(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031333
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/308 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
H01L21/308 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134829
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】松永 恭幸
【テーマコード(参考)】
5F043
【Fターム(参考)】
5F043AA02
5F043BB03
5F043DD19
5F043EE05
5F043EE06
5F043EE07
5F043EE27
5F043EE35
5F043EE36
(57)【要約】
【課題】エッチング不良が発生することを抑制することが可能な基板処理方法および基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理方法は、基板Wをアルカリ性の処理液Lに浸漬する工程S1と、基板Wの主面Waに対して略垂直に延びる柱状の凹部Wbに充填されたポリシリコン層Wcを、処理液Lによりエッチングする工程S2とを含み、工程S2において、凹部Wb内で発生する気泡を除去する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板をアルカリ性の処理液に浸漬する浸漬工程と、
前記基板の主面に対して略垂直に延びる柱状の凹部に充填されたポリシリコン層を、前記処理液によりエッチングするエッチング工程と
を含み、
前記エッチング工程において、前記凹部内で発生する気泡を除去する、基板処理方法。
【請求項2】
前記エッチング工程において、前記処理液中のシリコン濃度に応じて、前記凹部内で発生する前記気泡を除去する、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記エッチング工程において、前記凹部に詰まった前記気泡を除去する、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記エッチング工程において、前記処理液を貯留する処理槽から前記処理液を排出し、または、前記処理槽から前記基板を引き上げることによって、前記凹部内から前記処理液および前記気泡を除去する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記エッチング工程において、前記基板の下方に気体を供給し前記処理液中に気泡を発生させることによって、前記凹部内で発生する前記気泡を除去する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記エッチング工程において、前記処理液に超音波振動を付与することによって、前記凹部内で発生する前記気泡を除去する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記処理液は、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
少なくとも1つの基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持された基板を浸漬するためのアルカリ性の処理液を貯留する処理槽と、
制御部と
を備え、
前記基板は、主面と、前記主面に対して略垂直に延びる柱状の凹部と、前記凹部に充填されたポリシリコン層とを含み、
前記制御部は、
前記ポリシリコン層が前記処理液によりエッチングされるように、前記基板保持部に保持された基板を前記処理液に浸漬し、
前記凹部内で発生する気泡を除去する、基板処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記処理液中のシリコン濃度に応じて、前記凹部内で発生する前記気泡を除去する、請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記凹部に詰まった前記気泡を除去する、請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記凹部内から前記処理液および前記気泡を除去するように、前記処理槽から前記処理液を排出し、または、前記処理槽から前記基板を引き上げる、請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記処理液に気体を供給し前記処理液中に気泡を発生させる気泡発生部をさらに備え、
前記制御部は、前記基板の下方に気体を供給し前記処理液中に気泡を発生させるように、前記気泡発生部を制御する、請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記処理液に超音波振動を付与する超音波発生部をさらに備え、
前記制御部は、前記処理液に超音波振動を付与するように、前記超音波発生部を制御する、請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記処理液は、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを含む、請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板をアルカリ性の処理液で処理する基板処理方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、複数のポリシリコン膜と複数のシリコン酸化膜とを含む積層膜を有する基板に対して、アルカリ性のエッチング液を用いてエッチングを行う基板処理方法が記載されている。特許文献1に記載の基板では、積層膜を厚み方向に貫通する凹部が形成されている。凹部は、空洞になっており、凹部の内側面には、ポリシリコン膜およびシリコン酸化膜が露出している。基板をアルカリ性のエッチング液で処理することによって、ポリシリコン膜が選択的にエッチングされる。つまり、特許文献1では、複数のポリシリコン膜は、凹部を中心として径方向外側にエッチングされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年における半導体基板上に形成される素子の微細化等に伴い、例えば、NAND素子等においてはアスペクト比の高い凹部が形成される。凹部は、基板の主面に対して略垂直に延びる。
【0005】
本願発明者が種々検討を重ねたところ、アスペクト比の高い凹部に充填されたポリシリコン層をアルカリ性の処理液でエッチングした場合、エッチング不良が発生する場合があることを見出した。具体的には、ポリシリコン層と処理液とが反応することにより、水素の気泡が発生し、発生した気泡同士が合体して大きくなり凹部に詰まる。このため、ポリシリコン層に新たな処理液が到達できず、凹部内にポリシリコン層が残留する、ということを見出した。
【0006】
また、本願発明者は、鋭意検討した結果、以下のことも見出した。具体的には、上記特許文献1のように、積層されたポリシリコン膜およびシリコン酸化膜が内側面に露出している凹部を、アルカリ性の処理液で処理する場合は、エッチング不良が発生しない。この理由は、以下のように考えられる。処理液にエッチングされる面(ポリシリコン膜表面)は、細長い帯状である。一方、エッチングにより発生する気泡同士が合体すると、気泡は球状に変形しようとする。従って、気泡が合体によって大きくなると、気泡の一部はポリシリコン膜表面から離れる。そして、気泡が凹部内から排出される。従って、ポリシリコン膜表面に処理液が到達できるため、エッチング不良は発生しない。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、エッチング不良が発生することを抑制することが可能な基板処理方法および基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面によれば、基板処理方法は、基板をアルカリ性の処理液に浸漬する浸漬工程と、前記基板の主面に対して略垂直に延びる柱状の凹部に充填されたポリシリコン層を、前記処理液によりエッチングするエッチング工程とを含み、前記エッチング工程において、前記凹部内で発生する気泡を除去する。
【0009】
本発明の基板処理方法は、前記エッチング工程において、前記処理液中のシリコン濃度に応じて、前記凹部内で発生する前記気泡を除去することが好ましい。
【0010】
本発明の基板処理方法は、前記エッチング工程において、前記凹部に詰まった前記気泡を除去することが好ましい。
【0011】
本発明の基板処理方法は、前記エッチング工程において、前記処理液を貯留する処理槽から前記処理液を排出し、または、前記処理槽から前記基板を引き上げることによって、前記凹部内から前記処理液および前記気泡を除去することが好ましい。
【0012】
本発明の基板処理方法は、前記エッチング工程において、前記基板の下方に気体を供給し前記処理液中に気泡を発生させることによって、前記凹部内で発生する前記気泡を除去することが好ましい。
【0013】
本発明の基板処理方法は、前記エッチング工程において、前記処理液に超音波振動を付与することによって、前記凹部内で発生する前記気泡を除去することが好ましい。
【0014】
本発明の基板処理方法において、前記処理液は、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを含むことが好ましい。
【0015】
本発明の他の局面によれば、基板処理装置は、基板保持部と、処理槽と、制御部とを備える。前記基板保持部は、少なくとも1つの基板を保持する。前記処理槽は、前記基板保持部に保持された基板を浸漬するためのアルカリ性の処理液を貯留する。前記基板は、主面と、前記主面に対して略垂直に延びる柱状の凹部と、前記凹部に充填されたポリシリコン層とを含む。前記制御部は、前記ポリシリコン層が前記処理液によりエッチングされるように、前記基板保持部に保持された基板を前記処理液に浸漬する。前記制御部は、前記凹部内で発生する気泡を除去する。
【0016】
本発明の基板処理装置において、前記制御部は、前記処理液中のシリコン濃度に応じて、前記凹部内で発生する前記気泡を除去することが好ましい。
【0017】
本発明の基板処理装置において、前記制御部は、前記凹部に詰まった前記気泡を除去することが好ましい。
【0018】
本発明の基板処理装置において、前記制御部は、前記凹部内から前記処理液および前記気泡を除去するように、前記処理槽から前記処理液を排出し、または、前記処理槽から前記基板を引き上げることが好ましい。
【0019】
本発明の基板処理装置は、前記処理液に気体を供給し前記処理液中に気泡を発生させる気泡発生部をさらに備え、前記制御部は、前記基板の下方に気体を供給し前記処理液中に気泡を発生させるように、前記気泡発生部を制御することが好ましい。
【0020】
本発明の基板処理装置は、前記処理液に超音波振動を付与する超音波発生部をさらに備え、前記制御部は、前記処理液に超音波振動を付与するように、前記超音波発生部を制御することが好ましい。
【0021】
本発明の基板処理装置において、前記処理液は、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、エッチング不良が発生することを抑制することが可能な基板処理方法および基板処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】(a)および(b)は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置を示す模式的な斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る基板処理装置を示す模式図である。
【
図3】第1実施形態の基板処理装置を用いて処理する基板の構造を概略的に示す拡大断面図である。
【
図4】凹部内に気泡が発生した状態を概略的に示す拡大断面図である。
【
図5】凹部内で発生した気泡が大きくなった状態を概略的に示す拡大断面図である。
【
図6】第1実施形態に係る基板処理方法を示すフローチャートである。
【
図7】工程S2を詳細に説明するためのフローチャートである。
【
図8】工程S23を詳細に説明するためのフローチャートである。
【
図9】凹部内から処理液が排出された状態を概略的に示す拡大断面図である。
【
図10】凹部内に処理液が流入した状態を概略的に示す拡大断面図である。
【
図11】第1実施形態の第1変形例の基板処理方法の工程S23を詳細に説明するためのフローチャートである。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置の構造を示す模式図である。
【
図13】凹部周辺における処理液および気泡の流れを概略的に示す拡大断面図である。
【
図14】本発明の第2実施形態の基板処理方法の工程S23を詳細に説明するためのフローチャートである。
【
図15】本発明の第3実施形態に係る基板処理装置の構造を示す模式図である。
【
図16】凹部周辺において超音波振動が伝搬される状態を概略的に示す拡大断面図である。
【
図17】凹部周辺において超音波振動により気泡が分裂する状態を概略的に示す拡大断面図である。
【
図18】本発明の第3実施形態の基板処理方法の工程S23を詳細に説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、本発明の実施形態において、X軸、Y軸、及びZ軸は互いに直交し、X軸及びY軸は水平方向に平行であり、Z軸は鉛直方向に平行である。
【0025】
(第1実施形態)
図1~
図10を参照して、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置100及び基板処理方法を説明する。まず、
図1を参照して、基板処理装置100を説明する。
図1は、基板処理装置100を示す模式的な斜視図である。具体的には、
図1(a)は、基板Wを処理槽110内の処理液Lに浸漬する前の模式的な斜視図であり、
図1(b)は、基板Wを処理槽110内の処理液Lに浸漬した後の模式的な斜視図である。
【0026】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、基板処理装置100は、処理液Lによって複数の基板Wを一括して処理する。基板処理装置100は、所謂バッチ方式の基板処理装置である。なお、基板処理装置100は、処理液Lによって多数の基板Wを所定数ずつ処理してもよい。所定数は、1以上の整数である。
【0027】
基板Wは、薄い板状である。典型的には、基板Wは、薄い略円板状である。基板Wは、例えば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、電界放出ディスプレイ(Field Emission Display:FED)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板及び太陽電池用基板等を含む。
【0028】
処理液Lにより、複数の基板Wには、エッチング処理、表面処理、特性付与、処理膜形成、膜の少なくとも一部の除去及び洗浄のうちの少なくとも1つが行われる。本実施形態では、基板処理装置100は、シリコン基板からなる基板Wのパターン形成側の表面(以下、主面Waと記載することがある)に対して、ポリシリコン層のエッチング処理を施す。このようなエッチング処理では、基板Wの表面からポリシリコン層を除去する。
【0029】
処理液Lは、例えば、薬液である。処理液Lは、例えば、燐酸(H3PO4)、アンモニアと過酸化水素水と水とが混合された混合液、又は、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを含む。本実施形態では、処理液Lとして、アルカリ性の処理液が用いられる。また、本実施形態では、処理液Lは、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを含む。処理液Lとして、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等を含むアルカリ性の処理液が用いられると、基板Wの表面からポリシリコン層が除去される。換言すれば、処理液Lとして、不純物を含有せず、高温、高アルカリ濃度の溶液が用いられ、処理液Lは、シリコン(Si4+)を溶解していく。なお、処理液Lの温度は、特に限定されない。
【0030】
また、本実施形態では、処理液Lがテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを含む例について説明するが、基板Wを処理できる限りにおいては、処理液Lの種類は特に限定されない。例えば、アルカリ性の処理液Lは、水酸化第4級アンモニウムを含んでもよい。水酸化第4級アンモニウムとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、および、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイドが挙げられる。これら水酸化第4級アンモニウムの中でも、特に、シリコンに対するエッチング速度が高いという理由からテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを使用することが最も好適である。
【0031】
基板処理装置100は、処理槽110と、基板保持部120とを備える。
【0032】
処理槽110は、処理液Lを貯留する。具体的には、処理槽110は、処理液Lを貯留する。具体的には、処理槽110は、内槽112及び外槽114を含む二重槽構造を有している。内槽112及び外槽114はそれぞれ上向きに開いた上部開口を有する。内槽112は、処理液Lを貯留し、複数の基板Wを収容可能に構成される。外槽114は、内槽112の上部開口の外周面に設けられる。
【0033】
基板保持部120は、複数の基板Wを保持する。複数の基板Wは、第1方向D10(Y方向)に沿って一列に配列される。換言すれば、第1方向D10は、複数の基板Wの配列方向を示す。第1方向D10は、水平方向に略平行である。また、複数の基板Wの各々は、第2方向D20に略平行である。第2方向D20は、第1方向D10に略直交し、水平方向に略平行である。
【0034】
具体的には、基板保持部120は、リフターを含む。基板保持部120は、複数の基板Wを保持した状態で鉛直上方又は鉛直下方に移動する。基板保持部120が鉛直下方に移動することにより、基板保持部120によって保持されている複数の基板Wは、内槽112に貯留されている処理液Lに浸漬される。
【0035】
図1(a)では、基板保持部120は、処理槽110の内槽112の上方に位置する。基板保持部120は、複数の基板Wを保持したまま鉛直下方(-Z方向)に下降する。これにより、複数の基板Wが処理槽110に投入される。
【0036】
図1(b)に示すように、基板保持部120が処理槽110にまで下降すると、複数の基板Wは、処理槽110内の処理液Lに浸漬する。第1実施形態では、基板保持部120は、処理槽110に貯留された処理液Lに、所定間隔をあけて整列した複数の基板Wを浸漬する。
【0037】
詳細には、基板保持部120は、本体板122と、保持棒124とを更に含む。本体板122は、鉛直方向(Z方向)に延びる板である。保持棒124は、本体板122の一方の主面から水平方向(Y方向)に延びる。
図1(a)及び
図1(b)の例では、3つの保持棒124が本体板122の一方の主面から水平方向に延びる。複数の基板Wは、所定間隔をあけて整列した状態で、複数の保持棒124によって各基板Wの下縁が当接されて起立姿勢(鉛直姿勢)で保持される。
【0038】
基板保持部120は、昇降ユニット126を更に含んでもよい。昇降ユニット126は、基板保持部120に保持されている複数の基板Wが内槽112内に位置する処理位置(
図1(b)に示す位置)と、基板保持部120に保持されている複数の基板Wが内槽112の上方に位置する退避位置(
図1(a)に示す位置)との間で本体板122を昇降させる。従って、昇降ユニット126によって本体板122が処理位置に移動させられることにより、保持棒124に保持されている複数の基板Wが処理液Lに浸漬される。
【0039】
続けて
図2を参照して、基板処理装置100をさらに説明する。
図2は、第1実施形態に係る基板処理装置100を示す模式図である。
【0040】
図2に示すように、基板処理装置100は、処理液供給部150、排液部170および濃度計190をさらに備える。
【0041】
処理液供給部150は、処理液Lを処理槽110に供給する。処理液供給部150は、ノズル152と、配管154と、バルブ156と、処理液供給源158とを含む。ノズル152は処理液Lを内槽112に吐出する。ノズル152の位置は、特に限定されるものではないが、例えば、内槽112内に配置される。なお、ノズル152は、例えば、内槽112の上方に配置されてもよい。本実施形態では、ノズル152は、基板Wの下方に配置され、処理液Lを上方に向かって吐出する。ノズル152は、配管154に接続される。配管154には、処理液供給源158からの処理液Lが供給される。配管154には、バルブ156が配置される。バルブ156は、配管154を開閉する。バルブ156が開かれると、処理液Lが処理液供給源158から配管154を介して内槽112内に供給される。
【0042】
排液部170は、処理槽110の処理液Lを排出する。具体的には、排液部170は、排液配管172と、バルブ174とを含む。そして、処理槽110の内槽112の底壁には、排液配管172が接続される。排液配管172にはバルブ174が配置される。バルブ174は、排液配管172を開閉する。バルブ174が開くことにより、内槽112内に貯留されている処理液Lは、排液配管172を通って外部に排出される。排出された処理液Lは、排液処理装置(図示しない)へ送られる。
【0043】
濃度計190は、処理液Lの濃度を計測する。本実施形態では、濃度計190は、処理液Lに含有されるシリコン濃度を検出する。濃度計190の少なくとも一部は、処理液L内に配置される。濃度計190は、計測結果を後述する制御部11に送信する。また、濃度計190は、処理液Lのテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの濃度を検出してもよい。
【0044】
続けて、制御装置10について説明する。基板処理装置100は、制御装置10を更に備える。
【0045】
制御装置10は、基板処理装置100の各構成を制御する。例えば、制御装置10は、基板保持部120、処理液供給部150及び排液部170を制御する。制御装置10は、例えば、コンピュータである。詳細には、制御装置10は、制御部11と、記憶装置13と、計時部15とを含む。
【0046】
制御部11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む。
【0047】
記憶装置13は、データ及びコンピュータプログラムを記憶する。記憶装置13は、例えば、主記憶装置と、補助記憶装置とを含む。主記憶装置は、例えば、半導体メモリを含む。補助記憶装置は、例えば、半導体メモリ、ソリッドステートドライブ、及び/又は、ハードディスクドライブを含む。
【0048】
計時部15は、時間を計時する。計時部15は、例えば、タイマーである。
【0049】
制御部11は、基板保持部120、処理液供給部150及び排液部170を制御する。また、制御部11は、処理液供給部150および排液部170を制御する。具体的には、制御部11は、例えば、濃度計190からの検出結果に応じて、処理液Lを処理槽110から排出するように、排液部170を制御する。そして、制御部11は、処理液Lを処理槽110に供給するように、処理液供給部150を制御する。つまり、制御部11は、例えば、濃度計190からの検出結果に応じて、処理槽110内の処理液Lを入れ替える。制御部11は、例えば、処理液Lのシリコン濃度が所定値以上になった場合に処理槽110内の処理液Lを入れ替えてもよいし、処理液Lのテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの濃度が所定値未満になった場合に処理槽110内の処理液Lを入れ替えてもよい。
【0050】
本実施形態では、制御部11は、例えば、濃度計190からの検出結果に応じて、基板Wの後述する凹部Wbから処理液Lを排出するように、基板保持部120または排液部170を制御する。より具体的には、処理液Lによって後述するポリシリコン層Wcをエッチングすると、処理液L中のシリコン濃度が増加する。制御部11は、濃度計190からの検出結果に基づいて、処理液Lに含有されるシリコン濃度の増加量を算出する。そして、本実施形態では、制御部11は、単位時間当たりのシリコン濃度の増加量が所定値以下になった場合に、基板保持部120を鉛直上方に移動させることによって、基板Wを処理液Lから引き出す。制御部11が基板Wを処理液Lから引き出すことによって、基板Wの後述する凹部Wbから処理液Lが排出される。
【0051】
次に、
図3を参照して、第1実施形態の基板処理装置100を用いて処理する基板Wの構造を説明する。
図3は、第1実施形態の基板処理装置100を用いて処理する基板Wの構造を概略的に示す拡大断面図である。
図3に示すように、基板Wは、主面Waと、主面Waに対して略垂直に延びる柱状の凹部Wbと、凹部Wb内に充填されたポリシリコン層Wcとを含む。凹部Wbは、複数(多数)形成されている。ポリシリコン層Wcは、凹部Wb内にポリシリコンが充填されることによって形成されている。ポリシリコンは、処理液Lに溶解する。
【0052】
詳細には、基板Wは、基材Sと、積層構造Mとを有する。積層構造Mは、例えば、シリコン酸化膜Maと、シリコン窒化膜Mbとが交互に多数積層された構造を有する。積層構造Mは、基材Sの一方面に配置される。積層構造Mは、基材Sの一方面から+Y方向に延びる。なお、シリコン酸化膜Maおよびシリコン窒化膜Mbは、処理液Lによってエッチングされない、または、ほとんどエッチングされない。
【0053】
主面Waは、積層構造Mの最外の表面である。凹部Wbは、例えば、積層構造Mを積層方向(Y方向)に貫通する。凹部Wbは、例えば、円柱状である。凹部Wbは、円柱状に限定されるものではなく、例えば、多角柱状であってもよいし、楕円柱状であってもよい。なお、積層方向(Y方向)から見て、凹部Wbが長手方向および短手方向を有する形状(例えば、楕円形状、長円形状または長方形状)である場合、長手方向の長さに対する短手方向の長さは、2以下であることが好ましい。また、凹部Wbのアスペクト比は、例えば、5以上500以下である。アスペクト比は、凹部Wbの深さと穴径との比率である。なお、図中、凹部Wbの内側面には、シリコン酸化膜Maおよびシリコン窒化膜Mbが露出しているが、凹部Wbの内側面は、例えば、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜に覆われていてもよい。
【0054】
次に、
図4および
図5を参照して、基板Wを処理液Lに浸漬した際に発生する気泡について説明する。
図4は、凹部Wb内に気泡が発生した状態を概略的に示す拡大断面図である。
図5は、凹部Wb内で発生した気泡が大きくなった状態を概略的に示す拡大断面図である。
図4に示すように、基板Wを処理液Lに浸漬すると、ポリシリコン層Wcが処理液Lによってエッチングされる。このとき、凹部Wb内において、水素が生成され、処理液Lに気泡が発生する。
図5に示すように、発生した気泡は、凹部Wbから外部に排出されたり、発生した気泡同士が合体して大きくなったりする。
図4では、大きくなった気泡に、参照符号「B1」を付している。
【0055】
ここで、本実施形態では、基板Wの凹部Wbは、アスペクト比が大きく、かつ、柱状であるため、大きくなった気泡が凹部Wbに詰まりやすい。つまり、気泡が凹部Wbの断面積と同程度まで大きくなると、処理液Lがポリシリコン層Wc側に移動できなくなるため、気泡が凹部Wbから排出されにくくなる。従って、ポリシリコン層Wcに対するエッチング処理が進行しなくなる。なお、凹部Wbのアスペクト比が大きい場合であっても、ポリシリコン層Wcの表面に対して垂直な方向(Y方向)から見て、凹部Wbが例えば溝状またはスリット状である場合は、気泡は凹部Wbに詰まりにくい。
【0056】
次に、
図6を参照して、本発明の第1実施形態に係る基板処理方法を説明する。
図6は、第1実施形態に係る基板処理方法を示すフローチャートである。
図6に示すように、基板処理方法は、工程S1~工程S3を含む。工程S1~工程S3は、基板処理装置100によって実行される。
【0057】
工程S1において、制御部11は、基板Wを保持した基板保持部120を鉛直下方に移動させる。これにより、基板Wが処理液Lに浸漬する。言い換えると、制御部11は、ポリシリコン層Wcが処理液Lによりエッチングされるように、基板保持部120に保持された基板Wを処理液Lに浸漬する。なお、工程S1は、本発明の「浸漬工程」の一例である。
【0058】
次に、工程S2において、基板Wの凹部Wbに充填されたポリシリコン層Wcが処理液Lによりエッチングされる。そして、凹部Wb内のポリシリコン層Wcが無くなると、工程S3に進む。なお、工程S2は、本発明の「エッチング工程」の一例である。
【0059】
次に、工程S3において、制御部11は、基板Wを保持した基板保持部120を鉛直上方に移動させる。これにより、基板Wが処理液Lから引き出される。
【0060】
以上のようにして、基板Wに対する処理が終了する。なお、工程S3の後、基板処理装置100または他の装置によって、基板Wを洗浄液で洗浄する工程および基板Wを乾燥させる工程等を実行してもよい。
【0061】
本実施形態では、工程S2において、凹部Wb内で発生する気泡を除去する。また、工程S2において、処理液L中のシリコン濃度に応じて、凹部Wb内で発生する気泡を除去する。以下、具体的に説明する。
【0062】
次に、
図7を参照して、工程S2について詳細に説明する。
図7は、工程S2を詳細に説明するためのフローチャートである。
図7に示すように、本実施形態では、工程S2は、工程S21~工程S25を含む。
【0063】
工程S21において、処理液Lによるポリシリコン層Wcのエッチングが開始する。これにより、凹部Wb内に気泡が生じる。また、ポリシリコン層Wcのエッチングの進行に伴い、処理液Lに含有されるシリコン濃度が増加する。
【0064】
次に、工程S22において、制御部11は、処理液Lのシリコン濃度の、単位時間当たりの増加量が所定値以下になったか否かを判定する。なお、本実施形態では、制御部11は、濃度計190が検出したシリコン濃度を用いて判定する。ここで、処理液Lがポリシリコン層Wcをエッチングすると、凹部Wb内に気泡が発生する。凹部Wb内で発生した気泡が大きくなって凹部Wbに詰まると、シリコンが処理液L中に溶け出さなくなるため、単位時間当たりのシリコン濃度の増加量が低下する。つまり、工程S22において、制御部11は、エッチングにより発生した気泡に起因して、凹部Wbに詰まりが生じているか否かを判定する。
【0065】
工程S22で、制御部11がシリコン濃度の、単位時間当たりの増加量が所定値以下になったと判定した場合、処理は工程S23に進む。
【0066】
次に、工程S23において、凹部Wb内で発生する気泡を凹部Wb内から除去する。本実施形態では、凹部Wbに詰まった気泡を除去する。
【0067】
次に、工程S24において、制御部11は、ポリシリコン層Wcのエッチングが完了したか否かを判定する。例えば、制御部11は、処理時間が所定時間以上経過したか否かを判定することによって、ポリシリコン層Wcのエッチングが完了したか否かを判定する。所定時間は、例えば、工程S21からの経過時間である。所定時間は、例えば、処理液Lとポリシリコン層Wcとの反応時間、および、工程S23にかかる時間等を加味して予め設定されてもよい。なお、制御部11は、処理液Lのシリコン濃度が所定量以上増加したか否かを判定することによって、ポリシリコン層Wcのエッチングが完了したか否かを判定してもよい。この場合、所定量は、例えば、ポリシリコン層Wcの体積および数を加味して予め設定されてもよい。
【0068】
工程S24で、制御部11がポリシリコン層Wcのエッチングが完了したと判定した場合、工程S2は終了する。
【0069】
一方、工程S24で、ポリシリコン層Wcのエッチングが完了していないと判定した場合、処理は、工程S22に戻る。
【0070】
工程S22で、制御部11がシリコン濃度の、単位時間当たりの増加量が所定値以下になっていないと判定した場合、処理は工程S25に進む。
【0071】
次に、工程S25において、制御部11は、ポリシリコン層Wcのエッチングが完了したか否かを判定する。例えば、制御部11は、処理時間が所定時間以上経過したか否かを判定することによって、ポリシリコン層Wcのエッチングが完了したか否かを判定する。所定時間は、例えば、工程S21からの経過時間である。所定時間は、例えば、処理液Lとポリシリコン層Wcとの反応時間、および、工程S23にかかる時間等を加味して予め設定されてもよい。工程S25の所定時間は、工程S24の所定時間に比べて短くてもよい。ただし、工程S25の所定時間は、工程S24の所定時間と同じであってもよい。なお、制御部11は、処理液Lのシリコン濃度が所定量以上増加したか否かを判定することによって、ポリシリコン層Wcのエッチングが完了したか否かを判定してもよい。この場合、所定量は、例えば、ポリシリコン層Wcの体積および数を加味して予め設定されてもよい。工程S25の所定量は、特に限定されるものではないが、工程S24の所定量と同じである。
【0072】
工程S25で、制御部11がポリシリコン層Wcのエッチングが完了したと判定した場合、工程S2は終了する。
【0073】
一方、工程S25で、ポリシリコン層Wcのエッチングが完了していないと判定した場合、処理は、工程S22に戻る。
【0074】
以上、
図1~
図7を参照して説明したように、本実施形態の基板処理方法は、基板Wを処理液Lに浸漬する工程S1と、ポリシリコン層Wcを処理液Lによりエッチングする工程S2とを含み、工程S2において、凹部Wbで発生する気泡を除去する。従って、ポリシリコン層Wcに対するエッチング処理が完了しなくなることを抑制できるので、エッチング不良が発生することを抑制できる。
【0075】
また、上記のように、工程S2において、処理液L中のシリコン濃度に応じて、凹部Wb内で発生する気泡を除去する。従って、例えば、気泡に起因して凹部Wbに詰まりが生じている場合、凹部Wb内で発生する気泡を除去することができる。よって、気泡の除去を効率良く行うことができる。
【0076】
なお、本実施形態では、濃度計190が検出したシリコン濃度に基づいて、凹部Wb内で発生する気泡を除去する例について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、処理液Lのシリコン濃度の単位時間当たりの増加量とエッチング時間との関係を予め取得しておき、予め決められた時間が経過した際に、工程S23を実行してもよい。この場合も、処理液L中のシリコン濃度に応じて凹部Wb内で発生する気泡を除去することになる。
【0077】
また、上記のように、工程S2において、凹部Wbに詰まった気泡を除去する。従って、例えば、気泡に起因して凹部Wbに詰まりが生じている場合だけ、凹部Wb内で発生する気泡を除去することができる。なお、凹部Wbに気泡が詰まった後で気泡を除去するのではなく、凹部Wbに気泡が詰まりそうになった際に気泡を除去してもよい。
【0078】
また、上記のように、処理液Lは、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを含む。従って、ポリシリコン層Wcに対するエッチング速度を高くすることができる。
【0079】
次に、
図8~
図10を参照して、工程S23について詳細に説明する。
図8は、工程S23を詳細に説明するためのフローチャートである。
図9は、凹部Wb内から処理液Lが排出された状態を概略的に示す拡大断面図である。
図10は、凹部Wb内に処理液Lが流入した状態を概略的に示す拡大断面図である。
図8に示すように、本実施形態では、工程S23は、工程S231および工程S232を含む。
【0080】
工程S231において、制御部11は、基板Wを保持した基板保持部120を鉛直上方に移動させる。つまり、制御部11は、基板Wを上昇させる。これにより、基板Wが処理液Lから引き出される。このとき、
図9に示すように、凹部Wb内の処理液Lが排出される。
【0081】
次に、工程S232において、制御部11は、基板Wを保持した基板保持部120を鉛直下方に移動させる。つまり、制御部11は、基板Wを下降させる。これにより、基板Wが処理液Lに浸漬する。このとき、
図10に示すように、凹部Wb内に処理液Lが充填される。なお、基板Wが処理液Lに浸漬する際に、凹部Wb内の気体は排出される。具体的には、凹部Wbの内面は親水性であるため、処理液Lが流入しやすい。また、基板Wが処理液Lに浸漬する際は、基板Wの表面における処理液Lの流れが速く、流動性が高いため、凹部Wb内の気体は、凹部Wb内にとどまらず外部に排出される。そして、処理液Lによるエッチングが再開し、工程S23は終了する。
【0082】
以上、
図8~
図10を参照して説明したように、本実施形態の基板処理方法は、工程S2において、処理槽110から基板Wを引き上げることによって、凹部Wb内から処理液Lおよび気泡を除去する。従って、容易に、凹部Wb内から気泡を除去することができる。
【0083】
(第1変形例)
次に、
図11を参照して、第1実施形態の第1変形例について説明する。
図11は、第1実施形態の第1変形例の基板処理方法の工程S23を詳細に説明するためのフローチャートである。第1変形例では、
図8を用いて説明した第1実施形態の基板処理方法とは、工程S23の具体的な方法が異なる例について説明する。
【0084】
図11に示すように、第1変形例では、工程S23は、工程S231aおよび工程S232aを含む。
【0085】
工程S231aにおいて、制御部11は、処理槽110の処理液Lを排出する。具体的には、制御部11は、排液部170のバルブ174を開く。これにより、
図9に示したように、凹部Wb内の処理液Lが排出される。
【0086】
次に、工程S232aにおいて、制御部11は、処理液Lを処理槽110に供給する。具体的には、制御部11は、処理液Lを処理槽110に供給するように、処理液供給部150を制御する。これにより、基板Wが処理液Lに浸漬する。このとき、
図10に示したように、凹部Wb内に処理液Lが充填される。そして、処理液Lによるエッチングが再開し、工程S23は終了する。
【0087】
第1変形例のその他の構成およびその他の基板処理方法は、第1実施形態と同様である。
【0088】
以上、
図11を参照して説明したように、第1変形例の基板処理方法は、工程S2において、処理槽110から処理液Lを排出することによって、凹部Wb内から処理液Lおよび気泡を除去する。従って、容易に、凹部Wb内から気泡を除去することができる。
【0089】
(第2実施形態)
図12~
図14を参照して、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置100及び基板処理方法を説明する。第2実施形態では、基板Wの下方に気泡を発生させることによって凹部Wb内で発生する気泡を凹部Wbから除去する例について説明する。以下、第2実施形態が第1実施形態と異なる点を主に説明する。
【0090】
まず、
図12および
図13を参照して、第2実施形態の基板処理装置100を説明する。
図12は、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置100の構造を示す模式図である。
図12に示すように、基板処理装置100は、気泡発生部200をさらに備える。気泡発生部200は、処理液L中に気体を供給することによって、処理液L中に気泡を発生させる。気泡発生部200は、ノズル202と、配管204と、バルブ206と、気体供給源208とを含む。なお、気泡発生部200は、制御部11によって制御される。
【0091】
ノズル202は、気体を処理液L内に供給する。従って、処理液L内に気体が発生する。処理液L内に供給される気体は、特に限定されるものではないが、例えば、窒素ガスである。また、ノズル202は、基板Wの下方に配置される。従って、基板Wの下方に気体が供給される。
【0092】
ノズル202は、配管204に接続される。配管204には、気体供給源208からの気体が供給される。配管204には、バルブ206が配置される。バルブ206は、配管204を開閉する。バルブ206が開かれると、気体が気体供給源208から配管204を介して処理液L内に供給される。バルブ206は、特に限定されるものではないが、例えば、気体の流量を調節可能な調節バルブであってもよい。なお、気泡発生部200は、気体の流量を計測する流量計(図示せず)を含んでもよい。この場合、流量計は、計測結果を制御部11に送信してもよい。
【0093】
続けて、ノズル202について説明する。ノズル202は、処理液L中に複数の気泡(多数の気泡)を発生し、処理液Lに浸漬された基板Wに向けて気泡を供給する。ノズル202は、例えば、バブラーである。
【0094】
ノズル202は、略筒形状を有する。ノズル202は、第1方向D10に延びる。ノズル202は、
図12では1つだけ描かれているが、X方向に複数配置される。
【0095】
ノズル202は、処理液L中に気体を供給する供給孔202aを複数有する。供給孔202aは、例えば、円形状である。供給孔202aの孔径は、例えば、数十μm~数百μmのオーダーである。例えば、1つのノズル202には、数十個の供給孔202aが設けられる。複数の供給孔202aは、第1方向D10に所定ピッチで配置される。なお、複数の供給孔202aは、第1方向D10に等間隔で配置されてもよいし、不等間隔で配置されてもよい。
【0096】
バルブ206を開くと、処理液L中に気泡B2が発生する。以下、気泡発生部200によって発生する気泡を気泡B2と記載する。
【0097】
図13は、凹部Wb周辺における処理液Lおよび気泡の流れを概略的に示す拡大断面図である。
図13に示すように、気泡B2は、例えば、100μmよりも大きい直径を有する。気泡B2は、例えば、数100μm~数mm程度の直径を有することが好ましい。このため、気泡B2には、比較的大きな浮力が作用する。よって、基板Wの周辺では、気泡B2の上昇に起因して上方向に処理液Lの流れが発生する。そして、処理液Lの流動性が高まることによって、凹部Wbでは、処理液Lの流入および排出が促進される。従って、凹部Wb内で発生した気泡の排出効率が向上する。また、このとき、凹部Wb内で大きくなった気泡B1は、処理液Lの流れによって分裂し、凹部Wbから排出される。
【0098】
次に、
図14を参照して、本発明の第2実施形態に係る基板処理方法の工程S23について説明する。
図14は、本発明の第2実施形態の基板処理方法の工程S23を詳細に説明するためのフローチャートである。
図14に示すように、本実施形態では、工程S23は、工程S231bおよび工程S232bを含む。
【0099】
工程S231bにおいて、制御部11は、基板Wの下方に気体を供給し処理液L中に気泡を発生させるように、気泡発生部200を制御する。つまり、制御部11は、バルブ206を開いて、処理液L中に気泡B2を発生させる。これにより、上述したように、基板Wの周辺では、気泡B2の上昇に起因して上方向に処理液Lの流れが発生する。そして、凹部Wb内で発生した気泡の排出効率が向上する。また、凹部Wb内で大きくなった気泡B1は、処理液Lの流れによって分裂し、凹部Wbから排出される。その結果、処理液Lによるエッチングが再開する。
【0100】
次に、工程S232bにおいて、制御部11は、処理液L中への気体の供給を停止するように、気泡発生部200を制御する。つまり、制御部11は、バルブ206を閉じて、処理液L中の気泡B2の発生を停止する。そして、工程S23は終了する。
【0101】
第2実施形態のその他の構成およびその他の基板処理方法は、第1実施形態と同様である。
【0102】
以上、
図12~
図14を参照して説明したように、第2実施形態の基板処理方法は、工程S2において、基板Wの下方に気体を供給し処理液L中に気泡を発生させることによって、凹部Wb内で発生する気泡を除去する。従って、容易に、凹部Wb内から気泡を除去することができる。
【0103】
また、上記のように、工程S232bにおいて処理液L中への気体の供給を停止することによって、気体(ここでは、窒素ガス)の消費量を低減できる。つまり、環境負荷を低減できる。
【0104】
第2実施形態のその他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0105】
(第3実施形態)
図15~
図18を参照して、本発明の第3実施形態に係る基板処理装置100及び基板処理方法を説明する。第3実施形態では、処理液Lに超音波振動を付与することによって凹部Wb内で発生する気泡を凹部Wbから除去する例について説明する。以下、第3実施形態が第1実施形態と異なる点を主に説明する。
【0106】
まず、
図15を参照して、第3実施形態の基板処理装置100を説明する。
図15は、本発明の第3実施形態に係る基板処理装置100の構造を示す模式図である。
図15に示すように、基板処理装置100は、超音波発生部300をさらに備える。
【0107】
超音波発生部300は、処理液Lに超音波振動を付与する。具体的には、超音波発生部300は、超音波振動素子310と、伝搬槽320とを含む。超音波振動素子310は、超音波振動を発生させる。超音波振動素子310の振動周波数は、例えば、数十kHz~数MHzである。好ましくは、超音波振動素子310の振動周波数は、例えば、数百kHz~1MHzである。なお、超音波振動素子310は、制御部11によって制御される。
【0108】
伝搬槽320は、超音波振動素子310で発生した超音波振動を基板Wに伝搬するために設けられる。伝搬槽320は、処理槽110の下部を収容する。伝搬槽320は、伝搬液L1が貯留する。伝搬液L1は、処理槽110の下部に接触するように、伝搬槽320に貯留される。伝搬液L1は、特に限定されるものではないが、例えば、純水である。
【0109】
超音波振動素子310が駆動すると、発生した超音波振動は、伝搬槽320、伝搬液L1、処理槽110、処理液Lを介して、基板Wに伝搬する。
【0110】
図16は、凹部Wb周辺において超音波振動が伝搬される状態を概略的に示す拡大断面図である。
図17は、凹部Wb周辺において超音波振動により気泡B1が分裂する状態を概略的に示す拡大断面図である。超音波振動素子310を駆動すると、キャビテーションにより処理液L内にマイクロメートルオーダーの気泡が発生する。その一方、例えば、
図16に示す大きな気泡B1は、
図17に示すように超音波振動によって分裂する。そして、分裂した気泡は、凹部Wbから排出される。なお、超音波振動素子310による超音波振動によって、気泡は、所定サイズ以下の大きさに分裂する。
【0111】
次に、
図18を参照して、本発明の第3実施形態に係る基板処理方法の工程S23について説明する。
図18は、本発明の第3実施形態の基板処理方法の工程S23を詳細に説明するためのフローチャートである。
図18に示すように、本実施形態では、工程S23は、工程S231cおよび工程S232cを含む。
【0112】
工程S231cにおいて、制御部11は、処理液Lに超音波振動を付与するように、超音波発生部300を制御する。つまり、制御部11は、超音波振動素子310を駆動して、超音波振動を処理液Lおよび基板Wに伝搬させる。これにより、上述したように、凹部Wbに詰まるような大きな気泡B1は、超音波振動によって分裂する。また、気泡B1よりも小さく、所定サイズよりも大きい気泡も、超音波振動によって分裂する。そして、分裂した気泡は、凹部Wbから排出される。その結果、処理液Lによるエッチングが再開する。なお、気泡B1が分裂することによって、処理液Lがポリシリコン層Wcに接触する。これによっても、処理液Lによるエッチングが再開する。
【0113】
次に、工程S232cにおいて、制御部11は、超音波振動の発生を停止するように、超音波発生部300を制御する。つまり、制御部11は、超音波振動素子310の駆動を停止して、超音波振動の発生を停止する。そして、工程S23は終了する。
【0114】
第3実施形態のその他の構成およびその他の基板処理方法は、第1実施形態と同様である。
【0115】
以上、
図15~
図18を参照して説明したように、第3実施形態の基板処理方法は、工程S2において、処理液Lに超音波振動を付与することによって、凹部Wb内で発生する気泡を除去する。従って、容易に、凹部Wb内から気泡を除去することができる。
【0116】
また、上記のように、工程S232cにおいて超音波振動の発生を停止することによって、基板Wに形成されたパターン(図示せず)に負荷がかかる時間を短くできる。よって、基板Wのパターン(図示せず)に悪影響が及ぶことを抑制できる。
【0117】
第3実施形態のその他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0118】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0119】
例えば、上記の第2実施形態および第3実施形態では、処理液L中のシリコン濃度に応じて、気泡を除去する例について示したが、本発明はこれに限らない。例えば、第2実施形態において、シリコン濃度にかかわらず、工程S2の全ての期間、または、工程S1~工程S3の全ての期間において、基板Wの下方に気泡を発生させてもよい。また、例えば、第3実施形態において、シリコン濃度にかかわらず、工程S2の全ての期間、または、工程S1~工程S3の全ての期間において、処理液Lに超音波振動を付与してもよい。つまり、気泡が凹部Wbに詰まる前から、気泡を除去してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、基板処理方法および基板処理装置に関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0121】
11 :制御部
100 :基板処理装置
110 :処理槽
120 :基板保持部
200 :気泡発生部
300 :超音波発生部
B1、B2 :気泡
L :処理液
S1 :工程(浸漬工程)
S2 :工程(エッチング工程)
W :基板
Wa :主面
Wb :凹部
Wc :ポリシリコン層