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特開2024-31374電子機器、フォーム判定方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031374
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】電子機器、フォーム判定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/00 20060101AFI20240229BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240229BHJP
   A63B 71/06 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
A63B69/00 C
A61B5/11 230
A63B71/06 M
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134890
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】井手 博康
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB11
4C038VB31
(57)【要約】
【課題】ユーザの運動情報に基づいてユーザの運動のフォームを判定することを可能にする。
【解決手段】電子機器100は、ユーザの腕に装着される電子機器100であって、ユーザの運動情報を検出する検出部160と、制御部110と、を備え、制御部110は、検出部160が検出した運動情報に基づいてユーザの運動のフォームを判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの腕に装着される電子機器であって、
前記ユーザの運動情報を検出する検出部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記検出部が検出した前記運動情報に基づいて前記ユーザの運動のフォームを判定する、
電子機器。
【請求項2】
前記検出部は、前記運動情報として、互いに直交する3軸の加速度成分を検出し、
前記制御部は、
前記検出部が検出した3軸の加速度成分に基づいて水平方向の速度成分である水平方向速度を取得し、
前記取得した水平方向速度を判定用値として、前記判定用値に基づいて前記ユーザの腕振りの方向を判定する、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記制御部は、
前記3軸の加速度成分を、前記3軸から選択された第1軸の加速度成分である第1加速度成分と、前記第1軸以外の2軸の加速度成分の和の成分である第2加速度成分と、に分解し、
前記第1加速度成分と前記第2加速度成分とに基づいて、前記水平方向速度を取得する、
請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1加速度成分の時系列データを示す信号である第1信号において第1基準周波数以上の高周波成分をカットして得られる第1平準化信号と、前記第2加速度成分の時系列データを示す信号である第2信号において前記第1基準周波数以上の高周波成分をカットして得られる第2平準化信号と、に基づいて、水平方向加速度を算出し、
前記算出した水平方向加速度から前記水平方向速度を取得する、
請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記制御部は、
前記水平方向加速度の時系列データを示す信号において第2基準周波数以上の高周波成分をカットして得られる平準化水平信号から前記水平方向速度を取得する、
請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記制御部は、
前記平準化水平信号の移動平均である水平加速度移動平均を算出し、
前記平準化水平信号から前記水平加速度移動平均を減算した値を積分して前記水平方向速度を取得する、
請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記制御部は、
前記水平方向速度の移動平均である水平速度移動平均を算出し、
前記水平方向速度から前記水平速度移動平均を減算した値を前記判定用値とする、
請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】
前記制御部は、少なくとも前記判定した腕振りの方向に基づいて前記ユーザの接地足を判定する、
請求項2から7のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項9】
前記制御部は、前記ユーザの足の接地のタイミングを検出し、
前記検出した接地のタイミング及び前記判定した腕振りの方向に基づいて前記ユーザの接地足を判定する、
請求項8に記載の電子機器。
【請求項10】
前記制御部は、
前記検出した接地のタイミングから次の接地のタイミングまでの期間において、前記判定用値が正の値を取る時間の方が負の値を取る時間よりも長ければ、前記装着されている腕と同じ側の足が接地していると判定する、
請求項9に記載の電子機器。
【請求項11】
ユーザの腕に装着され前記ユーザの運動情報を検出する検出部と制御部とを備える情報処理装置の前記制御部が、
前記検出部が検出した前記運動情報に基づいて前記ユーザの運動のフォームを判定する、
フォーム判定方法。
【請求項12】
ユーザの腕に装着され前記ユーザの運動情報を検出する検出部と制御部とを備える情報処理装置の前記制御部に、
前記検出部が検出した前記運動情報に基づいて前記ユーザの運動のフォームを判定する、
処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、フォーム判定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートウォッチ、活動量計等のウェアラブル端末のように、腕に装着して、ユーザの体の動きを検出する電子機器が開発されてきている。このような電子機器で用いられる技術として、例えば特許文献1には、加速度センサを用いてユーザの歩数を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-90548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術は、加速度センサにより得られる加速度データからユーザの前後方向の加速度を算出し、算出した前後方向加速度が0となる時点を一歩としてカウントすることで歩数を計数する。実際には正確な前後方向加速度を算出するのは困難だが、歩数を計数するには前後方向加速度の符号の反転を検出できれば十分なので、この方法で問題なく歩数を計数することができる。しかし、このような方法では、歩数を計数することはできるが、実際の運動のフォームを判定(推定)するのには不向きである。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、ユーザの運動情報に基づいてユーザの運動のフォームを判定することを可能にする電子機器、フォーム判定方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る電子機器の一態様は、
ユーザの腕に装着される電子機器であって、
前記ユーザの運動情報を検出する検出部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記検出部が検出した前記運動情報に基づいて前記ユーザの運動のフォームを判定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ユーザの運動情報に基づいてユーザの運動のフォームを判定することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る電子機器の機能構成の一例を示すブロック図である。
図2】実施の形態に係る電子機器をユーザの左手首に装着した場合に検出部で検出される加速度の各軸を説明する図である。
図3】実施の形態に係る電子機器で検出される加速度の一例を示す図である。
図4】実施の形態に係る腕振り判定処理のフローチャートの一例である。
図5】実施の形態に係る腕振り判定処理で算出されるx2軸の加速度を説明する図である。
図6】実施の形態に係る腕振り判定処理で算出される水平方向の加速度ha等を説明する図である。
図7】実施の形態に係る腕振り判定処理で算出されるノルムn及び平準化水平信号Lhaの一例を示す図である。
図8】実施の形態に係る腕振り判定処理で得られる水平方向速度の一例を示す図である。
図9】ユーザが腕をほぼ直角に曲げて歩行した場合に実施の形態に係る電子機器で検出される加速度の一例を示す図である。
図10】ユーザが腕をほぼ直角に曲げて歩行した場合に実施の形態に係る腕振り判定処理で算出されるノルムn及び平準化水平信号Lhaの一例を示す図である。
図11】ユーザが腕をほぼ直角に曲げて歩行した場合に実施の形態に係る腕振り判定処理で得られる水平方向速度の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態に係る電子機器等について、図面を参照して説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。
【0010】
(実施の形態)
実施の形態に係る電子機器は、ユーザの腕に装着されて、加速度センサにより運動のフォームを判定することができる情報処理装置であり、例えばスマートウォッチや電子時計である。
【0011】
電子機器100は、図1に示すように、制御部110、記憶部120、入力部130、出力部140、通信部150、検出部160を備える。
【0012】
制御部110は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで構成される。制御部110は、記憶部120に記憶されているプログラムにより、電子機器100の各種機能を実現する処理や後述する腕振り判定処理等を実行する。また制御部110は、マルチスレッドに対応し、複数の処理を並行して実行することができる。
【0013】
記憶部120は、制御部110が実行するプログラムや、必要なデータを記憶する。記憶部120は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等を含み得るが、これらに限られるものではない。なお、記憶部120は、制御部110の内部に設けられていてもよい。
【0014】
入力部130は、押しボタンスイッチ、タッチパネル等のユーザインタフェースであり、ユーザからの操作入力を受け付ける。入力部130がタッチパネルを備える場合は、出力部140のディスプレイと一体化したタッチパネルであってもよい。
【0015】
出力部140は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイを備え、電子機器100の機能を提供する表示画面や操作画面等を表示する。
【0016】
通信部150は、例えば無線LAN(Local Area Network)、LTE(Long Term Evolution)等に対応したネットワークインタフェースである。電子機器100は、通信部150を介してインターネットや他の装置と通信することができる。
【0017】
検出部160は、ユーザの運動情報を検出する。本実施の形態ではユーザの運動情報として加速度の情報を用いる。したがって検出部160は、互いに直交する3軸(X軸、Y軸、Z軸)それぞれの方向の加速度を検出する加速度センサを備える。この加速度センサでは、概ね25Hz以上100Hz以下の標本化周波数によって加速度が検出されるのが好ましい。制御部110は、検出部160が備える加速度センサで検出した値を検出値として任意のタイミング(ただし時間的な分解能は標本化周波数に依存する)で取得することができる。
【0018】
電子機器100は、図2に示すようにユーザの手首にバンド190で装着される。装着される腕は右腕でも左腕でもよいが、ここでは図2に示すように、左の手の甲側に装着されている場合で説明する。なお、装着する腕が左右のどちらであるかは、入力部130を介して入力する等して、記憶部120に記憶されるようにしてもよい。
【0019】
この場合、検出部160の加速度センサの各軸は、図2に示すように、小指から親指に向かう方向がx軸、手首の長掌筋がある側(手のひら側)からその裏側(手の甲側)に向かう方向がy軸、手から肘に向かう方向がz軸となる。なお重力は下向きの力だが、重力加速度は、無重力空間内で物体が上方向に1Gで加速しているときに生じる加速度と区別が付かない。このため、加速度センサは重力加速度を鉛直上向きの加速度として検出する。
【0020】
ユーザが図2に示すように電子機器100を装着して歩行すると、検出部160により、各軸の加速度が標本化周波数でサンプリングされた離散信号として取得される。ユーザが肘を曲げず歩行した場合、例えば図3に示すように各軸の加速度が取得される。この場合、重力加速度の影響を受けるz軸の値が最も大きくなり、手の前後の振れの影響を受けるx軸の値が次いで大きくなることが多い。また、歩行時に手が左右に振れることは少ないため、y軸の値は比較的小さくなることが多い。
【0021】
したがって、このような場合、x軸の加速度の値に基づいて腕振りの方向を判定できると考えてもおかしくはない。しかし、実際には電子機器100の装着位置のずれやユーザの手の振り方の癖等の影響により、x軸に腕の前後の振れのみが反映されるとは限らない。そこで、電子機器100は、腕振りの方向を判定する際に、検出部160で検出される3軸の加速度の値を鉛直方向(重力方向)と、鉛直方向に直交する方向(水平方向)とに分解し、後者の値(水平方向の加速度)から水平方向の速度を取得し、この水平方向速度に基づいて腕振りの方向を判定する。
【0022】
このような3軸の加速度の値に基づいて腕振りの方向を判定する腕振り判定処理について、図4を参照して説明する。この処理は、電子機器100が起動すると他の必要な処理と並行して実行されるようになっていてもよいし、入力部130等を介してユーザから腕振り判定をするように指示を受けたら実行されるようになっていてもよい。
【0023】
まず、制御部110は、検出部160からx軸、y軸、z軸それぞれの加速度の値(x軸信号、y軸信号、z軸信号)を取得する(ステップS101)。次に制御部110は、加速度のx軸成分(x軸信号)とy軸成分(y軸信号)とから、xy平面におけるx2軸の加速度(x2信号)を算出する(ステップS102)。
【0024】
x2軸の加速度とは、図5に示すように、加速度のx軸方向のベクトルとy軸方向のベクトルの和ベクトルであり、この和ベクトルはz軸と直交している。そして、x2軸の加速度(x2信号)の値(スカラー値)は、加速度のx軸方向とy軸方向を合成したベクトルのL2ノルムとなる。また便宜上、x2軸の加速度(x2信号)の符号として、x軸の加速度の符号を付与することとする。つまり、時刻iにおけるx軸信号をxで表し、y軸信号をyで表すと、x2信号(x2)は以下の式(1)で算出される。ただし、sign(x)はxの符号が正なら1、負なら-1を返す関数である。
x2=√(x +y )×sign(x)…(1)
【0025】
そして、制御部110は、z軸の加速度(3軸から選択された第1軸(z軸)の加速度成分である第1加速度成分)の時系列データを示す信号(第1信号)とx2軸の加速度(第1軸以外の2軸(x軸及びy軸)の和の成分である第2加速度成分)の時系列データを示す信号(第2信号)のそれぞれに第1基準周波数(0.05Hz~1Hz。例えば0.1Hz)以上の高周波成分をカットするローパスフィルタ(LPF:Low Pass Filter)を適用して第1平準化信号(LPF適用後のz)と第2平準化信号(LPF適用後のx2)を取得する(ステップS103)。
【0026】
そして制御部110は、第1平準化信号で表されるベクトルと第2平準化信号で表されるベクトルの合成ベクトルである平準化ベクトルLv(Leveling vector)のx2軸からの角度v_angを算出する(ステップS104)。つまり、時刻iにおけるx2信号をx2で表し、z軸信号をzで表すと、v_angは以下の式(2)で算出される。
v_ang=tan-1(LPF適用後のz/LPF適用後のx2)…(2)
【0027】
次に、制御部110は、z軸信号(第1加速度成分)とx2軸信号(第2加速度成分)の合成ベクトルvnのL2ノルムであるnと、vnのx2軸からの角度であるn_angを算出する(ステップS105)。つまり、時刻iにおけるx2信号をx2で表し、z軸信号をzで表すと、n及びn_angは以下の式(3)及び式(4)で算出される。
=√(x2 +z ) …(3)
n_ang=tan-1(z/x2)…(4)
【0028】
そして、制御部110は、z軸信号(第1加速度成分)とx2軸信号(第2加速度成分)の合成ベクトルvnが、x2-z平面上でv_angに直交する方向の成分を取ることにより、水平方向の加速度ha(horizontal acceleration)を算出する(ステップS106)。つまり、時刻iにおけるノルムnをnで表し、v_angをv_angで表し、n_angをn_angで表すと、haは以下の式(5)で算出される。
ha=n×sin(n_ang-v_ang)×(-1)…(5)
【0029】
以上の各値の関係を図6に示す。z軸の加速度(第1加速度成分)やx2軸の加速度(第2加速度成分)にローパスフィルタを適用することにより、歩行や腕振りによる各種ノイズ成分が除去され、重力加速度が支配的な値となるので、第1平準化信号で表されるベクトルと第2平準化信号で表されるベクトルの合成ベクトルである平準化ベクトルLvは鉛直方向(平均的な重力の方向)のベクトルとなる。したがって、平準化ベクトルLvに垂直なベクトルであるベクトルhaは水平方向のベクトルと考えることができ、ベクトルhaで水平方向の加速度が表されることがわかる。
【0030】
そして、制御部110は、水平方向加速度haの高域のノイズ成分を除去するために、水平方向加速度haの時系列データを示す信号に、第2基準周波数(1.5Hz~3Hz。例えば2Hz)以上の高周波成分をカットするローパスフィルタを適用して、平準化水平信号Lha(Leveling ha)を取得する(ステップS107)。例えば、図3に示す3軸の加速度の時系列データを示す信号(時系列信号)から合成ベクトルvnのノルムnと平準化水平信号Lhaを算出すると、図7に示すようなグラフが得られる。
【0031】
そして、制御部110は、平準化水平信号Lhaを積分して水平方向の速度hv(horizontal velocity)を算出する(ステップS108)。ただし、平準化水平信号Lhaには、ノイズ成分として、水平方向以外の信号や、歩行や走行による(ユーザの移動に伴う)信号も含まれている。そこで、これらのノイズ成分の影響を抑えるため、制御部110は、平準化水平信号Lhaの移動平均である水平加速度移動平均MAha(Moving Average of ha)を算出し、平準化水平信号Lhaから水平加速度移動平均MAhaを減算してから積分することで水平方向速度hvを算出してもよい。
【0032】
そして、制御部110は水平方向速度hvから腕振りの方向を判定するための判定用値JV(Judgement Value)を算出する(ステップS109)。ここで制御部110は、水平方向速度hvをそのまま判定用値JVとしてもよい。ただし、水平方向速度hvにも、ノイズ成分として、水平方向以外の成分や、歩行や走行による(ユーザの移動に伴う)成分が含まれている。したがって、これらのノイズ成分の影響を抑えるため、制御部110は、水平方向速度hvの移動平均である水平速度移動平均MAhv(Moving Average of hv)を算出し、水平方向速度hvから水平速度移動平均MAhvを減算することで判定用値JV(Judgement Value)を算出してもよい。
【0033】
そして、制御部110は、判定用値JVに基づいて腕振りの方向を判定し(ステップS110)、腕振り判定処理を終了する。判定用値JV(すなわち水平方向速度hv)の値は、前方向に腕が動いているときは正の値を取り、後ろ方向に腕が動いているときは負の値を取る。そして、腕振りの折り返しの時点では値は0になる。例えば、図7に示す平準化水平信号Lhaから水平方向速度hvを算出すると、図8に示すようなグラフが得られる。このグラフで値が0になっているタイミングで腕振りの方向が切り替わり、値が正の間の腕振りの方向は前方向であり、値が負の間の腕振りの方向は後ろ方向である。したがって、制御部110は、水平方向速度hv(すなわち判定用値JV)の値に基づいて、腕振りの方向を判定することができる。
【0034】
さらに、制御部110は、足の接地タイミングと判定用値JVとから接地足を判定することもできる。例えば、制御部110は、一方の足の接地のタイミングからもう一方の足の接地のタイミングまでの期間において、判定用値JVが正の値を取る時間の方が負の値を取る時間よりも長ければ、電子機器100が装着されている腕と同じ側の足が接地していると判定する。
【0035】
また、入力部130を介して入力する等して、電子機器100を装着する腕が左右どちらかであると予め記憶部120に記憶しておけば、少なくとも判定用値JVが取る値によって接地足を判定(推定)することもできる。例えば、電子機器を装着する腕が左腕であってユーザが歩行中である場合、判定用値JVが0から正に切り替わった際には、左足が接地足であると判定(推定)する。また、判定用値JVが0から正に切り替わった瞬間には、両足が接地している可能性が高いが、右足は判定用値JVの増加と共に接地足ではなくなり、判定用値JVが減少して再び判定用値JVが0となる際に、再度接地足になると判定(推定)できる。また、判定用値JVが極値を取る際に腕がユーザの身体の横にあると判定(推定)しても良い。上記については判定用値JVが負の値を取る際や、装着腕を右腕にした場合でも同様の判定(推定)を行うことができる。
【0036】
なお、足の接地の検出については、任意の方法を使用可能であるが、例えば、制御部110は、検出部160で検出された3軸全ての加速度の合成信号のピークを検出することによって、足の接地を検出することができる。この場合、制御部110は、接地検出部としても機能することになる。
【0037】
以上の腕振り判定処理により、制御部110は、3軸の加速度のデータに基づいてユーザの腕振りの方向を判定することができる。また、制御部110は、足の接地タイミングを検出することで、接地足を判定することもできる。
【0038】
上述の説明では、ユーザが肘を曲げずに歩行した場合で説明したが、次に、ユーザが肘を曲げて(例えば腕をほぼ直角に曲げて)歩行した場合も検討する。この場合、x軸が最も重力加速度の影響を受け、z軸は腕の前後の振りの影響を受けることになり、例えば図9に示すように各軸の加速度が取得される。
【0039】
そして、ノルムnについては図5及び図6からわかるようにx、y、zの3軸のうち最も振幅の大きい軸の影響を大きく受け、図10に示すように、図9のx軸の加速度に類似するグラフになる。
【0040】
また、水平方向加速度haは、平準化ベクトルLvに垂直なベクトルであるが、平準化ベクトルLvはこの場合においても各種ノイズ成分が除去され、重力加速度が支配的な値となるので、鉛直方向(平均的な重力の方向)のベクトルとなる。したがって、肘を曲げて歩行した場合も水平方向加速度haとして、鉛直方向(Lv)に垂直なベクトルの値が得られ、制御部110は、これを平準化することで、例えば図10に示すような平準化水平信号Lhaを取得することができる。
【0041】
そして、制御部110は、平準化水平信号Lhaを積分することで、例えば図11に示すような水平方向速度hvを算出することができる。
【0042】
このように、第1軸が重力の影響を最も受ける軸(肘を曲げない場合のz軸、肘を曲げた場合のx軸)でない場合であっても、平準化ベクトルLvを算出することにより、ほぼ鉛直方向のベクトルを求めることができ、平準化ベクトルLvに垂直なベクトルを算出することで、水平方向加速度haを求めることできる。
【0043】
(変形例)
なお、上述の実施の形態では、ユーザの運動情報として加速度を用いたが、ユーザの運動情報は加速度に限定されるわけではない。例えばユーザの運動情報として角速度を用いてもよい。運動情報として角速度を用いる場合、検出部160はジャイロセンサを備えることになる。そして、制御部110は、ジャイロセンサで検出した腕の角速度に基づいてユーザの腕振りの方向を判定する。また、ユーザの運動情報として、加速度と角速度を両方ともを用いてもよい。この場合、制御部110は、加速度に基づいて判定した腕振りの方向と角速度に基づいて判定した腕振りの方向とを照合することで、腕振りの判定の精度を向上させることができる。
【0044】
また、上述の実施の形態では、ユーザの運動のフォームの判定として、腕振りの方向の判定や、接地足の判定を行ったが、制御部110は、判定した腕振りや接地足の情報に基づいてユーザの運動のフォーム分析(運動のフォームをアニメーションで表示し、改善点をアドバイスする等)をしてもよい。また、制御部110は、判定した腕振りや接地足、フォーム分析結果等を、通信部150を介して他の機器(スマートウォッチ、スマートフォン等)に送信して、当該他の機器の表示部に表示させるようにしてもよい。
【0045】
また、電子機器100は、スマートウォッチに限らず、検出部160を備えたスマートフォン、携帯型のタブレットやPC(Personal Computer)等のコンピュータによっても実現することができる。具体的には、上記実施の形態では、制御部110が実行する腕振り判定処理等のプログラムが、記憶部120に予め記憶されているものとして説明した。しかし、プログラムを、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto-Optical disc)、メモリカード、USBメモリ等の非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、そのプログラムをコンピュータに読み込んでインストールすることにより、上述の各処理を実行することができるコンピュータを構成してもよい。
【0046】
さらに、プログラムを搬送波に重畳し、インターネットなどの通信媒体を介して適用することもできる。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にプログラムを掲示して配信してもよい。そして、このプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上述の各処理を実行できるように構成してもよい。
【0047】
また、制御部110は、シングルプロセッサ、マルチプロセッサ、マルチコアプロセッサ等の任意のプロセッサ単体で構成されるものの他、これら任意のプロセッサと、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field‐Programmable Gate Array)等の処理回路とが組み合わせられて構成されてもよい。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。
【符号の説明】
【0049】
100…電子機器、110…制御部、120…記憶部、130…入力部、140…出力部、150…通信部、160…検出部、190…バンド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11