(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031373
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240229BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B41J2/14 305
B41J2/18
B41J2/14 603
B41J2/14 605
B41J2/14 607
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134889
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】下里 正志
(72)【発明者】
【氏名】仁田 昇
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EC16
2C056EC32
2C056KB16
2C057AG29
2C057AG44
2C057AG68
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】ノズル負圧の制御が容易な液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】一実施形態にかかる液体吐出ヘッドは、ノズル部と、振動板と、複数の圧力室と、供給側流路と、供給側流路と、アクチュエータ部と、を備える。ノズル部には、複数のノズルが形成される。振動板は前記ノズルに対向配置される。複数の圧力室は前記複数のノズルにそれぞれ連通する。供給側流路は複数の前記圧力室の一方向における一方側に設けられる。排出側流路は、前記圧力室の前記一方向の他方側に設けられるとともに、前記供給側流路と流路抵抗が等しい。アクチュエータ部は、電圧の印加により変形し、前記圧力室を駆動する複数の圧電素子を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルが形成されるノズル部と、
前記ノズルに対向配置される振動板と、
前記複数のノズルにそれぞれ連通する複数の圧力室と、
複数の前記圧力室の一方向における一方側に設けられる供給側流路と、
前記圧力室の前記一方向の他方側に設けられるとともに、前記供給側流路と流路抵抗が等しい、排出側流路と、
電圧の印加により変形し、前記圧力室を駆動する複数の圧電素子を備えるアクチュエータ部と、
を備える、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記供給側流路と、前記圧力室と、前記排出側流路とを含む循環流路において液体が循環される、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記供給側流路及び前記排出側流路を形成する流路部材を備え、
前記供給側流路は、前記圧力室の一方側に延びる供給側個別流路と、複数の前記供給側個別流路の一方側に連通する供給側共通室と、を備え、
前記排出側流路は、前記圧力室の他方側に延びる排出側個別流路と、複数の前記排出側個別流路の他方側に連通する排出側共通室と、を備え、
流路部材は、前記ノズルを基準として前記供給側個別流路と前記排出側個別流路の構造が対称である、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記供給側個別流路は前記圧力室の一方側に延びる供給側圧力流路と、前記供給側圧力流路の一方側に延びる供給側狭窄流路と、を有し、
前記排出側個別流路は前記圧力室の他方側に延びる排出側圧力流路と、前記排出側圧力流路の他方側に延びる排出側狭窄流路と、を有し、
前記供給側個別流路と、前記圧力室と、前記排出側個別流路と、は前記一方向に沿って順番に並び、
前記供給側圧力流路と前記排出側圧力流路とは流路長及び流路断面形状が等しく、
前記供給側狭窄流路と前記排出側狭窄流路とは流路長及び流路断面形状が等しい、請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
液体の循環流量は吐出する液体の最大流量の1/2~1/10である請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドの方式の一つとして積層型圧電体を用い、ノズル裏側のインク流路でインクを循環させる循環型のインクジェットヘッドがある。このようなインクジェットヘッドの流路構造は、ノズルに対してインクを供給する流路と排出する流路が非対称に構成されている。
【0003】
このようなインクジェットヘッドでは、供給側流路と排出側流路の形状の違いにより流路抵抗に偏りが生じるため、ノズル負圧の制御が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ノズル負圧の制御が容易な液体吐出ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態にかかる液体吐出ヘッドは、ノズル部と、振動板と、複数の圧力室と、供給側流路と、供給側流路と、アクチュエータ部と、を備える。ノズル部には、複数のノズルが形成される。振動板は前記ノズルに対向配置される。複数の圧力室は前記複数のノズルにそれぞれ連通する。供給側流路は複数の前記圧力室の一方向における一方側に設けられる。
排出側流路は、前記圧力室の前記一方向の他方側に設けられるとともに、前記供給側流路と流路抵抗が等しい。アクチュエータ部は、電圧の印加により変形し、前記圧力室を駆動する複数の圧電素子を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係るインクジェットヘッドの構成を示す断面図。
【
図2】同インクジェットヘッドの構成を示す断面図。
【
図3】同インクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置の概略構成を示す説明図。
【
図4】同インクジェットヘッドを含む循環流路の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、第1実施形態に係る液体吐出ヘッドであるインクジェットヘッド1及び液体吐出装置であるインクジェット記録装置100について、
図1乃至
図5を参照して説明する。
図1及び
図2は、インクジェットヘッド1の概略構成を示す断面図である。
図3はインクジェット記録装置の概略構成を示す説明図であり、
図4はインクジェットヘッドを含む循環流路の説明図である。
図5は、循環流路における負圧制御の説明図である。図中矢印X、Y、Zは互いに直交する3方向をそれぞれ示す。本実施形態においてXはノズル51や圧力室81の並列方向、Yは延出方向、Zはノズルの軸方向に沿っている。各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して示す。
【0009】
図1及び
図2に示すように、インクジェットヘッド1は、ベース10と、アクチュエータ部20と、振動板30と、流路部材である流路基板41とフレーム部45とを有する流路部40と、複数のノズル51を有するノズル部としてのノズルプレート50と、駆動回路70と、を備える。一例として、インクジェットヘッド1は、本実施形態において、圧電体層211の積層方向、圧電素子21の振動方向、振動板30の振動方向、がそれぞれZ方向に沿う例を示す。本実施形態において、ノズルプレート50の裏側において、流路部40は、振動板30と、流路部40とによって、ヘッド内にヘッド流路80を形成する流路構造部8が構成される。
【0010】
アクチュエータ部20は、例えば、圧電部材で構成され、列方向に沿って交互に配列されるアクチュエータとしての複数の駆動圧電素子21、及び複数の非駆動圧電素子22と、これら複数の圧電素子21、22を一体に連結する圧電構造部26と、を備える。本実施形態においてアクチュエータ部20の延出方向の中心に、ノズル51が設けられており、アクチュエータ部20はノズル51を中心として一方側と他方側が対称な構造を有する。アクチュエータ部20は、ベース10の一方側に、接合される。アクチュエータ部20は、例えばベース10上に設けられる。
【0011】
アクチュエータ部20において、複数の駆動圧電素子21及び複数の非駆動圧電素子22とは、一定の間隔で並列方向に並ぶ。一例として、複数の駆動圧電素子21及び複数の非駆動圧電素子22とは、いずれも外形が同形状の直方体の柱状に構成される。アクチュエータ部20は、複数の溝23により、複数に分割され、複数の駆動圧電素子21、非駆動圧電素子22は、全て、同じ幅の溝23によって、同ピッチで列方向に並んでいる。
【0012】
例えば複数の駆動圧電素子21及び複数の非駆動圧電素子22とは、それぞれ、ノズルの軸方向であるZ方向から見た平面視において、短手方向が素子列の列方向に沿うとともに、長手方向が列方向及びZ方向に対して直交する延出方向に沿う、矩形状に構成される。
【0013】
駆動圧電素子21は、Z方向において、流路部40に形成される複数の圧力室81にそれぞれ対向する位置に配列される。一例として、駆動圧電素子21の列方向及び延出方向の中心位置と、圧力室81の列方向及び延出方向の中心位置とが、Z方向に並んで配列される。
【0014】
非駆動圧電素子22は、Z方向において、流路部40に形成される隔壁部42にそれぞれ対向する位置に配列される。一例として、非駆動圧電素子22の列方向及び延出方向の中心位置と、隔壁部42の列方向及び延出方向の中心位置とが、Z方向に並んで配列される。
【0015】
例えば、アクチュエータ部20を構成する積層型圧電部材は、シート状の圧電材料を積層して焼結することで形成される。アクチュエータ部20は、積層型圧電部材を、一方の端面からダイシング加工して溝23を形成することで、矩形の柱状に形成された複数の圧電素子を所定の間隔で形成する。そして、形成された複数の柱状の素子に、電極等が設けられ、交互に配置された複数の駆動圧電素子21及び複数の非駆動圧電素子22が形成される。複数の駆動圧電素子21及び複数の非駆動圧電素子22は、列方向において、溝23を挟んで交互に並列配置される。
【0016】
駆動圧電素子21、非駆動圧電素子22を構成する圧電部材は、例えば積層圧電体である。駆動圧電素子21、非駆動圧電素子22は、積層された複数の圧電体層211と、各圧電体層211の主面に形成される内部電極221、222と、を備える。なお、一例として、駆動圧電素子21、非駆動圧電素子22は同じ積層構造である。そして、駆動圧電素子21及び非駆動圧電素子22は、表面に形成された外部電極223、224を備える。
【0017】
圧電体層211は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系、または無鉛のKNN(ニオブ酸ナトリウムカリウム)系等の圧電材料から薄板状に構成される。複数の圧電体層211は厚さ方向が積層方向に沿って積層され、互いに接着されている。例えば本実施形態において圧電体層211の厚さ方向及び積層方向が、振動方向(Z方向)に沿って配置される。
【0018】
内部電極221、222は、銀パラジウムなどの焼成可能な導電性材料で所定形状に構成される導電膜である。内部電極221、222は各圧電体層211の主面の所定領域に形成される。内部電極221、222は、互いに異なる極である。例えば、一方の内部電極221は、複数の駆動圧電素子21及び複数の非駆動圧電素子22の並び方向である列方向(X方向)、振動方向(Z方向)の双方と直交する方向である延出方向(Y方向)において、圧電体層211の一方の端部に至り、圧電体層211の他方の端部には至らない領域に形成される。他方の内部電極222は、延出方向において、圧電体層211の一方の端部には至らず、圧電体層211の他方の端部に至る領域に形成される。内部電極221、222は圧電素子21、22の側面に形成される外部電極223、224にそれぞれ接続される。
【0019】
また駆動圧電素子21、非駆動圧電素子22を構成する積層圧電部材は、ノズルプレート50側または反対側の端部のいずれかまたは両方に、ダミー層をさらに備えていてもよい。例えばダミー層は圧電体層211と同材料で構成され、電極を片側にしか有さず、電界がかからないので変形しない。例えばダミー層は圧電体としては機能せず、アクチュエータ部20をベース10に固定するベースとなり、あるいは組立中や組立後の精度を出すために研磨する研磨代となる。
【0020】
外部電極223、224は、複数の駆動圧電素子21及び複数の非駆動圧電素子22の表面に形成され、内部電極221、222の端部を集めて構成される。例えば外部電極223、224は、圧電体層211の延出方向における一方の端面と他方の端面とに、それぞれ形成される。外部電極223、224はメッキ法やスパッタ法など既知の方法で、Ni、Cr、Auなどにより成膜される。外部電極223と外部電極224は、異なる極である。外部電極223と外部電極224とは、複数の駆動圧電素子21及び複数の非駆動圧電素子22の異なる側面部にそれぞれ配置されている。なお、外部電極223と224とは、複数の駆動圧電素子21及び複数の非駆動圧電素子22の同じ側面部のうち、異なる領域に取り回されていてもよい。
【0021】
本実施形態において一例として外部電極223を個別電極、外部電極224を共通電極とする。複数の駆動圧電素子21及び複数の非駆動圧電素子22の個別電極となる外部電極223は、電極層が溝23によって分割され、互いに独立して配置される。共通電極となる外部電極224は、電極層が例えば圧電構造部26の側面において互いに連結され、例えば接地される。外部電極223、224は、例えば配線フィルムを介して駆動回路70に接続される。例えば、個々の外部電極223、224は、駆動回路70の駆動IC72を介して、駆動部としての制御部116に接続され、制御回路1161による制御によって駆動制御可能に構成される。なお、共通電極と個別電極の配置は逆であってもよい。
【0022】
また、各圧電素子21、22の振動方向は積層方向に沿っており、電界を印加することで、d33方向に変位する。各圧電素子21、22は、圧電体層211及び内部電極221,222の積層数が3層以上である。一例として、各圧電素子21、22は、3層以上、50層以下、各層の厚さを10μm以上、40μm以下とし、厚さと総積層数の積を1000μm未満とする。
【0023】
インクジェットヘッド1において、駆動圧電素子21は、外部電極223、224を介して内部電極221、222に電圧が印加されることで、振動する。本実施形態において、駆動圧電素子21は、圧電体層211の積層方向に沿って縦振動する。ここで言う縦振動とは、例えば「圧電定数d33で定義される厚み方向の振動」である。駆動圧電素子21は、縦振動により、振動板30を変位させ、圧力室81を変形させる。
【0024】
振動板30は振動方向であるZ方向と直交する面に沿って延び、複数の圧電素子21、22の圧電体層211の振動方向の一方側、即ち、ノズルプレート50側の面に接合される。振動板30は振動方向であるZ方向において、圧力室81を介して、複数のノズル51に対向する。振動板30は、例えば変形可能に構成される。振動板30は、アクチュエータ部20の駆動圧電素子21及び非駆動圧電素子22と、フレーム部45と、に接合される。例えば振動板30は、圧電素子21、22に対向する振動領域31と、フレーム部45に対向する支持領域32と、を有する。振動板30は振動方向において流路基板41とアクチュエータ部20との間に設けられる。
【0025】
振動領域31は、例えば厚さ方向が圧電体層211の振動方向となるように配された平板状である。振動板30は、複数の駆動圧電素子21及び複数の非駆動圧電素子22の並び方向に面方向が延びる。振動板30は、例えば金属板である。振動板30は、各圧力室81に対向するとともに個別に変位可能な複数の振動部位を有する。振動板30は、複数の振動部位が一体に連なって形成される。
【0026】
一例として、振動板30はニッケルやSUS板で構成され、振動方向に沿う厚さ寸法は5μm~15μm程度に構成される。なお、振動領域31は、複数の振動部位が、変位しやすいように、振動部位と隣接する部位あるいは互いに隣接する振動部位間に、折り目や段差が形成されていてもよい。振動領域31は、駆動圧電素子21の伸長と圧縮によって、当該駆動圧電素子21に対向配置された部位が変位することで、変形する。例えば、振動板30は非常に薄く複雑な形状が必要なため、電鋳法等により、形成される。振動板30アクチュエータ部20の上端面に接着などで接合される。
【0027】
支持領域32は、フレーム部45と流路基板41との間に配置される板状部材である。振動板30は、ノズル51を中心として、Y方向の一方側と他方側が対称な構造を有している。
【0028】
流路部40は、振動板30とノズルプレート50との間に設けられる流路基板41と、アクチュエータ部20の外周に設けられるフレーム部45と、を備える。
【0029】
流路基板41は、複数の個別流路間を隔てる複数の隔壁部42、及び各個別流路を構成するガイド壁43、を備える。
【0030】
例えば隔壁部42は、並列方向に並ぶ複数の圧力室81間を隔てるとともに、並列方向に並ぶ複数の個別流路間を隔てる壁部材である。隔壁部42は振動板30を介して、非駆動圧電素子22に対向配置され、非駆動圧電素子22によって支持される。
【0031】
ガイド壁43は、供給側個別流路82、排出側個別流路84を構成する壁部材であり、例えば、所定箇所の流路断面積を狭め、狭窄流路822、842を形成する段差部を有する。
【0032】
流路基板41は、ノズル51を中心として、Y方向の一方側と他方側が対称な構造を有している。具体的には、複数の隔壁部42は、ノズル51を中心としてY方向において、一方側と他方側とが対称な構造であり、例えば複数の隔壁部42は、Y方向に沿って延出し、Y方向に直交する断面形状が一様に構成されている。また、複数のガイド壁43は、ノズル51を中心としてY方向において、一方側と他方側とが対称な構造である。例えば複数のガイド壁43は、Y方向に沿って延出し、Y方向に直交する断面形状が、ノズルを中心として同位置で同形状に構成されている。
【0033】
フレーム部45は圧電素子21、22とともに振動板30に接合される構造体である。フレーム部45は、本実施形態においてはアクチュエータ部20に隣接して配置され、インクジェットヘッド1の外郭を構成する。
【0034】
本実施形態において、フレーム部45は、振動板30の裏側に接合される内フレーム451と、ノズルプレート50の裏側に接合される外フレーム452と、を備える。振動板30と流路基板41とともに、ノズルプレート50の裏側に、供給側共通室83、排出側共通室85を形成する。例えば、内フレーム451と、外フレーム452との間に、供給側共通室83、排出側共通室85の一部が形成される。フレーム部45は、ノズル51を中心として、Y方向の一方側と他方側が対称な構造を有している。
【0035】
供給側共通室83、排出側共通室85は、フレーム部45の内側に形成される。供給側共通室83は、供給側個別流路82を通じて、圧力室81に連通する。排出側共通室85は、排出側個別流路84を通じて、圧力室81に連通する。
【0036】
本実施形態において、振動板30と、流路部40とによって、インクジェットヘッド1内に、ヘッド流路80が形成される。ヘッド流路80は、複数の圧力室81と、供給側流路と、排出側流路を備える。供給側流路は、圧力室81の一方向に延びる複数の供給側個別流路82と、複数の供給側個別流路82の一方側に連通する供給側共通室83と、を有する。排出側流路は、圧力室81の他方側に延びる複数の排出側個別流路84と、複数の排出側個別流路84の他方側に連通する排出側共通室85と、を有する。本実施形態において、Z方向から見て、供給側個別流路82と、圧力室81と、排出側個別流路84とは、流れ方向となる延出方向において並んで配置される。
【0037】
複数の圧力室81は、振動板30の振動領域31の一方側に形成される空間であり、供給側及び排出側にそれぞれ形成される供給側個別流路82、排出側個別流路84を介して供給側共通室83及び排出側共通室85、にそれぞれ連通する。複数の圧力室81は、隔壁部42によって隔てられる。すなわち、圧力室81の第3方向の両側は隔壁部42によって構成される。また、各圧力室81は、一方側に配されるノズルプレート50に形成されたノズル51に連通する。また、圧力室81は、ノズルプレート50の反対側が振動板30によって塞がれる。圧力室81は、圧力室81の一部を形成する振動板30の振動によって変形することで、ノズル51から液体を吐出する。
【0038】
供給側個別流路82は、各圧力室81の供給側に連通し、流れ方向となるY方向に延びる。供給側個別流路82は圧力室の一方側に延びる供給側圧力流路821と、供給側圧力流路821の一方側に延び、供給側共通室83よりも流路断面が狭い供給側狭窄流路822と、を有する。
【0039】
供給側共通室83は、複数の供給側個別流路82の流れ方向における他方の端部に連通する流路である。供給側共通室83は、例えば振動板30とノズルプレート50の間に形成され、X方向に長い流路部と、フレーム部45と流路基板41の延出方向の両端部との間において、Z方向に延出し、ヘッド入口831に至る流路部と、を連続して有する。
【0040】
排出側個別流路84は、各圧力室81の二次側に連通し、Y方向に延びる。排出側個別流路84は、圧力室の他方側に延びる排出側圧力流路841と、排出側圧力流路841の他方側に延び、排出側共通室85よりも流路断面が狭い排出側狭窄流路842と、を有する。ここで、流路基板41は、ノズル51を中心として、Y方向の一方側と他方側が対称な構造を有しているため、供給側圧力流路821と排出側圧力流路841と、Y方向に沿う流路長及びY方向に直交する流路断面形状が等しく、供給側狭窄流路822と排出側狭窄流路842とはY方向に沿う流路長及びY方向に直交する流路断面形状が等しく構成される。
【0041】
排出側共通室85は、複数の排出側個別流路84のY方向における圧力室81側とは反対側の端部に連通する流路である。排出側共通室85は、例えば振動板30とノズルプレート50の間に形成され、X方向に長い流路部と、フレーム部45と流路基板41の延出方向の両端部との間において、Z方向に延出し、ヘッド出口851に至る流路部と、を連続して有する。
【0042】
ヘッド流路80を構成する流路構造部8は、ノズル51を中心としてY方向一方側の供給側の構造と、Y方向他方側の排出側の構造とが、対称に構成されている。すなわち、流路基板41及びフレーム部45は、ノズル51を中心として、延出方向の一方側と他方側が対象に構成されている。したがって、ヘッド流路80は、供給側流路抵抗RIと排出側流路抵抗REが等しい。
一例として、ノズル51から供給側圧力流路821を経て供給側狭窄流路822までの形状が、ノズル51から排出側圧力流路841を経て排出側狭窄流路842までの形状と、対称に構成される。好ましくは、ヘッド入口831となる供給側共通室83の入口までの構造と、ヘッド出口851を構成する排出側共通室85の出口までの構造が、Y方向に関して、ノズル51を中心として対称に構成される。
【0043】
ノズルプレート50は、例えばSUS・Niなどの金属やポリイミドなどの樹脂材料からなる厚さ10μm~100μm程度の方形の板状に構成される。ノズルプレート50は圧力室81の一方側の開口を覆うように、流路基板41の一方側に配置されている。
【0044】
ノズル51は圧力室81の並び方向と同じ第1方向に複数並び、ノズル列が形成される。例えばノズル51は、複数の圧力室81に対応する位置にそれぞれ設けられている。本実施形態において、ノズル51は、圧力室81の、延出方向における中央置に、それぞれ設けられている。
【0045】
駆動回路70は、一端が外部電極223、224に接続される配線フィルム71と、配線フィルム71に搭載された駆動IC72と、配線フィルム71の他端に実装されたプリント配線基板と、を備える。
【0046】
駆動回路70は、駆動IC72により駆動電圧を外部電極223、224に印加することで、駆動圧電素子21を駆動し、圧力室81の容積を増減させて、ノズル51から液滴を吐出させる。
【0047】
配線フィルム71は、複数の外部電極223、224に接続される。例えば、配線フィルム71は、外部電極223、224の接続部に熱圧着等により固定されるACF(異方導電性フィルム)である。配線フィルム71は、例えば、電子部品として駆動IC72が実装されたCOF(Chip on Film)である。
【0048】
駆動IC72は、配線フィルム71を介して外部電極223、224に接続される。駆動IC72は、吐出制御に用いられる電子部品である。なお、駆動IC72は、配線フィルム71ではなく、ACP(異方導電ペースト)、NCF(非導電性フィルム)、及びNCP(非導電性ペースト)のような他の手段によって、外部電極223、224に接続されても良い。
【0049】
駆動IC72は、各駆動圧電素子21を動作させるための制御信号及び駆動信号を生成する。駆動IC72は、インクジェットヘッド1が搭載されるインクジェット記録装置100の制御部116から入力された画像信号に従い、インクを吐出させるタイミング及びインクを吐出させる駆動圧電素子21を選択するなどの制御のための制御信号を生成する。また、駆動IC72は、制御部116からの制御信号に従って駆動圧電素子21に印加する電圧、すなわち駆動信号(電気信号)を生成する。駆動IC72が駆動圧電素子21に駆動信号を印加すると、駆動圧電素子21は、振動板30を変位させて圧力室81の容積を変化させるように駆動する。これにより、圧力室81に充填されたインクは、圧力振動を生じる。圧力振動により、圧力室81に設けられたノズル51からインクが吐出する。なお、インクジェットヘッド1は、1画素に着弾するインク滴の量を変更することで階調表現を実現できるようにしてもよい。また、インクジェットヘッド1は、インクの吐出回数を変えることで、1画素に着弾するインク滴の量を変更できるようにしてもよい。このように、駆動IC72は、駆動信号を駆動圧電素子21に印加する印加部の一例である。
【0050】
例えば、駆動IC72は、データバッファ、デコーダ、ドライバを備えている。データバッファは、印字データを駆動圧電素子21毎に時系列に保存する。デコーダは、駆動圧電素子21毎に、データバッファに保存された印字データに基づいて、ドライバを制御する。ドライバは、デコーダの制御に基づき、各駆動圧電素子21を動作させる駆動信号を出力する。駆動信号は、例えば各駆動圧電素子21に印加する電圧である。
【0051】
プリント配線基板は、例えば各種電子部品やコネクタが搭載されたPWA(Printing Wiring Assembly)であり、ヘッド制御回路731を有する。プリント配線基板は、インクジェット記録装置100の制御部116に接続される。
【0052】
以上のように構成されたインクジェットヘッド1において、ノズルプレート50と、フレーム部45と、流路基板41と、振動板30とによって、ノズル51に連通する複数の圧力室81と、複数の圧力室81にそれぞれ連通する複数の供給側個別流路82と、複数の圧力室81にそれぞれ連通する排出側個別流路84と、複数の供給側個別流路82に連通する供給側共通室83と、複数の排出側個別流路84に連通する排出側共通室85と、を有するヘッド流路80が形成される。ヘッド流路80は、ノズル51を中心として一方側から他方側に流れるサイドシュータ型のインク流路である。例えば、循環流路において循環するインクの循環流量は、ノズル51から吐出されるインクの最大流量の1/10以上、1/2以下とする。
【0053】
インクジェットヘッド1のインク流路であるヘッド流路80は、ノズル51の供給側の流路の流路抵抗RIと、ノズル51の排出側の流路の流路抵抗REとが、等しく構成されている。一例として、インクジェットヘッド1のヘッド入口831から、供給側共通室83、供給側個別流路82を経て圧力室81からノズル51に至るまでの供給側の流路抵抗RIと、ノズル51から圧力室81を通り、排出側個別流路84、排出側共通室85を経てヘッド出口851までの排出側の流路抵抗REが、等しい。本実施形態において、供給側個別流路82の入口である供給側狭窄流路822の端部823から供給側圧力流路821を経てノズル51に至るまでの流路形状と、ノズル51から排出側圧力流路841を経て、排出側個別流路84の出口である排出側狭窄流路842の端部843までの流路形状とが、ノズル51を基準としてY方向に対称に構成されている。さらに好ましくは、インクジェットヘッド1のヘッド入口831から、供給側共通室83、供給側個別流路82を経て圧力室81からノズル51に至るまでの流路の構造と、ノズル51から圧力室81を通り、排出側個別流路84、排出側共通室85を経てヘッド出口851までの流路の構造が、流れ方向となるY方向において、ノズル51を基準として対称に構成されている。
【0054】
例えば供給側共通室83は、供給側のインク流路を介してカートリッジ等のインクタンクに連通し、インクが供給側共通室83を通じて各圧力室81へ供給される。また、排出側共通室85は、回収側のインク流路に連通し、排出側共通室85から排出されたインクは回収側のインク流路を通ってインクタンクに戻され、循環する。全ての駆動圧電素子21は配線により電圧が印加可能に接続されている。インクジェットヘッド1は、例えばインクジェット記録装置100の制御部116によって、駆動IC72により電極221、222に駆動電圧が印加されることで、駆動対象の駆動圧電素子21が例えば積層方向、すなわち各圧電体層211の厚さ方向に振動する。つまり、駆動圧電素子21は縦振動する。
【0055】
インクジェットヘッド1において、駆動対象の駆動圧電素子21の内部電極221、222に駆動電圧が印加されることで、駆動対象の駆動圧電素子21が選択的に駆動する。そして、駆動対象の駆動圧電素子21による、引張方向の変形と圧縮方向の変形を組み合わせて、振動板30を変形させ、圧力室81の容積を変化させることで、供給側共通室83から液体を導き、ノズル51から吐出させる。
【0056】
以下、インクジェットヘッド1を備えるインクジェット記録装置100の一例について、
図3乃至
図5を参照して説明する。
図3はインクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置の概略構成を示す説明図である。
図4は、インクジェットヘッドを含む循環流路の説明図であり、
図5は同循環流路における負圧制御の説明図である。
【0057】
図3に示すように、インクジェット記録装置100は、筐体111と、媒体供給部112と、画像形成部113と、媒体排出部114と、搬送装置115と、制御部116と、を備える。
【0058】
インクジェット記録装置100は、媒体供給部112から画像形成部113を通って媒体排出部114に至る所定の搬送路Rに沿って、吐出対象物である印刷媒体として例えば用紙Pを搬送しながらインク等の液体を吐出することで、用紙Pに画像形成処理を行う液体吐出装置である。
【0059】
筐体111は、インクジェット記録装置100の外郭を構成する。筐体111の所定箇所に、用紙Pを外部に排出する排出口を備える。
【0060】
媒体供給部112は複数の給紙カセットを備え、各種サイズの用紙Pを複数枚積層して保持可能に構成される。
【0061】
媒体排出部114は、排出口から排出される用紙Pを保持可能に構成された排紙トレイを備える。
【0062】
画像形成部113は、用紙Pを支持する支持部117と、支持部117の上方に対向配置された複数のヘッドユニット130と、を備える。
【0063】
支持部117は、画像形成を行う所定領域にループ状に備えられる搬送ベルト118と、搬送ベルト118を裏側から支持する支持プレート119と、搬送ベルト118の裏側に備えられた複数のベルトローラ120と、を備える。
【0064】
支持部117は、画像形成の際に、搬送ベルト118の上面である保持面に用紙Pを支持するとともに、ベルトローラ120の回転によって所定のタイミングで搬送ベルト118を送ることにより、用紙Pを下流側へ搬送する。
【0065】
ヘッドユニット130は、複数(4色)のインクジェットヘッド1と、各インクジェットヘッド1上にそれぞれ搭載された液体タンクとしてのインクタンク132と、インクジェットヘッド1とインクタンク132とを接続する循環流路133と、供給ポンプ134と、負圧制御装置135と、を備える。
【0066】
本実施形態において、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの4色のインクジェットヘッド1と、これらの各色のインクをそれぞれ収容するインクタンク132を備える。インクタンク132は循環流路133によってインクジェットヘッド1に接続される。例えば循環流路133は、供給流路1331と回収流路1332とを備え、循環流路133の途中に、インクタンク132,供給ポンプ134、負圧制御装置135、及びインクジェットヘッド1が設けられる。
【0067】
供給ポンプ134は、例えば圧電ポンプで構成される送液ポンプである。供給ポンプ134は、供給流路1331に設けられている。供給ポンプ134は、配線により制御部116の制御回路1161に接続され、制御部116により制御可能に構成される。供給ポンプ134は、インクジェットヘッド1に液体を供給する。
【0068】
例えば負圧制御装置135はインクタンク132に接続され、あるいは循環流路133に設けられる、ポンプや圧力調整装置であり、インクジェットヘッド1とインクタンク132との水頭値に対応して、インクタンク132内、あるいは循環流路133内を、負圧制御することで、インクジェットヘッド1の各ノズル51に供給されたインクを所定形状のメニスカスに形成させている。
図4は、インクジェットヘッドを通る循環流路133の構成を示す説明図である。
【0069】
例えば負圧制御装置135は、供給流路1331に設けられる上流側圧力源1351と、回収流路1332に設けられる下流側圧力源1352と、を備える。上流側圧力源1351及び下流側圧力源1352は、例えばポンプや圧力調整装置である。ここで、上述したように、インクジェットヘッド1は、供給側と排出側の流路形状が対称であり、ヘッド内における供給側流路抵抗RIと排出側流路抵抗REが等しく構成される。また、
図4に示すように、上流側圧力源1351からノズル51までの供給側の流路抵抗Raと、ノズル51から下流側圧力源1352までの流路抵抗Rbも、等しく構成されている。
【0070】
搬送装置115は、媒体供給部112から画像形成部113を通って媒体排出部114に至る搬送路Rに沿って、用紙Pを搬送する。搬送装置115は、搬送路Rに沿って配置される複数のガイドプレート対121と、複数の搬送用ローラ122と、を備えている。
【0071】
複数のガイドプレート対121は、それぞれ、搬送される用紙Pを挟んで対向配置される一対のプレート部材を備え、用紙Pを搬送路Rに沿って案内する。
【0072】
搬送用ローラ122は、制御部116の制御によって駆動されて回転することで、用紙Pを搬送路Rに沿って下流側に送る。なお、搬送路Rには用紙の搬送状況を検出するセンサが各所に配置される。
【0073】
制御部116は、コントローラであるCPU(Central Processing Unit)等の制御回路1161と、各種のプログラムなどを記憶するROM(Read Only Memory)と、各種の可変データや画像データなどを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、外部からのデータの入力及び外部へのデータの出力をするインターフェイス部と、を備える。
【0074】
以上のように構成されたインクジェット記録装置100において、制御部116は、例えばインターフェイスにおいてユーザが操作入力部の操作による印刷指示を検出すると、搬送装置115を駆動して用紙Pを搬送するとともに、所定のタイミングでヘッドユニット130に対して印字信号を出力することで、インクジェットヘッド1を駆動する。インクジェットヘッド1は吐出動作として、画像データに応じた画像信号により、駆動IC72に駆動信号を送り、内部電極221、222に駆動電圧を印加して吐出対象の駆動圧電素子21を選択的に駆動して例えば積層方向に縦振動させ、圧力室81の容積を変化させることでノズル51からインクを吐出し、搬送ベルト118上に保持された用紙Pに画像を形成する。また、液体吐出動作として、制御部116は、供給ポンプ134を駆動することで、インクタンク132からインクジェットヘッド1の供給側共通室83にインクを供給する。
【0075】
ここで、インクジェットヘッド1を駆動する駆動動作について、説明する。本実施形態に係るインクジェットヘッド1は、圧力室81に対向配置される駆動圧電素子21を備え、これらの駆動圧電素子21は配線により電圧が印加可能に接続されている。制御部116は、画像データに応じた画像信号により、駆動IC72に駆動信号を送り、駆動対象の駆動圧電素子21の内部電極221、222に駆動電圧を印加して、駆動対象の駆動圧電素子21を選択的に変形させる。そして、振動板30の引張方向の変形と圧縮方向の変形を組み合わせて、圧力室81の容積を変化させることで、液体を吐出させる。
【0076】
例えば制御部116は、引っ張り動作と、圧縮動作とを交互に行う。インクジェットヘッド1において、対象の圧力室81の内容積を増加させる引張時には、駆動対象の駆動圧電素子21を収縮し、駆動対象外の駆動圧電素子21は変形させない。また、インクジェットヘッド1において対象の圧力室81の内容積を減少させる圧縮時には、対象の駆動圧電素子21を伸長する。なお、非駆動圧電素子22は変形させない。
【0077】
ここで、
図4に示すように、上流側圧力源1351の単位体積あたりのエネルギをPaとし、下流側圧力源1352の単位体積あたりのエネルギをPbとした場合、ノズル51近傍の圧力である目標ノズル圧力Pnは、流路抵抗によって決定され、PaとPbを流路抵抗で分圧した値となる。
吐出しない時、ノズル圧力Pnは以下のように考える。
流路抵抗比Ra:Rb=1:r としたとき、PaとPbを、
Pa・r/(1+r) + Pb/(1+r) = Pn …(式1) (適正ノズル圧力≒-1kPa)の関係に制御すれば良い。
【0078】
このため、計算式は流路抵抗の「比」だけに依存する為、周囲温度やインクの種類が変わって流路抵抗が変化しても、ノズル近傍圧力は変化しない。
【0079】
したがって、上式を維持したまま循環流量を増減すれば、ノズル近傍圧力を維持したまま循環流量を変えたり循環を止めたりすることができる。
【0080】
さらに、特に本実施形態のように、ヘッド内の構造が対称でありr=1である時は、
(Pa+Pb)/2 = Pn …(式2) とすれば良い。
【0081】
そして、供給側流路抵抗RIと排出側流路抵抗REが等しい場合、(式2)のように上流側圧力Paと下流側圧力Pbからノズル圧力Pnを容易に求めることができ、簡単な構成で制御可能となる。例えば、
図5に示すように、PaとPbを加算したものと、Pn×2を比較し、(Pa+Pb)>2Pn+δであればPaまたはPbを減らし、(Pa+Pb)<2Pn-δである場合にはPaまたはPbを増やすように制御すればよく、負圧制御が容易となる。なお、δは僅かな(±δ以下の)圧力変化で圧力調整が頻繁に動作しないように設けたヒステリシス(不感帯)である。±δは許容可能な圧力変化幅に設定する。
【0082】
上述した実施形態に係るインクジェットヘッド1及びインクジェット記録装置100によればインクジェットヘッド1において、供給側流路抵抗RIと排出側流路抵抗REを等しくすることで、(式2)のように上流側圧力と下流側圧力からノズル圧力を容易に求めることができ、簡単な構成でノズルの圧力制御が可能となる。
【0083】
また、上記実施形態においてヘッド流路を構成する供給側個別流路82、排出側個別流路84と圧力室81とがインクの流れ方向となる所定の一方向に沿って並んでいるため、インクの淀みが少なく顔料の沈降が起き難い。また、供給側と排出側の圧力流路及び狭窄流路が対称構造のためインクの共振が鋭く、圧力振動を利用したインクの吐出を高効率で行うことができる。
【0084】
したがって、ノズル近傍のインクの変質によって吐出性能の低下を防ぎ、かつ狭窄流路の抵抗ばらつきと循環流量との関係に起因するノズル間の均一性の低下を防ぐ等の効果も得られる。
【0085】
例えば循環流量が吐出インクの最大流量を越えると供給側狭窄流路と排出側狭窄流路の形状の僅かな非対称によってノズル背圧に差異が生じ、その結果ノズル毎にメニスカス形状が異なる状態となるため印字の均一性が損なわれ印字品質が低下することがあるが、循環流量が吐出インクの最大流量の1/2以下にすることで、狭窄流路の非対象によるノズルの背圧の変化は吐出の有無によるノズルの背圧の変化より小さくすることができる。したがって、循環流量を吐出インクの最大流量の1/2以下とすることで、印字品質の低下も抑制できる。一方、循環流量が少なすぎると吐出性能の低下を防ぎきれないが、循環流量を吐出インクの最大流量の1/10以上とすることで、吐出性能の低下を防ぐことができる。
【0086】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0087】
上記実施形態の圧電素子21、22の具体的な材料や構成は上記に限られるものではない。また、電子部品の耐熱温度や上限電圧も材料や部品の性能に応じて、適宜変更されるものである。
【0088】
また、上記実施形態においては、複数層の圧電体層を積層し、積層方向の縦振動(d33)を用いて駆動圧電素子21を駆動する構成としたが、これに限られるものではない。例えば駆動圧電素子21が単層の圧電部材で構成される形態にも適用可能であるし、
図4に示すように、d31方向に変位する横振動により駆動する形態にも適用可能である。
【0089】
ノズル51や圧力室81の配列も上記実施形態に限られるものではない。たとえばノズル51を2列以上配列してもよい。また複数の圧力室81の間に、ダミー室となる空気室を形成してもよい。
【0090】
この他、振動板30、流路基板41、ノズルプレート50、フレーム部45を含む各種部品の構成や位置関係は上述した例に限られるものではなく、適宜変更可能である。
【0091】
また、吐出する液体は印字用のインクに限られるものではなく、例えばプリント配線基板の配線パターンを形成するための導電性粒子を含む液体を吐出する装置等であっても良い。
【0092】
また、上記実施形態において、インクジェットヘッド1は、インクジェット記録装置等の液体吐出装置に用いられる例を示したが、これに限られるものではなく、例えば3Dプリンタ、産業用の製造機械、医療用途にも用いることが可能であり、小型軽量化及び低コスト化が可能である。
【0093】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、所望の流路形状を容易に設定できる。
【0094】
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0095】
1…インクジェットヘッド、8…流路構造部、20…アクチュエータ部、21…駆動圧電素子、22…非駆動圧電素子、23…溝、26…圧電構造部、30…振動板、31…振動領域、32…支持領域、40…流路部、41…流路基板、42…隔壁部、43…ガイド壁、45…フレーム部、50…ノズルプレート、51…ノズル、70…駆動回路、71…配線フィルム、72…駆動IC、80…ヘッド流路、81…圧力室、82…供給側個別流路、83…供給側共通室、84…排出側個別流路、85…排出側共通室、100…インクジェット記録装置、111…筐体、112…媒体供給部、113…画像形成部、114…媒体排出部、115…搬送装置、116…制御部、117…支持部、118…搬送ベルト、119…支持プレート、120…ベルトローラ、121…ガイドプレート対、122…搬送用ローラ、130…ヘッドユニット、132…インクタンク、133…循環流路、134…供給ポンプ、135…負圧制御装置、211…圧電体層、221…内部電極、222…内部電極、223…外部電極、224…外部電極、451…内フレーム、452…外フレーム、731…ヘッド制御回路、821…供給側圧力流路、822…供給側狭窄流路、823…端部、831…ヘッド入口、841…排出側圧力流路、842…排出側狭窄流路、843…端部、851…ヘッド出口、1161…制御回路、1331…供給流路、1332…回収流路、1351…上流側圧力源、1352…下流側圧力源。