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  • 特開-トルクセンサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031356
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】トルクセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/14 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
G01L3/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134862
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000105659
【氏名又は名称】ニデックコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 純一
(57)【要約】
【課題】 限られたスペースで変位を検出し、トルクの検出精度を向上させたトルクセンサを提供することにある。
【解決手段】 トルクセンサ1は、輪状に形成される第1構造体11と、第1構造体11より小さい輪状に形成され、第1構造体11の内周側に配置される第2構造体12と、第1構造体11に設けられ、第2構造体12に向かって突き出るように設けられた突起部14と、第2構造体12に設けられ、トルクMzの印加により第1構造体11が第2構造体12に対して相対的に回転することで、突起部14と接触することにより変化する2つの部材の距離を示す物理量を検出するセンサ2と、センサ2により検出された物理量に基づいて、トルクMzを検出するトルク検出手段とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
輪状に形成される第1構造体と、
前記第1構造体より小さい輪状に形成され、前記第1構造体の内周側に配置される第2構造体と、
前記第1構造体に設けられ、前記第2構造体に向かって突き出るように設けられた突起部と、
前記第2構造体に設けられ、トルクの印加により前記第1構造体が前記第2構造体に対して相対的に回転することで、前記突起部と接触することにより変化する2つの部材の距離を示す物理量を検出するセンサと、
前記センサにより検出された物理量に基づいて、前記トルクを検出するトルク検出手段と
を備えることを特徴とするトルクセンサ。
【請求項2】
輪状に形成される第1構造体と、
前記第1構造体より小さい輪状に形成され、前記第1構造体の内周側に配置される第2構造体と、
前記第2構造体に設けられ、前記第1構造体に向かって突き出るように設けられた突起部と、
前記第1構造体に設けられ、トルクの印加により前記第1構造体が前記第2構造体に対して相対的に回転することで、前記突起部と接触することにより変化する2つの部材の距離を示す物理量を検出するセンサと、
前記センサにより検出された物理量に基づいて、前記トルクを検出するトルク検出手段と
を備えることを特徴とするトルクセンサ。
【請求項3】
回転方向が互いに異なる2つのトルクを別々に検出するための2つの前記センサが設けられこと
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトルクセンサ。
【請求項4】
前記センサは、前記2つの部材の距離を示す静電容量を検出すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトルクセンサ。
【請求項5】
前記センサは、前記2つの部材の距離を光学的に検出すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトルクセンサ。
【請求項6】
前記センサは、前記2つの部材の距離を磁気的に検出すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトルクセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、トルクセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、変形体の弾性変形に基づいて、トルクを検出するトルクセンサが知られている。例えば、変形体の弾性変形を生じる変形部に梁を設け、梁の変位を測定することで、トルクを検出するトルクセンサが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-200259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、弾性変形による変位を測定して、トルクを検出する場合、変位が生じるスペースが構造により限定されることが多い。このため、限定されたスペースで測定される変位の大きさも制限され、トルクの検出精度を十分に出せないことがある。
本実施形態の目的は、限られたスペースで変位を検出し、トルクの検出精度を向上させたトルクセンサを提供することにある。
【発明の効果】
【0005】
本実施形態によれば、限られたスペースで変位を検出し、トルクの検出精度を向上させたトルクセンサを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態のトルクセンサは、輪状に形成される第1構造体と、前記第1構造体より小さい輪状に形成され、前記第1構造体の内周側に配置される第2構造体と、前記第1構造体に設けられ、前記第2構造体に向かって突き出るように設けられた突起部と、前記第2構造体に設けられ、トルクの印加により前記第1構造体が前記第2構造体に対して相対的に回転することで、前記突起部と接触することにより変化する2つの部材の距離を示す物理量を検出するセンサと、前記センサにより検出された物理量に基づいて、前記トルクを検出するトルク検出手段とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1実施形態に係るトルクセンサの構成を示す上面図。
図2】第1実施形態に係る演算処理部の構成を示す構成図。
図3】第1実施形態に係るトルクセンサによるトルクの検出方法を示す状態図。
図4】本発明の第2実施形態に係るトルクセンサの構成を示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るトルクセンサ1の構成を示す上面図である。なお、図面における同一部分には同一符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0009】
トルクセンサ1は、トルクMzを検出するセンサである。トルクMzは、図1に示すz軸(回転軸方向)のモーメントである。ここで、x軸、y軸及びz軸は、互いに直交する。なお、トルクセンサ1は、ここで説明するものに限らず、様々な形状又は構成に変更してよい。また、トルクセンサ1は、少なくともトルク(z軸モーメント)Mzを検出するセンサであれば、どのような名称のセンサでもよい。
【0010】
トルクセンサ1は、第1構造体11、第2構造体12、複数の第3構造体13、突起部14、及び、2つの変位センサ2を備える。
【0011】
上述の構成の他に、トルクセンサ1は、例えば、演算処理部3、及び、変位センサ2と演算処理部3を電気的に接続するフレキシブル基板(FPC, Flexible printed circuits)等の配線を備える。また、第2構造体12の中心部分に位置する中空部には、ケースが設けられてもよい。例えば、ケースには、演算処理部3及び電源ケーブル等が収納される。
【0012】
第1構造体11、第2構造体12、及び、第3構造体13は、弾性体として一体形成される。第1構造体11及び第2構造体12は、いずれも輪状に形成され、同心円状に配置される。第2構造体12の径は、第1構造体11の径より小さく、第2構造体12は、第1構造体11の内側(中心側)に配置される。したがって、第1構造体11と第2構造体12との間には、輪状の空間が形成される。
【0013】
第3構造体13は、第1構造体11と第2構造体12の間の輪状の空間において、円周方向に等間隔で放射状(径方向)に配置され、第1構造体11と第2構造体12を接続する梁としての役割を有する。ここでは、4つの第3構造体13が90度で等間隔に設けられたが、第3構造体13は、いくつ設けられてもよいし、どのような間隔で設けられてもよい。
【0014】
例えば、第1構造体11は、トルクMzが印加される被測定対象の構造体に連結され、第2構造体12は、トルクMzを印加する側の構造体に連結される。トルクMzにより、第1構造体11と第2構造体12が相対的に回転する。なお、第1構造体11がトルクMzを印加する側の構造体に連結され、第2構造体12が被測定対象の構造体に連結されてもよい。
【0015】
例えば、第1構造体11、第2構造体12、及び、第3構造体13の材質は、ステンレス鋼等の金属であるが、印加される力に対して機械的に十分な強度があれば、金属以外の材料(樹脂等)を使用してもよい。
【0016】
突起部14は、第2構造体12に向かって突き出るように、第1構造体11の内周側に設けられる。突起部14は、棒形状である。例えば、突起部14の長手方向の中心線は、トルクMzの回転中心を通る。突起部14の先端は、第2構造体12に設けられた2つの変位センサ2の間で、2つの変位センサ2に接触するように位置する。例えば、突起部14の先端は、変位センサ2と滑らかに接触するように、曲面状に形成される。なお、突起部14は、ここで説明するものに限らず、どのような形状又は配置にしてもよい。
【0017】
2つの変位センサ2は、突起部14の先端の位置が2つの変位センサ2の間に位置するように、第2構造体12の外周側に設けられる。2つの変位センサ2は、突起部14の先端を中心として、左右対称に配置される。2つの変位センサ2は、1つが時計回りのトルクMzを検出し、もう1つが反時計回りのトルクMzを検出する。
【0018】
なお、トルクセンサ1は、いくつの変位センサ2を備えてもよい。トルクセンサ1は、1つの変位センサ2を備え、1つの回転方向のトルクMzのみ検出してもよい。また、トルクセンサ1は、1つの回転方向のトルクMzを検出する複数の変位センサ2が設けられてもよい。この場合、複数の変位センサ2の検出結果(例えば、複数の変位値の平均値)に基づいて、トルクMzを検出してもよいし、複数の変位センサ2のうち1つの変位センサ2の検出結果に基づいて、トルクMzを検出してもよい。また、複数の変位センサ2は、どのように配置されてもよい。例えば、2つの第3構造体13で仕切られる空間毎に、1つ以上の変位センサ2が設けられてもよい。
【0019】
変位センサ2は、基準部21及び変形部22を備える。基準部21及び変形部22は、それぞれ板形状の部材である。変位センサ2は、基準部21と変形部22との間の距離の変化量に基づいて、トルクMzを検出する。トルクMzが印加されていない状態では、2つの変位センサ2のそれぞれの変形部22は、突起部14の先端と接触している。2つの変位センサ2のそれぞれの基準部21は、変形部22に対して突起部14と反対側の位置に設けられ、それぞれ対応する変形部22と板形状の最も面積の広い幅広の面同士が対向するように配置される。
【0020】
トルクMzが印加されると、突起部14が設けられた第1構造体11が第2構造体12に対して相対的に回転し、突起部14の先端が一方の変位センサ2の変形部22に押し付けられ、変形部22が変形する。これに対して、基準部21は、トルクMzが印加されても、変形はせず、第2構造体12における位置も変わらない。トルクMzの印加により、変形部22が変形することで、基準部21と変形部22との間の距離が変化する。
【0021】
例えば、変位センサ2は、静電容量式のセンサである。基準部21及び変形部22は、電気的導電性を有する導体である。基準部21は、変形部22と電気的に接続される。基準部21と変形部22との間の距離が変化することで、基準部21と変形部22との間の静電容量が変化する。トルクセンサ1は、変位センサ2により測定された静電容量の変化量に基づいて、トルクMzを検出する。
【0022】
ここでは、変位センサ2は、静電容量式を採用したものを説明したが、基準部21と変形部22との間の距離の変化量を示す物理量が測定できれば、どのような方式のセンサを用いてもよい。例えば、変位センサ2は、光学式又は磁気式を採用してもよい。また、測定方式を変更する場合、変更した測定方式に対応して、変位センサ2の実装方法を変更することができる。例えば、光学式センサを採用する場合、基準部21と変形部22の間の距離を光学的に測定するための発光素子及び受光素子を設けてもよい。また、磁気式センサを採用する場合、磁気的に測定するための測定端子を基準部21又は変形部22のいずれか一方に取り付けてもよい。
【0023】
なお、変位センサ2は、ここで説明するものに限らず、どのような構成又は配置にしてもよい。例えば、変位センサ2は、基準部21に相当する部材が、トルクMzの印加により変形してもよい。また、変位センサ2が変位を検出できれば、基準部21及び変形部22は、板形状でなくてもよい。
【0024】
図2は、本実施形態に係る演算処理部3の構成を示す構成図である。
演算処理部3は、マイクロコンピュータ等のコンピュータである。演算処理部3は、プログラム等により実行される演算処理により、各種機能を実現する。演算処理部3は、トルク演算部31を備える。
【0025】
トルク演算部31には、変位センサ2により検出された検出信号Sdが入力される。検出信号Sdは、基準部21と変形部22の間の距離を示す静電容量を検出した電気信号である。トルク演算部31は、検出した静電容量に基づいて、トルクMzを演算する。即ち、トルク演算部31は、基準部21と変形部22の間の距離に基づいて、トルクMzを求める。トルク演算部31により演算されたトルクMzは、トルクセンサ1による検出結果として、出力される。
【0026】
図3を参照して、本実施形態に係るトルクセンサ1によるトルクMzの検出方法について説明する。ここでは、時計回りに印加されるトルクMzを、一方の変位センサ2により検出する方法について説明するが、反時計回りに印加されるトルクMzを、もう一方の変位センサ2により検出する方法についても同様である。
【0027】
実線で示す突起部14は、トルクMzが印加される前の初期状態を示す。点線で示す突起部14は、トルクMzが印加された後の状態を示す。実線で示す変形部22は、トルクMzが印加される前の初期状態を示す。点線で示す変形部22は、トルクMzが印加された後の状態を示す。また、突起部14の幅方向の中心を通る中心線L1は、突起部14の傾きを表すものとする。
【0028】
初期状態では、突起部14の先端は、変位センサ2の変形部22と僅かに接触している。トルクMzが印加されると、第1構造体11に固定された突起部14が第2構造体12に対して相対的に回転する。これにより、突起部14は、角度θ傾く。
【0029】
突起部14が傾くと、突起部14に接触している変形部22は、突起部14に押されて、変位センサ2の基準部21に近づくように変形する。これにより、基準部21と変形部22の距離が変化する。具体的には、トルクMzの印加前後で、基準部21と変形部22の距離は、距離d1から距離d2に縮まる。したがって、基準部21と変形部22の距離が縮まることで、基準部21と変形部22の間の静電容量が増加する。
【0030】
このことから、トルクMzが強いほど、基準部21と変形部22の距離が縮まることで、変位センサ2により検出される静電容量が増加する。このようにして、変位センサ2により検出される静電容量に基づいて、トルクMzを測定することができる。
【0031】
本実施形態によれば、第1構造体11に突起部14を設け、第2構造体12に変位センサ2を設け、トルクMzが生じる回転により突起部14が移動することで、変位センサ2が変位を検出する。これにより、トルクセンサ1は、変位センサ2により検出された変位に基づいて、トルクMzを検出することができる。したがって、トルクセンサ1は、第1構造体11と第2構造体12の間の限られたスペースで、変位センサ2により変位を検出することで、変位トルクMzの検出精度を高くすることができる。
【0032】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態に係るトルクセンサ1Aの構成を示す上面図である。
【0033】
トルクセンサ1Aは、図1に示す第1実施形態に係るトルクセンサ1において、突起部14及び2つの変位センサ2の代わりに、突起部14A及び2つの変位センサ2Aを設けたものである。その他の点は、第1実施形態に係るトルクセンサ1と同様である。
【0034】
突起部14Aは、第1構造体11に向かって突き出るように、第2構造体12の外周側に設けられる。その他の点については、突起部14Aは、第1実施形態に係る突起部14と同様である。
【0035】
2つの変位センサ2Aは、突起部14Aの先端の位置が2つの変位センサ2Aの間に位置するように、第1構造体11の内周側に設けられる。その他の点については、変位センサ2Aは、第1実施形態に係る2つの変位センサ2Aと同様である。
【0036】
本実施形態によれば、突起部14Aを第2構造体12に設け、変位センサ2Aを第1構造体11に設けることで、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0037】
なお、追加の利点及び修正について当業者により容易に生じることがある。したがって、そのより広い態様における本発明は、本明細書に示して説明される特定の詳細で代表的な実施形態に限定されない。したがって、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物により定義される一般的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な修正を行うことができる。
【符号の説明】
【0038】
1…トルクセンサ、2…変位センサ、3…演算処理部、11…第1構造体、12…第2構造体、13…第3構造体、14…突起部。
図1
図2
図3
図4