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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031362
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】印刷装置、及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134872
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】林 拓馬
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA06
2C056EA08
2C056EB07
2C056EB13
2C056EB27
2C056EB29
2C056EB30
2C056EB31
2C056EB45
2C056EC70
2C056EC72
2C056EC75
2C056EC79
2C056ED01
2C056ED05
2C056ED10
2C056EE17
2C056EE18
2C056FA03
2C056FA04
2C056FA13
2C056HA22
(57)【要約】
【課題】印刷後の媒体に搬送方向に沿った筋や色ムラが生じることを抑制する。
【解決手段】本発明の一態様にかかる印刷装置1は印刷ヘッド10と制御部30とを備える。印刷ヘッド10は、相対移動方向におけるノズル列23Yとノズル列23Cとの距離が距離D1であるノズル領域NA1と、相対移動方向におけるノズル列23Yとノズル列23Cとの距離が、距離D1よりも長い距離D2であるノズル領域NA2と、を有する。ノズル領域NA1のノズルから吐出させる複数のインク滴の大きさの比率を第1比率とし、ノズル領域NA2のノズルから吐出させる複数のインク滴の大きさの比率を第2比率とした場合、制御部30は、第2比率における最大サイズ以外の大きさのインク滴の割合が、第1比率における最大サイズ以外の大きさのインク滴の割合よりも小さい第1印刷を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク滴を媒体に吐出可能なノズルを複数有し、当該ノズルがノズル列方向に複数配列されたノズル列を複数有する印刷ヘッドと、
前記ノズルからの前記インク滴の吐出を制御する制御部と、を備え、
前記ノズル列方向とは異なる相対移動方向へ前記印刷ヘッドと前記媒体とが相対移動する印刷装置であって、
前記印刷ヘッドは、それぞれ異なるインク滴を吐出する第1ノズル列および第2ノズル列を有し、
前記第1ノズル列および前記第2ノズル列の数はそれぞれ2以上であり、
前記相対移動方向に沿った同一ライン上にインク滴を吐出する複数の前記ノズル列は、前記相対移動方向における前記第1ノズル列と前記第2ノズル列との距離が第1距離である第1ノズル領域と、前記相対移動方向における前記第1ノズル列と前記第2ノズル列との距離が、前記第1距離よりも長い第2距離である第2ノズル領域と、を有し、
前記ノズルは、複数の大きさのインク滴を吐出することで、前記媒体上に複数の大きさのドットを形成可能であり、
前記第1ノズル領域のノズルから吐出させる複数のインク滴の大きさの比率を第1比率とし、前記第2ノズル領域のノズルから吐出させる複数のインク滴の大きさの比率を第2比率とした場合、前記制御部は、前記第2比率における最大サイズ以外の大きさのインク滴の割合が、前記第1比率における前記最大サイズ以外の大きさのインク滴の割合よりも小さい第1印刷を実行することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記第2比率は、前記第1比率と比較して、前記複数の大きさのインク滴の内、最も小さいインク滴の使用率が小さいことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記インク滴が滲みやすい媒体への印刷時に前記第1印刷を実行することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
複数の異なる印刷モードを備え、
前記制御部は、前記第1ノズル領域の前記第1比率と前記第2ノズル領域の前記第2比率とに差異がない第2印刷を実行可能であり、
前記印刷モードに応じて、前記第1印刷あるいは前記第2印刷を実行することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記印刷モードが高画質の印刷モードである場合、前記第1印刷を実行する請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記印刷装置の周辺の環境情報を取得可能な環境情報取得部を更に備え、
前記制御部は、前記第1ノズル領域の前記第1比率と前記第2ノズル領域の前記第2比率とに差異がない第2印刷を実行可能であり、
前記環境情報に応じて、前記第1印刷または前記第2印刷を実行することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記環境情報取得部は、前記環境情報として温度および湿度の少なくとも一つを取得可能に構成されており、
前記制御部は、前記環境情報取得部で取得した前記温度および前記湿度の少なくとも一つに応じて、前記第1印刷または前記第2印刷を実行することを特徴とする請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1ノズル領域の前記第1比率と前記第2ノズル領域の前記第2比率とに差異がない第2印刷を実行可能であり、
前記印刷ヘッドは、前記第1ノズル列および前記第2ノズル列と異なるインク滴を吐出する第3ノズル列を有し、
前記相対移動方向における前記第2ノズル列と前記第3ノズル列との間の距離は一定であり、
前記第2ノズル列と前記第3ノズル列とによって印刷が行われる領域は、前記第2ノズル領域によって印刷が行われる領域と比較して、前記最大サイズ以外の大きさのインク滴の吐出割合の上限が高いことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項9】
インク滴を媒体に吐出可能なノズルを複数有し、当該ノズルがノズル列方向に複数配列されたノズル列を複数有する印刷ヘッドを備え、
前記ノズル列方向とは異なる相対移動方向へ前記印刷ヘッドと前記媒体とが相対移動する印刷装置を用いた印刷方法であって、
前記印刷ヘッドは、それぞれ異なる前記インク滴を吐出する第1ノズル列および第2ノズル列を有し、
前記第1ノズル列および前記第2ノズル列の数はそれぞれ2以上であり、
前記相対移動方向に沿った同一ライン上にインク滴を吐出する複数の前記ノズル列は、前記相対移動方向における前記第1ノズル列と前記第2ノズル列との距離が第1距離である第1ノズル領域と、前記相対移動方向における前記第1ノズル列と前記第2ノズル列との距離が、前記第1距離よりも長い第2距離である第2ノズル領域と、を有し、
前記ノズルは、複数の大きさのインク滴を吐出することで前記媒体上に複数の大きさのドットを形成可能であり、
前記第1ノズル領域のノズルから吐出させる複数のインク滴の大きさの比率を第1比率とし、前記第2ノズル領域のノズルから吐出させる複数のインク滴の大きさの比率を第2比率とした場合、前記第2比率における最大サイズ以外の大きさのインク滴の割合が、前記第1比率における前記最大サイズ以外の大きさのインク滴の割合よりも小さい比率での印刷である第1印刷工程を行うことを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷装置、及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置の一つであるインクジェットプリンターは、印刷ヘッドに設けられた複数のノズルから紙などの媒体にインク滴を吐出して媒体上に画像を形成する。具体的には、印刷ヘッドはノズル列方向に配置された複数のノズルを備え、ノズル列方向とは異なる相対移動方向へ媒体を搬送しつつ、印刷ヘッドのノズルから媒体に向かってインク滴を吐出することで媒体に画像を形成する。
【0003】
特許文献1には、媒体の搬送方向と交差する幅方向全体にノズルを配置したラインヘッド型のインクジェットプリンターに関する技術が開示されている。以下、ラインヘッド型のインクジェットプリンターをラインプリンターとも記載する。
【0004】
特許文献1に開示されているラインプリンターでは、1つのヘッドチップにシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)のノズル列が2行2列に配置されている。具体的には、Cのノズル列とYのノズル列とがノズルの並び方向へ並べられており、Mのノズル列とKのノズル列とがノズルの並び方向へ並べられている。そして、このようなヘッドチップを媒体の幅方向に複数並べて印刷ヘッドを構成している。
【0005】
また、このように媒体の幅方向に複数のヘッドチップを並べた場合は、各々のヘッドチップ間にノズルが存在しない領域が形成される。このため、ヘッドチップを媒体の幅方向に複数並べるとともに、搬送方向においてもヘッドチップを複数並べて、搬送方向においてヘッドチップがオーバーラップするように印刷ヘッドを構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-40215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ヘッドチップが搬送方向においてオーバーラップするように印刷ヘッドを構成した場合は、2つのノズル列から吐出させたインク滴により二次色を形成する際に、搬送方向に沿った筋や色ムラが生じることがある。
【0008】
すなわち、二次色を形成する場合は、搬送方向に沿った同一ライン上において異なるノズル列から異なる色のインク滴を吐出する。このとき、搬送方向に沿った同一ライン上において、一定のノズル列間距離となる組み合わせと、異なるノズル列間距離となる組み合わせとが存在する。
【0009】
例えば、搬送方向においてノズル列間距離が長い場合は、最初のインク滴が着弾した後、乾くまでに時間があるため、次のインク滴が着弾しても良好な発色を呈する。一方、搬送方向において、ノズル列間距離が短い場合は、最初のインク滴が着弾した後、最初のインク滴が乾燥する前に次のインク滴が着弾するので、インク滴同士が干渉して滲むため良好な発色が得られない。このように、搬送方向におけるノズル列間距離によって発色に差があるので、この発色の差が筋や色ムラとして視認されてしまう。
【0010】
特許文献1に開示されている技術では、二次色を形成する際のヘッド列の組み合わせが、ノズル列間距離が異なる組み合わせとなる場合は、媒体上において最初のインク滴と次のインク滴とが干渉しないようにしている。すなわち、媒体上においてインク滴同士が重複する割合を少なくすることで、発色に差が生じることを抑制している。しかしながら、インク滴同士が干渉しないようにして色ムラを抑制する構成では、印字Dutyが増加した場合、つまり、吐出するインク量が増加した場合に対応できないという問題がある。このため、筋や色ムラを抑制するための他の技術が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様にかかる印刷装置は、インク滴を媒体に吐出可能なノズルを複数有し、当該ノズルがノズル列方向に複数配列されたノズル列を複数有する印刷ヘッドと、前記ノズルからの前記インク滴の吐出を制御する制御部と、を備え、前記ノズル列方向とは異なる相対移動方向へ前記印刷ヘッドと前記媒体とが相対移動する印刷装置であって、前記印刷ヘッドは、それぞれ異なるインク滴を吐出する第1ノズル列および第2ノズル列を有し、前記第1ノズル列および前記第2ノズル列の数はそれぞれ2以上であり、前記相対移動方向に沿った同一ライン上にインク滴を吐出する複数の前記ノズル列は、前記相対移動方向における前記第1ノズル列と前記第2ノズル列との距離が第1距離である第1ノズル領域と、前記相対移動方向における前記第1ノズル列と前記第2ノズル列との距離が、前記第1距離よりも長い第2距離である第2ノズル領域と、を有し、前記ノズルは、複数の大きさのインク滴を吐出することで、前記媒体上に複数の大きさのドットを形成可能であり、前記第1ノズル領域のノズルから吐出させる複数のインク滴の大きさの比率を第1比率とし、前記第2ノズル領域のノズルから吐出させる複数のインク滴の大きさの比率を第2比率とした場合、前記制御部は、前記第2比率における最大サイズ以外の大きさのインク滴の割合が、前記第1比率における前記最大サイズ以外の大きさのインク滴の割合よりも小さい第1印刷を実行することを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様にかかる印刷方法は、インク滴を媒体に吐出可能なノズルを複数有し、当該ノズルがノズル列方向に複数配列されたノズル列を複数有する印刷ヘッドを備え、前記ノズル列方向とは異なる相対移動方向へ前記印刷ヘッドと前記媒体とが相対移動する印刷装置を用いた印刷方法であって、前記印刷ヘッドは、それぞれ異なる前記インク滴を吐出する第1ノズル列および第2ノズル列を有し、前記第1ノズル列および前記第2ノズル列の数はそれぞれ2以上であり、前記相対移動方向に沿った同一ライン上にインク滴を吐出する複数の前記ノズル列は、前記相対移動方向における前記第1ノズル列と前記第2ノズル列との距離が第1距離である第1ノズル領域と、前記相対移動方向における前記第1ノズル列と前記第2ノズル列との距離が、前記第1距離よりも長い第2距離である第2ノズル領域と、を有し、前記ノズルは、複数の大きさのインク滴を吐出することで前記媒体上に複数の大きさのドットを形成可能であり、前記第1ノズル領域のノズルから吐出させる複数のインク滴の大きさの比率を第1比率とし、前記第2ノズル領域のノズルから吐出させる複数のインク滴の大きさの比率を第2比率とした場合、前記第2比率における最大サイズ以外の大きさのインク滴の割合が、前記第1比率における前記最大サイズ以外の大きさのインク滴の割合よりも小さい比率での印刷である第1印刷工程を行うことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態にかかる印刷装置の一例を示すブロック図である。
図2】実施の形態にかかる印刷装置が備える印刷ヘッドの一例を示す模式図である。
図3】印刷ヘッドが備えるヘッドチップの一例を示す模式図である。
図4】ノズル列間距離が距離D1のノズル領域NA1において二次色を印刷する際の動作を説明するための図である。
図5】ノズル列間距離が距離D2のノズル領域NA2において二次色を印刷する際の動作を説明するための図である。
図6】ノズル列間距離および印刷モードに応じた各ドットサイズの使用率の上限を示す表である。
図7】入力画像色、インク色の組み合わせ、ノズル列間距離の関係を示す表である。
図8】打ち込み量と各サイズのドット発生率とを示すグラフである。
図9】実施の形態にかかる印刷装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、実施の形態にかかる印刷装置1の一例を示すブロック図である。図2は、実施の形態にかかる印刷装置1が備える印刷ヘッド10の一例を示す模式図である。図3は、印刷ヘッド10が備えるヘッドチップ21の一例を示す模式図である。なお、図2図3は、印刷ヘッド10およびヘッドチップ21を背面視した模式図であり、インク滴はZ軸プラス方向に吐出される。
【0015】
本実施の形態にかかる印刷装置1は典型的にはインクジェットプリンターであり、本明細書では一例としてラインプリンターの構成例を示している。なお、本実施の形態にかかる発明は、複写機、ファクシミリ、これらの機能を備えた複合機等、インクジェット技術を用いた装置に広く適用できる。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態にかかる印刷装置1は、印刷ヘッド10、制御部30、及び搬送機構40を備える。本実施の形態にかかる印刷装置1は、印刷ヘッド10に設けられたノズル22から媒体50にインク滴60を吐出して媒体50上に画像を形成する。媒体50は搬送機構40により搬送される。また、印刷ヘッド10が備える各ノズル22には、インク供給部13からインクが供給される。
【0017】
具体的には、図2に示すように、印刷ヘッド10は複数のヘッドチップ21a~21fを備える。複数のヘッドチップ21a~21fはX軸方向、つまり媒体50の幅方向に並ぶように配置されている。各々のヘッドチップ21a~21fは、ノズル列方向NDに配置された複数のノズル列23C、23M、23Y、23Kを備える。各々のノズル列23C、23M、23Y、23Kにはそれぞれ、複数のノズル22C、22M、22Y、22K(図3参照)が形成されている。複数のヘッドチップ21a~21fは、ノズル列方向NDに伸びるように設けられている。換言すると、複数のヘッドチップ21a~21fは、X軸方向に対して斜めになるように設けられている。
【0018】
本実施の形態にかかる印刷装置1では、ノズル列方向NDとは異なる相対移動方向(Y軸方向)へ印刷ヘッド10と媒体50とが相対移動することで、媒体50に画像が形成される。つまり、相対移動方向へ媒体50を搬送しつつ、印刷ヘッド10のノズル列23C、23M、23Y、23Kから媒体50に向かってインク滴60を吐出することで媒体に画像が形成される。なお、本明細書において「相対移動方向」は「搬送方向」と同義である。また、図2では媒体50の一部のみを図示している。
【0019】
図3に示すように、ヘッドチップ21は、4つのノズル列23C、23M、23Y、23Kを備える。4つのノズル列23C、23M、23Y、23Kは、2行2列に配置されている。具体的には、ノズル列23Cとノズル列23Yとがノズル列方向NDに並べられており、ノズル列23Mとノズル列23Kとがノズル列方向NDに並べられている。なお、本明細書では、ヘッドチップ21a~21fを総称してヘッドチップ21とも記載する。他の構成要素についても同様である。
【0020】
ノズル列23Cは、ノズル列方向NDに配置された複数のノズル22Cを有する。複数のノズル22Cは、各々独立にシアン(C)のインク滴を吐出可能に構成されている。ノズル列23Mは、ノズル列方向NDに配置された複数のノズル22Mを有する。複数のノズル22Mは、各々独立にマゼンタ(M)のインク滴を吐出可能に構成されている。ノズル列23Yは、ノズル列方向NDに配置された複数のノズル22Yを有する。複数のノズル22Yは、各々独立にイエロー(Y)のインク滴を吐出可能に構成されている。ノズル列23Kは、ノズル列方向NDに配置された複数のノズル22Kを有する。複数のノズル22Kは、各々独立にブラック(K)のインク滴を吐出可能に構成されている。各々のノズル22C、22M、22Y、22Kには、インク供給部13(図1参照)から各々の色のインクが供給される。
【0021】
また、図3に示すように、ヘッドチップ21は、ノズル列23Yとノズル列23Cとの間、及びノズル列23Kとノズル列23Mとの間に隙間25を備える。隙間25は、X軸方向に所定の距離伸びており、ノズル列23が形成されていない領域である。
【0022】
なお、図3では、1つのヘッドチップ21が4つのノズル列23C、23M、23Y、23Kを備える構成を示したが、本実施の形態では1つのヘッドチップが5つ以上のノズル列を備えていてもよい。例えば、ヘッドチップ21が更に、ライトシアン(Lc)、ライトマゼンタ(Lm)、ダークイエロー(Dy)、ライトブラック(Lk)、レッド(R)、オレンジ(Or)、グリーン(G)、画質向上用の無着色インクなどを吐出するノズル列を備えていてもよい。また、1つのノズル列23が備えるノズルの数も任意の数とすることができる。
【0023】
本実施の形態では、図3に示したヘッドチップ21をX軸方向に複数並べることで、図2に示した印刷ヘッド10を構成できる。また、複数のヘッドチップ21a~21fを備える印刷ヘッド10をX軸方向に更に複数設けることで、媒体50の幅方向全体にノズル列が配置されたラインヘッドを構成できる。なお、図2に示した構成例では、1つの印刷ヘッド10に6つのヘッドチップ21a~21fを設けた構成例を示したが、1つの印刷ヘッド10に設けるヘッドチップ21の数は6つよりも少なくてもよく、また6つよりも多くてもよい。
【0024】
次に、図1を用いて本実施の形態にかかる印刷装置1のシステム構成について説明する。図1に示すように、本実施の形態にかかる印刷装置1は、印刷ヘッド10、制御部30、及び搬送機構40を備える。印刷ヘッド10は、駆動回路11、駆動素子12、及びノズル22を備える。制御部30は、解像度変換部31、色変換部32、ハーフトーン処理部33、吐出制御部34、印刷切替部35、搬送制御部36、及び環境情報取得部37を備える。制御部30は、例えばSoC(System on a Chip)等を用いて構成できる。
【0025】
制御部30が備える解像度変換部31は、供給された画像データの解像度を媒体50に印刷する際の印刷解像度に変換した入力色データを生成する。例えば印刷解像度は、720×720dpiや360×360dpi等である。供給された画像データは、例えば、各画素にRGBの256階調の整数値を有するRGBデータで表現される。入手した画像データがRGBデータでない場合、画像データをRGBデータに変換してもよい。
【0026】
色変換部32は、解像度変換部31で生成された入力色データに対して色変換処理を実施し、CMYKデータである出力色データを生成する。具体的には、色変換部32は、印刷解像度とされたRGBデータを画素毎にCMYKの256階調の整数値を有するCMYKデータに色変換する。
【0027】
ハーフトーン処理部33は、色変換された画像データである出力色データに基づいてハーフトーン処理を行う。ハーフトーン処理部33は、出力色データを構成する各画素の階調値(インク量データ)に対して、例えばディザ法、誤差拡散法、濃度パターン法などの所定のハーフトーン処理を行って階調値の階調数を減らし、印刷データを生成する。
【0028】
吐出制御部34は、ハーフトーン処理部33で生成された印刷データに基づいて、駆動素子12を制御するための制御信号を生成する。例えば、吐出制御部34は、印刷データに基づいて、印刷ヘッド10の駆動素子12に印加する電圧信号に対応した駆動信号を制御信号として生成する。吐出制御部34で生成された制御信号は、印刷ヘッド10の駆動回路11に供給される。
【0029】
印刷切替部35は、印刷装置1の印刷を、後述する第1印刷あるいは第2印刷に切り替える。本実施の形態において吐出制御部34は、印刷切替部35から供給された印刷信号に応じて、ノズル22を制御するための制御信号を生成してもよい。
【0030】
搬送制御部36は、媒体50を相対移動方向に搬送するための搬送機構40を制御する。例えば搬送機構40は、ローラー等を用いて構成できる。
【0031】
また、本実施の形態において制御部30は、環境情報取得部37を備えていてもよい。環境情報取得部37は、印刷装置1が設置された場所の環境情報を取得する。例えば、環境情報は、印刷ヘッド10付近の温度や湿度等である。
【0032】
印刷ヘッド10が備える駆動回路11は、吐出制御部34から供給された制御信号に基づいて、駆動素子12に電圧信号を印加する。駆動素子12には、ノズル22に連通する圧力室内のインクに圧力を加える圧電素子、熱により圧力室内に気泡を発生させてノズル22からインク滴60を吐出させる気泡発生素子等を用いることができる。印刷ヘッド10の圧力室には、インク供給部13からインクが供給される。
【0033】
圧力室内のインクは、駆動素子12によってノズル22から媒体50に向かってインク滴60として吐出され、媒体50にインク滴60のドットが形成される。このように、制御部30は、相対移動方向へ媒体50を搬送しつつ、印刷ヘッド10のノズル22から媒体50に向かってインク滴60を吐出することで媒体50に画像を形成できる。
【0034】
本実施の形態にかかる印刷装置1では、図2に示すように、複数のヘッドチップ21a~21fをX軸方向に並ぶように配置して印刷ヘッド10を構成している。このとき、各々のヘッドチップ21a~21fは、相対移動方向(Y軸方向)において互いにオーバーラップするように配置されている。また、各々のヘッドチップ21a~21fは、ノズル列23Yとノズル列23Cとの間、及びノズル列23Kとノズル列23Mとの間に隙間25を備える。
【0035】
このため、相対移動方向(Y軸方向)に沿った同一ライン上において、各々のノズル列が、異なるノズル列間距離となる組み合わせが存在する。例えば、イエロー(Y)とシアン(C)の組み合わせは、異なるノズル列間距離となる組み合わせとなる。すなわち、イエロー(Y)とシアン(C)の組み合わせの場合は、相対移動方向におけるイエロー(Y)のノズル列23Y(第1ノズル列)とシアン(C)のノズル列23C(第2ノズル列)との距離が距離D1であるノズル領域NA1と、相対移動方向におけるイエロー(Y)のノズル列23Yとシアン(C)のノズル列23Cとの距離が距離D2であるノズル領域NA2と、が存在する。このとき、ノズル領域NA2(第2ノズル領域)におけるノズル列間距離D2(第2距離)は、ノズル領域NA1(第1ノズル領域)におけるノズル列間距離D1(第1距離)よりも長い距離となる。
【0036】
このため、イエロー(Y)とシアン(C)の二次色であるグリーン(G)を媒体50に印刷する際は、ノズル列間距離が距離D1であるノズル領域NA1により印刷される領域M1と、ノズル列間距離が距離D2であるノズル領域NA2により印刷される領域M2とが、媒体50上に形成される。ノズル領域NA1とノズル領域NA2とではノズル列間距離D1、D2が異なるので、最初のインク滴60が媒体50に着弾した後、次のインク滴60が媒体50に着弾するまでの時間が異なる。
【0037】
図4は、ノズル列間距離が距離D1のノズル領域NA1において二次色を印刷する際の動作を説明するための図である。図4の上図に示すように、二次色であるグリーン(G)を媒体50に印刷する際は、まずノズル22Yからイエローのインク滴60Yを吐出し、媒体50上にインク滴60Yのドットを形成する。その後、相対移動方向(Y軸方向)に媒体50が距離D1移動した後、図4の下図に示すように、ノズル22Cからシアンのインク滴60Cを吐出して、媒体50上にシアンのインク滴60Cのドットを形成する。このとき、最初のインク滴60Yが媒体50に着弾した後、次のインク滴60Cが媒体50に着弾するまでの時間は、ノズル列間距離D1に対応した時間となる。
【0038】
図5は、ノズル列間距離が距離D2のノズル領域NA2において二次色を印刷する際の動作を説明するための図である。図5の上図に示すように、二次色であるグリーン(G)を媒体50に印刷する際は、まずノズル22Yからイエローのインク滴60Yを吐出し、媒体50上にインク滴60Yのドットを形成する。その後、相対移動方向(Y軸方向)に媒体50が距離D2移動した後、図5の下図に示すように、ノズル22Cからシアンのインク滴60Cを吐出して、媒体50上にシアンのインク滴60Cのドットを形成する。このとき、最初のインク滴60Yが媒体50に着弾した後、次のインク滴60Cが媒体50に着弾するまでの時間は、ノズル列間距離D2に対応した時間となる。
【0039】
このように、ノズル領域NA1とノズル領域NA2とではノズル列間距離D1、D2が異なるので、最初のインク滴60Yが媒体50に着弾した後、次のインク滴60Cが媒体50に着弾するまでの時間が異なる。つまり、ノズル列間距離D2はノズル列間距離D1よりも長いため、ノズル領域NA2ではノズル領域NA1よりも、最初のインク滴60Yが媒体50に着弾した後、次のインク滴60Cが媒体50に着弾するまでの時間が長くなる。このため、従来では、媒体50に相対移動方向に沿った筋や色ムラが生じる場合があった。
【0040】
すなわち、ノズル領域NA2ではノズル列間距離D2が長いので、最初のインク滴60Yが着弾した後、乾くまでに時間があり、次のインク滴60Cが着弾しても良好な発色を呈する。一方、ノズル領域NA1ではノズル列間距離D1が短いので、最初のインク滴が着弾した後、最初のインク滴が乾燥する前に次のインク滴が着弾するので、インク滴同士が干渉して滲むため発色が抑えられる。このように、相対移動方向におけるノズル列間距離D1、D2によって発色に差があるので、この発色の差が筋や色ムラとして視認されてしまう場合があった。つまり、ノズル領域NA1では発色が良好なのでノズル領域NA2よりも色が濃くなり、暗く筋が入る場合があった。
【0041】
本実施の形態にかかる印刷装置1は、このような問題を解決するために、以下のような構成としている。つまり、本実施の形態にかかる印刷装置1において、各々のノズル22は、複数の大きさのインク滴を吐出可能に構成されている。換言すると、印刷装置1は、媒体50上に複数の大きさのドットを形成可能に構成されている。
【0042】
また、ノズル領域NA1のノズル22から吐出させる複数のインク滴の大きさの比率を第1比率とし、ノズル領域NA2のノズル22から吐出させる複数のインク滴の大きさの比率を第2比率とする。本実施の形態において制御部30は、第2比率における最大サイズ以外の大きさのインク滴の割合が、第1比率における最大サイズ以外の大きさのインク滴の割合よりも小さくなるような印刷(第1印刷)を実行可能に構成されている。換言すると、第2比率では、第1比率と比較して、複数の大きさのインク滴の内、最も小さいインク滴の使用率が小さくなるようにしている。
【0043】
例えば、ノズル22から吐出されるインク滴の種類が大インク滴と小インク滴の2種類の場合、「第1比率における最大サイズ以外の大きさのインク滴の割合」は、「小インク滴の割合」を意味する。また、ノズル22から吐出されるインク滴の種類が大インク滴、中インク滴、小インク滴の3種類の場合、「第1比率における最大サイズ以外の大きさのインク滴の割合」は、「小インク滴と中インク滴の割合」を意味する。第2比率についても同様である。
【0044】
図6は、ノズル列間距離および第1印刷あるいは第2印刷に応じた各ドットサイズの使用率の上限を示す表である。例えば、各々のノズル22が小インク滴と大インク滴の2種類のインク滴を吐出可能な場合、媒体50上には小ドットと大ドットが形成される。なお、本明細書では、ノズル22から吐出されるインクを「小インク滴」、「大インク滴」と表現し、これらのインク滴が媒体50に形成したドットを「小ドット」、「大ドット」と表現しているが、これらは実質的に同じ意味である。
【0045】
図6の第1印刷に示すように、ノズル列間距離D1のノズル22、すなわちノズル領域NA1のノズル22から吐出させる複数のインク滴の大きさの比率(第1比率)は、小ドット=50%、大ドット=100%とする。ここで、「小ドット=50%」は小ドットの使用率の最大値を示しており、「大ドット=100%」は大ドットの使用率の最大値を示している。この場合、「第1比率における最大サイズ以外の大きさのインク滴の割合」は、「小インク滴の使用率の最大値=50%」となる。
【0046】
同様に、ノズル列間距離D2のノズル22、すなわちノズル領域NA2のノズル22から吐出させる複数のインク滴の大きさの比率(第2比率)は、小ドット=20%、大ドット=100%とする。この場合、「第2比率における最大サイズ以外の大きさのインク滴の割合」は、「小インク滴の使用率の最大値=20%」となる。
【0047】
このように本実施の形態では、ノズル列間距離が距離D2のノズル領域NA2において、小ドットの使用率が低くなるように設定している。換言すると、ノズル列間距離D2が長いノズル領域NA2では、ノズル列間距離D1が短いノズル領域NA1と比べて、小ドットの使用率の最大値を低く設定している。更に換言すると、ノズル領域NA2のインク滴の大きさの比率である第2比率では、ノズル領域NA1のインク滴の大きさの比率である第1比率と比較して、複数の大きさのインク滴の内、最も小さいインク滴の使用率が小さくなるようにしている。
【0048】
ここで、小インク滴は液滴が小さいため、媒体50に着弾した後、小インク滴が媒体50に深く浸透することは少なく、また、液滴同士が滲んでしまうことも少ないため、媒体50の表面近くで定着・乾燥し、良好な発色を呈する。一方、大インク滴は液滴が大きいため、媒体50に着弾した後、大インク滴が媒体50に深く浸透し、また、液滴同士が滲んでしまうこともあるため、大インク滴は表面側から視認される発色が抑えられる傾向がある。このように、小インク滴は大インク滴と比べて発色がよいため、小インク滴の使用率を低くすると発色を抑えることができる。
【0049】
本実施の形態では、発色のよいノズル領域NA2、つまり、ノズル列間距離D2が長いノズル領域NA2において、小インク滴の使用率を低くすることで、ノズル領域NA2における発色を抑えている。これにより、媒体50上において、ノズル領域NA1により印刷される領域M1とノズル領域NA2により印刷される領域M2との発色の差を小さくでき、媒体50上に筋や色ムラが形成されることを抑制できる。
【0050】
また、特許文献1に開示されている技術では、媒体上においてインク滴同士が重複する割合を少なくすることで、発色に差が生じることを抑制していた。しかしながら、インク滴同士が干渉しないようにして色ムラを抑制する構成では、印字Dutyが増加した場合に対応できないという問題があった。
【0051】
これに対して本実施の形態では、発色のよいノズル領域NA2において、小インク滴の使用率を低くし、ノズル領域NA2における発色を抑えることで、媒体50上に筋や色ムラが形成されることを抑制している。したがって、印字Dutyが増加した場合であっても、媒体50上に筋や色ムラが形成されることを効果的に抑制できる。
【0052】
上述した第1印刷、すなわち、第2比率における最大サイズ以外の大きさのインク滴の割合が、第1比率における最大サイズ以外の大きさのインク滴の割合よりも小さくなるような印刷は、インク滴60が滲みやすい媒体50への印刷時に実行してもよい。インク滴60が滲みやすい媒体50とは、例えば普通紙などである。また、媒体50には、写真用紙、光沢紙、マット紙なども存在するが、これらの媒体50でも使用条件により滲みが発生する可能性がある場合は、上述の第1印刷を実行してもよい。
【0053】
また、本実施の形態では、相対移動方向(Y軸方向)に沿った同一ライン上において、各々のノズル列23が同一のノズル列間距離となる組み合わせが存在する。具体的には図2に示すように、相対移動方向に沿った同一ライン上において、マゼンタのノズル列23M(第3ノズル列)とシアンのノズル列23C(第2ノズル列)とのノズル列間距離は、距離D3で一定となる。マゼンタのノズル列23Mとシアンのノズル列23Cを用いた場合は二次色であるブルー(B)を印刷できる。この場合、ノズル列23Mとノズル列23Cとによって印刷が行われる領域は、上述のノズル領域NA2によって印刷が行われる領域と比較して、最大サイズ以外の大きさのインク滴の吐出割合の上限を高く設定してもよい。
【0054】
具体的には、図6の第1印刷に示すように、ノズル列間距離が距離D3の場合、小ドット=50%、大ドット=100%と設定してもよい。この場合、ノズル列間距離D3は小ドット=50%、ノズル列間距離D2は小ドット=20%となるので、最大サイズ以外の大きさのインク滴の吐出割合の上限の設定値は、ノズル列間距離D3において高く設定される。
【0055】
本実施の形態にかかる印刷装置1は、ノズル領域NA1のノズル22から吐出させる複数のインク滴の大きさの比率である第1比率と、ノズル領域NA2のノズル22から吐出させる複数のインク滴の大きさの比率である第2比率と、に差異がない印刷(第2印刷)を実行可能に構成されていてもよい。第2印刷を実行する際は、例えば、図6の第2印刷に示すように、ノズル列間距離D1~D3の全てにおいて、小ドット=50%、大ドット=100%のように設定してもよい。なお、図6に示した第1印刷および第2印刷における小ドットおよび大ドットの設定値は一例であり、本実施の形態ではこれら以外の設定値としてもよい。
【0056】
図7は、入力画像色、インク色の組み合わせ、ノズル列間距離の関係を示す表である。図7では、図2に示した構成を備える印刷ヘッド10を用いて、二次色であるレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)を印刷する際のインク色の組み合わせ、ノズル列間距離の関係をまとめている。
【0057】
入力画像色がレッド(R)の場合、インク色の組み合わせはイエロー(Y)とマゼンタ(M)となり、異なるノズル列間距離D1、D2の組み合わせが存在する。入力画像色がグリーン(G)の場合、インク色の組み合わせはイエロー(Y)とシアン(C)となり、異なるノズル列間距離D1、D2の組み合わせが存在する。入力画像色がブルー(B)の場合、インク色の組み合わせはイエロー(Y)とシアン(C)となる。この場合は、ノズル列間距離D3が一定となる。なお、図2に示した印刷ヘッド10の各色のノズル列23の配置が異なる場合は、各色のノズル列23の配置に応じて、ノズル列間距離が異なってくる。
【0058】
本実施の形態にかかる印刷装置1は、ユーザーが第1印刷と第2印刷のどちらを実行するかを指定可能なインターフェースを備えていてもよい。この場合は、ユーザーがインターフェースを用いて第1印刷あるいは第2印刷のどちらかを設定することで、印刷装置1は第1印刷または第2印刷を実行できる。インターフェースは、例えば、PCの画面に表示される設定画面や印刷装置1が備える表示部(不図示)に表示される設定画面等である。
【0059】
また、制御部30は、印刷に使用する媒体50の種類に応じて、第1印刷と第2印刷のどちらを実行するのかを決定してもよい。例えば、インクが滲みやすい媒体50をユーザーがインターフェースを用いて指定した場合、制御部30は、第1印刷を実行するように印刷ヘッド10を制御してもよい。また、インクが浸透しやすい媒体50は、領域M1と領域M2との発色の差が顕著に顕れるため、制御部30はこのような媒体50を用いる場合は第1印刷を実行してもよい。
【0060】
また、制御部30は、指定された印刷モードに応じて、第1印刷と第2印刷のどちらを実行するのかを決定してもよい。例えば、ユーザーが高画質の印刷モードを設定した場合、制御部30は、第1印刷を実行するように印刷ヘッド10を制御してもよい。また、ユーザーが印刷速度優先の印刷モードを指定した場合、制御部30は、第2印刷を実行するように印刷ヘッド10を制御してもよい。
【0061】
このような第1印刷と第2印刷の切り替えは、図1に示した制御部30が備える印刷切替部35で実施される。例えば、印刷切替部35は、第1印刷と第2印刷を切り替えるための印刷信号を吐出制御部34に供給する。吐出制御部34は、印刷切替部35から供給された印刷信号と、ハーフトーン処理部33から供給された印刷データと、に基づいて、ノズル22を制御するための制御信号を生成する。
【0062】
また、図1に示すように、本実施の形態において制御部30は、環境情報取得部37を備えていてもよい。この場合、制御部30は、環境情報取得部37で取得した環境情報に応じて、第1印刷あるいは第2印刷を実行するようにしてもよい。環境情報は、印刷装置1の印刷ヘッド10付近の温度や湿度等である。例えば、環境情報取得部37は、環境情報として温度および湿度の少なくとも一つを取得可能に構成されていてもよい。この場合、制御部30は、環境情報取得部37で取得した温度および湿度の少なくとも一つに応じて、第1印刷または第2印刷を実行するようにしてもよい。
【0063】
例えば、インクは湿度が高く、温度が低いほど、インクが乾燥しにくくなるため滲みやすい。よって、制御部30は、環境情報取得部37で取得した湿度が所定の湿度よりも高い場合に、第1印刷を実行するようにしてもよい。また、制御部30は、環境情報取得部37で取得した温度が所定の温度よりも低い場合に、第1印刷を実行するようにしてもよい。また、制御部30は、環境情報取得部37で取得した湿度が所定の湿度よりも高く、かつ、環境情報取得部37で取得した温度が所定の温度よりも低い場合に、第1印刷を実行するようにしてもよい。
【0064】
図8は、打ち込み量と各サイズのドット発生率とを示すグラフである。図8では、ノズル22から吐出されるインク滴60の種類が大インク滴、中インク滴、小インク滴の3種類の場合を示している。図8のグラフにおいて、横軸は印刷媒体への単位面積当たりのインク打ち込み量であり、縦軸はドット発生率である。ここでドット発生率は、インク滴の使用率に対応している。
【0065】
制御部30は、使用するインク滴60の種類を打ち込み量に応じて変更している。つまり、打ち込み量が小さい場合は、小インク滴を優先的に使用し、打ち込み量が大きくなるにつれて、中インク滴の使用を増やし、更に打ち込み量が大きくなると、大インク滴の使用を増やしている。なお、図8における「最大打ち込み量」は、所定の単位面積当たりに吐出可能なインクの打ち込み量であり、基本的には印刷媒体の種類によって決まる値である。
【0066】
上述のように、本実施の形態において制御部30は、第2比率における最大サイズ以外の大きさのインク滴の割合が、第1比率における最大サイズ以外の大きさのインク滴の割合よりも小さくなるような印刷(第1印刷)を実行する。図8に示す例では、最大サイズ以外の大きさのインク滴は、小インク滴と中インク滴であり、第1印刷では、第2比率における小インク滴と中インク滴の割合を、第1比率における小インク滴と中インク滴の割合よりも小さくしている。つまり、図8の白抜き矢印に示すように、第2比率における小インク滴と中インク滴の割合(図8において破線で示す)を、第1比率における小インク滴と中インク滴の割合(図8において実線で示す)よりも小さくしている。このような第1印刷を実行することで、媒体50上に筋や色ムラが形成されることを抑制できる。なお、図8では、第2比率における小インク滴と中インク滴の割合を小さくした場合を示したが、本実施の形態では、第2比率における小インク滴の割合のみを小さくしてもよい。
【0067】
また、本実施の形態では、ノズル領域NA1とノズル領域NA2との間における印刷ムラに関するムラ情報を取得可能なテストパターンを印刷するテストパターン印刷工程を予め実行してもよい。そして、テストパターン印刷工程で得られたムラ情報に応じて、第1印刷あるいは第2印刷のいずれかを実行してもよい。
【0068】
図9は、本実施の形態にかかる印刷装置1の動作を示すフローチャートであり、テストパターン印刷工程を含む動作を説明するためのフローチャートである。まず、印刷装置1はユーザーがセットした媒体50にテストパターンを印刷する(ステップS1)。テストパターンには、相対移動方向に沿った同一ライン上において、各々のノズル列23が異なるノズル列間距離D1、D2となる組み合わせのパターンを用いる。例えば、イエロー(Y)とシアン(C)の組み合わせは異なるノズル列間距離D1、D2となる組み合わせなので、イエロー(Y)とシアン(C)の二次色であるグリーン(G)のベタパターンを媒体50に印刷する。このとき、印刷装置1は、ノズル領域NA1の第1比率とノズル領域NA2の第2比率とに差異がない第2印刷でテストパターン印刷を実行する。
【0069】
その後、ステップS1で印刷されたテストパターンからムラ情報を取得し、印刷ムラが所定の基準以上の場合(ステップS2:Yes)、第1印刷を実行する(ステップS3)。一方、印刷ムラが所定の基準よりも小さい場合(ステップS2:No)、第2印刷を実行する(ステップS4)。
【0070】
例えば、印刷装置1がスキャナーを備える場合、テストパターンをスキャナーで読み取ることでムラ情報を取得してもよい。印刷装置1は、印刷ムラが所定の基準以上の場合、つまり、ノズル領域NA1により印刷された媒体50の領域M1と、ノズル領域NA2により印刷された媒体50の領域M2とのムラが所定の基準以上の場合、第1印刷を実行する。媒体50の領域M1と領域M2のムラはスキャナーで読み取った画像情報を用いて自動で判定してもよい。また、ユーザーがテストパターンを視認し、印刷ムラが所定の基準以上とユーザーが判断した場合、インターフェースを用いてユーザーが印刷設定を第1印刷に設定するようにしてもよい。
【0071】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。図2に示した印刷ヘッド10では、複数のヘッドチップ21a~21fがX軸方向に対して斜めになるように設けられている構成例を示した。しかしながら本発明は、複数のヘッドチップ21の長手方向がX軸方向に伸びるように、かつ、複数のヘッドチップ21がY軸方向に複数配置されるように構成された印刷ヘッドにも同様に適用できる。
【0072】
また、図2に示した印刷ヘッド10では、同色のノズル列23がY軸方向において各々オーバーラップしない構成を示した。しかしながら本発明では、同色のノズル列23がY軸方向において各々オーバーラップするよう配置してもよい。つまり、シアンのノズル列23Cが各々のヘッドチップ間においてY軸方向の同一ライン上でオーバーラップするように構成してもよい。また、マゼンタのノズル列23Mが各々のヘッドチップ間においてY軸方向の同一ライン上でオーバーラップするように構成してもよい。また、イエローのノズル列23Yが各々のヘッドチップ間においてY軸方向の同一ライン上でオーバーラップするように構成してもよい。また、ブラックのノズル列23Kが各々のヘッドチップ間においてY軸方向の同一ライン上でオーバーラップするように構成してもよい。
【0073】
以上、本発明を上記実施の形態に即して説明したが、本発明は上記実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0074】
1…印刷装置、10…印刷ヘッド、11…駆動回路、12…駆動素子、21、21a~21f…ヘッドチップ、22、22C、22M、22Y、22K…ノズル、23、23C、23M、23Y、23K…ノズル列、30…制御部、31…解像度変換部、32…色変換部、33…ハーフトーン処理部、34…吐出制御部、35…印刷切替部、36…搬送制御部、37…環境情報取得部、40…搬送機構、50…媒体、60、60Y、60C…インク滴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9