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特開2024-31327生育情報提供装置、生育情報提供システム、および、生育情報提供方法
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  • 特開-生育情報提供装置、生育情報提供システム、および、生育情報提供方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031327
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】生育情報提供装置、生育情報提供システム、および、生育情報提供方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20240229BHJP
   G06Q 50/02 20240101ALI20240229BHJP
【FI】
A01G7/00 603
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134817
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】393008326
【氏名又は名称】東洋スクリーン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木橋 泰彦
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC01
(57)【要約】
【課題】植物を栽培するにあたり、ユーザが望む結果物が得られるであろう生育条件を示す支援情報を提供する。
【解決手段】生育情報提供装置1は、植物の生育条件と当該植物の結果物の特性の特性値とを含むデータセットが、当該植物の同一の品種かつ同一の特性において、複数格納されている生育データベース11を備える。装置1は、ユーザデバイス2からの結果物の特性の特性値または特性値の範囲を示すリクエスト情報を受けて、生育データベース11の中から、当該リクエスト情報に該当するまたは近い特性値を含むデータセットの生育条件を選択する選択部12を備える。装置1は、ユーザデバイス2からリクエスト情報を受信するための、かつ、当該リクエスト情報を受けて選択部12によって選択された生育条件を示す支援情報を当該ユーザデバイスに送信するための通信部13を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の生育条件を示す情報を提供する生育情報提供装置であって、
植物の生育条件と当該植物の結果物の特性の特性値とを含むデータセットが、当該植物の同一の品種かつ同一の特性において、複数格納されている生育データベースと、
ユーザデバイスからの前記結果物の前記特性の特性値または特性値の範囲を示すリクエスト情報を受けて、前記生育データベースの中から、当該リクエスト情報に該当するまたは近い特性値を含むデータセットの生育条件を選択する選択部と、
ユーザデバイスから前記リクエスト情報を受信するための、かつ、当該リクエスト情報を受けて前記選択部によって選択された生育条件を示す支援情報を当該ユーザデバイスに送信するための通信部と、を備える、
生育情報提供装置。
【請求項2】
前記植物は、イチゴである、
請求項1に記載の生育情報提供装置。
【請求項3】
前記特性が、イチゴの花托の味、硬さ、大きさ、または、色である、
請求項2に記載の生育情報提供装置。
【請求項4】
前記特性が、イチゴの花托の味であって、
前記特性値が、イチゴの花托の糖度及び/又は酸度である、
請求項3に記載の生育情報提供装置。
【請求項5】
前記植物の前記結果物は、当該植物を栽培した結果得られる当該植物の可食部であり、
前記特性の前記特性値は、前記可食部の味を示す値である、
請求項1に記載の生育情報提供装置。
【請求項6】
前記生育条件は、
前記植物の栽培開始から前記結果物の獲得までの生育期間、
前記生育期間中の前記植物の生育環境の温度、
前記生育期間中の前記生育環境の湿度、
前記生育期間中の前記生育環境への光照射量、
前記生育期間中のCО濃度、および、
前記生育期間中の養液栽培における培養液の肥料濃度を、少なくとも含む、
請求項1に記載の生育情報提供装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の生育情報提供装置と、
複数のユーザデバイスと、を備え、
前記ユーザデバイスは、それぞれ、
前記リクエスト情報を前記生育情報提供装置に送信するための、かつ、前記生育情報提供装置から前記支援情報を受信するための通信部と、
前記支援情報を示す表示部と、を備える、
生育情報提供システム。
【請求項8】
生育情報提供装置によって実行される生育情報提供方法であって、
前記生育情報提供装置は、
植物の生育条件と当該植物の結果物の特性の特性値とを含むデータセットが、当該植物の同一の品種かつ同一の特性において、複数格納されている生育データベースを備えており、
前記生育情報提供方法は、
ユーザデバイスから送信された前記結果物の前記特性の特性値または特性値の範囲を示すリクエスト情報を受ける受信ステップと、
前記生育データベースの中から、前記受信ステップで受信した前記リクエスト情報に該当するまたは近い特性値を含むデータセットの生育条件を選択する選択ステップと、
前記選択ステップにて選択された前記生育条件を示す支援情報を、前記受信ステップにて前記リクエスト情報を送信した前記ユーザデバイスに送信するステップと、を備える、
生育情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、植物の生育条件に関する情報を提供する装置、システム、および、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の生育に関する情報をユーザに提供するシステムは、特許文献1-3等に開示されている。こういったシステムでは、サーバ装置が、植物の生育に関する情報をユーザデバイスに送信する。ユーザは、当該情報を参考にして、植物の状態を知ったり、現在の生育環境を適切なものにしたりする。
【0003】
ところで、同一の品種であっても、異なる生育条件で栽培すれば、その結果物(例えば、野菜や果物の可食部)の特性(例えば、味)は異なり得る。その典型が、イチゴである。イチゴは、同一の品種であっても、その生育条件が異なれば、結果物としての花托の味(糖度や酸度)、大きさ、色等が大きく変化することがわかっている(非特許文献1参照)。
【0004】
ユーザの好みはそれぞれ異なるので、例えば、あるユーザは、甘い(糖度の高い)花托が得られるようにイチゴを栽培キットで栽培したいと考え、別のユーザは、同じ品種でも、酸っぱい(酸度の高い)花托が得られるようにイチゴを栽培キットで栽培したいと考えるかもしれない。甘い花托を望むユーザに、酸っぱい花托を得るための生育条件を示す支援情報を提供しても、そのユーザは満足しない。このように、同一の品種であっても、得たいとする結果物の特性値は人によって異なり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許6261826号公報
【特許文献2】特許5677655号公報
【特許文献3】特開2010-75172号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】刊行物名「イチゴで稼ぐ!(農Bizムック)」 P.46~P.61 イカロス出版 出版日2021年4月22日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願は、植物を栽培するにあたり、栽培者が望む結果物が得られるであろう生育条件を示す支援情報を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
植物の生育条件を示す情報を提供する生育情報提供装置が提供される。
当該装置は、
植物の生育条件と当該植物の結果物の特性の特性値とを含むデータセットが、当該植物の同一の品種かつ同一の特性において、複数格納されている生育データベースと、
ユーザデバイスからの前記結果物の前記特性の特性値または特性値の範囲を示すリクエスト情報を受けて、前記生育データベースの中から、当該リクエスト情報に該当するまたは近い特性値を含むデータセットの生育条件を選択する選択部と、
ユーザデバイスから前記リクエスト情報を受信するための、かつ、当該リクエスト情報を受けて前記選択部によって選択された生育条件を示す支援情報を当該ユーザデバイスに送信するための通信部と、を備える。
【0009】
前記植物は、イチゴでよい。
【0010】
前記特性が、イチゴの花托の味、硬さ、大きさ、または、色でよい。
【0011】
前記特性が、イチゴの花托の味でよい。
前記特性値が、イチゴの花托の糖度及び/又は酸度でよい。
【0012】
前記植物の前記結果物は、当該植物を栽培した結果得られる当該植物の可食部でよく、
前記特性の前記特性値は、前記可食部の味を示す値でよい。
【0013】
前記生育条件は、
前記植物の栽培開始から前記結果物の獲得までの生育期間、
前記生育期間中の前記植物の生育環境の温度、
前記生育期間中の前記生育環境の湿度、
前記生育期間中の前記生育環境への光照射量、
前記生育期間中のCО濃度、および、
前記生育期間中の養液栽培における培養液の肥料濃度を、少なくとも含んでよい。
【0014】
生育情報提供システムが提供されてよい。
当該システムは、
上記生育情報提供装置と、
複数のユーザデバイスと、を備え、
前記ユーザデバイスは、それぞれ、
前記リクエスト情報を前記生育情報提供装置に送信するための、かつ、前記生育情報提供装置から前記支援情報を受信するための通信部と、
前記支援情報を示す表示部と、を備える。
【0015】
生育情報提供装置によって実行される生育情報提供方法が提供されてよい。
前記生育情報提供装置は、
植物の生育条件と当該植物の結果物の特性の特性値とを含むデータセットが、当該植物の同一の品種かつ同一の特性において、複数格納されている生育データベースを備える。
前記生育情報提供方法は、
ユーザデバイスから送信された前記結果物の前記特性の特性値または特性値の範囲を示すリクエスト情報を受ける受信ステップと、
前記生育データベースの中から、前記受信ステップで受信した前記リクエスト情報に該当するまたは近い特性値を含むデータセットの生育条件を選択する選択ステップと、
前記選択ステップにて選択された前記生育条件を示す支援情報を、前記受信ステップにて前記リクエスト情報を送信した前記ユーザデバイスに送信するステップと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、生育情報提供システムを概略的に例示する。
図2図2は、例示の生育情報提供システムのブロック図である。
図3図3は、例示のデータセットの概念図である。
図4図4は、選択部の機能を例示するための説明図である。
図5図5は、選択部の機能を例示するための説明図である。
図6図6は、生育情報提供装置によって実施される方法のフローを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本願の実施形態が説明される。以下は、例示にすぎない。
【0018】
図1は、生育情報提供システム(以下、単にシステムとする)を概略的に示す。システムは、植物を栽培するユーザ4に、当該ユーザ4の望む結果物を得るための生育条件を示す支援情報を提供する。システムは、生育情報提供装置1(以下、単に提供装置とする)と、複数のユーザデバイス2と、複数の栽培キット3とを備える。
【0019】
提供装置1と複数のユーザデバイス2とは、ネットワーク5(例えば、インターネット)を介して通信可能であり、したがって、互いに情報(データ)を送受信できるように構成されている。ネットワーク5は、無線でも有線であってもよい。
【0020】
提供装置1は、サーバ装置であり、コンピュータで構成されている。したがって、提供装置1は、CPUと、RAM、ROMおよびハードディスクといった記憶装置とを備える。
【0021】
ユーザデバイス2は、ユーザ4によって操作される端末である。ユーザデバイス2は、例えば、スパートフォン、タブレット、または、パーソナルコンピュータなどでよい。ユーザデバイスは、CPUと記憶装置とを備えている。
【0022】
栽培キット3は、ユーザ4が植物を栽培するために使用されるものである。栽培キット3は、土耕栽培キットまたは養液栽培キットのどちらでもよい。栽培キット3は、周知のものが用いられてよい。
【0023】
なお、図1では、3人のユーザ4a,4b,4cだけが示されているが、システムは、実際には、多数のユーザによって利用される。1人のユーザ4が、複数のユーザデバイス2及び/又は栽培キット3を所有しても当然よい。
【0024】
図2は、提供装置1およびユーザデバイス2のブロック図を例示する。提供装置1は、ユーザデータベース(以下、ユーザDB)10、生育データベース(以下、生育DB)11、選択部12、および、通信部13を備える。
【0025】
ユーザDB10は、提供装置1の上述の記憶装置によって構成される。予めユーザ4がシステムへのユーザ登録をすることによって、各ユーザ4に対してユーザIDが割り当てられている。ユーザDBには、ユーザID、ユーザの個人情報(例えば氏名など)、ユーザデバイス2の識別番号などが互いに対応付けてユーザ4毎に記憶されている。したがって、ユーザデバイス2が情報を提供装置1にユーザIDを共に送信すれば、提供装置1は、どのユーザ4/どのユーザデバイス2から送信された情報かを認識することができる。なお、ユーザDB10では、各ユーザ4に対して一定の記録容量が割り当てられており、各ユーザの生育履歴が格納されてよい。このようなユーザDB10は、特許文献1,特許文献2などの従来技術と実質的に同じであるため、その説明は省略される。
【0026】
生育DB11には、植物の生育条件と当該植物の結果物の特性の特性値とを含むデータセットが、同一の品種および同一の特性において、複数格納されている(具体的な例示は、後述される)。
【0027】
データセットは、以下のようにして予め準備される。ある品種の植物が栽培キット3によって栽培されてその結果物が獲得(例えば収穫)される。そして、この植物の栽培の間の実際の生育条件が、生育情報取得手段(例えば温度センサ、湿度センサ等)などによって取得(測定)される。このようにして得られた生育条件を示す情報が、データセットの生育条件データとされる。また、得られた結果物の特性の特性値が、結果情報取得手段(糖度センサ、酸度センサ、カラーセンサ、測長センサ等)によって取得(測定)される。このようにして得られた特性値を示す情報が、データセットの特性値データとされる。
【0028】
したがって、1つのデータセットは、植物を当該生育条件で実際に栽培したところ当該特性値を有する結果物が得られたということを示す生育・結果記録データと言える。すなわち、データセットは、実際に植物の栽培によって得られた生育条件および特性値のデータ群である。
【0029】
このようなデータセットが、同じ品種の植物を異なる様々な生育条件で栽培することによって複数得られる。結果的に、様々な特性値を含むデータセットが得られる。したがって、生育条件および結果物の特性値は、データセット間で異なっている。これらの複数のデータセットが生育DB11に格納されている。
【0030】
データセットは、システムの提供者、ユーザ4、及び/又は、第3者によって取得されたものであってよい。
【0031】
「生育条件」は、生育期間、温度、湿度、光照射量、光の波長、CO濃度、肥料濃度、および、水素イオン濃度指数を含んでよい。
【0032】
「生育期間」は、植物の栽培開始から結果物の獲得(収穫)までの期間である。これは、例えば、「90日」といったものでよい。データセット中の生育期間は、実際の植物の栽培の際に栽培者によって記録されたものであってよい。
【0033】
「温度」は、生育期間中における生育環境の温度である。データセット中の「温度」は、実際の植物の栽培の際に、その生育環境中に設けられた温度センサによって測定されたものでよい。「温度」は、生育期間中の平均温度値(例えば、15℃)、生育期間中の最最低気温から最高気温までの範囲(例えば、15℃~25℃)、または、生育期間中の複数の温度値であって時系列のデータでよい。
【0034】
なお、以下の生育条件の項目データにおいて、生育期間中において経時的に変化するものは、上記「温度」と同様に、生育期間中の平均値、生育期間中の範囲、または、生育期間中の時系列のデータであってよい。
【0035】
「湿度」は、生育期間中における生育環境の湿度である。「湿度」は、飽和湿度(%RH)でも、絶対湿度(kg/kg)でもよい。また、飽和湿度と絶対湿度の差分をとった飽差湿度でも良い。データセット中の「湿度」は、実際の植物の栽培の際に生育環境中に設けられた湿度センサによって測定されたものでよい。
【0036】
「光照射量」は、生育期間中に生育環境(したがって、生育環境中の植物)に照射される光の光照射量である。データセット中の「光照射量」は、生育環境中に設けられた照度センサによって測定されたものでよい。データセット中の「光照射量」は、植物を太陽光によって栽培するとき、生育期間中の各日の日照量(例えば、kwh/m2)でよい。また、植物をLEDなどの人工光源によって栽培する場合にはその光源の光の光照射量(例えば、kwh/m2)でよい。この場合、加えて、光源の「光の波長」(nm)が生育条件に含まれてもよい。
【0037】
「CO濃度」は、生育期間中における生育環境のCO濃度(例えば、ppm)である。これは、生育環境中に設けられたCO濃度センサによって測定されたものでよい。
【0038】
「肥料濃度」は、土耕栽培の土の肥料濃度または養液栽培(水耕栽培はこれに含まれる)の培養液の肥料濃度である。これは、例えばEC(Electrical Conductivity)(例えば、mS/cm)で示されてよく、ECセンサによって測定されたものでよい。
【0039】
「水素イオン濃度」は、土耕栽培の土の水素イオン濃度、養液栽培の培養液の水素イオン濃度である。これは、水素イオン濃度指数「pH」で示されてよく、pHセンサで測定されたものでよい。
【0040】
このように生育条件は、結果物の特性値に影響を及ぼすまたは及ぼし得るであろう項目を含む。
【0041】
「結果物」は、植物を栽培した結果、当該植物から得られる部分である。「結果物」は、例えば、植物を栽培した結果得られる可食部であり、例えば、野菜や果物の花、種子、果実、花托、球根などでよい。当然ながら、「結果物」は、可食部に限定されることなく、非可食部、例えば花など鑑賞の対象となる部分でもよい。
【0042】
「特性」は、結果物の味、硬さ、色、大きさ(形状を含む)などでよい。
【0043】
「味」は、甘味、酸味、塩味、うま味、苦味、及び/又は辛味であってよい。この場合、「特性値」は、糖度(Brix)、塩分濃度、うま味成分濃度(例えば、グルタミン酸濃度)、酸度、苦み成分濃度、及び/又は、辛味成分濃度でよい。データセット中の「特性値」は、糖度センサ、酸度センサ、塩分濃度センサといった適切なセンサで測定されたものでよい。
【0044】
「硬さ」(テクスチャ)は、結果物の硬さである。この場合、「特性値」は、硬度、破断荷重といった硬さを示す値である。データセット中の「特性値」は、テクスチャアナライザー、荷重計などといった硬度センサで測定されたものでよい。
【0045】
「色」は、結果物の色である。この場合、「特性値」は、RGB値でよい。データセット中の「特性値」は、カラーセンサで測定されたものでよい。
【0046】
「大きさ」は、結果物のサイズまたは形状である。この場合、「特定値」は、結果物の特定の箇所の長さ、すなわち、結果物の高さ、幅、及び/又は最大直径などでよい。データセット中の「特性値」は、測長センサによって測定されたものでよい。
【0047】
例えばイチゴのように一度に複数の結果物(花托)が収穫できるものがある。この場合、データベース中の「特性値」は、任意の1つの測定値であってもよいし、複数の測定値の平均値でもよい。
【0048】
選択部12は、提供装置1においてCPUが記憶装置に記憶されたプログラムを実行することによって実現される機能部である。選択部12は、ユーザ4がユーザデバイス2を用いて送信するリクエスト情報を受けたときに、そのユーザに提供すべき生育条件を示す支援情報を生育DB11の中から選択する。
【0049】
ユーザデバイス2によって送信されるリクエスト情報は、特性値または特性値の範囲を示す。選択部12は、生育DB11に格納された多数のデータセットの中から、このリクエスト情報(これが示す特性値またはその範囲)に該当するまたは近い特性値と対応付けられた生育条件を選択する。選択部12の具体例は、後に詳述される。
【0050】
通信部13は、提供装置1をネットワーク5に接続して、提供装置1がユーザデバイス2との間で情報を送受信することを可能にさせる。提供装置1は、この通信部13によって、リクエスト情報をユーザデバイス2から受信できるように、かつ、支援情報をユーザデバイス2へ送信できるようになっている。通信部13は、小型アンテナを含む無線通信モジュールでよい。
【0051】
各ユーザデバイス2は、記憶部20、操作部21、表示部22、及び、通信部23を備えている。
【0052】
記憶部20は、必要な情報が記憶されるところであって記憶装置で構成される。
【0053】
操作部21を通じて、ユーザ4は、上記リクエスト情報の入力や、提供装置1へのリクエスト情報の送信や、上記支援情報を表示部22に表示させる指示といった操作をすることができる。操作部21は、表示部22に表示されるGUIや、キーボードのようなUIでよい。
【0054】
表示部22は、リクエスト情報を入力するための画面や、GUIを表示し、また、支援情報を表示する。表示部22は、例えばディスプレイでよい。
【0055】
通信部23は、ユーザデバイス2をネットワーク5に接続して、ユーザデバイス2が提供装置1との間で情報を送受信することを可能にさせる。ユーザデバイス2は、この通信部23によって、リクエスト情報を提供装置1に送信でき、かつ、支援情報を提供装置1から受信することができる。通信部23は、小型アンテナを含む無線通信モジュールでよい。
【0056】
さらにシステムの具体的な例示が説明される。以下では、植物が、バラ科多年草であるイチゴであって、結果物が、その可食部である花托であって、結果物の特性が、花托の味であって、結果物の特性の特性値が、花托の糖度(Brix%)および酸度(有機酸%)である場合を例にして説明される。栽培キット3は、イチゴの養液栽培キット(水耕栽培キット)である。データセット中の生育条件は、上述の項目データを含むものとする。
【0057】
したがって、生育DB11には、イチゴの特定の品種について、イチゴの生育条件とその花托の糖度および酸度とを含むデータセットが、図3のように多数記憶されている。これらデータセットは、当該品種のイチゴを様々な生育条件にて栽培キット3で栽培して花托を収穫し、その際に上述のようなデータ測定を行って得られたものである。
【0058】
ユーザデバイス2は、リクエスト情報として、糖度及び/又は酸度を示す情報の入力をユーザ4から受けることができるように構成されている。例えば、ユーザ4は、操作部21を操作することによって、例えば、糖度を「13.5%」といったように、酸度を「0.8%」といったように、及び/又は、糖度および酸度を「13.5%,0.8%」といったように、具体的な数値を入力できるようになってよい。また、糖度及び/又は酸度の値を示す選択枝が予め複数準備されており、ユーザ4が、その中から1つをリクエスト情報として選択するといった入力ができるようにユーザデバイス2が構成されてもよい。
【0059】
上記特性値の入力に加えてまたはこれに代えて、ユーザデバイス2は、リクエスト情報として、糖度及び/又は酸度の範囲を示す情報の入力をユーザ4から受けることができるように構成されてもよい。例えば、ユーザ4は、操作部21を操作することによって、糖度の範囲を「11.0%~13.0%」といったように、酸度の範囲を「0.2%~0.4%」といったように、または、糖度および酸度の範囲を、糖度「11.0%~13.0%」かつ酸度「0.2%~0.4%」といったように入力することができるようにしてよい。範囲の指定は、上記のように上限値および下限値の双方を必ず含む必要はない。例えば、範囲は、糖度「13.0%以上」といったように下限値のみを含むものであってもよい。
【0060】
なお、糖度及び/又は酸度の値が、ユーザ4にとってわかりにくい可能性がある。そこで、ユーザデバイス2は、「かなり甘い」、「甘い」、「さっぱり」、「バランス良好」、「すっぱい」といった所定の範囲が割り当てられた選択肢が予め設けられて、ユーザ4が操作部21によってその中から1つをリクエスト情報として選択できるように構成されてよい。
【0061】
例えば、「かなり甘い」は糖度の範囲「20.0%<」を示し、「甘い」は糖度の範囲「15.0%~20.0%」を示し、「さっぱり」は糖度の範囲「10.0%~15.0%」を示してよい。「バランス良好」は、例えば、糖度の範囲「11.0%~14.0%」かつ酸度の範囲「0.6~1.1%」を示してよい。また、「すっぱい」は、例えば、酸度の範囲「1.2%<」を示してよい。なお、ユーザ4が選択できる選択枝にどのような表現を割り当て、かつ、当該選択枝にどのような範囲を割り当てるかは、システムの提供者が生育DB11のデータセットの内容を解析するなどした上で、予め設定される。
【0062】
このようにリクエスト情報のユーザ4による入力は、値や範囲を数値で直接的に入力する場合に限らず、数値及び/又は範囲を示す情報が、ユーザ4が味をイメージしやすいように定性的に表現されかつ選択できる形式で行われてもよい。これは、植物の栽培に精通していないユーザ4にとってユーザフレンドリーである。
【0063】
ユーザデバイス2は、このようにユーザ4によって入力されたリクエスト情報を、ユーザ4の操作に応答して、ネットワーク5を通じて、提供装置1に送信するように構成されている。
【0064】
提供装置1がユーザデバイス2からリクエスト情報を受信すると、選択部12は、生育DB11の中から、このリクエスト情報に該当するまたは近い特性値を含むデータセットを特定し、この特定されたデータセットに含まれる生育条件を、ユーザデバイス2に送信すべき支援情報として選択する。
【0065】
具体的には、リクエスト情報が特定の糖度の値のみを示す(酸度は任意)とき、選択部12は、リクエスト情報の糖度の値と同じ糖度の値を含むデータセットを生育DB11の中から検索する。該当するデータセットがある場合、選択部12は、該当のデータセットに含まれる生育条件を支援情報として選択する。例えば、図3において、リクエスト情報が糖度「11.5%」を示すものなら、選択部12は、「データセットNo.4」の「生育条件4」を選択する。
【0066】
リクエスト情報と同じ糖度の値を含むデータセットがない場合(リクエスト情報に該当するものがない場合)、選択部12は、生育DB11の中から、リクエスト情報の糖度の値に近い糖度値を有するデータセットを特定する。すなわち、選択部12は、リクエスト情報の糖度の値とデータセットの糖度の値との差分の絶対値が最も小さくなるデータセット(リクエスト情報に近い特性値を含むデータセット)を演算によって特定し、この特定されたデータセットに含まれる生育条件を支援情報として選択する。
【0067】
リクエスト情報が特定の酸度の値のみを示す(糖度は任意)ときも同様である。すなわち、選択部12が、リクエスト情報の酸度の値と同じまたはこれに近い酸度の値を含むデータセットの生育条件を、支援情報として選択する。
【0068】
リクエスト情報が、糖度の値と酸度の値の双方を示すときは以下の通りである。選択部12は、リクエスト情報と同じ組合せを含むデータセットを、生育DB11の中から検索する。該当するデータセットがある場合、選択部12は、該当のデータセットに含まれる生育条件を支援情報として選択する。例えば、図3において、リクエスト情報が、糖度13.0%で酸度1.2%の組合せを示す場合、選択部12は、「データセットNo.3」の「生育条件3」を選択する。
【0069】
リクエスト情報と同じ糖度および酸度の値の組合せを含むデータセットがない場合には、選択部12は、生育DB11から、リクエスト情報の組合せに近い組合せを含むデータセットの生育条件を、支援情報として選択する。具体的には、図4のような各データセットの糖度および酸度の値の組合せが示される所定の座標系において、リクエスト情報の組合せ(入力値)に直線で最も近いデータセットの組合せを、リクエスト情報に近い特性値としてよい。したがって、選択部12は、リクエスト情報の組合せと各データセットの組合せを用いて演算処理を行って、生育DB11の中から、リクエスト情報に近い組合せを有するデータセットを特定し、特定されたデータセットに含まれる生育条件を、支援情報として選択する。
【0070】
図4において、例えば、選択部12は、リクエスト情報がR1のとき、R1に最も近いD1の組合せを含むデータセットの生育条件を選択し、リクエスト情報がR2のとき、R2に最も近いD2の組合せを含むデータセットの生育条件を選択する。
【0071】
リクエスト情報が、糖度及び/又は酸度の値の範囲を示すものであるとき、当該範囲に包含される特性値を含むデータセットを、生育DB11の中から検索する。選択部12は、該当するデータセットに含まれる生育条件を支援情報として選択する。図5の通り、リクエスト情報の範囲に包含されるデータセットが複数あるとき、選択部12は、これらのうち、任意の1つまたは複数のデータセットの生育条件を支援情報として選択してよい。
【0072】
このように、選択部12は、生育DBに格納されている複数のデータセットの中から、リクエスト情報に該当するまたは近い特性値と対応付けられた生育条件を、当該リクエスト情報に応答してユーザデバイス2へ返信すべき支援情報として選択する。
【0073】
以下、上記提供装置1を含むシステムによって実施される支援情報提供方法が例示される。提供装置1が、結果物の特性値またはその範囲を示すリクエスト情報をユーザデバイス2から受信する(図7のS1)。具体的には、このステップS1では、ユーザ4が操作部21を用いて、糖度及び/又は酸度の値または範囲をリクエスト情報として入力する操作をし、ユーザデバイス2がそのリクエスト情報を提供装置1へ送信する。そして、提供装置1は、当該リクエスト情報をユーザデバイス2から受信する。
【0074】
次いで、提供装置1が、生育DB11の中から、当該リクエスト情報に該当するまたは近い特性値を含むデータセットの生育条件を選択する(図7のS2)。具体的には、提供装置1の選択部12が、当該リクエスト情報を入力として、上述のように、生育DB11の中から、当該リクエスト情報(これが示す糖度及び/又は酸度の値または範囲)に該当するまたは近い糖度及び/又は酸度を含むデータセットを特定し、特定したデータセットに含まれるイチゴの生育条件を選択する。
【0075】
次いで、提供装置1が、S2にて選択された生育条件を示す支援情報を、S1にてリクエスト情報を送信したユーザデバイス2に送信する(図7のS3)。具体的には、提供装置1が、選択部12によって選択されたイチゴの生育条件を示す支援情報をユーザデバイス2に送信する。そして、ユーザデバイス2は、通信部23を介して、当該支援情報を受信する。その後、ユーザデバイス2は、ユーザ4による操作に応答して、支援情報を表示部22に表示させて、ユーザ4が支援情報を閲覧できるようにする。
【0076】
ユーザ4は、自身のユーザデバイス2で受け取った支援情報(選択された生育条件)を参考にしてイチゴを栽培キット3で栽培する。
【0077】
以上の構成によれば、栽培キット3で植物を栽培する前に、ユーザ4は、ユーザデバイス2を用いて自身が望む結果物の特性の特性値を示すリクエスト情報を提供装置1に送信すれば、自身の望む特性値を有する結果物が栽培できるであろう生育条件を示す支援情報を受け取ることができる。ユーザ4は、受け取った支援情報に倣って栽培キット3を用いて植物を栽培すれば、結果物が自身の望む特性値を有する可能性が高い。
【0078】
したがって、図1において、同一の品種の植物を栽培しようとしているユーザ4a,4b,4cがそれぞれ異なる結果物の特性値を望んでいる場合、各ユーザ4a,4b,4cには、互いに異なる生育条件が提供され、しかもそれが、自身の要望にあったまたは近いものである。こうして、実施形態は、各ユーザ4a,4b,4cに、それぞれのニーズにあった生育条件を提供して、各ユーザ4a,4b,4cによる植物の栽培を支援する。
【0079】
上記は例示であって、本願が、結果物の特性が味の場合に限らず、硬さ、色、大きさなどに適用可能であることは当業者であれば理解することができる。さらに、本願が、イチゴに限らず、他の植物にも適用可能であることも当業者であれば理解することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 生育情報提供装置
11 生育データベース
12 選択部
13 通信部
2 ユーザデバイス
22 表示部
23 通信部
3 栽培キット
4 ユーザ
図1
図2
図3
図4
図5
図6