部51bの回転角度が大きくなるにしたがって、第1バネ部材54aの付勢力は小さくなる。
【0052】
第1検出部55aは、第1バネ部材54aの付勢力を検出する。第1検出部55aは、荷重センサである。第1検出部55aは、制御装置30と電気的に接続されており、検出した第1バネ部材54aの付勢力を制御装置30に送信する。
【0053】
なお、第2関節部52bに対応する第2バネ部材54bおよび第2検出部55b、並びに、第3関節部52cに対応する第3バネ部材54cおよび第3検出部55cは、それぞれ、上記の第1バネ部材54aおよび第1検出部55aと同様に構成され、
図5および
図6に示す第1バネ部材54aおよび第1検出部55aと同様に配置されている。
【0054】
次に、指部50が伸長状態Sから屈曲状態Cとなる指部50の屈曲動作、および、指部50が屈曲状態Cから伸長状態Sとなる伸長動作について
図4を用いて説明する。
【0055】
図4に示すように、指部50が実線で示す伸長状態Sである場合、上記のように、指部50は、伸長方向(Z方向)に沿って伸びており、第2節部51b、第3節部51c、および、第4節部51dの角部50bは、基端B側の節部51と当たっている。この場合、3つのバネ部材54の付勢力に抗して、指部50の伸長状態Sを維持するワイヤ42dの張力を保つようにモータ部42aの出力軸42a1が固定されている。
【0056】
指部50が伸長状態Sである場合において、モータ部42aの出力軸42a1が回転して、第1プーリ42bからワイヤ42dが繰り出されると、バネ部材54の付勢力によって、第2節部51b、第3節部51c、および、第4節部51dそれぞれが基端B側の節部51に対して回転軸線R回りに指部50の腹側の方向、つまり
図4において反時計回り方向に回転する。これにより、指部50が屈曲して、破線で示す屈曲状態Cとなる。
【0057】
一方、指部50が屈曲状態Cである場合において、モータ部42aの出力軸42a1が回転して、第1プーリ42bにワイヤ42dが巻き取られると、バネ部材54の付勢力に抗して、第2節部51b、第3節部51c、および、第4節部51dが基端B側の節部51に対して回転軸線R回りに指部50の背側の方向、つまり
図4において時計回り方向に回転する。そして、第2節部51b、第3節部51c、および、第4節部51dの角部50bが基端B側の節部51と当たると、指部50が伸長状態Sとなる。
【0058】
図1に示す移動装置20は、ハンド部10を並進移動させる。移動装置20は、基台21、および、アーム部22を備えている。基台21は、ロボット装置1が設置される設置面Gに配置されている。
【0059】
アーム部22は、第1アーム22a、第2アーム22b、第3アーム22c、および、第4アーム22dを有している。第1アーム22aは、基台21に対して、鉛直方向とほぼ平行な基台軸線(不図示)回りに回転可能に接続されている。第2アーム22bは、第1アーム22aに対して基台軸線と交差する軸線(不図示)回りに回転可能に接続されている。
【0060】
第3アーム22cは、第2アーム22bに対して基台軸線と交差する軸線(不図示)回りに回転可能に接続されている。第4アーム22dは、第3アーム22cに対して基台軸線と交差する軸線(不図示)回りに回転可能に接続されている。第4アーム22dには、ハンド部10が取り付けられている。
【0061】
また、アーム部22は、第1アーム22a、第2アーム22b、第3アーム22c、および、第4アーム22dを上記のように回転させる複数のモータ(不図示)を有している。複数のモータは、制御装置30と電気的に接続されており、制御装置30によってモータの回転量が制御されることで、アーム部22が駆動する。
【0062】
基台21に対してアーム部22が駆動することで、ハンド部10が並進移動する。移動装置20は、載置面2aとハンド部10の底面40aとがほぼ平行な状態(すなわち載置面2aとZ方向とがほぼ直交する状態)で、ハンド部10を並進移動させる。なお、移動装置20は、ハンド部10の底面40aを載置面2aに対して傾斜させるように駆動してもよいし、底面40aが載置面2aと傾斜した状態でハンド部10を並進移動させてもよい。
【0063】
制御装置30は、ハンド部10および移動装置20を制御する。制御装置30の記憶領域には、指部50の屈曲動作によって生じる節部51の回転角度と、指部50が対象物Tと接触していない状態におけるバネ部材54の付勢力との相関関係が格納されている。節部51の回転角度は、互いに連結している2つの節部51において、指部50の基端B側の節部51に対する先端E側の節部51の回転角度である。
【0064】
図7は、節部51の回転角度を示す指部50の模式図である。
図7の模式図は、回転軸線RがY方向と平行であり、かつ、腹側が+X側に向く指部50を、回転軸線Rに沿って見た状態を示している。つまり、
図7の模式図は、
図4に示す屈曲状態Cの指部50の側面図を模式的に示している。
【0065】
図7において、第1直線L1は、第1回転軸線R1(
図4)を通り、伸長方向(Z方向)と平行な直線である。第2直線L2は、第1回転軸線R1と第2回転軸線R2(
図4)とを結ぶ直線である。第3直線L3は、第2回転軸線R2と第3回転軸線R3(
図4)とを結ぶ直線である。第4直線L4は、第3回転軸線R3と第4節部51dの先端E(
図4)とを結ぶ直線である。第2直線L2、第3直線L3、および、第4直線L4それぞれの長さは、指部50の形状によって定まり、記憶領域に予め格納されている。
【0066】
第1回転角度θ1は、第1直線L1に対する第2直線L2の回転角度であり、第1節部51aに対する第2節部51bの回転角度に相当する。第2回転角度θ2は、第2直線L2に対する第3直線L3の回転角度であり、第2節部51bに対する第3節部51cの回転角度に相当する。第3回転角度θ3は、第3直線L3に対する第4直線L4の回転角度であり、第3節部51cに対する第4節部51dの回転角度に相当する。なお、第1回転角度θ1、第2回転角度θ2、および、第3回転角度θ3を区別することなく説明する場合、単に「回転角度θ」と称する場合がある。指部50が伸長状態Sである場合、回転角度θはゼロである。
【0067】
制御装置30の記憶領域には、第1回転角度θ1と第1バネ部材54aの付勢力との相関関係、第2回転角度θ2と第2バネ部材54bの付勢力との相関関係、および、第3回転角度θ3と第3バネ部材54cの付勢力との相関関係が格納されている。この3つの相関関係は、上記のように、回転角度θが大きくなるにしたがって、バネ部材54の付勢力が小さくなることを示す。
【0068】
上記の3つの相関関係、並びに、第1直線L1、第2直線L2、第3直線L3、および、第4直線L4それぞれの長さに基づいて、検出部55から送信されるバネ部材54の付勢力から、制御装置30は、第1回転軸線R1と指部50の先端Eと間の伸長方向(Z方向)に沿った距離(以下、先端距離と称する。)Hを、式(1)によって算出することができる。
【0069】
(数1)
H=h1+h2+h3
=D2×cosθ1+D3×cos(θ1+θ2)+D4×(θ1+θ2+θ3)
…(1)
【0070】
式(1)において、h1は、
図7に示すように、第1回転軸線R1と第2回転軸線R2と間の伸長方向に沿った距離であり、h2は、第2回転軸線R2と第3回転軸線R3との間の伸長方向に沿った距離であり、h3は、第3回転軸線R3と指部50の先端Eとの間の伸長方向に沿った距離である。また、D2は、第2直線L2の長さであり、D3は、第3直線L3の長さであり、D4は、第4直線L4の長さである。D2、D3およびD4は、予め測定されて記憶領域に格納されている。
【0071】
さらに、制御装置30は、指部50が対象物Tを把持する把持力Fを算出する。把持力Fは、バネ部材54の付勢力によって指部50の先端Eに生じる伸長方向と直交する方向(
図7の模式図ではX方向)の力であり、式(2)によって算出することができる。
【0072】
(数2)
F=(M1/D2)×cosθ1+(M2/D3)×cos(θ1+θ2)
+(M3/D4)×(θ1+θ2+θ3) …(2)
【0073】
式(2)において、M1は、第1バネ部材54aの付勢力によって生じる第1回転軸線R1回りのモーメントであり、M2は、第2バネ部材54bの付勢力によって生じる第2回転軸線R2回りのモーメントであり、M3は、第3バネ部材54cの付勢力によって生じる第3回転軸線R3回りのモーメントである。
【0074】
M1、M2およびM3のモーメントは、検出部55から送信されるバネ部材54の付勢力、および、付勢力の作用点と回転軸線Rとの距離を用いて算出される。付勢力の作用点と回転軸線Rとの距離は、予め測定されて記憶領域に格納されている。
【0075】
また、記憶領域には、ハンド部10が対象物Tを把持するハンド部10の把持位置HPの座標が格納されている。把持位置HPは、
図2に示すように、載置面2aに置かれている対象物Tを複数の指部50が取り囲む位置である。把持位置HPは、制御装置30が移動装置20を制御することで対象物Tを把持できるハンド部10の位置を調節することで導出され、記憶領域に予め格納されている。
【0076】
ハンド部10が把持位置HPに位置する場合、載置面2aとZ方向とがほぼ直交しており、伸長状態Sである複数の指部50の先端Eと載置面2aとの間のZ方向距離は、予め定められている所定距離に定められている。所定距離は、載置面2aに置かれている対象物Tの高さより小さく、対象物Tと接触部53とが所望の位置で接触する距離である。
【0077】
次に、制御装置30が指部50を屈曲動作させてハンド部10が対象物Tを把持する場合のロボット装置1の動作について説明する。ハンド部10が
図2に示す把持位置HPにあり、複数の指部50が伸長状態Sであるところから説明する。
【0078】
図8は、制御装置30が指部50を屈曲動作させてハンド部10が対象物Tを把持する場合の指部50の動作を示す図である。
図8において、破線で示す指部50は伸長状態Sであり、実線で示す指部50は、屈曲状態Cである。また、
図8において、回転軸線RはY方向と平行であり、指部50の腹側は+X側であり、指部50の背側は、-X側である。
【0079】
指部50が伸長状態Sであるところから、制御装置30は、モータ部42aを回転させてワイヤ42dを繰り出す。これにより、指部50は、上記のように屈曲動作する。この屈曲動作によって、回転角度θが大きくなることで、先端距離Hが小さくなる(式(1))。また、指部50の先端Eは、X方向において+X側に移動して、対象物Tに近づく。
【0080】
この屈曲動作に応じて、制御装置30は、移動装置20を制御して、指部50の基端B側から先端E側に指部50を並進移動させる。また、制御装置30は、第1方向に沿って指部50を並進移動させる。本実施形態において、第1方向は、Z方向と平行である。つまり、移動装置20は、指部50の基端B側から先端E側(つまり指部50の先端Eが載置面2aに向かう側、すなわち、載置面2a側(+Z側))に第1方向(Z方向)に沿ってハンド部10を並進移動させる。これにより、指部50の屈曲動作に応じて、ハンド部10ひいては複数の指部50が、載置面2aに近づく。
【0081】
さらに、制御装置30は、屈曲動作を開始した時点から予め定められている第1所定時間毎に、上記の式(1)を用いて先端距離Hを算出する。第1所定時間は、屈曲動作の開始時点から指部50が対象物Tと接触する時点までの時間より十分短い時間(例えば0.05秒)である。
【0082】
制御装置30は、上記の3つの相関関係に基づいて、検出部55の検出結果であるバネ部材54の付勢力を用いて、第1回転角度θ1、第2回転角度θ2および第3回転角度θ3を導出し、式(1)を用いて先端距離Hを導出する。
【0083】
さらに、制御装置30は、指部50の屈曲動作によって生じる指部50の先端Eの第1方向(すなわちZ方向)に沿った移動量である先端移動量を第1所定時間毎に算出する。先端移動量は、具体的には、先端距離Hの第1方向(Z方向)に沿った変化量である。上記のように、先端距離Hは、伸長方向に沿った距離であり、式(1)によって算出される。本実施形態において、伸長方向は、Z方向ひいては第1方向と平行であり、先端移動量は、屈曲動作の開始時点の先端距離Hと、現時点の直近で算出された先端距離Hとの差として算出することができる。
【0084】
また、制御装置30は、指部50の並進移動によって生じる指部50の第1方向(Z方向)に沿った移動量である指移動量を、先端移動量と等しくする。指移動量は、屈曲動作の開始時点での指部50の特定部位の位置と、現時点での指部50の特定部位の位置の第1方向(Z方向)距離である。特定部位は、指部50において指部50が屈曲動作しても変位しない部位であり、例えば基端Bである。
【0085】
つまり、制御装置30は、上記のように第1所定時間毎に先端移動量を算出するとともに、載置面2a側(+Z側)に第1方向(Z方向)に沿ってハンド部10を並進移動させて、先端移動量と指移動量と等しくする。これにより、指部50の屈曲動作時において、指部50の先端Eと載置面2aとの距離がほぼ所定距離で維持される。
【0086】
本実施形態とは異なり、指部50の屈曲動作に応じてハンド部10を並進移動させずに、ハンド部10の位置を固定する場合、
図4に示すように、屈曲動作によって、回転角度θが大きくなることで先端距離Hが小さくなるほど、指部50の先端Eは、載置面2aから離れる。よって、指部50が屈曲しても、指部50の接触部53が対象物Tに接触することができず、対象物Tを把持することができない可能性がある。
【0087】
一方、本実施形態のロボット装置1は、上記のように、指部50の屈曲動作に応じて、指部50を第1方向(Z方向)に沿って載置面2a側(+Z側)に並進移動させる。これにより、指部50の先端Eは、
図8に太矢印にて示すように、載置面2aに沿って移動し、接触部53と対象物Tとが所望の位置で接触する。よって、指部50の接触部53が対象物Tに確実に接触することができる。したがって、ロボット装置1は、対象物Tを確実に把持することができる。
【0088】
また、制御装置30は、ハンド部10が対象物Tを把持したか否かを判定する把持判定を行う。以下、対象物Tが比較的軟質である場合における把持判定について説明する。
【0089】
制御装置30は、指部50の屈曲動作を開始した時点から第1所定時間毎に、上記の式(2)を用いて把持力Fを算出する。
【0090】
図9は、把持力Fとモータ部42aの出力軸42a1の回転量との関係を示す図である。出力軸42a1の回転量がゼロである場合、指部50は伸長状態Sである。
【0091】
出力軸42a1の回転量がゼロから増大すると、指部50が屈曲し、節部51の回転角度θが大きくなる。節部51の回転角度θが大きくなると、上記のように、バネ部材54の付勢力が小さくなる。これにより、式(2)のM1、M2およびM3のモーメントひいては把持力Fが小さくなる。つまり、出力軸42a1の回転量が増大すると、把持力Fが小さくなる。
【0092】
出力軸42a1の回転量がさらに増大して指部50がさらに屈曲することで、指部50の接触部53が対象物Tと接触すると(第1回転量r1)、対象物Tの反作用によって生じる抵抗力によって、指部50の屈曲動作が妨げられ、出力軸42a1の回転量に対する節部51の回転角度θの変化量が小さくなる。これにより、出力軸42a1の回転量に対するバネ部材54の付勢力ひいては把持力Fの変化量が小さくなる。なお、
図9の破線は、出力軸42a1の回転量が第1回転量r1より大きいときに接触部53が対象物Tと接触しない場合における出力軸42a1の回転量と把持力Fとの関係を示している。
【0093】
出力軸42a1の回転量がさらに増大して指部50がさらに屈曲し、対象物Tが変形することで、抵抗力が増大する。そして、抵抗力と把持力Fとが等しくなると、指部50の屈曲動作が止まり、出力軸42a1の回転量に対する把持力Fの変化量がほぼゼロとなる(第2回転量r2以降)。
【0094】
複数の指部50それぞれにおいて、出力軸42a1の回転量に対する把持力Fの変化量が予め定められている所定変化量(例えば把持力Fの5%)内である状態が、予め定められている第2所定時間(例えば0.2秒)継続した場合、制御装置30は、ハンド部10が対象物Tを把持したと判定する。所定変化量および第2所定時間は、ハンド部10が対象物Tを破損させずに把持できる値に実験等によって予め導出され、制御装置30の記憶領域に予め格納されている。
【0095】
制御装置30は、ハンド部10が対象物Tを把持したと判定すると、移動装置20を制御して、対象物Tを別の位置に移動させる。
【0096】
なお、対象物Tが比較的硬質である場合、外力に対する対象物Tの変形が比較的小さく、
図9において、第1回転量r1と第2回転量r2との差が比較的小さくなる。
【0097】
以上、説明したように、本実施形態によれば、ロボット装置1は、屈曲状態Cと伸長状態Sとを有する指部50と、伸長状態Sから屈曲状態Cになる指部50の屈曲動作に応じて、指部50の基端B側から先端E側に指部50を並進移動させる移動装置20と、備えている。
これによれば、載置面2aに置かれている対象物Tをロボット装置1が把持する場合に、指部50の屈曲動作に応じて指部50の基端B側から先端E側(すなわち指部50の先端Eが載置面2aに向かう側、すなわち、載置面2a側)に指部50が並進移動することで、指部50の先端Eが載置面2aから離れることが抑制される。これにより、指部50が載置面2aに置かれた対象物Tと接触することができ、ロボット装置1は、対象物Tを把持することができる。
【0098】
また、移動装置20は、第1方向に沿って指部50を並進移動させ、指部50の屈曲動作によって生じる指部50の先端Eの第1方向に沿った先端移動量と、指部50の並進移動によって生じる指部50の第1方向に沿った指移動量とは、互いに等しい。
これによれば、載置面2aに置かれている対象物Tをロボット装置1が把持する場合に、指部50の屈曲動作時において指部50の先端Eと載置面2aとの距離がほぼ一定に維持され、指部50の先端Eが載置面2aから離れることが確実に抑制される。よって、ロボット装置1は、確実に対象物Tを把持することができる。
【0099】
また、指部50は、第1節部51aと、第2節部51bと、第1節部51aと第2節部51bとを連結し、第1節部51aに対して第1回転軸線R1回りに第2節部51bを回転させる第1関節部52aと、を備えている。また、ロボット装置1は、指部50の屈曲動作によって生じる第1節部51aに対する第2節部51bの第1回転角度θ1に基づいて、先端移動量を算出し、移動装置20を制御する制御装置30をさらに備えている。
これにより、ロボット装置1は、第1節部51aに対する第2節部51bの第1回転角度θ1に基づいて先端移動量を算出することで、指移動量を精度よく算出することができる。よって、ロボット装置1は、さらに確実に対象物Tを把持することができる。
【0100】
また、指部50は、第1節部51aに対して第2節部51bを付勢する第1バネ部材54a、および、第1バネ部材54aの付勢力を検出する荷重センサである第1検出部55aをさらに備えている。制御装置30は、第1節部51aに対する第2節部51bの第1回転角度θ1と第1バネ部材54aの付勢力との相関関係に基づいて、第1検出部55aの検出結果を用いて、先端移動量を算出する。
これにより、ロボット装置1は、第1検出部55aの検出結果を用いて、先端移動量を精度よく算出することができる。つまり、ロボット装置1は、指部50の先端Eおよび接触部53などの指部50の部位の位置を取得する外部センサ(例えばカメラなど)を用いることなく、先端移動量を算出することができる。よって、ロボット装置1は、比較的簡便な構成で指移動量を算出することができる。
【0101】
また、バネ部材54は、板バネである。
板バネは、例えばコイルバネ等の他の種類のバネと比べて、第1節部51aに対する第2節部51bの第1回転角度θ1に対する第1バネ部材54aの付勢力の変化量、すなわちバネ定数を精度よく定めることができる。つまり、指部50の大きさ、並びに、対象物Tの重量および硬度などに対応するバネ部材54の付勢力に対して、第1節部51aに対する第2節部51bの第1回転角度θ1と第1バネ部材54aの付勢力の変化量との関係をより適切に定めることができる。よって、ロボット装置1は、先端移動量ひいては指移動量をさらに精度よく算出することができる。
【0102】
また、ロボット装置1は、指部50を複数備えている。複数の指部50は、指部50の先端Eが互いに近づく方向に屈曲する。
【0103】
これにより、ロボット装置1は、複数の指部50によって対象物Tをつかむことで把持することができ、複数の指部50が対象物Tをつかむ場合においても、確実に対象物Tを把持することができる。
【0104】
また、バネ部材54の付勢力は、節部51の回転角度θが大きくなるほど小さくなる。
この場合、指部50が伸長状態Sであるときの把持力Fより、指部50が屈曲状態Cであるときの把持力Fは小さくなる。よって、バネ部材54の付勢力を調節することで、対象物Tに作用する指部50の最大荷重が比較的小さくなるように調節することができる。よって、対象物Tが比較的軟質である場合や比較的脆いものである場合においても、ハンド部10が対象物Tを把持する場合に、対象物Tが破損することを抑制することができる。
【0105】
なお、本実施形態において、移動装置20は、X方向、Y方向およびZ方向それぞれに沿ってハンド部10を搬送させる3自由度の搬送装置でもよい。
【0106】
また、バネ部材54は、板バネ以外のバネ、例えばコイルバネでもよい。
【0107】
また、ワイヤ42dは、指部50の腹側、または、指部50の腹側と背側との間にある側面側に位置してもよい。
【0108】
また、指部50の個数は、1つでもよい。この場合、ハンド部10は、対象物Tを指部50の先端Eに引っ掛けることで把持する。
【0109】
また、指部50の伸長方向は、Z方向と交差してもよい。また、伸長方向は、曲がっていてもよい。
【0110】
また、第1方向は、指部50の伸長方向と交差する方向でもよい。この場合、先端移動量は、屈曲動作の開始時点の先端距離Hと、現時点の直近で算出された先端距離Hとの差に、cosα(αは、伸長方向と第1方向とのなす角)を乗ずることで算出される。
【0111】
また、2つの節部51を連結する関節部52が2つの節部51のうち一方の節部51と一体回転し、検出部55が他方の節部51に配置される場合、検出部55は、関節部52の回転角度を検出するロータリエンコーダでもよい。この場合、検出部55の検出結果は、一方の節部51に対する他方の節部51の回転角度θに相当し、制御装置30は、節部51の回転角度θとバネ部材54の付勢力との相関関係を用いずに、式(1)によって先端距離Hを算出することができる。
【0112】
また、関節部52は、出力軸が回転軸線R回りに回転し、出力軸の回転角度を制御可能なモータ(不図示)を備えてもよい。この場合、ハンド部10は、指駆動部42を備えない。またこの場合、関節部52が備えるモータの出力軸の回転角度が、節部51の回転角度θに相当する。よってこの場合、制御装置30は、節部51の回転角度θとバネ部材54の付勢力との相関関係を用いずに、式(1)によって先端距離Hを算出することができる。
【0113】
また、バネ部材54の付勢力が、節部51の回転角度θが大きくなるほど大きくなるように、バネ部材54を配置してもよい。この場合、例えば、
図6に示す対向面P2は、指部50の腹側を向くように被接触面P1に対して回転軸線R回りに傾斜しており、バネ部材54は、第1端部および第2端部が指部50の腹側に位置するように屈曲している。
【符号の説明】
【0114】
1 ロボット装置
10 ハンド部
20 移動装置
30 制御装置
50 指部
51 節部
51a 第1節部
51b 第2節部
52 関節部
52a 第1関節部
53 接触部
54 バネ部材
54a 第1バネ部材
55 検出部
55a 第1検出部
B 指部の基端
C 指部の屈曲状態
E 指部の先端
H 先端距離
R 回転軸線
R1 第1回転軸線
S 指部の伸長状態
T 対象物
θ 回転角度
θ1 第1回転角度