(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031376
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 7/06 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
H02K7/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134892
(22)【出願日】2022-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】加藤 瞬
(72)【発明者】
【氏名】白井 寛
(72)【発明者】
【氏名】水谷 仁哉
【テーマコード(参考)】
5H607
【Fターム(参考)】
5H607AA12
5H607AA15
5H607BB01
5H607BB14
5H607BB26
5H607CC03
5H607DD03
5H607DD19
5H607EE49
5H607EE52
5H607EE54
5H607JJ10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電動アクチュエータの外部から手動で出力シャフトを容易に回転させることができる電動アクチュエータを提供する。
【解決手段】モータ軸J1を中心として回転可能なモータシャフト24を有するモータ部20と、モータシャフト24と連結された伝達機構30と、伝達機構30を介してモータシャフト24の回転が伝達される出力シャフトと、モータ部20、伝達機構30、および出力シャフトを内部に収容するケース10と、ケース10の内部とケース10の外部とを通気可能なフィルタ部材90と、を備える。ケース10は、フィルタ部材90が着脱可能に取り付けられる貫通孔15bを有する。モータシャフト24は、貫通孔15bに挿入可能なモータ回転治具をケース10の内部において連結可能な連結部25fを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ軸を中心として回転可能なモータシャフトを有するモータ部と、
前記モータシャフトと連結された伝達機構と、
前記伝達機構を介して前記モータシャフトの回転が伝達される出力シャフトと、
前記モータ部、前記伝達機構、および前記出力シャフトを内部に収容するケースと、
前記ケースの内部と前記ケースの外部とを通気可能なフィルタ部材と、
を備え、
前記ケースは、前記フィルタ部材が着脱可能に取り付けられる貫通孔を有し、
前記モータシャフトは、前記貫通孔に挿入可能なモータ回転治具を前記ケースの内部において連結可能な連結部を有する、電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記ケースの壁部を前記モータ軸の軸方向に貫通し、且つ、前記モータシャフトの軸方向一方側に位置し、
前記連結部は、前記モータシャフトの軸方向一方側の端部に設けられ、
軸方向に見て、前記連結部と前記貫通孔とが重なる、請求項1に記載の電動アクチュエータ。
【請求項3】
前記モータシャフトの軸方向一方側の端部の外径は、前記モータシャフトの軸方向他方側の端部の外径よりも大きい、請求項2に記載の電動アクチュエータ。
【請求項4】
前記連結部は、前記モータシャフトの軸方向一方側を向く面から軸方向に窪む凹部である、請求項2または3に記載の電動アクチュエータ。
【請求項5】
前記貫通孔は、前記ケースを前記モータ軸と交差する第1方向に貫通し、
前記連結部は、前記モータシャフトの外周面の一部に設けられ、
前記第1方向に見て、前記連結部と前記貫通孔とが重なる、請求項1に記載の電動アクチュエータ。
【請求項6】
前記連結部は、周方向に並ぶ複数の歯部を有する歯車部を有する、請求項5に記載の電動アクチュエータ。
【請求項7】
前記伝達機構は減速機構である、請求項1に記載の電動アクチュエータ。
【請求項8】
前記貫通孔は円形状の孔であり、
前記貫通孔の内周面は、前記ケースの外側面から内側面に向かうにしたがって、径が小さくなるテーパ状である、請求項1に記載の電動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータ、およびモータと連結される減速機構を備える電動アクチュエータが知られている。例えば、特許文献1には、減速機構を介して、モータ部の駆動力を出力シャフトに伝達する構成の電動アクチュエータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の電動アクチュエータは、モータがケースの内部に収容され、出力シャフトの一部のみがケースの外部に露出する構成である。そのため、電動アクチュエータが故障した場合において、電動アクチュエータの外部から手動で出力シャフトを回転させるためには、出力シャフト自体を回転させる必要がある。しかしながら、減速比が大きな伝達機構を介して、出力シャフトがモータと接続される場合、出力シャフトを回転させるための回転トルクが大きくなるため、手動で出力シャフト自体を回転させることが困難であるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、電動アクチュエータの外部から手動で出力シャフトを容易に回転させることができる電動アクチュエータを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動アクチュエータの一つの態様は、モータ軸を中心として回転可能なモータシャフトを有するモータ部と、前記モータシャフトと連結された伝達機構と、前記伝達機構を介して前記モータシャフトの回転が伝達される出力シャフトと、前記モータ部、前記伝達機構、および前記出力シャフトを内部に収容するケースと、前記ケースの内部と前記ケースの外部とを通気可能なフィルタ部材と、を備える。前記ケースは、前記フィルタ部材が着脱可能に取り付けられる貫通孔を有する。前記モータシャフトは、前記貫通孔に挿入可能なモータ回転治具を前記ケースの内部において連結可能な連結部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、電動アクチュエータにおいて、電動アクチュエータの外部から手動で出力シャフトを容易に回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態の電動アクチュエータを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の電動アクチュエータを示す断面図である。
【
図3】
図3は、第1一実施形態の電動アクチュエータを示す断面図であって、
図2におけるIII-III断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の電動アクチュエータを示す断面図であって、
図2におけるIV-IV断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の伝達機構を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の手動回転方法を示す断面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の電動アクチュエータを示す断面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態の手動回転方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る電動アクチュエータについて説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0010】
各図においてZ軸方向は、鉛直方向である。+Z側は、鉛直方向上側であり、-Z側は、鉛直方向下側である。以下の説明では、鉛直方向上側を単に「上側」と呼び、鉛直方向下側を単に「下側」と呼ぶ。
【0011】
<第1実施形態>
図1に示す本実施形態の電動アクチュエータ1は、車両に搭載される電動アクチュエータである。より詳細には、車両の運転者のシフト操作に基づいて駆動されるパーク・バイ・ワイヤ方式のアクチュエータ装置に搭載される。
図2に示すように、電動アクチュエータ1は、ケース10と、モータ部20と、伝達機構30と、支持部材50と、制御部70と、フィルタ部材90と、を備える。
図3に示すように、電動アクチュエータ1は、出力シャフト38を備える。
【0012】
図1から
図6の各図において、X軸方向は、Z軸方向と直交し、正の側(+X側)を左側とし、負の側(-X側)を右側とする左右方向である。また、Y軸方向は、Z軸方向およびX軸方向の両方と直交し、正の側(+Y側)を前側とし、負の側(-Y側)を後側とする前後方向である。なお、左側、右側、前側、および後側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0013】
なお、
図1から
図6の各図に示すモータ軸J1が延びる方向は、X軸方向、すなわち左右方向と平行である。以下の説明においては、モータ軸J1と平行な方向を単に「軸方向」と呼ぶ。また、モータ軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、モータ軸J1を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。本実施形態において、左側(+X側)は軸方向一方側に相当し、右側(-X側)は軸方向他方側に相当する。
【0014】
周方向は、各図において矢印θ1で示される。周方向のうち矢印θ1が向く側(+θ1側)を「周方向一方側」と呼ぶ。周方向のうち矢印θ1が向く側と逆側(-θ1側)を「周方向他方側」と呼ぶ。周方向一方側は、左側(+X側)から見てモータ軸J1回りに時計回りに進む側である。周方向他方側は、左側から見てモータ軸J1回りに反時計回りに進む側である。
【0015】
図2に示すように、ケース10は、モータ部20、伝達機構30、支持部材50、および制御部70を内部に収容する。ケース10には、フィルタ部材90が着脱可能に取り付けられる。
図3に示すように、ケース10は、出力シャフト38を内部に収容する。
図2に示すように、ケース10は、モータ軸J1を囲む筒状である。ケース10は、収容部11と、蓋部17と、を有する。
【0016】
収容部11は、軸方向に延びる箱状である。収容部11は、下側に開口する第1開口部11aを有する。第1開口部11aは、収容部11の下側の端部に固定された蓋部17によって塞がれている。収容部11は、モータ収容部12と、伝達機構収容部14と、を有する。
【0017】
モータ収容部12は、モータ部20を内部に収容する。モータ収容部12は、モータ部20の右側(-X側)に位置する第1側壁部13を有する。また、
図4に示すように、モータ収容部12のうちモータ部20の前側に位置する部分およびモータ部20の後側に位置する部分には、それぞれ、雌ねじ穴12eが設けられる。雌ねじ穴12eは、モータ収容部12の内面から上側に窪む穴である。
【0018】
図2に示すように、伝達機構収容部14は、伝達機構30を内部に収容する。伝達機構収容部14は、モータ収容部12の左側(+X側)に配置される。伝達機構収容部14は、伝達機構30の左側に位置する第2側壁部15を有する。第2側壁部15は、第2側壁基部15aと、貫通孔15bと、第1突出部15eと、を有する。第2側壁基部15aは、軸方向と直交する方向に拡がる板状である。
【0019】
貫通孔15bは、第2側壁基部15aを軸方向に貫通する孔である。すなわち、貫通孔15bは、ケース10の壁部を軸方向に貫通する孔である。貫通孔15bは、モータ軸J1を中心とする円形状の孔である。貫通孔15bを介して、ケース10の内部とケース10の外部とが繋がる。
図6に示すように、貫通孔15bの内周面のうち左側(+X側)の部分には、テーパ部15cが設けられる。テーパ部15cは、ケース10の外側面から内側面に向かうにしたがって、内径が小さくなるテーパ状である。すなわち、貫通孔15bの内周面の一部は、テーパ状である。
【0020】
第1突出部15eは、第2側壁基部15aから左側(+X側)に突出する。軸方向に見て、第1突出部15eは、モータ軸J1を中心とする円形状である。第1突出部15eは、貫通孔15bの径方向外側に配置される。
【0021】
図3に示すように、伝達機構収容部14は、伝達機構30の上側に配置される第1壁部14aと、伝達機構30の前側(+Y側)に配置される第2壁部14bと、伝達機構30の後側(+Y側)に配置される第3壁部14cと、を有する。第1壁部14aには、出力孔14eと、第1支持穴14fと、が設けられる。
【0022】
出力孔14eは、第1壁部14aをZ軸方向に貫通する孔である。出力孔14eは、第1壁部14aの前側(+Y側)の部分に設けられる。Z軸方向に見て、出力孔14eは、モータ軸J1と直交しZ軸と平行な方向に延びる第3軸線J3を中心とする円形状である。
第1支持穴14fは、第1壁部14aの下側を向く面から、上側に窪む穴である。第1支持穴14fは、第1壁部14aの後側(-Y側)の部分に設けられる。Z軸方向に見て、第1支持穴14fは、モータ軸J1と直交しZ軸と平行な方向に延びる第2軸線J2を中心とする円形状である。
【0023】
以下の説明において、第2軸線J2に平行な方向を単に「第2軸方向」と呼び、第2軸線J2を中心とする径方向を単に「第2径方向」と呼び、第2軸線J2を中心とする周方向を単に「第2周方向」と呼ぶ。第2軸線J2は、仮想軸線である。第2周方向は、各図において矢印θ2で示される。
【0024】
以下の説明において、第3軸線J3に平行な方向を単に「第3軸方向」と呼び、第3軸線J3を中心とする径方向を単に「第3径方向」と呼び、第3軸線J3を中心とする周方向を単に「第3周方向」と呼ぶ。第3軸線J3は、仮想軸線である。第3周方向は、各図において矢印θ3で示される。第3周方向のうち矢印θ3が向く側(+θ3側)を「第3周方向の一方側」と呼ぶ。第3周方向のうち矢印θ3が向く側と逆側(-θ3側)を「第3周方向の他方側」と呼ぶ。第3周方向の一方側は、下側(-Z側)から見て、第3軸線J3回りに時計回りに進む側である。第3周方向の他方側は、下側から見て、第3軸線J3回りに反時計回りに進む側である。
【0025】
支持部材50は、モータ部20、伝達機構30、および制御部70を支持する。
図2に示すように、支持部材50は、モータ支持部51と、底壁部53と、伝達機構支持部55と、第3側壁部56と、基板支持部57と、を有する。
図3に示すように、支持部材50は、突出壁部54を有する。
図4に示すように、支持部材50は、取付部52を有する。
【0026】
図2に示すように、モータ支持部51は、軸方向に沿って延びる。
図4に示すように、モータ支持部51は、モータ部20の下側の部分の径方向外側、すなわち下側に配置される。モータ支持部51は、後述するモータケース40を介して、モータ部20を支持する。モータ支持部51は、軸方向に見て、モータ軸J1を中心とし、下側に凸となる円弧状である。
【0027】
取付部52は、軸方向に延びる略四角柱状である。本実施形態において、取付部52は、第1取付部52aと、第2取付部52bと、を有する。第1取付部52aは、モータ支持部51の周方向他方側(-θ1側)の部分と径方向に繋がる。第1取付部52aには、第2孔部52dが設けられる。第2孔部52dは、第1取付部52aをZ軸方向に貫通する孔である。
【0028】
第2取付部52bは、モータ支持部51の周方向一方側(+θ1側)の部分と径方向に繋がる。第2取付部52bには、第3孔部52eが設けられる。第3孔部52eは、第2取付部52bをZ軸方向に貫通する孔である。第2孔部52dおよび第3孔部52eには、ねじ97がZ軸方向に通される。各ねじ97が、各雌ねじ穴12eに締め込まれることで、支持部材50はケース10に固定される。
【0029】
図2に示すように、底壁部53は、Z軸方向と直交する方向に拡がる板状である。底壁部53の板面は、Z軸方向を向く。図示は省略するが、底壁部53の右側(-X側)の端部は、第1取付部52aおよび第2取付部52bと繋がる。
図3に示すように、底壁部53は、伝達機構30の下側に配置される。底壁部53は、第1孔部53aと、第2支持穴53bと、を有する。
【0030】
第1孔部53aは、底壁部53をZ軸方向に貫通する孔である。第1孔部53aは、底壁部53の前側(+Y側)の部分に設けられる。第1孔部53aは、第3軸線J3を中心とする円形状の孔である。第1孔部53aの内周面には、第4軸受96が保持される。
第2支持穴53bは、底壁部53の上側を向く面から、下側に窪む穴である。第2支持穴53bは、底壁部53の後側(-Y側)の部分に設けられる。Z軸方向に見て、第2支持穴53bは、第2軸線J2と中心とする円形状である。Z軸方向に見て、第2支持穴53bは、第1支持穴14fと重なる。
【0031】
突出壁部54は、出力シャフト38の第3径方向外側に配置される。本実施形態において突出壁部54は、出力シャフト38の前側(+Y側)に配置される。突出壁部54は、底壁部53から上側に突出する。図示は省略するが、Z軸方向に見て、突出壁部54は、第3軸線J3を中心とする略円弧状である。
【0032】
図2に示すように、伝達機構支持部55は、底壁部53の左側(+X側)の端部から上側に突出する。伝達機構支持部55は、モータ軸J1を中心とする略円環状である。伝達機構支持部55の内周面には、第3軸受95が保持される。
【0033】
第3側壁部56は、伝達機構支持部55の左側(+X側)に配置される。第3側壁部56は、モータ軸J1を中心とする略円環板状である。第3側壁部56の板面は、軸方向を向く。第3側壁部56は、伝達機構支持部55の内縁と繋がる。第3側壁部56には、第4孔部56aが設けられる。第4孔部56aは、モータ軸J1を中心とする略円形状の孔である。軸方向に見て、第4孔部56aは、貫通孔15bと重なる。
【0034】
基板支持部57は、Z軸方向に突出する円柱状である。基板支持部57は、複数設けられる。複数の基板支持部57は、モータ支持部51から下側に突出する基板支持部57と、底壁部53から下側に突出する基板支持部57と、を含む。
【0035】
モータ部20は、モータケース40と、ロータ22と、ステータ23と、第1軸受93と、第2軸受94と、を有する。モータケース40は、ロータ22、ステータ23、第1軸受93、および第2軸受94を内部に収容する。モータケース40は、モータケース本体41と、蓋体42と、を有する。
【0036】
モータケース本体41は、モータ軸J1を中心として軸方向に延びる円筒状である。モータケース本体41は、左側(+X側)および右側(-X側)に開口する。モータケース本体41は、ロータ22およびステータ23を径方向外側から囲む。
図4に示すように、モータケース本体41の下側の部分は、支持部材50のモータ支持部51に保持される。モータケース本体41の上側の部分は、ケース10のモータ収容部12に保持される。
図2に示すように、モータケース本体41の左側(+X側)の部分の内周面には、第2軸受94が保持される。蓋体42は、モータ軸J1を中心とする円環状である。蓋体42は、モータケース本体41の右側(-X側)の端部に固定される。蓋体42の右側の部分の内周面には、第1軸受93が保持される。
【0037】
ロータ22は、モータ軸J1を中心に回転可能である。ロータ22は、ロータコア22aと、複数のモータマグネット22bと、モータシャフト24と、を有する。ロータ22の回転は、伝達機構30に伝達される。ロータコア22aは、モータ軸J1を中心とする略円環状である。
図4に示すように、複数のモータマグネット22bは、それぞれ、ロータコア22aの外周面に固定される。
【0038】
図2に示すように、モータシャフト24は、モータ軸J1に沿って軸方向に延びる略円柱状である。モータシャフト24は、貫通孔15bの右側(-X側)、すなわち軸方向他方側に位置する。モータシャフト24は、シャフト部24aと、入力ギヤ25と、を有する。本実施形態においてモータシャフト24は、互いに別体であるシャフト部24aと入力ギヤ25とが軸方向に連結されて構成されている。
【0039】
シャフト部24aは、モータ軸J1に沿って軸方向に延びる。シャフト部24aの外周面には、ロータコア22aが固定される。シャフト部24aの左側(+X側)の端部は、伝達機構収容部14の内部に位置する。シャフト部24aの左側の部分は、第2軸受94に回転可能に支持される。シャフト部24aの右側の部分は、蓋体42に保持された第1軸受93に回転可能に支持される。これらにより、モータシャフト24は、モータ軸J1を中心として回転可能である。
【0040】
入力ギヤ25は、モータ軸J1に沿って軸方向に延びる。入力ギヤ25は、シャフト部24aの左側(+X側)に配置される。入力ギヤ25は、胴部25aと、接続部25bと、第1歯車部25cと、連結部25fと、を有する。
【0041】
胴部25aは、モータ軸J1を中心として、軸方向に延びる略円柱状である。胴部25aの左側(+X側)の部分は、第3軸受95に支持される。胴部25aの左側の端部は、支持部材50の第4孔部56aの内部に位置する。胴部25aの左側を向く面は、第4孔部56aを介して、支持部材50の外部に露出する。軸方向に見て、胴部25aは、貫通孔15bと重なる。本実施形態において、胴部25aの左側の端部の外径は、シャフト部24aの右側(-X側)の端部の外径よりも大きい。つまり、モータシャフト24の左側、すなわち軸方向一方側の端部の外径は、モータシャフト24の右側、すなわち軸方向他方側の端部の外径よりも大きい。
【0042】
接続部25bは、胴部25aの右側(-X側)の端部から右側に突出する。接続部25bは、モータ軸J1を中心とする円環状である。接続部25bの内側には、シャフト部24aの左側(+X側)の端部が挿入される。接続部25bとシャフト部24aの左側の端部とは互いに連結されている。これにより、入力ギヤ25は、シャフト部24aと軸方向に接続される。入力ギヤ25は、シャフト部24aとともに、モータ軸J1回りに回転可能である。
第1歯車部25cは、胴部25aの外周面に設けられる。本実施形態において、第1歯車部25cは、軸方向に螺旋状に延びるウォームギヤである。
【0043】
連結部25fは、胴部25aの左側(+X側)を向く面に設けられる。すなわち、連結部25fは、モータシャフト24の左側、すなわち軸方向一方側の端部に設けられる。連結部25fは、第4孔部56aを介して、支持部材50の外部に露出する。軸方向に見て、連結部25fとケース10の貫通孔15bとは重なる。本実施形態において、連結部25fは、モータシャフト24の左側を向く面から軸方向に窪む凹部である。よって、本実施形態によれば、連結部25fを、切削加工などの簡易な加工方法で設けることができ、モータシャフト24の加工工数および製造コストが増大することを抑制できる。
図5に示すように、軸方向に見て、連結部25fは、径方向に延びる直線状である。連結部25fは、胴部25aの左側の端部を径方向に貫通している。連結部25fにおける径方向の両端部は、径方向外側に開口している。
【0044】
図2に示すように、ステータ23は、ロータ22の径方向外側に配置される。ステータ23は、ロータ22と径方向に隙間をあけて対向して配置される。ステータ23は、ステータコア23aと、ステータコア23aに装着されるインシュレータ23eと、インシュレータ23eを介してステータコア23aに装着される複数のコイル23fと、を有する。ステータコア23aは、モータ軸J1を中心とする略円環状である。ステータコア23aは、モータケース本体41に固定される。
図4に示すように、ステータコア23aは、コアバック部23bと、複数のティース部23cと、を有する。コアバック部23bは、モータ軸J1を中心とする略円環状である。複数のティース部23cは、それぞれ、コアバック部23bの内周面から径方向内側に向けて突出する。複数のティース部23cは、それぞれ、周方向に沿って間隔をあけて配置される。複数のティース部23cには、複数のコイル23fがインシュレータ23eを介してそれぞれ装着される。コイル23fには、図示しない外部電源から電力が供給される。
【0045】
図2に示すように、伝達機構30は、モータ部20の左側(+X側)に配置される。伝達機構30は、モータシャフト24と連結される。本実施形態において、伝達機構30は、ロータ22の回転を減速して出力シャフト38に伝達する減速機構である。伝達機構30は、入力ギヤ25の径方向外側に配置される。
図5に示すように、伝達機構30は、駆動ギヤ33と、出力ギヤ36と、中間シャフト32と、を有する。
【0046】
駆動ギヤ33は、第2軸線J2を中心として回転する。駆動ギヤ33は、入力ギヤ25の後側(-Y側)に配置される。駆動ギヤ33は、モータシャフト24の回転を出力ギヤ36に伝達する。駆動ギヤ33は、大径ギヤ34と、大径ギヤ34よりも半径が小さい小径ギヤ35と、を有する二段ギヤである。
【0047】
大径ギヤ34は、モータシャフト24の回転を小径ギヤ35に伝達する。大径ギヤ34は、第2軸線J2を中心として回転可能である。大径ギヤ34は、大径ギヤ本体部34aと、第2歯車部34bと、を有する。
大径ギヤ本体部34aは、第2軸線J2を中心とする略扇形状の板状である。大径ギヤ本体部34aの板面は、Z軸方向を向く。大径ギヤ本体部34aは、入力ギヤ25に向かって突出している。大径ギヤ本体部34aには、大径ギヤ本体部34aを第2軸方向に貫通する孔部34eが設けられる。孔部34eは、第2軸線J2を中心とする円形状の孔である。
【0048】
第2歯車部34bは、大径ギヤ本体部34aの外周面に設けられる。より詳細には、第2歯車部34bは、大径ギヤ本体部34aのうち入力ギヤ25に向かって突出する部分の先端部における外周面に設けられる。言い換えれば、第2歯車部34bは、大径ギヤ本体部34aの外周面のうち、略扇形状の大径ギヤ本体部34aの弧となる部分に設けられている。第2歯車部34bは、第2軸線J2を中心とする円弧状に延びる。第2歯車部34bは、第2周方向に並ぶ複数の第2歯部34cを有する。第2歯車部34bは、入力ギヤ25の第1歯車部25cと噛み合う。これにより、ロータ22の回転が駆動ギヤ33に伝達される。また、大径ギヤ34の回転は、モータシャフト24の回転に対して減速される。
【0049】
小径ギヤ35は、大径ギヤ34の回転を出力ギヤ36に伝達する。小径ギヤ35は、大径ギヤの上側(+Z側)に配置される。小径ギヤ35は、大径ギヤ34と固定される。小径ギヤ35は、第2軸線J2を中心として回転可能である。小径ギヤ35は、大径ギヤ34とともに第2軸線J2を中心に回転する。小径ギヤ35は、小径ギヤ本体部35aと、第3歯車部35bと、軸部35eと、を有する。
【0050】
小径ギヤ本体部35aは、第2軸線J2を中心とする略円環状である。小径ギヤ本体部35aの半径は、大径ギヤ本体部34aの半径よりも小さい。
図3に示すように、小径ギヤ本体部35aには、小径ギヤ本体部35aを第2軸方向に貫通する孔部35dが設けられる。孔部35dは、第2軸線J2を中心とする略円形状の孔である。
【0051】
図5に示すように、第3歯車部35bは、小径ギヤ本体部35aの外周面に設けられる。本実施形態において第3歯車部35bは、小径ギヤ本体部35aの外周面の一部のみに設けられる。より詳細には、第3歯車部35bは、出力ギヤ36と対向する部分に設けられる。第3歯車部35bは、第2軸線J2を中心とする円弧状に延びる。第3歯車部35bは、第2周方向に並ぶ複数の第3歯部35cを有する。
【0052】
図3に示すように、軸部35eは、小径ギヤ本体部35aから下側に向けて突出する。軸部35eは、第2軸線J2を中心とする円筒状である。軸部35eの下側の部分の外周面は、大径ギヤ34の孔部34eに固定される。これにより、大径ギヤ34と小径ギヤ35とが互いに固定される。
【0053】
中間シャフト32は、第2軸線J2を中心として第2軸方向に延びる円柱状である。中間シャフト32は、軸部35eの内部および孔部35dをZ軸方向に通される。中間シャフト32の上側の部分は、第1支持穴14fに支持される。中間シャフト32の下側の部分は、第2支持穴53bに支持される。
【0054】
出力ギヤ36は、第3軸線J3を中心として回転する。出力ギヤ36は、駆動ギヤ33の回転を出力シャフト38に伝達する。
図5に示すように、出力ギヤ36は、小径ギヤ35の前側(+Y側)に配置される。出力ギヤ36は、出力ギヤ本体部36aと、第4歯車部36bと、を有する。
出力ギヤ本体部36aは、小径ギヤ35に向かって第3軸線J3を中心とする径方向に突出する。
図3に示すように、出力ギヤ本体部36aには、出力ギヤ本体部36aを第3軸方向に貫通する孔部36dが設けられる。孔部36dは、第3軸線J3を中心とする略円形状の孔である。
【0055】
図5に示すように、第4歯車部36bは、出力ギヤ本体部36aの外周面に設けられる。より詳細には、第4歯車部36bは、出力ギヤ本体部36aのうち小径ギヤ35に向かって突出する部分の先端部における外周面に設けられている。第4歯車部36bは、第3軸線J3を中心とする円弧状に延びる。第4歯車部36bは、第3周方向に並ぶ複数の第4歯部36cを有する。第4歯車部36bは、第3歯車部35bと噛み合う。これにより、ロータ22の回転が駆動ギヤ33を介して、出力ギヤ36に伝達される。また、出力ギヤ36の回転は、大径ギヤ34の回転に対して減速される。
【0056】
出力シャフト38には、伝達機構30を介して、モータシャフト24の回転が伝達される。
図3に示すように、出力シャフト38は、第3軸線J3に沿って延びる。出力シャフト38は、軸部38aと、筒部38bと、保持部38eと、を有する。
軸部38aは、第3軸線J3に沿って延びる略円柱状である。Z軸方向において、軸部38aは、支持部材50の底壁部53と、出力ギヤ36との間に位置する。
【0057】
筒部38bは、軸部38aから上側に突出する。筒部38bは、第3軸線J3を中心とする円筒状である。筒部38bの下側の部分の外周面は、出力ギヤ36の孔部36dに固定される。これにより、出力ギヤ36と出力シャフト38とが接続される。すなわち、出力シャフト38は、伝達機構30と接続される。筒部38bの上側の部分の外周面は、ケース10の出力孔14eの内周面に支持される。筒部38bの外周面には溝が設けられ、溝にはXリング92が嵌め込まれる。Xリング92は、出力孔14eの内周面と筒部38bの外周面とに接触して、ケース10と出力シャフト38との間を封止する。
【0058】
筒部38bの内周面には、第3周方向に沿って複数のスプライン溝が設けられる。筒部38bの内周面は、電動アクチュエータ1の駆動力が出力される他の部材と連結される。本実施形態において、他の部材は、車両のマニュアルシャフトである。電動アクチュエータ1は、運転者のシフト操作に基づいてマニュアルシャフトを駆動し、車両のギヤを切り換える。
【0059】
保持部38eは、軸部38aから下側に突出する。保持部38eは、第3軸線J3を中心とする円環状である。保持部38eの外周面は、第4軸受96に支持される。また、上述のように、筒部38bは、ケース10の出力孔14eの内周面に支持される。これらにより、出力シャフト38は、第3軸線J3を中心に回転可能である。保持部38eの内周面には、マグネット保持部98が固定される。マグネット保持部98は、マグネット99を保持する。マグネット99は、制御部70とZ軸方向に間隔をあけて対向する。
【0060】
制御部70は、コイル23fに供給される直流電流を制御する。
図2に示すように、制御部70は、制御基板70aを有する。制御基板70aは、Z軸方向と直交する方向に拡がる板状である。制御基板70aは、モータ部20および伝達機構30の下側に配置される。制御基板70aは、複数の基板支持部57によって支持部材50に支持されている。図示は省略するが、制御基板70aは、コイル23fと電気的に接続されている。コイル23fには、制御基板70aに設けられたインバータ回路から電力が供給される。
図3に示すように、制御基板70aの上側の面にはセンサ76が取り付けられている。センサ76は、マグネット99の磁界を検出可能な磁気センサである。センサ76は、マグネット99の磁界を検出することでマグネット99の回転位置を検出し、出力シャフト38の回転を検出する。
【0061】
図2に示すように、第1軸受93および第2軸受94は、それぞれボールベアリングである。第1軸受93および第2軸受94は、ボールベアリング以外の転がり軸受であってもよいし、滑り軸受であってもよい。第3軸受95および
図3に示す第4軸受96は、それぞれ滑り軸受である。第3軸受95および第4軸受96は、転がり軸受であってもよい。
【0062】
図2に示すように、フィルタ部材90は、ケース10の貫通孔15bに着脱可能に取り付けられる。フィルタ部材90は、ケース10の内部とケース10の外部とを通気可能なフィルタである。したがって、フィルタ部材90によって、ケース10の内部の気圧を安定させることができるとともに、ケース10の内部に、水分および埃等が侵入することを抑制できる。フィルタ部材90の右側(-X側)の端部には、径方向に突出する爪部90aが設けられる。爪部90aは、ケース10の内部に位置する。また、爪部90aの径方向外側の端部は、貫通孔15bよりも径方向外側に位置する。これらにより、フィルタ部材90が、ケース10から外れることを抑制できる。本実施形態において、フィルタ部材90は、ブリーザである。フィルタ部材90は、ガラス繊維等の繊維によって構成されるフィルタであってもよい。フィルタ部材90と、テーパ部15cとの間には、Oリング91が配置される。Oリング91は、フィルタ部材90と、貫通孔15bの内周面とに接触して、フィルタ部材90とケース10との間を封止する。
【0063】
次に、本実施形態の電動アクチュエータ1において、作業者等がモータ回転治具80を用いて手動で出力シャフト38を回転させる手順について説明する。上述のように、本実施形態の電動アクチュエータ1は、車両の運転者のシフト操作に基づいて駆動されるパーク・バイ・ワイヤ方式のアクチュエータ装置に搭載される。そのため、電動アクチュエータ1が故障すると、運転者のシフト操作に基づいて、アクチュエータ装置を動作させることができない場合がある。この場合において、アクチュエータ装置を動作させるためには、出力シャフト38を手動で回転させる必要がある。しかしながら、伝達機構30が減速機構である場合、出力シャフト38を手動で回転させるために必要な回転トルクは、モータシャフト24を回転させるために必要な回転トルクよりも大きくなり、出力シャフト38を手動で回転させることが困難な場合がある。
【0064】
そこで、本実施形態の電動アクチュエータ1では、モータ回転治具80を用いて、回転トルクが比較的小さいモータシャフト24を手動で回転させることによって、伝達機構30を介して出力シャフト38を回転させて、アクチュエータ装置を動作させる。なお、以下の説明において、「作業者等」とは、モータ回転治具80を用いて手動で出力シャフト38を回転させる作業を行う作業者および装置等を含む。各作業は、作業者のみによって行われてもよいし、装置のみによって行われてもよいし、作業者と装置とによって行われてもよい。
【0065】
作業者等が出力シャフト38を手動で回転させる作業は、挿入ステップS1、連結ステップS2、および回転ステップS3を含む。
挿入ステップS1は、作業者等がモータ回転治具80を、ケース10の内部に挿入するステップである。作業者等は、まず、ケース10からフィルタ部材90を取り外し、貫通孔15bを外部に露出させる。その後、作業者等は、貫通孔15bを介してモータ回転治具80をケース10の内部に挿入する。
【0066】
図6に示すように、モータ回転治具80は、把手部80aと、接続部80bと、を有する。把手部80aは、モータ回転治具80の長手方向に延びる円柱状である。作業者等は、把手部80aを握ることによって、モータ回転治具80を保持できる。接続部80bは、把手部80aの長手方向を向く面から長手方向に突出する凸部である。接続部80bは、当該長手方向と直交する方向に直線状に延びる。接続部80bは、連結部25f内に挿入可能である。
【0067】
連結ステップS2は、モータ回転治具80とモータシャフト24の連結部25fとを連結するステップである。作業者等は、モータ回転治具80を右側(-X側)に移動させつつ、接続部80bを、連結部25fに挿入することによって、モータ回転治具80と連結部25fとを連結させる。
【0068】
回転ステップS3は、モータ回転治具80によって出力シャフト38を回転させるステップである。作業者等は、モータ回転治具80と連結部25fとを連結させつつ、モータ回転治具80を周方向に向けて回転させる。モータシャフト24の回転トルクは比較的小さいため、作業者等はモータシャフト24を容易に周方向に向けて回転できる。以上により、作業者等は、手動で出力シャフト38を回転させることができ、手動で電動アクチュエータ1を動作させることができる。
【0069】
本実施形態によれば、ケース10は、フィルタ部材90が着脱可能に取り付けられる貫通孔15bを有し、モータシャフト24は、貫通孔15bに挿入可能なモータ回転治具80をケース10の内部において連結可能な連結部25fを有する。よって、フィルタ部材90を取り外すことで、モータ回転治具80を連結部25fに連結することができ、電動アクチュエータ1の外部から手動でモータシャフト24を容易に回転できる。そのため、モータシャフト24に対する出力シャフト38の減速比が大きく、出力シャフト38の回転トルクが大きな電動アクチュエータ1が正常に駆動できない場合においても、電動アクチュエータ1の外部から手動でモータシャフト24および出力シャフト38を容易に回転させることができる。
【0070】
また、本実施形態では、貫通孔15bに着脱可能に取り付けられるフィルタ部材90を取り外す作業のみによって、貫通孔15bを介して、ケース10の内部とケース10の外部とを連通させることができる。そのため、挿入ステップS1において、モータ回転治具80を、ケース10の内部に挿入する作業の簡易化を図ることができる。したがって、電動アクチュエータ1の外部から手動でモータシャフト24および出力シャフト38を容易に回転させることができる。
【0071】
さらに、本実施形態では、貫通孔15bを、フィルタ部材90が取り付けられケース10の内部とケース10の外部とを通気する通気孔、および、モータ回転治具80を電動アクチュエータ1の内部に挿入する挿入孔として利用できる。そのため、ケース10に通気孔と挿入孔とを別個に設ける場合と比較して、ケース10の構造の簡素化を図ることができ、ケース10の加工工数および製造コストが増大することが抑制できる。したがって、電動アクチュエータ1の製造コストが増大することを抑制できる。また、フィルタ部材90とは別個に、挿入孔を塞ぐためのキャップ等の部材を設ける必要が無いため、電動アクチュエータ1の部品点数および製造コストが増大することを抑制できる。
【0072】
本実施形態によれば、貫通孔15bは、ケース10の壁部を軸方向に貫通し、且つ、モータシャフト24の左側(+X側)、すなわち軸方向一方側に位置し、連結部25fは、モータシャフト24の左側の端部に設けられ、軸方向に見て、連結部25fと貫通孔15bとが重なる。よって、連結ステップS2において、作業者等が、貫通孔15bを介してケース10の内部に挿入したモータ回転治具80を連結部25fに連結させ易い。したがって、手動でモータシャフト24および出力シャフト38を回転させる作業の簡易化を図ることができる。
また、軸方向に見て、連結部25fと貫通孔15bとが重なるため、作業者等は、電動アクチュエータ1の外部から、貫通孔15bを介して、連結部25fを容易に視認できる。そのため、連結ステップS2において、作業者等は、接続部80bを連結部25fにより容易に挿入でき、モータ回転治具80と連結部25fとをより容易に連結できる。
【0073】
さらに、本実施形態では、連結部25fが、モータシャフト24の左側(+X側)、すなわち軸方向一方側に位置するため、連結部25fが、モータシャフト24の径方向外側を向く面に設けられる場合と比較して、貫通孔15bと連結部25fとの間の距離を短くし易い。そのため、連結ステップS2において、作業者等は、接続部80bを連結部25fに、より容易に挿入でき、モータ回転治具80と連結部25fとをより容易に連結できる。
【0074】
本実施形態によれば、モータシャフト24の左側(+X側)、すなわち軸方向一方側の端部の外径は、モータシャフト24の右側(-X側)、すなわち軸方向他方側の端部の外径よりも大きい。そのため、連結部25fの径方向の寸法を大きくできるため、手動でモータシャフト24を回転させる際に、モータシャフト24に加える回転トルクを大きくできる。したがって、電動アクチュエータ1の外部から手動でモータシャフト24をより容易に回転させることができる。
【0075】
本実施形態によれば、貫通孔15bは円形状の孔であり、貫通孔15bの内周面は、ケース10の外側面から内側面に向かうにしたがって、径が小さくなるテーパ状のテーパ部15cを有する。よって、モータ回転治具80の把手部80aの側面を、テーパ部15cに沿わしつつ、モータ回転治具80をケース10の内部に挿入することによって、接続部80bを連結部25fの近傍に容易に導くことができる。つまり、テーパ部15cを、モータ回転治具80の接続部80bをモータシャフト24の連結部25fに案内する案内面として利用でき、モータ回転治具80と連結部25fとをより容易に連結できる。そのため、手動でモータシャフト24および出力シャフト38を回転させる作業の簡易化を図ることができる。また、フィルタ部材90を貫通孔15bに取り付ける際に、フィルタ部材90の先端部をテーパ部15cに沿わしつつ、フィルタ部材90を貫通孔15bに挿入することができる。そのため、フィルタ部材90を容易に貫通孔15bに取り付けることができる。
【0076】
上述のように、本実施形態のモータ回転治具80は、把手部80aと、接続部80bのみを有する簡易な構成である。そのため、モータ回転治具80の製造コストが増大することを抑制できる。また、モータ回転治具80を比較的小型、且つ、軽量にできる。よって、作業者等は、モータ回転治具80を容易に持ち運びできる。そのため、電動アクチュエータ1の故障によって発生した問題を速やかに解消できる。
【0077】
なお、連結部25fの構成は、本実施形態に限定されず、例えば、連結部25fの形状は、プラス形状であっても良いし、六角形状等の他の形状であっても良い。この場合、モータ回転治具80の接続部80bの形状は、連結部25fの形状に合わせて、プラス形状または六角形状等の他の形状にできる。また、連結部25fは、胴部25aの左側(+X側)の端部を含む部分を六角柱等の角柱状にした構成であっても良い。この場合、モータ回転治具80の接続部80bは、連結部25fが嵌る六角形状等の凹部にできる。
【0078】
<第2実施形態>
図7は、本実施形態の電動アクチュエータ201を示す断面図である。なお、上述の第1実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
図7に示すように、本実施形態の電動アクチュエータ201は、出力シャフト238がモータシャフト224の内部に配置される。電動アクチュエータ201は、ケース210と、蓋部材216と、モータ部220と、伝達機構230と、出力シャフト238と、制御部270と、フィルタ部材90と、を備える。
【0079】
なお、
図7および
図8に示すモータ軸J4が延びる方向は、Z軸方向、すなわち上下方向と平行である。以下の説明においては、モータ軸J4と平行な方向を単に「軸方向」と呼ぶ。また、モータ軸J4を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、モータ軸J4を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0080】
周方向は、各図において矢印θ4で示される。周方向のうち矢印θ4が向く側(+θ4側)を「周方向一方側」と呼ぶ。周方向のうち矢印θ4が向く側と逆側(-θ4側)を「周方向他方側」と呼ぶ。周方向一方側は、上側から見てモータ軸J4回りに時計回りに進む側である。周方向他方側は、上側から見てモータ軸J4回りに反時計回りに進む側である。
【0081】
図7および
図8には、第1方向D1を示す。本実施形態において、第1方向D1は、後述する貫通孔213hが延びる方向である。第1方向D1は、モータ軸J4と交差する方向である。本実施形態において、第1方向D1は、モータ軸J4と直交する方向である。以下の説明において、第1方向D1の矢印が向く側(+D1側)を「第1方向D1の一方側」と呼ぶ。第1方向D1の矢印が向く側と逆側(-D1側)を「第1方向D1の他方側」と呼ぶ。
【0082】
ケース210は、モータ部220、伝達機構230、出力シャフト238、および制御部270を内部に収容する。ケース210には、フィルタ部材90が着脱可能に取り付けられる。ケース210は、モータ軸J4を囲む筒状である。ケース210は、基板収容部213aと、ケース筒部213bと、出力部収容部213cと、軸受保持部213dと、側壁部213gと、を有する。
【0083】
基板収容部213aは、軸方向に延びる筒状である。基板収容部213aは、上側に開口する。基板収容部213aの底面は、制御部270を支持する。
ケース筒部213bは、モータ軸J4を中心として軸方向に延びる円筒状である。ケース筒部213bは、モータ部220の径方向外側を囲む。
出力部収容部213cは、後述する出力部246を収容する部分である。
軸受保持部213dは、第2軸受251を保持する。
【0084】
側壁部213gは、基板収容部213aのうち、第1方向D1の他方側(-D1側)に位置する部分の下端から下側に突出する。側壁部213gは、ケース筒部213bの第1方向D1の他方側に配置される。側壁部213gとケース筒部213bとは径方向に繋がる。側壁部213gには、貫通孔213hが設けられる。
貫通孔213hは、側壁部213gおよびケース筒部213bを第1方向D1に貫通する孔である。すなわち、ケース210は、ケース210を第1方向D1に貫通する貫通孔213hを有する。貫通孔213hを介して、ケース210の内部は、ケース210の外部と繋がる。第1方向D1に見て、貫通孔213hは略円形状の孔である。貫通孔213hには、フィルタ部材90が着脱可能に取り付けられる。
【0085】
蓋部材216は、ケース210の開口を覆い、ケース210の上端に固定される。蓋部材216は、軸受保持部216bを有する。軸受保持部216bは、第1軸受253を保持する。
【0086】
モータ部220は、ロータ222と、ステータ23と、を有する。ロータ222は、モータシャフト224と、ロータコア22aと、複数のモータマグネット22bと、を有する。
【0087】
モータシャフト224は、モータ軸J4を中心として回転可能である。モータシャフト224は、モータシャフト224を軸方向に貫通するシャフト孔部225を有する中空シャフトである。モータシャフト224は、第1軸部224aと、第2軸部224bと、歯車軸部224fと、第3軸部224cと、を備える。
第1軸部224aは、軸方向に延びる。第2軸部224bは、第1軸部224aの下端から下側に延びる。軸方向において、第2軸部224bは、ロータコア22aと第3軸受252との間に位置する。
【0088】
歯車軸部224fは、第2軸部224bの下端から下側に延びる。軸方向において、歯車軸部224fは、伝達機構230と、ロータコア22aおよびステータ23との間に設けられる。
図8に示すように、歯車軸部224fの外周面には、連結部224dが設けられる。すなわち、連結部224dは、モータシャフト224の外周面の一部に設けられる。
図7に示すように、第1方向D1に見て、連結部224dと貫通孔213hとは重なる。
図8に示すように、連結部224dは、周方向に並ぶ複数の歯部224eを有する。本実施形態において、連結部224dは、複数の歯部224eを有する歯車である。
【0089】
図7に示すように、第3軸部224cは、歯車軸部224fの下端から下側に延びる。第3軸部224cは、モータ軸J4に対して偏心した偏心軸J5を中心とする偏心軸部である。偏心軸J5は、モータ軸J4と平行である。第3軸部224cは、第3軸受252によって、偏心軸J5回りに回転可能に支持される。
【0090】
出力シャフト238は、軸方向に延びる。出力シャフト238には、伝達機構230を介してモータシャフト224の回転が伝達される。出力シャフト238は、軸部238aと、突出部238bと、を有する。
【0091】
軸部238aは、モータ軸J4を中心として延びる円柱状である。軸部238aは、突出部238bの上側に位置する。軸部238aと突出部238bとは軸方向に繋がる。軸部238aは、モータシャフト224のシャフト孔部225を軸方向に通される。軸部238aの上側の端部は、モータシャフト224の上側に突出し、第1軸受253に支持される。
【0092】
突出部238bは、モータ軸J4を中心として軸方向に突出する円筒状である。突出部238bは、下側に開口する。突出部238bの下側の部分は、モータシャフト224の下側に突出し、第2軸受251に支持される。突出部238bの内周面には、周方向に沿って複数のスプライン溝が設けられる。突出部238bの内部には、車両のマニュアルシャフトが挿入される。これにより、出力シャフト238と、マニュアルシャフトとが接続される。
【0093】
本実施形態において、第1軸受253、第2軸受251および第3軸受252は、それぞれボールベアリングである。第1軸受253、第2軸受251および第3軸受252は、ボールベアリング以外の転がり軸受であってもよいし、滑り軸受であってもよい。
【0094】
ロータコア22aは、モータシャフト224の第1軸部224aの外周面に固定される。
ステータ23のステータコア23aは、ケース筒部213bの内周面に固定される。
コイル23fは、ステータコア23aに装着される。コイル23fは、バスバーホルダ240に保持されるバスバー250を介して、制御部270と接続される。バスバーホルダ240は、ステータ23の上側に配置される。
【0095】
制御部270は、バスバーホルダ240の上側に配置される。制御部270は、基板収容部213aの内部に収容される。制御部270は、制御基板270aを有する。制御基板270aは、軸方向と直交する平面に拡がる板状である。制御基板270aは、バスバー250を介して、コイル23fと接続される。制御部270は、コイル23fに供給される電流を制御する。
【0096】
伝達機構230は、モータ部220の下側に配置される。伝達機構230は、ロータ22の回転を減速する減速機構である。伝達機構230は、モータシャフト224の第3軸部224cの径方向外側、および、出力シャフト238の突出部238bの径方向外側に配置される。伝達機構230は、外歯ギヤ231と、内歯ギヤ232と、出力部246と、複数の突出部243と、を有する。
【0097】
外歯ギヤ231は、偏心軸J5を中心とする径方向に拡がる円環板状である。
図8に示すように、外歯ギヤ231の径方向外側面には、外歯歯車部231bが設けられる。外歯歯車部231bは、外歯ギヤ231の外周に沿って並ぶ複数の歯部231cを有する。
図7に示すように、外歯ギヤ231は、第3軸受252を介して、第3軸部224cに連結される。これにより、伝達機構230は、モータシャフト224と連結される。
【0098】
図8に示すように、外歯ギヤ231は、複数の孔部231aを有する。孔部231aは、外歯ギヤ231を軸方向に貫通する。複数の孔部231aは、偏心軸J5を中心とする周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置されている。孔部231aは、軸方向に見て円形状である。
【0099】
図7に示すように、内歯ギヤ232は、外歯ギヤ231の径方向外側に位置する。内歯ギヤ232は、モータ軸J4を中心とする円環状である。内歯ギヤ232は、ケース筒部213bに固定される。
図8に示すように、内歯ギヤ232の径方向内側面には、内歯歯車部232bが設けられる。内歯歯車部232bは、内歯ギヤ232の内周に沿って並ぶ複数の歯部232cを有する。内歯歯車部232bは、外歯歯車部231bと噛み合う。本実施形態において内歯歯車部232bは、周方向の一部のみにおいて外歯歯車部231bと噛み合う。
【0100】
図7に示すように、出力部246は、モータ軸J4を中心として径方向に拡がる円環板状である。出力部246は、外歯ギヤ231の下側に配置される。出力部246は、出力シャフト238の突出部238bの外周面に固定される。
【0101】
複数の突出部243は、出力部246に固定される。複数の突出部243は、出力部246から上側に突出する。突出部243は、円柱状である。
図8に示すように、複数の突出部243は、モータ軸J4を中心とする周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。複数の突出部243は、複数の孔部231aのそれぞれに挿入される。突出部243の外周面は、孔部231aの内周面と内接する。これにより、複数の突出部243は、孔部231aの内側面を介して、外歯ギヤ231をモータ軸J4回りに揺動可能に支持する。
【0102】
モータシャフト224がモータ軸J4回りに回転されると、偏心軸部である第3軸部224cは、モータ軸J4を中心として周方向に公転する。第3軸部224cの公転は、第3軸受252を介して外歯ギヤ231に伝達され、外歯ギヤ231は、孔部231aの内周面と突出部243の外周面との内接する位置が変化しつつ、揺動する。そのため、外歯歯車部231bと内歯歯車部232bとが噛み合う位置が、周方向に変化する。これにより、モータシャフト224の回転が、外歯ギヤ231を介して、内歯ギヤ232に伝達される。
【0103】
上述のように、内歯ギヤ232は、ケース筒部213bに固定されているため回転しない。そのため、内歯ギヤ232に伝達される動力の反力によって、外歯ギヤ231が偏心軸J5回りに回転する。外歯ギヤ231の偏心軸J5回りの回転は、孔部231aと突出部243とを介して、出力部246に伝達され、出力シャフト238がモータ軸J4回りに回転する。これにより、モータシャフト224の回転が、伝達機構230を介して、出力シャフト238に伝達される。出力シャフト238の回転は、伝達機構230によって、モータシャフト224の回転に対して減速される。
【0104】
次に、本実施形態の電動アクチュエータ201において、作業者等がモータ回転治具280を用いて手動で出力シャフト238を回転させる手順について説明する。
図8に示すように、モータ回転治具280は、把手部280aと、挿入部280bと、を有する。把手部280aは、円環板状である。作業者等は、把手部280aを握ることによって、モータ回転治具280を容易に保持できる。挿入部280bは、把手部280aの外周面から突出する略直方体の板状である。挿入部280bの側面には、挿入部280bが延びる方向に並ぶ複数の第2歯部280dが設けられる。複数の第2歯部280dは、連結部224dの複数の歯部224eと噛み合い可能である。挿入部280bは、貫通孔213hを通してケース210の内部に挿入可能である。
【0105】
作業者等が出力シャフト238を手動で回転させる作業は、挿入ステップS201、連結ステップS202、および回転ステップS203を含む。
挿入ステップS201は、作業者等がモータ回転治具280を、ケース210の内部に挿入するステップである。作業者等は、まず、ケース210からフィルタ部材90を取り外し、貫通孔213hを外部に露出させる。その後、作業者等は、モータ回転治具280の挿入部280bを、貫通孔213hを介して、ケース210の内部に挿入する。
【0106】
連結ステップS202は、モータ回転治具280とモータシャフト224の連結部224dとを連結するステップである。作業者等は、モータ回転治具280を、第1方向D1の一方側(+D1側)に移動させつつ、モータ回転治具280の複数の第2歯部280dと、連結部224dの複数の歯部224eとを噛み合わせることによって、モータ回転治具280と連結部224dとを連結させる。
【0107】
回転ステップS203は、モータ回転治具280によって出力シャフト238を回転させるステップである。作業者等は、連結部224dの複数の歯部224eと、モータ回転治具280の複数の第2歯部280dとを噛み合わせつつ、モータ回転治具280を第1方向D1に移動させて、モータシャフト224を周方向に向けて回転させる。モータシャフト224の回転トルクは比較的小さいため、作業者等はモータシャフト224を容易に周方向に向けて回転させることができる。以上により、作業者等は、手動で出力シャフト238を回転させることができ、手動で電動アクチュエータ201を動作させることができる。
【0108】
本実施形態によれば、ケース210は、フィルタ部材90が着脱可能に取り付けられる貫通孔213hを有し、モータシャフト224は、貫通孔213hに挿入可能なモータ回転治具280をケース210の内部において連結可能な連結部224dを有する。よって、モータ回転治具280によって、電動アクチュエータ201の外部から手動でモータシャフト224を回転させることができる。そのため、モータシャフト224に対する出力シャフト238の減速比が大きく、出力シャフト238の回転トルクが大きな電動アクチュエータ201が正常に駆動できない場合においても、電動アクチュエータ201の外部から手動でモータシャフト224および出力シャフト238を容易に回転させることができる。
【0109】
また、本実施形態によれば、上述の第1実施形態の電動アクチュエータ1と同様に、貫通孔213hを、ケース210の内部とケース210の外部とを通気する通気孔、および、モータ回転治具280を電動アクチュエータ201の内部に挿入する挿入孔として利用できる。そのため、ケース210に通気孔と挿入孔とを別個に設ける場合と比較して、ケース210の加工工数および製造コストが増大することが抑制できる。したがって、電動アクチュエータ201の製造コストが増大することを抑制できる。また、フィルタ部材90とは別個に、挿入孔を塞ぐためのキャップ等の部材を設ける必要が無いため、電動アクチュエータ201の部品点数および製造コストが増大することを抑制できる。
また、本実施形態では、
【0110】
さらに、本実施形態では、貫通孔213hに着脱可能に取り付けられるフィルタ部材90を取り外す作業のみによって、貫通孔213hを介して、ケース210の内部とケース210の外部とを連通させることができる。そのため、挿入ステップS201において、モータ回転治具280をケース210の内部に挿入する作業の簡易化を図ることができる。したがって、電動アクチュエータ201の外部から手動でモータシャフト224および出力シャフト238を容易に回転させることができる。
【0111】
本実施形態によれば、貫通孔213hは、ケース210をモータ軸J4と交差する第1方向D1に貫通し、連結部224dは、モータシャフト224の外周面の一部に設けられ、第1方向D1に見て、連結部224dと貫通孔213hとが重なる。よって、連結ステップS202において、作業者等は、貫通孔213hを介して、モータ回転治具280をケース210の内部に挿入し、モータ回転治具280を第1方向D1の一方側(+D1)に移動させることによって、モータ回転治具280と連結部224dとを容易に結合できる。したがって、手動でモータシャフト224および出力シャフト238を回転させる作業の簡易化を図ることができる。
【0112】
また、本実施形態では、第1方向D1に見て、連結部224dと貫通孔213hとが重なるため、作業者等は、貫通孔213hを介して、電動アクチュエータ201の外部から連結部224dを容易に視認できる。そのため、連結ステップS2において、作業者等は、モータ回転治具280の複数の第2歯部280dと、連結部224dの複数の歯部224eとを容易に噛み合わすことができ、モータ回転治具280と連結部224dとを容易に連結できる。したがって、手動でモータシャフト224および出力シャフト238を回転させる作業の簡易化を図ることができる。
【0113】
上述のように、本実施形態のモータ回転治具280は、把手部280aと、第2歯部280dが設けられる挿入部280bのみを有する簡易な構成である。そのため、モータ回転治具280の製造コストが増大することを抑制できる。また、モータ回転治具280を比較的小型、且つ、軽量にできる。よって、作業者等は、モータ回転治具280を容易に持ち運びできる。そのため、電動アクチュエータ201の故障によって発生した問題を速やかに解消できる。
【0114】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0115】
例えば、本発明が適用される電動アクチュエータは、電力が供給されることで対象となる物体を動かすことができる装置であればよく、伝達機構を備えないモータであってもよい。また、電動アクチュエータは、モータ部によって駆動されるポンプ部を備える電動ポンプであってもよい。電動アクチュエータの用途は、特に限定されず車両以外の機器に搭載されてもよい。なお、本明細書において説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【0116】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1) モータ軸を中心として回転可能なモータシャフトを有するモータ部と、前記モータシャフトと連結された伝達機構と、前記伝達機構を介して前記モータシャフトの回転が伝達される出力シャフトと、前記モータ部、前記伝達機構、および前記出力シャフトを内部に収容するケースと、前記ケースの内部と前記ケースの外部とを通気可能なフィルタ部材と、を備え、前記ケースは、前記フィルタ部材が着脱可能に取り付けられる貫通孔を有し、前記モータシャフトは、前記貫通孔に挿入可能なモータ回転治具を前記ケースの内部において連結可能な連結部を有する、電動アクチュエータ。
(2) 前記貫通孔は、前記ケースを前記モータ軸の軸方向に貫通し、且つ、前記モータシャフトの軸方向一方側に位置し、前記連結部は、前記モータシャフトの軸方向一方側の端部に設けられ、軸方向に見て、前記連結部と前記貫通孔とが重なる、(1)に記載の電動アクチュエータ。
(3) 前記モータシャフトの軸方向一方側の端部の外径は、前記モータシャフトの軸方向他方側の端部の外径よりも大きい、(2)に記載の電動アクチュエータ。
(4) 前記連結部は、前記モータシャフトの軸方向一方側を向く面から軸方向に窪む凹部である、(2)または(3)に記載の電動アクチュエータ。
(5) 前記貫通孔は、前記ケースを前記モータ軸と交差する第1方向に貫通し、前記連結部は、前記モータシャフトの外周面の一部に設けられ、前記第1方向に見て、前記連結部と前記貫通孔とが重なる、(1)に記載の電動アクチュエータ。
(6) 前記連結部は、周方向に並ぶ複数の歯部を有する歯車部を有する、(5)に記載の電動アクチュエータ。
(7) 前記伝達機構は減速機構である、(1)から(6)のいずれか一項に記載の電動アクチュエータ。
(8) 前記貫通孔は円形状の孔であり、前記貫通孔の内周面は、前記ケースの外側面から内側面に向かうにしたがって、径が小さくなるテーパ状である、(1)から(7)のいずれか一項に記載の電動アクチュエータ。
【符号の説明】
【0117】
1,201…電動アクチュエータ、10,210…ケース、15b,213h…貫通孔、20,220…モータ部、24,224…モータシャフト、25f,224d…連結部、30,230…伝達機構、38,238…出力シャフト、80,280…モータ回転治具、90…フィルタ部材、D1…第1方向、J1,J4…モータ軸