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特開2024-31336ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031336
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20240229BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240229BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20240229BHJP
   C08K 5/3432 20060101ALI20240229BHJP
   C08K 5/46 20060101ALI20240229BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/013
C08K5/17
C08K5/3432
C08K5/46
B60C1/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134835
(22)【出願日】2022-08-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】箕内 則夫
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA06
3D131BA07
3D131BA18
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC31
3D131BC35
3D131BC39
3D131BC47
4J002AC01Y
4J002AC03X
4J002AC05W
4J002DA036
4J002DJ016
4J002EN077
4J002EU058
4J002EV279
4J002EV319
4J002FD016
4J002FD077
4J002FD078
4J002FD140
4J002FD159
4J002FD160
4J002FD200
4J002GN01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた低発熱性、耐老化性、及び耐オゾン性が得られる、ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ジエン系ゴムと、フィラーと、下記式(1)で表されるフェニレンジアミン(式(1)におけるR,Rは、炭素数が7以上のアルキル基又はアリール基であって、少なくとも一方が炭素数7以上のアルキル基である)と、キノリン系老化防止剤と、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドとを含有し、フィラー総量中のシリカの含有割合が70質量%以下であり、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(IPPD)とN-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)は含まない、ゴム組成物とする。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムと、フィラーと、下記式(1)で表されるフェニレンジアミンと、キノリン系老化防止剤と、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドとを含有し、
フィラー総量中のシリカの含有割合が70質量%以下であり、
N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(IPPD)とN-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)は含まない、ゴム組成物。
【化1】
式(1)におけるR,Rは、炭素数が7以上のアルキル基又はアリール基であって、少なくとも一方が炭素数7以上のアルキル基である。
【請求項2】
前記シリカは、BET比表面積が50~250m/gであるシリカを含む、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゴム組成物をサイドウォールに用いた、空気入りタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤに用いられるゴム組成物においては、低発熱性の観点からシリカを配合することが検討されている。また、ゴム組成物においては耐老化性や耐オゾン性の観点から老化防止剤としてN-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(IPPD)とN-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)が一般に使用されるが、これらの化合物はシリカの極性部への吸着性が高く、十分な老化防止効果を発揮できないおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-221052号公報
【特許文献2】特開2013-95837号公報
【特許文献3】特開2009-24134号公報
【特許文献4】特開平10-324779号公報
【特許文献5】特開2021-91163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上の点に鑑み、優れた低発熱性、耐老化性、及び耐オゾン性を得ることができる、ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【0005】
なお、特許文献1~5には、炭素数が7以上のアルキル基を有するフェニレンジアミンと、キノリン系老化防止剤とを併用し、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(IPPD)とN-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)は含まない例は記載されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1] ジエン系ゴムと、フィラーと、下記式(1)で表されるフェニレンジアミンと、キノリン系老化防止剤と、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドとを含有し、フィラー総量中のシリカの含有割合が70質量%以下であり、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(IPPD)とN-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)は含まない、ゴム組成物。
【化1】
式(1)におけるR,Rは、炭素数が7以上のアルキル基又はアリール基であって、少なくとも一方が炭素数7以上のアルキル基である。
[2] 上記シリカは、BET比表面積が50~250m/gであるシリカを含む、[1]に記載のゴム組成物。
[3] [1]又は[2]に記載のゴム組成物をサイドウォールに用いた、空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0007】
本発明のゴム組成物によれば、優れた低発熱性、耐老化性、及び耐オゾン性を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0009】
本実施形態に係るゴム組成物は、ジエン系ゴムと、フィラーと、下記式(1)で表されるフェニレンジアミンと、キノリン系老化防止剤と、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドとを含有し、フィラー総量中のシリカの含有割合が70質量%以下であり、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(IPPD)とN-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)は含まないものとする。
【化2】
式(1)におけるR,Rは、炭素数が7以上のアルキル基又はアリール基であって、少なくとも一方が炭素数7以上のアルキル基である。
【0010】
ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム等が挙げられ、この中でも天然ゴムやブタジエンゴムであることが好ましく、天然ゴムとブタジエンゴムとの併用であることがより好ましい。また、ジエン系ゴムには、これらの変性ゴムも含まれるものとする。変性ゴムとしては、例えば、変性SBR、変性BRを挙げることができる。変性ゴムは、ヘテロ原子を含む官能基を有することができる。官能基は、ポリマー鎖の末端に導入されてもよく、ポリマー鎖中に導入されてもよいが、好ましくは末端に導入されることである。官能基としては、アミノ基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、シアノ基、ハロゲン基などが挙げられる。なかでも、アミノ基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基が好ましい。変性ゴムは、例示した官能基のうち少なくとも1種を有することができる。アミノ基としては、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基などが挙げられる。アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。例示した官能基は、シリカのシラノール基(Si-OH)と相互作用する。ここで、相互作用とは、たとえば、シリカのシラノール基との間で化学反応による化学結合または水素結合することを意味する。ジエン系ゴム100質量%中の変性ゴムの量は、10質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよい。
【0011】
本実施形態に係るゴム組成物は、フィラーを含有するものである。フィラーとしては、カーボンブラックやシリカなどが挙げられる。カーボンブラックとしては、公知の種々の品種を用いることができる。シリカとしては、例えば、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカを用いてもよい。
【0012】
シリカのBET比表面積は、50~250m/gであることが好ましく、70~220m/gであることがより好ましい。BET比表面積が上記範囲内である場合、優れた低発熱性が得られやすく、老化防止剤の吸着も抑えられ、優れた耐老化性や耐オゾン性も得られやすい。ここで、BET比表面積は、JIS K6430に記載のBET法に準じて測定した値とする。
【0013】
フィラーの含有量は特に限定されず、ジエン系ゴム100質量部に対して、10~90質量部であることが好ましく、30~70質量部であることがより好ましい。
【0014】
カーボンブラックの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、5~80質量部であることが好ましく、15~50質量部であることがより好ましい。
【0015】
シリカの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、1~50質量部であることが好ましく、5~40質量部であることがより好ましい。
【0016】
本実施形態で使用するフェニレンジアミンは、式(1)で表されるものであり、式(1)におけるR,Rは、炭素数が7以上のアルキル基又はアリール基であって、少なくとも一方が炭素数7以上のアルキル基であり、炭素数が7~20のアルキル基又はフェニル基であって、少なくとも一方が炭素数7~20のアルキル基であることが好ましい。
【化3】
【0017】
このようなフェニレンジアミンとしては、例えば、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(77PD)、N-フェニル-N’-(1-メチルヘプチル)-p-フェニレンジアミン(8PPD)、N-フェニル-N’-(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(7PPD)などが挙げられる。
【0018】
上記フェニレンジアミンの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、0.5~15質量部であることがより好ましく、1~10質量部であることがさらに好ましく、2~5質量部であることが特に好ましい。
【0019】
キノリン系老化防止剤としては、例えば、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体(TMQ)、ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)、6-エトキシ-1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン(ETMQ)などが挙げられる。
【0020】
キノリン系老化防止剤の含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、0.5~15質量部であることがより好ましく、1~10質量部であることがさらに好ましく、1~6質量部であることが特に好ましい。
【0021】
老化防止剤の合計の含有量(上記フェニレンジアミンとキノリン系老化防止剤との合計)は、ジエン系ゴム100質量部に対して、1~20質量部であることが好ましく、1~15質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがさらに好ましい。
【0022】
上記フェニレンジアミンとキノリン系老化防止剤との含有割合は、質量比で、0.1~10であることが好ましく、0.2~5であることがより好ましい。
【0023】
上記加硫剤としては、硫黄が好ましく用いられる。加硫剤の含有量は、特に限定するものではないが、ジエン系ゴム100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量部である。
【0024】
また、加硫促進剤としては、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)を含有するものであり、その含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1~5質量部であることが好ましく、0.1~3質量部であることがより好ましく、0.1~2質量部であることがさらに好ましい。本発明の効果を損なわない範囲で、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)以外の加硫促進剤を含有するものであってもよいが、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NS)の含有量はジエン系ゴム100質量部に対して1質量部未満であることが好ましく、含まないものであることがより好ましい。
【0025】
加硫促進剤として、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)を使用することで、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NS)と比較して優れた耐老化性が得られる。そのメカニズムは定かではないが、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドは、tert-ブチル基が安定なカルボカチオンとなり、シリカの極性部に吸着したり、ベンゾチアゾリルスルフェンアミドの求電子性が高く、シリカの極性部に吸着したりすることで、加硫促進剤としての効果を十分に発揮することができず、ポリスルフィドが形成されるため、耐老化性に悪影響を与えると考えられる。一方、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)を使用した場合、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NS)と比較してシリカに対する吸着性が低く、加硫促進剤としての効果を十分に発揮できるからであると推測できる。
【0026】
シリカとN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)との含有割合(シリカ/CZ)は、質量比で1~80であることが好ましく、5~40であることがより好ましい。
【0027】
本実施形態に係るゴム組成物には、上記成分以外に、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、オイル、樹脂、シランカップリング剤など、ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。
【0028】
オイルとしては、菜種油、綿実油などの植物油系オイル、パラフィン系プロセス油、ナフテン系プロセス油、アロマ系プロセス油などの鉱物油系オイル、DOP,DBPなどの可塑剤を例示することができる。オイルは使用する原料ゴムとの混和性を考慮して適宜選択する。オイルは2種以上を使用してもよい。
【0029】
樹脂としては、粘着性を有するもの、即ち粘着性樹脂が好ましく用いられ、固形状でも液状でもよい。樹脂としては、例えば、ロジン系樹脂、石油樹脂、クマロン系樹脂、テルペン系樹脂などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0030】
ロジン系樹脂としては、例えば天然樹脂ロジン、それを用いた各種のロジン変性樹脂(例えば、ロジン変性マレイン酸樹脂)が挙げられる。
【0031】
石油樹脂としては、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂が挙げられる。脂肪族系石油樹脂は、炭素数4~5個相当の石油留分(C5留分)であるイソプレンやシクロペンタジエンなどの不飽和モノマーをカチオン重合することにより得られる樹脂であり(C5系石油樹脂とも称される。)、水添したものであってもよい。芳香族系石油樹脂は、炭素数8~10個相当の石油留分(C9留分)であるビニルトルエン、アルキルスチレン、インデンなどのモノマーをカチオン重合することにより得られる樹脂であり(C9系石油樹脂とも称される。)、水添したものであってもよい。脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂は、上記C5留分とC9留分を共重合することにより得られる樹脂であり(C5/C9系石油樹脂とも称される。)、水添したものであってもよい。
【0032】
クマロン系樹脂は、クマロンを主成分する樹脂であり、例えば、クマロン樹脂、クマロン-インデン樹脂、クマロンとインデンとスチレンを主成分とする共重合樹脂などが挙げられる。
【0033】
テルペン系樹脂としては、ポリテルペン、テルペン-フェノール樹脂などが挙げられる。
【0034】
樹脂の含有量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して1~30質量部でもよく、5~20質量部でもよく、10~20質量部でもよい。
【0035】
本実施形態に係るゴム組成物は、フィラーとしてシリカを含有する場合、シランカップリング剤を併用することが好ましい。シランカップリング剤の含有量は、シリカ質量の2~20質量%であることが好ましく、4~15質量%であることがより好ましい。
【0036】
シランカップリング剤として、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィドシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプトシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-プロピオニルチオプロピルトリメトキシシランなどの保護化メルカプトシランを挙げることができる。これらから、一つまたは任意の組み合わせを選択して、使用することができる。
【0037】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、例えば、第一混合段階で、ジエン系ゴムに対し、加硫剤及び加硫促進剤を除く他の添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で加硫剤及び加硫促進剤を添加混合してゴム組成物を調製することができる。
【0038】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いてタイヤを加硫成形することで得られるものである。かかるタイヤの加硫条件としては、特に限定されるものではないが、通常、140~180℃で10~30分間で行われる。
【0039】
本発明においては、タイヤのゴム部分の全体を上記ゴム組成物で形成してもよいが、通常、上記ゴム組成物は部分的に用いられる。すなわち、トレッド、サイドウォールおよびビードのうちの少なくとも一部に該ゴム組成物からなるゴム部が設けられる。その場合、トレッドやサイドウォール、ビードの各部の全体を上記ゴム部で形成してもよく、あるいはまた、各部の一部を上記ゴム部で形成してもよい。いずれにしても、外部から視認できるように該ゴム部をタイヤ表面側に設けることが好ましい。好ましくは、サイドウォールの全体又は一部が上記ゴム部により形成されていることである。
【実施例0040】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
ラボミキサーを使用し、下記表1~5に示す配合(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、ジエン系ゴムに対し硫黄及び加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し混練した(排出温度=160℃)。次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。表1~5中の各成分の詳細は、以下の通りである。
【0042】
・BR1:宇部興産(株)製「BR150B」、シス含有量97%、ガラス転移温度-100℃
・BR2:旭化成(株)製「ジエンNF35R」、シス含有量32%、ガラス転移温度-90℃
・BR3:ランクセス社製「BUNA-CB25」、シス含有量96%、ガラス転移温度-104℃
・BR4:宇部興産(株)製「VCR617」、シス含有量98%、ガラス転移温度-100℃
・NR:RSS#3
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト3」
・シリカ1:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールAQ」、BET比表面積=205m/g
・シリカ2:エボニック インダストリーズ AG社製「ULTRASIL4000 GR」、BET比表面積=85m/g
・シランカップリング剤:エボニック社製「Si69」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「酸化亜鉛1種」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS-20」
・ワックス:日本精蝋(株)製「OZOACE0355」
・プロセスオイル:ENEOS(株)製「プロセスオイルNC140」
・アミン系老化防止剤1:大内新興化学(株)製「ノクラック810-NA」、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(IPPD)
・アミン系老化防止剤2:大内新興化学(株)製「ノクラック6C」、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)
・アミン系老化防止剤3:LANXESS社製「Vulkanox4030」、N,N’-BIS(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(77PD)
・アミン系老化防止剤4:精工化学(株)製「オゾノン35」、N-フェニル-N’-(1-メチルヘプチル)-p-フェニレンジアミン(8PPD)
・アミン系老化防止剤5:Eastman社製「Santoflex7PPD」、N-フェニル-N’-(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(7PPD)
・キノリン系老化防止剤1:大内新興化学(株)製「ノクラック224」、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体(TMQ)
・キノリン系老化防止剤2:大内新興化学(株)製「ノクラックAW」、6-エトキシ-1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン(ETMQ)
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」
・加硫促進剤1:大内新興化学(株)製「ノクセラーNS」、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
・加硫促進剤2:住友化学(株)製「ソクシノールCZ」、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
【0043】
得られた各ゴム組成物について、160℃で20分間加硫して所定形状の試験片を作製し、発熱性、耐老化性、及び耐オゾン性の評価を行った。評価方法は次の通りである。
【0044】
・発熱性:東洋精機(株)製の粘弾性試験機を使用し、周波数10Hz、静歪10%、動歪1%、温度60℃で損失係数tanδを測定し、その逆数について基準となる比較例の値を100とした指数で示した。指数が大きいほど、低発熱性(低燃費性)に優れていることを示す。
【0045】
・耐老化性:加硫ゴムの試験片について、JIS K6251に準拠した引張試験を行い破断強度を測定した。次いで、加硫ゴムの試験片について90℃に温度調節したギヤーオーブン中にて96時間加熱した後、同様に引張試験を行い破断強度を測定した。老化前の破断強度に対する老化後の破断強度の保持率を求め、基準となる比較例の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、保持率が高く、耐老化性能に優れることを示す。
【0046】
なお、表1において、実施例1-1~実施例1-3、比較例1-2及び比較例1-3は比較例1-1を基準とし、表2において、実施例2-1~実施例2-4、及び比較例2-2~比較例2-5は比較例2-1を基準とし、表3において、実施例3-1~実施例3-4、及び比較例3-2~比較例3-5は比較例3-1を基準とし、表4において、実施例4-1~実施例4-6、及び比較例4-2~比較例4-4は比較例4-1を基準とし、表5において、実施例5-1~実施例5-7、及び比較例5-2~比較例5-4は比較例5-1を基準とした。
【0047】
・耐オゾン性:試験片を25%伸長した条件下でオゾンウェザーメーター装置中に設置し、オゾン濃度100pphm、温度50℃の環境下で24時間放置し、その後、クラックの発生状態を目視および10倍の拡大鏡により観察した。次の4段階の基準で耐オゾン性を評価した。
点数4:クラック発生なし
点数3:肉眼では確認できないが10倍の拡大鏡では確認できるクラックが発生
点数2:1mm以下のクラックが発生している
点数1:1mmを超えるクラックが発生
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
結果は、表1に示す通りであり、比較例1-1と比較例1-3との対比より、シリカを配合することにより、発熱性が向上するものの、耐老化性や耐オゾン性が悪化することがわかった。また、比較例1-2と比較例1-3との対比より、加硫促進剤として、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドを用いるよりも、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドを用いたほうが、耐老化性が向上することがわかった。
【0054】
一方、実施例1-1~実施例1-3は、所定のフェニレンジアミンと、キノリン系老化防止剤と、シリカと、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドを併用することで、優れた低発熱性、耐老化性、及び耐オゾン性を両立できた。
【0055】
表2に示すように、比較例2-1と比較例2-2との対比より、シリカを配合することにより、低発熱性が向上するものの、耐老化性や耐オゾン性が悪化することがわかった。また、比較例2-3は、老化防止剤として所定のフェニレンジアミンを単独で使用した例であり、耐老化性が劣っていた。比較例2-4、比較例2-5はアルキル基の炭素数が6以下のフェニレンジアミンと、所定のフェニレンジアミンと、キノリン系老化防止剤とを併用した例であり、耐老化性や耐オゾン性が劣っていた。
【0056】
一方、実施例2-1~実施例2-4は、所定のフェニレンジアミンと、キノリン系老化防止剤と、シリカと、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドを併用することで、優れた低発熱性、耐老化性、及び耐オゾン性を両立できた。
【0057】
表3に示すように、比較例3-1と比較例3-2との対比より、シリカを配合することにより、低発熱性が向上するものの、耐老化性や耐オゾン性が悪化することがわかった。また、比較例3-3、比較例3-4は、老化防止剤として所定のフェニレンジアミンを単独で使用した例であり、耐老化性、及び耐オゾン性が劣っていた。比較例3-5は、アルキル基の炭素数が6以下のフェニレンジアミンと、所定のフェニレンジアミンと、キノリン系老化防止剤とを併用した例であり、耐老化性、及び耐オゾン性が劣っていた。
【0058】
一方、実施例3-1~実施例3-4は、所定のフェニレンジアミンと、キノリン系老化防止剤と、シリカと、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドを併用することで、優れた低発熱性、耐老化性、及び耐オゾン性を両立できた。
【0059】
表4に示すように、比較例4-1と比較例4-2,比較例4-3との対比より、シリカを配合することにより、低発熱性が向上するものの、耐老化性や耐オゾン性が悪化することがわかった。また、比較例4-4は、老化防止剤として所定のフェニレンジアミンを単独で使用した例であり、耐老化性の改善がみられず、耐オゾン性が劣っていた。
【0060】
一方、実施例4-1~実施例4-6は、所定のフェニレンジアミンと、キノリン系老化防止剤と、シリカと、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドを併用することで、優れた低発熱性、耐老化性、及び耐オゾン性を両立できた。
【0061】
表5に示すように、比較例5-1と比較例5-2との対比より、シリカを配合することにより、低発熱性が向上するものの、耐老化性や耐オゾン性が悪化することがわかった。また、比較例5-4は、アルキル基の炭素数が6以下のフェニレンジアミンと、所定のフェニレンジアミンと、キノリン系老化防止剤とを併用した例であり、耐老化性、及び耐オゾン性が劣っていた。
【0062】
一方、実施例5-1~実施例5-7は、所定のフェニレンジアミンと、キノリン系老化防止剤と、シリカと、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドを併用することで、優れた低発熱性、耐老化性、及び耐オゾン性を両立できた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のゴム組成物は、乗用車、ライトトラック・バス等の各種タイヤ用ゴム組成物に用いることができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムと、フィラーと、下記式(1)で表されるフェニレンジアミンと、キノリン系老化防止剤と、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドとを含有し、
フィラー総量中のシリカの含有割合が70質量%以下であり、
N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(IPPD)とN-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)は含まない、ゴム組成物。
【化1】
式(1)におけるR,Rは、炭素数が7以上のアルキル基又はアリール基であって、少なくとも一方が炭素数7以上のアルキル基である。
【請求項2】
ジエン系ゴムと、フィラーと、下記式(1)で表されるフェニレンジアミンと、キノリン系老化防止剤と、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドとを含有し、
フィラー総量中のシリカの含有割合が70質量%以下であり、
N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(IPPD)とN-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)は含まない、ゴム組成物。
【化2】
式(1)におけるR ,R は、炭素数が7~20のアルキル基又はフェニル基であって、少なくとも一方が炭素数7~20のアルキル基である。
【請求項3】
ジエン系ゴムと、
フィラーと、
N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(77PD)、N-フェニル-N’-(1-メチルヘプチル)-p-フェニレンジアミン(8PPD)、及びN-フェニル-N’-(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(7PPD)からなる群から選択される少なくとも1種のフェニレンジアミンと、
キノリン系老化防止剤と、
N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドと、を含有し、
フィラー総量中のシリカの含有割合が70質量%以下であり、
N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(IPPD)とN-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)は含まない、ゴム組成物。
【請求項4】
前記シリカは、BET比表面積が50~250m/gであるシリカを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物をサイドウォールに用いた、空気入りタイヤ。